JP2011098764A - 浮屋根式タンク及び浮屋根式タンクのウェザーシール装置 - Google Patents

浮屋根式タンク及び浮屋根式タンクのウェザーシール装置 Download PDF

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Abstract

【課題】浮屋根タンクへの雨水浸入を有効に防止することができ、且つ、既設の浮屋根式タンクへの取り付けも容易になし得る、安価な浮屋根式タンクのウェザーシール装置、及び、斯かるウェザーシール装置を備えた浮屋根式タンクを提供する。
【解決手段】シールガイド11bの外側面上に位置して配置された矩形状をした所定の厚さを有する板状の弾性シール部材20と、弾性シール部材20の外側面上に位置して配置されたバネ板40と、を備え、バネ板40と弾性シール部材20を固定具50によりウェザーフード11に取り付け、バネ板40により弾性シール部材20の先端部20bをタンク側板200の方へと付勢し、当接させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般には、貯留液体として油等を貯蔵する浮屋根式タンクの構造に関し、特に、浮屋根式タンクにおける浮屋根とタンク外壁(側板)の間を遮蔽してタンク内への雨水の浸入を防止するためのウェザーシール装置、及び、斯かるウェザーシール装置を備えた浮屋根式タンクに関するものである。
従来、浮屋根式タンクの一般的なものとしては、浮屋根の外周部に環状の浮箱(ポンツーン)を形成し、これにより屋根に浮力を持たせた、所謂、ポンツーン型の浮屋根式タンクがよく知られている。
通常、浮屋根式タンクの浮屋根には浮屋根の外周部とタンク側板との間を遮蔽してタンク内への雨水の浸入を防止するための雨水浸入防止装置、即ち、ウェザーシール装置が備えられている。ウェザーシール装置に関しては、従来種々の技術が知られている。
図5に、従来のウェザーシール装置の一例を示す。図5は、浮屋根式タンク1における浮屋根100の外周に設けられたポンツーン101と、タンク側板200との間の間隙を遮蔽するために配置されたウェザーシール装置10の概略構成を示す。
本例にて、浮屋根式タンク1は、浮屋根100の外周部には、例えば耐油性合成ゴムで作製された環状のエンベロープ102aと、エンベロープ102a内に配置されたウレタンフォーム102bとを備えた浮屋根シール102が設置されており、浮屋根100の外周、即ち、ポンツーンの外周側壁(アウターリム)103とタンク側板200との間からのタンク内貯留液体の蒸発、及び、外部からの雨水の浸入を防止している。
さらに、上記浮屋根シール102の上方には、ポンツーン101の外周側壁103とタンク外壁200との間からの雨水の浸入を防止するために、ウェザーシール装置10が配置されており、ポンツーン101の外周側壁103とタンク側板200との間を遮蔽している。
つまり、ウェザーシール装置10は、ポンツーン101の外周側壁103近傍に配置され、ポンツーン101の屋根板104上からタンク側板200へと上方に傾斜して延在したウェザーフード本体11aと、ウェザーフード本体11aの上端に取り付けられたシール部材11bとを備えたウェザーフード11を有する。ウェザーフード11の上端側は、シール部材11bがタンク側板200と弾性的に接触しており、シール部材11bが取り付けられた側とは反対側の下方端側は、ポンツーン101の屋根板104に固定されている取付台105に固定して取り付けられている。
この構成により、ポンツーン101の外周側壁103とタンク側板200との間からのタンク内への雨水の浸入を防止している。しかし、未だ十分に満足し得るものではない。
特許文献1では、図6に示すように、図5におけるウェザーフード11のウェザーフード本体11aの先端に、シール部材として、エッジ状の接触尖端縁を形成した板状のゴムシール板11b1、11b2を2枚重ねて使用した構成を開示している。しかし、単にゴムシール板11b1、11b2をウェザーフード11に結着するだけでは、浮屋根の上下動に伴いゴムが捲れたり、引っ掛かったりし、所期の性能を維持するのが難しいという問題がある。
