JP2011101574A - ワイヤレス給電装置およびワイヤレス電力伝送システム - Google Patents

ワイヤレス給電装置およびワイヤレス電力伝送システム Download PDF

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Abstract

【課題】磁場共振型のワイヤレス給電において、駆動周波数と共振周波数の乖離を適切に検出する。
【解決手段】給電コイルLから受電コイルLには磁気共振により電力が伝送される。VCO202は、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQを交互にオン・オフさせることにより、給電コイルLに交流電力を供給し、給電コイルLから受電コイルLに交流電力が供給される。給電コイルLを流れる交流電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。位相検出回路150は、VCO202が発生させる交流電圧の位相と、誘導電流ISSの位相を比較することにより、電圧位相と電流位相の位相差を検出し、その大きさを示す位相差指示電圧を生成する。リセット回路102は、位相差指示電圧が所定の閾値よりも大きくなったとき、位相差指示電圧を強制的に低下させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤレスにて電力を送るためのワイヤレス給電装置、および、ワイヤレス電力伝送システムに関する。
電源コードなしで電力を供給するワイヤレス給電技術が注目されつつある。現在のワイヤレス給電技術は、(A)電磁誘導を利用するタイプ(近距離用)、(B)電波を利用するタイプ(遠距離用)、(C)磁場の共振現象を利用するタイプ(中距離用)の3種類に大別できる。
電磁誘導を利用するタイプ(A)は、電動シェーバーなどの身近な家電製品において一般的に利用されているが、距離を大きくすると電力伝送効率が急激に低下してしまうため数cm程度の近距離でしか使えないという課題がある。電波を利用するタイプ(B)は、遠距離で使えるが電力が小さいという課題がある。共振現象を利用するタイプ(C)は、比較的新しい技術であり、数m程度の中距離でも高い電力伝送効率を実現できることから特に期待されている。たとえば、EV(Electric Vehicle)の車両下部に受電コイルを埋め込み、地中の給電コイルから非接触にて電力を送り込むという案も検討されている。ワイヤレスであるため完全に絶縁されたシステム構成が可能であり、特に、雨天時の給電に効果的であると考えられる。以下、タイプ(C)を「磁場共振型」とよぶ。
磁場共振型は、マサチューセッツ工科大学が2006年に発表した理論をベースとしている(特許文献1参照)。特許文献1では、4つのコイルを用意している。これらのコイルを給電側から順に「エキサイトコイル」、「給電コイル」、「受電コイル」、「ロードコイル」とよぶことにする。エキサイトコイルと給電コイルは近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。同様に、受電コイルとロードコイルも近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。これらの距離に比べると、給電コイルから受電コイルまでの距離は「中距離」であり、比較的大きい。このシステムの目的は、給電コイルから受電コイルにワイヤレス給電することである。
エキサイトコイルに交流電力を供給すると、電磁誘導の原理により給電コイルにも電流が流れる。給電コイルが磁場を発生させ、給電コイルと受電コイルが磁気的に共振すると、受電コイルには大きな電流が流れる。電磁誘導の原理によりロードコイルにも電流が流れ、ロードコイルと直列接続される負荷から交流電力が取り出される。磁場共振現象を利用することにより、給電コイルから受電コイルの距離が大きくても高い電力伝送効率を実現できる。
米国公開2008/0278264号公報 特開2006−230032号公報 国際公開2006/022365号公報 米国公開2009/0072629号公報
磁場共振現象を発生させるためには、エキサイトコイルや給電コイルに交流電力を供給する際、交流電源の駆動周波数を共振周波数に一致させる必要がある。本発明者は、電圧波形と電流波形を比較し、その位相差に基づいて駆動周波数を共振周波数に追随させる方法に想到した。しかし、これらの波形が外的要因によって一時的に歪んだとき、駆動周波数が極端な値に設定変更されてしまい、しかも、それが持続する可能性があることが認識された。
本発明は、本発明者の上記課題認識に基づいて完成された発明であり、磁場共振型のワイヤレス給電において、駆動周波数を共振周波数に適切に追随させることを主たる目的とする。
本発明に係るワイヤレス給電装置は、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから受電コイルにワイヤレス送電するための装置である。この装置は、送電制御回路と、給電コイルと、給電コイルと磁気結合し、送電制御回路から供給される交流電力を給電コイルに供給するエキサイトコイルと、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出し、その大きさに応じて位相差指示電圧を生成する位相検出回路と、位相差指示電圧が供給される電圧ラインに接続され、位相差指示電圧を低下させるためのリセット回路と、を備える。送電制御回路は、第1および第2の電流経路を含み、第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより、エキサイトコイルに交流電力を供給する。位相検出回路から出力される位相差指示電圧は送電制御回路に入力され、送電制御回路は、位相差が減少するように駆動周波数を調整することにより駆動周波数を共振周波数に追随させる。また、リセット回路は、位相差指示電圧が所定の閾値以上となったとき、位相差指示電圧を低下させる。
本発明に係るワイヤレス給電装置は、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置である。この装置は、給電コイルに駆動周波数にて交流電力を供給する送電制御回路と、給電コイルおよびキャパシタを含み共振周波数にて共振する給電コイル回路と、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出し、その大きさに応じて位相差指示電圧を生成する位相検出回路と、位相差指示電圧が供給される電圧ラインに接続され位相差指示電圧を低下させるためのリセット回路を備える。送電制御回路は、第1および第2の電流経路を含み、第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを駆動周波数にて交互に導通させることにより、給電コイルに前記交流電力を供給する。位相検出回路から出力される位相差指示電圧は送電制御回路に入力される。送電制御回路は、位相差指示電圧にしたがって、位相差が減少するように駆動周波数を調整することにより駆動周波数を共振周波数に追随させる。リセット回路は、位相差指示電圧が所定の閾値以上となったとき、位相差指示電圧を低下させる。
