JP2011098675A - 耐雷ファスナ、キャップ、ファスナ部材、耐雷ファスナの取り付け方法 - Google Patents

耐雷ファスナ、キャップ、ファスナ部材、耐雷ファスナの取り付け方法 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁性を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては機体の安全性を高め、製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、ファスナ部材、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ファスナ本体25の頭部25bに頭部キャップ50を備え、ファスナ本体25の軸部25sに軸部キャップ30を備えることで、ファスナ部材24への雷の直撃、落雷した場合のファスナ部材24からのアーク放電の発生を抑えることができる。また、頭部キャップ50に穴52を形成し、この穴52にネジ溝52aを形成しておくことで、ファスナ部材24に頭部キャップ50を確実かつ容易に位置決めして取り付けることができ、取付後においても頭部キャップ50の脱落を確実に防止できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機の機体に用いられる耐雷ファスナ、キャップ、ファスナ部材、耐雷ファスナの取り付け方法に関する。
航空機の機体を構成する翼や車輪を備えた脚等、各種部材においては、翼や脚の表面を形成する表面パネルや、各種機器等の構造材への取付に、ファスナ部材(留め具)を用いている。
ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、互いに固定すべき二つの部材の双方に形成された貫通孔に挿入し、その先端部を固定金具で固定することで、二つの部材を締結する。
ところで、航空機においては、落雷対策を万全に期す必要がある。このため、ファスナ部材への雷の直撃を避ける必要がある。また、ファスナ部材で締結された二つの部材が異なる材料で形成されている場合、落雷時に、二つの部材間の電位差により、二つの部材の界面に沿った方向にアーク放電(スパーク)が発生する。そこで、この被雷時におけるアーク放電の発生を確実に抑える必要がある。
従来、図9に示すように、翼1等の内部側において、第一の部材2および第二の部材3を貫通するファスナ部材4のファスナ本体4aおよび固定金具4bから離間した状態にキャップ6が取り付けられ、ファスナ本体4aおよび固定金具4bとの間に空気で満たされた空隙7を形成する構造が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
特開平2−7398号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャップ6をファスナ部材4に対して位置決めできる構造とはなっておらず、キャップ6の取付位置は作業者に依存する。このため、キャップ6の中心とファスナ部材4の中心とが大きくずれる可能性もある。空隙7においてファスナ部材4とキャップ6との間隙が小さい場所が生じると、キャップ6の機能(耐雷性)が低下する。最悪の場合、キャップ6がファスナ部材4に接触してしまった状態で取り付けられれば、キャップ6の機能そのものが大きく損なわれることもある。
また、キャップ6は、図9(a)に示すように、接着剤9で第二の部材3に取り付けられたり、図9(b)に示すようにゴム(絶縁材料)10で外周をカバーしているため、取付現場において、接着作業、ゴム10の塗布作業が必要であり、作業の手間がかかる。航空機においては、空間が狭く、奥まった位置において上記したような作業を行わなければならないこともあり、作業性が非常に悪い。しかも、このようなファスナ部材4は、数千〜数万箇所設けられるため、作業性の悪化はコスト上昇に直結する。
さらに、上記したような作業は、いわゆる手作業であり、作業者によって、施工品質にばらつきが出やすく、これは信頼性にも影響する。
また、脚やラダー等、中空構造ではない部材においては、ファスナ部材の両端が機体の外部に露出することがあり、このような場合、ファスナ部材の両端における耐雷性を確保する必要がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、耐雷性を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては機体各部の安全性を高め製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、ファスナ部材、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
