以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の原理図である。第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置116は給電LC共振回路300を含む。ワイヤレス受電装置118は、受電コイル回路130とロード回路140を含む。そして、受電コイル回路130により受電LC共振回路302が形成される。
給電LC共振回路300は、キャパシタC2と給電コイルL2を含む。受電LC共振回路302は、キャパシタC3と受電コイルL3を含む。給電コイルL2と受電コイルL3の磁場結合を無視できるほど両者が充分に離れた状態において給電LC共振回路300および受電LC共振回路302それぞれの共振周波数が同一となるように、キャパシタC2、給電コイルL2、キャパシタC3、受電コイルL3が設定される。この共通の共振周波数をfr0とする。
給電コイルL2と受電コイルL3を充分に磁場結合できる程度に近づけた状態では、給電LC共振回路300、受電LC共振回路302およびその間に発生する相互インダクタンスにより新たな共振回路が形成される。この新共振回路は、相互インダクタンスの影響により2つの共振周波数fr1、fr2を有する(fr1<fr0<fr2)。ワイヤレス給電装置116が、給電源VGから共振周波数fr1にて交流電力を給電LC共振回路300に供給すると、新共振回路の一部である給電LC共振回路300は共振点1(共振周波数fr1)で共振する。給電LC共振回路300が共振すると、給電コイルL2は共振周波数fr1の交流磁場を発生させる。同じく新共振回路の一部である受電LC共振回路302もこの交流磁場により共振する。給電LC共振回路300と受電LC共振回路302が同一の共振周波数fr1にて共振するとき、給電コイルL2から受電コイルL3に最大の電力伝送効率にてワイヤレス給電がなされる。ワイヤレス受電装置118の負荷LDから受電電力が出力電力として取り出される。なお、新共振回路は、共振点1(共振周波数fr1)だけでなく共振点2(共振周波数fr2)でも共振可能である。
図2は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置116は、基本構成として、送電制御回路200、給電コイル回路120、信号調整回路112、位相検出回路114を含む。本実施形態におけるワイヤレス給電装置116は、エキサイトコイルを介さずに、給電コイルL2を直接駆動する構成となっている。ワイヤレス受電装置118は、基本構成として、受電コイル回路130、ロード回路140、制御信号発生回路170、基準信号発生回路172、信号生成回路122を含む。
給電コイル回路120が有する給電コイルL2と、受電コイル回路130が有する受電コイルL3の間には0.2〜1.0m程度の距離(以下、「コイル間距離」とよぶ)がある。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電コイルL2から受電コイルL3にワイヤレスにて交流電力を送ることである。本実施形態においては共振周波数fr1=100kHzであるとして説明する。なお、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、たとえば、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯のような高周波数帯にて動作させることも可能である。低周波数帯には、スイッチングトランジスタ(後述)のコストおよびスイッチング損失を抑制しやすい、電波法の規制が緩いといったメリットがある。
給電コイル回路120は、給電コイルL2とキャパシタC2、トランスT2二次コイルLiが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLiは、トランスT2一次コイルLbと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。電源電圧が大きいときには、送電制御回路200には大きな電流が流れる可能性がある。そこで、トランスT2では、トランスT2二次コイルLbの巻き数>トランスT2二次コイルLiの巻き数となるように設定されている。
給電コイルL2の巻き数は7回、導体直径は5mm、給電コイルL2自体の形状は280mm×280mmの正方形である。給電コイルL2とキャパシタC2それぞれの値は、給電コイル回路120の共振周波数frが100kHzとなるように設定される。図2では、わかりやすさのため、給電コイルL2を円形に描いている。他のコイルについても同様である。図2に示す各コイルの材質はいずれも銅である。給電コイル回路120には交流電流I2が流れる。
受電コイル回路130は、受電コイルL3とキャパシタC3が直列接続された回路である。給電コイルL2と受電コイルL3は互いに向かい合っている。受電コイルL3の巻き数は7回、導体直径は5mm、受電コイルL3自体の形状は280mm×280mmの正方形である。受電コイル回路130の共振周波数fr1も100kHzとなるように、受電コイルL3とキャパシタC3それぞれの値が設定されている。給電コイルL2と受電コイルL3は同一形状である必要はない。給電コイルL2が共振周波数fr1=100kHzにて磁界を発生させると、給電コイルL2と受電コイルL3は磁気的に共振し、受電コイル回路130にも交流電流I3が流れる。