送電制御回路の駆動周波数を共振周波数と一致させれば、システム全体としての電力伝送効率が高くなる。交流電力の電流位相と電圧位相を比較することにより位相差を検出し、その位相差が減少するように駆動周波数を調整すれば、共振周波数に駆動周波数を追随させることができる。この結果、電力伝送効率を高い状態に維持しやすくなる。
位相差は位相差指示電圧により指標化される。リセット回路は位相差指示電圧を強制的に低下させることができるため、位相差指示電圧が外的要因により大きな値にロックされても自動的にこれを解除できる。この結果、システムの動作安定性が高くなる。送電制御回路は、位相差指示電圧が大きいほど駆動周波数を高く設定してもよい。この場合には、駆動周波数が共振周波数よりも格段に大きい値に固定される事態が発生しても、リセット回路によりこれを自動的に解除しやすくなる。
位相検出回路から送電制御回路に至る電圧ラインには迂回経路が接続されてもよい。リセット回路は、迂回経路に間挿されるスイッチを導通させることにより、位相差指示電圧を低下させてもよい。位相検出回路の出力端にローパスフィルタを接続してもよい。ローパスフィルタは抵抗器とキャパシタを直列接続した回路であってもよい。そして、抵抗器とキャパシタの中点から引き出される電圧ラインにリセット回路を接続してもよい。
この装置は、交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる検出コイルを更に備えてもよい。位相検出回路は、検出コイルに流れる誘導電流の位相を計測することにより、交流電力の電流位相を計測してもよい。
交流電力が発生させる磁界により検出コイルに誘導電流を発生させ、その誘導電流から電流位相を計測するため、給電コイルに直接的な計測負荷がかからない。このため、給電コイルの共振特性への影響を抑制しつつ、電圧位相と電流位相の位相差(ずれ)を検出して共振状態が保たれているかを監視できる。検出コイルは、給電コイルを流れる交流電流が発生させる磁界により誘導電流を発生させてもよい。
本発明におけるワイヤレス電力伝送システムは、上述したワイヤレス給電装置と、受電コイルと、受電コイルと磁気結合して、受電コイルが給電コイルから受電した電力を供給されるロードコイルを備える。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、磁場共振型のワイヤレス給電技術において、駆動周波数を共振周波数にいっそう確実に追随させやすくなる。
第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。 駆動周波数と共振周波数が一致するときの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。 駆動周波数が共振周波数よりも小さい場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。 位相差指示電圧と駆動周波数の関係を示すグラフである。 給電コイルと受電コイルのコイル間距離と共振周波数の関係を示すグラフである。 出力電力効率と駆動周波数の関係を示すグラフである。 一時的な乱調が発生した場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。 リセット回路の回路図である。 第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図の変形例である。 第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。 第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図の変形例である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。まず、第1実施形態としてハーフブリッジ型について説明する。次に、第2実施形態としてプッシュプル型について説明する。各実施形態を特に区別しないときには単に「本実施形態」とよぶ。
[第1実施形態:ハーフブリッジ型]
図1は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置116は、基本構成として、送電制御回路200、エキサイト回路110および給電コイル回路120を含む。ワイヤレス受電装置118は、受電コイル回路130とロード回路140を含む。
給電コイル回路120が有する給電コイルLと、受電コイル回路130が有する受電コイルLの間には数m程度の距離がある。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電コイルLから受電コイルLにワイヤレスにて交流電力を送ることである。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、100kHz以下の共振周波数fにて動作させることを想定したシステムである。本実施形態においては共振周波数f=44kHzであるとして説明する。なお、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、たとえば、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯のような高周波数帯にて動作させることも可能である。
エキサイト回路110は、エキサイトコイルLとトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLは、トランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。エキサイトコイルLの巻き数は1回、コイル導体断面形状は0.6mm×6.0mmの長方形、エキサイトコイルL自体の形状は210mm×210mmの正方形である。図1では、わかりやすさのため、エキサイトコイルLを円形に描いている。他のコイルについても同様である。図1に示す各コイルの材質はいずれも銅である。エキサイト回路110を流れる電流Iは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
給電コイル回路120は、給電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。エキサイトコイルLと給電コイルLは互いに向かい合っている。エキサイトコイルLと給電コイルLの距離は10mm以下と比較的近い。このため、エキサイトコイルLと給電コイルLは電磁気的に強く結合している。給電コイルLの巻き数は7回、コイル導体断面形状は0.6mm×6.0mmの長方形、給電コイルL自体の形状は280mm×280mmの正方形である。エキサイトコイルLに交流電流Iを流すと、電磁誘導の原理により給電コイルLに起電力が発生し、給電コイル回路120には交流電流Iが流れる。交流電流Iは交流電流Iよりも格段に大きい。給電コイルLとキャパシタCそれぞれの値は、給電コイル回路120の共振周波数fが44kHzとなるように設定される。
