請求項1に記載の対物レンズは、第1波長λ1の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(λ2>λ1)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(λ3>λ2)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有する第2光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、前記対物レンズは、互いに対向する第1光学面と第2光学面を有し、少なくとも前記第1光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの中間領域と、前記中間領域の周りの周辺領域の少なくとも三つの領域を有し、前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、前記中間領域は第2光路差付与構造を有し、前記対物レンズは、前記対物レンズの前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記対物レンズは、前記対物レンズの前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記対物レンズは、前記対物レンズの前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記第1光学面の全径に対する、前記周辺領域の径の比率が、90%以上、100%以下であり、前記第2光学面の全径に対する、前記周辺領域に対応する有効径の比率が、75%以上、100%以下であり、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
2≦dmax/dmin≦8 (1)
0.9≦dmax/f≦1.5 (2)
但し、dmax(mm)は、前記対物レンズの軸上厚を表し、dmin(mm)は、前記対物レンズにおいて光軸方向に最も薄い部分における厚さを表し、f(mm)は、前記第1光束における前記対物レンズの焦点距離を表す。
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(2)を満たす場合に、非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。また、3種類の光ディスクに対応可能な対物レンズにおいて、条件式(2)を満たすことにより、このようなBDに対応可能な軸上厚の厚さの確保に加えて、保護基板の厚いCDに対応可能なワーキングディスタンスの確保を両立させることが可能となる。そして、条件式(1)を満たすことで、条件式(2)を満たしつつ、対物レンズのフランジが薄くなりすぎることを防止でき、安定して製造することが可能となると共に、壊れにくい対物レンズを提供することが可能となることを本発明者は見出した。また、光学面中の有効径の比率を上記請求項の範囲とすることにより、対物レンズのフランジが薄くなることを防止しつつ、製造誤差の少ない安定した有効径内の光学面を得ることができると共に、光ピックアップ装置に取り付ける際に光軸直交方向における取り付け誤差の許容量を増加させ、光ピックアップ装置への取り付け容易性を増加させることが出来るものである。
請求項2に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明であって、前記第1光路差付与構造は、複数の基礎構造を重ね合わせた構造であることを特徴とする。
請求項3に記載の対物レンズは、請求項2に記載の発明であって、前記複数の基礎構造は、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、ブレーズ型構造である第2基礎構造であることを特徴とする。
請求項4に記載の対物レンズは、請求項2に記載の発明であって、前記複数の基礎構造は、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、階段型構造である第2基礎構造であることを特徴とする。
請求項5に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明であって、前記第1光路差付与構造は、単一の基礎構造のみからなることを特徴とする。
請求項6に記載の対物レンズは、請求項5に記載の発明であって、前記基礎構造は、階段型構造であることを特徴とする。
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項7に記載の光ピックアップ装置を有することを特徴とする。
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束を第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、第2光束を第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、第3光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
第1光ディスクは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。第2光ディスクは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。第3光ディスクは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。第1光ディスクがBDであり、第2光ディスクがDVDであり、第3光ディスクがCDであることが好ましいが、これに限られるものではない。なお、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(3)、(4)、(5)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (3)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (4)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (5)
本明細書において、第1光源、第2光源、第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1は、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2より短く、第2波長λ2は、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3より短い。
また、第1光ディスク、第2光ディスク、第3光ディスクとして、それぞれ、BD、DVD及びCDが用いられる場合、第1光源の第1波長λ1は好ましくは、350nm 以上、440nm以下、より好ましくは、390nm以上、41 5nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは、630nm以上、670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
また、第1光源、第2光源、第3光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいう。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。対物レンズは、単玉のレンズであることが好ましい。また、対物レンズは、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂などで光路差付与構造を設けたハイブリッドレンズであってもよい。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
また、対物レンズをガラスレンズとする場合は、ガラス転移点Tgが500℃以下、更に好ましくは400℃以下であるガラス材料を使用することが好ましい。ガラス転移点Tgが500℃以下であるガラス材料を使用することにより、比較的低温での成形が可能となるので、金型の寿命を延ばすことが出来る。このようなガラス転移点Tgが低いガラス材料としては、例えば(株)住田光学ガラス製のK−PG325や、K−PG375(共に製品名) がある。
ところで、ガラスレンズは一般的に樹脂レンズよりも比重が大きいため、対物レンズをガラスレンズとすると、重量が大きくなり対物レンズを駆動するアクチュエータに負担がかかる。そのため、対物レンズをガラスレンズとする場合には、比重が小さいガラス材料を使用するのが好ましい。具体的には、比重が4.0以下であるのが好ましく、更に好ましくは比重が3.0以下であるものである。
加えて、ガラスレンズを成形して製作する際に重要となる物性値の一つが線膨張係数αである。仮にTgが400℃以下の材料を選んだとしても、プラスチック材料と比較して室温との温度差は依然大きい。線膨張係数αが大きい硝材を用いてレンズ成形を行った場合、降温時に割れが発生しやすくなる。硝材の線膨張係数αは、200(10E−7/K)以下にあることが好ましく、更に好ましくは120以下であることが好ましい。
また、対物レンズをプラスチックレンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料等の脂環式炭化水素系重合体材料を使用するのが好ましい。また、当該樹脂材料は、波長405nmに対する温度25℃ での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃ -1) が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物レンズをプラスチックレンズとする場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
脂環式炭化水素系重合体の好ましい例を幾つか、以下に示す。
