JP2011100860A - イオン注入iii族窒化物半導体基板ならびにiii族窒化物半導体層接合基板およびiii族窒化物半導体デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反りが小さいイオン注入III族窒化物半導体基板、ならびにかかる基板を用いたIII族窒化物半導体層接合基板およびIII族窒化物半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本イオン注入III族窒化物半導体基板2は、両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbで形成されているイオン注入領域20ia,20ibを含む。
【選択図】図1
【解決手段】本イオン注入III族窒化物半導体基板2は、両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbで形成されているイオン注入領域20ia,20ibを含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、イオンが注入されたIII族窒化物半導体基板、ならびにかかるイオン注入III族窒化物半導体基板を用いたIII族窒化物半導体層接合基板およびIII族窒化物半導体デバイスの製造方法に関する。
Al1-xGaxN(0≦x≦1)基板などのIII族窒化物半導体基板は、半導体デバイスに好適に用いられているが、製造コストが極めて高い。これにより、III族窒化物半導体基板が用いられている半導体デバイスの製造コストが極めて高くなる。これは、III族窒化物結晶半導体基板の製造方法に由来するものと考えられる。
すなわち、III族窒化物半導体基板は、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法により結晶成長を行なうため、結晶成長速度が低く、たとえば100時間程度の結晶成長時間でも厚さが10mm程度のIII族窒化物半導体結晶しか得られない。かかる厚さの結晶からは、厚さ200μm〜400μm程度のIII族窒化物半導体自立基板は、少量(たとえば、10枚程度)しか切り出せない。
しかし、III族窒化物半導体基板の切り出し枚数を増加させるため、III族窒化物半導体結晶から切り出すIII族窒化物半導体層の厚さを小さくすると、機械的強度が低下し、自立基板となり得ない。したがって、III族窒化物半導体結晶から切り出される薄いIII族窒化物半導体層を補強する方法が必要となる。
III族窒化物半導体層の補強方法として、III族窒化物半導体層と化学組成の異なる支持基板にIII族窒化物半導体層を接合した基板(以下、III族窒化物半導体層接合基板という)を製造する方法がある。かかるIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法として、特開2006−210660号公報(以下、特許文献1という)は、第1の窒化物半導体基板の表面近傍にイオンを注入する工程と、その第1の窒化物半導体基板の表面側を第2の基板に重ね合わせる工程と、重ね合わせた上記2枚の基板を熱処理する工程と、イオン注入された層を境として上記第1の窒化物半導体基板の大部分を上記第2の基板から引き剥がす工程とを含む半導体基板の製造方法を開示する。
しかし、特許文献1の製造方法においては、厚さが400μm程度のGaN基板が用いられているため、イオンの注入により基板に大きな反りが発生し、イオンを注入した基板を他の基板に接合しさらに分離する際にGaN基板が割れたり、GaN基板と他の基板とを均一に接合することができないなどの問題があった。
一方、窒化物半導体基板の反りを調節する方法として、特開2005−136167号公報(以下、特許文献2という)は、反りのある窒化物半導体基板の凹状に反っている面を機械研削し加工変質層を導入することによって凹状に反っている面を延ばし平坦に近づけ反りを低減することを特徴とする窒化物半導体基板の製造方法を開示する。
特許文献2の製造方法において、イオンが注入された面が凸状に反っている場合には、凹状に反っている面であるイオンが注入されていない面に加工変質層を導入することにより基板の反りの低減が可能である。しかし、かかる場合でも、基板の厚さが100μm以下に小さいと機械研削の際に基板にクラックが発生しやすい問題があった。
また、特許文献2の製造方法において、イオンが注入された面が凹状に反っている場合には、以下の理由により、凹に反っている面であるイオンが注入されていない面に加工変質層を導入することができないという問題があった。すなわち、イオン注入領域(イオンが注入された領域をいう。以下同じ。)は、好ましくは表面から0.03μm以上100μm以下の深さに形成されているため、イオン注入された表面を機械研削するとイオン注入領域の少なくとも一部が除去されてしまう。
本発明は、上記問題を解決して、反りが小さいイオン注入III族窒化物半導体基板、ならびにかかる基板を用いたIII族窒化物半導体層接合基板およびIII族窒化物半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、両主面側に両主面からそれぞれ所定の深さで形成されているイオン注入領域を含むイオン注入III族窒化物半導体基板である。本発明にかかるイオン注入III族窒化物半導体基板において、厚さを50μm以上300μm以下とすることができる。また、上記イオン注入領域には水素イオンが注入され得る。また、上記イオン注入領域において、各イオン注入領域における水素イオンのドーズ量を1×1017cm-2以上1×1018cm-2以下とすることができる。
また、本発明は、III族窒化物半導体層と、III族窒化物半導体層と化学組成が異なる支持基板と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法である。すなわち、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板の両主面側に両主面からそれぞれ所定の深さにイオンを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程と、イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面に支持基板を接合する工程と、イオン注入III族窒化物半導体基板を、第1の主面側に第1の主面から所定の深さで形成されている第1のイオン注入領域において分離して、支持基板に接合したIII族窒化物半導体層を形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板を得る工程と、を備えるIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法である。
また、本発明は、III族窒化物半導体層と、III族窒化物半導体層と化学組成が異なる支持基板と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板と、III族窒化物半導体層接合基板のIII族窒化物半導体層の主面上に形成されている少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法である。すなわち、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板の両主面側に両主面からそれぞれ所定の深さにイオンを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程と、イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面に支持基板を接合する工程と、イオン注入III族窒化物半導体基板を、第1の主面側に第1の主面から所定の深さで形成されている第1のイオン注入領域において分離して、支持基板に接合したIII族窒化物半導体層を形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板を得る工程と、III族窒化物半導体層接合基板のIII族窒化物半導体層の主面上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層を形成する工程と、を備えるIII族窒化物半導体デバイスの製造方法である。
本発明によれば、反りが小さいイオン注入III族窒化物半導体基板、ならびにかかる基板を用いたIII族窒化物半導体層接合基板およびIII族窒化物半導体デバイスの製造方法を提供できる。
(実施形態1)
図1を参照して、本発明の一実施形態であるイオン注入III族窒化物半導体基板2は、両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbで形成されているイオン注入領域20ia,20ibを含む。
図1を参照して、本発明の一実施形態であるイオン注入III族窒化物半導体基板2は、両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbで形成されているイオン注入領域20ia,20ibを含む。