かかる目的のもとになされた本発明の耐雷ファスナは、航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、軸部を第一の部材側から第一の部材および第二の部材を貫通させて第二の部材側に突出させたファスナ部材と、第二の部材側に突出したファスナ部材の軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなる第一のキャップと、第一の部材側において、ファスナ部材の頭部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなる第二のキャップと、を備える。そして、ファスナ部材の頭部において、第一の部材から離間する側に、第二のキャップが係合される係合部が形成され、第二のキャップは、その内周面の中心部に、係合部に係合する被係合部が形成され、被係合部が係合部に係合された状態で、被係合部以外の部分においてファスナ部材との間に間隙を隔てた状態で取り付けられていることを特徴とする。このように、第二のキャップに形成された被係合部にファスナ部材の係合部を係合させることで、第二のキャップをファスナ部材の頭部に対して容易かつ確実に中心に位置決めして取り付けることができる。ここで、係合部および被係合部には、雄ねじと雌ねじ、凸状のボスとこれに対応する凹部等を適宜用いることができる。
また、第二のキャップとファスナ部材との間隙に絶縁性のシーラント剤を充填するのが好ましい。
第二の部材から突出したファスナ部材の軸部については、如何なる構成により第一のキャップで覆うようにしても良いが、ファスナ部材の軸部に第二の係合部を形成し、第一のキャップは、その内周面の中心部に、ファスナ部材の第二の係合部に係合する第二の被係合部が形成され、第二の被係合部にファスナ部材の第二の係合部が係合した状態で、第二の被係合部以外の部分においてファスナ部材との間に間隙を隔てた状態で取り付けるのが好ましい。
被係合部または係合部に、第一の部材から離間する方向に沿った溝を形成するのが好ましい。これにより、ファスナ部材の係合部を第二のキャップの被係合部に係合させたときに、第二のキャップとファスナ部材との間隙に充填されたシーラント剤の余剰分を、溝を通して押し出すことができる。
被係合部、係合部がネジ式である場合、第二のキャップの頭部を、第二のキャップをファスナ部材にねじ込むための工具を掛けることのできる形状としても良いし、第二のキャップを作業者が手で回すのであれば、第二のキャップの外周面に、滑り止め加工を施すのが好ましい。
また、第二のキャップに、第二のキャップを作業者が手で回すための摘まみ部を突出形成しても良い。このとき、摘まみ部は、第二のキャップに対して連結部を介して連結され、連結部は、摘まみ部をつまんで第二のキャップをファスナ部材の軸部にねじ込んでいき、その締付けトルクが予め定めたレベルに到達したときにねじ切れるようにすれば、第二のキャップの締付けトルクを容易に管理できる。
第二のキャップの内周面は、被係合部が形成されている側とは反対側の開口端側から、被係合部が形成されている側に向けて、その内径が漸次縮小するよう形成するのが好ましい。これにより、第二のキャップの内部にシーラント剤を充填するときには、シーラント剤に空隙ができるのを抑えることができる。また、第二のキャップに衝撃等が加わった際に、第二のキャップのみが脱落し、シーラント剤がそのままファスナ部材の軸部に残るようにすることができる。
また、第二のキャップの開口端側において、第二のキャップの径方向におけるシーラント剤の厚さを、予め定められた以上の寸法とするのが好ましい。これにより、第二のキャップが脱落した際にも、シーラント剤のみによって耐雷性能を確保することができる。
第二のキャップとシーラント剤との接着強度を、シーラント剤とファスナ部材との接着強度よりも小さくすることもできる。これによっても、第二のキャップに衝撃等が加わった際に、第二のキャップのみが脱落し、シーラント剤がそのままファスナ部材の頭部に残るようにすることができる。
本発明は、第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の頭部に装着されるキャップであって、絶縁性材料からなる傘状で、その頂部の内周面に、第一の部材側でファスナ部材の頭部に係合する被係合部が形成され、被係合部がファスナ部材の頭部に係合した状態で、被係合部以外の部分においてファスナ部材との間に間隙を隔てた状態で取り付けられることを特徴とするキャップとすることもできる。このようなキャップは、上記したような航空機の機体を構成する部材のみならず、他の用途における部材どうしの接合に用いるファスナ部材に対しても適用することができる。
