図1は、本発明が好適に適用される動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。この図1に示す自動変速機10は、好適にはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両において左右方向(横置き)に搭載されて用いられるものであり、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース26内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成される第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成された第2変速部20とを、図1にCで示す共通の軸心上に備え、それら第1変速部14及び第2変速部20を介して入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。この入力軸22は、上記自動変速機10の入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の駆動力源であるエンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸に相当する。また、上記出力回転部材24は、上記自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図3に示す差動歯車装置34に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)36と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。図1に示すように、上記自動変速機10と駆動力源としてのエンジン28との間の動力伝達経路にはトルクコンバータ30が備えられており、上記エンジン28の出力は、そのトルクコンバータ30を介して上記自動変速機10に伝達され、その自動変速機10、差動歯車装置34、及び左右1対の車軸38を介して左右1対の駆動輪40へ伝達される。なお、上記自動変速機10やトルクコンバータ30は、その中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその中心線Cの下半分が省略されている。
上記エンジン28は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ30は、上記エンジン30のクランク軸に連結されたポンプ翼車30p、及びタービン軸を介して上記自動変速機10に連結されたタービン翼車30tを備えており、流体を介して動力伝達を行う流体式動力伝達装置である。すなわち、本実施例のトルクコンバータ30においては、上記ポンプ翼車30pが入力回転部材に、上記タービン翼車30tが出力回転部材にそれぞれ対応する。また、それらポンプ翼車30p及びタービン翼車30tの間には、その係合により上記ポンプ翼車30p及びタービン翼車30tを一体回転させるように構成されたロックアップクラッチ(直結クラッチ)32が設けられている。このロックアップクラッチ32は、後述する図4に示すような油圧制御回路100によりその係合状態が解放、スリップ係合(半係合)、乃至完全係合の間で制御されるように構成されている。
前記自動変速機10は、例えば、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが選択的に成立させられる有段式の自動変速機構であり、斯かる変速を行うための係合要素として複数の油圧式摩擦係合装置等を備えて構成されている。すなわち、図1に示すようにクラッチC1、C2、及びブレーキB1乃至B3(以下、特に区分しない場合は単にクラッチC及びブレーキBという)を備えている。これらクラッチC及びブレーキBは、何れも多板式のクラッチやブレーキ等、油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、後述する油圧制御回路100内の電磁弁装置としてのリニアソレノイドバルブの励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられると共に係合、解放時の過度油圧等が制御される。そして、前記自動変速機10においては、上記クラッチC及びブレーキBが選択的に係合乃至解放させられることにより、前記第1変速部14及び第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1乃至S3、キャリヤCA1乃至CA3、リングギヤR1乃至R3)のうちの何れかの連結状態の組合せに応じて第1変速段(第1速ギヤ段)「1st」乃至第6変速段(第6速ギヤ段)「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段、前進走行用ギヤ段)が成立させられると共に、後進変速段(後進ギヤ段、後進走行用ギヤ段)「R」の1つの後進ギヤ段が成立させられる。
図2は、前記自動変速機10において複数の変速段を選択的に成立させる際の摩擦係合要素すなわち摩擦係合装置の作動状態を説明する係合作動表である。この係合作動表は、上記各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1乃至B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合を表している。