JP2011106012A - 高強度鋼と高強度圧延鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記課題を解決するために、高強度鋼は、C、Si、Mn、P、S、Al及びNを含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる引張強度(TS)が500MPa以上で、Nの含有量が0.0040〜0.0300wt%ある高強度鋼であって、V−ノッチシャルピー衝撃試験におけるセパレーション指数(SI値)が0.10以下であること、その延性−脆性遷移温度が−50℃以下であることを特徴とし、前記高強度鋼において、化学成分組成が、質量%で、
C:0.10〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.60〜1.60%、
P:0.025%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.010〜0.060%
N:0.0040〜0.0300%
で、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
また、鋼材を圧延して得られた圧延鋼板であって、発明1から3のいずれかの高強度鋼と同様な構成を有することを特徴とすることとした。
【選択図】なし
Description
Ti添加の目的はHAZの衝撃特性を上げるためにTiと材料中のNとでTiNの析出物をつくり、材料中の固溶状態のNを極力下げることであった。しかし、その効果は反対に、Tiを含有させることにより、Ti(N,C)析出物が粗大化して、Ti析出粒子によるフェライト結晶粒微細化に効果がなくなってしまいTiのコストが追加されたことによる材料コストがアップするのみの弊害となってしまった。
本特許文献の目的は主に船舶、橋梁、建築、建設機械などの鋼構造物に使用される、C、Si、Mn、P、S、Al及びNを含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる引張強度(TS)が500MPa以上で、Nの含有量が0.0040〜0.0300wt%ある高価な添加元素を加えないで高強度鋼を提供するものである。これに対し、特許文献6の目的は冷間鍛造および曲げ疲労強度に優れた軟窒化鋼に関するものであり、本特許とは全く異なるものである。
発明2は、発明1の高強度鋼において、その延性−脆性遷移温度が−50℃以下であることを特徴とする。
C:0.10〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.60〜1.60%、
P:0.025%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.010〜0.060%
N:0.0040〜0.0300%
で、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
発明4は、鋼材を圧延して得られた圧延鋼板であって、発明1から3のいずれかの高強度鋼と同様な構成を有することを特徴とする。
また、その製造に際しても、特殊な設備や介在物を必要とせず、従来ある設備、手法を組み合わせることで実現し得た点にも実用上の利点を有するものである。
近年の鋼材の再利用率の増加の一環として、リサイクル鉄を主原料とした電気炉溶製鋼が注目されているが、電気炉溶解過程においては窒素ガスを吸収し、高窒素含有溶鋼となるが、転炉で溶製された溶鋼では有りえない程度の高含有窒素溶鋼に対して、脱窒を目的とする脱ガス精錬処理を施す必要がなく、しかも高含有窒素量による鋼材特性の劣化阻止のための高価な希少合金元素を添加する必要もなく、従って目的とする鋼の素材を低コストで製造することができる。
また圧延鋼板では、低温大歪加工を回避することにより圧延設備への大規模な投資が不要となる圧延方法により、特に溶接構造を主体とする船舶で使用される場合に必要とされる重要な鋼材特性の内、特にシャルピー衝撃特性の異方性の原因となる鋼板の圧延面に平行なセパレーションが発生しにくい高強度鋼板を得ることができた。
<電気炉での溶解・精錬工程からスラブの調製工程まで>
先ず、溶鋼の溶製方法として、電気炉を用い、主原料としてリサイクル鉄を用いて溶解・精錬を行ない、レードル下化学成分組成(質量%表記)が下記範囲内の溶鋼を溶製する。
C:0.10〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.60〜1.60%、