本発明は、航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、導電性材料から形成されたファスナ部材であって、第一の部材側から第一の部材および第二の部材を貫通し、第二の部材側に突出される軸部と、軸部よりも径が大きく、第一の部材側に露出する頭部と、頭部に形成され、当該ファスナ部材の頭部を覆うよう絶縁性材料からなるキャップを取り付けるため、第二の部材から離間する側に、キャップが係合される係合部とが形成されていることを特徴とする。
また、係合部は、第一の部材から離間する側に突出するボスと、当該ボスの外周面に形成された、ネジ溝、周方向に連続する溝、凸条のいずれか一つとから構成されている
本発明は、航空機の機体を構成する第一の部材と第二の部材とを重ねた状態で、第一の部材側からファスナ本体を貫通させる工程と、ファスナ本体に、第二の部材側から固定金具を装着する工程と、第二の部材側において、ファスナ本体および固定金具を覆うように第一のキャップを取り付ける工程と、第一の部材側において、ファスナ本体の頭部に第二のキャップを取り付ける工程と、を備えることを特徴とする耐雷ファスナの取り付け方法とすることもできる。
さらに、ファスナ本体の頭部に第二のキャップを取り付けるに先立ち、キャップの内周側に絶縁材料からなるシーラント剤を充填する工程をさらに備えることもできる。
本発明によれば、耐雷性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で、第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の頭部にキャップを取り付けることができる。
また、キャップとファスナ部材との間隙に絶縁性のシーラント剤を充填することで、耐雷性、および燃料に対するファスナ部材のシール性能を確保することが可能である。
本実施の形態における耐雷ファスナを示す断面図である。 キャップの斜視図である。 頭部キャップの平面図である。 キャップの外周面にスリット加工を施した例を示す図である。 キャップの頭部に突起を設けた例を示す図である。 キャップの頭部に摘まみ部を設けた例を示す図である。 キャップの他の例を示す断面図である。 キャップのさらに他の例を示す断面図である。 従来の耐雷ファスナの例を示す断面図である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を適用した航空機の機体を構成する翼、脚、ラダー等の機体構成部材20の一部の断面図である。
この図1に示すように、機体構成部材20を構成する、第一の部材21と、第二の部材22とが、ファスナ部材24によって締結されている。ここで、第一の部材21、第二の部材22としては、機体構成部材20の表面を形成する表面パネルと、表面パネルを保持する構造材、構造材と構造材に取り付けられる各種機器を保持するためのブラケット等の組み合わせが考えられる。もちろん、これ以外の二つの部材の組み合わせであっても良い。
ファスナ部材24は、ピン状のファスナ本体25と、第二の部材22側でファスナ本体25に装着されるカラー26と、ワッシャ28と、から構成される。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に金属材料により形成される。
ピン状をなしたファスナ本体25は、軸部25sにネジ溝(第二の係合部)25aが形成され、頭部25bは軸部25s側より拡径している。このファスナ本体25は、軸部25sを、第一の部材21および第二の部材22を貫通して形成された孔21a、22aに第一の部材21側から挿入し、頭部25bを第一の部材21の孔21aの周囲に突き当てた状態で、軸部25sを第二の部材22側に突出させる。
カラー26は、筒状で、その内周面にはファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝26aが形成されている。このカラー26は、第二の部材22側に突出したファスナ本体25のネジ溝25aにねじ込まれる。これによって、第一の部材21と第二の部材22とは、ファスナ本体25の頭部25bとカラー26およびワッシャ28とによって挟み込まれ、第二の部材22と第一の部材21とが締結されている。
なお、この状態で、ファスナ本体25の軸部25sは、カラー26よりも第二の部材22から離間する側に突出し、さらに、ネジ溝25aの一定長をカラー26から露出させている。
ワッシャ28は、所定の厚さを有した環状で、カラー26と第二の部材22との間に挟み込まれ、例えばポリイミド等の絶縁材料により形成されている。ワッシャ28を絶縁材料で形成することで、第二の部材22とワッシャ28との界面においてアーク放電が生じるのを防止する。
さて、ファスナ部材24には、第二の部材22側において、軸部キャップ(第一のキャップ)30が装着され、軸部キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填されている。