これを防止するために、いくつかの複雑な機構が考えられ提案されている。例えば、特許文献2には、図7おけるウェザーフード本体11aの先端にシール部材として、ウェザーフード本体11aに対して揺動自在にパッキン取り付け金物110を設け、このパッキン取り付け金物110に、タンク側板200の内壁面200aを滑動させる滑り板111、タンク内壁面200aを滑動させる弾力性のあるパッキン材112を取り付け、ウェザーフード本体11aの先端部には滑り板111に接して滑動させる緩衝材113を設けた構造が開示されている。
しかし、この構造は、ウェザーフード11への荷重が大きくなり、構造上好ましくない影響があると考えられる。また、既設の浮屋根式タンクにこれらの改造を行うのは経済的に高コストとならざるを得ない。
比較的シンプルな装置としては、例えば特許文献3に記載されるような構造のものが提案されている。
つまり、図8におけるウェザーフード本体11aの先端に、ウェザーフード11の先端のシール部材として、クロロプレンゴムなどの弾性シール体から成る雨水樋115と、雨水樋115の上部にタンク側板200に接するアース部材116とを設けた構造が開示されている。
しかしながら、幅広の雨水樋115とアース部材116の両方を湾曲しているタンク側板200に密着させなくてはならず、タンクが真円ではなく多少のゆがみも持っていることも考えると、設置や機能維持には難しさが伴うと考えられる。
実開昭61−59591号公報 実開平2−73196号公報 特開平6−1391号公報
以上のような背景により、現在までに、効果的かつ安価な、浮屋根タンクへ側板を伝わって入ってくる雨水の浸入を防止できるウェザーシール装置は一般に普及するには至っていない。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決するもので、浮屋根タンクへの雨水浸入を有効に防止することができ、且つ、既設の浮屋根式タンクへの取り付けも容易になし得る、安価な浮屋根式タンクのウェザーシール装置、及び、斯かるウェザーシール装置を備えた浮屋根式タンクを提供することにある。
上記目的は本発明に係るウェザーシール装置、及び、斯かるウェザーシール装置を備えた浮屋根式タンクにて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、浮屋根式タンクのタンク側板と、浮屋根の外周部を構成するポンツーンの外周側壁との間の間隙を遮蔽する、前記タンク側板の周方向に配置されたウェザーフードを備え、
前記ウェザーフードは、ウェザーフード本体と、前記ウェザーフード本体の上方端に取り付けられた、導電性のシールガイドとを有しており、
前記シールガイドはタンク側板と弾性的に接触しており、前記ウェザーフード本体の下方端は、浮屋根に取り付けられているウェザーシール装置において、
前記シールガイドの外側面上に位置して配置された矩形状をした所定の厚さを有する板状の弾性シール部材と、
前記弾性シール部材の外側面上に位置して配置されたバネ板と、
を備え、前記バネ板と前記弾性シール部材を固定具により前記ウェザーフードに取り付け、前記バネ板により前記弾性シール部材の先端部を前記タンク側板の方へと付勢し、当接させることを特徴とする浮屋根式タンクのウェザーシール装置が提供される。
本発明の一実施態様によると、前記導電性のシールガイドは、前記ウェザーフード本体に取り付けられる平板状とされる支持部と、前記支持部より前記タンク側板の方へと延在し、且つ、前記タンク側板の方へと突出した略半円形の湾曲部を備え、前記湾曲部が前記タンク側板の内壁面に接触し、前記湾曲部開口部が前記弾性シール部材側に開口しており、前記支持部が前記ウェザーフード本体の上方端に取り付けられる。
本発明の他の実施態様によると、前記弾性シール部材は、その下方端がスペーサを介して前記シールガイドの前記支持部に重ね合わせて取り付けられ、前記弾性シール部材は、前記シールガイドの前記開口部を閉鎖するようにして前記タンク側板の内壁面へと延びており、前記弾性シール部材の上方先端が前記タンク側板の内壁面に当接するようにされている。