P:0.025%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.010〜0.060%
N:0.0040〜0.030%
であって、残部がFeおよび不可避不純物からなるように成分調整する。
窒素含有量の増加量は溶解条件等の諸条件により異なるが、0.01〜0.02質量%程度である。
高強度厚鋼板においては、窒素含有量の増加により、衝撃特性が低下するが、本発明においては、精錬工程における脱窒素のための脱ガス精錬を施さず、しかもNb、V、Zr等の高価な希少合金元素を添加しないこととする。このように、脱窒精錬を行なわない理由は、本発明の鋼板の製造方法を実施すれば、平均フェライト粒径6μm以下の等軸微細粒組織が得られ、強度特性として、引張強さTSが500MPa超えである高張力厚鋼板が得られ、しかも残留マルテンサイトを消去できるので、シャルピー衝撃特性の異方性の指標であるセパレーション指数SI値が、0.10以下の厚鋼板が得られるからである。なお、上部棚エネルギーは120J/cm2以上となり、衝撃吸収エネルギーの水準について問題はない。なお、上記において等軸とは、結晶粒のアスペクト比が3.0以下と定義する。
この第1の目的は900〜1050℃の範囲内で圧延を行なうことにより、十分なγ相を得ることにより、粗大な鋳造組織を残存させない状態にすること、およびその後の冷却によるγ/α相変態におよりできるだけ微細なα粒を得ることにある。
上記スラブを加熱し、900〜1050℃の範囲内で次の第1段階の圧延を行なう。即ち、1パス当たりの圧下率が10〜50%の範囲内の1パス圧延を行なうか、又は1パス当たりの圧下率が10〜50%の範囲内であってパス間時間が30秒以内で累積圧下率が70%以下の複数パス圧延を行なう。
なお、1パス圧延又は複数パス圧延のいずれを行なっても良く、上記条件を満たす限り、パス数を限定しないが、最終製品の厚鋼板の形状・寸法を考慮して行なうべきである。この圧延を行なった後、3℃/秒以上の冷却速度でAr1変態点以下の温度まで冷却して熱間圧延材料を調製する。
上記のスラブ加熱から圧延及び冷却までの工程を、「第1圧延工程」と呼ぶことにする。例えば表2の記載項目の第1圧延工程欄を参照のこと。
この第1圧延後は、鋼板は通常の平均粒径20μmレベルのTS400MPaレベルの物性を有する板厚40mmレベルの鋼板状態になっている。
前記スラブを、900〜1050℃の範囲内で圧延する理由は、十分なγ相を得ることにより、粗大な鋳造組織を残存させないためである。圧延温度を1050℃以下とするのは、スラブの加熱過程においてγ相粒径が粒成長によって粗大化するのを防ぐためである。
第1圧延工程の圧延を複数パス圧延とする場合が生ずるのは、鋼塊又は鋳片の寸法・形状、最終の厚鋼板の寸法・形状、並びに粗圧延及び厚鋼板圧延設備仕様等を基準とした適切な操業条件の設定による。この場合には、パス間時間を30秒以内とする理由は、1回の圧下でγ相に蓄えられた歪が回復するのを防ぎ、α相核生成サイトを十分確保して、細粒化を促進するために適切だからである。そして、複数パス圧延における累積圧下率を70%以下とする理由は、第2段階の圧延における累積圧下率を後述するように60%以上確保することとしているので、そのために第1段階の圧延で行なう比較的低温圧延での圧下率はその上限を規定することにより圧延設備に無理な負荷をかけずに行なうことができ、望ましいので、このことにより当該累積圧下率の上限は70%とするのが適切だからである。
なお、本発明において厚鋼板の板厚は特に規定しないが、現状の鋼塊又は鋳片の寸法・形状及び加熱・圧延設備等の仕様、並びに第1圧延工程及び下記する第2圧延工程の圧延における各圧下率の規定を考慮して、5〜150mmが適切な範囲となる。
上記第1圧延工程の最終段階で、3℃/秒以上の冷却速度でAr1変態点以下の温度まで冷却するが、その際冷却速度を3℃/秒以上とする理由は、圧下後の鋼の組織が粒成長によって粗大化するのを防ぐためである。一方、冷却速度を50℃/秒以下とする理由は、板厚が比較的薄い場合に、板厚全体の熱履歴が厚鋼板の部位により極端な差異が発生するのを防ぐためである。
この第2圧延の目的はγ+α2相域で強圧下することによりできるだけ微細なフェライト組織を得、500MPa超程度の高強度を有する組織を確保することにある。
上記第1圧延工程で得られた熱間圧延材料を、0.5℃/秒以上の加熱速度で加熱し、Ac1変態点以上から{Ac1変態点+0.5(Ac3変態点−Ac1変態点)}以下の温度範囲内で、1パス当たりの圧下率が35%以上であって、パス間時間が20秒以内である複数パス圧延を行なう。この複数パス圧延における累積圧下率は、60%以上となるようにする。この圧延は、0.1〜200/秒の歪速度で行なう。