図2、図3に示すように、軸部キャップ30は、断面円形で、一端部30a側のみが開口し、他端部30b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する傘状の形状とされている。このキャップは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
軸部キャップ30の他端部30b側の内周面(以下、これを底面31と称する)には、断面円形の有底状の穴(第二の被係合部)32が形成されており、この穴32の内周面には、ファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝32aが形成されている。この軸部キャップ30は、一端部30aの端面を第二の部材22に押し当てた状態で、穴32にファスナ本体25の軸部25sが挿入されるようになっている。このとき、ファスナ本体25のネジ溝25aに軸部キャップ30のネジ溝32aが噛み合うことで、軸部キャップ30がファスナ部材24に対し、容易かつ確実に位置決め固定できるようになっている。
このような軸部キャップ30は、軸部キャップ30をファスナ部材24に装着したときに、ワッシャ28、ファスナ本体25およびカラー26との間に、予め定められた間隙が形成されるよう、内周面36の内径が設定されている。特に、軸部キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、軸部キャップ30の内周面36とワッシャ28およびファスナ本体25との間に、所定寸法t1以上の間隙を確保できるよう、軸部キャップ30が形成されている。
軸部キャップ30をファスナ部材24に装着した状態では、軸部キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填される。このシーラント剤34が、軸部キャップ30の内周面とファスナ本体25およびカラー26との間に介在することで、軸部キャップ30とファスナ部材24との間の絶縁性がさらに高まる。そして、軸部キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、軸部キャップ30の内周面36とワッシャ28およびファスナ本体25との間のシーラント剤34が、所定寸法t1以上の厚さを有しているので、軸部キャップ30の内周面36とワッシャ28およびファスナ本体25との界面における絶縁性能が確保される。
また、軸部キャップ30の内周面36は、一端部30a側が、その内径が一定とされたストレート部36aとされ、さらに、ストレート部36aから穴32に向けて、その内径が漸次縮小するテーパ部36bが形成されている。
そして、ストレート部36aとテーパ部36bが隣接する部分の角部36c、テーパ部36bと底面31とが隣接する部分の角部36dは、所定の曲率半径を有したR形状とされている。
このようにして、軸部キャップ30の内周面36は、ストレート部36aから角部36c、テーパ部36b、角部36dへと、スムーズに連続する面とされている。これにより、軸部キャップ30内にシーラント剤34を充填する際に、シーラント剤34に空気を巻き込んだり、内周面36(特に角部36c、36d等)においてシーラント剤34に空隙ができたりするのを防ぐようになっている。
一方、上記ファスナ本体25の頭部25bは、頭部キャップ(第二のキャップ)50と、頭部キャップ50内に充填されたシーラント剤54とによって覆われ、これによって落雷、および落雷時に電流がファスナ部材24に集中するのを防いでいる。
ファスナ本体25の頭部25bには、第一の部材21から離間する方向に突出する柱状のボス(係合部)60が形成されている。ボス60の外周面には、ネジ溝60aが形成されている。
一方、頭部キャップ50は、軸部キャップ30と同様、断面円形で、一端部50a側のみが開口し、他端部50b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する傘状の形状とされている。この頭部キャップ50は、PPS、ポリイミド、PEEK、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
頭部キャップ50の他端部50b側(第一の部材21から離間した側)の内周面(以下、これを底面51と称する)には、断面円形の有底状の穴(被係合部)52が形成されており、この穴52の内周面には、ボス60のネジ溝60aに噛み合うネジ溝52aが形成されている。この頭部キャップ50は、一端部50aの端面を第一の部材21に押し当てた状態で、穴52にボス60が挿入されるようになっている。このとき、ボス60のネジ溝60aに頭部キャップ50のネジ溝52aが噛み合うことで、頭部キャップ50がファスナ部材24に対し、容易かつ確実に位置決め固定できるようになっている。
