JP2004053834A - 対物レンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】青色レーザーピックアップに用いる対物レンズ1であって、光情報記録媒体側の開口数が0.85以上で、外径D1が5.0mmφ以下である光学硝子材料による硝子レンズ1aと樹脂材料による樹脂レンズ1bとを一体化した複合レンズで構成し、入射光束径Eと作動距離Lとの比L/Eが1/6以上となるような長作動距離を有し、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差が0.04λ以下であるものとする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光によって光情報記録媒体の記録、再生を行う光ピックアップに用いられ、光源からの光を光情報記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
光磁気ディスクやDVD(デジタルビデオディスク)、CD(コンパクトディスク)などの光情報記録媒体に特定波長のレーザー光を用いて記録する場合、その記録密度を増大させるためにはレーザー光のビームスポット径dを小さくすることが必要である。ビームスポット径dとレーザー光の波長λ、対物レンズの開口数NA(Numerical Aperture)との間には、d∝λ/NAの関係があり、波長の短いレーザーを用いる、または、NAの大きなレンズを使用することでビームスポット径dが小さくなり、記録密度は増大する。
【0003】
従来、CD、CD−R、DVDなどの光情報記録媒体に記録再生を行う光ピックアップでは、CDなどには波長λ=780nmのレーザー光とNA=0.4〜0.45程度の対物レンズを使用し、DVDなどのより高記録密度であるものには波長λ=650nmのレーザー光とNA=0.65程度の対物レンズを使用している。さらに最近は、より高記録密度が要求され、波長λ=405nmのレーザー光とNA=0.85程度の対物レンズが使用されようとしている。
【0004】
上記のような光ピックアップにおいて、対物レンズの材料にはガラスと樹脂とが一般的に用いられている。しかし、従来の樹脂レンズは屈折率が低く、高いものでもd線に対する屈折率ndはnd≒1.7程度と低い。したがって、高記録密度のために波長405nmの青色レーザーを使用する光ピックアップ、すなわち青色レーザーピックアップに好適な、外径5mmφ以下の小型でNAが0.85を有する単レンズを得ようとすると、対物レンズと光情報記録媒体との間の作動距離(Working Distance)を大きくとることができない。
【0005】
光ピックアップでは、出射したレーザー光のビームスポットが光情報記録媒体の情報記録面上で所定の合焦状態となるように、アクチュエータなどにより対物レンズを光軸方向に駆動するフォーカシング制御が行われる。上記作動距離が小さい場合は、光情報記録媒体が高速回転する際のぶれなどに対してフォーカシング制御を行う際に、対物レンズと光情報記録媒体とが接触する可能性が増大してしまう。
【0006】
もし仮に、青色レーザーピックアップ用の対物レンズを前述の樹脂のような低屈折率の材料で実現できたとしても、少なくとも一方の面の曲率が非常に大きく、製作困難なレンズ形状となってしまい、良好な波面収差やスポット性能を得られる単レンズとして実現することは非常に困難となる。したがって、対物レンズの作動距離を長くするためには、高屈折率の光学硝子材料を用いることが望ましい。
【0007】
また、波長405nmの青色レーザーを使用する光情報記録媒体(以下、青色レーザー記録媒体と称する)として規格化されつつある次世代DVDのカバー樹脂厚、すなわち光透過保護層厚は0.1mmと薄いのに対し、前述の波長650nmのレーザー光を用いる現行のDVDの情報記録面までの光透過保護層厚は0.6mm、CD、CD−Rの情報記録面までの光透過保護層厚は1.2mmもの厚さがある。したがって、これらの異なる規格の光情報記録媒体についても記録再生可能な互換性を有する光ピックアップを実現するためにも、できるだけ長い作動距離を有する対物レンズが望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような青色レーザーピックアップの光源に使用される波長405nmを中心としたレーザー光を発生するレーザーダイオードは、レーザー光の出力や温度状態などの使用状態の変動に対して発振波長の波長変動が大きく、現状では405nm±15nm程度、すなわち390nm〜420nm程度の波長変動が見込まれている。このため、青色レーザーピックアップ用の対物レンズに使用する光学硝子材料としては、レーザーダイオードの発振波長変動に対して屈折率変動の少ない低分散の硝子材料が望ましい。例えば、レーザーダイオードにおける390nm〜420nmの波長変動に対して全範囲において実用可能な光学性能を有し、かつ、小型で長作動距離を有する青色レーザーピックアップ用対物レンズを1つの単レンズで実現する場合を考える。この場合、光学硝子材料の屈折率としては少なくとも1.80以上、好ましくは1.85以上が必要とされる。また、光学硝子材料の低分散特性の指標となるアッベ数は70以上が必要である。
【0009】