本実施形態のイオン注入III族窒化物半導体基板2は、かかるイオン注入領域20ia,20ibが形成されることにより、イオン注入III族窒化物半導体基板2はイオン注入領域20ia,20ibにおいて分離され得る。
ここで、イオン注入領域20ia,20ibとは、上記の分離に寄与するドーズ量以上のイオンが存在する領域をいい、両主面20a,20bからそれぞれ深さDa−ΔDa〜Da+ΔDaおよび深さDb−ΔDb〜Db+ΔDbの領域であり、両主面20a,20bからそれぞれ深さDaおよび深さDbの領域においてイオンのドーズ量が最大になる。イオンが注入されている深さDa,Dbは、特に制限はないが、分離を制御する観点から、0.03μm以上100μm以下が好ましく、0.03μm以上50μm以下がより好ましく、0.03μm以上10μm以下がさらに好ましい。深さDa,Dbが、0.03μmより小さいと基板を分離する際に割れやすくなると共に表面を平坦化することが困難となり、100μmより大きいとイオンの分布が広くなり分離深さを制御することが困難となる。また、イオン注入領域20ia,20ibの深さの分布ΔDa,ΔDbは、イオンの種類および注入方法によって異なるが、それぞれ概ね0.02Da〜0.5Daおよび0.02Db〜0.5Db程度である。
また、本実施形態のイオン注入III族窒化物半導体基板2は、かかるイオン注入領域20ia,20ibが両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbに形成されているため、いずれか一方の主面にその主面から所定の深さにイオン注入領域が形成されているIII族窒化物半導体基板(図示せず)に比べて、基板の反りWが小さくなる。
図1を参照して、III族窒化物半導体基板20の第1の主面20a側に第1の主面20aから深さDaに第1のイオン注入領域20iaを形成すると、第1の主面20aが延びるため、基板の反りWが大きくなる。こうして、第1のイオン注入領域20iaが形成されて第1の主面20aが延びたIII族窒化物半導体基板20の第2の主面20b(第1の主面に対向する反対側の主面をいう。以下同じ。)側に第2の主面20bから深さDbに第2のイオン注入領域20ibを形成すると、第2の主面20bが延びるため、基板の反りWが小さくなる。
このため、イオン注入III族窒化物半導体基板(イオンを注入したIII族窒化物半導体基板)を、III族窒化物半導体基板と化学組成が異なる支持基板に接合する際に、イオン注入III族窒化物半導体基板が割れたりすることがなく、イオン注入III族窒化物半導体基板と支持基板とを均一に接合することができる。
ここで、図1を参照して、イオン注入III族窒化物半導体基板2における基板の反りWは、所定の直径を有する基板の第1の主面20a内または第2の主面20b内における最凸部と最凹部との高低差で定義する。したがって、基板の第1の主面20aまたは第2の主面20bが球面状に湾曲して反っている場合は、基板の反りはこれらの主面20a,20bの中央部と円周部との高低差となる。
図1(A)および(B)を参照して、III族窒化物半導体基板20の反りWについて、窒素原子が主面に現れているN原子主面を第1の主面20aとし、III族元素原子が主面に現れているIII族元素原子主面を第2の主面20bとするとき、N原子主面(第1の主面20a)が凹状でありIII族元素原子主面(第2の主面20b)が凸状)になるような方向の反りは、負の符号(−)をつけて−Wと表し(図1(A))、N原子主面(第1の主面20a)が凸状(すなわち、III族元素原子主面(第2の主面20b)が凹状)になるような方向の反りは正の符号(+)をつけて+Wと表す。ここで,III族窒化物半導体基板20の反りWは、触針式表面粗さ測定機、光干渉式フラットネステスターなどを用いて測定することができる。また、III族窒化物半導体基板におけるN原子主面(第1の主面)およびIII族元素原子主面(第2の主面)は、基板の2箇所に付けたオリエンテーションフラットにより識別できる。また、KOH水溶液、NaOH水溶液などの強アルカリでエッチングすることによっても、識別できる。これは、強アルカリにより、基板のN原子主面(第1の主面)は容易にエッチングされて表面が粗くなるが、III族元素原子主面(第2の主面)はエッチングされないため表面が粗くならないため、両主面の識別が可能となるからである。
本実施形態のイオン注入III族窒化物半導体基板2において、イオン注入領域20ia,20ibに注入されているイオンは、イオン注入領域における基板の分離に支障がないかぎり特に制限はないが、III族窒化物半導体基板20における結晶欠陥の発生などによる結晶性の低下を抑制する観点から、水素イオン、ヘリウムイオンなどの質量が小さい元素のイオンが好ましく、水素イオンが特に好ましい。
本実施形態のイオン注入III族窒化物半導体基板2において、各イオン注入領域20ia,20ibに注入されている水素イオンのドーズ量は、特に制限はないが、1×1017cm-2以上1×1018cm-2以下であることが好ましい。水素イオンのドーズ量が1×1017cm-2より小さいとイオン注入領域の脆化が小さくイオン注入領域における基板の分離が困難となり、水素イオンのドーズ量が1×1018cm-2より大きいとイオン注入領域の結晶欠陥の発生などによる結晶性の低下が大きくなる。
(実施形態2)
図2を参照して、本発明の他の実施形態であるIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、III族窒化物半導体層20sと、III族窒化物半導体層20sと化学組成が異なる支持基板10と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法である。
図2を参照して、本発明の他の実施形態であるIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、III族窒化物半導体層20sと、III族窒化物半導体層20sと化学組成が異なる支持基板10と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法である。
すなわち、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板の両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,DbにイオンIを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板2を形成する工程(図2(A))と、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する工程(図2(B))と、イオン注入III族窒化物半導体基板2を、第1の主面20a側に第1の主面20aから所定の深さDaで形成されている第1のイオン注入領域20iaにおいて分離して、支持基板10に接合したIII族窒化物半導体層20sを形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板1を得る工程(図2(C))と、を備える。
本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法によれば、上記工程を備えることにより、イオン注入III族窒化物半導体基板2の反りを小さくして、イオン注入III族窒化物半導体基板2と支持基板10とを接合することが可能となり、歩留まりよく反りの小さいIII族窒化物半導体層接合基板1を製造することができる。以下、各工程について、詳細に説明する。
(イオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程)
図2(A)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法は、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板20の両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,DbにイオンIを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板2を形成する工程を備える。
図2(A)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法は、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板20の両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,DbにイオンIを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板2を形成する工程を備える。
上記工程により得られるイオン注入III族窒化物半導体基板2は、基板の両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ深さDa,Dbにイオン注入領域20ia、20ibが形成されているため、基板の反りが小さいかまたはほとんど無い。なお、図2においては、小さいかまたはほとんど無い反りを省略して基板を描いている。
イオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程において、上記のIII族窒化物半導体基板20の両主面20a,20b側であって両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,DbにイオンIを注入することにより、III族窒化物半導体基板20の両主面20a,20b側であって両主面20a,20bからそれぞれ深さDa−ΔDa〜Da+ΔDaおよび深さDb−ΔDb〜Db+ΔDbさの領域にイオン注入領域20ia,20ibが形成される。かかるイオン注入領域20ia,20ibは基板が脆化されているため、かかるイオン注入領域20ia,20ibにおいてIII族窒化物半導体基板20を分離することができる。イオンIを注入する深さDaおよび深さDbは、特に制限はないが、分離を制御する観点から、0.03μm以上100μm以下が好ましく、0.03μm以上50μm以下がより好ましく、0.03μm以上10μm以下がさらに好ましい。深さDaまたは深さDbが、0.03μmより小さいと基板を分離する際に割れやすくなると共に表面を平坦化することが困難となり、100μmより大きいとイオンの分布が広くなり分離深さを制御することが困難となる。また、イオン注入領域20ia,20ibの深さの分布ΔDa,ΔDbは、イオンIの種類および注入方法によって異なるが、それぞれ概ね0.02Da〜0.5Daおよび0.02Db〜0.5Db程度である。
イオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程において、III族窒化物半導体基板20に注入されるイオンIは、特に制限はないが、III族窒化物半導体基板20における結晶欠陥の発生などによる結晶性の低下を抑制する観点から、水素イオン、ヘリウムイオンなどの質量が小さい元素のイオンが好ましく、水素イオンが特に好ましい。
イオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程において、両主面20a,20bに注入する水素イオンのドーズ量は、特に制限はないが、1×1017cm-2以上1×1018cm-2以下であることが好ましい。水素イオンのドーズ量が1×1017cm-2より小さいとイオン注入領域の脆化が小さくイオン注入領域における基板の分離が困難となり、水素イオンのドーズ量が1×1018cm-2より大きいとイオン注入領域の結晶欠陥の発生などによる結晶性の低下が大きくなる。
(イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面に支持基板を接合する工程)
図2(B)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する工程を備える。
図2(B)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する工程を備える。
本支持基板10を接合する工程において用いられるイオン注入III族窒化物半導体基板2は反りが小さいかまたはほとんど無いため、イオン注入III族窒化物半導体基板2に割れを発生させること無くイオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を均一に接合することができる。
ここで、支持基板10と接合するイオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aは、特に制限はなく、N原子主面であってもIII族元素原子主面であってもよい。後述するように、図2(C)を参照して、接合する面がN原子主面(第1の主面)であると、III族窒化物半導体層20sの主面20mがIII族元素原子主面であるIII族窒化物半導体層接合基板1が得られる。また、接合する面がIII族元素原子主面(第2の主面)であると、III族窒化物半導体層20sの主面20mがN原子主面であるIII族窒化物半導体層接合基板1が得られる。III族窒化物半導体層20sの主面20mがGa原子主面であるIII族窒化物半導体層接合基板1を得る観点から、支持基板10を接合するイオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aは、N原子主面である場合が多い。
イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する方法には、特に制限はないが、接合後高温で接合強度を保持できる点から、接合する面の表面を洗浄して直接張り合わせた後600℃〜1200℃程度に昇温して接合することによる直接接合法、プラズマやイオンなどで接合する面を活性化させ室温(たとえば10℃〜30℃)〜400℃程度の低温で接合することによる表面活性化法などが好ましく用いられる。
ここで、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに接合する支持基板10は、特に制限はないが、製造されたIII族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20s上に、III族窒化物半導体エピタキシャル層を成長させる環境に耐え得る観点から、耐熱温度は800℃以上が好ましく、1200℃以上であることがより好ましい。さらに、800℃以上においても耐腐食性を有することが好ましく、1200℃以上においても耐腐食性を有することがより好ましい。ここで、耐腐食性とは、塩化水素(HCl)ガス、アンモニア(NH3)ガスなどの腐食性の結晶成長雰囲気ガスに腐食されないことをいう。かかる観点から、好ましい支持基板として、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、AlN基板、Si3N4基板、TiN基板、SiC基板、AlSiC基板、AlTiC基板、ZnSe基板、Si基板、SiO2層形成Si基板、ZnO基板、ZnS基板、石英基板、Mo基板、カーボン基板、ダイヤモンド基板、Ga2O3基板、ZrB2基板などが挙げられる。また、これらの基板の上に、Pt、Ti、Au、Ni、Mo、Wなどの金属膜やこれらの金属の合金膜を保護膜として付けてもよい。なお、GaAs基板、InP基板、GaP基板などは、耐熱性および耐腐食性は上記基板に比べて劣るが、基板表面に上記の保護膜を付けるなどをすれば使用可能である。
また、支持基板10は、それが用いられるIII族窒化物半導体デバイスの種類によっても好適なものが異なる。たとえば、LED(発光ダイオード)などの光デバイスにおいては、光の取り出し効率が高い観点から光透過性の支持基板が好ましく、両側に電極を有するデバイスの設計を可能にする観点から導電性の支持基板が好ましい。また、SBD(ショットキーバリアダイオード)などの電子デバイスにおいては、電極形成工程のコストを低減する観点から、導電性の支持基板が好ましい。光透過性の支持基板としては、AlN基板、サファイア基板、スピネル基板、Ga2O3基板、MgO基板、ランガサイト基板、ダイヤモンド基板、LiTaO3基板、LiNbO3基板、石英基板などが挙げられる。導電性の支持基板としては,SiC基板などの炭化物基板、Si基板、GaAs基板などの半導体基板、Ga2O3基板などの酸化物基板、Mo基板、W基板、Ti基板などの金属基板が挙げられる。
上記の支持基板10は、必ずしも単結晶である必要はなく、多結晶、焼結体、アモルファスであってもよい。また、イオン注入III族窒化物半導体基板2と支持基板10との接合を容易にかつ強固にする観点から、支持基板10は、弾性率が10GPa(ギガパスカル:1×109Pa、以下同じ)〜50GPa程度と塑性変形しやすくかつ表面粗さRaが0.1nm〜5nm程度と適度であるものが好ましい。
また、イオン注入III族窒化物半導体基板2と支持基板10とは、それらの間に中間層を介在させて、接合させてもよい。かかる中間層は、接合強度を高める観点から、Pd、Ti、Pt、AuおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属を含む金属層が好ましい。また、かかる金属層の厚さは、接合された基板にクラックおよび大きな反りを発生させない観点から、10nm以上500nm以下程度が好ましい。
(III族窒化物半導体層接合基板を得る工程)
図2(C)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、イオン注入III族窒化物半導体基板2を、第1の主面20a側に第1の主面20aから所定の深さDaで形成されている第1のイオン注入領域20iaにおいて分離して、支持基板10に接合したIII族窒化物半導体層20sを形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板1を得る工程を備える。
図2(C)を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体層接合基板1の製造方法は、イオン注入III族窒化物半導体基板2を、第1の主面20a側に第1の主面20aから所定の深さDaで形成されている第1のイオン注入領域20iaにおいて分離して、支持基板10に接合したIII族窒化物半導体層20sを形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板1を得る工程を備える。