このような頭部キャップ50は、頭部キャップ50をファスナ部材24に装着したときに、ファスナ本体25の頭部25bとの間に、予め定められた間隙が形成されるよう、内周面56の内径が設定されている。特に、頭部キャップ50の開口側である一端部50aにおいては、頭部キャップ50の内周面56とファスナ本体25の頭部25bとの間に、所定寸法t2以上の間隙を確保できるよう、頭部キャップ50が形成されている。
頭部キャップ50をファスナ部材24に装着した状態では、頭部キャップ50の内部に、絶縁性を有したシーラント剤54が充填される。このシーラント剤54が、頭部キャップ50の内周面56とファスナ本体25の頭部25bとの間に介在することで、頭部キャップ50とファスナ部材24との間の絶縁性がさらに高まる。そして、頭部キャップ50の開口側である一端部50aにおいては、頭部キャップ50の内周面56とファスナ本体25の頭部25bとの間のシーラント剤54が、所定寸法t2以上の厚さを有しているので、頭部キャップ50の内周面56とファスナ本体25の頭部25bとの界面における絶縁性能が確保される。
また、頭部キャップ50の内周面56は、一端部50a側が、その内径が一定とされたストレート部56aとされ、さらに、ストレート部56aから底面51に向けて、その内径が漸次縮小するテーパ部56bが形成されている。
そして、ストレート部56aとテーパ部56bが隣接する部分の角部56c、テーパ部56bと穴52とが隣接する部分の角部56dは、所定の曲率半径を有したR形状とされている。
このようにして、頭部キャップ50の内周面56は、ストレート部56aから角部56c、テーパ部56b、角部56dへと、スムーズに連続する面とされている。これにより、頭部キャップ50内にシーラント剤54を充填する際に、シーラント剤54に空気を巻き込んだり、内周面56(特に角部56c、56d等)においてシーラント剤54に空隙ができたりするのを防ぐようになっている。
第一の部材21および第二の部材22を締結するファスナ部材24に、軸部キャップ30、頭部キャップ50を装着するときには、軸部キャップ30、頭部キャップ50の内部に、未硬化のシーラント剤34、54を充填しておく。そして、第一の部材21および第二の部材22から突出した各ファスナ部材24のファスナ本体25に、軸部キャップ30、頭部キャップ50を押し付ける。
このとき、軸部キャップ30、頭部キャップ50内に充填されたシーラント剤34、54が、軸部キャップ30、頭部キャップ50の一端部30a、50aの開口部から溢れ出てくる。軸部キャップ30、頭部キャップ50内の全域にシーラント剤34、54が均等に行き渡るよう、シーラント剤34、54が軸部キャップ30、頭部キャップ50の全周から溢れ出るのが好ましい。このため、軸部キャップ30、頭部キャップ50の一端部30a、50aの表面37、57は平滑面であるのが好ましく、また、一端部30a、50aの内周縁部38、58は、バリやカエリ等が生じないように形成するのが好ましい。
ファスナ本体25に、軸部キャップ30、頭部キャップ50を押し付けていくと、軸部キャップ30、頭部キャップ50の内部には穴32、52が形成されているので、ファスナ部材24を軸部キャップ30、頭部キャップ50の中心に確実かつ容易に位置決めできる。これにより、軸部キャップ30、頭部キャップ50とファスナ部材24とがずれて、軸部キャップ30、頭部キャップ50とファスナ部材24との間の間隙が場所によって狭くなることもなく、ファスナ部材24が軸部キャップ30、頭部キャップ50に直接接触してしまうことも防止できる。
軸部キャップ30、頭部キャップ50のファスナ部材24への位置決めを容易に行うため、穴32、52の周縁部を、その内径が穴32、52の奥側に向けて漸次縮小するテーパ面とすることも有効である。
軸部キャップ30、頭部キャップ50の穴32、52をファスナ本体25に押し付けた後は、軸部キャップ30、頭部キャップ50を回転させてファスナ本体25にねじ込んでいく。
このとき、穴32、52内にシーラント剤34、54が充填されていると、穴32、52にファスナ本体25の軸部25s、ボス60が挿入され、さらに軸部キャップ30、頭部キャップ50のねじ込みにともなってファスナ本体25が穴32、52内に侵入してくると、穴32、52内のシーラント剤34、54の行き場がなく、シーラント剤34、54の圧力が高まってファスナ本体25の軸部25sを穴32、52の所定の深さまで挿入できないこともある。
そこで、軸部キャップ30、頭部キャップ50の穴32、52の内周面には、少なくとも一箇所、穴32、52の中心軸方向(第二の部材22から離間する方向)に沿って延びる溝33、53を形成するのが好ましい。図2、図3の例では、2本の溝33、53が穴32、53に形成されている。もちろん、溝33、53を3本以上形成することも可能である。