しかしながら、従来の光学硝子材料では、屈折率は高くても1.80程度であり、アッベ数は大きくても45程度のものが限界であり、前述のような高屈折率かつ低分散の光学硝子材料を得ることは非常に困難である。このような従来の光学硝子材料を用いた単レンズによって青色レーザーピックアップ用の対物レンズを製作した場合、波長範囲が405nm±5nm程度、すなわち400nm〜410nm程度の10nm幅の波長変動に対して実用可能なレンズとすることは可能である。しかし、レーザーダイオードの発振波長変動がそれ以上大きい場合、例えば前述した390nm〜420nm程度の30nm幅の波長変動に対しては、光学性能が許容範囲を大きく逸脱してしまうことがあった。
【0010】
このように従来では、青色レーザーピックアップに使用される対物レンズを製作する場合、レーザーダイオードの発振波長405nmを中心として±15nm程度の波長変動に対して、安定した光学性能、すなわちほぼ回折限界性能である実用可能な光学性能を有し、かつ、小型で長作動距離を有する対物レンズを得ることは困難であった。
【0011】
上記レーザーダイオードの発振波長変動に対する光学性能を満たす手段としては、対物レンズを1つのレンズではなく、別々に製作した2つのレンズを組み合わせることが考えられる。しかしこの場合、2つのレンズを高精度に製作し、かつ、これら2つのレンズを鏡筒等のホルダに組み込み、高精度に組立調整を行って対物レンズセットとする必要がある。このため、レンズやホルダの製作費や組立調整費などが高くなり、また、対物レンズが大型化し重くなってしまう問題点があった。
【0012】
特開2000−90477号公報には、プラスチックまたは硝子材料からなる集光レンズと、この集光レンズに密着した紫外線硬化樹脂材料からなる密着レンズとにより構成される複合レンズを対物レンズとして用いた光ピックアップが開示されている。この従来例によれば、波長650nm程度の赤色レーザー光と波長430nm程度の青色レーザー光との2つの波長のレーザー光に対して色収差を補償することが可能である。しかしながら、上記公報の従来例は、2つの波長のレーザー光における色収差を補償可能にするものではあるが、レーザーダイオードの発振波長変動に対応したものではなく、レーザーダイオードの発振波長の全範囲において実用可能な光学性能を得ることは困難であることが予想される。
【0013】
さらに、従来の高屈折率硝子材料は鉛を含むものが多く、今後の環境問題への影響を考慮すると使用に適しているものとは言えない。また、鉛を含有した高屈折率硝子材料は分散特性が低いものが多く、少しでも低分散のものが望まれる青色レーザーピックアップ用の対物レンズの材料としてはあまり好ましくない。一方、鉛を含まない高屈折率かつ高透過率の硝子材料としては、使用波長域の405nmでの屈折率が1.80未満のものが多く、これらの硝子材料で前述のような小型で長作動距離の対物レンズを得ることは非常に困難であった。また、仮に実現できたとしても、高屈折率硝子材料は硝子転移温度が高くなる傾向があるため、成形用金型の寿命が短くなり、プレス成形でのコストが高くなってしまう問題点があった。
【0014】
以上のように、従来では、発振波長が405nmのレーザーダイオードの発振波長変動に対応するために、波長390nm〜420nmの全範囲において、ほぼ回折限界性能である高い光学性能と長作動距離とを有し、かつ、波長405nmのレーザー光に対して高屈折率、高透過率であり、さらに低ガラス転移温度、鉛非含有を同時に満足する光学硝子を用い、小型で単体レンズのように実用可能な光ピックアップ用対物レンズを実現することは困難であった。
【0015】
本発明は、上記欠点を解消するためになされたものであり、小型で長作動距離を有するとともに、波長405nm付近のレーザー光に対して、波長390nm〜420nmの全範囲において高い光学性能を有する光ピックアップ用の対物レンズの提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光情報記録媒体の情報記録面に集光して情報の記録または再生を行う光学系に用いる対物レンズであって、前記光情報記録媒体側の開口数が0.80〜0.87で、かつ、外径が1.0mmφ〜5.0mmφのレンズであり、また、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差が0.04λ以下であり、この対物レンズは光学硝子材料からなる硝子レンズと樹脂材料からなる樹脂レンズとが単体レンズのように複合化されて一体化されており、前記光学硝子材料の390nm〜420nmの波長に対する屈折率が1.85〜2.20、前記樹脂材料の390nm〜420nmの波長に対する屈折率が1.20〜1.70であり、この対物レンズへの光源からの入射光束径をE、前記対物レンズと前記光情報記録媒体との間の作動距離をLとしたとき、LとEの比L/Eが1/6以上となるような作動距離を有することを特徴とする対物レンズを提供する。
【0017】
前記光情報記録媒体側の開口数は、0.80〜0.87が好ましいが、0.83〜0.87がより好ましい。また、前記光学硝子材料の屈折率は、1.85〜2.20が好ましいが、より好ましくは1.90〜2.20、特に好ましくは2.00〜2.20とする。また、前記樹脂材料の屈折率は、1.20〜1.70が好ましいが、より好ましくは1.20〜1.40、特に好ましくは1.20〜1.30とする。
【0018】
また、前記樹脂レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、前記硝子レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとしたとき、前記硝子レンズが光情報記録媒体側に配置される場合、PO=GI>PI>GO>0、前記樹脂レンズが光情報記録媒体側に配置される場合、GI>PO>GO=PI>0の関係を満足することを特徴とする上記対物レンズを提供する。
