JP2011100749A - 透明導電積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機高分子成型物からなる基板上に、透明性および加湿熱信頼性にすぐれるとともに、比抵抗が低すぎることのない、完全結晶化してなる透明導電層を有する透明導電積層体を提供する。
【解決手段】有機高分子成型物からなる基板上に、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nm、ホール移動度が30〜45cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜6)×1020個/cm3 である、完全結晶化している透明導電層を有することを特徴とする透明導電積層体。
【選択図】図1
【解決手段】有機高分子成型物からなる基板上に、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nm、ホール移動度が30〜45cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜6)×1020個/cm3 である、完全結晶化している透明導電層を有することを特徴とする透明導電積層体。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機高分子成型物からなる基板上にIn・Sn複合酸化物からなる透明導電層を有する透明導電積層体に関する。
この種の透明導電積層体は、無機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極、電磁波シールド用、アナログ・デジタルタッチパネル用透明電極などに、幅広く利用されている。とくに、近年になり、情報インフラの整備と、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)に代表される携帯用情報端末の急速な普及により、タッチパネル用途の需要が急速に拡大している。
これら携帯用情報端末のタッチパネルでは、液晶表示画面上にセットされて、専用ペンで、キーボードの代わりとグラフィック入力ができ、透明入力部の直下にある液晶を表示させることができる。人は、表示した液晶の情報を、透明入力素子であるタッチパネルを通して、認識できる。近年、携帯用情報端末の液晶の画質がきれいになるにつれて、その上にセットされるタッチパネル用透明電極層には、高い透明性などが求められるようになってきている。
従来、このような用途に用いられる透明導電積層体は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法などの方法で作製されてきたが、制御性や再現性の点より、スパッタ法が最も一般的に採用されている。この方法は、基板上に形成する透明導電層の膜組成と同一の酸化物ターゲットか、In−Sn合金からなるメタルターゲットを使用し、不活性ガス(Arガス)単独か、これと反応性ガス(酸素ガス)とを導入して、基板上にIn・Sn複合酸化物からなる透明導電層をスパッタ製膜するものである。しかし、基板が有機高分子成型物からなる場合、その耐熱性の点より、高い温度で製膜できず、製膜直後はアモルファス膜か一部結晶化した膜となっている。このため、膜の透明性に劣り、黄ばみが強い、加湿熱試験後の抵抗変化が大きいなどの問題があった。
このような問題を克服するため、特許文献1などにおいて、有機高分子成型物からなる基板上に結晶膜を形成する手法として、膜中の酸素を少なくして製膜し、その後、大気中の酸素雰囲気下で後加熱することにより、アモルファス膜から結晶膜へ転換させる技術が提案されている。この方法により、膜の透明性が向上し、黄ばみもなく、さらに加湿熱試験後の抵抗変化が小さく、加湿熱信頼性が向上するなどの利点がもたらされる。
しかしながら、上記の後加熱する方法では、短時間では結晶化せず、高温長時間の加熱が必要であり、そのため、生産性が悪く、また基板フィルム中のオリゴマーの発生など品質面での問題があり、さらに得られる結晶化膜は比抵抗が低くなりすぎ、そのぶん消費電力が高くなる問題があった。
本発明は、上記の事情に照らし、有機高分子成型物からなる基板上に、透明性、加湿熱信頼性にすぐれ、また比抵抗が低すぎることのない、完全結晶化した透明導電層を有する透明導電積層体を提供することを目的としている。
ここで、上記の「完全結晶化」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により結晶化したグレンが全面に存在する状態を指すものである。
ここで、上記の「完全結晶化」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により結晶化したグレンが全面に存在する状態を指すものである。