ロード回路140は、ロードコイルL4が整流回路124と計測回路126を介して負荷LDと接続される回路である。受電コイルL3とロードコイルL4は互いに向かい合っている。本実施形態においては、受電コイルL3のコイル平面とロードコイルL4のコイル平面は略同一である。このため、受電コイルL3とロードコイルL4は電磁的に強く結合している。ロードコイルL4の巻き数は1回、導体直径は5mm、ロードコイルL4自体の形状は300mm×300mmの正方形である。受電コイルL3に電流I3が流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140に交流電流I4が流れる。交流電流I4は整流回路124により直流電流に整流される。一部は計測回路126を流れるが、大部分は直流電流I5として負荷LDを流れる。整流回路124は、ダイオードD1とキャパシタC5により構成される一般的な回路である。計測回路126については後述する。
ワイヤレス給電装置116の給電コイルL2から送電された交流電力は、ワイヤレス受電装置118の受電コイルL3により受電され、負荷LDから直流電力として取り出される。負荷LDに印加される電圧を「負荷電圧V5」とよぶ。
負荷LDを受電コイル回路130に直接接続すると、受電コイル回路130のQ値が悪くなる。このため、受電用の受電コイル回路130と電力取り出し用のロード回路140を分離している。電力伝送効率を高めるためには、給電コイルL2、受電コイルL3およびロードコイルL4の中心線を揃えることが好ましい。
計測回路126は、抵抗R1、R2、制御電源VSおよびコンパレータ132を含む。負荷電圧V5は、抵抗R1、R2により分圧される。抵抗R2の両端に印加される電圧を「出力電圧」とよぶ。抵抗R1と抵抗R2の接続点Fの電位は「計測電位」としてコンパレータ132の負極端子に入力される。コンパレータ132の正極端子には制御電源VSが接続される。制御電源VSによる正極端子の入力電位を「基準電位」とよぶ。
コンパレータ132は、計測電位と基準電位の差分(以下、「補正電圧」とよぶ)を増幅し、その増幅後の値をT0信号として出力する。T0信号は直流電圧信号であり、補正電圧の大きさを示す。いいかえれば、T0信号は負荷電圧V5の変化量を示す信号である。詳しくは後述するが、ワイヤレス電力伝送システム100は、この補正電圧がゼロとなるように給電電力を制御することにより、出力電圧(負荷電圧V5)を安定させている。本実施形態においては基準電位を2.5(V)に設定する。また、負荷電圧V5が24(V)のとき、計測電位が2.5(V)、補正電圧が0(V)となるように抵抗R1、R2を設定する。なお、制御電源VSは、可変直流電圧源であり任意に電圧調整可能である。
制御信号発生回路170は、制御周波数fcの交流電圧信号T1を発生させる。本実施形態における制御周波数fcは1.0kHzである。コンパレータ174は、T0信号とT1信号を比較し、T1>T0となるときにハイレベルとなるT2信号(有効信号:交流電圧信号)を発生させる。詳しくは後述するが、補正電圧によりT2信号のデューティ比が変化する。T0〜T2信号の関係については図7に関連して後述する。
基準信号発生回路172は、基準周波数fsの交流電圧信号T3を発生させる。本実施形態における基準周波数fsは10MHzであり、共振周波数fr1や制御周波数fcに比べると格段に高く設定される。信号生成回路122は、T2信号とT3信号に基づいて、交流電圧信号T4を発生させる。T4信号は、受電側における出力の大きさを示す「出力信号」である。T4信号は、オペアンプ110により増幅された後、送信コイルL6によりワイヤレス給電装置116に向けて送信される。T4信号により、給電側は補正電圧の大きさ、いいかえれば負荷電圧V5の変動量を認識できる。
次に、送電制御回路200の構成を説明する。まず、ゲート駆動用トランスT1の一次側にVCO(Voltage Controlled Oscillator)202が接続される。VCO202は、駆動周波数foの交流電圧VOを発生させる「オシレータ」として機能する。交流電圧VOの波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波(デジタル波形)であるとして説明する。交流電圧VOにより、トランスT1一次コイルLhには正負両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLhとトランスT1二次コイルLf、トランスT1二次コイルLgはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLfとトランスT1二次コイルLgにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
本実施形態におけるVCO202は、モトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニットを利用している。VCO202は、位相比較回路150から出力される位相差指示電圧SC(後述)に基づいて駆動周波数foを動的に変化させる機能も備える。
駆動周波数foの最小値はfo1=101kHz、最大値はfo2=110kHzであるとして説明する。位相差指示電圧SCの適正範囲は、1.0〜4.0(V)である。位相差指示電圧SCと駆動周波数foは正比例する。すなわち、位相差指示電圧SC=1.0(V)のとき駆動周波数fo=fo1=101kHzであり、SC=4.0(V)のときfo=fo2=110kHzとなる。
送電制御回路200の電源となるのは、直流電源VDDにより充電されるキャパシタCA、CBである。キャパシタCAは図2に示す点Cと点Eの間、キャパシタCBは点Eと点Dの間に設けられる。キャパシタCAの電圧(CE間の電圧)をVA、キャパシタCBの電圧(ED間の電圧)をVBとすると、VA+VB(CD間の電圧)が入力電圧となる。キャパシタCAおよびCBは直流電圧源として機能する。
