JP2011099041A - 人造岩絵具及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造が容易であって、環境に悪影響を与えず、安全であり、且つ安価な人造岩絵具を提供すること、又、筆から下り易く、日本画の絵具として使いやすく、なじみのある人造岩絵具を提供することを目的とする。
【解決手段】酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させたことを特徴とする人造岩絵具。
【選択図】 図1
【解決手段】酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させたことを特徴とする人造岩絵具。
【選択図】 図1
Description
本発明は、岩絵具に関し、特に、人工的に製造する岩絵具及びその製造方法に関する。
従来から主に絵画、特に日本画に用いられている絵具として、天然の鉱石や半貴石から不純物を除去し、粉砕して製造される粉末状の岩絵具がある。しかし、このような天然岩絵具は、その製造に手間がかかると共に、高価なものであった。
そこで、人造のガラス・釉薬技術から転用された、ガラスの原料の粉末と金属酸化物を混合し、高温焼成し、焼成物を粉砕して製造する、色ガラスの粉末である新岩絵具や、方解石や水晶の粉末に染料を付着させて製造する合成岩絵具等の人工的に製造し、製造が比較的容易で、安価な人造岩絵具が用いられるようになっている。
しかし、新岩絵具は、絵具の比重を高くする等の目的で、ガラスに鉛を配合することが行われているため、鉛の使用により、製造工程や廃棄の際に鉛が放出され、環境に悪影響を及ぼすこととなり、好ましくない。
そこで、ガラスに鉛を配合せず、無鉛フリットと着色材の粉末とを混合し、その混合粉末を溶融された後に急冷し、得られた固形物を粉砕して粉末化し、分級して製造する新岩絵具も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、従来の新岩絵具は、焼成したガラスを粉砕して製造するので、粉砕後の粉体の大きさがまちまちであり、分級が必要となるので、製造工程が複雑になるという問題点があった。又、色材原料がガラスフリット内にも混合される為、高価な色材原料を多量に使用する必要があり、製造コストが高くなるといった欠点もあった。更に、特許文献1記載のように、鉛を使用せずに製造した場合、比重が約2.5から約3であり、天然の鉱石や半貴石の種類によっても異なるが、比重が約4である天然岩絵具に比べ比重が低く、筆から下り難く、日本画の絵具として違和感があった。
又、合成岩絵具は、方解石や水晶を粉砕して製造するので、粉砕後の粉体の大きさがまちまちであり、分級が必要となるので、製造工程が複雑になるという問題点があった。又、使用する方解の比重が約2.7、水晶の比重が2.65であり、比重が約4である天然岩絵具に比べ比重が低く、筆から下り難く、日本画の絵具として違和感があった。
そこで、本発明は、製造が容易であって、環境に悪影響を与えず、安全であり、且つ安価な人造岩絵具を提供することを目的とする。又、他の目的として、筆から下り易く、日本画の絵具として使いやすく、なじみのある人造岩絵具を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段としての本発明は、酸化アルミニウムの粉体を基材としたことを特徴とする人造岩絵具である。
又、上記岩絵具において、前記酸化アルミニウムの粉体に、粉末状の色材原料を固定させたことを特徴とする人造岩絵具である。
又、上記岩絵具において、前記粉末状の色材原料は、合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーを用いて、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固着させたことを特徴とする人造岩絵具である。
又、上記岩絵具において、酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させて酸化チタン層を形成し、当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させたことを特徴とする人造岩絵具である。
又、上記岩絵具において、前記粉末状の色材原料は、蒸着により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定したことを特徴とする人造岩絵具である。
又、上記岩絵具において、前記粉末状の色材原料は、化学反応により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定したことを特徴とする人造岩絵具である。
更に、酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させることを特徴とする人造岩絵具の製造方法である。