この図2に示すように、前記自動変速機10では、前進ギヤ段に関して、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段「1st」が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段「2nd」が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段「3rd」が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段「4th」が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段「5th」が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段「6th」が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段「R」が成立させられ、クラッチC1、C2ブレーキB1乃至B3の何れもが解放されることによりニュートラル状態「N」となるように構成されている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、及び第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図3は、前記自動変速機10等を制御するために車両に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。この図3に示す電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入力インターフェイス等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、そのCPUによりRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン28の出力制御や前記自動変速機10の変速制御をはじめとする各種制御を実行するように構成されている。なお、この電子制御装置80は、必要に応じて前記エンジン28の出力制御用や前記自動変速機10の変速制御用といったように各制御毎に個別の制御装置として構成される。
図3に示すように、車両に設けられた各種センサやスイッチ等からそれぞれの検出値を示す信号が上記電子制御装置80へ供給されるように構成されている。すなわち、アクセル操作量センサ52から所謂アクセル開度として知られるアクセルペダル50の操作量(アクセル開度)Accを表す信号、ブレーキスイッチ56から常用ブレーキであるフットブレーキペダル54の操作の有無を表す信号、エンジン回転速度センサ58から前記エンジン28の回転速度NEを表す信号、エンジン吸入空気量センサ60から前記エンジン28の吸入空気量Qを表す信号、エンジン吸入空気温度センサ62から前記エンジン28の吸入空気の温度TAを表す信号、スロットルセンサ64から電子スロットル弁の開度θTHを表す信号、車速センサ66から前記出力回転部材24の回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、冷却水温センサ68から前記エンジン28の冷却水温TWを表す信号、レバーポジションセンサ74からシフト操作部材としてのシフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを表す信号、タービン回転速度センサ76からタービン回転速度NTすなわち前記入力軸22の回転速度NINを表す信号、AT油温センサ78から前記油圧制御回路100内の作動油の温度であるAT油温TOILを表す信号が、それぞれ上記電子制御装置80へ供給されるようになっている。
また、前記電子制御装置80からは、車両に備えられた各種装置の作動を制御するための信号が出力されるように構成されている。すなわち、前記エンジン28の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号SEとして、例えばアクセル開度Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータを駆動する信号、燃料噴射装置から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、及び点火装置による前記エンジン28の点火時期を制御するための点火時期信号等が出力されるようになっている。また、前記自動変速機10の変速制御のための変速制御指令信号SPとして、例えば前記油圧制御回路100内に備えられた各種電磁弁装置を駆動するための信号等が出力されるようになっている。また、前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合制御のためのロックアップクラッチ係合制御信号SLとして、前記油圧制御回路100内に備えられたソレノイド弁SL及びリニアソレノイド弁SLU(図4を参照)を駆動するための信号等が出力されるようになっている。
図4は、前記油圧制御回路100のうち、本実施例の制御すなわち前記ロックアップクラッチ32の係合状態の制御に関連する部分を抜き出して示す油圧回路図である。この図4に示すように、前記油圧制御回路100は、切換用電磁ソレノイド102によりオンオフ作動させられて切換用信号圧PSWを発生させる切換用ソレノイド弁SLと、その切換用信号圧PSWに応じて前記ロックアップクラッチ32を解放状態とする解放側位置(オフ側位置)乃至係合状態とする係合側位置(オン側位置)に切り換えるクラッチ切換弁104と、前記電子制御装置80から供給される駆動電流に対応した信号圧PSLUを出力させるスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUと、上記クラッチ切換弁104により前記ロックアップクラッチ32が係合状態とされているときにそのロックアップクラッチ32の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるロックアップコントロール弁106と、作動油を冷却するためのオイルクーラ108とを、備えて構成されている。