受電コイル回路130は、受電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。給電コイルLと受電コイルLは互いに向かい合っている。給電コイルLと受電コイルLの距離は、0.2m〜1m程度と比較的長い。受電コイルLの巻き数は7回、コイル導体断面形状は0.6×6.0mmの長方形、受電コイルL自体の形状は280mm×280mmの正方形である。受電コイル回路130の共振周波数fも44kHzとなるように、受電コイルLとキャパシタCそれぞれの値が設定されている。したがって、給電コイルLと受電コイルLは同一形状である必要はない。給電コイルLが共振周波数fにて磁界を発生させると、給電コイルLと受電コイルLは磁気的に共振し、受電コイル回路130にも大きな電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。
ロード回路140は、ロードコイルLと負荷LDが直列接続された回路である。受電コイルLとロードコイルLは互いに向かい合っている。受電コイルLとロードコイルLの距離は10mm以下と比較的近い。このため、受電コイルLとロードコイルLは電磁的に強く結合している。ロードコイルLの巻き数は1回、コイル導体断面形状は0.6×6.0mmの長方形、ロードコイルL自体の形状は300mm×300mmである。受電コイルLに電流Iが流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140に電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。すなわち、電流Iは、電流Iと同相である。こうして、ワイヤレス給電装置116の給電コイルLから送電された交流電力は、ワイヤレス受電装置118の受電コイルLにより受電され、負荷LDから取り出される。
負荷LDを受電コイル回路130に直列接続すると、受電コイル回路130のQ値が悪くなる。このため、受電用の受電コイル回路130と電力取り出し用のロード回路140を分離している。また、電力伝送効率を高めるためには、給電コイルL、受電コイルLおよびロードコイルLの中心線を揃えることが好ましい。
次に、送電制御回路200の構成を説明する。まず、ゲート駆動用トランスT1の一次側にVCO(Voltage Controlled Oscillator)202が接続される。VCO202は、駆動周波数fの交流電圧Vを発生させる「オシレータ」として機能する。交流電圧Vの波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波であるとして説明する。交流電圧Vにより、トランスT1一次コイルLには正負両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLとトランスT1二次コイルL、トランスT1二次コイルLはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLとトランスT1二次コイルLにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
本実施形態におけるVCO202は、モトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニットを利用している。VCO202は、位相検出回路150から出力される位相差指示電圧Vt1〜Vt3に基づいて駆動周波数fを動的に変化させる機能も備える。詳細は後述するが、VCO202は、「駆動周波数追随回路」としても機能する。
VCO202の第11ピンと第12ピンはそれぞれ抵抗Rと抵抗Rを介してグランド設置される。また、第6ピンと第7ピンはキャパシタCを介して接続される。抵抗R、抵抗R、キャパシタCの設定値により、駆動周波数fの変更可能範囲を調整できる。本実施形態における駆動周波数fは、30〜50kHzの範囲で調整されるものとする。位相差指示電圧Vt3の適正範囲は、1〜4(V)である。位相差指示電圧Vt3が大きいほど駆動周波数fは高くなる。詳細については図4に関連して後述する。
トランスT1二次コイルLの一端は、スイッチングトランジスタQのゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQのソースと接続される。トランスT1二次コイルLの一端は、別のスイッチングトランジスタQのゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQのソースと接続される。VCO202が駆動周波数fにて交流電圧Vを発生させると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQの各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数fにて交互に印加される。このため、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは駆動周波数fにて交互にオン・オフする。スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、バイポーラトランジスタなど他のトランジスタでもよい。トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
スイッチングトランジスタQのドレインは、電源Vdd1の正極に接続される。電源Vdd1の負極は、トランスT2一次コイルLを介してスイッチングトランジスタQのソースに接続される。電源Vdd1の負極の電位は接地電位である。スイッチングトランジスタQのソースは、電源Vdd2の負極に接続される。電源Vdd2の正極は、トランスT2一次コイルLを介して、スイッチングトランジスタQのドレインに接続される。電源Vdd2の正極の電位は接地電位である。
スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2については、同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路」とよぶ)は、電源Vdd1からスイッチングトランジスタQ、トランスT2一次コイルLを経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQは、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路」とよぶ)は、電源Vdd2からトランスT2一次コイルL、スイッチングトランジスタQを経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQは、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
送電制御回路200においてトランスT2一次コイルLを流れる電流を「電流I」とよぶ。電流Iは交流電流であり、第1電流経路を流れるときを正方向、第2電流経路を流れるときを負方向とよぶ。