又、上記岩絵具の製造方法において、前記粉末状の色材原料は、合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーを用いて、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定させることを特徴とする人造岩絵具の製造方法である。
酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させて酸化チタン層を形成し、当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させることを特徴とする請求項1又は2に記載の人造岩絵具の製造方法である。
前記粉末状の色材原料は、蒸着により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定することを特徴とする人造岩絵具方法である。
前記粉末状の色材原料は、化学反応により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定することを特徴とする人造岩絵具方法である。
以上のような本発明によれば、比重を、天然岩絵具と略同じ約4とすることが出来、筆から下り易く、日本画の絵具として使いやすく、なじみのある人造岩絵具を提供することが出来た。又、基材として、予め分級されている酸化アルミニウムの粉体を使用することが出来るので、製造工程における分級が不要なため、製造工程を簡素化でき、製造を容易とすることが出来た。
又、鉛を使用しないことと、製造法の簡素化により無駄な廃棄物の発生や洗浄廃液の排出を低減することが出来たので、環境に悪影響を与えず、安全な人造岩絵具を提供することが出来た。更に、高価な天然の鉱石や半貴石を使用することがなく、又、そのため不純物の除去、粉砕、分級の工程が不要で、安価な人造岩絵具を提供することが出来た。又、粒子径の大きい基材としての酸化アルミニウムの表面にのみ色材原料を固定するので、安価な人造岩絵具を提供することが出来た。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、酸化アルミニウムの粉体を基材とした人造岩絵具であり、基材としての酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させた人造岩絵具である。
酸化アルミニウムの粉体は、酸化アルミニウムの純度が高いほうが好ましいが、不純物が含まれているものでもよく、工業用、研磨材、精密ラッピング材等として市場に提供されている、汎用の酸化アルミニウムの粉体を使用することが出来る。このような酸化アルミニウムの粉体には、溶融アルミナ(A)、白色溶融アルミナ(ホワイトアルミナ)(WA)、アルミナ・ジルコニア(Z)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。しかし、酸化アルミニウムの純度が高く、無色から白色を呈しているホワイトアルミナが、色材原料の色を正確に反映させ、色ははっきりと出せることができるので、好ましい。
酸化アルミニウムの粉体は、人造岩絵具の基材であるが、白色を呈する酸化アルミニウムの粉体は、特に色材原料を固定させずに、そのままで白色を呈する岩絵具とすることが出来る。
酸化アルミニウムの粉体としては、例えば、株式会社フジミインコーポレーテッド製のアランダムの研磨材A、白色アルミナ質研磨材WA、高品質アルミナ質研磨材PWA等をあげることが出来る。
このような酸化アルミニウムの粉体は、予め分級されているので、所定の番数に適合するものを使用することにより、従来の製造工程における、粉砕、分級の工程を省くことが出来、製造工程を簡素化し、製造容易かつ低コストでの製造を実現することが出来る。
酸化アルミニウムの粉体の粒径は、粉末状の色材原料の粒径以上であれば特に限定されないが、平均粒径5μm〜150μmのものが好ましい。
粉末状の色材原料の粒径は、酸化アルミニウムの粉体の粒径以下であれば特に限定されないが、平均粒径5μm以下のものが好ましい。
酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させる方法としては、バインダーを用いて粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に接着して固定する方法を採用することが出来る。バインダーとしては、水性の接着剤以外であれば特に限定されないが、乾燥後に耐水性になる、水分散系や溶液系の合成樹脂系接着剤が好ましく、特に、人造岩絵具の製造が容易となり、環境に悪影響を与えない、エマルジョン型の合成樹脂系接着剤が好ましい。水性の接着剤であると、使用の際に膠等の水性のビヒクルと混合した際に溶解し、酸化アルミニウムの粉体から粉末状の色材原料が剥れてしまうからである。
この方法で使用する粉末状の色材原料としては、通常顔料として使用されているものであれば特に限定されず、有機系、無機系を問わず、使用することが出来るが、選択的に有害性のない色材原料を使用することにより、環境への悪影響を排除することができるので、好ましい。