第1の好ましい例は、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有し、ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであるブロック共重合体からなる樹脂組成物である。
(式中、R1 は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
(式中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(式中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
次に、第2の好ましい例は、少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(4)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(A)と、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(5)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(B)とを含む樹脂組成物である。
〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
〔式中、R19〜R26はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。〕
樹脂材料に更なる性能を付加するために、以下のような添加剤を添加してもよい。
(安定剤)
フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれた少なくとも1種の安定剤を添加することが好ましい。これらの安定剤を適宜選択し添加することで、例えば、405nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ)−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
これらの各安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部であることが好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止することが可能となる。
界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
このような界面活性剤としては、より具体的には、例えば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑え、成形物の光透過率を高く維持するという観点から、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加されることが好ましい。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.3〜3質量部とすることが更に好ましい。
(可塑剤)
可塑剤は共重合体のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、共重合体の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
これらの樹脂としては、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
次に、対物レンズについて、光学設計の観点から、以下に説明する。
対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図1に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、対物レンズの中央領域には第1光路差付与構造が設けられ、中間領域には第2光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第3光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
対物レンズの中央領域は、第1光ディスク、第2光ディスク及び第3光ディスクの記録/再生に用いられる第1、第2、第3光ディスク共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第2光ディスクの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第3光ディスクの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
対物レンズの中間領域は、第1光ディスク、第2光ディスクの記録/再生に用いられ、第3光ディスクの記録/再生に用いられない第1、第2光ディスク共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図2に示すように、対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
対物レンズの周辺領域は、第1光ディスクの記録/再生に用いられ、第2光ディスク及び第3光ディスクの記録/再生に用いられない第1光ディスク専用領域と言える。即ち、対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、第2光ディスク及び第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、第2光ディスク及び第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
第1光路差付与構造は、対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
<光路差付与構造>
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状)をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
ブレーズ型構造とは、図3(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図3の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図3(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図3(a)参照)
また、階段型構造とは、図3(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。
例えば、図3(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図3(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。2レベルの階段型構造について、以下に説明する。光軸を中心とした同心円状の複数の輪帯を含み、対物レンズの光軸を含む複数の輪帯の断面の形状は、光軸に平行に延在する複数の段差面Pa、Pbと、隣接する段差面Pa、Pbの光源側端同士を連結する光源側テラス面Pcと、隣接する段差面Pa、Pbの光ディスク側端同士を連結する光ディスク側テラス面Pdとから形成され、光源側テラス面Pcと光ディスク側テラス面Pdとは、光軸に交差する方向に沿って交互に配置される。
また、階段型構造において、1つの階段単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図3(c)、(d)参照)また、階段の光軸に平行方向の段差の長さを段差量B1,B2という。3レベル以上の階段型構造の場合、大段差量B1と小段差量B2とが存在することになる。(図3(c)参照)
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
光路差付与構造が、ブレーズ型構造を有する場合、単位形状である鋸歯状の形状が繰り返された形状となる。図3(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図3(b)に示されるように、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状のピッチが長くなっていく形状、又は、ピッチが短くなっていく形状であってもよい。加えて、ある領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。なお、このようにブレーズ型構造の段差の向きを途中で切り替える構造にする場合、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の製造誤差による透過率低下を抑制できる。
光路差付与構造が、階段型構造を有する場合、図3(c)で示されるような5レベルの階段単位が、繰り返されるような形状等があり得る。さらに、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に階段単位のピッチが長くなっていく形状や、徐々に階段単位のピッチが短くなっていく形状であってもよい。
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の第1光学面に設けることが好ましい。
<第1光路差付与構造>
次に、中央領域に設けられる第1光路差付与構造について説明する。
先ず、第1光路差付与構造は、大きく二つの態様に分類することができる。
第1光路差付与構造の第1の態様は、第1光路差付与構造が、複数の基礎構造を重ね合わせた構造である態様である。尚、基礎構造は、いずれも光路差付与構造である。第1基礎構造と第2基礎構造を重ね合わせ、第1光路差付与構造とする態様や、第1基礎構造、第2基礎構造及び第3基礎構造を重ね併せ、第1光路差付与構造とする態様等が挙げられる。
次に、第1光路差付与構造の第2の態様は、第1光路差付与構造が、単一の基礎構造のみからなる態様である。
以下で、第1光路差付与構造の第1の態様の中で特に好ましい2つの態様(1−1態様、1−2態様)と、第1光路差付与構造の第2の態様中で好ましい1つの態様(2−1態様)について詳細に説明する。