トランスT1二次コイルLfの一端は、スイッチングトランジスタQ1のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ1のソースと接続される。トランスT1二次コイルLgの一端は、別のスイッチングトランジスタQ2のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ2のソースと接続される。VCO202が駆動周波数foにて交流電圧VOを発生させると、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2の各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数foにて交互に印加される。このため、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は駆動周波数foにて交互にオン・オフする。スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、バイポーラ・トランジスタなど他のトランジスタでもよい。トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
スイッチングトランジスタQ1のドレインは、キャパシタCAの正極に接続される。キャパシタCAの負極は、トランスT2一次コイルLbを介してスイッチングトランジスタQ1のソースに接続される。スイッチングトランジスタQ2のソースは、キャパシタCBの負極に接続される。キャパシタCBの正極は、トランスT2一次コイルLbを介して、スイッチングトランジスタQ2のドレインに接続される。
スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2については、同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
スイッチングトランジスタQ1が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ2は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路」とよぶ)は、キャパシタCAの正極から点C、スイッチングトランジスタQ1、トランスT2一次コイルLb、点Eを経由して負極に帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ1は、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
スイッチングトランジスタQ2が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ1は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路」とよぶ)は、キャパシタCBの正極から点E、トランスT2一次コイルLb、スイッチングトランジスタQ2、点Dを経由して負極に帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ2は、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
送電制御回路200においてトランスT2一次コイルLbを流れる電流を「電流IS」とよぶ。電流ISは交流電流であり、第1電流経路を流れるときを正方向、第2電流経路を流れるときを負方向とよぶ。
VCO202が駆動周波数foにて交流電圧Voを供給すると、第1電流経路と第2電流経路が駆動周波数foにて交互に切り替わる。駆動周波数foの交流電流ISがトランスT2一次コイルLbを流れるため、給電コイル回路120にも駆動周波数foにて交流電流I2が流れる。駆動周波数foが共振周波数frに近いほど、電力伝送効率は高くなる。駆動周波数fo=共振周波数frであれば、給電コイル回路120の給電コイルL2とキャパシタC2は共振状態となる。受電コイル回路130も共振周波数frの共振回路であるから、給電コイルL2と受電コイルL3は磁気的に共振する。このとき、電力伝送効率は最大となる。
ただし、本実施形態の場合、駆動周波数foの動作範囲には共振周波数fr1は含まれないため、電力伝送効率が最大となることはない。これは電力伝送効率を最大化するよりも、負荷電圧V5の安定を優先しているためである。負荷電圧V5の変化は補正電圧により検出できるため、ワイヤレス給電装置116は補正電圧がゼロとなるように駆動周波数foを自動調整する。詳細については後述する。
共振周波数fr1は、給電コイル回路120や受電コイル回路130の使用状態や使用環境によって微妙に変化する。給電コイル回路120や受電コイル回路130を交換した場合にも共振周波数fr1は変化する。あるいは、キャパシタC2やキャパシタC3の静電容量を可変とすることにより共振周波数fr1を積極的に変化させたい場合もあるかもしれない。また、本発明者の実験により、給電コイルL2と受電コイルL3のコイル間距離をある程度近づけると共振周波数fr1が低下し始めることがわかっている。共振周波数fr1と駆動周波数foの差が変化すると電力伝送効率が変化する。電力伝送効率が変化すると、負荷電圧V5が変化する。したがって、負荷電圧V5を安定させるためには、共振周波数fr1が変化したときでも、共振周波数fr1と駆動周波数foの差を一定に保つ必要がある。