また、図4に示すように、前記油圧制御回路100は、図示しないオイルパンに環流した作動油をストレーナ110を介して吸引して圧送するために、例えば前記エンジン28によって駆動される機械式のオイルポンプ112を備えており、そのオイルポンプ112によって昇圧された作動油は、リリーフ形式の第1調圧弁114により第1ライン圧PL1に調圧されるようになっている。また、同様にリリーフ形式の調圧弁である第2調圧弁116が備えられており、上記第1調圧弁114から流出させられた作動油がその第2調圧弁116により調圧されることで、第2ライン圧PL2が発生させられるようになっている。また、第3調圧弁118は、上記第1ライン圧PL1を元圧とする減圧弁であって、その第3調圧弁118により予め設定された一定圧であるモジュレータ圧PMが発生させられるようになっている。なお、上記第1調圧弁114及び第2調圧弁116には、図示しないリニアソレノイドバルブによって信号圧が供給されるようになっており、前記電子制御装置80からの指令に応じてそのリニアソレノイドバルブから所定の信号圧が出力されることで、上記第1調圧弁114及び第2調圧弁116により前記エンジン28のアクセル開度やエンジン回転速度等に基づいて車両の走行に好適な油圧に調圧される。
また、図4に示すように、前記ロックアップクラッチ32は、係合油路120を介して供給される係合側油室122内の油室PONと解放油路124を介して供給される解放側油室126内の油圧POFFとの差圧ΔP(=PON−POFF)によりフロントカバー128に摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである。そして、前記トルクコンバータ30の運転条件としては、例えば、差圧ΔPが負とされて前記ロックアップクラッチ32が解放される所謂ロックアップオフ、差圧ΔPが零以上とされて前記ロックアップクラッチ32が半係合される所謂スリップ状態、及び差圧ΔPが最大値とされて前記ロックアップクラッチ32が完全に係合される所謂ロックアップオンの3条件に大別される。また、前記ロックアップクラッチ32のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりそのロックアップクラッチ32のトルク分担がなくなって、前記トルクコンバータ30は、ロックアップオフと同等の運転条件とされる。
前記クラッチ切換弁104は、前記ロックアップクラッチ32の係合及び解放を切り換えるためのものであり、そのクラッチ切換弁104内には、接続状態を切り換えるためのスプール弁子130が備えられている。図4においては、中心線より左側が前記ロックアップクラッチ32の解放状態であるオフ側位置(OFF)に上記スプール弁子130が位置された状態を示しており、中心線より右側が係合状態であるオン側位置(ON)に上記スプール弁子130が位置された状態を示している。前記クラッチ切換弁104は、前記解放側油室126と連通する解放側ポート132、前記係合側油室122と連通する係合側ポート134、第2ライン圧PL2が供給される入力ポート136、前記ロックアップクラッチ32の解放時に前記係合側油室122内の作動油が排出されると共にそのロックアップクラッチ32の係合時に前記第2調圧弁116から流出させられた作動油が排出される排出ポート138、前記ロックアップクラッチ32の係合時に前記解放側油室126内の作動油が排出される迂回ポート140、前記第2調圧弁116から流出させられた作動油が供給されるリリーフポート142、上記スプール弁子130をオフ側位置に向かって付勢するスプリング144、及び上記スプール弁子130の端面に前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWを受け入れる油室146を備えている。
前記ロックアップコントロール弁106は、スプール弁子148と、そのスプール弁子148をスリップ(SLIP)側位置へ向かう推力を付与するスプリング150と、上記スプール弁子148をスリップ側に位置向かって付勢するために前記トルクコンバータ30の係合側油室122内の油圧PONを受け入れる油室152と、上記スプール弁子148を完全係合(ON)側位置に向かって付勢するために前記トルクコンバータ30の解放側油室126内の油圧POFFを受け入れる油室154と、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが供給される油室156と、前記第2調圧弁116によって調圧された第2ライン圧PL2が供給される入力ポート158と、上記クラッチ切換弁104の迂回ポート140から出力される油圧が供給される制御ポート160とを、備えている。なお、図4においては、中心線より左側がスリップ(SLIP)側位置に上記スプール弁子148が位置された状態を示しており、中心線より右側が完全係合(ON)側位置に上記スプール弁子148が位置された状態を示している。
前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUは、前記電子制御装置80からの指令に従って、前記ロックアップクラッチ32の係合時(スリップ係合時)におけるその係合圧を制御する信号圧PSLUを出力させるものである。すなわち、前記第3調圧弁118によって調圧された一定のモジュレータ圧PMを元圧とし、そのモジュレータ圧PMを減圧して信号圧PSLUを出力する電磁制御弁であって、前記電子制御装置80から供給される指令に対応する駆動電流(励磁電流)に比例した信号圧PSLUを発生させる。また、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUのドレーンポート162は、チェックボール164に連通されているため、そのチェックボール164によって常時塞がれており、そのチェックボール164に所定以上の圧力がかかると開弁させられて作動油が排出されるように構成されている。
前記切換用ソレノイド弁SLは、前記電子制御装置80からの指令に従って所定の切換用信号圧PSWを出力させるものである。すなわち、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSWをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では、切換用信号圧PSWをモジュレータ圧PMとして前記油室146に作用させることで、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130を係合状態であるオン側位置(ON)に移動させるように構成されている。