(1−1態様)
本態様は、複数の基礎構造として、少なくとも、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、ブレーズ型構造である第2基礎構造とを重ねあわせた構造であることを特徴とする。本態様の更に好ましい条件について以下に詳述する。
ブレーズ型構造である第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、Xは、奇数の整数であることが好ましい。また、Xは5以下の奇数であると、第1基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸とは逆の方向を向いている」とは、図4(b)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1基礎構造とは、上記Xが奇数となる段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する上記Xが奇数となる段差が、光軸とは逆の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第1基礎構造は、段差が光軸の方向を向いていてもよい。即ち、図5(b)に示すように、第1基礎構造が光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第1基礎構造の段差が光軸の方を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第1基礎構造の全ての段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
このように、第1光束における回折次数が奇数次数となる第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保することが可能となるので好ましい。
BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保するという観点からは、第1基礎構造が第1光束に対して近軸パワーを持つことが好ましい。ここで、「近軸パワーを持つ」とは、第1基礎構造の光路差関数を後述する数2式で表した場合、C2h2が0でないことを意味する。
また、ブレーズ型構造である第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、Lは、偶数の整数であることが好ましい。また、Lは4以下の偶数であると、第2基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸の方向を向いている」とは、図4(a)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第2基礎構造とは、上記Lが偶数となる段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する上記Lが偶数となる段差が光軸の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第2基礎構造は、段差が光軸とは逆の方向を向いていてもよい。即ち、図5(a)に示すように、第2基礎構造が光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第2基礎構造は、全ての段差が光軸の方向を向いていることである。
このように、第1光束に対して奇数次数の回折光を発生し、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸とは逆の方向を向いている第1基礎構造と、第1光束に対して偶数次数の回折光を発生し、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸の方向を向いている第2基礎構造を重ね合わせることにより、第1基礎構造と第2基礎構造の段差の向きが同じになるように重ね合わせた場合に比べて、重ね合わせた後の段差の高さが高くなることを抑制でき、それに伴い、製造誤差などに因る光量ロスを抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動を抑えることが可能となるものである。
また、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、BD/DVD/CDの3種類の何れの光ディスクに対しても、高い光利用効率を維持できる光利用効率のバランスが取れた対物レンズを提供することも可能となる。例えば、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を60%以上、波長λ3に対する回折効率を50%以上とする対物レンズを提供することも可能となる。更には、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を70%以上、波長λ3に対する回折効率を60%以上とする対物レンズも提供することができる。加えて、第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、波長が長波長側に変動した際に収差をアンダー(補正不足)の方向に変化させることが可能となる。これにより、光ピックアップ装置の温度が上昇した際に発生する収差を抑えることが可能となり、対物レンズがプラスチック製である場合に、温度変化時においても安定した性能を維持できる対物
レンズを提供することが可能となる。
対物レンズがプラスチック製である場合に、温度変化時においても安定した性能を維持するためには、波長が長くなった際に対物レンズにおいて発生する3次球面収差及び5次球面収差が何れもアンダー(補正不足)であることが好ましい。
より好ましい第1光路付与構造は、|X|、|Y|、|Z|が、それぞれ、1、1、1である第1基礎構造と、|L|、|M|、|N|が、それぞれ、2、1、1である第2基礎構造とを重ね合わせたものである。このような第1光路差付与構造にすると、段差の高さを非常に低くできる。従って、より製造誤差を低減させることが可能となり、光量ロスを更に抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動をより抑えることが可能となる。
第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた後の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、|X|、|Y|、|Z|が、それぞれ、1、1、1である第1基礎構造と、|L|、|M|、|N|が、それぞれ、2、1、1である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造を以下のように表現することができる。少なくとも中央領域の光軸付近に設けられている第1光路差付与構造は、光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸の方向を向いている段差とを共に有し、光軸とは逆の方向を向いている段差の段差量d11と、光軸の方向を向いている段差の段差量d12とが、以下の条件式(6)、(7)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(6)、(7)を満たすことである。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。下記条件式において上限に1.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。但し、nは、第1の波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (6)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(2λ1/(n−1)) (7)
尚、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1光路差付与構造とは、少なくとも光軸に最も近い光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸に最も近い光軸の方向を向いている段差とを共に有する光路差付与構造をいう。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する段差を有する光路差付与構造である。
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (8)
0.39μm<d12<2.31μm (9)
更に、第1基礎構造と第2基礎構造の重ね合わせ方としては、第1基礎構造と第2基礎構造のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせるか、第1基礎構造の全ての段差の位置と、第2基礎構造の段差の位置を合わせることが好ましい。
上述のように第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせて重ね合わせた場合、第1光路差付与構造のd11、d12は以下の条件式(6)´、(7)´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(6)´、(7)´を満たすことである。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (6)´
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (7)´
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (8)´
0.39μm<d12<1.15μm (9)´
更に好ましくは、以下の条件式(6)´´、(7)´´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(6)´´、(7)´´を満たすことである。
0.9・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (6)´´