上記の熱間圧延材料の加熱から前記圧延を終了するまでの工程までを、「第2圧延工程」と呼ぶことにする。例えば表2の記載項目の第2圧延工程欄を参照のこと。
この第2圧延後の鋼板の物性は強度としてTS>500MPaであるが、γ+α2相域圧延のため、集合組織が発達して、Charpy衝撃特性としては板表面に平行なクラックが進展する場合、靭性に劣る組織をもっているのが特徴である。また、厚さは15mm程度である。
加熱速度を0.5℃/秒以上とする理由は、α相が粒成長することにより粗大化するのを防ぐためである。これに対して加熱速度の上限については、α相の粒成長を阻止する観点からこれを規定しない。なお、現状の加熱設備の能力等から、50℃/秒をその上限の目安とすればよい。
第2圧延工程の圧延直後に、外部加熱手段により所定の加熱速度で所定の温度範囲内まで再加熱し、所定時間保持する。
当該再加熱及び保持過程と、前述した第2圧延工程の圧延でのα+γの2相域圧延とによって、γ相によるα相への加工歪導入の促進、及びα相の再結晶とγ相の逆変態による析出との競合によって、相互のピン止め効果による粒成長の抑制を活用することにより、等軸微細粒組織を有する鋼材、ここでは鋼板を得ることができるからである。特に、その圧延によって粒形状が扁平化すると同時にα相に歪が導入され、その後に再加熱することによりα相の再結晶や、γ相の析出によって扁平な粒形状が等軸化する。
前記再加熱における加熱速度は0.5℃/秒以上とすることにより、α相やγ相が粒成長により粗大化するのを防いだ。その保持温度を(Ac1変態点+0.8(Ac3変態点−Ac1変態点))以下とすることにより、γ相が支配的になり、γ相が粒成長により粗大化するのを防いだ。なお、製造工程における生産効率の向上のために、再加熱・保持温度は800〜850℃の範囲内が一層望ましい。
再加熱して保持時間を90秒以内とするが、その理由はγ相が粒成長により粗大化するのを防ぐためである。一方、再加熱・保持時間は5秒以上とするが、その理由はこの再加熱の保持効果を確保するためである。
上記再加熱・保持が完了したら、γ相が粒成長により粗大化するのを防止するために、できるだけ速やかに次の冷却処理にはいるのが望ましい。再加熱の完了と次の冷却開始までの時間は、90秒以下、好ましくは30秒以下とするのが望ましい。
そして、冷却処理の終了時点での温度を500℃以下にする理由は、終了時点での温度が高すぎると、旧γ粒からのα変態が未完了となり、旧γ粒が残存するのを避けるためである。なお、冷却温度は、200℃以上であることが望ましい。それ以下の温度まで急冷すると、完全なフェライト−パーライト組織とすることが困難となるからである。そして、その後は常温まで空冷すればよい。
上記で得られた鋼板に、480〜520℃範囲内の温度における焼戻し処理を施す。
(焼戻し処理について)
焼戻し処理を施す理由は、わずかに残留する恐れのあるマルテンサイトを消去するためであり、これによりシャルピー衝撃試験におけるセパレーション指数SI値を更に一層低減させるためである。
即ち、衝撃特性の異方性が改善される(セパレーション指数SI値が低減する)という極めて重要な効果が得られるからである。その際、処理温度を480℃以上とする理由は、比較的高温域でのFe原子の拡散により結晶粒の歪を駆動力とした結晶回転により等軸性を助長させ得るからであり、これによりセパレーション指数SI値が低下する。また、もうひとつの理由としては、これ未満の温度では不純物元素であるリン(P)が微量でも材料中に存在していた場合、焼戻し処理中に旧オーステナイト粒界にPが偏析し、低温における粒界割れを助長する可能性があるため、これを避ける意味も含まれる。
一方、処理温度を520℃以下とする理由は、これを超える温度では粒成長による結晶粒の粗大化により、十分な強度を確保することが困難となるからである。
本発明においては、電気炉により溶製した溶鋼のレードル下の化学成分組成を、前述した通りに規定している。溶鋼を鋼塊又は鋳片に鋳造した後、これらを通常の分塊圧延法又は鋳片圧延法によりスラブ形状に圧延した場合、少なくとも当該スラブの本発明において規定している化学成分組成は当該圧延過程において変化することはないので、レードル下の化学成分組成と同一であるとみなすことができる。更に、本発明による厚鋼板の製造過程においても、当該化学成分組成が変化することはない。従って、レードル下の化学成分組成を所望の範囲内に調整しておけば、最終の厚鋼板の化学成分組成もそれと同一になるとみなすことができる。よって、厚鋼板の製造工程のどの段階においても、鋼の化学成分組成による圧延特性及び材質特性に及ぼす影響は、レードル下の化学成分組成、すなわちスラブの化学成分組成により支配される。