給電コイル回路120には検出コイルLSSが設けられる。検出コイルLSSは、貫通孔を有するコア154(トロイダルコア)にNS回巻き付けられたコイルである。コア154の材質はフェライト、珪素鋼板、パーマロイ(permalloy)等の既知材料である。本実施形態における検出コイルLSSの巻き数NSは100回である。
給電コイル回路120の電流経路の一部もコア154の貫通孔を貫通している。これは、コア154に対する給電コイル回路120の巻き数NPが1回であることを意味する。このような構成により、検出コイルLSSと給電コイルL2は結合トランスを形成する。給電コイルL2の交流電流I2が発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには同相の誘導電流ISSが流れる。等アンペア・ターンの法則により、誘導電流ISSの大きさは、I2・(NP/NS)となる。
検出コイルLSSの両端には抵抗R4が接続される。抵抗R4の一端Bは接地され、他端Aはオペアンプ142等を介して位相比較回路150に接続される。
電位VSSは、オペアンプ142とダイオードD2によって2値化され、S1信号となる。オペアンプ142は電位VSSが第1の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧3.0(V)を出力し、第2の閾値、たとえば、−0.1(V)より小さくなると飽和電圧−3.0(V)を出力する。ダイオードD2によって負成分をカットすることにより、電位VSSはデジタル波形のS1信号に変換される。電流I2と誘導電流ISSは同相であり、誘導電流ISSと電位VSSは同相である。また、送電制御回路200を流れる交流電流ISは電流I2と同相である。したがって、S1信号の波形を観察することにより交流電流ISの電流位相を計測できる。
共振周波数fr1と駆動周波数foが一致するときには電流位相と電圧位相も一致する。共振周波数fr1と駆動周波数foのずれは、電流位相と電圧位相の位相差から計測できる。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、この位相差に基づいて、共振周波数fr1と駆動周波数foのずれを計測することにより、共振周波数fr1の変化に対して駆動周波数foを自動的に追随させる。
位相検出回路114は、電圧整形回路144、位相比較回路150およびローパスフィルタ152を含む。ローパスフィルタ152は、既知の回路であり、位相差指示電圧SCの高周波数成分をカットするために挿入される。本実施形態における位相比較回路150は、VCO202と同じくモトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニット(Phase Comparator)を利用している。したがって、位相比較回路150とVCO202は、ワンチップにて実現可能である。
電流位相を示すS1信号は位相比較回路150に入力される。また、VCO202が発生させる交流電圧VOは、電圧整形回路144によりその電圧波形を整形されたあと(後述)、電圧位相を示すT8信号として位相比較回路150に入力される。位相比較回路150は、S1、T8信号から電流位相と電圧位相のずれ(位相差)を検出し、位相差の大きさを示す位相差指示電圧SCを生成する。位相差の検出により、共振周波数fr1と駆動周波数foのずれの大きさを検出する。位相差指示電圧SCにしたがって駆動周波数foを制御することにより、駆動周波数foと共振周波数fr1の位相差を一定に保つことができる。
たとえば、駆動周波数foと共振周波数fr1が乖離すると位相差が大きくなるため、位相比較回路150はこの位相差を小さくするように位相差指示電圧SCを発生させればよい。したがって、共振周波数fr1が変化しても、電力伝送効率を一定に保ち、負荷電圧V5を安定させることができる。電圧整形回路144および信号調整回路112の回路構成については図10、S1信号とT8信号の関係については図13に関連して後に詳述する。
なお、トランスT1一次コイルLhの両端に抵抗を並列接続し、交流電圧VOを分圧してS2信号としてもよい。分圧により、VCO202の発生させる交流電圧VOが大きい場合でも、扱いやすい電圧に降圧できる。ソース・ドレイン電圧VDS1、VDS2や、ソース・ゲート電圧VGS1、VGS2などから電圧位相を計測してもよい。
また、たとえ共振周波数fr1が一定であっても、負荷電圧V5が変化することがある。たとえば、負荷LDが可変抵抗器であるときや負荷LD自体を取り替えたときに負荷電圧V5は変化する。本実施形態では、負荷電圧V5の変化を補正電圧として検出し、補正電圧がゼロとなるように駆動周波数foを自動調整することにより、負荷電圧V5を安定させる。
補正電圧の大きさは、T11信号(交流磁場信号)として、送信コイルL6から受信コイルL5に伝達される。受信コイルL5は、交流磁場信号であるT11信号を交流電圧信号T5として検出し、信号調整回路112に供給する。信号調整回路112は、交流電圧信号T5を直流電圧信号T6に変換する。T6信号の信号レベルは負荷電圧V5と正相関関係にある。T5信号からT6信号への変換過程については、図11に関連して後に詳述する。
コンパレータ128の正極端子には電圧整形回路144から出力されるT7信号(電圧位相)が入力され、負極端子には信号調整回路112から出力されるT6信号(補正電圧を示す信号)が入力される。コンパレータ128により、T7信号はT6信号により位相調整され、補正電圧位相としてのT8信号(交流電圧信号)が出力される。