0.9・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (7)´´
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.59μm<d11<1.15μm (8)´´
0.59μm<d12<1.15μm (9)´´
また、|X|、|Y|、|Z|が、それぞれ、1、1、1である第1基礎構造と、|L|、|M|、|N|が、それぞれ、2、1、1である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造にすることにより、第1基礎構造は波長が長くなった際に収差をアンダー(補正不足)とし(波長特性をアンダーとする)、第2基礎構造は逆に波長が長くなった際に収差をオーバー(補正過剰)とできる(波長特性をオーバーとする)ため、波長特性がアンダーに大きくなりすぎたり、オーバーに大きくなりすぎるということがなく、丁度よいレベルのアンダーの波長特性を得ることが可能となる。「丁度よいレベルのアンダーの波長特性」とは、λrmsの絶対値が150以下であることが好ましい。これによって、対物レンズがプラスチック製である場合であっても、温度変化時の収差変化を小さく抑えることが可能となるという観点からも好ましい。
上記のように「丁度よいレベルのアンダーの波長特性」を得るという観点から、第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の寄与率が支配的であることが好ましい。第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の寄与率を支配的にするという観点からは、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチに比べて小さいことが好ましい。別の表現では、光軸とは逆の方向を向いている段差間のピッチが、光軸の方向を向いている段差間のピッチに比べて小さいとも言えるし、第1光路差付与構造において、光軸とは逆の方向を向いている段差の数が、光軸の方向を向いている段差の数に比べて多いとも言える。尚、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチの1/4以下であることが好ましい。更に好ましくは、1/6以下とすることである。第1基礎構造の平均ピッチを、第2基礎構造の平均ピッチの1/4以下(好ましくは1/6以下)とすることにより、前述のように「丁度よいレベルのアンダーの波長特性」とすることが可能となるだけでなく、CDにおけるワーキングディスタンスを十分に確保するという観点からも好ましい。別の表現では、中央領域の第1光路差付与構造において、光軸とは逆の方向を向いている段差の数が、光軸の方向を向いている段差の数の4倍以上であることが好ましいともいえる。より好ましくは6倍以上である。
また、第1光路差付与構造の最小ピッチが15μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下である。また、第1光路差付与構造の平均ピッチが30μm以下となることが好ましい。より好ましくは20μm以下とすることである。この様な構成にすることにより、上記のように丁度よいレベルのアンダーの波長特性を得ることが可能となると共に、第1光路差付与構造を通過した第3光束において発生する、第3光ディスクの情報の記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置と、第3光ディスクの情報の記録/再生に用いられない不要光のベストフォーカス位置を離すことができ、誤検出を低減することも可能となる。尚、平均ピッチとは、中央領域の第1光路差付与構造の全てのピッチを合計し、中央領域の第1光路差付与構造の段差数で割った値である。
第1光路差付与構造を通過した第3光束によって、第3光束が形成するスポットの光強度が最も強い第1ベストフォーカス位置と、第3光束が形成するスポットの光強度が次に強い第2ベストフォーカス位置とが、以下の条件式(10)を満たすことが好ましい。なお、ここでいうベストフォーカス位置とは、ビームウェストが、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる位置を指すものである。第1ベストフォーカス位置が第3光ディスクの記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置であり、第2ベストフォーカス位置が第3光ディスクの記録/再生に用いられない不要光のうち、最も光量が多い光束のベストフォーカス位置である。
0.05≦L/f13≦0.35 (10)
但し、f13[mm]は、第1光路差付与構造を通過し、第1ベストフォーカスを形成する第3光束の焦点距離を指し、L[mm]は、第1ベストフォーカスと第2ベストフォーカスの間の距離を指す。
より好ましくは、以下の条件式(10)´を満たすことである。
0.10≦L/f13≦0.25 (10)´
以上述べた第1光路差付与構造の好ましい一例を図6に示す。尚、図6は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、実際は単玉非球面の凸レンズ上に設けられるものである。|L|、|M|、|N|が、それぞれ、2、1、1である第2基礎構造BS2に、|X|、|Y|、|Z|が、それぞれ、1、1、1である第1基礎構造BS1が重ねあわされている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BSの段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第1基礎構造BS1と第2基礎構造BS2のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置が合っていることがわかる。本例においては、d1=λ1/(n−1)であり、d2=λ1/(n−1)である。本例において、λ1=405nm(0.405μm)、n=1.5592とすると、d1=d2=0.72μmとなる。更に、第1基礎構造BS1の平均ピッチが、第2基礎構造BS2の平均ピッチに比べて小さく、第1基礎構造の光軸とは逆の方向を向いている段差の数が、第2基礎構造の光軸の方向を向いている段差の数に比べて多い。
次に、(1−2態様)について説明する。
(1−2態様)
本態様は、複数の基礎構造として、少なくとも、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、階段型構造である第2基礎構造とを重ねあわせた構造であることを特徴とする。本態様の更に好ましい条件について以下に詳述する。
ブレーズ型構造である第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、X、Y、Zは、それぞれ、2、1、1であることが好ましい。これにより、第1基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する上記X、Y、Zが、2、1、1となる段差が、光軸の方向を向いていることである。更に好ましくは、中央領域に設けられる第1基礎構造の全ての段差が光軸の方向を向いていることである。
また、階段型構造である第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、L、M、Nは、それぞれ、0、0、±1であることが好ましい。Nが±1とは、第2基礎構造を通過した第3光束の+1次回折光と−1次回折光の回折光量の一方が最大の光量となり、他方が二番目に大きな光量となることを意味する。
このような第2基礎構造は、図3(d)に示すような2レベルの階段型構造(バイナリ構造と称することもある)となる。
第1基礎構造によって、第1光束と第2光束にそれぞれ異なる収差を付与できるが、第1光束と第3光束には大きく異なる収差を付与できない可能性がある。そこで、第2基礎構造によって、第1光束と第2光束には影響を与えず、第3光束にのみ収差を付与することにより、第1基礎構造と第2基礎構造を重ねあわせた構造によって、第1光束、第2光束、第3光束の全てに異なる収差を付与することが可能となるのである。
また、本態様では、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、特にBDとDVDに対して、非常に高い光利用効率を得ることができる対物レンズを提供することが可能となる。例えば、波長λ1に対する回折効率を90%以上、波長λ2に対する回折効率を80%以上とする対物レンズを提供することも可能となる。更には、波長λ1に対する回折効率を95%以上、波長λ2に対する回折効率を90%以上とする対物レンズも提供することができる。
第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた後の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、|X|、|Y|、|Z|が、それぞれ、2、1、1である第1基礎構造と、|L|、|M|、|N|が、それぞれ、0、0、1である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造を以下のように表現することができる。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。下記条件式において上限に1.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。本態様における第1光路差付与構造の段差量は、以下のdA,dB,dC,dDのうち、少なくとも2種類の段差量を有することが好ましい。
0.9・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}<dA(μm)<1.5・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}。 (11)