以上のように構成された油圧制御回路100により前記係合側油室122及び解放側油室126への作動油圧の供給状態が切り換えられ、前記ロックアップクラッチ32の作動状態が切り換えらる。先ず、前記ロックアップクラッチ32がスリップ状態乃至ロックアップオンとされた場合を説明する。前記クラッチ切換弁104において、前記切換用ソレノイド弁SLによって切換用信号圧PSWが油室146へ供給されてスプール弁子130がオン側位置へ付勢されると、前記入力ポート136に供給された第2ライン圧PL2が前記係合側ポート134から係合油路138を通り係合側油室122へ供給される。この係合側油室122へ供給される第2ライン圧PL2が油圧PONとなる。同時に前記解放側油室126は、前記解放油路124を通り解放側ポート132から迂回ポート140を経て前記ロックアップコントロール弁106の制御ポート160に連通させられる。そして、前記解放側油室126内の油圧POFFが前記ロックアップコントロール弁106により調整されて(すなわちロックアップコントロール弁106により差圧ΔPすなわち係合圧が調整されて)、そのロックアップクラッチ32の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130が係合(ON)側位置へ付勢されている場合すなわち前記ロックアップクラッチ32が係合状態に切り換えられた場合には、前記ロックアップコントロール弁106において前記スプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢されるための信号圧PSLUが油室156へ供給されないが、前記スプリング150の推力によってスプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされると、前記入力ポート158に供給された第2ライン圧PL2が前記制御ポート160から迂回ポート140を経て前記解放側ポート132から解放油路124を通り解放側油室126へ供給される。この制御ポート160から出力される作動油の流量は、前記油室156へ供給される信号圧PSLUによって制御される。すなわち、前記スプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされた状態においては、前記差圧ΔPが前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUによって制御されて前記ロックアップクラッチ32のスリップ状態が制御される。
また、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130がON側位置へ付勢されているときに、前記ロックアップコントロール弁106において前記スプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢させるための信号圧PSLUが前記油室156に供給されると、前記入力ポート158から前記解放側油室126へは第2ライン圧PL2が供給されず、その解放側油室126からの作動油がドレーンポートから排出される。これにより、前記差圧ΔPが最大とされて前記ロックアップクラッチ32が完全係合状態となる。また、前記ロックアップクラッチ32がスリップ状態もしくは完全係合状態において、前記クラッチ切換弁104はオン側位置に位置させられるため、前記リリーフポート142と排出ポート138とが連通させられる。これにより、前記第2調圧弁116から流出させられた作動油が前記排出ポート138を介してオイルクーラ108に供給される。
一方、前記クラッチ切換弁104において、前記切換用信号圧PSWが油室146に供給されず、前記スプリング144の付勢力によって前記スプール弁子130がオフ側位置へ位置されると、前記入力ポート136に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート132から解放油路124を通り前記解放側油室126へ供給される。そして、前記係合側油室122を経て係合油路138を通り係合側ポート134に排出された作動油が前記排出ポート138からオイルクーラ108に供給されて冷却される。すなわち、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている状態においては、前記ロックアップクラッチ32は解放状態とされ、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLU乃至ロックアップコントロール弁106を介してのスリップ係合制御は行われない。換言すれば、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが変化させられた場合であっても、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている限りにおいてその変化は前記ロックアップクラッチ32の係合状態(差圧ΔP)に反映されない。