本発明の他の実施態様によると、前記弾性シール部材は、厚さが8mm〜15mmであり、硬さは、タイプAデュロメータ法ゴム硬さで50〜70であり、導電性は、体積抵抗率で1×102〜1×106Ω・cmである。
本発明の他の実施態様によると、前記弾性シール部材は、前記タンク側板の内壁面に当接する前記弾性シール部材の上方領域は、先端に行くに従って厚さが次第に小さくなるように傾斜している。
本発明の他の実施態様によると、前記弾性シール部材の先端は、先端厚さが2mm〜5mmであり、先端の傾斜面部分は、先端から20mm以下、10mm以上の位置から始まる。
本発明の他の実施態様によると、前記弾性シール部材は、前記タンク側板の内壁面に沿って円周方向に互いに両側縁部を密接して取り付けられ、且つ、前記弾性シール部材は、前記タンク側板円周方向に互いに両側縁部を密接して取り付けられた前記ウェザーフードの継ぎ目を覆って配置される。
第2の本発明によれば、タンク側板と、浮屋根の外周部を構成するポンツーンの外周側壁との間の間隙を遮蔽するウェザーフードを備えたウェザーシール装置を有する浮屋根式タンクにおいて、
前記ウェザーシール装置は、上記いずれかの構成のウェザーシール装置であることを特徴とする浮屋根式タンクが提供される。
本発明によれば、浮屋根式タンクへの雨水浸入を有効に防止することができ、且つ、既設の浮屋根式タンクへの取り付けも容易に達成することができ、しかも安価である。
本発明に係る浮屋根式タンクのウェザーシール装置の一実施例を示す要部断面側面図である。 本発明に係る浮屋根式タンクのウェザーシール装置の一実施例を示す要部斜視図である。 ウェザーシール装置の弾性シール部材の先端形状を示す拡大斜視図である。 本発明に係る浮屋根式タンクのウェザーシール装置の他の実施例を示す要部断面側面図である。 従来の浮屋根式タンクのウェザーシール装置の一例を示す要部断面側面図である。 従来の浮屋根式タンクのウェザーシール装置の他の例を示す要部断面側面図である。 従来の浮屋根式タンクのウェザーシール装置の他の例を示す要部断面側面図である。 従来の浮屋根式タンクのウェザーシール装置の他の例を示す要部断面側面図である。
以下、本発明に係る浮屋根式タンク、及び、ウェザーシール装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
(浮屋根式タンクの全体構成)
図1及び図2は、本発明に係る浮屋根式タンク及びウェザーシール装置の一実施例の概略構成を示す。
本実施例にて、本発明のウェザーシール装置が装備される浮屋根式タンク1は、図5を参照して説明した従来と同様の構成とされる。
つまり、図1及び図2に示すように、浮屋根式タンク1の浮屋根100は、その外周部にポンツーン101が設けられており、ウェザーシール装置10は、ポンツーン101の外周側壁(垂直壁)103と、タンク本体を構成するタンク外周壁、即ち、タンク側板200との間に形成される環状領域(間隙)の上方に位置して配置されている。
また、浮屋根式タンク1は、浮屋根100の外周辺部、即ち、ポンツーン101の外周側壁103には、例えば耐油性合成ゴムで作製された環状のエンベロープ102aと、エンベロープ102a内に配置されたウレタンフォームなどの弾性体102bとを備えた浮屋根シール102が設置されている。浮屋根シール102は、ポンツーン101の外周側壁103とタンク外壁200との間からのタンク内貯留液体の蒸発、及び、外部からタンク内への雨水の浸入を防止している。
さらに、上述のように、浮屋根シール102の上方には、ポンツーン101の外周側壁103とタンク側板200との間からの雨水の浸入を防止するために、ウェザーシール装置10が配置されており、浮屋根100の外周側壁103とタンク側板200との間を遮蔽している。