【0019】
また、前記対物レンズは、前記硝子レンズと前記樹脂レンズの少なくとも一方のレンズ面が非球面であり、前記硝子レンズと前記樹脂レンズとが接触する界面の形状がほぼ同一形状であるレンズ面形状を有することが好ましい。また、前記対物レンズは、外径が4.5mmφ以下で、かつ、前記入射光束径すなわち光源側の有効径が3.6mmφ以下とするのが好ましい。
【0020】
また、前記光学硝子材料は、鉛を含まないものとするのが好ましい。また、前記光学硝子材料の硝子転移温度が500℃以下とするのが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る対物レンズの構成を示す図であり、対物レンズの光軸を通る断面図である。
【0022】
本発明に係る対物レンズは、波長405nm付近、すなわち385nm〜425nmのレーザー光であるいわゆる青色レーザー光を使用して光情報記録媒体の記録層に対し書き込み、読み出しを行う光ピックアップ、すなわち青色レーザーピックアップなどに用いられるレンズである。この青色レーザーピックアップの光源としては、発振波長が405nm程度であり、この405nmを中心として±15nm程度、すなわち390nm〜420nmの波長変動を有するレーザーダイオードなどのレーザー光源を使用する。
【0023】
図1に示す本実施形態の対物レンズ1は、光学硝子材料からなる硝子レンズ1aと樹脂材料からなる樹脂レンズ1bとを単体レンズのように複合一体化したものである。この対物レンズ1は、コリメータレンズ2によって平行光とされた図示しない光源からのレーザー光を集光し、光情報記録媒体3の情報記録面4上にビームスポットを形成する。すなわち、本実施形態の対物レンズ1は、無限遠方からの平行光を集光する無限系のレンズにより構成される。
【0024】
本実施形態の対物レンズ1が青色レーザーピックアップに用いられる場合、レンズによって収斂される光束の開口数NAは、青色レーザー記録媒体として規格化された次世代DVD(Blu−ray Disc:青色DVDともいう)に対応するには規格により約0.85であることが必要とされる。青色DVDは、記録容量が23.3GB(ギガバイト)、25GBまたは27GBの直径120mmのディスクであり、使用するレーザー光の波長:405nm、レンズの開口数:0.85、ディスク厚:1.2mm、ディスクの光透過保護層厚:0.1mmと規格により策定されている。また、記録方式は相変化記録、トラック方式はグルーブ記録であり、記録容量27GBのディスクで最小マーク長:0.14μm、トラックピッチ:0.32μmとなっている。
【0025】
また、高速回転する光情報記録媒体のぶれなどに合わせて高速で媒体上の記録情報を正確に読み取ったり、逆に書き込んだりするために、対物レンズを搭載する光ピックアップには、アクチュエータなどで対物レンズを高速に駆動してフォーカシング制御やトラッキング制御などを行うサーボ機構が設けられる。この場合、フォーカシング制御では対物レンズ1を光軸5に平行な方向に、トラッキング制御では対物レンズ1を光軸5と直交する方向にそれぞれ駆動する。その際に、光情報記録媒体と対物レンズの間の間隔、すなわち作動距離が小さいと、対物レンズ1が光情報記録媒体3に接触してしまい、対物レンズ1または光情報記録媒体3の表面が傷ついて記録再生機能が大きく損なわれる可能性がある。このため、対物レンズ1と光情報記録媒体3との間の間隔、すなわち作動距離は大きい程好ましい。
【0026】
しかし、作動距離を単純に大きくしようとすると、レンズの外径サイズが大きくなり、かつ、レンズの重量も重くなるので、サーボ機構にかかる負担が増大する。一般に、対物レンズの外径サイズとしては、波長650nmのレーザー光を用いる現行のDVD用光ピックアップ、波長780nmのレーザー光を用いるCD用光ピックアップのいずれにおいても、レンズ固定用の周辺ツバ部6を含めても約5mmφ以下、レンズ面としては約4mmφ以下のものが望ましい。青色DVD用の光ピックアップの対物レンズでも同様である。
【0027】
さらに、前述したように青色DVDの光透過保護層厚は0.1mmと薄いのに対し、波長650nmのレーザー光を用いる現行のDVDの情報記録面までの光透過保護層厚は0.6mm、CD、CD−Rの情報記録面までの光透過保護層厚は1.2mmもの厚さがある。したがって、これらの異なる規格の光情報記録媒体についても記録再生可能な互換性を持つように長い作動距離を有する対物レンズを実現するためには、屈折率が高い光学硝子を用いた方が実現性が高くなる。
【0028】
しかし、波長405nm付近の屈折率が1.80未満の光学硝子を用いた場合では、外径5.0mmφ、NA=0.85の対物レンズで、入射光束径を3.9mmφとかなり大きくしても、作動距離は長くても0.6mm程度である。この場合、対物レンズに入射する光束径をE、対物レンズと光情報記録媒体間の作動距離をLとしたとき、L/Eの値は1/6.5であり、この比が1/6以上の長作動距離を得ることはかなり難しい。また、仮に長作動距離が得られたとしても、レンズにおける入射側(光源側)の非球面の曲率が射出側(光情報記録媒体側)の非球面の曲率よりもかなり大きくなるため、レンズの周辺ツバ部の厚さが薄くなり、高精度に製作することが難しいレンズ形状となってしまう。
【0029】