図5は、前記電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示すプリチャージ制御手段170は、後述するフレックススタート制御手段172によるフレックススタート制御の開始に際して、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示した状態で待機させるプリチャージ制御を実行する。すなわち、予め定められた所定のプリチャージ制御開始条件が成立した場合に、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWがオフのまま(すなわちクラッチ切換弁104のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられたまま)、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示してその実際の出力圧PSLUを漸増させる油圧制御を実行する。具体的には、後述する図7乃至図8に示すように、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUにパルス状に変化する出力指令を与えた後、そのスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定(一定)の駆動電流を供給する。
上記プリチャージ制御開始条件としては、例えば、(a)前記AT油温センサ78により検出される前記油圧制御回路100内の作動油の温度であるAT油温TOILが所定温度以上であり、(b)前記エンジン回転速度センサ58により検出される前記エンジン28の回転速度NEが所定速度以上であり、(c)前記ブレーキスイッチ56により常用ブレーキである前記フットブレーキペダル54の操作が無いこと(ブレーキオフであること)が検出され、(d)前記車速センサ66により車速Vが0であることすなわち車両停止時であることが検出され、(e)前記レバーポジションセンサ74により前記シフトレバー72の操作位置がDレンジであることが検出され、(f)例えば前記自動変速機10の変速制御等の他の制御の実行中でないことが判断され、(g)前記油圧制御回路100等においてフェールが発生していないことが判断され、且つ(h)他の制御に関して前記ロックアップクラッチ32の係合禁止要求が無いと判断された場合に、上記プリチャージ制御の開始が判断される。すなわち、上記(a)〜(h)の全ての条件が成立した場合、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示した状態で待機させるプリチャージ制御を実行する。
フレックススタート制御手段172は、車両発進に際して前記ロックアップクラッチ32をスリップ係合させるフレックススタート制御を実行する。すなわち、基本的には、予め定められた所定のフレックススタート制御開始条件が成立した場合に、前記ロックアップクラッチ32をスリップ係合状態として前記エンジン28の出力トルクの一部をそのロックアップクラッチ32を介して自動変速機10へ入力させることにより、前記トルクコンバータ30とロックアップクラッチ32を介して発進時の動力を伝達させる車両発進制御を実行する。上記フレックススタート制御開始条件としては、例えば、前記アクセル操作量センサ52により検出される前記アクセルペダル50の操作量Accが所定値以上(アクセルオン)となり、且つ前記車速センサ66により車速Vが所定値以上であることすなわち車輪の転がり始めが検出された場合に、上記フレックススタート制御の開始が判断される。
上記フレックススタート制御手段172は、具体的には、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUを介して上記フレックススタート制御を実行する。すなわち、前記電子制御装置80から前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUへ供給される指令(駆動電流)を制御することで、そのスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUをフィードフォワード制御する。斯かる制御により、前記差圧ΔPを制御して前記ロックアップクラッチ32の実際のスリップ回転速度NS(=NE−NIN)が予め定められた目標スリップ値NSMとなるように制御する。このようなフレックススタート制御を実行することにより、車両発進時における前記エンジン28の回転速度上昇が抑制され、良好な燃費が車両発進時に得られるようになる。
また、前記フレックススタート制御手段172は、好適には、前記フレックススタート制御の開始直後において前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定のサージ圧(サージ出力値)を指示する。このサージ圧は、前記ロックアップクラッチ32の差圧ΔP(=PON−POFF)の立ち上がるを早めるために前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の大きさの駆動電流を所定時間印加することで、そのスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに後述する図7に示すようなパルス状に変化する出力指令を与えるものである。
また、前記フレックススタート制御手段172は、前記プリチャージ制御手段170によりプリチャージ制御を実行した後、予め設定された前記フレックススタート制御開始条件が成立するまでのそのプリチャージ制御の実行時間に応じて第1のフレックススタート制御及び第2のフレックススタート制御の何れかを選択的に実行するものである。斯かる制御を行うために、前記フレックススタート制御手段172は、第1制御手段174及び第2制御手段176を含んでいる。以下、これら第1制御手段174及び第2制御手段176による第1のフレックススタート制御及び第2のフレックススタート制御について分説する。