負荷電圧V5が所望値である24(V)のとき、すなわち、補正電圧がゼロのとき、T6信号もゼロとなる。したがって、T8信号の位相はT7信号の位相と同一となる。位相比較回路150は、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差をS1信号とT8信号(=T7信号)に基づいて検出し、位相差指示電圧SCを出力する。VCO202は、位相差指示電圧SCに基づいて、駆動周波数foを調整する。より具体的には、VCO202は交流電圧VOのパルス幅を変化させることにより、駆動周波数foを変化させる。
補正電圧がゼロでないとき、すなわち、T6信号による調整がなされるときにも、位相比較回路150は、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差をS1信号とT8信号に基づいて検出し、位相差指示電圧SCを出力する。ただし、このときのT8信号は、T7信号をT6信号に応じて位相調整した信号であるため、実際の電圧位相を示す信号ではない。補正電圧に基づく調整ロジックについては、図13に関連して更に詳述する。
図3は、各コイルの構造図である。まず、給電側においては、実際には、給電コイルL2の内側に受信コイルL5が収められている。いいかえれば、給電コイルL2のコイル平面と受信コイルL5のコイル平面は一致している。給電コイルL2は受電コイルL3に向けて給電電力を送出するためのコイルであり、受信コイルL5は送信コイルL6からT11信号を受信するためのコイルである。受信コイルL5の巻き数は1回、導体直径は5mm、受信コイルL5自体の形状は260mm×260mmの正方形である。
受電側においては、受電コイルL3の内側に送信コイルL6が収められる。また、受電コイルL3の外側にロードコイルL4が設置される。すなわち、受電コイルL3、ロードコイルL4、送信コイルL6のコイル平面は同一である。受電コイルL3は給電電力を受電するためのコイルであり、送信コイルL6はT11信号を送信するためのコイルである。送信コイルL6の巻き数は1回、導体直径は5mm、送信コイルL6自体の形状は260mm×260mmの正方形である。
このように、本実施形態においては、給電コイルL2、受信コイルL5、ロードコイルL4、受電コイルL3、送信コイルL6は互いに中心軸が一致している。受信コイルL5は形状が単純であり、給電コイルL2と一体的かつコンパクトに形成できる。同様に、送信コイルL6も形状が単純であり、受電コイルL3やロードコイルL4と一体的かつコンパクトに形成できる。
図4は、負荷電流I5と負荷電圧V5の関係を示すグラフである。横軸は負荷LDを流れる負荷電流I5(直流)の大きさを示し、縦軸は負荷電圧V5を示す。非調整時特性134は、補正電圧に基づく調整をしない場合の電流・電圧特性を示す。非調整時特性134の場合、負荷LDが大きくなると負荷電流I5は減少し、負荷電圧V5は増加する。反対に負荷LDが小さくなると負荷電流I5は増加し、負荷電圧V5は減少する。このように、給電電力が一定であっても負荷LDを変更すると負荷電圧V5も変化する。
非調整時特性134の場合、負荷電流I5が0(A)のときには、負荷電圧V5が60(V)程度まで上昇する可能性があり、場合によっては負荷LDの定格値を超えてしまう可能性がある。
本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、調整時特性136に示す電流・電圧特性を実現する。具体的には、補正電圧に基づいてT8信号を調整することにより、電力伝送効率を変化させ、負荷電圧V5を安定させる。
図5は、コイル間距離dと負荷電圧V5の関係を示すグラフである。横軸は給電コイルL2と受電コイルL3のコイル間距離d、縦軸は負荷電圧V5を示す。非調整時特性146は、補正電圧に基づく調整をしない場合の電圧・距離特性を示す。先述したように、コイル間距離dによって共振周波数fr1が変化する。共振周波数fr1が変化し、駆動周波数foと共振周波数fr1の差が変化すると、電力伝送効率が変化する。共振周波数fr1に駆動周波数foを追随させても、負荷電圧V5はコイル間距離dによって多少変化する。
本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、調整時特性148に示す電圧・距離特性を実現する。補正電圧に基づいてT8信号を調整することにより、電力伝送効率を変化させ、負荷電圧V5を安定させる。
図6は、給電コイル回路120のインピーダンスZと駆動周波数foの関係を示すグラフである。縦軸は、給電コイル回路120(キャパシタC2と給電コイルL2の直列回路)のインピーダンスZを示す。横軸は駆動周波数foを示す。インピーダンスZは、共振時において最低値Zminとなる。共振時にZmin=0となるのが理想であるが、給電コイル回路120には若干の抵抗成分が含まれるため、Zminは通常ゼロとはならない。
駆動周波数fo=共振周波数fr1となるとき、インピーダンスZは最低となり、キャパシタC2と給電コイルL2は共振状態となる。駆動周波数foが共振周波数fr1よりも小さくなると容量性リアクタンスが優勢となるため、インピーダンスZが大きくなり、電流位相は電圧位相に対して進む。反対に駆動周波数foが共振周波数fr1よりも大きくなると誘導性リアクタンスが優勢となるため、インピーダンスZが大きくなり、電流位相は電圧位相に対して遅れる。
駆動周波数foと共振周波数fr1が乖離するほどインピーダンスZは大きくなり、電力伝送効率は低下する。したがって、駆動周波数foと共振周波数fr1の差を変化させることにより、電力伝送効率を変化させることができる。