VCO202が共振周波数fと等しい駆動周波数fにて交流電圧Vを供給すると、第1電流経路と第2電流経路が共振周波数fにて交互に切り替わる。共振周波数fの交流電流IがトランスT2一次コイルLを流れるため、エキサイト回路110にも共振周波数fにて交流電流Iが流れ、更に、給電コイル回路120にも共振周波数fの交流電流Iが流れる。給電コイル回路120の給電コイルLとキャパシタCは共振状態となる。受電コイル回路130も共振周波数fの共振回路であるから、給電コイルLと受電コイルLは磁気的に共振する。このとき、電力伝送効率は最大となる。
共振周波数fは、給電コイル回路120や受電コイル回路130の使用状態や使用環境によって微妙に変化する。また、給電コイルLや受電コイル回路130を交換した場合にも共振周波数fは変化する。あるいは、キャパシタCやキャパシタCの静電容量を可変とすることにより共振周波数fを積極的に変化させたい場合もあるかもしれない。このような場合でも、ワイヤレス電力伝送システム100は、駆動周波数fと共振周波数fを自動的に一致させることができる。
駆動周波数fを共振周波数fに追随させるため、以下の構成を追加する。まず、位相検出回路150を設置する。本実施形態における位相検出回路150は、VCO202と同じくモトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニット(Phase Comparator)を利用している。したがって、位相検出回路150とVCO202は、ワンチップにて実現可能である。位相検出回路150は2つの電圧波形の位相差を検出し、その大きさを示す位相差指示電圧Vt1を生成する。位相検出回路150の2入力の1つは、VCO202が発生させる交流電圧Vである。位相検出回路150は、交流電圧Vの入力により電圧波形を取得する。
なお、トランスT1一次コイルLの両端に抵抗を並列接続し、交流電圧Vを分圧して位相検出回路150の入力としてもよい。分圧により、VCO202の発生させる交流電圧Vが大きい場合でも、扱いやすい電圧に降圧できる。ソース・ドレイン電圧VDS1、VDS2や、ソース・ゲート電圧VGS1、VGS2などから電圧位相を計測してもよい。
給電コイルLの側には、検出コイルLSSが設置される。検出コイルLSSは、貫通孔を有するコア154(トロイダルコア)にN回巻き付けられたコイルである。コア154の材質はフェライト、珪素鋼板、パーマロイ(permalloy)等の既知材料である。本実施形態における検出コイルLSSの巻き数Nは100回である。
給電コイル回路120の電流経路の一部もコア154の貫通孔を貫通している。これは、コア154に対する給電コイル回路120の巻き数Nが1回であることを意味する。このような構成により、検出コイルLSSと給電コイルLは結合トランスを形成する。給電コイルLの交流電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには同相の誘導電流ISSが流れる。等アンペア・ターンの法則により、誘導電流ISSの大きさは、I・(N/N)となる。
検出コイルLSSの両端には抵抗Rが接続される。抵抗Rの一端Bは接地され、他端Aの電位Vq1はコンパレータ142を介して位相検出回路150に接続される。
電位Vq1は、コンパレータ142によって2値化される。詳細については次の図2に関連して後述するが、コンパレータ142は、電位Vq1が所定の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧Vq2=5(V)を出力する増幅器である。このため、電位Vq1がアナログ波形となる場合でも、コンパレータ142によって電位Vq1をデジタル波形の電圧Vq2に変換される。なお、飽和電圧Vq2の負成分は、ダイオード144によりカットしている。交流電圧Vが矩形波でなく、正弦波等のアナログ波形にて交流電圧を発生させる場合にはVCO202から位相検出回路150に至る経路にもコンパレータを間挿すればよい。
位相検出回路150は、電位Vq2の電圧波形(デジタル波形)に基づいて、交流電力の電流位相を計測する。電流Iと誘導電流ISSは同相であり、誘導電流ISSと電位Vq2(電位Vq1)は同相である。送電制御回路200を流れる交流電流Iは電流Iと同相であるから、電位Vq2の電圧波形により電流波形を計測できる。位相検出回路150は、交流電圧Vの電圧波形から電圧位相、電位Vq2の電圧波形から電流位相を取得することにより、電圧位相と電流位相の位相差tを検出する。駆動周波数f=共振周波数fであれば、位相差t=0となる。位相検出回路150は、位相差tに応じて位相差指示電圧Vt1を出力する。
位相検出回路150の出力端には、ローパスフィルタ152が接続される。ローパスフィルタ152は、抵抗RとキャパシタCが直列接続された回路であり、位相差指示電圧Vt1の高周波数成分をカットする。抵抗RとキャパシタCから、高周波成分をカットした後の位相差指示電圧Vt2が取り出される。
通常、位相差指示電圧Vt2はそのままVCO202の入力電圧Vt3となる。VCO202は、位相差指示電圧Vt3に応じて駆動周波数fを変化させることにより、共振周波数fに駆動周波数fを追随させる。より具体的には、VCO202は交流電圧Vのパルス幅を変化させることにより、駆動周波数fを変化させる。
ローパスフィルタ152からVCO202に至る電源ライン104には、リセット回路102が接続され、迂回経路106が形成される。本実施形態におけるリセット回路102は、PUT(Programable Unijunction Transistor)である。リセット回路102は、位相差指示電圧Vt2が所定の閾値を超えるとき、位相差指示電圧Vt2を強制的に低下させる。通常動作時においてはリセット回路102は作用せず、位相差指示電圧Vt2と、VCO202に実際に入力される位相差指示電圧Vt3は同一である。リセット回路102の詳細およびその設置理由については、図7以降に関連して後述する。
図2は、駆動周波数fと共振周波数fが一致するときの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間である。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間であるとする。
スイッチングトランジスタQのゲート・ソース電圧VGS1が所定の閾値Vxを超えたとき、スイッチングトランジスタQは飽和状態となる。したがって、第1期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオン(導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1が流れ始める。いいかえれば、正方向(第1電流経路)に電流Iが流れ始める。給電コイル回路120にも、電流Iと同相の電流Iが流れ始める。
電位Vq1は、電流I(電流I)に同期して変化する。コンパレータ142とダイオード144により、アナログ波形の電位Vq1は、デジタル波形の電圧Vq2に変換される。