前記フレックススタート制御手段172は、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御の実行時間Tが予め定められた閾値Tb(例えば100msec程度の極端に短い時間)以上である場合には、上記第1制御手段174による第1のフレックススタート制御を実行する。この第1のフレックススタート制御は、予め定められた関係から、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて、フレックススタート制御開始直後において前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示されるサージ圧を変更するものである。図6は、上記第1制御手段174によるサージ圧の変更に用いられる関係の一例を示す図である。この図6に示すように、上記関係は、前記プリチャージ制御の実行時間Tが長いほど前記サージ圧(サージ出力値)Sを小さくするように定められたものであり、上記第1制御手段174は、この図6に示すような関係に基づいてフレックススタート制御開始直後におけるサージ出力値Sの変更(設定)を行う。なお、本実施例においては、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて前記サージ圧Sに相当するパルスの大きさSすなわち縦方向大きさを変化させる制御を行う一方、そのパルスの継続時間すなわち横方向幅は前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じては変化させない。
図7は、前記第1制御手段174による第1のフレックススタート制御の一例について説明するタイムチャートであり、従来の制御における各種関係値を細い破線で、本実施例の制御における各種関係値を実線でそれぞれ示している。この図7に示す例では、先ず、時点t1において、前記プリチャージ制御開始条件が成立し、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御が開始される。すなわち、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWがオフのまま、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の駆動電流が印加されてその出力圧PSLUの漸増が開始される。この段階においては、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWがオフであり、前記クラッチ切換弁104のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられたままであるため、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUは前記ロックアップクラッチ32の差圧ΔPに影響を与えず、その出力圧PSLUは上昇させられるがエンジン回転速度NE及びタービン回転速度NTは変化しない。
続いて、時点t2において、前記フレックススタート制御開始条件が成立し、前記フレックススタート制御手段172(第1制御手段174)によるフレックススタート制御が開始される。すなわち、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWがオンとされることにより、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUによる前記ロックアップクラッチ32の差圧ΔPの制御が開始されると共に、そのスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定のサージ圧(サージ出力値)Sが指示される。ここで、前述したように、図6に示すような関係から前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御の実行時間Tすなわち時点t1から時点t2までの時間に基づいて上記サージ圧Sの大きさが算出(導出)され、対応する駆動電流が前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに印加される。そして、時点t3において加速フレックス制御が開始されるまでの間、前記フレックススタート制御手段172によるフレックススタート制御が実行される。
図7に細い破線で示すように、従来の技術によるフレックススタート制御では、制御開始直後における前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUの立ち上がりが遅く、それによりエンジン回転速度NEに吹き上がりが生じていることがわかる。このように、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御から前記フレックススタート制御手段172によるフレックススタート制御への移行時に、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUが十分に増加していない場合にはエンジン回転速度NEが目標回転速度よりも高い回転速度まで吹き上がってしまい、燃費が低下するという不具合が生じる。ここで、前記フレックススタート制御の開始直後における前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUは、前記プリチャージ制御の実行時間Tが長いほど十分に増加するものであることから、本実施例の第1制御手段174による第1のフレックススタート制御においては、前記プリチャージ制御の実行時間Tが長いほど前記フレックススタート制御の開始直後におけるサージ圧Sを小さくするように、換言すれば前記プリチャージ制御の実行時間Tが短いほど前記フレックススタート制御の開始直後におけるサージ圧Sを大きくするように設定することで、図7に実線で示すようにエンジン回転速度NEの吹き上がりを抑制して十分な燃費効果が得られる。
また、前記フレックススタート制御手段172は、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御の実行時間Tが予め定められた閾値Tb(例えば100msec程度の極端に短い時間)未満である場合には、前記第2制御手段176による第2のフレックススタート制御を実行する。この第2のフレックススタート制御は、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWはオンとする一方で前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUを増加させず維持することにより、前記ロックアップクラッチ32の差圧ΔPを増加させず、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御と同等の油圧指示を続行するものである。換言すれば、前記第2制御手段176による第2のフレックススタート制御では、前述した制御開始直後におけるサージ圧Sは前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示されない。