0.9・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)}<dB(μm)<1.5・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)} (12)
0.9・5λB/(n−1)<dC(μm)<1.5・5λB/(n−1) (13)
0.9・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}<dD(μm)<1.5・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)} (14)
尚、上記式(11)は、下の式(11)´であることが好ましい。
0.95・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}<dA(μm)<1.4・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)} (11)´
また、上記式(11)は、下の式(11)´´であることがさらに好ましい。
1.0・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}≦dA(μm)<1.3・{15λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)} (11)´´
尚、上記式(12)は、下の式(12)´であることが好ましい。
0.95・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)}<dB(μm)<1.4・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)} (12)´
また、上記式(12)は、下の式(12)´´であることがさらに好ましい。
1.0・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)}≦dB(μm)<1.4・{5λB/(n−1)+2λB’/(n’−1)} (12)´´
尚、上記式(13)は、下の式(13)´であることが好ましい。
0.95・5λB/(n−1)<dC(μm)<1.4・5λB/(n−1) (13)´
また、上記式(13)は、下の式(13)´´であることがさらに好ましい。
1.0・5λB/(n−1)≦dC(μm)<1.3・5λB/(n−1) (13)´´
尚、上記式(14)は、下の式(14)´であることが好ましい。
0.95・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}<dD(μm)<1.4・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)} (14)´
また、上記式(14)は、下の式(14)´´であることがさらに好ましい。
1.0・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)}≦dD(μm)<1.3・{5λB/(n−1)−2λB’/(n’−1)} (14)´´
但し、λBは第一光束の設計波長(μm)を表す。λB’は0.390(μm)以上、0.405(μm)以下の任意の値を表す。nは波長λBにおける光学素子の屈折率を表す。n’は波長λB’における光学素子の屈折率を表す。
なお、λBは光ピックアップ装置に搭載されている第一光源の波長(μm)であることが好ましい。また、λB’は0.390(μm)以上、0.400(μm)以下の任意の値であることが好ましい。
尚、段差量とは、光路差付与構造の段差の光軸方向の長さをいう。例えば光路差付与構造が図7で示すような構造である場合、段差量とは、d1、d2、d3、d4のそれぞれの長さをいう。「第1光路差付与構造の段差量は、以下のdA,dB,dC,dDのうち、少なくとも2種類の段差量を有する」とは、第1光路差付与構造の全ての段差の中の少なくとも1つの段差xの段差量がdA、dB、dC、dDのいずれか1つを満たし、少なくとも他の一つの段差yの段差量がdA、dB、dC、dDのいずれかであって、段差xとは異なるものを満たしていることをいう。
第1光路差付与構造の全ての段差において、dA、dB、dC、dD以外の段差量は有さないことが好ましい。また、金型の製造を容易にしたり、金型の転写性を良好にする観点から、段差の段差量は大きすぎない方が好ましい。従って、第1光路差付与構造の全ての段差において、dCとdD以外の段差量は有さないことが更に好ましい。
また、本態様に係る光学素子を設計する場合、以下のような方法で設計する事が考えられる。まず輪帯状の構造を有する光路差付与構造である基礎構造を設計する。次に、当該基礎構造とは、或る光束に対して回折光率が最大となる回折次数が異なる輪帯状の構造を有する別の基礎構造を設計する。そして、これらの2つ(3つ以上であってもよい)の基礎構造を重ねあわせ、第1光路差付与構造又は第2光路差付与構造を設計する方法である。この様な方法で設計する場合、ピッチ幅が小さな輪帯が発生する可能性がある。例えば、図8(a)に示すような基礎構造と図8(b)に示すような基礎構造とを重ね合わせると、図8(c)のような光路差付与構造が得られる。しかしながら、図8(c)でWaとして示されているようにピッチ幅が小さい輪帯が発生してしまうことになる。尚、ピッチ幅とは、輪帯構造の、光路差付与構造の光学素子の光軸と直交方向の幅をいう。例えば、光路差付与構造が図7で示すような構造である場合、ピッチ幅とは、w1、w2、w3、w4のそれぞれの長さをいう。
本発明者は、鋭意研究の結果、このWaが5μm以下の輪帯であれば、この輪帯を削ったり、埋めてしまっても、光学性能に大きな影響を及ぼさないことを見出した。つまり、図8(c)において、Waが5μm以下である場合、図8(d)に示すように、この小さなピッチ幅の輪帯を削っても、光学性能に大きな影響を及ぼすことはない。
また、金型の製造を容易にしたり、金型の転写性を良好にする観点からは、段差のピッチ幅は小さすぎない方が好ましい。従って、複数の基礎構造を重ねあわせて基礎となる光路差付与構造を設計した際に、ピッチ幅が5μm以下の輪帯が発生する場合、そのようなピッチ幅が5μm以下の輪帯を除去して、最終的な光路差付与構造を得る事が好ましい。ピッチ幅が5μm以下の輪帯が凸状である場合は、輪帯を削る事により除去すればよく、ピッチ幅が5μm以下の輪帯が凹状である場合は、輪帯を埋める事により除去すればよい。
従って、少なくとも第1光路差付与構造のピッチ幅は全て5μmより大きい事が好ましい。
また、細長い輪帯が少ない方が製造上好ましいという観点から、第1光路差付与構造の全ての輪帯において、(段差量/ピッチ幅)の値が、1以下である事が好ましく、更に好ましくは0.8以下である事である。更に好ましくは、全ての光路差付与構造の全ての輪帯において、(段差量/ピッチ幅)の値が、1以下である事が好ましく、更に好ましくは0.8以下である事である。
また、対物レンズの第1光路差付与構造を通過した第3光束によって、第3光束が形成するスポットのスポット径が最も小さくなる第一ベストフォーカスと、第3光束が形成するスポットのスポット径が第一ベストフォーカスの次に小さくなる第二ベストフォーカスとが形成される。なお、ここでいうベストフォーカスとは、ビームウェストが、あるデフォーカスの範囲で極小となる点を指すものとする。つまり、第3光束によって、第一ベストフォーカス及び第二ベストフォーカスが形成されるということは、第3光束において、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる点が、少なくとも2点存在するということである。なお、第1光路差付与構造を通過した第3光束において、光量が最大となる回折光が第一ベストフォーカスを形成し、光量が次に大きな回折光が第二ベストフォーカスを形成することが好ましい。また、第一ベストフォーカスを形成する回折光の回折効率と、第二ベストフォーカスを形成する回折光の回折効率の差が20%以下である場合に、本態様の効果がより顕著となる。
尚、第一ベストフォーカスにおいて第3光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、第二ベストフォーカスにおいて第3光束が形成するスポットは、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことが好ましいが、第一ベストフォーカスにおいて第3光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられず、第二ベストフォーカスにおいて第3光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられるような態様を否定するものではない。なお、第1光路差付与構造が、対物レンズの光源側の面に設けられている場合、第二ベストフォーカスの方が、第一ベストフォーカスに比して対物レンズに近い方が好ましい。
さらに、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスは、下記の式(15)を満たすことが好ましい。
0.05≦L/f13≦0.35 (15)
但し、f13[mm]は第1光路差付与構造を通過した第3光束が、第一ベストフォーカスを形成する時の、第3光束の対物光学素子の焦点距離を指し、L[mm]は第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスの間の距離を指す。
なお、下記の式(15)´を満たすことがより好ましい。
0.10≦L/f≦0.25 (15)´
更に好ましくは、下記の式(15)´´を満たすことである。
0.11≦L/f≦0.24 (15)´´
また、Lは、0.18mm以上、0.63mm以下であることが好ましい。さらに、fは、1.8mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。
上記構成により、第3光ディスクの記録及び/又は再生時に、第3光束のうち第3光ディスクの記録及び/又は再生時に用いられない不要光がトラッキング用の受光素子に悪影響を及ぼすことを防ぐことが可能となり、第3光ディスクの記録及び/又は再生時に良好なトラッキング性能を維持することが可能となる。