図7は、T0〜T2信号の関係を示すタイムチャートである。制御信号発生回路170の出力であるT1信号(制御信号)はコンパレータ174の正極端子に入力される。コンパレータ174の負極端子には、計測回路126が出力するT0信号が入力される。T0信号は補正電圧を示す直流電圧信号である。制御信号発生回路170は、制御周波数fc=1.0kHzの低周波数にてノコギリ波状に変化する交流電圧信号T1を発生させる。
T0信号は、時刻t0から徐々に上昇し、時刻t1に急落する。この時刻t0〜時刻t1までの期間を「単位期間」とよぶ。時刻t1以降も同様である。制御周波数fc=1.0kHzであるから、単位期間の長さは1.0(msec)である。
T0信号は、補正電圧に応じて電圧レベルが変化する直流電圧信号である。コンパレータ174は、T0信号とT1信号を比較し、T1>T0信号となるときハイレベル、T1≦T0信号のときローレベルのT2信号を発生させる。t0〜t1の単位期間のうち、t0〜t4においてT2信号はローレベル、t4〜t1においてT2信号はハイレベルとなる。すなわち、単位期間(t0〜t1)のうち、時刻t0〜時刻t4を「無効期間」、時刻t4〜時刻t1を「有効期間」とよぶ。補正電圧によってT0信号のレベルを変化させることにより、T2信号のデューティ比が変化する。負荷電圧V5が高くなると補正電位は低下し、T2信号のデューティ比は大きくなる。反対に、負荷電圧V5が低くなると補正電位は上昇し、T2信号のデューティ比は小さくなる。すなわち、負荷電圧V5が高いほど、T2信号のデューティ比が大きくなる。なお、本実施形態においては、補正電位がゼロとなってもデューティ比が100%未満となるように設定されている。
図8は、T2、T3、T4信号の関係を示すタイムチャートである。図7に関連して説明したように、T2信号(有効信号)はt0〜t1、t1〜t2、・・・を単位期間とする制御周波数fc=1.0kHzの交流電圧信号である。T2信号がハイレベルの期間が有効期間、ローレベルの期間が無効期間である。T3信号は、基準周波数fs=10MHzという高周波数の交流電圧信号である。T3信号は正弦波でもよいが、ここでは矩形波(デジタル波形)であるとして説明する。信号生成回路122は、有効期間中に限り、T3信号をT4信号として通過させる。すなわち、T2信号とT3信号の論理積がT4信号である。
交流電圧信号であるT4信号は、オペアンプ110により増幅され、送信コイルL6からT11信号として受信コイルL5に向けて送出される。有効期間と無効期間のデューティ比は、補正電圧によって変化する。補正電圧が低いほど(負荷電圧V5が高いほど)有効期間は長くなる。単位期間のうち有効期間の占める割合を「T11信号(出力信号)のデューティ比」とよぶ。
図9は、給電コイルL2と受電コイルL3の間において発生する電磁場の波形を模式的に示す図である。電力波形138は、給電コイルL2から受電コイルL3へ給電される交流電力の波形を示す。電力波形138の周波数は、共振周波数fr1=100kHzの近辺となる。信号波形156は、送信コイルL6から受信コイルL5へ送信されるT11信号の波形を示す。信号波形156の周波数は、基準周波数fs=10MHzである。ただし、T11信号は有効期間においてのみ基準周波数fsの信号成分を含む。なお、T11信号のデューティ比を規定する制御周波数fc=1.0kHzは、共振周波数fr1=100kHzよりも格段に低い。
このように、給電コイルL2と受電コイルL3の間には、電力波形138と信号波形156が重畳された電磁場が発生している。したがって、受信コイルL5が受信した電圧信号から出力信号(T11信号)のみを抽出する必要がある。
図10は、電圧整形回路144および信号調整回路112の回路図である。まず、交流電圧VOは、電圧整形回路144によりノコギリ波状のT7信号に整形される。電圧整形回路144においては、経路上に抵抗R5が間挿され、抵抗R5にはダイオードD4が並列接続される。また、経路は、キャパシタC6を介してグランド接地される。T7信号はコンパレータ128の正極端子に入力される。T7信号は本来の電圧位相を示す信号である。
電力波形138と信号波形156が重畳された状態にあるT5信号は、バンドパスフィルタ158により基準周波数fs成分のみが抽出され、ダイオードD3で負成分をカットされて、T9信号となる。バンドパスフィルタ158は、機械的共振を利用したセラミックフィルタとして構成される。
T9信号は、平滑回路160により平滑され、オペアンプ162により増幅されてT10信号となる。更に、T10信号は、平滑回路164により平滑され、最終的に、直集電圧信号T6となる。平滑回路160は、抵抗R6とキャパシタC7を含む。平滑回路164は、抵抗R7とキャパシタC8を含む。平滑回路164の時定数は、平滑回路160の時定数よりも大きくなるように、抵抗R7、キャパシタC8が選択される。
図11は、T9、T10、T6信号の関係を示すタイムチャートである。T9信号は、T5信号から基準周波数fs成分を抽出し、負成分をカットした信号である。T9信号は、送信対象となるT4信号を再現する信号波形を有する。ただし、送信ロス等により、T4信号に比べて振幅が小さくなっている。
平滑回路160は、T9信号を平滑化してT10信号を生成する。T10信号はT2信号を再現する信号である。更に、平滑回路164は、T10信号を平滑してT6信号を生成する。T10信号のデューティ比が大きいほど、いいかえれば、T2信号のデューティ比が大きいほど、T6信号の信号レベルが高くなる。
まとめると、負荷電圧V5が高くなると補正電圧が高くなるため、コンパレータ132の負極端子に入力される電圧レベルが高くなる。この結果、T0信号(直流電圧信号)の信号レベルは低くなる。T0信号の信号レベルが低くなると、T2信号のデューティ比が大きくなる。この結果、T6信号(直流電圧信号)の信号レベルが高くなる。