本発明において、スラブの化学成分組成は、質量%で下記であることが必要である。
C:0.10〜0.20%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.60〜1.60%、
P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.010〜0.060%、
N:0.0040〜0.030%であって、残部がFeおよび不可避不純物である。
(1)C含有量を0.10質量%以上とするのは、用途が船舶構造用厚鋼板であることを考慮し、鋼の強度を500MPa確保するためである。C含有量を0.20質量%以下とするのは、溶接性能低下を防止するためである。
(2)Si含有量を0.10質量%以上とするのは、脱酸元素として、また鋼の強化元素としての性能を確保するためである。Si含有量を0.50質量%以下とするのは、鋼の表面性状を損なって、溶接性能が低下するのを防止するためであり、また靭性の低下を防止するためでもある。
(3)Mn含有量を0.60質量%以上とするのは、鋼の焼入性を増大させることで強度を高めると同時に、靭性の向上にも寄与する性能を確保するためである。Mn含有量を1.60質量%以下とするのは、溶接性及び加工性の劣化を防ぐためである。
(4)Al含有量を0.010質量%以上とするのは、脱酸元素としての性能を確保するためである。Al含有量を0.060質量%以下とするのは、鋼の溶接性が劣化するのを防ぐためである。
(5)P含有量及びS含有量は、いずれも鋼の延性及び靭性を劣化させるものであり、低いことが望ましいが、過度に低減させることはコスト上望ましくない。そこで、両方のバランスを考慮して、P含有量は0.025質量%以下、S含有量は0.015質量%以下とする。
上述した製造条件により得られる厚鋼板の材質特性の内、(a)任意温度でのV−ノッチシャルピー衝撃試験におけるセパレーション指数(SI値)が0.10以下であって、(b)引張強さ(TS)が500MPa以上で、しかも(c)延性−脆性遷移温度が−50℃以下である材質特性を具備するように当該厚鋼板の製造条件を調整する方法は、前記スラブの化学成分組成を上述した化学成分組成の内、C含有量を0.15〜0.16質量%、Si含有量を0.19〜0.25質量%、Mn含有量を0.95〜1.10質量%、そしてN含有量を0.0040〜0.0150質量%の範囲内に調整した上で、前述した<第1圧延工程>、<第2圧延工程>、<第2圧延工程直後の再加熱・保持、及び冷却>、及び<焼戻し処理>の各項に規定した条件の範囲内において、実際の製造設備を用いて試験を行なうことにより、当該(a)〜(c)の材質特性が具備される製造条件を選定することである。
上述した第1発明の製造条件の実施形態の範囲内において、製造対象とする厚鋼板の材質特性が、任意温度でのV−ノッチシャルピー衝撃試験におけるセパレーション指数(SI値)が0.10以下であって、引張強さ(TS)が500MPa以上で且つシャルピー衝撃試験の延性−脆性遷移温度が−50℃以下となるように、当該製造条件を調整することが一層望ましい。上記材質特性が得られるように製造条件を調整するには、使用する設備・工程に応じて、上述した第1発明の製造条件の実施形態の範囲内において、種々の製造条件の組み合わせにより予め試験することにより、所望の材質特性が得られる条件を設定しておけばよい。
セパレーションとは、衝撃荷重により厚鋼板の圧延面に平行な断面内に発生する剥離状形態の破壊をいう。厚鋼板に対する衝撃荷重の鋼板の圧延方向(=L方向)成分及び幅方向(=C方向)成分によるセパレーションは発生しにくいが、板厚方向(Z方向)成分の衝撃荷重により発生し易い。造船用の厚鋼板は多数方向の溶接接合により船舶を構成するので、船舶建造後の航海等においては無数の部位において板厚方向(Z方向)成分の衝撃荷重を受ける。そのため、常にセパレーション発生環境に曝されることになり、耐Z方向衝撃特性は船舶の強度確保上、極めて重要である。
このセパレーションが発生する厚鋼板においては、Z方向衝撃に対する吸収エネルギーを高水準に確保することは通常困難である。本発明における船舶を構成する造船用厚鋼板においては、Z方向衝撃に対する吸収エネルギーを高水準に確保することが極めて重要である。セパレーション指数(SI値)は試験温度によって変化するが、船舶に使用される状態を考慮すると、厚鋼板セパレーション指数(SI値)の最大値が小さいことが重要である。また、セパレーション指数(SI値)が0.10以下であると、衝撃荷重の板厚方向(=Z方向)成分により発生するセパレーションの抑制に対して極めて効果的である。よって、セパレーション指数(SI値)を望ましくは0.10以下と規定する。