次に、第1光路差付与構造の第2の態様中で好ましい1つの態様(2−1態様)について詳細に説明する。
(2−1態様)
本態様は、第1光路差付与構造が、単一の基礎構造のみからなる態様である。本態様における単一の基礎構造は階段型構造である。本態様の更に好ましい条件について以下に詳述する。
階段型構造である基礎構造(であって第1光路差付与構造でもある)は、基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、X,Y,Zのいずれもが0ではないことが好ましい。また、X,Y,Zのいずれかは正の回折次数であり、残りは負の回折次数であることが好ましい。
(X,Y,Z)の好ましい組み合わせの例としては、(1、−1、−2)、(1、−2、−3)又は(1、−3、−4)等が挙げられる。特に好ましくは、(1、−1、−2)又は(1、−2、−3)である。
また、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、特にBDに対して、高い光利用効率を維持できる対物レンズを提供することが可能となる。例えば、波長λ1に対する回折効率を80%以上とする対物レンズを提供することも可能となる。更には、波長λ1に対する回折効率を90%以上とする対物レンズも提供することができる。
本態様の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、X、Y、Zが、それぞれ、1、−1、−2である場合と、X、Y、Zが、それぞれ、1、−2、−3である場合とで、それぞれを以下のように表現することができる。
X、Y、Zが、それぞれ、1、−1、−2である場合は、図9(a)に示すように、5レベルの階段型構造であることが好ましい。また、階段型構造の小さい段差の光軸方向の段差量B2が、第1の波長λ1に対して1.23λ1の光路差を与える段差量であることが好ましい。
従って、この場合の階段型構造の小さい段差の段差量B2は、以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.9・(1.23・λ1/(n−1))<B2<1.5・(1.23・λ1/(n−1)) (16)
X、Y、Zが、それぞれ、1、−2、−3である場合は、図9(b)に示すように、7レベルの階段型構造であることが好ましい。また、階段型構造の小さい段差の光軸方向の段差量B2が、第1の波長λ1に対して1.16λ1の光路差を与える段差量であることが好ましい。
従って、この場合の階段型構造の小さい段差の段差量B2は、以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.9・(1.16・λ1/(n−1))<B2<1.5・(1.16・λ1/(n−1)) (17)
<第2光路差付与構造>
次に、中間領域に設けられる第2光路差付与構造について、第1光路差付与構造の説明の際の3つの態様(1−1態様)、(1−2態様)、(1−3態様)のそれぞれに適した第2光路差付与構造を、それぞれ説明する。
(1−1態様)
本態様は、第1光路差付与構造が、複数の基礎構造として、少なくとも、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、ブレーズ型構造である第2基礎構造とを重ねあわせた構造である上述の(1−1態様)である場合に好ましい第2光路差付与構造の条件について以下に詳述する。
第2光路差付与構造は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造と第5基礎構造の3つの基礎構造を重ね合わせた構造である。
第3基礎構造は、ブレーズ型構造であって、第3基礎構造を通過した第1光束のA次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束のB次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第3光束のC次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。また、第4基礎構造は、ブレーズ型構造であって、第4基礎構造を通過した第1光束のD次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束のE次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第3光束のF次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、A、B、C、D、E及びFは、それぞれ整数である。
更に、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、以下の式(18)、(19)、(20)、(21)を満たすことが好ましい。このようにすることにより、中央領域と中間領域で光路差付与構造で発生する位相差を略等しくでき、中央領域と中間領域との間で位相ずれを低減できるため、好ましい。
X=A (18)
Y=B (19)
L=D (20)
M=E (21)
より好ましくは、Z=C、N=Fも満たすことである。つまり、第1基礎構造と第3基礎構造が同じ構造であり、第2基礎構造と第4基礎構造が同じ構造であることが好ましい。
また、第5基礎構造は、第5基礎構造を通過した第1光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のG次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする構造であることが好ましい。このとき、Gは0以外の整数である。この様な第5基礎構造を重ね合わせることにより、対物レンズの中間領域を通過する第1光束、第2光束に悪影響を与えることなく、且つ、中央領域と中間領域との間で位相ずれを生じさせることなく、第3光束のみに、第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成させ、不要光が集光スポットに与える悪影響を低減させることが可能となる。
好ましくは、Gが±1である。Gが±1である場合に、第5基礎構造は、図3(d)に示すような2レベルの階段型構造(バイナリ構造とも言う)であることが好ましい。
また、第5基礎構造が、2レベルの階段型構造である場合、その光軸方向の段差量LB1は、第1波長λ1の5波長分の光路差を与える段差量か、又は、第1波長λ1の3波長分の光路差を与える段差量であることが好ましい。2レベルの階段型構造が、第1波長λ1の5波長分の光路差を与えることにより、CDの記録/再生時の不要光の悪影響をより大きく低減することが可能となるため好ましい。一方、2レベルの階段型構造を、第1波長λ1の3波長分の光路差を与える構造にすることにより、第5基礎構造の高さを低減できるため、製造しやすくなり、製造ロスを低減することが出来、ひいては、光利用効率の低下を防止できるという観点で好ましい。また、波長変化時の回折効率の変動も小さく抑えられる観点においても好ましい。
即ち、第5基礎構造の段差量LB1は、以下の条件式(22)又は(23)を満たすことが好ましい。
0.9・(5・λ1/(n−1))<LB1<1.5・(5・λ1/(n−1)) (22)
0.9・(3・λ1/(n−1))<LB1<1.5・(3・λ1/(n−1)) (23)
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
2.92μm<LB1<5.77μm (24)
1.75μm<LB1<3.46μm (25)
従って、好ましい第2光路差付与構造は、上述の好ましい第1光路差付与構造と同様の構造に、Gが±1となるようなバイナリ構造を重ね合わせた構造となる。
また、第2光路差付与構造は、図25(実施例TH09の断面図)の中間領域MDに示す構造のように、2レベルの階段型構造の上部テラス面Pcに、段差を有することが好ましい。更に好ましくは、段差を複数有することである。この段差は、複数の第3基礎構造と単一の第4基礎構造を由来とする段差であることが好ましい。
2レベルの階段型構造の上部テラス面に、第3基礎構造の段差を複数設ける事により、2レベルの階段型構造の金型末端まで樹脂が行き渡りやすくなり、転写性が向上すると共に、製造ロスを低減でき、光利用効率の低下を防止することが可能となる。さらに、不要な回折光の集光位置を、必要な回折光の集光位置と更に離すことが可能となり、受光素子に不要な回折光が集光してしまい誤検出を生じることを防止でき、好ましい。
また、第5基礎構造の最小ピッチが10μm以上であることが好ましい。好ましくはピッチが100μm以下である。段差量が高くなりがちな2レベルの階段型構造を、中央領域で用いずに、中間領域で用いることにより、ピッチを広げることが可能となり、射出成形時に奥深くまで樹脂が入り込みやすくなり、製造ロスを低減することが可能となる。
(1−2態様)
本態様は、第1光路差付与構造が、複数の基礎構造として、少なくとも、ブレーズ型構造である第1基礎構造と、階段型構造である第2基礎構造とを重ねあわせた構造である上述の(1−2態様)である場合に好ましい第2光路差付与構造の条件について以下に詳述する。
本態様における第2光路差付与構造は、少なくとも第5基礎構造を有する構造である。
第5基礎構造は、ブレーズ型構造であって、第5基礎構造を通過した第1光束のH次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束のI次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のJ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、(H,I,J)=(1,1,1)、(2,1,1)、(3,2,2)のいずれかであることが好ましい。
また、対物レンズが、プラスチックレンズである場合、温度変化時の収差変化を低減するために、第2光路差付与構造は、第5基礎構造に加えて、第6基礎構造を重畳させた構造とすることが好ましい。第6基礎構造は、ブレーズ型構造であって、第6基礎構造を通過した第1光束のK次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第2光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第3光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、(K,L,M)=(10,6,5)、(5,3,3又は2)のいずれかであることが好ましい。