また、上記従来の技術で述べたように、青色レーザーピックアップの光源に使用される発振波長が405nmのレーザーダイオードは、現状では405nm±15nm程度、すなわち390nm〜420nm程度の波長変動が生じることがある。このため、青色レーザーピックアップ用の対物レンズに使用する光学硝子材料としては、レーザー光の波長変動に対して屈折率変動の少ない低分散の硝子材料が望ましい。例えば、上記レーザーダイオードの発振波長変動に対して全範囲で実用可能な光学性能を有し、かつ、小型で長作動距離を有する青色レーザーピックアップ用対物レンズを1つの単レンズで実現するためには、光学硝子材料の屈折率としては少なくとも1.80以上、好ましくは1.85以上が必要である。また、光学硝子材料の低分散特性の指標となるアッベ数は70以上が必要である。しかし、現在のところ上記屈折率とアッベ数の両方の特性を満たす光学硝子材料は得られていない。
【0030】
そこで、本実施形態では、対物レンズ1を光学硝子材料からなる硝子レンズ1aと樹脂材料からなる樹脂レンズ1bとを合わせて一体化した複合レンズにより構成する。これにより、外径が1.0mmφ以上、5.0mmφ以下の小型で、NA=0.85という高NAを有し、さらに405nm±15nmの波長変動を有するレーザー光源を用いた光ピックアップ用として実用可能な対物レンズを実現する。レンズの外径が1.0mmφ以上であると、NAが大きい対物レンズを製作することが容易である。本実施形態の対物レンズ1は、非球面を有する硝子レンズ1aの一方のレンズ面に、比較的薄く屈折力の小さい樹脂レンズ1bを密着形成することにより、単レンズと同等の取り扱いを可能とし、かつ、レーザーダイオードの発振波長変動に対する光学性能の劣化を抑えた良好な光学性能を有するレンズとしたものである。
【0031】
ここで、樹脂レンズ1bの入射側の非球面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、射出側の非球面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、硝子レンズ1aの入射側の非球面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、射出側の非球面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとしたとき、硝子レンズ1aが光情報記録媒体側に配置される場合、
PO = GI > PI > GO > 0 …(1)
樹脂レンズ1bが光情報記録媒体側に配置される場合、
GI > PO > GO = PI > 0 …(2)
これらの式を満足するように対物レンズ1を製作する。これにより、2種の光学材料を用いたレンズを一体化することができ、波長390nm〜420nmの全範囲に対して実用可能な光学性能を実現しながら、小型で長作動距離を有し、単レンズのように取り扱うことができる青色レーザーピックアップ用対物レンズを得ることができる。
【0032】
(1)式において、PO=GIでない場合、または、(2)式において、GO=PIでない場合、樹脂レンズ1bと硝子レンズ1aとの界面の一部あるいは全面に隙間ができてしまい、2つのレンズの界面を埋める光学材料がさらに必要になる。この場合、レンズ構造が複雑化して光学性能が低下したり、製作コストが上昇する。また、(1)式あるいは(2)式を満足しない場合、またはPO、PI、GI、GOのいずれか、あるいはいずれも負である場合、小型化、高NA化、長作動距離のいずれかが実現困難になる。
【0033】
この複合一体化した対物レンズ1に用いる光学材料としては、硝子レンズ1aの材料は、小型でも長作動距離を得るために、外径が5.0mmφ以下のレンズの場合、波長405nm付近での屈折率が1.85〜2.20の光学硝子材料が好ましい。一方、樹脂レンズ1bの材料としては、波長390nm〜420nmの範囲で高透過率を有し、かつ硝子と密着性がある樹脂材料が好ましい。また、前記樹脂材料の屈折率は、硝子レンズ1aに使用する光学硝子材料の屈折率によっても適切な屈折率は異なるが、硝子レンズ1aおよび樹脂レンズ1bの非球面形状設計の最適化によって、屈折率が1.20〜1.70のものであれば使用可能である。すなわち、樹脂レンズ1bに用いる樹脂材料としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、オレフィン系樹脂、サイトップ樹脂などのような波長405nm付近の光を透過する光学用樹脂であれば何でも良い。しかし、上記樹脂の中でも、低分散性、高透過率、耐光性、耐水性などの良好な材料であるほうが望ましい。このように構成することにより、例えば外径5.0mmφ、かつ入射光束径E=3.9mmφの対物レンズにおいて、作動距離Lとの比L/Eが1/6以上となり、L=0.65mm以上の長作動距離を得ることができる。
【0034】
また、この硝子レンズ1aと樹脂レンズ1bとを一体化した対物レンズ1の外周部は、主に硝子材料によって構成する方が光ピックアップに固定する際の強度面からも有利であり、望ましい。さらに、対物レンズの外径は前述のように小さい程望ましいため、外径は4.5mmφ以下が望ましい。しかし、実際のレンズでは、レンズ固定用の周辺ツバ部とレンズ固定時に偏芯が生じても光束がカットされないレンズ面径とを確保するために、外径を4.5mmφとした場合、入射光束径は3.6mmφ前後と小さくなる。このように対物レンズを小径化することにより作動距離が小さくなってしまう傾向がある。したがって、外径が4.5mmφ以下の青色レーザーピックアップ用対物レンズにおいて、作動距離Lと入射光束径Eとの比L/Eが1/6以上の長作動距離を得るための硝子材料としては、前述した外径5.0mmφの対物レンズの場合よりも屈折率が大きいもの、すなわち波長405nm付近での屈折率が1.90〜2.20の光学硝子材料が望ましい。さらにこの場合、作動距離が0.7mm以上のような長い作動距離を有し、外径が小さくかつ製作し易いレンズ面形状や周辺ツバ形状を有する対物レンズを得るには、波長405nm付近での屈折率が2.00〜2.20の光学硝子材料が好ましい。