図8は、前記第2制御手段176による第2のフレックススタート制御の一例について説明するタイムチャートであり、従来の制御における各種関係値を細い破線で、本実施例の制御における各種関係値を実線でそれぞれ示している。この図8に示す例では、先ず、時点t1において、前記プリチャージ制御開始条件が成立し、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御が開始される。すなわち、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWがオフのまま、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の駆動電流が印加されてその出力圧PSLUの漸増が開始される。続いて、時点t2において、前記フレックススタート制御開始条件が成立している。ここで、前記プリチャージ制御手段170によるプリチャージ制御の実行時間Tすなわち時点t1から時点t2までの時間が例えば100msec未満等の極端に短い時間である場合には、図8に示すように、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUからの出力圧PSLUが十分に増加しないままフレックススタート制御が開始されることになる。このように、前記プリチャージ制御の実行時間Tが極端に短くなる場合としては、左足ブレーキから右足アクセルへの踏み替え(いじわる操作)や、ガレージシフト操作後の即アクセル踏み込み等、通常とは異なる操作が行われた場合が考えられる。
図8に細い破線で示すように、前記プリチャージ制御の実行時間Tが極端に短い場合における従来の技術によるフレックススタート制御では、ニュートラル制御やガレージ制御終了直後のエンジントルク制御と干渉することで、エンジントルクの推定値と実際値との乖離が大きくなり、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの出力圧PSLUに係るフィードバック制御に用いられるエンジントルク情報の信用性が低下する。これにより、図8に細い破線で示すように、エンジン回転速度NEが一度吹き上がってから引き下げるといった制御が行われることとなり、車両発進時のドライバビリティが低下する。一方、本実施例の第2制御手段176による第2のフレックススタート制御においては、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの出力圧PSLUの立ち上がりが遅いことを考慮して、前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWはオンとする一方で前記出力圧PSLUを増加させずに待機してプリチャージ制御を続行することで、エンジン回転速度NEの変動を抑制している。上述のように前記プリチャージ制御の実行時間Tが極端に短い場合には、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの出力圧PSLUを高めてもエンジン回転速度NEの吹き上がりを安定的に抑えることが困難であるため、本実施例の制御ではそのような場合にドライバビリティを優先することで、図8に実線で示すように、車両発進時のドライバビリティを向上させて好適な発進を実現することができる。
図9は、本実施例のフレックススタート制御との対比のために、従来技術によるフレックススタート制御の一例を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)SP1において、プリチャージ制御開始条件が成立したか否かが判断される。すなわち、前記(a)〜(h)の全ての条件が成立したか否かが判断される。このSP1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SP1の判断が肯定される場合には、SP2において、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示した状態で待機させるプリチャージ制御が実行される。次に、SP3において、フレックススタート制御開始条件が成立したか否かが判断される。すなわち、前記アクセル操作量センサ52により検出される前記アクセルペダル50の操作量Accが所定値以上(アクセルオン)となり、且つ前記車速センサ66により車速Vが所定値以上であることすなわち車輪の転がり始めが検出されたか否かが判断される。このSP3の判断が否定される場合には、SP2の処理が継続的に実行されるが、SP3の判断が肯定される場合には、SP4において、前記ロックアップクラッチ32をスリップ係合させるフレックススタート制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