(2−1態様)
本態様は、第1光路差付与構造が、単一の階段型構造である基礎構造からなる構造である上述の(2−1態様)である場合に好ましい第2光路差付与構造の条件について以下に詳述する。
本態様における第2光路差付与構造は、少なくとも第7基礎構造を有する構造である。
第7基礎構造は、階段型構造であって、第7基礎構造を通過した第1光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第7基礎構造を通過した第2光束のO次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第7基礎構造を通過した第3光束のP次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、(N,O,P)=(0,−1,−1)であることが好ましい。
このとき、第7基礎構造は、3レベルの階段型構造であって、階段型構造の小さい段差の光軸方向の段差量が、第1の波長λ1に対して1.02λ1の光路差を与える段差量であることが好ましい。
<第3光路差付与構造>
次に、周辺領域に設けられる第3光路差付与構造について説明する。第3光路差付与構造は、対物レンズがプラスチックレンズである場合、温度変化による球面収差の変化を低減するために、設けることが好ましい。第3光路差付与構造としては、上記の第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造の態様によらず、ブレーズ型構造である単一の第8基礎構造からなることが好ましい。
第8基礎構造は、ブレーズ型構造であって、第8基礎構造を通過した第1光束のQ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第8基礎構造を通過した第2光束のR次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第8基礎構造を通過した第3光束のS次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このとき、Qは任意の値を取ることが出来るが、波長変動時の回折効率の変動を抑えるという観点から、(Q,R,S)=(1,1,1)、(2,1,1)、(3,2,2)、(5,3,2)のいずれかであることが好ましい。
以上が、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造についての説明となる。
<光路差付与構造の加工形状>
次に、対物レンズの加工性の観点から、好ましい光路差付与構造の形状について以下に説明する。
光路差付与構造を有する対物レンズを成形する際は、当該光路差付与構造を有するレンズ形状に金型を剣先バイト(図17に一例を示す)等のバイトを有する二軸加工機(図16に一例を示す)等を用いて切削し、切削した後の金型内に溶融した材料を入れ、冷却し材料が固化した後、当該金型からレンズを取り出すことで、レンズを成形するのが一般的である。
上述のように、金型を切削するという観点からは、剣先バイトと金型との干渉を出来るだけ少なくするために、光路差付与構造の段差面が斜めとなる部分を有することが好ましい。尚、ここでいう「斜め」とは、対物レンズの光軸に対して平行ではない、ということを意味する。また、段差面が斜めとなる部分を有することにより、金型からの対物レンズの離型性も向上するため好ましい。
また、斜めとする段差面は、光軸側の段差面であることが好ましい。光軸側の段差面は、元々、光束入射時に影となりやすい部分であるため、段差面を斜めにしても、光利用効率のロスに対して大きな影響を与えないため好ましい。
また、剣先バイトの先端は完全な鋭角ではなく、ある曲率を有するため、光路差付与構造の角部は曲率を有するとなっていることが好ましい。
例えば、光路差付与構造がブレーズ型構造である場合、図15(a)のように、段差面Pが光軸に平行であると、以下のような問題が生じ得る。当該構造の金型を剣先バイトを有する2軸加工機で製造しようとすると、NAが0.75以上という高曲率レンズの金型であるが故に、剣先バイトが金型の光軸に平行な面と干渉しやすくなり、加工難易度が高く高価な3軸加工機を用いなければならなくなってしまう。
そこで、図15(b)に示すように、ブレーズ型構造の光軸側の段差面Pを光軸に対して斜めとすることによって、剣先バイトの金型との干渉という問題を解消でき、金型加工の観点で非常に有利となる。また、光軸側の段差面であるため、光利用効率のロスも少なくてすむ。この場合、斜めとした段差面と光軸とがなす角度(図15(b)のθ)が、10度以上、20度未満であることが好ましい。
また、図15(b)に示すように、ブレーズ型構造の角部CNは、曲率を有している。
別の例としては、例えば、図18に示すように、階段型構造(本例では4レベル)の段差面を光軸側、光軸と反対側、共に斜めとする例が挙げられる。この場合、剣先バイトBBを傾けることなく垂直にしたまま金型を削ることができる。この時、段差面が光軸となす角度は、10度以上、20度以下が好ましい。また、角部は曲率を有することが好ましい。
又は、図19に示すように、階段型構造(4レベル)の光軸側の段差面を斜めとし、光軸と反対側の段差面を光軸に平行又は略平行とする例が挙げられる。この場合、剣先バイトBBを傾けることにより、剣先バイトが金型と干渉を起こすことなく、光軸と反対側の段差面を光軸と平行又は略平行に切削することができる。その分、光軸側の段差面は大きく斜めとなる。この時、光軸側の段差面が光軸となす角度は、15度以上、35度以下であることが好ましい。光軸と反対側の段差面が光軸となす角度は、0度以上、15度以下が好ましく、金型からの離型性をより向上させるためには、1度以上、15度以下がより好ましい。また、角部は曲率を有することが好ましい。
更に他の例としては、例えば、図20に示すように、階段型構造(本例では2レベル)の段差面を光軸側、光軸と反対側、共に斜めとする例が挙げられる。この場合、剣先バイトBBを傾けることなく垂直にしたまま金型を削ることができる。この時、段差面が光軸となす角度は、10度以上、20度以下が好ましい。また、角部は曲率を有することが好ましい。
更に他の例としては、図21に示すように、階段型構造(2レベル)の光軸側の段差面を斜めとし、光軸と反対側の段差面を光軸に平行又は略平行とする例が挙げられる。この場合、剣先バイトBBを傾けることにより、剣先バイトが金型と干渉を起こすことなく、光軸と反対側の段差面を光軸と平行又は略平行に切削することができる。その分、光軸側の段差面は大きく斜めとなる。この時、光軸側の段差面が光軸となす角度は、15度以上、35度以下であることが好ましい。光軸と反対側の段差面が光軸となす角度は、0度以上、15度以下が好ましく、金型からの離型性をより向上させるためには、1度以上、15度以下がより好ましい。また、角部は曲率を有することが好ましい。
<開口数>
次に、対物レンズの開口数について説明する。
第1光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、第2光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、第3光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
対物レンズを通過した第3光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
<レンズ外観>
次に、対物レンズの全体的な形状について説明する。
対物レンズは、互いに対向する第1光学面と第2光学面を有する。第1光学面が光源側の光学面であり、第2光学面が光ディスク側の光学面となる。第1光学面の曲率半径は、第2光学面の曲率半径より小さいことが好ましい。
光学面の直径を、本明細書において全径という。例えば、図10において第1光学面S1の全径はΦA1であり、第2光学面S2の全径はΦA2である。
また、光学面において光束が通過する部分の直径を有効径という。例えば、図10において第1光学面S1の有効径(周辺領域の径である)はΦE1であり、第2光学面S2の有効径(第1光学面における周辺領域の外径に相当する領域の第2光学面での径)はΦE2である。
ここで、第1光学面の全径に対する有効径の比率が、90%以上、100%以下である。(好ましくは、95%以上、100%未満、更に好ましくは、96%以上、99%以下)また、第2光学面の全径に対する有効径の比率が、75%以上、100%以下である。(好ましくは、80%以上、100%未満、更に好ましくは、91%以上、95%以下)この様な範囲とすることによって、ボビンに対物レンズを取り付けた際に光軸直交方向に僅かに偏心した場合であっても、有効径内に光束が入射できるため好ましい。
また、対物レンズは、以下の条件式(2)を満たす。
0.9≦dmax/f≦1.5 (2)
但し、dmax(mm)は、図10に示すように対物レンズの軸上厚を表し、f(mm)は、第1光束における対物レンズの焦点距離を表す。
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(2)を満たすことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
また、条件式(2)を満たすことにより、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになるため、CDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるにも拘わらず、本発明の第1光路差付与構造を対物レンズに設けることにより、CDの記録/再生におけるワーキングディスタンスも十分に確保できるため、その効果がより顕著なものとなる。