本発明者らは、上記目的に対し、鋭意検討した結果、有機高分子成型物からなる基板上にIn・Sn複合酸化物からなる透明導電層を、基板の実用的な加熱許容温度である80〜150℃でスパッタ製膜するにあたり、ターゲット中のSnの含有量を低くし、かつ所定の真空度となるまで排気して水分や基板から発生する有機ガスなどの不純物を除去した雰囲気とし、これにArガスとともにInのプラズマ発光強度が微妙に変動する程度のわずかな量の酸素ガスを導入して、特定膜厚の透明導電層をスパッタ製膜すると、製膜直後の透明導電層はアモルファス膜となっているが、その後、大気中で120〜150℃で0.5〜1時間という低温短時間の熱処理を施すことにより、生産性や品質面での悪化を伴わずに、上記膜を完全結晶化した膜に容易に変換できることがわかった。
しかも、上記特定の熱処理により完全結晶化した膜は、そのホール移動度が、熱処理前で15〜28cm2 /V・Sであったのが、30〜45cm2 /V・Sと大きくなり、一方、キャリア密度が、熱処理前で(2〜5)×1020個/cm3
であったのが、(2〜6)×1020個/cm3 とあまり大きく変化しなかった。これに対し、特許文献1に提案される、スパッタ製膜後に高温長時間の後加熱処理を施して得られる結晶膜は、ホール移動度が18〜20cm2 /V・S、キャリア密度が(5〜9)×1021個/cm3 である。
であったのが、(2〜6)×1020個/cm3 とあまり大きく変化しなかった。これに対し、特許文献1に提案される、スパッタ製膜後に高温長時間の後加熱処理を施して得られる結晶膜は、ホール移動度が18〜20cm2 /V・S、キャリア密度が(5〜9)×1021個/cm3 である。
これを要するに、上記特定の熱処理により完全結晶化した膜は、前記提案の結晶膜に比べて、ホール移動度が2倍程度大きく、キャリア密度が一桁小さいという特異な性状を有している。また、この性状に基づいて、完全結晶化した透明導電層として透明性や加湿熱信頼性にすぐれるうえに、比抵抗が熱処理前(つまりスパッタ製膜直後)の約半分程度の低下にとどまり、前記提案の結晶膜では後加熱処理で比抵抗が一桁以上低下するのに比べて、比抵抗の過度な低下が防がれ、消費電力の増加を抑制できるものであることもわかった。
本発明は、以上の知見をもとにして、完成されたものである。
すなわち、本発明は、有機高分子成型物からなる基板上に、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nm、ホール移動度が30〜45cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜6)×1020個/cm3 である、完全結晶化している透明導電層を有することを特徴とする透明導電積層体に係るものである。
すなわち、本発明は、有機高分子成型物からなる基板上に、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nm、ホール移動度が30〜45cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜6)×1020個/cm3 である、完全結晶化している透明導電層を有することを特徴とする透明導電積層体に係るものである。
このように、本発明は、有機高分子成型物からなる基板上に、透明性、加湿熱信頼性にすぐれ、また比抵抗が低すぎることのない、完全結晶化した透明導電層を有する透明導電積層体を提供することができる。
本発明に用いられる基板は、有機高分子成型物からなるものであり、とくに、透明性や耐熱性にすぐれたものが好ましい。このような有機高分子には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレートなどの単一成分の高分子、共重合高分子、エポキシ系高分子などがある。これら有機高分子のフィルム状物、シート状物、その他の成型物が用いられる。この成型物は、必要により、アンダーコートや背面コートしたものであってもよい。
本発明では、まず、(a)工程として、上記の基板上にIn・Sn複合酸化物からなる透明導電層をスパッタ製膜する。この製膜には、DC電源を用いた標準的なマグネトロンスパッタ法だけでなく、RFスパッタ法、RF+DCスパッタ法、パルススパッタ法、デュアルマグネトロンスパッタ法などの種々のスパッタ法を採用できる。また、このようなスパッタ製膜に際し、上記基板に熱的ダメージを与えないように、基板温度は80〜150℃の範囲内とする。この範囲内でより高い基板温度を選択することにより、製膜される透明導電層の結晶化に好結果を得ることができるが、通常は、100℃程度とするのがよい。
本発明に用いられるスパッタターゲットは、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、1〜6重量%、好ましくは2〜5重量%であるメタルターゲット(In−Snターゲット)または酸化物ターゲット(In2 O3 −SnO2 ターゲット)である。Snの添加は膜の耐久性などの信頼性の向上に寄与するが、結晶化についてはIn2 O3 が一番結晶化しやすく、SnはIn2 O3 結晶格子に取り込まれる量以外は不純物的な働きをし、結晶化を妨げる。このため、Snの量は上記範囲内に抑える必要がある。