図10は、前記電子制御装置80による本実施例のフレックススタート制御の一例を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、S1において、プリチャージ制御開始条件が成立したか否かが判断される。すなわち、前記(a)〜(h)の全ての条件が成立したか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、前記プリチャージ制御手段170の動作に対応するS2において、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示した状態で待機させるプリチャージ制御が実行される。次に、S3において、フレックススタート制御開始条件が成立したか否かが判断される。すなわち、前記アクセル操作量センサ52により検出される前記アクセルペダル50の操作量Accが所定値以上(アクセルオン)となり、且つ前記車速センサ66により車速Vが所定値以上であることすなわち車輪の転がり始めが検出されたか否かが判断される。このS3の判断が否定される場合には、S2の処理が継続的に実行されるが、S3の判断が肯定される場合には、S4において、プリチャージ制御の実行時間TすなわちS1にてプリチャージ制御の開始が判断されてからS3にてフレックススタート制御の開始が判断されるまでの時間が、予め定められた所定の閾値Tb以上であるか否かが判断される。このS4の判断が肯定される場合には、前記第1制御手段174の動作に対応するS5において、第1のフレックススタート制御が実行される。すなわち、予め定められた図6に示すような関係から、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて、制御開始直後において前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示されるサージ圧を変更した上でのフレックススタート制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。一方、S4の判断が否定される場合には、前記第2制御手段176の動作に対応するS6において、第2のフレックススタート制御が実行される。すなわち、前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの出力圧PSLUを増加させることなくプリチャージ制御が続行された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S5及びS6が前記フレックススタート制御手段172の動作に対応する。
このように、本実施例によれば、前記フレックススタート制御の開始に際して前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに所定の指示圧を指示した状態で待機させるプリチャージ制御を実行した後、予め設定されたフレックススタート制御開始条件が成立するまでのそのプリチャージ制御の実行時間Tに応じて第1のフレックススタート制御及び第2のフレックススタート制御の何れかを選択的に実行するものであることから、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じてそれぞれ態様の異なるフレックススタート制御を選択的に実行することで、前記ロックアップクラッチ32の差圧応答性を適宜十分に向上させることができ、燃費を可及的に向上させることができる。すなわち、車両発進時のフレックススタート制御に関して応答性及び燃費の向上を実現する車両用ロックアップクラッチの制御装置を提供することができる。
また、前記第1のフレックススタート制御は、予め定められた関係から、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて、制御開始直後において前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示されるサージ圧Sを変更するものであるため、プリチャージ制御の開始直後に必要十分なサージ圧Sを前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示することで、前記ロックアップクラッチ32の差圧応答性を可及的に高めることができる。
また、前記関係は、前記プリチャージ制御の実行時間Tが長いほど前記サージ圧Sを小さくするように定められたものであるため、プリチャージ制御の開始直後に必要十分なサージ圧Sを前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUに指示することで、前記ロックアップクラッチ32の差圧応答性を可及的に高めることができる。
また、前記第2のフレックススタート制御は、前記プリチャージ制御の実行時間Tが予め定められた閾値未満Tbである場合に前記切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSWはオンとする一方で前記スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの指示圧を保持する第2のフレックススタート制御を実行するものであるため、プリチャージ制御が十分な時間実行されなかった場合には前記ロックアップクラッチ32の差圧ΔPを増加させずに第2のフレックススタート制御を維持することで、発進時のドライバビリティ低下を好適に抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に備えられたトルクコンバータ30におけるロックアップクラッチ32の制御に本発明が適用された例を説明したが、例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両等、他の形式の車両にも本発明は好適に適用されるものである。
また、前述の実施例において、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて前記フレックススタート制御開始直後のサージ圧Sを定めるための関係は、図6に示すようにその実行時間Tとサージ圧Sとが比例関係となるように定められたものであったが、これはあくまで本発明の制御に用いられる関係の一例に過ぎず、例えば、前記プリチャージ制御の実行時間Tに応じて前記フレックススタート制御開始直後のサージ圧Sが段階的に(すなわち所定の時間区分毎に一定の値となるように)定められるものであってもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施され得るものである。