また、第3光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD)は、0.15mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。好ましくは、0.3mm以上、0.9mm以下である。次に、第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.2mm以上、1.3mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.25mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
対物レンズは、以下の条件式(1)を満たす。
2≦dmax/dmin≦8 (1)
但し、dmax(mm)は、例えば図10に示すように、対物レンズの軸上厚を表し、dmin(mm)は、例えば図10に示すように、対物レンズにおいて光軸方向に最も薄い部分における厚さを表す。
図10に示す例では、対物レンズは第1光学面S1、第2光学面S2を有し、その周辺に、対物レンズを光ピックアップ装置のボビンに取り付けるためのフランジFLを有し、フランジ部に光軸方向に最も薄い部分dminが存在している。
好ましくは、以下の条件式(1´)を満たすことである。
3≦dmax/dmin≦8 (1´)
<レンズ突き出し(ピン突き出し、コア突き出し)>
また、対物レンズがプラスチックレンズである場合、成形機による樹脂成形後、金型から対物レンズを取り出す必要がある。一般に、成形機には、第1光学面を成形する第1金型と、第2光学面を成形する第2金型とが搭載され、また、金型は、保持部と、その中に入れ子部を有する。入れ子部は、光軸方向に摺動可能な構造となっている場合もあるし、保持部に固定されている構造となっている場合もある。成形機が作動することで第1金型と第2金型を対向して密着させ、レンズのキャビティを形成し、そこに樹脂を注入し成形後、第1金型と第2金型とを型開きし、対物レンズが残っている金型から対物レンズを取り出す。
その取り出しの際に、成形機に搭載された金型の入れ子部を摺動させることによって対物レンズの光学面全体を突き出して取り出す方法(コア突き出しとも言う)と、成形機に搭載された金型が細いピンを有し、当該ピンで、対物レンズのフランジを突き出して取り出す方法(ピン突き出しとも言う)とが考えられる。
対物レンズのフランジをピンで突き出して取り出す場合、対物レンズを第1の光学面S1側から眺めた図11(b)に示すように、フランジFLが複数のピン跡PTを有する。一方、対物レンズの光学面全体を入れ子部によって突き出して取り出す場合は、図11(a)に示すように、フランジがピン跡を有さない。尚、成形方法によっては、ピン跡が第2の光学面S2側のフランジに付くこともある。
<ゲートカット>
また、対物レンズがプラスチックレンズである場合、樹脂注入口であるゲートをレンズ成形後、除去する必要がある。その態様の幾つかを以下に示す。
図12(a)では、対物レンズのフランジFLがゲートGT付近に直線部LPを有しており、当該直線部LPに平行な線Lに沿ってゲートを切断している。ゲート除去後の対物レンズは図12(b)に示すような形状となり、フランジ外径の延長線で形成される仮想円内の中にゲートの残りやバリは収まっている。
図13(a)では、対物レンズのフランジFLは円状であるが、ゲートGT付近で直線Lに沿って、フランジごとゲートを切断している。ゲート除去後の対物レンズは図13(b)に示すように、直線部LPを有するフランジ形状となる。
図14(a)、(b)では、フランジの光軸方向の一部のみを除去することで、ゲートを除去している。従って、ゲート除去後の対物レンズの形状は、フランジ部は全周円状となる部分FC1と、一部が直線となる部分FC2とを併せ持つ形となる。
また、樹脂の転写性を高めるために、金型に空気穴(エアベントとも言う)を設け、そこから空気を吸引したり、金型内の空気を逃がしたりするという方法を取ることがある。その場合、当該エアベントに樹脂が入り込んでバリとなる可能性が出てくる。その際は、エアベントバリを除去することが好ましい。
<コート>
ところで、光源から出射されるレーザ光を効率よく利用するために、対物レンズには、透過率を高める工夫がなされている。例えば対物レンズの光学面には、反射防止膜が成膜され、光の干渉を利用して光学面から反射する光の量を抑制するようにしている。
対物レンズに反射防止膜を成膜する場合、それに入射する異なる波長の光束それぞれに対して、反射防止を実現しなくてはならない。ところが、反射防止を実現できる波長域を広くとるためには、一般的には反射防止膜の膜厚の増大を容認せざるをえないが、膜厚の増大により、光路差付与構造の形状(特に角部の形状)がダレた形に変化してしまい、それにより所望の光学特性が得られなくなる恐れがある。
又、本発明のように、450nm以下の短波長領域で光路差付与構造による光学特性を得ようとした場合、光路差付与構造はより微細化するので、反射防止膜が回折構造の形状に与える影響はより増大してしまうという問題がある。
更に、反射防止膜を成膜した光学部品には、光学面に付着した異物を拭うことによる反射防止膜の剥がれを抑制する、いわゆる拭き性も要求されるが、光路差付与構造に膜厚の厚い反射防止膜を成膜すると拭き性が著しく低下するという問題がある。
耐拭き性を確保しつつ、光透過率を高く維持できるにもかかわらず、例えば微細な光路差付与構造による本来の光学特性を発揮させることを可能とするためには、以下のような反射防止膜とすることが好ましい。
例えば、光路差付与構造が設けられている光学面における反射防止膜の膜層数を、光路差付与構造が設けられていない光学面における反射防止膜の膜層数より少なくすることが好ましい例として挙げられる。この構成により、光路差付与構造を有する光学面における反射防止膜の膜厚を比較的薄くできることから成膜後の微細な光路差付与構造の形状を維持しやすくなり、微細な光路差付与構造の光学特性の劣化を回避できると共に、拭き性も向上させることができる。一方、光路差付与構造を有していない光学面においては、反射防止膜の膜厚を増大させても、光学特性の大きな劣化を招くことはなく、拭き性も低下しないので、反射防止膜の膜層数を増大させ、十分な反射防止機能を発揮できる。
光路差付与構造が設けられていない光学面における反射防止膜は、7層乃至10層のいずれかとすることが好ましい。
一方、光路差付与構造が設けられている光学面における反射防止膜は、光路差付与構造が設けられていない光学面における反射防止膜の層数より少なく、且つ、単層乃至9層のいずれかとすることが好ましい。より好ましくは、単層乃至3層のいずれかとすることである。
または、光路差付与構造を形成した光学面には反射防止膜を形成せず、光路差付与構造を形成していない光学面にのみ反射防止膜を形成してもよい。
反射防止膜は、高屈折率層(H材ともいう)と低屈折率層(L材ともいう)を交互に設けるか、中屈折率層(M材ともいう)と低屈折率層を交互に設けるか、又は、高屈折率層と中屈折率層と低屈折率層とを交互に設けることが好ましい。尚、低屈折率層とは、好ましくは、設計波長(好ましくは480nm以上、540nm以下の波長)での屈折率が、1.30以上、1.50以下の層をいう。また、中屈折率層とは、好ましくは、設計波長での屈折率が、1.55以上、1.70以下の層をいう。また、高屈折率層とは、好ましくは、設計波長での屈折率が、1.75以上、2.50以下の層をいう。
低屈折率層の好ましい例としては、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、酸化シリコン等が挙げられる。中屈折率層の好ましい例としては、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、フッ化セリウム等が挙げられる。高屈折率層の好ましい例としては、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハウニウム等が挙げられる。また、コートの方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法、塗布法、ミスト法等が挙げられる。尚、対物レンズがガラスレンズである場合、反射防止膜を形成した後、アニール処理することが好ましい。
高屈折率層、低屈折率層、中屈折率層の、好ましい組み合わせの例を、表1に幾つか示す。
<倍率>
第1光束、第2光束及び第3光束は、平行光として対物レンズに入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物レンズに入射してもよい。トラッキング時においても、コマ収差が発生することを防止するためには、第1光束、第2光束、及び第3光束を全て平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが好ましい。第1光束が平行光又は略平行光になる場合、第1光束が対物レンズに入射する時の対物レンズの結像倍率m1が、下記の式(26)を満たすことが好ましい。
−0.01<m1<0.01 (26)
また、第2光束を平行光又は略平行光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(27)を満たすことが好ましい。
−0.01<m2<0.01 (27)
一方で、第2光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(27)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m2≦−0.01 (27)´
また、第3光束を平行光束又は略平行光束として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(28)を満たすことが好ましい。
−0.01<m3<0.01 (28)
一方で、第3光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(28)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m3≦−0.01 (28)´
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。