第2期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオフ(非導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1は流れなくなる。代わりに、スイッチングトランジスタQがオン(導通)となり、ソース・ドレイン電流IDS2が流れはじめる。すなわち、負方向(第2電流経路)に電流Iが流れ始める。
電位Vq1の電圧波形を観察することにより、電流I(ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2)の電流位相を計測できる。第3期間、第4期間以降は、第1期間、第2期間と同様の波形を繰り返す。
位相検出回路150は、電圧Vの立ち上がりエッジ時刻tと、電圧Vq2の立ち上がりエッジ時刻tを比較し、位相差tを求める。図2の場合は両者が一致しているため、位相差t=0である。すなわち、駆動周波数fは共振周波数fと一致している。このとき、位相検出回路150は位相差指示電圧Vt1を変化させない。
コンパレータ142等により、電位Vq1をデジタル波形に変換(整形)することにより、位相検出回路150は位相差tを検出しやすくなる。もちろん、位相検出回路150は、電位Vと電位Vq1を直接比較して位相差tを検出してもよい。
特許文献2のように、給電コイルLに流れる電流Iを計測対象とすると、給電コイルLに新たな負荷がかかり、共振回路のインピーダンスZが変化するため、Q値が悪化してしまう。共振している給電コイルLの電流経路に位相検出回路150を直接接続するのは、音叉を触りながらその振動を測定するようなものである。ワイヤレス電力伝送システム100では、給電コイルLが発生させる交流磁界を利用して検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させることにより、電流位相を計測している。給電コイル回路120に計測負荷をかけない構成であることから、Q値への影響を抑制しつつ電流位相を計測できる。
なお、給電コイルLに限らず、受電コイルLやロードコイルLなどを一次コイルとして結合トランスを形成し、検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させてもよい。本発明者の実験により、給電コイル回路120を対象として検出コイルLSSを設置したときにもっとも良好に動作することが見いだされた。
図3は、駆動周波数fが共振周波数fよりも小さい場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。駆動周波数fが共振周波数fよりも小さい場合、給電コイル回路120(LC共振回路)のインピーダンスZに容量性リアクタンス成分が現れ、電流Iの電流位相は電圧位相に対して進む。電流Iは時刻tよりも早い時刻tから流れ始める。上述のように、電流Iと電位Vq1は同相であるから、電位Vと電位Vq1の電圧波形を比較すれば、供給電力における電流位相と電圧位相の位相差tを検出できる。
図2に示したように、駆動周波数f=共振周波数fのときには、第1期間の開始タイミングである時刻tから電流Iが流れ始め電位Vq1>0となる。この場合には、位相差t=0である。駆動周波数f<共振周波数fの場合、電流Iは時刻tよりも早い時刻tから流れ始めVq1>0となるため、位相差t=t−t>0となる。駆動周波数fと共振周波数fがずれると、出力電力効率が悪化し、電流Iや電圧Vq1の振幅は共振時に比べて小さくなる。
駆動周波数fが共振周波数fよりも大きい場合には、給電コイル回路120のインピーダンスZに誘導性リアクタンス成分が現れ、電流Iの電流位相は電圧位相に対して遅れる。この場合には、位相差t<0となる。
図4は、位相差指示電圧Vt2と駆動周波数fの関係を示すグラフである。図4に示す関係は、VCO202において設定されている。ここでは、リセット回路102は機能せず、位相差指示電圧Vt2はそのままVCO202の入力電圧Vt3になるものとして説明する。
位相差tの大きさは、共振周波数fの変化量に比例する。そこで、位相検出回路150は、位相差tに応じて位相差指示電圧Vt2の変化量を決定し、VCO202は位相差指示電圧Vt2に応じて駆動周波数fを決定する。駆動周波数fの設定可能範囲は、VCO202に接続される抵抗R、R、キャパシタCの時定数によって決定される。本実施形態においては、30〜50kHzの範囲に設定される。共振周波数f=44kHzである。
まず、初期状態では共振周波数f=44kHzなので、駆動周波数f=44kHzに設定される。対応する位相差指示電圧Vt2は2.7(V)であるとする。図2に示したように、共振周波数f=駆動周波数f=44kHzであれば、位相差指示電圧Vt2は常に2.7(V)である。
共振周波数fが44kHzから38kHzに変化した場合を想定する。駆動周波数f(=44kHz)>共振周波数f(=38kHz)となるため、位相差t<0となる。位相差tは、共振周波数fの変化量(−6kHz)に比例する。位相検出回路150は、位相差tに応じて位相差指示電圧Vt1の変化量を決定する。上記設例では、位相検出回路150は位相差指示電圧Vt1(位相差指示電圧Vt2)の変化量を−0.7(V)とし、新たな位相差指示電圧Vt1=2(V)を出力する。VCO202は、図4のグラフに示す関係にしたがって、位相差指示電圧Vt1(Vt2、Vt3)=2(V)に対応する駆動周波数f=38kHzを出力する。このような処理により、共振周波数fが変化しても駆動周波数fを自動的に追随させることができる。
図5は、給電コイルLと受電コイルLのコイル間距離と共振周波数fの関係を示すグラフである。本発明者の実験によれば、給電コイルLと受電コイルLのコイル間距離が200mm以上のときには共振周波数fは44kHzに安定するが、両コイルを200mm以内に近づけると共振周波数fが低下し始めることが発見された。本実施形態においては、150mmで42.8kHz、100mmで41.4kHz、50mmで39.8kHzとなり、距離ゼロの場合には37.2kHzにて共振する。すなわち、給電コイルLと受電コイルLが十分に離れているときにはそのコイル間距離に関わらず共振周波数fは一定値に安定するが、給電コイルLと受電コイルLがある程度近づくと共振周波数fは低下する。共振周波数fのコイル間距離に対する依存性が見いだされた。
図6は、出力電力効率と駆動周波数fの関係を示すグラフである。出力電力効率とは、給電コイルLから実際に給電される電力の最大出力値に対する割合を示す。駆動周波数fが共振周波数fと一致するときには、電流位相と電圧位相の差がゼロとなり、電力伝送効率が最大となるので、出力電力効率=100(%)となる。出力電力効率は、負荷LDから取り出される電力の大きさによって計測できる。
コイル間距離が200mmのときには、駆動周波数f=44kHzにて出力電力効率が最大となっている。また、コイル間距離が0mmのときには、駆動周波数f=37.2kHzにて出力電力効率が最大となっている。