粉末状の色材原料としては、例えば、これらに限定されないが、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、DDPレッド、ウインザーイエロー、コバルトブルー、ピンク165、ジオキサジンバイオレット、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジスアゾイエロー、モノアゾイエロー、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄等の有機、無機の粉体があげられ、これらの色材原料の1種又は2種以上を配合させて、所望の色の岩絵具とする。
エマルジョン型の合成樹脂系接着剤としては、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン‐酢酸ビニルエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン等が挙げられるが、耐候性や耐水性に優れ、安価なアクリルエマルジョンの使用が好ましい。
アクリルエマルジョンとしては、例えば、ニチゴー・モビニール株式会社製のモビニールDM772、ターナー製のファブリックメディウム等を挙げることが出来る。
エマルジョン型の合成樹脂系接着剤の配合量は、色材原料等にもよるが、重量比で酸化アルミニウムの粉体の3から15%程度が好ましい。これ以下であると粉末状の色材原料が酸化アルミニウムの粉体表面に充分に接着せず、これ以上であると、粉末状の色材原料同士が固まってしまい、酸化アルミニウムの粉体に固着しなくなる虞があるからである。尚、色材原料が有機系の場合、前記範囲のうち比較的少ない配合量とすることが出来る。
バインダーを用いて粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に接着して固定する場合、ニューグラマシン、ハイブリッドミキサー、グローミル、縦型ミキサー、オイスターブレンダー等の公知の混合機器、粉砕機器又は造粒機器を用いて行うことが出来る。
尚、酸化アルミニウムの粉体、粉末状の色材原料及びバインダーの混合、分散を確実に行うために、酸化アルミニウムの粉体及び粉末状の色材原料を混合する工程であって、バインダーを投入する前段階において、水、界面活性剤、アルコールの内、1種又は2種以上を混合して配合することとしてもよい。配合する水、アルコール、界面活性剤の総量は、色材原料やバインダーとしての合成樹脂エマルジョンの含水量や配合量に応じて適宜増減させることが好ましく、これらの総水分量は、重量比で酸化アルミニウムの粉体の10%以下、好ましくは5%以下である。少ない水分量とすることで、乾燥や、使用機器の洗浄が容易となるからである。アルコールとしては、エタノール等が使用できるが、これに限定されるものではなく、又、界面活性剤としては、特に種類は限定されず、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。
ニューグラマシンを使用する場合には、酸化アルミニウムの粉体をニューグラマシンに投入し、600〜700rpm程度で回転させ、その中へ粉末状の色材原料を投入し、30秒〜1分間程度分散させ、バインダーを滴下する。バインダー投入完了後、1000rpm程度まで回転速度を上げ、更に1分間程度回転させ続ける。尚、回転速度は、粉体の状況に応じて適宜調整可能であり、バインダーの量が多い場合に、回転が遅いと大きな粒子に成長してしまうので、注意が必要である。次に、完成物を取り出し、必要に応じて、バインダーが固化に要すための乾燥の時間をとる。通常は、約30分程度である。その後、オイスターブレンダー等で、軽く粉砕して完成である。グローミル、縦型ミキサーを使用する場合も同様である。
ハイブリッドミキサーを使用する場合には、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料をハイブリッドミキサーの容器に投入し、約30秒間混合のために回転させる。ハイブリッドミキサーの容器に投入する前に、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料をプレミキシングし、混合、分散させておくことが好ましい。このプレミキシングは、ビニル袋内での手もみによるもの、オイスターブレンダーによる混合等の1種又は2種以上を組み合わせて行うことができる。水又は/及びアルコールを投入する場合には、脱泡のために約30秒間回転させる。
次に、分散された酸化アルミニウムの粉体及び粉末状の色材原料の中へバインダー投入し、約30秒間混合のために回転させる。脱泡が必要な場合には、脱泡のために約30秒間回転させる。その後、混合された酸化アルミニウムの粉体、粉末状の色材原料及びバインダーをヘラで攪拌し、上下左右の位置関係で斑になっている部分を混合することが好ましい。このバインダー投入後の操作を3回前後行い、完成物を取り出し、必要に応じて、バインダーが固化に要すための乾燥の時間をとる。通常は、約30分程度である。その後、オイスターブレンダー等で、軽く粉砕して完成である。