本実施例によると、ウェザーシール装置10は、ポンツーン101の屋根板104からタンク側板200へと上方に傾斜して延在した、例えば矩形状の鋼板にて作製されるカバー部材、即ち、ウェザーフード11を有している。ウェザーフード11は、タンク側板200の周方向に連続して、即ち、互いに密接して配置されている。各ウェザーフード11は、ウェザーフード本体11aと、ウェザーフード本体11aの上端11a1に取り付けられた、導電性の部材にて作製されたシールガイド11bとを有している。本実施例では、シールガイド11bは、真鍮にて作製したが、これに限定されるものではなく、その他、銅、などを使用することもできる。
上述のように、ウェザーフード11の上端側、即ち、ウェザーフード本体11aの上端11a1には、シールガイド11bが取り付けられ、シールガイド11bがタンク外壁200と弾性的に接触している。シールガイド11bが取り付けられた側とは反対側の下方端側、即ち、ウェザーフード本体11aの下方端11a2は、ポンツーン101の屋根板104に設けられた取付台105においてヒンジ部材107により上下回動可能となるように取り付けられる。これにより、浮屋根100の上昇時又は下降時においても、タンク側板200に多少の歪があっても、タンク側板200と、シールガイド11b及び後述する弾性シール部材であるゴム板20との良好な接触が維持される。また、ウェザーフード11に無理な荷重がかかることを防止できる。
ウェザーフード11の下方端側、即ち、ウェザーフード本体11aの下方端11a2のポンツーン101に対する取付方法は、これに限定されるものではなく、図4に示すように、保持部材106を介してポンツーン上端部103aに取り付けても良い。また、例えば、上述した図5に示す構成と同様に、ポンツーン101の屋根板104に設けた取付台105に固定して取り付けても良い。その他、種々の取付方法を採用し得る。
シールガイド11bは、平板状とされる支持部11b1と、支持部11b1よりタンク側板200の方へと延在した接触部11b2とを有している。すなわち、接触部11b2は、支持部11b1よりタンク側板200の方へと延在し、且つ、タンク側板200の方へと突出して略半円形状に湾曲しており、湾曲部(接触部)11b2がタンク側板200の内壁面200aに接触し、湾曲部開口部11b3がタンク1の中心部方向、やや上方向へと向いて開口するように配置されている。
上記シールガイド11bの支持部11b1は、ウェザーフード本体11aのタンク側板200の内壁面200aに対面した側とは反対側の面、即ち、ウェザーフード本体11aの外側面に取り付けられるが、更にその上(外側面上)に重ねて概略矩形状をした板状の弾性シール部材であるゴム板20が取り付けられる。
つまり、ゴム板20は、その下方端20aがライナー(即ち、スペーサ)30を介してシールガイド11bの支持部11b1に重ね合わせて取り付けられる。ゴム板20は、シールガイド11bの開口部11b3を閉鎖するようにしてタンク側板200の内壁面200aへと延びており、ゴム板20の上方先端領域20bの先端20b2がタンク側板200の内壁面200aに当接するようにされる。ゴム板20の上方先端部領域20bは、先端20b2に行くに従って厚さが次第に小さく(即ち、薄く)なるように傾斜して作製されている。ゴム板20の材質、上方端形状等については、後で詳しく説明する。
また、上述したように、ゴム板20とウェザーフード11の取り付け位置である、ゴム板20の下方端20aとウェザーフード本体11aの上方端11a1との間にスペーサ30を設置し、この厚さを調整することにより、タンク側板200に多少の歪みがあっても、現場にて真っ直ぐにゴム板20を設置することができる。スペーサ30の厚さ(T3)は、例えば、6mmの厚さのものを必要により複数枚重ねて調整することができるが、複数の厚さのものを用意して、適宜選択して使用することもできる。スペーサ30のタンク円周方向の幅(W30)は、通常、ウェザーフード本体11aの幅(W1)程度の長さのものが好適である。幅W30に直交する方向の長さ(L30)は、40mm程度で良い。
更に、ゴム板20の下方領域、即ち、固定具50による上記ゴム板20のシールガイド支持部11b1への取り付け位置から、シールガイド湾曲部先端位置11b4の間に相当する領域にわたってバネ板40が設けられる。本実施例では、バネ板40は、真鍮にて作製したが、これに限定されるものではない。