かかる工程により、イオン注入III族窒化物半導体基板2は、支持基板10に接合しているIII族窒化物半導体層20sと残部III族窒化物半導体基板20rとに分離される。こうして、支持基板10に厚さTDaのIII族窒化物半導体層20sが接合したIII族窒化物半導体層接合基板1が得られる。
第1のイオン注入領域20iaにおいてイオン注入III族窒化物半導体基板2を分離する方法には、何らかのエネルギーを与える方法であれば特に制限はなく、第1のイオン注入領域20iaに応力を加える方法であっても、第1のイオン注入領域20iaに熱を加える方法であってもよい。また、第1のイオン注入領域20iaに、光を照射する方法、または、超音波を印加する方法であってもよい。第1のイオン注入領域20iaは、脆化しているため、応力、熱、光、または超音波などによるエネルギーを受けることにより、容易に分離する。
ここで、第1のイオン注入領域20iaは、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aから深さDa−ΔDa〜深さDa+ΔDaの広がりを有するが、第1の主面20aから深さDaの領域(面領域)においてイオンのドーズ量が最大となり最も脆くなりやすい。したがって、イオン注入III族窒化物半導体基板2は、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aから深さDaの領域(面領域)またはその付近において分離する。したがって、イオンが注入された深さDaとIII族窒化物半導体層20sの厚さTDaはほぼ同じ大きさである。
なお、イオン注入III族窒化物半導体接合基板2には、第2の主面20b側に第2の主面20bから所定の深さDbで形成されている第2のイオン注入領域20ibがあり、かかる第2のイオン注入領域20ibも脆化している。このため、イオン注入III族窒化物半導体接合基板2は、第2のイオン注入領域20ibにおいても分離しやすくなっている。ここで、第2のイオン注入領域20ibに比べて第1のイオン注入領域iaにおいて優先的に分離させるための方法としては、第1の主面にイオンを注入する際に、第1の主面に垂直な方向から傾斜した方向からイオン注入したり、第1の主面を回転させたりして、チャネリングを抑制することにより、第1のイオン注入領域における水素イオンの深さ方向の濃度分布を第2のイオン注入領域に比べてシャープにする方法、第1のイオン注入領域における水素イオンのドーズ量を第2のイオン注入領域に比べて多くする方法などがある。
(実施形態3)
図3および図4を参照して、本発明のさらに他の実施形態であるIII族窒化物半導体デバイス3,4の製造方法は、III族窒化物半導体層20sと、III族窒化物半導体層20sと化学組成が異なる支持基板10と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板1と、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に形成されている少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30,40と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法である。
図3および図4を参照して、本発明のさらに他の実施形態であるIII族窒化物半導体デバイス3,4の製造方法は、III族窒化物半導体層20sと、III族窒化物半導体層20sと化学組成が異なる支持基板10と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板1と、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に形成されている少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30,40と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法である。
図2、図3および図4を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス3の製造方法は、厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板20の両主面20a,20b側に両主面20a,20bからそれぞれ所定の深さDa,Dbにイオンを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板2を形成する工程(図2(A))と、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する工程(図2(B))と、イオン注入III族窒化物半導体基板2を、第1の主面20a側に第1の主面20aから所定の深さDaで形成されている第1のイオン注入領域20iaにおいて分離して、支持基板10に接合したIII族窒化物半導体層20sを形成することにより、III族窒化物半導体層接合基板1を得る工程(図2(C))と、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30,40を形成する工程と、を備える。
ここで、イオン注入III族窒化物半導体基板2を形成する工程、イオン注入III族窒化物半導体基板2の第1の主面20aに支持基板10を接合する工程およびIII族窒化物半導体層接合基板1を得る工程については、実施形態2と同様であり、それらの説明は繰り返さない。
本実施形態のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法は、上記のようにして得られたIII族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、結晶性の高いIII族窒化物半導体エピタキシャル層30,40を1層以上成長させることができるため、特性の高いIII族窒化物半導体デバイス3,4が得られる。
少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30,40を成長させる方法は、特に制限はないが、作業性が良好な観点から、MOCVD法、HVPE法、MBE法などの気相法が好ましく用いられる。高圧溶融法、アモノサーマル法もしくはフラックス法などの液相法、または昇華法でも可能である。
(実施形態3A)
図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス3において、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30を形成する工程の一例として、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、MOCVD法を用いて、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30として、n型Al0.1Ga0.9N中間層31、n型GaNクラッド層32、In0.01Ga0.99N障壁層33bおよびIn0.1Ga0.9N井戸層33wの対を6対重ねて最上層のIn0.1Ga0.9N井戸層33w上にさらにIn0.01Ga0.99N障壁層33bを形成した多重量子井戸構造を有する発光層33、p型Al0.12Ga0.88Nクラッド層34、およびp型GaNコンタクト層35を順次成長させる。次いで、p型GaNコンタクト層35の主面の中央部上に、EB(電子ビーム)蒸着法により、p側電極36としてNi/Au電極を形成する。次いで、III族窒化物半導体層接合基板1の支持基板10の主面上に、EB蒸着法により、n側電極37としてTi/Al/Ti/Au電極を形成する。このようにして、III族窒化物半導体デバイス3として、特性の高い光デバイス(詳細にはLED(発光ダイオード))が得られる。
図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス3において、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30を形成する工程の一例として、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、MOCVD法を用いて、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30として、n型Al0.1Ga0.9N中間層31、n型GaNクラッド層32、In0.01Ga0.99N障壁層33bおよびIn0.1Ga0.9N井戸層33wの対を6対重ねて最上層のIn0.1Ga0.9N井戸層33w上にさらにIn0.01Ga0.99N障壁層33bを形成した多重量子井戸構造を有する発光層33、p型Al0.12Ga0.88Nクラッド層34、およびp型GaNコンタクト層35を順次成長させる。次いで、p型GaNコンタクト層35の主面の中央部上に、EB(電子ビーム)蒸着法により、p側電極36としてNi/Au電極を形成する。次いで、III族窒化物半導体層接合基板1の支持基板10の主面上に、EB蒸着法により、n側電極37としてTi/Al/Ti/Au電極を形成する。このようにして、III族窒化物半導体デバイス3として、特性の高い光デバイス(詳細にはLED(発光ダイオード))が得られる。