このようなターゲットを用いたスパッタ製膜にあたり、まず、スパッタ装置内を真空度が1.5×10-4Pa以下、好ましくは7×10-5Pa以下となるまで排気して、装置内の水分や基板から発生する有機ガスなどの不純物を取り除いた雰囲気とする。製膜中の水分や有機ガスの存在は、製膜中に発生するダングリングボンドを終結させ、結晶成長を妨げるからである。
つぎに、このように排気したスパッタ装置内に、不活性ガスであるArガスとともに、反応性ガスである酸素ガスを導入して、スパッタ製膜を行う。その際、酸素ガスの導入量を微妙に制御することが重要であり、一般のマスフローコントローラで一定量の酸素ガスを導入する方式では、ターゲット表面の酸化度が刻々変動するし、また酸化のヒステリシスが存在することから、製膜後の熱処理によっても結晶化膜を安定して製膜することはできない。
本発明者らは、スパッタ放電中に発生するInのプラズマ発光強度が製膜速度とスパッタターゲットの酸化度に依存した膜質に関係することを利用したPEM(プラズマエミッションモニター)制御システムにより、詳細に検討した。その結果、Arガスのみを導入したときのスパッタ製膿中のInのプラズマ発光強度を90としたときに、酸素ガス導入後の上記発光強度が、メタルターゲットでは30〜40、酸化物ターゲットでは84〜90となるように、酸素ガスを導入すると、スパッタ製膜時はアモルファスであるが、その後の大気中での低温短時間の熱処理で完全結晶化した膜に容易に変換できることがわかった。
このように酸素ガス導入後のIn発光強度が上記範囲内となるように酸素ガスを導入する方式は、導入酸素量の変化量としてはある瞬間のマスフローメーターでは判別できないくらいである。なお、膜の抵抗値としては、メタルターゲットではIn発光強度が30のときに、酸化物ターゲットではIn発光強度が84のときに、上記抵抗値が最低となることが確認されている。
本発明においては、上記のように酸素ガス導入量をわずかな範囲内に設定することで、基板上へのスパッタ製膜後、低温短時間の熱処理を施すことにより、完全結晶化した透明導電層を有する透明導電積層体を得ることができるが、スパッタ製膜時の透明導電層の膜厚は、15〜50nmとすべきであり、とくに好ましくは20〜40nmとするのがよい。膜厚が15nm未満では、低温短時間の熱処理では結晶化させにくく、50nmを超えると、上記熱処理で比抵抗が下がりすぎ、タッチパネルの電極用として消費電力が増大しすい。
このように基板上にスパッタ製膜される透明導電層は、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nmのアモルファス膜で、ホール移動度が15〜28cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜5)×1020個/cm3 である。
本発明の透明導電積層体は、これをタッチパネル用などに利用する場合、酸によるパターンエッチング加工が施される。このパターンエッチング加工は、上記スパッタ製膜直後の段階、つまり、熱処理前の段階で行われる。熱処理後には完全結晶化してエッチング加工が難しくなるが、熱処理前ではアモルファス膜のため、エッチング加工を容易に行うことができる。
本発明においては、つぎに、(b)工程として、上記スパッタ製膜後の透明導電層に対し、低温短時間の熱処理として、大気中において、適宜の乾燥機などを用いて、120〜150℃で0.5〜1時間の加熱処理を施す。この熱処理で、スパッタ製膜後のアモルファス膜は、完全結晶化した膜に変換され、ホール移動度は30〜45cm2 /V・Sと大きな値となり、キャリア密度は熱処理前とそれほど変わらない(2〜6)×1020個/cm3
の値となる。このホール移動度は、前記提案の結晶化膜に比べて2倍程度大きい値であり、さらにキャリア密度は、前記提案の結晶化膜に比べて一桁ほど小さい値である。
の値となる。このホール移動度は、前記提案の結晶化膜に比べて2倍程度大きい値であり、さらにキャリア密度は、前記提案の結晶化膜に比べて一桁ほど小さい値である。
一般に、In・Sn複合酸化物からなる透明導電層のキャリア電子の発生するドナーには、In2 O3 蛍石結晶格子の酸素欠乏状態部分と、In原子サイトにSn原子が置換する部分とがあると言われている。
本発明では、Snのドープ量を少なくしているため、In原子サイトにSn原子が置換する量が少なく、これがキャリア密度を小さくする原因となっているものと考えられる。また、本発明では、不純物として働く余分のSnとさらに水分などが少ないため、低温短時間の熱処理にもかかわらず、結晶が大きく成長し、これがホール移動度を大きくさせる原因となっているものと考えられる。
本発明では、Snのドープ量を少なくしているため、In原子サイトにSn原子が置換する量が少なく、これがキャリア密度を小さくする原因となっているものと考えられる。また、本発明では、不純物として働く余分のSnとさらに水分などが少ないため、低温短時間の熱処理にもかかわらず、結晶が大きく成長し、これがホール移動度を大きくさせる原因となっているものと考えられる。