尚、図2を参照すると理解されるように、ウェザーフード本体11a及びシールガイド11bは、タンク側板200の内壁面200aに沿って円周方向に互いに両側縁部11cを密接して取り付けられている。略矩形状をしたゴム板20もまた、タンク側板200の内壁面200aに沿って円周方向に連続して配置され、互いに両側縁部20cを密接して取り付けられている。従って、本実施例では、ウェザーフード本体11a及びシールガイド11bの、タンク側板円周方向に所定の間隔にて形成される両側縁部当接部(ウェザーフードの継ぎ目)11cと、ゴム板20の、タンク側板円周方向に所定の間隔にて形成される両側縁部当接部(ゴム板の継ぎ目)20cとは、一致しないようにした。本実施例では、二つのウェザーフード11の継ぎ目11cの間に、ゴム板20の継ぎ目20cが位置するようにした。この構成により、ウェザーフード11の継ぎ目11cから雨水がタンク内へと漏れ出すのを極力防止した。
また、バネ板40は、ゴム板20のタンク側板200の内壁面200aに沿った円周方向の幅(W1)と同じとすることもできるが、本実施例では、ゴム板20の幅方向に互いに離隔して複数個配置するようにした。通常、幅(W2)が30〜70mm、長さ(L2)が80〜130mmとされる。本実施例では、幅(W2)を50mm、長さ(L2)を110mmとした。
また、各バネ板40は、ゴム板20をタンク側板内壁面200aへと押圧するためのものであり、好ましくは、図1に一点鎖線にて示すように、取付前においては外方向へと幾分湾曲した形状とされるのが好適である。
ゴム板20をウェザーフード11に取り付けるための固定具50、即ち、ボルト軸貫通用の、ゴム板20に形成される固定穴21は、ゴム板20の、タンク側板円周方向に長くされた長穴とされる。また、長手方向に直交する方向にも、ボルト軸より大きめとされ、ゴム板20が取り付けに際して、上下・左右方向に調整できるような自由代を設けたサイズとし、ゴム板20がタンク側板200に対し円周方向すべてに亘り均一に取り付けられるようにする。
本実施例では、上記構成にて、バネ板40、ゴム板20、スペーサ30、シールガイド支持部11b1及びウェザーフード本体11a1が丸ワッシャ51を介して固定具50であるボルト、ナットにて一体に固着される。スペーサ30の厚さが適宜選択され、ゴム板20の先端20b2がタンク側板200の内壁面200aに一様に当接するように調整される。又、ナットは弛み止め防止機構を備えたものが最も好ましい。
上記構成により、1枚のゴム板20を、2枚、或いは、それ以上の複数枚のウェザーフード11、11に跨って設置することができ、ウェザーフード11、11間の隙間11cから浸入する雨水の浸入防止もできる。従って、タンク内への雨水浸入量を大幅に低減することができる。
次に、ゴム板20について説明する。
(ゴム板)
本実施例にて、ウェザーフード11の先端部に取り付けられる板状の弾性シール部材としての上記ゴム板20は、タンク側板200と当接して、摺動する時に火花が発生することを防止するために導電性ゴムを用いる。
タンク側板200の周方向に配置される各ゴム板20は、本実施例では、全体形状が矩形状(幅W1、長さL1)とされる板状のゴム板とされ、浮屋根100の上下動によりある程度の変形を許容できるような厚さ(T1)と硬さ(H)に調整したものである。
また、ゴム板20の上方先端部20bは、タンク側板200から伝わり落ちる雨水が連続してウェザーフード11の外側に排出できるような形状とした。
以下に、更に詳しく説明する。
・ゴム板の導電性
本実施例のウェザーシール装置10では、導電性ゴムから成るゴム板20と、金属製の導電性シールガイド11b及びウェザーフード本体11aにより、静電気の帯電防止を容易に達成している。
そこで、ゴム板20の導電性としては、体積抵抗率で1×102〜1×106Ω・cmが最適である。
また、ゴム板20としてのゴム材質の条件は、導電性ゴムであることと、以下に説明するゴム硬さを有することであるが、屋外に常時設置されることから、ゴムの劣化が懸念される。そのため、耐候性が高いことが必要とされる。