このように、穴32、53に溝33、53を形成しておくことで、穴32、53にファスナ本体25の軸部25s、ボス60が挿入されてくると、これに伴い、穴32、52内の余剰のシーラント剤は、溝33、53を通して穴32、52から押し出されるようになっている。これにより、穴32、52内のシーラント剤34、54に空隙が残存するのを防ぐとともに、穴32、52へのファスナ本体25の挿入、つまりファスナ部材24への軸部キャップ30、頭部キャップ50の取り付けを容易に行うことができる。
そして、軸部キャップ30、頭部キャップ50の一端部30a、50aの端面が第二の部材22、第一の部材21に押し当てられるまで軸部キャップ30、頭部キャップ50をねじ込んだら、軸部キャップ30、頭部キャップ50のねじ込みを完了する。するとこの状態で、ファスナ本体25に形成されたネジ溝25a、60aと軸部キャップ30、頭部キャップ50の穴32、52のネジ溝32a、52aとが噛み合うことで、軸部キャップ30、頭部キャップ50がファスナ部材24に確実に固定保持される。
また、充填したシーラント剤34、54が硬化すれば、このシーラント剤34、54も、軸部キャップ30、頭部キャップ50のファスナ部材24、54への固定効果を発揮する。
このようにして軸部キャップ30、頭部キャップ50が装着されたファスナ部材24が耐雷ファスナである。
ここで、軸部キャップ30、頭部キャップ50の外周面に何かがぶつかった場合の衝撃等によって、軸部キャップ30、頭部キャップ50が脱落してしまう可能性がある。このような場合においても、軸部キャップ30、頭部キャップ50とともに、硬化したシーラント剤34、54が脱落することなく、シーラント剤34、54がファスナ本体25の頭部を覆った状態を維持するようにするのが好ましい。
この目的のため、軸部キャップ30、頭部キャップ50とシーラント剤34、54との接着力が、シーラント剤34、54とファスナ部材24との接着力より弱くなるよう、シーラント剤34、54の材料を選定するのが好ましい。このように軸部キャップ30、頭部キャップ50とシーラント剤34、54との接着力が、シーラント剤34、54とファスナ部材24との接着力より弱ければ、軸部キャップ30、頭部キャップ50に衝撃等が加わった場合にも、軸部キャップ30、頭部キャップ50がシーラント剤34、54から剥離して軸部キャップ30、頭部キャップ50のみが脱落し、ファスナ部材24はシーラント剤34、54によって覆われた状態を維持するので、耐雷性能を維持できる。
ところで、頭部キャップ50は、作業者が工具を用いてねじ込んでもよいし、手でねじ込んでもよい。
例えば、頭部キャップ50を作業者が工具でねじ込む場合、図3に示すように、頭部キャップ50の他端部50bの頭部50cを、工具形状に対応した六角形状等の多角形状、六角穴形状等とすることができる。
また、図4に示すように、頭部キャップ50を作業者が手でねじ込む場合、頭部キャップ50の外周面50dの少なくとも一部に、スリット加工、あるいはローレット加工、ダイヤカット加工等を施し、滑り止めとすることができる。また、図5に示すように、頭部キャップ50の他端部50bに、周方向に間隔を隔てて複数個所(2箇所以上)の突起55を形成しても良い。突起55の数や形状等は何ら問うものではない。
加えて、図6に示すように、頭部キャップ50の頭部50eに対し、所定の外径を有したロッド部50fを介し、適宜形状の摘まみ部50gを形成することもできる。このような構成においては、作業者は、摘まみ部50gを回すことで頭部キャップ50をファスナ部材24に取り付ける。このとき、ロッド部50fの一部50hを細くする等して、頭部キャップ50の予め規定された締付けトルクに到達したときにロッド部50fの一部50hがねじ切れるような強度に設定しておくことで、作業者は、頭部キャップ50を規定トルクで確実に締め付けて取り付けることができる。
上述したようにして、ファスナ本体25の頭部25bに頭部キャップ50を備え、ファスナ本体25の軸部25sに軸部キャップ30を備えることで、ファスナ部材24への雷の直撃、落雷した場合のファスナ部材24からのアーク放電の発生を抑え、耐雷性を高めることができる。
また、頭部キャップ50に穴52を形成し、この穴52にネジ溝52aを形成しておくことで、ファスナ部材24に頭部キャップ50を確実かつ容易に位置決めして取り付けることができ、取付後においても頭部キャップ50の脱落を確実に防止できる。
また、頭部キャップ50をファスナ部材24にねじ込んでしまえば、シーラント剤54の硬化を待つ必要はなく、頭部キャップ50の取り付けを迅速に行うことができる。これにより、耐雷性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で取り付けることができる。
また、頭部キャップ50は、樹脂で形成することで、量産が容易となり、製造コストを抑えるとともに、量産により肉厚を管理しやすく、頭部キャップ50の軽量化を図ることもできる。