【0035】
ここで、外径が5.0mmφ以下、あるいは4.5mmφ以下の対物レンズであっても、対物レンズに入射する光束のサイズを外径に近づくように大きくすれば、長作動距離を得ることは設計上では可能である。しかし、対物レンズを青色レーザーピックアップに確実に搭載固定するためには、有効径外の周辺部の大きさおよび面積を十分にとる必要がある。例えば、対物レンズの入射側の有効径としては、外径5.0mmφ位のレンズでは、レンズ面の入射光束径(有効径)は3.0mmφ〜4.0mmφ、レンズ面径は3.2mmφ〜4.2mmφが望ましい。また、外径4.5mmφ位のレンズでは、レンズ面の入射光束径は2.8mmφ〜3.6mmφ、レンズ面径は3.0mmφ〜3.9mmφが望ましい。
【0036】
さらに、これより有効径を大きくし、レンズ面径を大きくして長作動距離の対物レンズを得ようとすると、レンズ固定用の周辺ツバ部の形状が小さくなり過ぎて、ピックアップに搭載固定した場合のサーボ駆動信頼性が低下することが懸念される。
【0037】
上述したレンズのサイズの関係は、主として対物レンズの入射光束径に対する作動距離の比について述べているだけであり、作動距離が対物レンズの外径のみによって決まるものではない。例えば、前述した光透過保護層厚が0.6mmの650nmレーザー用の現行DVDや、1.2mm厚のCD、CD−Rのような光情報記録媒体も記録再生可能とするような互換レンズではなく、光透過保護層厚が0.1mm程度の青色DVDのような薄いディスク専用の対物レンズの場合、作動距離はさほど長くなくても良い。光透過保護層厚が薄い青色DVDのみに用いる光ピックアップでは、作動距離が短くても媒体に接触する可能性が小さいので、少なくとも0.2mmの作動距離があれば十分である。
【0038】
この場合、外径が5.0mmφ程度、入射光束径が4.0mmφ程度の大きさであれば、低屈折率の樹脂を用いた対物レンズでも作動距離が0.2mm程度の小さいものが製作できる可能性がある。この対物レンズは、作動距離としては不十分であるが、青色DVD専用ピックアップの対物レンズとしてのみ使用できる可能性がある。ここで、作動距離が0.2mm程度で使用可能となるならば、本実施形態の対物レンズでは、青色DVD専用とした場合、外径は5.0mmφ程度よりも、さらに小さい対物レンズを実現できる。
【0039】
すなわち、本実施形態によれば、レンズの外径が2.0mmφ程度、入射光束径が1.2mmφ程度である場合、この入射光束径の1/6以上、すなわち0.2mm以上の作動距離を有し、レンズと光情報記録媒体との衝突防止に有効な青色DVD専用の極小径の対物レンズを得ることができる。
【0040】
以上のような、小型で長作動距離を有する青色レーザーピックアップ用の対物レンズを製作するために、屈折率の大きい硝子材料としては、従来では鉛を含有したフリント系硝子がある。しかし、一般に従来の鉛を含む硝子材料は、波長405nm付近の光の吸収率が大きく、透過率が低下する傾向があるため、青色レーザーピックアップ用には好適な硝子材料とは言えないものが多い。また、鉛を含む硝子材料は環境問題の点からも使用を控えることが望ましい。
【0041】
このため、鉛を含まず、波長405nm付近で高屈折率かつ高透過率を有する光学硝子材料としては、TeO2 を主成分とする硝子材料が望ましい。また、硝子プレス成形に用いるには500℃以下の硝子転移温度が望ましいが、TeO2 を主成分とする硝子材料は、硝子転移温度を比較的低くすることができるので、この条件を満たすことができる。
【0042】
上記のTeO2 を主成分とする光学硝子材料を使用することにより、硝子プレス成形用の金型材料として、WCのような超硬材料を用いたり、あるいは樹脂成形用の金型材料として良く使用される高速度鋼表面に無電解メッキした金型材料を用いることが可能になる。したがって、長寿命の金型あるいは安価な金型を製作して用いることで安価な対物レンズを製作することができる。
【0043】
本実施形態の対物レンズ1の樹脂レンズ部分を製作する方法としては、使用する樹脂材料の特性によって、次のような種々の方法が考えられる。
【0044】
例えば、樹脂レンズ1bの光軸付近の中心厚が比較的厚めの樹脂レンズ形状の場合、硝子レンズ1aとは独立して射出成形法、熱硬化法、UV硬化法などの公知の成形法で樹脂レンズ1bの部分を形成した後、硝子レンズ1aと樹脂レンズ1bとを同一形状の面で互いに向かい合わせて接着し、一体化する方法を用いることができる。しかし、この製作方法では、硝子レンズと樹脂レンズを独立に製作し組み立てることになり、製作コストが上昇するおそれがある。そこで、他の製作方法としては、先に硝子レンズ1aをプレス成形などにより比較的高温で成形し、次にこの硝子レンズ1aにおいて樹脂レンズを設ける側の金型を樹脂レンズ成形用の金型と交換して、樹脂材料を射出成形法あるいは熱硬化法などの成形法で成形することにより、樹脂レンズ1bの部分を硝子レンズ1aのレンズ面上に成形する方法も有効である。この製作方法を用いれば、より簡便で安価に硝子レンズと樹脂レンズとを一体化したレンズが得られる。
【0045】