又、蒸着や化学反応により、粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に固定する方法も採用することが出来る。具体的には、上述のバインダーを用いる方法における、バインダー投入までの酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料の混合工程を行い、混合物を、坩堝又は素焼きの鞘等に入れ、電気炉で焼成する。焼成することにより、熱により蒸着を行ったり、酸化アルミニウムと色材原料とを化学反応させる。尚、電気炉以外の炉を用いることとしてもよい。焼成の温度及び時間は使用する酸化アルミニウムの粉体の量、色材原料の材質、量、製造する岩絵具の色等により所定の温度、時間を選択すれことが出来、例えば、色材原料をコバルトとしてアルミ系ブルーの岩絵具を製造する場合には、1,000から1300℃で3時間、色材原料をアルミニウムとしてクロム系グリーンを製造する場合には、1,000から1300℃で3時間、色材原料をビスマスとしてビスマスバナデートを製造する場合には、1,000から1,200℃で1時間の焼成により製造することが出来る。しかし、この温度、時間に限定されず、適宜、所定の温度、時間で焼成を行うことが出来る。
化学反応を用いる方法で使用する粉末状の色材原料として、酸化アルミニウムの粒子の表面に化学反応により色材原料を固定させるため、アルミニウムと複合酸化物を形成可能な色材原料を用いる。この色材原料として、例えば、これらに限定されないが、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄、二酸化マンガン、珪酸ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。又、蒸着を用いる場合、発色成分が熱により蒸散し、酸化アルミニウムの表面で焼成顔料を形成する色材原料、例えば、これらに限定されないが、五酸化バナジウム、酸化ビスマスの混合物等も使用することが出来る。これらの色材原料の1種又は2種以上を配合させて、所望の色の岩絵具とする。
焼成後は、通常は粒子同士が分離し、さらさらの岩絵具として完成するが、焼きが強すぎた場合には、塊が生じている場合もあるので、オイスターブレンダー等で粉砕して完成させる。
又、酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末をバインダーで固定させて、酸化チタン層を形成し、当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料をバインダーで固定させて人造岩絵具を製造することも出来る。このような構成とすることで、酸化アルミニウムの粉体の表面にバインダーを用いて直接粉末状の色材原料を固定する構成に比べ、油性ビヒクルに接触しても、濡れ色を示すことがなく、顔料等色材原料そのものの発色を保つことが出来、又、油絵具への応用も可能になる。
粉末状の酸化チタンの粒径は、酸化アルミニウムの粉体の粒径以下であれば特に限定されないが、平均粒径5μm以下のものが好ましい。
酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末をバインダーで固定させる方法として、上述のようなバインダーを用いて粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に接着して固定する方法を採用することが出来き、粉末状の色材原料に換えて酸化チタンの粉末を用いればよい。更に、酸化アルミニウムの粉体の表面に酸化チタンの粉末がバインダーで固定された粉体に、上述のようなバインダーを用いて当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料を接着して固定させて人造岩絵具を製造することが出来る。
バインダーを用いて粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に接着して固定し、岩絵具を製造した。この際、ニューグラマシン又はハイブリッドミキサーを用いた。酸化アルミニウムの粉体として、株式会社フジミインコーポレーテッド製の白色アルミナ質研磨材WAを用いた。各実施例を表1に示す。表1中WAに並ぶ数字は粒径の違いによる品番を示す。又、アクリルエマルジョンとして、ニチゴー・モビニール株式会社製のアクリルメディウムのモビニールDM772を用いた。表中、アクリルメディウム‐Alはグロスメデイウムとエタノールを重量比で2:1で混合したものである。