導電性ゴムとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどで体積抵抗率が上記所定の範囲内であるものを好適に使用し得る。
・ゴム板の厚さと硬さ
ゴムの変形は、浮屋根上昇時にタンク側板200とゴム板20との摩擦抵抗により発生し易くなる。浮屋根下降時は、ゴムを延ばす方向となるため問題はない。浮屋根100の上昇速度が早いほどその程度は大きくなり、ゴム板20の上方先端部20bがタンク側板側に捲れる、即ち、折れ曲がる現象が発生し、その部分はゴム厚が増し、即ち、二重重ね状態となる。そのことによりタンク側板200に対する接触面積が局部的に増加する結果となり、さらに周方向にも捲れが助長することになる。
捲れが発生し、厚みが増した箇所の両脇は、隙間が発生することとなり、シール性能が大幅に低下する。
従って、このような局部的な捲れが起きないような、厚みと硬さに調整する。
ゴム板20の厚み(T1)は、厳密には、タンク1の大きさやウェザーフード11が側板200に与える接触荷重により、最適な厚みが決まると考えられる。通常、8mm〜15mm程度が好ましいと考えられる。即ち、8≦T1≦15である。8mm未満では、浮屋根上昇時ゴムが湾曲し部分捲れが発生し易くなるといった問題があり、また、15mmを超えると重量が増えウェザーフードに変化荷重を与えるといった問題がある。
本実施例では、一例として2万KL及び3万KLの浮屋根式タンクのケースを取り上げて例示しているが、実験レベルでは両者の側板の曲率はそれほど変わらないためどちらのケースにおいてもT1=10mmとした。
硬さ(H)は、タイプAデュロメータ法(JIS K6253)によるゴム硬さで50〜70(即ち、50≦H≦70)、好ましくは、55〜60(55≦H≦60)である。55を大きく下回るものでは、即ち、50未満では、柔らか過ぎて捲れ現象が発生し易くなる。60を大きく超えるものは、即ち、70を超えるものでは、硬すぎて自由代がなく、ゴムに少しでも変形等があると隙間ができてシール性が低下する。
・ゴム板形状
ゴム板20の全体形状は、通常、幅(W1)が500mm〜1200mm、長さ(L1)が120mm〜200mmとされ、本実施例では、幅(W1)が1040mm、長さ(L1)が150mmとした。また、今回、以下に説明する本発明者等が実験において使用した、ゴム硬さ60、厚さが10mmのゴム板20では、先端部20bを鋭利な状態(先端厚み(T1a)1.0mm以下、傾斜面長さ(L1a)16mm)にすると浮屋根上昇時、大凡長さ約3mm〜10mm程度の捲れが部分的に発生することが確認された。
そこで、先端形状を、図3(a)に示すように、先端厚み(T1a)を2mm、傾斜面長さ(L1a)を16mmの形状にしたところ、捲れがあっても直ぐに自身の弾性力でもとに戻ることが可能であった。つまり、先端厚み(T1a)は、ある程度の厚み、本実施例では、2mm以上あれば弾性力により反発力効果が得られることが分かった。勿論、傾斜面20b1は、図3(a)に示すように直線状である必要はなく、図3(b)に示すように、湾曲(R2)した形状とすることも可能である。
一方、先端厚み(T1a)が厚すぎると、本実験では、6mm以上とすると、雨水をうまく排出できないことが分かった。つまり、ゴム板20の先端は、先端厚さ(T1a)が2〜5mmであるのが好適である。
また、先端20bの傾斜面部分20b1は、先端からの長さ(L1a)が20mm以下、10mm以上の位置から始まることが重要であることが分かった。20mmを超えると、ゴムの反発力が低下するといった問題があり、また、10mm未満では、ゴムが捲れたときの復元力が小さくなるといった問題がある。
(バネ板)
上述したように、ゴム板20を、複数個のやや湾曲した真鍮プレートバネ板40で押さえることにより、変形後のゴム板20を再び元の状態に自動的に戻し、ゴム板先端部分20bを均一に押さえることができる。それによって、雨水浸入防止効果を長期に亘って維持、高めることができる。
バネ板20は、図2に示すように、幅(W2)、長さ(L2)の長方形状とされるが、バネ板20の長さ(L2)については、本実施例では、ゴム板20の長さ(L1)との比(L1:L2)で1:0.73程度としている。