このように、上記熱処理後の透明導電層は、有機高分子成型物からなる基板上に設けられる透明導電層としては、これまで報告されたことのない、新規なホール移動度とキャリア密度を持つ特異的な性状を示すものであって、とくに非常に良好に結晶成長した、完全結晶化膜であるということができる。
このため、上記熱処理後の透明導電層は、550nmの光透過率が熱処理前に比べて1.5〜4%程度向上した、すぐれた透明性を示し、とくに、550nmより低波長側の透過率の向上が顕著で、黄ばみなどの現象を呈することがなく、また加湿熱試験での抵抗変化が小さく、加湿熱信頼性にもすぐれている。また、比抵抗は、熱処理前の約半分程度となり、熱処理による比抵抗の低下率が少ないため、タッチパネルの電極用として消費電力の増大を抑制できる。
なお、上記の(b)工程において、熱処理のための温度、時間が前記した範囲外となると、上記したような効果が得られない。たとえば、120℃より低い温度となったり、0.5時間より短い時間となると、完全結晶化をはかりにくい。また、150℃より高い温度となったり、1時間を超える時間となると、生産性の低下や基板フィルム中のオリゴマー発生などの品質面での問題が起こりやすくなり、さらには前記した膜性状を示す透明導電層が得られにくくなり、比抵抗が低くなりすぎるなどの不都合を生じやすい。
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。
平行平板型の巻き取り式マグネトロンスパッタ装置に、ターゲット材料としてIn−Snメタルターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、3重量%)を装着し、また基板として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルムを装着し、巻き取りながら、脱水、脱ガスを行い、真空度が7×10-5Paとなるまで排気した。
この状態で、3KwのDC反応性スパッタ法により、基板の加熱温度を100℃とし、Arガスを300sccm導入するとともに、PEMにより、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が33となるように、酸素ガス導入量を自動のピエゾバルブで開閉調整して、膜質を調整しながら、スパッタ製膜した。
平行平板型の巻き取り式マグネトロンスパッタ装置に、ターゲット材料としてIn−Snメタルターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、3重量%)を装着し、また基板として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルムを装着し、巻き取りながら、脱水、脱ガスを行い、真空度が7×10-5Paとなるまで排気した。
この状態で、3KwのDC反応性スパッタ法により、基板の加熱温度を100℃とし、Arガスを300sccm導入するとともに、PEMにより、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が33となるように、酸素ガス導入量を自動のピエゾバルブで開閉調整して、膜質を調整しながら、スパッタ製膜した。
このようにしてPETフィルムからなる基板上に透明なIn・Sn複合酸化物(以下、ITOという)からなる膜厚が20nmの透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対して、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。この積層体について、透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率25,000倍)により、その透明導電層を観察したところ、図1に示すように、完全結晶化したITO膜が形成されていることがわかった。つまり、この図1から、ITO結晶は、粒径(対角線または直径の最大のもの)が平均600nm程度であることがわかる。
また、この透明導電積層体について、ホール測定効果により、熱処理前(スパッタ製膜直後)および熱処理後のホール移動度とキャリア密度とを測定した。この測定には、バイオラッド社製の「HL5500PC」測定器を使用した。さらに、熱処理前後の抵抗値、550nmの光透過率および5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値を測定した。結果は、表1に示されるとおりであった。
上記の結果から明らかなように、本来結晶化しにくい20nmという薄い膜厚にもかかわらず、150℃で30分という低温短時間の熱処理によって、良好に結晶化し、550nmの光透過率が熱処理前に比べて3%向上している。また、熱処理後の抵抗値の低下は、熱処理前の半分に抑えられており、熱処理により、抵抗値が低くなりすぎるという心配もない。