実施例1から5のハイブリッドミキサーによる造粒法では、先ず、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料を別々に計量し、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料の配合量に応じてバインダーを計量して、準備した。そして、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料をオイスターブレンダーによりプレミキシングし、混合、分散させた後、ハイブリッドミキサーの容器に投入し、700rpmで、混合30秒間、脱泡30秒間で回転させた。実施例によっては、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料のハイブリッドミキサーへの投入時に、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料の混合、分散を確実に行うために、水又は/及びアルコールを投入した。一運転(700rpmで、混合30秒間、脱泡30秒間)終了後に、バインダーを投入した。一運転毎に混合された酸化アルミニウムの粉体、粉末状の色材原料及びバインダーをヘラで攪拌した。バインダー投入後3回の運転を行った。完成物を取り出し、30分間乾燥させ、オイスターブレンダーで軽く粉砕して完成させた。
実施例6及び7のニューグラマシンによる造粒法では、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料を別々に計量し、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料の配合量に応じてバインダーを計量して、準備した。着色の工程、即ち造粒工程では、酸化アルミニウムの粉体をニューグラマシンに投入し、700rpmで回転させ、その中へ粉末状の色材原料を投入し、1分間分散させた後に、バインダーを滴下した。バインダー投入完了後、1000rpmまで回転速度を上げ、更に1分間回転させた後に回転を止め、完成物を取り出し、30分間乾燥させ、オイスターブレンダーで軽く粉砕して完成させた。
又、実施例8及び9では、ニューグラマシンによる造粒法をもちい、酸化チタンの粉末を用いた。先ず、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料と酸化チタンの粉末を別々に計量し、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料と酸化チタンの粉末の配合量に応じてバインダーを計量して、準備した。酸化チタンの被覆工程では、酸化アルミニウムの粉体をニューグラマシンに投入し、700rpmで回転させ、その中へ粉末状の酸化チタンを投入し、1分間分散させた後に、バインダーを滴下した。その後、実施例8では、バインダー投入完了後、1000rpmまで回転速度を上げ、更に1分間回転させた後に回転を止め、表面に酸化チタンの被服層が形成された酸化アルミニウムの粉体を取り出し、30分間乾燥させ、オイスターブレンダーで軽く粉砕した。続いて、着色の工程、即ち造粒工程では、表面に酸化チタンの被服層が形成された酸化アルミニウムの粉体をニューグラマシンに投入し、700rpmで回転させ、その中へ粉末状の色材原料を投入し、1分間分散させた後に、バインダーを滴下した。バインダー投入完了後、1000rpmまで回転速度を上げ、更に1分間回転させた後に回転を止め、完成物を取り出し、30分間乾燥させ、オイスターブレンダーで軽く粉砕して完成させた。又、実施例9では、バインダー投入完了後、1000rpmまで回転速度を上げ、更に1分間回転させた後に、連続して着色の工程、即ち造粒工程を行い、700rpmで回転させ、その中へ粉末状の色材原料を投入し、1分間分散させた後に、バインダーを滴下した。バインダー投入完了後、1000rpmまで回転速度を上げ、更に1分間回転させた後に回転を止め、完成物を取り出し、30分間乾燥させ、オイスターブレンダーで軽く粉砕して完成させた。
表1に記載の実施例の人造岩絵具は、膠と混合したところ何れも所望の色相とすることが出来、又、和紙に日本画の手法で描画したところ、筆から下り易く、日本画の絵具として使い易かった。又、図1の写真に示すように、従来品の市販品(図左側)に比べ、本発明の岩絵具(図右側)は、色材原料が基材の表面を略全面被覆していることが明らかであり、高価な色材原料の使用量は酸化アルミニウムの粉体表面を被覆するだけの少量でよく、又、分級が不要等、製造工程が簡素であり、コストの低廉化が可能となっている。
又、酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末をバインダーで固定させて酸化チタン層を形成したものは、図2から4に示すように、油と混ぜた場合であっても、濡れ色を示すことがなく、色材原料そのものの発色を保つことが出来た。尚、図2では、左側が酸化チタン層を形成したもの、右側が形成しなかったものであり、図3では、右側が酸化チタン層を形成したもの、左側が形成しなかったものであり、図4では、右側の2つが酸化チタン層を形成したもの、左側が形成しなかったものである。
又、実施例10から49では、蒸着により、実施例50から51では、化学反応により、粉末状の色材原料を酸化アルミニウムの粉体の表面に固定し、岩絵具を製造した。製造方法として、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料を別々に計量し、酸化アルミニウムの粉体と粉末状の色材原料をオイスターブレンダーにより混合、分散させた後、混合物を、素焼きの鞘に入れ、電気炉で焼成した。酸化アルミニウムの粉体として、株式会社フジミインコーポレーテッド製の白色アルミナ質研磨材WAを用いた。各実施例を表2に示す。表2中WAに並ぶ数字は粒径の違いによる品番を示す。又、色材原料の酸化コバルトにおける(微粉)は粒径0.01から2μmのものが混合され、(陶芸)は平均粒径1.0μmの酸化コバルトの粉体である。