ところで、上記したような頭部キャップ50は、切削加工により形成することもできるが、量産性を考慮すると射出成形で形成するのが好ましい。射出成形の場合、穴52のネジ溝52aを形成するのが困難(形成した後に、頭部キャップ50を回転させて外す必要がある)であるため、ネジ溝52aは、穴52にヘリサートをねじ込むことで取り付けても良い。
なお、上記実施形態においては、穴52に溝53を形成することで、穴52の内部に充填したシーラント剤54の余剰分を押し出すようにしたが、これに限るものではなく、例えば、頭部キャップ50に貫通孔を形成し、この貫通孔から余剰分のシーラント剤54を頭部キャップ50の外部に押し出すようにすることもできる。
また、上記実施形態においては、ファスナ部材24のファスナ本体25の頭部25bに形成されたボス60のネジ溝60aに頭部キャップ50をねじ込むようにしたが、他の異なる構成とすることが可能である。
例えば、図7(a)に示すように、ファスナ本体25の頭部25bのボス60にネジ溝を有した穴64を形成し、頭部キャップ50の内周面に、ネジ溝を有したボス70を突出形成させ、ボス70を穴64にねじ込むことで、頭部キャップ50をファスナ本体25の頭部25bに取り付けるようにしても良い。
また、図7(b)に示すように、頭部25bにボス60を設けず、頭部25bの頂面にネジ溝64aを有した穴64を形成し、頭部キャップ50の頂部内周面に、ネジ溝71aを有したボス(被係合部)71を設けても良い。これにより、ファスナ本体25の頭部25bおよび頭部キャップ50の高さを抑えることができる。
また、図8(a)に示すように、ボス60の外周面に周方向に連続する溝または突条66を形成する一方、頭部キャップ50の穴52に、溝または突条66に嵌め合う突条または溝67を形成し、溝または突条66と、突条または溝67とを嵌め合わせることで、ファスナ本体25に頭部キャップ50を取り付ける構成とすることもできる。
図8(b)に示すように、ファスナ本体25の頭部25bの頂面に穴68を形成し、頭部キャップ50にボス(被係合部)72を設け、これら穴68とボス72とを、溝または突条と、突条または溝との嵌め合わせにより、ファスナ本体25に頭部キャップ50を取り付ける構成とすることもできる。
なお、ファスナ本体25の軸部25s側においては、軸部キャップ30を被せることで耐雷性を確保する構成としたが、その具体的構成は他の如何なる形態としても良く、如何なる場合であっても、ファスナ本体25の頭部25b側には、上記したような構成の頭部キャップ50を備えることで、上記と同様の効果を得ることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
20…機体構成部材、21…第一の部材、22…第二の部材、24…ファスナ部材、25…ファスナ本体、25a…ネジ溝(第二の係合部)、25b…頭部、25s…軸部、26…カラー、28…ワッシャ、30…軸部キャップ(第一のキャップ)、30a、50a…一端部、30b、50b…他端部、32…穴(第二の被係合部)、33、53…溝、34、54…シーラント剤、36、56…内周面、50…頭部キャップ(第二のキャップ)、52…穴(被係合部)、55…突起、60…ボス(係合部)、64…穴、70、71、72…ボス(被係合部)

Claims (16)

  1. 航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、軸部を前記第一の部材側から前記第一の部材および前記第二の部材を貫通させて前記第二の部材側に突出させたファスナ部材と、
    前記第二の部材側に突出した前記ファスナ部材の軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなる第一のキャップと、
    前記第一の部材側において、前記ファスナ部材の頭部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなる第二のキャップと、を備え、
    前記ファスナ部材の前記頭部において、前記第一の部材から離間する側に、前記第二のキャップが係合される係合部が形成され、
    前記第二のキャップは、その内周面の中心部に、前記係合部に係合する被係合部が形成され、前記被係合部が前記係合部に係合された状態で、前記被係合部以外の部分において前記ファスナ部材との間に間隙を隔てた状態で取り付けられていることを特徴とする耐雷ファスナ。
  2. 前記ファスナ部材の軸部に、第二の係合部が形成され、
    前記第一のキャップは、その内周面の中心部に、前記ファスナ部材の前記第二の係合部に係合する第二の被係合部が形成され、前記第二の被係合部に前記ファスナ部材の前記第二の係合部が係合した状態で、前記第二の被係合部以外の部分において前記ファスナ部材との間に間隙を隔てた状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