また、熱処理前では、5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値が∞となっているように、酸によるエッチング加工を容易に行うことができるが、熱処理後では、同浸漬後の抵抗値に全く変化がみられなくなっており、酸によるエッチング加工が難しくなる、換言すれば、酸に対して安定となっている。
なおまた、上記の試験とは別に、熱処理後の透明導電積層体につき、60℃,90%RH下で500時間の加湿熱試験を行ってみたところ、試験前の初期抵抗値(200Ω/□)に対する抵抗変化率は1.1倍に抑えられており、これより加湿熱信頼性にもすぐれていることがわかった。
また、熱処理前では、5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値が∞となっているように、酸によるエッチング加工を容易に行うことができるが、熱処理後では、同浸漬後の抵抗値に全く変化がみられなくなっており、酸によるエッチング加工が難しくなる、換言すれば、酸に対して安定となっている。
なおまた、上記の試験とは別に、熱処理後の透明導電積層体につき、60℃,90%RH下で500時間の加湿熱試験を行ってみたところ、試験前の初期抵抗値(200Ω/□)に対する抵抗変化率は1.1倍に抑えられており、これより加湿熱信頼性にもすぐれていることがわかった。
平行平板型の巻き取り式マグネトロンスパッタ装置に、ターゲット材料としてIn−Sn酸化物ターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、4.7重量%)を装着し、また基板として厚さ75μmのPETフィルムを装着し、巻き取りながら、脱水、脱ガスを行い、真空度が1×10-4Paとなるまで排気した。
この状態で、3KwのDC反応性スパッタ法により、基板の加熱温度を100℃とし、Arガスを300sccm導入するとともに、PEMにより、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が86となるように、酸素ガス導入量を自動のピエゾバルブで開閉調整して、膜質を調整しながら、スパッタ製膜した。
この状態で、3KwのDC反応性スパッタ法により、基板の加熱温度を100℃とし、Arガスを300sccm導入するとともに、PEMにより、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が86となるように、酸素ガス導入量を自動のピエゾバルブで開閉調整して、膜質を調整しながら、スパッタ製膜した。
このようにしてPETフィルムからなる基板上に透明なITO膜からなる膜厚が20nmの透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対して、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。この積層体について、透過型電子顕微鏡により、その透明導電層を観察したところ、完全結晶化したITO膜が形成されていることがわかった。
また、この透明導電積層体について、前記と同様にして、熱処理前(スパッタ製膜直後)および熱処理後のホール移動度とキャリア密度とを測定した。また、熱処理前後の抵抗値、550nmの光透過率および5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値を測定した。これらの結果は、表2に示すように、実施例1とほぼ同様であった。なおまた、上記の試験とは別に、前記と同様にして、熱処理後の透明導電積層体について、加湿熱試験を行ってみたところ、実施例1とほぼ同様に、すぐれた加湿熱信頼性を有していることがわかった。
比較例1
ターゲット材料を、In−Snメタルターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、10重量%)に変えた以外は、実施例1と同様にスパッタ製膜して、PETフィルムからなる基板上に膜厚が20nmのITO膜からなる透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対し、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。
ターゲット材料を、In−Snメタルターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、10重量%)に変えた以外は、実施例1と同様にスパッタ製膜して、PETフィルムからなる基板上に膜厚が20nmのITO膜からなる透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対し、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。
この透明導電積層体について、前記と同様にして、熱処理前(スパッタ製膜直後)および熱処理後のホール移動度とキャリア密度とを測定した。また、熱処理前後の抵抗値、550nmの光透過率および5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値を測定した。これらの結果は、表3に示されるとおりであった。