表2に記載の実施例の人造岩絵具は、膠と混合したところ何れも所望の色相とすることが出来、又、和紙に日本画の手法で描画したところ、筆から下り易く、日本画の絵具として使い易かった。又、発色に関しては、天然岩絵具と同程度の鮮明さを保つことが出来、物性面においても、安定したものとなった。
更に、実施例15、実施例41の顕微鏡写真として図5、図6に示す顕微鏡写真からも明らかなように、酸化アルミニウムの粉体の表面には、均一に色材原料が固定されている。この構造により、高価な色材原料の使用量は酸化アルミニウムの粉体表面を被覆するだけの少量でよく、コストの低廉化が可能となり、又、物性に関しては、化学的にも、物理的にも耐久性があり、極めて安定性を有している。又、酸化アルミニウムの粉体、言い換えれば一次粒子の表面に薄い発色膜を形成し、粒子成長や二次粒子の形成が見られず、極めて容易に目的の粒子径の絵具を得ることが出来る。
本発明の岩絵具は、日本画用の絵具として、膠のビヒクルと混ぜて使用することに限定されず、油、水彩、アクリル等のビヒクル及び必要により各種添加剤と混ぜて、油絵具、アクリル絵具、水彩絵具等の各種絵具として使用することが出来る。又、公知の各種溶剤、各種添加物と混合し、建築用塗料、道路上用塗料等の各種塗料、印刷インキ、筆記具用インキ等としても使用出来る。各種添加物としては、酸化防止剤、硬化剤、乾燥剤、粘度調整剤、分散剤、消泡剤、つや消し剤、pH調整剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。特に蒸着を用いて製造した岩絵具は、極めて耐候性が高く、建築用塗料、道路上用塗料等屋外でも好適に使用できる。
本発明の岩絵具は、筆落ちがよく、日本画用の絵具として好適に用いることが出来る。又、使用するビヒクルを問わないため、各種絵具、印刷インキ、筆記具用インキ等としても好適に用いることが出来る。又、耐候性が高いため、建築用塗料、道路上用塗料等屋外でも好適に使用できる。
Claims (11)
- 酸化アルミニウムの粉体を基材としたことを特徴とする人造岩絵具。
- 前記酸化アルミニウムの粉体に、粉末状の色材原料を固定させたことを特徴とする請求項1に記載の人造岩絵具。
- 前記粉末状の色材原料は、合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーを用いて、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固着させたことを特徴とする請求項2に記載の人造岩絵具。
- 酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させて酸化チタン層を形成し、当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の人造岩絵具。
- 前記粉末状の色材原料は、蒸着により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定したことを特徴とする請求項2に記載の人造岩絵具。
- 前記粉末状の色材原料は、化学反応により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定したことを特徴とする請求項2に記載の人造岩絵具。
- 酸化アルミニウムの粉体に粉末状の色材原料を固定させることを特徴とする人造岩絵具の製造方法。
- 前記粉末状の色材原料は、合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーを用いて、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定させることを特徴とする請求項7に記載の人造岩絵具の製造方法。
- 酸化アルミニウムの粉体の表面に、酸化チタンの粉末を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させて酸化チタン層を形成し、当該酸化チタン層の表面に粉末状の色材原料を合成樹脂のエマルジョンからなるバインダーで固定させることを特徴とする請求項7又は8に記載の人造岩絵具の製造方法。
- 前記粉末状の色材原料は、蒸着により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定することを特徴とする請求項7に記載の人造岩絵具方法。
- 前記粉末状の色材原料は、化学反応により、前記酸化アルミニウムの粉体の表面に固定することを特徴とする請求項7に記載の人造岩絵具方法。
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