また、先に半硬化状態の樹脂材料を硝子レンズ1aのレンズ面に載せておき、設計形状にならった精密な厚さ制御を加えながら、樹脂レンズ成形用の金型を用いて樹脂レンズ1bの部分を押圧密着成形する方法なども有効である。また、これとは逆の方法であるが、樹脂レンズ1bの中心厚が比較的薄いレンズの場合、高精度鏡面加工した樹脂レンズ成形用の金型を用い、この金型上に未硬化の樹脂材料を配置または滴下しておき、この樹脂材料の上から硝子レンズの樹脂レンズ側のレンズ面を前記樹脂材料に向けて載せて所定の厚みまで押しこんだ状態で保持し、熱硬化またはUV硬化させた後、一体化した硝子レンズおよび樹脂レンズを樹脂金型から離型することにより、複合一体化された対物レンズを得る方法もある。
【0046】
また、樹脂レンズ1bの光軸付近の中心厚が0.01mm〜0.10mm程度、あるいはこの厚さ以下の薄い膜状のものである場合、先に成形した硝子レンズ1aの樹脂レンズ側のレンズ面に樹脂材料を滴下、コートし、所定の形状になるまで硬化させ、堆積膜を成形することで樹脂レンズ1b部分を成形する方法も考えられる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明に係る対物レンズの実施例を説明する。なお、以下の実施例において、硝子レンズと樹脂レンズとの組合せの順序は、樹脂レンズを入射側に配置し、硝子レンズを射出側に配置した例を示しているが、本発明の原理上、硝子レンズを入射側に配置し、樹脂レンズを射出側に配置しても、同様の効果が得られることは明らかである。対物レンズを光ピックアップに搭載した状態での耐候性を考慮すると、射出側に硝子レンズを配置し、光ピックアップの光情報記録媒体側、すなわち外面側に硝子レンズが位置するようにした方が汚れや傷などが付き難くなり、実用上好ましい。
【0048】
「例1(実施例)」
本発明に係る対物レンズの実施例として、例1の対物レンズの設計形状値を表1〜表3に示し、図1には例1の対物レンズに対応する形状断面図を示す。
【0049】
例1は、硝子レンズ1aの硝子材料として、TeO2 、ZnO、Na2 Oを主成分とする高屈折率の光学硝子材料を用い、樹脂レンズ1bの樹脂材料として、従来から光学材料として使用されているPMMAを使用した複合レンズの例である。
【0050】
表1において、面番号1,2で表される第1面および第2面は、対物レンズ1における樹脂レンズ1bのレンズ面である。すなわち、図1において、第1面は樹脂レンズ1bの入射側の非球面11、第2面は樹脂レンズ1bの硝子レンズ1aとの界面の非球面12に相当する。また、面番号3,4で表される第3面および第4面は、対物レンズ1における硝子レンズ1aのレンズ面である。すなわち、図1において、第3面は硝子レンズ1aの樹脂レンズ1bとの界面の非球面13、第4面は硝子レンズ1aの射出側の非球面14に相当する。
【0051】
なお、以下の表において、面間隔は次の面との間の距離、屈折率は波長405nmにおける光源と反対側の媒質に対する屈折率をそれぞれ表している。ここで、樹脂レンズと硝子レンズとを接合した界面に相当する第2面と第3面は、同一形状のため曲率半径が同一となっており、これらの第2面と第3面の間、すなわち樹脂レンズと硝子レンズとの間の厚さは0.0で、第2面から第3面に対する屈折率は便宜上1.0としている。ただし、樹脂レンズと硝子レンズとを接着剤を用いて接合して一体化させた場合、樹脂レンズと硝子レンズとの界面において接着剤の厚さと屈折率を考慮した設計とする必要がある。
【0052】
【表1】
【0053】
上記第1面〜第4面は、下記の(3)式で表される非球面形状によって、これらの面の面外径までレンズ面として決定される。
【0054】
但し、hは第n面の光軸上の頂点から光軸と垂直方向の距離(単位mm)、Rnは表1の第n面の曲率半径、knは同じく表1の第n面の円錐定数、Aniは表1の第n面のi=1〜8項までの非球面係数である。Znは、以上のh、Rn、kn、Aniによって決まる第n面の頂点の法線平面からの距離(単位mm)であり、このZnの値で決まる曲線が第n面の非球面断面形状を与える。例1におけるRn、kn、Aniの値を表2および表3に示す。なお、以下の表において、「E−01」〜「E−06」はそれぞれ10−1〜10−6を表す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
ここで、An1=0の場合、各レンズ面の頂点近傍の曲率Cnは、Rnの逆数にほぼ等しくなるため、
Cn = 1/Rn …(4)
とする。一方、An1が0でない場合、各レンズ面の頂点付近の頂点付近の曲率Cnは、
Cn = 1/Rn+2・An1 …(5)
とする必要がある。これは以下の他の実施例においても同様である。
【0058】
さらに、例1の対物レンズの設計性能として、波長λ=405±15nm、すなわち390nm〜420nmの範囲における波面収差の値を図2に示す。図2は、対物レンズ1に対して光軸に平行な3.6mmφの平行光束を入射し、この入射光束の波長を390nm〜420nmの範囲で変化させたときの波面収差のRMS(Root Mean Square)の値を示したものである。この図2から明らかなように、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差のRMSは0.02λ以下であり、レンズの収差としては回折限界程度以上、すなわち、ほぼ回折限界性能、または回折限界性能を有していることがわかる。したがって、例1の対物レンズによれば、青色レーザーピックアップに十分使用可能である良好な光学性能が得られる。
【0059】