図12は、T6、T7、T8信号の関係を示すタイムチャートである。デジタル信号のVO信号は、電圧整形回路144によりノコギリ波状のT7信号に整形される。T7信号は駆動周波数foの交流電圧信号であり、電圧位相を示すための信号である。T7信号は時刻t10から上昇し、時刻t11に急落する。この時刻t10〜t11までの期間がT7信号(VO信号)の単位期間である。駆動周波数foは101〜109kHzなので、単位期間の長さは0.01(msec)程度である。
T6信号は、補正電圧に応じて電圧レベルが変化する直流電圧信号である。コンパレータ128は、T6信号とT7信号を比較し、T7>T6信号となるときハイレベル、T7≦T6信号のときローレベルのT8信号を発生させる。t10〜t11の単位期間のうち、t10〜t14においてT8信号はローレベル、t14〜t11においてT8信号はハイレベルとなる。補正電圧によってT6信号のレベルが変化することにより、T8信号のデューティ比が変化する。上述したように、負荷電圧V5が高くなると、T6信号の信号レベルが高くなる。この結果、T8信号のデューティ比は小さくなるとともに、T8信号の立ち上がり時刻はT7信号(電圧信号VO)の立ち上がり時刻よりも遅くなる。
なお、補正電圧=0で調整不要の状態においては、T6信号のレベルは0近くまで低下する。この場合には、T8信号の立ち上がり時刻はT7信号の立ち上がり時刻と実質的にほとんど変わらない。
図13は、S1信号とT8信号の関係を示すタイムチャートである。時刻t10〜時刻t11の期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間である。時刻t11〜時刻t12の期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間、時刻t12〜時刻t13の期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間、時刻t13〜時刻t16の期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間であるとする。
時刻t10において交流電圧VO(S2信号)は最低値から最大値に変化する。第1期間が終了する時刻t11に交流電圧VO(S2信号)は最大値から最低値に変化する。以下、時刻t10のようにS2信号が立ち上がるタイミングを「電圧位相値」とよぶ。
駆動周波数foが共振周波数frよりも大きい場合、給電コイル回路120(LC共振回路)のインピーダンスZに誘導性リアクタンス成分が現れ、電流ISの電流位相は電圧位相に対して遅れる。電流位相を示すS1信号は時刻t10よりも遅い時刻t18に立ち上がる。以下、時刻t18のようにS1信号が立ち上がるタイミングを「電流位相値」とよぶ。図12の場合、t10−t18が位相差を示す。t10−t18<0なので電流位相が電圧位相に対して遅れている。
時刻t10にS2信号が立ち上がると、T7信号のレベルも上昇し始める。S2信号がローレベルになる時刻t11に、T7信号も急降下する。
T6信号は補正電圧の大きさによってレベルが変化する直流電圧信号である。図12では、補正電圧が検出され、負荷電圧V5が所望値からずれている状態を示している。
T7信号とT6信号は、それぞれ、コンパレータ128の正極端子と負極端子に入力され、その出力がT8信号となる。T7>T6のときにはT8はハイレベル、T7≦T6のときにはT8はローレベルとなる。図13では、時刻t10よりも後の時刻t14(以下、このようなタイミングを「補正後の電圧位相値」ともよぶ)にT7>T6となっている。T6信号の電圧レベルが、補正後の電圧位相値を決定する「基準値」となる。
位相比較回路150は、S1信号の立ち上がり時刻t18とT8信号の立ち上がり時刻t14を比較して位相差tdを検出する。実際の位相差はt10−t18(<0)であるが、位相比較回路150によって認識される位相差はt14−t18(>0)である。位相比較回路150はt14−t18に応じた位相差指示電圧SCを出力する。VCO202は、実際には電流位相が遅れているにも関わらず、位相差tdに基づいて電流位相が電圧位相より進んでいると判断する。いいかえれば、駆動周波数foが共振周波数frよりも小さいと判断し、駆動周波数foを上昇させて位相差を解消しようとする。この結果、電力伝送効率が低下し、負荷電圧V5が抑制され、T6信号のレベルが低下し、位相差が解消されるようにフィードバック制御される。
たとえば、負荷LDの抵抗値が高くなると負荷電流I5は減少し、負荷電圧V5は上昇する(図3参照)。負荷電圧V5が上昇すると計測電位が上昇し、T0信号(直流電圧信号)の電圧レベルが低下する。
T0信号の電圧レベルが低下すると、T2信号のデューティ比が大きくなる(図7参照)。この結果、T4信号(出力信号)のデューティ比も大きくなる(図8参照)。T4信号のデューティ比が大きくなると、T6信号(直流電圧信号)の電圧レベルが高くなり、T8信号の位相(補正後の電圧位相)が遅れる。S1信号の立ち上がり時刻(電流位相)がT8信号の立ち上がり時刻(補正後の電圧位相)よりも早いため、位相比較回路150は電流位相が電圧位相よりも進んでいると認識する。電流位相を遅らせるため、位相比較回路150は位相差指示電圧SCにより、VCO202に駆動周波数foの上昇を指示する。共振周波数frと駆動周波数foの乖離がいっそう大きくなり、電力伝送効率が低下するため(図6参照)、負荷電圧V5が低下する。このようなフィードバック制御により、負荷電圧V5を一定値に維持することができる。負荷電圧V5が低下したときにも同様のフィードバック制御がなされる。