本実施例にて、重要なことは、ゴム板20を押さえる位置である。好ましくは、図1にて、ゴム板20の先端20b2からバネ板40の先端までの距離(L3)が15〜50mm程度である。15mmより短くしてゴム板先端20b2に近過ぎるとゴム板20の捲れ時の復元力を阻害してしまう。また、50mmを超えると、押付け力の低下といった問題が起こる。本実施例では、ゴム板先端20b2からのバネ板先端部40aまでの長さ(L3)を40mmとした。
上述したように、バネ板40は、図1に一点鎖線にて示すように、中央付近をやや盛り上げたもので、中央部付近を大凡5mm前後盛り上げたものが良い。
板バネ効果は、そのゴム接触状態(初期設定)で決定されるので、湾曲率状態により変わる。そのため、バネ板40を作製する真鍮プレートは、人間の力である程度自由な曲げが可能なものとするのが良い。
以上説明したように、本実施例のウェザーシール装置10、及び、斯かるウェザーシール装置10を備えた浮屋根式タンク1によれば、以下の作用効果を達成し得る。
(1)タンク側板との密着性を保つための複雑かつ高価な部材が不要となる。
(2)タンク側板に多少の歪みがあっても、確実にタンク側板と密着することができ、高い雨水浸入防止効果が得られる。
(3)隣接するウェザーフード間の隙間から浸入する雨水も防止できる。
(4)雨水の浸入を効果的に防止できることから、タンク内の水切り作業を削減できるなど、油水分離のための手間と費用が低減できる。
(5)既設のウェザーフードがそのまま使用できるため、取り付けが容易でかつ任意のタイミングで加工ができる。
(6)上記諸特徴を有することにより、比較的長期間使用された浮屋根式タンクにも適用が可能である。
本実施例の上記構成のウェザーシール装置の作用効果を実証するために、既設の浮屋根式タンク1の直径に合わせた曲率鋼板を作成してタンク側板にみたて、以下に記載する各部材の材料、寸法形状を有するウェザーシール装置10を作製して設置し、実験を行った。以下に、本実験例について説明する。
本実験例にて使用した、ウェザーシール装置10の各部材の材料、寸法形状は、以下の通りである。
・シールガイド11b
材質:真鍮
ボルトナット50の位置から湾曲部開口部先端位置までの長さ(L4):78mm
ボルトナット50の位置から湾曲部半径中心位置までの長さ(L5):50mm
ボルトナット50の位置から下方端位置までの長さ(L6):20mm
湾曲部11b2の半径R1:28mm
・ゴム板20
材質:
全体形状:幅(W1) 1040mm
長さ(L1) 150mm
厚さ(T1) 10mm
ボルトナット50の位置から上方先端位置までの長さ(L1−L6):130mm
ボルトナット50の位置から下方端位置までの距離(L6): 20mm
先端形状:先端厚さ(T1a) 2mm
斜面長さ(L1a) 16mm
・スペーサ30
材質:SUS
全体形状:幅(W30) 400mm
長さ(L30) 38mm
厚さ(T3) 6mm
・バネ板40
材質:真鍮
全体形状:幅(W2) 50mm
長さ(L2) 110mm
厚さ(T4) 1.0mm
ボルトナット50の位置から上方先端位置までの長さ(L2−L6):90mm
ボルトナット50の位置から下方端位置までの距離(L6): 20mm
実験例
上記構成のウェザーシール装置10を用い、タンク側板上部からタンク側板200へ水を流し、タンク内側への漏洩量及び外部への排出量を計測した。測定は、1分間当たりの量として計測した。
実験1:シールガイドが、タンク側板200の横方向の溶接線と接触する位置にある場合。
実験2:シールガイドが、タンク側板200の縦方向の溶接線のみと接触する位置にある場合。
結果を、表1及び表2に示す。
Figure 2011098764
Figure 2011098764
上記実験結果から理解されるように、本発明に従った構成とすることにより、良好な結果を得ることができた。
1 浮屋根式タンク
10 ウェザーシール装置
11 ウェザーフード
11a ウェザーフード本体
11b シールガイド
50 ボルトナット(固定具)
20 ゴム板(弾性シール部材)