例1では、対物レンズ1の外径D1は4.5mmφである。そして、光情報記録媒体側の開口数NAが0.85となるときの第1面の有効径、すなわち入射光束径Eは3.6mmφである。ここで、周辺ツバ部6は硝子レンズ1a側に設けるため、第1面に相当する樹脂レンズ1bの非球面の外径は、レンズ面径だけで良い。よって、第1面における樹脂レンズ1bの外径(レンズ面径)D2は、ピックアップ搭載時の取り付け偏芯やサーボ駆動時の光束の斜め入射などによってもレンズ面のエッジで光束の一部がカットされることのないように、3.7mmφとしてある。
【0060】
また、樹脂レンズ1bの硝子レンズ面側の第2面の有効径と、硝子レンズ1aの樹脂レンズ面側の第3面の有効径は共に3.5mmφである。これに対し、硝子レンズ1aの樹脂レンズ面側の第3面におけるレンズ面径は、製作時に樹脂レンズ1bと容易に一体化できるように、第1面と同じレンズ面径D2=3.7mmφと大きくしてある。また、硝子レンズ1aと樹脂レンズ1bとの界面の第3面において、レンズ面径D2=3.7mmφから外側のレンズ外径D1=4.5mmφまでの領域に相当する周辺ツバ部6を形成する平面部7が、青色レーザーピックアップに搭載固定されるときの基準平面部となる。
【0061】
同様に、光情報記録媒体側のNAが0.85となるときの第4面の有効径、すなわち出射光束径D3は2.7mmφであり、これに対し、レンズ面径D4は3.0mmφと大きくしてある。この第4面と第5面の面間隔0.2118mmが第4面のレンズの凹面の深さを示し、第5面はこの第4面のレンズ面外側の平面部8を示している。この第5面は、第3面と同様にレンズ外径D1=4.5mmφまでの平面部となっている。前述の第3面の平面部7と第5面の平面部8との光軸5方向の間隔が対物レンズ1の周辺ツバ部6の厚さ、いわゆる周辺ツバ厚T1を示し、例1では、この周辺ツバ厚T1は約0.74mmであり、十分な厚さを有している。
【0062】
第6面と第7面が光情報記録媒体面を示し、第6面が光情報記録媒体3の媒体表面9であり、第7面に密着して記録層が設けられて情報記録面4を形成している。また、第6面と第7面との間隔が光透過保護層厚であり、0.1mmとなっている。図示しない光源からのレーザー光はこの対物レンズ1によって情報記録面4に良好なスポット像として集光される。ここで、レンズ側の第5面の平面部8と光情報記録媒体側の第6面の媒体表面9との距離が作動距離Lを示し、例1ではL=0.7957mmである。また、作動距離Lと入射光束径Eとの比はL/E=0.7957/3.60≒1/4.524となり、従来に類を見ないかなり長い作動距離が得られることを示している。
【0063】
また、樹脂レンズ1bにおける入射側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、射出側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、硝子レンズ1aにおける入射側の第3面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、射出側の第4面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとすると、
PI=1/1.979035=0.505296773>0、
PO=1/1.649987=0.606065381>0、
GI=1/1.649987=0.606065381>0、
GO=1/3.336518=0.299713653>0
である。これから、
PO=GI>PI>GO>0
となる。例1の場合、硝子レンズ1aが光情報記録媒体側に配置されているので、PI,PO,GI,GOは前述の(1)式を満足する良好な曲率の関係を有していることがわかる。
【0064】
青色レーザーピックアップ用のレンズは、NA=0.85という高開口数の対物レンズであるため、入射側のレンズ面曲率が大きくなり、加工しにくい形状になる傾向がある。しかし例1では、入射側のレンズ中心頂点の接線15とレンズ非球面の接線16とのなす傾斜角θの最大値は、レンズ周辺部で51.6°である。ここで、各レンズ面のレンズ中心頂点の接線に対してレンズ面の接線のなす角度の最大値は、第1面では前記θ=51.6°、第2面と第3面では50.2°、第4面では13.0°であり、非球面金型加工においてもさほど製作困難ではない非球面形状となっている。
【0065】
また、例1において硝子レンズ1aに用いた硝子材料は、鉛を含まず、TeO2 、ZnO、Na2 Oを主成分とする光学硝子材料である。この光学硝子材料の波長405nm付近での屈折率は2.16377と非常に高いが、内部透過率は約92%であり、青色DVD用のピックアップに用いる対物レンズとしては十分使用可能である。また、例1で用いた硝子材料の硝子転移温度は約300℃〜350℃と低いため、硝子レンズをプレス成形により成形する場合は長寿命の金型あるいは安価な金型を用いて製作コストを削減できる。
【0066】
一方、例1において樹脂レンズ1bに用いた樹脂材料は、光学用樹脂として一般的に用いられているPMMA樹脂であり、この樹脂材料の波長405nm付近での屈折率は1.50655であり、レンズ中心部の厚さは0.1mmとしている。なお、樹脂レンズ1bの厚さは、0.01mm程度の薄肉のものや0.5mm以上の厚肉のものであっても、硝子レンズ1aの硝子材料との組み合わせにおける最適化設計を行うことによって種々の厚さを実現可能である。
【0067】