(実施形態3B)
図4を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス4において、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40を形成する工程の一例として、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40として、n+型GaNバリア層41およびn-型GaNドリフト層42を順次成長させる。次いで、n-型GaNドリフト層42の主面上に、EB蒸着法により、ショットキー電極43としてPt電極を形成する。次いで、III族窒化物半導体層接合基板1の支持基板10の主面上に、EB蒸着法により、オーミック電極44としてTi/Al/Ti/Au電極を形成する。このようにして、III族窒化物半導体デバイス4として、特性の高い電子デバイスが得られる。
図4を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス4において、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40を形成する工程の一例として、III族窒化物半導体層接合基板1のIII族窒化物半導体層20sの主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40として、n+型GaNバリア層41およびn-型GaNドリフト層42を順次成長させる。次いで、n-型GaNドリフト層42の主面上に、EB蒸着法により、ショットキー電極43としてPt電極を形成する。次いで、III族窒化物半導体層接合基板1の支持基板10の主面上に、EB蒸着法により、オーミック電極44としてTi/Al/Ti/Au電極を形成する。このようにして、III族窒化物半導体デバイス4として、特性の高い電子デバイスが得られる。
[イオン注入III族窒化物半導体基板の作製]
(実施例I)
1.GaN基板の準備
HVPE法により成長させた直径2インチ(5.08cm)のGaN母結晶を所定の厚さにスライスして、複数のGaNウエハを切り出し、各GaNウエハの主面を研磨により平坦化して、複数のGaN基板を得た。次に、複数のGaN基板について、以下の洗浄を行った。60℃に加熱したイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、その後70℃に加熱したSC-1溶液(NH4OH、H2O2およびH2Oの混合溶液をいう。以下同じ。)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、70℃に加熱したSC-2溶液(HCl、H2O2およびH2Oの混合溶液をいう。以下同じ。)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、希フッ酸水溶液で5分間洗浄し、純水で10分間洗浄した後、IPAを用いて蒸気乾燥した。
(実施例I)
1.GaN基板の準備
HVPE法により成長させた直径2インチ(5.08cm)のGaN母結晶を所定の厚さにスライスして、複数のGaNウエハを切り出し、各GaNウエハの主面を研磨により平坦化して、複数のGaN基板を得た。次に、複数のGaN基板について、以下の洗浄を行った。60℃に加熱したイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、その後70℃に加熱したSC-1溶液(NH4OH、H2O2およびH2Oの混合溶液をいう。以下同じ。)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、70℃に加熱したSC-2溶液(HCl、H2O2およびH2Oの混合溶液をいう。以下同じ。)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、希フッ酸水溶液で5分間洗浄し、純水で10分間洗浄した後、IPAを用いて蒸気乾燥した。
こうして研磨および洗浄がされた後、各GaN基板の厚さは、実施例I−1では298μm、実施例I−2では204μm、実施例I−3では105μm、実施例I−4では65μmであった。また、各GaN基板の反りは、実施例I−1では−21μm、実施例I−2では−27μm、実施例I−3では−29μm、実施例I−4では−35μmであった。このとき、反りWの方向と符号との関係は、図1(A)および(B)を参照して、N原子主面(第1の主面20a)が凸状でGa原子主面(第2の主面20b)が凹状となる方向の反りを負(−)符号をつけて−Wと表し、N原子主面(第1の主面20a)が凹状でGa原子主面(第2の主面20b)が凹状となる方向の反りを正(+)符号をつけて+Wと表した。
ここで、各GaN基板は、加工によりウエハに作製された第一オリエンテーションフラットと第二オリエンテーションフラットにより、N原子主面(第1の主面)とGa原子主面(第2の主面)とを識別した。加工の際、N原子主面(第1の主面)とGa原子主面(第2の主面)の識別は、KOH水溶液、NaOH水溶液などの強アルカリでエッチングすることにより行った。強アルカリにより、基板のN原子主面(第1の主面)は容易にエッチングされて表面が粗くなるが、III族元素原子主面(第2の主面)はエッチングされないため表面が粗くならないため、両主面の識別が可能となる。
なお、上記GaN基板は、いずれも、表面粗さRa(JIS B0601に規定する算術平均粗さRaをいう。以下同じ。)が1.5nm以下、最大高低差P−V(最高点Pと最低点Vとの間の高低差をいう。以下同じ。)が10nm以下、全厚み変動ばらつきTTV(基板の一方の主面を真空吸着してできた平面を基準面とし、その基準面から他方の主面の最も高い場所と最も低い場所との差をいう。以下同じ。)は10μm以下のものを用いた。ここで、GaN基板の表面粗さRaおよび最大高低差P−Vは菱化システム社のマイクロマップにより80μm角の範囲内で測定し、GaN基板の反りWおよび全厚み変動ばらつきTTVは、光干渉により表面を二次元的に測定できるニデック社のフラットネステスターにより測定した。
2.GaN基板のN原子主面(第1の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、SIMS(2次イオン質量分析法)で測定したところ、3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入傾斜角度を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、SIMS(2次イオン質量分析法)で測定したところ、3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入傾斜角度を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面にイオン注入した後、各GaN基板の反りは、実施例I−1では−66μm、実施例I−2では−78μm、実施例I−3では−85μm、実施例I−4では−87μmであった。すなわち、いずれのGaN基板においても、反りが大きくなった。
3.GaN基板のGa原子主面(第2の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面およびGa原子主面にイオン注入した後、各GaN基板の反りは、実施例I−1では−19μm、実施例I−2では−29μm、実施例I−3では−28μm、実施例I−4では−36μmであった。上記の結果を表1にまとめた。
表1より明らかなように、N原子主面(第1の主面)およびGa原子主面(第2の主面)の両主面側にイオンを注入することにより、イオン注入GaN基板の反りは、イオン注入前のGaN基板の反りと同程度にまで小さくなった。すなわち、N原子主面への水素イオンの注入による基板の反りの増大をGa原子主面への水素イオンの注入により相殺することができた。
(実施例II)
1.GaN基板の準備
実施例Iと同様にして、研磨および洗浄された複数のGaN基板を準備した。各GaN基板の厚さは302μmであった。また、各GaN基板の反りは−26μmであった。すなわち、負(−)符号の反り、すなわち、N原子主面(第1の主面)が凸状でGa原子主面(第2の主面)が凹状となる方向の反りを有する複数のGaN基板を準備した。
1.GaN基板の準備
実施例Iと同様にして、研磨および洗浄された複数のGaN基板を準備した。各GaN基板の厚さは302μmであった。また、各GaN基板の反りは−26μmであった。すなわち、負(−)符号の反り、すなわち、N原子主面(第1の主面)が凸状でGa原子主面(第2の主面)が凹状となる方向の反りを有する複数のGaN基板を準備した。
2.GaN基板のN原子主面(第1の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入角を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入角を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面(第1の主面20a)側にイオン注入した後の各GaN基板の反りは、比較例IIおよび実施例II−1〜II−5のいずれについても、−68μmであった。すなわち、いずれのGaN基板においても、反りが大きくなった。