T6信号の信号レベルが低下しても、補正後の電圧位相値が補正前の電圧位相値よりも進むことはない。このため、駆動周波数foは、常に、共振周波数frよりも高い範囲で制御されるため、安定的に制御しやすくなっている。
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の原理図である。第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100も、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ただし、ワイヤレス受電装置118は受電LC共振回路302を含むが、ワイヤレス給電装置116は給電LC共振回路300を含まない。すなわち、給電コイルL2は、LC共振回路の一部とはなっていない。より具体的には、給電コイルL2は、ワイヤレス給電装置116に含まれる他の回路要素とは共振回路を形成しない。給電コイルL2に対しては、直列・並列のいずれにもキャパシタが挿入されない。したがって、電力を伝送するときの周波数においては、給電コイルL2は非共振となる。
給電源VGは、共振周波数fr1の交流電流を給電コイルL2に供給する。給電コイルL2は共振しないが、共振周波数fr1の交流磁場を発生させる。受電LC共振回路302は、この交流磁場により共振する。この結果、受電LC共振回路302には大きな交流電流が流れる。本発明者の検討により、ワイヤレス給電装置116においては必ずしもLC共振回路を形成する必要がないことが判明した。給電コイルLSは、給電LC共振回路の一部ではないため、ワイヤレス給電装置116としては共振周波数fr1にて共振状態には移らない。一般的には、磁場共振型のワイヤレス給電は、給電側と受電側双方に共振回路を形成し、それぞれの共振回路を同一の共振周波数fr1(=fr0)で共振させることにより、大電力の送電が可能となると解釈されている。しかし、給電LC共振回路300を含まないワイヤレス給電装置116であっても、ワイヤレス受電装置118が受電LC共振回路302を含んでさえいれば、磁場共振型のワイヤレス給電を実現可能であることがわかった。
給電コイルL2と受電側コイルL3とが磁場結合しても、キャパシタC2が省略されているため新たな共振回路(共振回路同士の結合による新たな共振回路)が形成されない。この場合、給電コイルL2と受電側コイルL3との磁場結合は、その結合が強くなればなるほど受電LC共振回路302の共振周波数に影響を及ぼす。この共振周波数、すなわち共振周波数fr1近傍の周波数の交流電流を給電コイルL2に供給することにより、磁場共振型のワイヤレス給電が実現可能となる。また、キャパシタC2が不要であるためサイズやコスト面でも有利となる。
図15は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。第2実施形態のワイヤレス電力伝送システム100においては、キャパシタC2が省略されている。その他の点は、第1実施形態と同様である。
以上、実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム100を説明した。磁場共振型のワイヤレス給電の場合、共振周波数fr1と駆動周波数foの差により電力伝送効率を制御できる。共振周波数fr1が変化しても駆動周波数foを自動的に追随させることができるため、使用条件が変化しても、電力伝送効率を一定に維持しやすくなる。また、負荷LDやコイル間距離dが変化したときも、補正電圧に基づくフィードバック制御により負荷電圧V5を一定に保つことができる。補正電圧に基づいてT8信号を変化させることにより、電力伝送効率を事後調整できる。本発明者の実験によれば、T6信号のレベル調整によって、有意な電力損失の発生は認められなかった。
受信コイルL5は、出力信号であるT11信号だけでなく、給電電力の一部も受電する(図9参照)。信号調整回路112は、バンドパスフィルタ158により、受信コイルL5が受電した交流電圧から、信号成分だけを抽出する。基準周波数fs=10MHzと共振周波数fr1=100kHzは、周波数帯域が大きく異なるため、両周波数を分離しやすくなっている。また、受信コイルL5や送信コイルL6は、単純な、円形や四角形の1回巻きコイルとして形成可能である。
なお、受電側において基準電位を手動調整してもよい。計測電位が変化したときだけでなく基準電圧が変化したときにも補正電圧が検出され、結果として、電力伝送効率が調整される。たとえば、基準電位を低下させると、計測電位を低下させるようなフィードバック制御がなされ、負荷電圧V5も低下する。すなわち、受電側にて給電電力を制御できる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
送電制御回路200はハーフブリッジ型の回路であるが、MOS−FETを4個用いたフルブリッジ型の回路、あるいは、プッシュプル型の回路により形成されてもよい。電圧整形回路144が発生させるT7信号や制御信号発生回路170が発生させるT1信号は、ノコギリ波に限らず、三角波や正弦波など、所定期間において電圧値が漸増減する交流信号であればよい。本実施形態においては、電圧位相を調整するとして説明したが、電流位相をT0信号により調整してもよい。また、出力電圧に限らず電流や電力等に基づいてフィードバック制御してもよい。
ワイヤレス電力伝送システム100において伝送される「交流電力」は、エネルギーに限らず、信号として伝送されてもよい。アナログ信号やデジタル信号をワイヤレスにて送電する場合にも、本発明におけるワイヤレス電力伝送方法を適用可能である。