このようにコイル間距離を小さくしたときにも共振周波数fは変化する。この場合においても、ワイヤレス電力伝送システム100は駆動周波数fを共振周波数fに追随させることができる。たとえば、EV車の車両下部に埋め込まれる受電コイルと、地中に埋め込まれる給電コイルのコイル間距離は、車両の種類によってさまざまであるから共振周波数fも車両ごとに異なるかもしれない。ワイヤレス電力伝送システム100によれば出力電力効率が最大となるように駆動周波数fを自動的に調整できるため、車両の種類に関わらず最高の効率にてワイヤレス給電が可能となる。
図7は、一時的な乱調が発生した場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。給電コイルLと受電コイルLの間を鉄片などの異物が通過すると、一時的にシステムが乱調することがある。図7においては、第1期間および第2期間中の時刻tまで駆動周波数fと共振周波数fは一致しているが、時刻tに乱調が発生している。このとき、給電コイル回路120を流れる電流I、電流Iに同期する電位Vq1の波形は一時的に乱高下する。コンパレータ142によってこれらの波形のゆがみはパルス波として整形され、位相検出回路150に伝達されることになる。
位相検出回路150は、この乱調時の電位Vq1に基づいて位相差tを誤検出し、位相差指示電圧Vt1を変化させる。本発明者の実験によれば、乱調発生時において、位相差指示電圧Vt1は出力可能な最大値にほぼ確実に設定されることが見いだされた。本実施形態における位相差指示電圧Vt1の最大値は5(V)である。
図4のグラフから明らかなように、VCO202に位相差指示電圧Vt3=5(V)が入力されると、駆動周波数fは60kHz近くに設定される。実際の共振周波数f=44kHzのままであるから、駆動周波数fと共振周波数fは急激に乖離することになる。駆動周波数fと共振周波数fが瞬間的に乖離すると、乱調が収束した時刻t以降においても駆動周波数fを適切な値に戻せなくなってしまうことがある。実験の結果、時刻t以降において位相差指示電圧Vt1は最大値5(V)に固定されてしまい、以後、駆動周波数追随機能が適切に機能しなくなる現象が発見された。
このような新たに見いだされた現象に対処するため、ワイヤレス電力伝送システム100にはリセット回路102が設置される。
図8は、リセット回路102の回路図である。リセット回路102は、抵抗R〜Rおよびサイリスタ112を含む。ローパスフィルタ152から引き出される電源ライン104には、リセット回路102によって迂回経路106が形成される。迂回経路106は、電源ライン104側から抵抗R、サイリスタ112を経由して接地される。
サイリスタ112のゲートGには、電源電圧VCCを抵抗R、Rにより分圧したゲート電圧VGが印加される。ゲート電圧VGは一定値である。サイリスタ112のアノードAは抵抗R側、カソードKは、グランド側となる。位相差指示電圧Vt2を抵抗Rにより電圧降下することにより、サイリスタ112にアノード電位VAが印加される。
通常、アノード電位VA≦ゲート電位VGである。このとき、サイリスタ112のアノード・カソード間はオフ(非導通)となる。したがって、迂回経路106に電流が流れ込むことはないため、ローパスフィルタ152を通過した位相差指示電圧Vt2と、VCO202に実際に入力される位相差指示電圧Vt3は同一である。
乱調時のように位相差指示電圧Vt2が所定値、たとえば、4(V)よりも大きくなると、アノード電位VA>ゲート電位VGとなる。この場合には、サイリスタ112のアノード・カソード間がオン(導通)となる。電源ライン104を流れる電流は迂回経路106に流れ込むため、電源ライン104の電位(位相差指示電圧Vt2)が急降下する。本実施形態においては、たとえば、1.0(V)まで電圧降下させる。この場合、VCO202に入力される位相差指示電圧Vt3=1.0(V)となるから、図4の関係にしたがい駆動周波数fは最低値の30kHzに強制的に設定される。これを「リセット」とよぶ。
いったん駆動周波数fを低周波数にしてやれば、位相検出回路150およびVCO202の駆動周波数調整機能が再機能し、駆動周波数fは再び共振周波数fと一致する。VCO202は、交流電圧Vのパルス変化の頻度を徐々に高めることにより駆動周波数fを上昇させる。すなわち、駆動周波数fは、最低値30kHzから最大値50kHzに向かってスイープするため、このスイープ過程において駆動周波数f=共振周波数f=44kHzに設定できる。
まとめると、駆動周波数fが何らかの外的要因によって高周波数に設定されたときには、駆動周波数fを共振周波数fに再一致させるのが難しくなることが実験によって明らかになった。この場合には、リセット回路102により駆動周波数fを低周波数に強制的に設定してやれば、駆動周波数fを共振周波数fに再一致させやすい。リセット回路102を設けることにより突発的な不具合にも対応しやすくなるため、ワイヤレス電力伝送システム100としての動作安定性がいっそう高まることが実証された。
図9は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図の変形例である。変形例におけるワイヤレス電力伝送システム100では、送電制御回路200がエキサイト回路110を介さずに、直接、給電コイル回路120を駆動する。図1と同一の符号を付した構成は、図1で説明した構成と同一または同様の機能を有する。
変形例における給電コイル回路120は、給電コイルL、キャパシタCにトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLは、トランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。このように、エキサイト回路110を介さず、送電制御回路200から給電コイル回路120に直接交流電力を供給してもよい。
[第2実施形態:プッシュプル型]
図10は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム108のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム108は、ワイヤレス給電装置156とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置156は、基本構成として、送電制御回路204、エキサイト回路110および給電コイル回路120を含む。給電コイル回路120と受電コイル回路130の間には数m程度の距離がある。ワイヤレス電力伝送システム108の主目的も、給電コイル回路120から受電コイル回路130に電力を送ることである。図1や図8と同一の符号を付した構成は、既に説明した構成と同一または同様の機能を有する。
エキサイト回路110は、エキサイトコイルLとトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。エキサイト回路110は、送電制御回路204からトランスT2二次コイルLを介して交流電力を供給される。トランスT2二次コイルLは、送電制御回路204のトランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により交流電力を供給される。エキサイトコイルLの巻き数は1回、コイル導体断面形状は0.6mm×6.0mmの長方形、エキサイトコイルL自体の形状は210mm×210mmの正方形である。エキサイト回路110を流れる電流Iは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