3.GaN基板のGa原子主面(第2の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のうち実施例II−1〜II−5のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、実施例II−1では1×1017cm-2、実施例II−2では3×1017cm-2、実施例II−3では5×1017cm-2、実施例II−4では8×1017cm-2、実施例II−5では1×1018cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のうち実施例II−1〜II−5のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、実施例II−1では1×1017cm-2、実施例II−2では3×1017cm-2、実施例II−3では5×1017cm-2、実施例II−4では8×1017cm-2、実施例II−5では1×1018cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面(第1の主面20a)側およびGa原子主面(第2の主面20b)側にイオン注入した後の各GaN基板の反りは、実施例II−1では−52μm、実施例II−2では−31μm、実施例II−3では−20μm、実施例II−4では−10μm、実施例II−5では−5μmであった。上記の結果を表2にまとめた。
また、表2に基づいて、少なくともN原子主面(第1の主面)側に水素イオンが注入されたイオン注入GaN基板(イオン注入III族窒化物半導体基板)において、Ga原子主面(第2の主面)側に注入された水素イオンのドーズ量と基板の反りとの関係を図5に示した。
表2および図5から明らかなように、N原子主面(第1の主面)およびGa原子主面(第2の主面)にイオンを注入する前のGaN基板の反りの符号が負(−)の場合(すなわち、第1の主面であるN原子主面が凸状に反り、第2の主面であるGa原子主面が凹状になるような方向に反っている場合)は、N原子主面(第1の主面)側に注入される水素イオンのドーズ量よりもGa原子主面(第2の主面)側に注入される水素イオンのドーズ量が増加する程、N原子主面(第1の主面)側およびGa原子主面(第2の主面)側への水素イオンの注入後の基板の反りが小さくなった。一方、Ga原子主面(第2の主面)側に注入される水素イオンのドーズ量が増加する程、イオン注入のコストが高くなりまたGaN基板の脆化が大きくなる。
(実施例III)
1.GaN基板の準備
実施例Iと同様にして、研磨および洗浄された複数のGaN基板を準備した。各GaN基板の厚さは307μmであった。また、各GaN基板の反りは+48μmであった。すなわち、正(+)符号の反り、すなわち、N原子主面(第1の主面)が凹状でGa原子主面(第2の主面)が凸状となる方向の反りを有する複数のGaN基板を準備した。
1.GaN基板の準備
実施例Iと同様にして、研磨および洗浄された複数のGaN基板を準備した。各GaN基板の厚さは307μmであった。また、各GaN基板の反りは+48μmであった。すなわち、正(+)符号の反り、すなわち、N原子主面(第1の主面)が凹状でGa原子主面(第2の主面)が凸状となる方向の反りを有する複数のGaN基板を準備した。
2.GaN基板のN原子主面(第1の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入角を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られた複数のGaN基板のN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は3×1017cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は4°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に対して4°の傾斜角度)であった。ここで、イオン注入角を4°としたのは、チャネリングを抑制するためである。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDaは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面(第1の主面20a)側にイオン注入した後の各GaN基板の反りは、比較例IIおよび実施例III−1〜III−5のいずれについても、+18μmであった。
3.GaN基板のGa原子主面(第2の主面)側へのイオン注入
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のうち実施例II−1〜II−5のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、実施例III−1では1×1017cm-2、実施例III−2では3×1017cm-2、実施例III−3では5×1017cm-2、実施例III−4では8×1017cm-2、実施例III−5では1×1018cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
次に、図1および図2(A)を参照して、上記で得られたN原子主面(第1の主面20a)側に水素イオンが注入された複数のGaN基板のうち実施例II−1〜II−5のGaN基板のGa原子主面(第2の主面20b)側に水素イオンを注入した。水素イオンのドーズ量は、実施例III−1では1×1017cm-2、実施例III−2では3×1017cm-2、実施例III−3では5×1017cm-2、実施例III−4では8×1017cm-2、実施例III−5では1×1018cm-2であった。イオン注入エネルギーは80keVで、イオン注入時の基板の温度は60℃で、イオン注入傾斜角度は0°(すなわち<0001>方向(c軸方向)に平行)であった。複数のGaN基板に注入されたイオンの深さDbは、イオン注入GaN基板の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、いずれのイオン注入GaN基板についても約0.5μmであった。
N原子主面(第1の主面20a)側およびGa原子主面(第2の主面20b)側にイオン注入した後の各GaN基板の反りは、実施例III−1では+36μm、実施例III−2では+53μm、実施例III−3では+63μm、実施例III−4では+73μm、実施例III−5では+78μmであった。上記の結果を表3にまとめた。
また、表3に基づいて、少なくともN原子主面(第1の主面)側に水素イオンが注入されたイオン注入GaN基板において、Ga原子主面(第2の主面)側に注入された水素イオンのドーズ量と基板の反りとの関係を図6に示す。
表3および図6から明らかなように、N原子主面(第1の主面)側およびGa原子主面(第2の主面)側にイオンを注入する前のGaN基板の反りの符号が正(+)の場合(すなわち、第1の主面であるN原子主面が凹状に反り、第2の主面であるGa原子主面が凸状になるような方向に反っている場合)は、N原子主面(第1の主面)側に注入される水素イオンのドーズ量よりもGa原子主面(第2の主面)側に注入される水素イオンのドーズ量が増加する程、N原子主面(第1の主面)側およびGa原子主面(第2の主面)側への水素イオン注入後の基板の反りが大きくなった。すなわち、イオンを注入する前のGaN基板の反りの符号が正(+)の場合は、N原子主面(第1の主面)への水素イオンのドーズ量よりもGa原子主面(第2の主面)への水素イオンのドーズ量が少ない方がよい。
[III族窒化物半導体層接合基板の作製]
(実施例IV)
1.支持基板の加工
図2を参照して、本実施例においては、光デバイスであるLED用の支持基板10として単結晶のGa2O3基板(実施例IV−1)と、電子デバイスであるSBD用の支持基板10として多結晶のMo基板(実施例IV−2)とを準備した。上記支持基板(Ga2O3基板およびMo基板)を、研磨などにより、両主面における表面粗さRaがいずれも1.5nm以下、両主面における最大高低差P−Vがいずれも10nm以下、全厚み変動ばらつきTTVが10μm以下、および支持基板の反りが10μm以下にした。
(実施例IV)
1.支持基板の加工
図2を参照して、本実施例においては、光デバイスであるLED用の支持基板10として単結晶のGa2O3基板(実施例IV−1)と、電子デバイスであるSBD用の支持基板10として多結晶のMo基板(実施例IV−2)とを準備した。上記支持基板(Ga2O3基板およびMo基板)を、研磨などにより、両主面における表面粗さRaがいずれも1.5nm以下、両主面における最大高低差P−Vがいずれも10nm以下、全厚み変動ばらつきTTVが10μm以下、および支持基板の反りが10μm以下にした。
2.支持基板およびイオン注入III族窒化物半導体基板の洗浄