船舶構造用厚鋼板向けであって、高張力鋼が必要であることを考慮して、引張強さ(TS)を500MPa以上とする。
延性−脆性遷移温度が−50℃以下
船舶構造用厚鋼板向けであるから、極寒での使用条件を考慮して、延性−脆性遷移温度は望ましくは−50℃以下とする。
成分符号A又はBの上記50mm厚さ×60mm幅×長さ300mmの試験材を、ロール直径400mm、最大荷重300t、最大速度30m/分の圧延機性能の実験用圧延設備により、実施例1〜5及び比較例1〜7につき表2に示す条件で圧延した。
また、各工程における諸条件は表2から表4に示した通りである。
第1圧延工程では、950℃において1パス当たりの圧下率(板厚減少率)が20%の圧延を行ない、板厚を40mmとした後、30℃/秒で500℃まで冷却した。次いで第2圧延工程では、5℃/秒で加熱し750℃において第1パスを圧下率38%(板厚は40mmから25mmに減厚)、第2パスを圧下率40%(板厚は24mmから15mmに減厚)、パス間時間が10秒で、累積圧下率62.5%の圧下を歪速度1〜2/秒で行なって板厚を15mmとし、次いで直ちに再加熱工程として、加熱炉に装入して5℃/秒で800℃、825℃又は850℃まで再加熱して10秒間保持した後、冷却工程として30℃/秒で200℃まで冷却し、次いで常温まで空冷した。そして、最後に500℃で焼戻し処理を行なって完了した。表2からわかるように、実施例1〜5間での試験条件の相違点は、化学成分組成及び再加熱工程における加熱温度の内、少なくとも一方が相違していることである。
(1)シャルピー衝撃試験:2mmV−ノッチ、C方向試験片により、25℃、0℃、−40℃、−80℃、−120℃、−196℃で試験した。特性値として、セパレーション指数SI値(1/mm)、0℃における吸収エネルギー(J/cm2)、延性−脆性破面遷移温度(℃)を求めた。
(2)引張試験:C方向試験片により、下降伏強さLYS(MPa)、引張強さTS(MPa)、全伸びTEl(%)、均一伸びUEl(%)を求めた。
(3)ビッカース硬さ試験:平均ビッカース硬さHV(N/mm2)を求めた。
(4)ミクロ組織観察:SEM像による板厚の中心部、1/4部及び表面近傍の平均結晶粒径(μm)を切片法で求め、また結晶粒形状を観察した。
表5,6に、各実施例及び各比較例において得られた特性試験結果を示す。
本発明でのセパレーション指数SIの望ましい目標値は0.10以下である。焼戻し処理をすることによる、セパレーション指数SIが低減して、シャルピー衝撃特性の異方性が改善している。その改善状況は下記の通りである。
比較例3では0.16であるのに対して、実施例1では0.08に改善している。
比較例4では0.18であるのに対して、実施例2では0.00に改善している。
比較例5では0.21であるのに対して、実施例3では0.08に改善している。
比較例7では0.17であるのに対して、実施例5では0.06に改善している。
Claims (4)
- C、Si、Mn、P、S、Al及びNを含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる引張強度(TS)が500MPa以上で、Nの含有量が0.0040〜0.0300wt%ある高強度鋼であって、V−ノッチシャルピー衝撃試験におけるセパレーション指数(SI値)が0.10以下であることを特徴とする高強度鋼。
- 請求項1に記載の高強度鋼において、その延性−脆性遷移温度が−50℃以下であることを特徴とする高強度鋼。
- 請求項1又は2に記載の高強度鋼において、化学成分組成が、質量%で、
C:0.10〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.60〜1.60%、
P:0.025%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.010〜0.060%
N:0.0040〜0.0300%
で、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする高強度鋼。 - 鋼材を圧延して得られた圧延鋼板であって、請求項1から3のいずれかに記載の高強度鋼と同様な構成を有することを特徴とする圧延鋼板。
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