上記の結果から明らかなように、熱処理前後で光透過率の向上はあまりみられず、5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値が熱処理後でも∞となり、酸によるエッチング加工は行えるものの、そのぶん酸に対する安定性に劣っていた。なお、上記の試験とは別に、前記と同様にして、熱処理後の透明導電積層体について、加湿熱試験を行ってみたところ、試験前の初期抵抗値に対する抵抗変化率は1.5倍となり、実施例1に比べて、加湿熱信頼性に劣っていた。
比較例2
ターゲット材料を、In−Sn酸化物ターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、9.5重量%)に変え、かつ真空度が8×10-4Paとなるまで排気し、また酸素ガス導入量を、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が80となるように、自動のピエゾバルブで開閉調整した以外は、実施例2と同様にスパッタ製膜して、PETフィルムからなる基板上にITO膜からなる透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対して、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。
ターゲット材料を、In−Sn酸化物ターゲット(Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対して、9.5重量%)に変え、かつ真空度が8×10-4Paとなるまで排気し、また酸素ガス導入量を、ArガスのみでのInのプラズマ発光強度を90に設定後、酸素ガス導入後の上記発光強度が80となるように、自動のピエゾバルブで開閉調整した以外は、実施例2と同様にスパッタ製膜して、PETフィルムからなる基板上にITO膜からなる透明導電層を形成した。つぎに、この透明導電層に対して、150℃で30分加熱する熱処理を施して、透明導電積層体を作製した。
この透明導電積層体について、前記と同様にして、熱処理前(スパッタ製膜直後)および熱処理後のホール移動度とキャリア密度とを測定した。また、熱処理前後の抵抗値、550nmの光透過率および5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値を測定した。これらの結果は、表4に示されるとおりであった。
上記の結果から明らかなように、熱処理前後で光透過率の向上はあまりみられず、5%HCl水溶液浸漬5分後の抵抗値が熱処理後でも∞となり、酸によるエッチング加工は行えるものの、そのぶん酸に対する安定性に劣っていた。なお、上記の試験とは別に、前記と同様にして、熱処理後の透明導電積層体について、加湿熱試験を行ってみたところ、試験前の初期抵抗値に対する抵抗変化率は2.0倍となり、実施例2に比べて、加湿熱信頼性に劣っていた。
Claims (1)
- 有機高分子成型物からなる基板上に、Sn原子の量が、In原子とSn原子とを加えた重さに対し、1〜6重量%であるIn・Sn複合酸化物からなる、膜厚が15〜50nm、ホール移動度が30〜45cm2 /V・S、キャリア密度が(2〜6)×1020個/cm3である、完全結晶化している透明導電層を有することを特徴とする透明導電積層体であって、
前記有機高分子が、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレートおよびエポキシ系高分子からなる群より選ばれた少なくとも1種である、透明導電積層体。
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JP2013193442A (ja) * | 2012-03-22 | 2013-09-30 | Sekisui Nano Coat Technology Co Ltd | 光透過性導電性フィルム、その製造方法及びその用途 |
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CN113165336A (zh) * | 2018-12-12 | 2021-07-23 | 日东电工株式会社 | 电波吸收体用阻抗匹配膜、带有电波吸收体用阻抗匹配膜的膜、电波吸收体以及电波吸收体用层叠体 |
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2011
- 2011-02-09 JP JP2011026022A patent/JP2011100749A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013193442A (ja) * | 2012-03-22 | 2013-09-30 | Sekisui Nano Coat Technology Co Ltd | 光透過性導電性フィルム、その製造方法及びその用途 |
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