上記の支持基板および上記の実施例II−2と同様にして得られた複数のイオン注入GaN基板について、以下の洗浄を行った。60℃に加熱したイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、その後70℃に加熱したSC-1溶液(NH4OH、H2O2およびH2Oの混合溶液)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、70℃に加熱したSC-2溶液(HCl、H2O2およびH2Oの混合溶液)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、希フッ酸水溶液で5分間洗浄し、王水で5分間洗浄し、純水で10分間洗浄した後、IPAを用いて蒸気乾燥した。
上記の支持基板および上記の実施例II−2と同様にして得られた複数のイオン注入GaN基板について、以下の洗浄を行った。60℃に加熱したイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、その後70℃に加熱したSC-1溶液(NH4OH、H2O2およびH2Oの混合溶液)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、70℃に加熱したSC-2溶液(HCl、H2O2およびH2Oの混合溶液)で10分間洗浄し、純水で10分間洗浄し、希フッ酸水溶液で5分間洗浄し、王水で5分間洗浄し、純水で10分間洗浄した後、IPAを用いて蒸気乾燥した。
3.イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面の活性化
上記の支持基板に接合させる上記のイオン注入GaN基板のN原子主面(第1の主面)の表面の活性化を行う目的で、基板のN原子主面(第1の主面)をRIE(反応性イオンエッチング)を用いて表面を改質した。ガスとしてはアルゴン(Ar)ガスを用いた。具体的には、1×10-6Paの雰囲気圧力下でアルゴンプラズマを5分間照射することにより、イオン注入GaN基板のN原子主面(第1の主面)の表面を活性化させた。ここで、N原子主面(第1の主面)が支持基板と接合する面である。
上記の支持基板に接合させる上記のイオン注入GaN基板のN原子主面(第1の主面)の表面の活性化を行う目的で、基板のN原子主面(第1の主面)をRIE(反応性イオンエッチング)を用いて表面を改質した。ガスとしてはアルゴン(Ar)ガスを用いた。具体的には、1×10-6Paの雰囲気圧力下でアルゴンプラズマを5分間照射することにより、イオン注入GaN基板のN原子主面(第1の主面)の表面を活性化させた。ここで、N原子主面(第1の主面)が支持基板と接合する面である。
なお、本実施例においては、アルゴンプラズマを用いたが、アルゴンガスに替えてヘリウム(He)ガスまたはネオン(Ne)ガス(いずれも希ガス)、窒素(N2)ガス(不活性ガス)、またはGaNと反応性を有するアンモニア(NH3)ガス、塩素(Cl2)ガス、塩化ホウ素(BCl4)ガス、塩化ケイ素(SiCl4)ガスなどを用いることもできる。
4.支持基板とイオン注入III族窒化物半導体基板との接合
図2(B)を参照して、上記の支持基板(Ga2O3基板およびMo基板)のそれぞれとイオン注入GaN基板とを、上記支持基板の洗浄された主面と上記イオン注入GaN基板の洗浄および活性化されたN原子主面(第1の主面)とが接触するように配置して、25℃の窒素ガス雰囲下で1気圧(101.3kPa)の圧力で5分間保持することにより、支持基板とイオン注入GaN基板とを接合させた。
図2(B)を参照して、上記の支持基板(Ga2O3基板およびMo基板)のそれぞれとイオン注入GaN基板とを、上記支持基板の洗浄された主面と上記イオン注入GaN基板の洗浄および活性化されたN原子主面(第1の主面)とが接触するように配置して、25℃の窒素ガス雰囲下で1気圧(101.3kPa)の圧力で5分間保持することにより、支持基板とイオン注入GaN基板とを接合させた。
5.III族窒化物半導体層接合基板の形成
図2(B)および(C)を参照して、上記のようにして得られた接合基板に0.5kgf/cm2(49kPa)の荷重を掛けながら窒素雰囲気中で460℃に加熱して15時間保持した。こうして、イオン注入GaN基板がN原子主面(第1の主面20a)側に形成された第1のイオン注入領域20iaにおいて分離することにより、支持基板10上にGaN層(III族窒化物半導体層20s)が形成されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)が得られた。具体的には、実施例IV−1としてGa2O3基板上にGaN層が形成されたGaN層接合基板が得られ、実施例IV−2としてMo基板上にGaN層が形成されたGaN層接合基板が得られた。これらのGaN層接合基板について、GaN層の厚さは、層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により測定したところ、実施例IV−1および実施例IV−2いずれも0.4μmであった。また、GaN層の転位密度は、層の表面の10μm角の範囲をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察してその範囲内の転位数から算出したところ、実施例IV−1が5×108cm-2であり、実施例IV−2が7×108cm-2であった。また、GaN層のX線回折におけるω−2θ測定において得られる(0002)面に関するX線回折ピークの半値幅は、実施例IV−1が51arcsecであり、実施例IV−2が63arcsecであった。また、GaN層接合基板の反りは、実施例IV−1が7μmであり、実施例IV−2が17μmであった。結果を表4にまとめた。
図2(B)および(C)を参照して、上記のようにして得られた接合基板に0.5kgf/cm2(49kPa)の荷重を掛けながら窒素雰囲気中で460℃に加熱して15時間保持した。こうして、イオン注入GaN基板がN原子主面(第1の主面20a)側に形成された第1のイオン注入領域20iaにおいて分離することにより、支持基板10上にGaN層(III族窒化物半導体層20s)が形成されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)が得られた。具体的には、実施例IV−1としてGa2O3基板上にGaN層が形成されたGaN層接合基板が得られ、実施例IV−2としてMo基板上にGaN層が形成されたGaN層接合基板が得られた。これらのGaN層接合基板について、GaN層の厚さは、層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により測定したところ、実施例IV−1および実施例IV−2いずれも0.4μmであった。また、GaN層の転位密度は、層の表面の10μm角の範囲をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察してその範囲内の転位数から算出したところ、実施例IV−1が5×108cm-2であり、実施例IV−2が7×108cm-2であった。また、GaN層のX線回折におけるω−2θ測定において得られる(0002)面に関するX線回折ピークの半値幅は、実施例IV−1が51arcsecであり、実施例IV−2が63arcsecであった。また、GaN層接合基板の反りは、実施例IV−1が7μmであり、実施例IV−2が17μmであった。結果を表4にまとめた。
表4から明らかなように、両主面側にそれぞれ形成されたイオン注入領域を含む反りが小さなイオン注入III族窒化物半導体基板を用いることにより、III族窒化物半導体層の転位密度およびX線回折ピークの半値幅が小さく結晶性が高いIII族窒化物半導体層接合基板が得られた。
[III族窒化物半導体デバイスの作製]
(実施例V)
1.光デバイスの作製
図3を参照して、実施例IV−1で得られたGaN層(III族窒化物半導体層20s)とGa2O3基板(支持基板10)とが接合されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)のGaN層の主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30を成長させた。III族窒化物半導体エピタキシャル層30成長の際の原料としては、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)などを用いた。
(実施例V)
1.光デバイスの作製
図3を参照して、実施例IV−1で得られたGaN層(III族窒化物半導体層20s)とGa2O3基板(支持基板10)とが接合されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)のGaN層の主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層30を成長させた。III族窒化物半導体エピタキシャル層30成長の際の原料としては、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)などを用いた。