給電コイル回路120は、第1実施形態に示した給電コイル回路120の構成と同様であり、共振周波数f=44kHzで共振する回路である。受電コイル回路130とロード回路140の構成も、第1実施形態に示した構成と同様である。
送電制御回路204は、駆動周波数fにて動作するプッシュプル型の回路であり、図10に示すように上下対称形である。エキサイト回路110は、駆動周波数fの交流電力を送電制御回路204から供給される。この場合、エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130およびロード回路140には、駆動周波数fの電流I〜Iが流れる。駆動周波数fと共振周波数fが一致するとき、すなわち、駆動周波数f=44kHzとなるとき、給電コイル回路120と受電コイル回路130が磁場共振するため、電力伝送効率は最大となる。
送電制御回路204に含まれるゲート駆動用トランスT1の一次側には、VCO202が接続される。VCO202が発生させる交流電圧Vにより、トランスT1一次コイルLには正負の両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLとトランスT1二次コイルL、トランスT1二次コイルLはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLとトランスT1一次コイルLにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
トランスT1の二次コイルは中点接地される。すなわち、トランスT1二次コイルLの一端とトランスT1二次コイルLの一端は互いに接続され、そのまま接地される。トランスT1二次コイルLの他端は、スイッチングトランジスタQのゲートと接続され、トランスT1二次コイルLの他端は、別のスイッチングトランジスタQのゲートと接続される。スイッチングトランジスタQのソースとスイッチングトランジスタQのソースも接地されている。したがって、オシレータ202が駆動周波数fにて交流電圧を発生させると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQの各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数fにて交互に印加される。すなわち、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは駆動周波数fにて交互にオン・オフする。
スイッチングトランジスタQのドレインは、トランスT2一次コイルLと直列接続される。同様に、スイッチングトランジスタQのドレインは、トランスT2一次コイルLと直列接続される。トランスT2一次コイルLとトランスT2一次コイルLの接続点には、平滑用のインダクタLが接続され、さらに、電源Vddが接続される。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ1が並列接続され、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ2が並列接続される。
キャパシタCQ1はソース・ドレイン電圧VDS1の電圧波形を整形し、キャパシタCQ2はソース・ドレイン電圧VDS2の電圧波形を整形するために挿入される。キャパシタCQ1、CQ2を省略しても、送電制御回路204によるワイヤレス給電は可能である。特に、駆動周波数fが低い場合には、これらのキャパシタを省略しても電力伝送効率を維持しやすい。
エキサイト回路110の入力インピーダンスは50(Ω)である。また、送電制御回路204の出力インピーダンスがこの入力インピーダンス50(Ω)と等しくなるようにトランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLの巻き数を設定している。送電制御回路204の出力インピーダンスとエキサイト回路110の入力インピーダンスが一致するとき、送電制御回路204の出力は最大となる。
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(第1電流経路)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(第2電流経路)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
VCO202が共振周波数fにて交流電圧Vを供給すると、第1電流経路と第2電流経路が共振周波数fにて交互に切り替わる。エキサイト回路110には共振周波数fにて交流電流Iが流れ、給電コイル回路120にも共振周波数fの交流電流Iが流れる。給電コイル回路120の給電コイルLとキャパシタCは共振状態となる。受電コイル回路130も共振周波数fの共振回路であるから、給電コイルLと受電コイルLは磁気的に共振する。このとき、電力伝送効率は最大となる。
ワイヤレス電力伝送システム108においても、電位Vから電圧位相を計測する。第2実施形態では、給電コイル回路120の側に検出コイルLSSを設置し、給電コイル回路120の一部と検出コイルLSSにより結合トランスを形成する。交流電流Iが発生させる磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。この誘導電流ISSに基づいて第1実施形態と同様の方法にて電流位相を計測する。電流位相と電圧位相の位相差tを位相検出回路150にて検出し、位相差指示電圧Vt1を生成し、VCO202が駆動周波数fを調整することにより、共振状態を維持する。
給電コイル回路120に限らず、エキサイト回路110、受電コイル回路130、ロード回路140などを一次コイル側として結合トランスを形成し、検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させてもよい。
図11は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム108のシステム構成図の変形例である。変形例におけるワイヤレス電力伝送システム108では、送電制御回路204がエキサイト回路110を介さずに、直接、給電コイル回路120を駆動する。図10と同一の符号を付した構成は、図10で説明した構成と同一または同様の機能を有する。
変形例における給電コイル回路120は、給電コイルL、キャパシタCにトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLは、トランスT2一次コイルL、Lと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。このように、エキサイト回路110を介さず、送電制御回路200から給電コイル回路120に直接交流電力を供給してもよい。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、位相差指示電圧Vt2が最大値にロックした場合でも、リセット回路102によりこれを解除できる。