30 ライナー(スペーサ)
40 バネ板
100 浮屋根
101 ポンツーン
103 ポンツーン外周側壁(浮屋根外周部)
104 屋根板
105 取付台
107 ヒンジ部材
200 タンク側板

Claims (8)

  1. 浮屋根式タンクのタンク側板と、浮屋根の外周部を構成するポンツーンの外周側壁との間の間隙を遮蔽する、前記タンク側板の周方向に配置されたウェザーフードを備え、
    前記ウェザーフードは、ウェザーフード本体と、前記ウェザーフード本体の上方端に取り付けられた、導電性のシールガイドとを有しており、
    前記シールガイドはタンク側板と弾性的に接触しており、前記ウェザーフード本体の下方端は、浮屋根に取り付けられているウェザーシール装置において、
    前記シールガイドの外側面上に位置して配置された矩形状をした所定の厚さを有する板状の弾性シール部材と、
    前記弾性シール部材の外側面上に位置して配置されたバネ板と、
    を備え、前記バネ板と前記弾性シール部材を固定具により前記ウェザーフードに取り付け、前記バネ板により前記弾性シール部材の先端部を前記タンク側板の方へと付勢し、当接させることを特徴とする浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  2. 前記導電性のシールガイドは、前記ウェザーフード本体に取り付けられる平板状とされる支持部と、前記支持部より前記タンク側板の方へと延在し、且つ、前記タンク側板の方へと突出した略半円形の湾曲部を備え、前記湾曲部が前記タンク側板の内壁面に接触し、前記湾曲部開口部が前記弾性シール部材側に開口しており、前記支持部が前記ウェザーフード本体の上方端に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  3. 前記弾性シール部材は、その下方端がスペーサを介して前記シールガイドの前記支持部に重ね合わせて取り付けられ、前記弾性シール部材は、前記シールガイドの前記開口部を閉鎖するようにして前記タンク側板の内壁面へと延びており、前記弾性シール部材の上方先端が前記タンク側板の内壁面に当接するようにされていることを特徴とする請求項2に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  4. 前記弾性シール部材は、厚さが8mm〜15mmであり、硬さは、タイプAデュロメータ法ゴム硬さで50〜70であり、導電性は、体積抵抗率で1×102〜1×106Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  5. 前記弾性シール部材は、前記タンク側板の内壁面に当接する前記弾性シール部材の上方領域は、先端に行くに従って厚さが次第に小さくなるように傾斜していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  6. 前記弾性シール部材の先端は、先端厚さが2mm〜5mmであり、先端の傾斜面部分は、先端から20mm以下、10mm以上の位置から始まることを特徴とする請求項5に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  7. 前記弾性シール部材は、前記タンク側板の内壁面に沿って円周方向に互いに両側縁部を密接して取り付けられ、且つ、前記弾性シール部材は、前記タンク側板円周方向に互いに両側縁部を密接して取り付けられた前記ウェザーフードの継ぎ目を覆って配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の浮屋根式タンクのウェザーシール装置。
  8. タンク側板と、浮屋根の外周部を構成するポンツーンの外周側壁との間の間隙を遮蔽するウェザーフードを備えたウェザーシール装置を有する浮屋根式タンクにおいて、
    前記ウェザーシール装置は、請求項1〜7のいずれかの項に記載のウェザーシール装置であることを特徴とする浮屋根式タンク。
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