具体的には、まず、MOCVD炉の反応室内に配置されたサセプタ上にGaN層接合基板を配置した。次いで、1050℃の基板温度および101kPaの雰囲気圧力とした反応室内に原料ガス(TMG、TMA、NH3、SiH4)を供給することにより、GaN層接合基板のGaN層(III族窒化物半導体層20s)の主面上に、厚さ50nmのn型Al0.1Ga0.9N中間層31を成長させた。次いで、反応室内の雰囲気圧力を101kPaに維持して基板温度を1100℃とした後、原料ガス(TMG、NH3、SiH4)を反応室内に供給することにより、n型Al0.1Ga0.9N中間層31上に厚さ2μmのn型GaNクラッド層32を成長させた。
次いで、n型GaNクラッド層32上に、以下の様にして、In0.01Ga0.99N障壁層33bおよびIn0.1Ga0.9N井戸層33wの対を6対重ねその最上層のIn0.1Ga0.9N井戸層33w上にさらにIn0.01Ga0.99N障壁層33bを重ねた多重量子井戸構造を有する発光層33を形成した。障壁層の形成においては、反応室内の雰囲気圧力を101kPaに維持して基板温度を900℃とした後、原料ガス(TMG、TMI、NH3)を反応室内に供給することにより、厚さ15nmのノンドープIn0.01Ga0.99N障壁層33bを成長させた。井戸層の形成においては、反応室内の雰囲気圧力を101kPaに維持すると共に、基板温度を800℃とした後、原料ガス(TMG、TMI、NH3)を反応室内に供給することにより、厚さ50nmのノンドープIn0.1Ga0.9N井戸層33wを形成する。かかる井戸層および障壁層の成長は必要な回数だけ繰り返される。
その後、反応室内の雰囲気圧力を101kPaに維持すると共に基板温度を1050℃にした後、原料ガス(TMG、TMA、NH3、Cp2Mg)を反応室内に供給して、発光層33上に厚さ20nmのp型Al0.12Ga0.88Nクラッド層34を成長させた。次いで、反応室内の雰囲気圧力を101kPaに維持すると共に基板温度を1050℃に維持して、原料ガス(TMG、NH3、Cp2Mg)を反応室内に供給して、p型Al0.12Ga0.88Nクラッド層34上に厚さ150nmのp型GaNコンタクト層35を成長させた。
次に、p型GaNコンタクト層35の主面の中央部上に、EB(電子ビーム)蒸着法により、p側電極36としてNi/Au電極を形成した。次いで、GaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)のGa2O3基板(支持基板10)の主面上に、EB蒸着法により、n側電極37としてTi/Al/Ti/Au電極を形成した。このようにして、III族窒化物半導体デバイス3である光デバイス(より具体的にはLED(発光ダイオード))が得られた。
上記のようにして得られたLEDに、電流密度が100A/cm2となるように電流を印加して、LEDを発光させて、450nmの波長における発光強度とともに発光波長のばらつきを測定した。本実施例のLEDの発光強度および発光波長のばらつきは、それぞれ基板としてGaN層接合基板を同じ厚さのGaN自立基板に替えたこと以外は本実施例と同様の構造を有する典型的なLEDの発光強度および発光波長のばらつきと同等であった。すなわち、本実施例のLEDは、十分なLED特性を備えていた。
(実施例VI)
1.電子デバイスの作製
図4を参照して、実施例IV−2で得られたGaN層(III族窒化物半導体層20s)とGa2O3基板(支持基板10)とが接合されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)のGaN層の主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40を成長させた。III族窒化物半導体エピタキシャル層40成長の際の原料としては、実施例Vと同様の原料を用いた。
1.電子デバイスの作製
図4を参照して、実施例IV−2で得られたGaN層(III族窒化物半導体層20s)とGa2O3基板(支持基板10)とが接合されたGaN層接合基板(III族窒化物半導体層接合基板1)のGaN層の主面上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層40を成長させた。III族窒化物半導体エピタキシャル層40成長の際の原料としては、実施例Vと同様の原料を用いた。
具体的には、まず、MOCVD炉の反応室内に配置されたサセプタ上にGaN層接合基板を配置した。次いで、1100℃の基板温度および101kPaの雰囲気圧力とした反応室内に原料ガス(TMG、TMA、NH3、SiH4)を供給することにより、GaN層接合基板のGaN層(III族窒化物半導体層20s)の主面上に、Siをドープした厚さ2μmのn+型GaNバリア層41(キャリア濃度が2×1018cm-3)を成長させた。次いで、反応室内の雰囲気圧力および基板温度をそれぞれ101kPaおよび1100℃に維持して、原料ガス(TMG、NH3、SiH4)を反応室内に供給することにより、n+型GaNバリア層41上に厚さ12μmのn-型GaNドリフト層42(キャリア濃度が2×1016cm-3)を成長させた。
上記のようにして得られた電子デバイスは、絶縁耐圧が960V、オン抵抗が2mΩ・cm-2であり、優れた特性を有していた。
なお、実施例VにおいてはLEDの例を、実施例VIにおいてはSBDの例を挙げたが、本発明にかかるIII族窒化物半導体デバイスは、その他のデバイス、たとえば、LD(レーザダイオード)、HEMT(高速電子移動トランジスタ)、太陽電池などにも適用が可能である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
1 III族窒化物半導体層接合基板、2 イオン注入III族窒化物半導体基板、3,4 III族窒化物半導体デバイス、10 支持基板、20 III族窒化物半導体基板、20a,20b,20m 主面、20ia,20ib イオン注入領域、20r 残部III族窒化物半導体基板、20s III族窒化物半導体層、30,40 III族窒化物半導体エピタキシャル層、31 n型Al0.1Ga0.9N中間層、32 n型GaNクラッド層、33 発光層、33b In0.01Ga0.99N障壁層、33w In0.1Ga0.9N井戸層、34 p型Al0.12Ga0.88Nクラッド層、35 p型GaNコンタクト層、36 p側電極、37 n側電極、41 n+型GaNバリア層、42 n-型GaNドリフト層、43 ショットキー電極、44 オーミック電極。
Claims (6)
- 両主面側に前記両主面からそれぞれ所定の深さで形成されているイオン注入領域を含むイオン注入III族窒化物半導体基板。
- 厚さが50μm以上300μm以下である請求項1に記載のイオン注入III族窒化物半導体基板。
- 前記イオン注入領域には水素イオンが注入されている請求項1または請求項2に記載のイオン注入III族窒化物半導体基板。
- 各前記イオン注入領域における前記水素イオンのドーズ量は1×1017cm-2以上1×1018cm-2以下である請求項3に記載のイオン注入III族窒化物半導体基板。
- III族窒化物半導体層と、前記III族窒化物半導体層と化学組成が異なる支持基板と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法であって、
厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板の両主面側に前記両主面からそれぞれ所定の深さにイオンを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程と、
前記イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面に前記支持基板を接合する工程と、
前記イオン注入III族窒化物半導体基板を、前記第1の主面側に前記第1の主面から所定の深さで形成されている第1のイオン注入領域において分離して、前記支持基板に接合した前記III族窒化物半導体層を形成することにより、前記III族窒化物半導体層接合基板を得る工程と、を備えるIII族窒化物半導体層接合基板の製造方法。 - III族窒化物半導体層と、前記III族窒化物半導体層と化学組成が異なる支持基板と、が接合しているIII族窒化物半導体層接合基板と、
前記III族窒化物半導体層接合基板の前記III族窒化物半導体層の主面上に形成されている少なくとも1層のIII族窒化物半導体エピタキシャル層と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法であって、
厚さが50μm以上300μm以下のIII族窒化物半導体基板の両主面側に前記両主面からそれぞれ所定の深さにイオンを注入してイオン注入III族窒化物半導体基板を形成する工程と、
前記イオン注入III族窒化物半導体基板の第1の主面に前記支持基板を接合する工程と、
前記イオン注入III族窒化物半導体基板を、前記第1の主面側に前記第1の主面から所定の深さで形成されている第1のイオン注入領域において分離して、前記支持基板に接合した前記III族窒化物半導体層を形成することにより、前記III族窒化物半導体層接合基板を得る工程と、
前記III族窒化物半導体層接合基板の前記III族窒化物半導体層の主面上に、少なくとも1層の前記III族窒化物半導体エピタキシャル層を形成する工程と、を備えるIII族窒化物半導体デバイスの製造方法。
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