以上、実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム100、108を説明した。エキサイトコイルL、給電コイルL、受電コイルL、ロードコイルLは、いずれも同一の共振周波数fにて共振するため、これらのコイルになんらかの負荷を接続するとQ値が敏感に反応してしまう。本実施形態においては、送受電対象となる交流電力自体を計測対象とするのではなく、送受電時に発生する交流磁界により誘導電流ISSを発生させることにより、電流位相を計測している。このため、システムの共振特性(Q値)に対する計測の影響を抑制しやすい。
磁場共振型のワイヤレス給電の場合、共振周波数fと駆動周波数fの一致度が電力伝送効率に大きく影響する。位相検出回路150やVCO202等を設ければ、共振周波数fが変化しても駆動周波数fを自動的に追随させることができるため、使用条件が変化しても、電力伝送効率を最大値に維持しやすくなる。
また、一時的な乱調により駆動周波数fと共振周波数fが瞬間的に乖離したとしても、リセット回路102により駆動周波数fを低周波数に強制設定できる。このため、駆動周波数fと共振周波数fの乖離をいっそう解消しやすくなる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
100、108 ワイヤレス電力伝送システム、102 リセット回路、104 電源ライン、106 迂回経路、110 エキサイト回路、112 サイリスタ、116、156 ワイヤレス給電装置、118 ワイヤレス受電装置、120 給電コイル回路、130 受電コイル回路、140 ロード回路、142 コンパレータ、144 ダイオード、150 位相検出回路、152 ローパスフィルタ、154 コア、200、204 送電制御回路、202 VCO、LSS 検出コイル、L エキサイトコイル、L 給電コイル、L 受電コイル、L ロードコイル、LD 負荷、Q、Q スイッチングトランジスタ。

Claims (9)

  1. 給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
    送電制御回路と、
    前記給電コイルと、
    前記給電コイルと磁気結合し、前記送電制御回路から供給される交流電力を前記給電コイルに供給するエキサイトコイルと、
    前記交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出し、その大きさに応じて位相差指示電圧を生成する位相検出回路と、
    前記位相差指示電圧が供給される電圧ラインに接続され、前記位相差指示電圧を低下させるためのリセット回路と、を備え、
    前記送電制御回路は、第1および第2の電流経路を含み、前記第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを駆動周波数にて交互に導通させることにより、前記エキサイトコイルに前記交流電力を供給し、
    前記位相検出回路から出力される位相差指示電圧は前記送電制御回路に入力され、
    前記送電制御回路は、前記位相差指示電圧にしたがって、前記位相差が減少するように駆動周波数を調整することにより前記駆動周波数を前記共振周波数に追随させ、
    前記リセット回路は、前記位相差指示電圧が所定の閾値以上となったとき、前記位相差指示電圧を低下させることを特徴とするワイヤレス給電装置。
  2. 給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
    前記給電コイルに駆動周波数にて交流電力を供給する送電制御回路と、
    前記給電コイルおよびキャパシタを含み、前記共振周波数にて共振する給電コイル回路と、
    前記交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出し、その大きさに応じて位相差指示電圧を生成する位相検出回路と、
    前記位相差指示電圧が供給される電圧ラインに接続され、前記位相差指示電圧を低下させるためのリセット回路と、を備え、
    前記送電制御回路は、第1および第2の電流経路を含み、前記第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを前記駆動周波数にて交互に導通させることにより、前記給電コイルに前記交流電力を供給し、
    前記位相検出回路から出力される位相差指示電圧は前記送電制御回路に入力され、
    前記送電制御回路は、前記位相差指示電圧にしたがって、前記位相差が減少するように前記駆動周波数を調整することにより前記駆動周波数を前記共振周波数に追随させ、
    前記リセット回路は、前記位相差指示電圧が所定の閾値以上となったとき、前記位相差指示電圧を低下させることを特徴とするワイヤレス給電装置。
  3. 前記位相検出回路から前記送電制御回路に至る電圧ラインには迂回経路が接続されており、
    前記リセット回路は、前記迂回経路に間挿されるスイッチを導通させることにより、前記位相差指示電圧を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電装置。
  4. 前記送電制御回路は、前記位相差指示電圧が大きいほど前記駆動周波数を高くすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
  5. 前記位相検出回路の出力端にローパスフィルタを接続したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
  6. 前記ローパスフィルタは抵抗器とキャパシタを直列接続した回路であって、前記抵抗器と前記キャパシタの中点から引き出される電圧ラインに前記リセット回路を接続したことを特徴とする請求項5に記載のワイヤレス給電装置。
  7. 前記交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる検出コイルを更に備え、
    前記位相検出回路は、前記検出コイルに流れる前記誘導電流の位相を計測することにより、前記交流電力の電流位相を計測することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
  8. 前記検出コイルは、前記給電コイルを流れる交流電流が発生させる磁界により前記誘導電流を発生させるコイルであることを特徴とする請求項7に記載のワイヤレス給電装置。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載のワイヤレス給電装置と、
    前記受電コイルと、
    前記受電コイルと磁気結合し、前記受電コイルが前記給電コイルから受電した電力を供給されるロードコイルと、を備えることを特徴とするワイヤレス電力伝送システム。
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