  3. 前記間隙に絶縁性のシーラント剤が充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の耐雷ファスナ。
  4. 前記被係合部または前記係合部に、前記第一の部材から離間する方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の耐雷ファスナ。
  5. 前記被係合部と前記係合部とがねじ込み式により係合する場合、前記第二のキャップの頭部が、前記第二のキャップを前記ファスナ部材にねじ込むための工具を掛けることのできる形状とされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
  6. 前記第二のキャップの外周面に、滑り止め加工が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
  7. 前記被係合部と前記係合部とがねじ込み式により係合する場合、前記第二のキャップに、前記第二のキャップを作業者が手で回すための摘まみ部が突出形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
  8. 前記摘まみ部は、前記第二のキャップに対して連結部を介して連結され、前記連結部は、前記摘まみ部をつまんで前記第二のキャップを前記ファスナ部材の軸部にねじ込んでいき、その締付けトルクが予め定めたレベルに到達したときにねじ切れることを特徴とする請求項7に記載の耐雷ファスナ。
  9. 前記第二のキャップの前記内周面は、前記被係合部が形成されている側とは反対側の開口端側から、前記被係合部が形成されている側に向けて、その内径が漸次縮小することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
  10. 前記第二のキャップの前記開口端側において、前記キャップの径方向における前記シーラント剤の厚さが、予め定められた以上の寸法とされていることを特徴とする請求項9に記載の耐雷ファスナ。
  11. 前記第二のキャップと前記シーラント剤との接着強度が、前記シーラント剤と前記ファスナ部材との接着強度よりも小さいことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の耐雷ファスナ。
  12. 第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の頭部に装着される傘状のキャップであって、
    絶縁性材料からなる傘状で、その頂部の内周面に、前記第一の部材側で前記ファスナ部材の頭部に係合する被係合部が形成され、前記被係合部が前記ファスナ部材の前記頭部に係合した状態で、前記被係合部以外の部分において前記ファスナ部材との間に間隙を隔てた状態となるよう、前記内周面が形成されていることを特徴とするキャップ。
  13. 航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、導電性材料から形成されたファスナ部材であって、
    前記第一の部材側から前記第一の部材および前記第二の部材を貫通し、前記第二の部材側に突出する軸部と、
    前記軸部よりも径が大きく、前記第一の部材側に露出する頭部と、
    前記頭部に、当該ファスナ部材の頭部を覆うよう絶縁性材料からなるキャップを取り付けるための係合部と、
    が形成されていることを特徴とするファスナ部材。
  14. 前記係合部は、前記第一の部材から離間する側に突出するボスと、当該ボスの外周面に形成された、ネジ溝、周方向に連続する溝、凸条のいずれか一つとから構成されていることを特徴とする請求項13に記載のファスナ部材。
  15. 航空機の機体を構成する第一の部材と第二の部材とを重ねた状態で、ファスナ本体の軸部を前記第一の部材側から前記第一の部材および前記第二の部材を貫通させる工程と、
    前記ファスナ本体の前記軸部に、前記第二の部材側から固定金具を装着する工程と、
    前記第二の部材側において、前記ファスナ本体の前記軸部および前記固定金具を覆うように第一のキャップを取り付ける工程と、
    前記第一の部材側において、前記ファスナ本体の頭部に第二のキャップを取り付ける工程と、
    を備えることを特徴とする耐雷ファスナの取り付け方法。
  16. 前記ファスナ本体の前記頭部に前記第一および前記第二のキャップを取り付けるに先立ち、前記第一および第二のキャップの内周側に絶縁材料からなるシーラント剤を充填する工程をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の耐雷ファスナの取り付け方法。
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