例1で得られた対物レンズに対し、波長405nmの青色レーザー光学干渉計を用いて、+15nm〜−15nmの範囲で可能な限り波長を変動させ、レンズ光軸にほぼ平行な3.6mmφの平行光束を入射して対物レンズの波面収差を測定した。その結果、波長390nm〜420nmの全範囲において、測定光学系の残留収差を含んでも波面収差のRMSは0.02λ〜0.04λ、すなわち0.04λ以下であり、十分実用可能な高い光学性能を示した。また、作動距離は0.8mm前後と十分長い作動距離が得られた。
【0068】
「例2(比較例)」
本発明に対する比較例として、例2の対物レンズの設計形状値を表4および表5に示し、図3には例2の対物レンズに対応する形状断面図を示す。
【0069】
例2は、青色レーザーピックアップ用対物レンズとして、複合レンズではなく、1種の硝子材料からなる単レンズによる設計例である。この例2において用いる硝子材料は、従来の硝子材料の中でも鉛を含まない高屈折率硝子材料で、かつ本発明における硝子材料の屈折率よりやや低い屈折率を持つものである。対物レンズ51は、無限系の単レンズであり、コリメータレンズ52によって平行光とされた図示しない光源からのレーザー光を集光し、光情報記録媒体53の情報記録面54上にビームスポットを形成するよう構成される。
【0070】
表4において、面番号1,2で表される第1面および第2面は、対物レンズの入射側と出射側の面である。すなわち、図3において、対物レンズ51の入射側の非球面61と射出側の非球面62に相当する。
【0071】
【表4】
【0072】
上記第1面および第2面は、上記例1と同様に(3)式で表される非球面形状によって、これらの面の面外径までレンズ面として決定される。この例2におけるRn、kn、Aniの値を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
例2では、対物レンズ51の外径D1は4.5mmφである。そして、光情報記録媒体側の開口数NAが0.85となるときの第1面の有効径、すなわち入射光束径Eは3.6mmφである。これに対し、レンズ面径D2は、ピックアップ搭載時の取り付け偏芯やサーボ駆動時の光束の斜め入射などによってもレンズ面のエッジで光束の一部がカットされることのないように、3.9mmφとやや大きくしてある。また、第1面においてレンズ面径D2=3.9mmφから外側のレンズ外径D1=4.5mmφまでの領域に相当する周辺ツバ部56を形成する平面部57が、青色レーザーピックアップに搭載固定されるときの基準平面部となる。
【0075】
同様に、光情報記録媒体側のNAが0.85となるときの第2面の有効径、すなわち出射光束径D3は2.5mmφであり、これに対し、レンズ面径D4は2.7mmφと大きくしてある。この第2面と第3面の面間隔0.1687mmが第2面のレンズの凹面の深さを示し、第3面はこの第2面のレンズ面外側の平面部58を示している。この第3面は、第1面と同様にレンズ外径D1=4.5mmφまでの平面部となっている。前述の第1面の平面部57と第3面の平面部58との光軸55方向の間隔が対物レンズ51の周辺ツバ部56の厚さ、いわゆる周辺ツバ厚T1を示し、例2では、この周辺ツバ厚T1は約0.45mmと薄いが、実用的にはほぼ十分な厚さを有している。
【0076】
第4面と第5面は光情報記録媒体面を示す。図示しない光源からのレーザー光はこの対物レンズ51によって情報記録面54にスポット像として集光される。ここで、レンズ側の第3面の平面部58と光情報記録媒体53側の第4面の媒体表面59との距離が作動距離Lを示し、例2ではL=0.6916mmである。また、作動距離Lと入射光束径Eとの比はL/E=0.6916/3.60≒1/5.205、すなわち、1/6以上であり、長い作動距離が得られることを示している。
【0077】
また、例2の対物レンズの設計性能として、波長390nm〜420nmの範囲における波面収差の値を図4に示す。図4は、図2の例1の場合と同様に、光軸に平行な3.6mmφの入射光束に対する波面収差のRMSの値を示したものである。この図4より、レンズの波面収差は、波長λ=405nm付近では0.002λと良好であるが、この405nmを中心として波長が変化した場合は波面収差が急激に増大する傾向を有していることがわかる。すなわち、波長405nm±5〜6nm程度の波長変化に対しては使用可能光学性能の目安である波面収差0.04λ以下となるが、それより外側の波長390nm〜399nm、または、波長411nm〜420nmの範囲の入射光束に対しては0.04λを大きく越えてしまう。したがって、例2のような単レンズでは、青色レーザーピックアップに使用するレーザー光源が、ロットばらつきや使用状態、環境変化などによって発振波長が変動する場合、対物レンズの光学性能が変動し、400nm〜410nmの範囲を越えた波長変動に対しては、対物レンズとして使用することは不可能となる。
【0078】
また、例2の対物レンズに用いた硝子材料は、鉛を含まない光学硝子材料であり、この硝子材料の波長405nm付近での屈折率は1.84452と高いものである。この硝子材料の屈折率は、上記例1で用いた光学硝子材料よりは低いが、光学硝子材料の中ではかなり高いものである。一方、例2の硝子材料の内部透過率は、厚さ10mmの平板でも約94%と高い透過率を示し、青色DVD用のピックアップに用いる対物レンズとしては十分な透過率を有している。しかし、例2の対物レンズの入射側の非球面形状は、周辺に行くにつれて非常に傾斜が大きくなり、レンズ面径3.9mmφ付近の周辺部では、入射側のレンズ中心頂点の接線63とレンズ非球面の接線64とのなす傾斜角が約71°となる。このため、非球面金型加工に時間がかかり、加工精度向上は難しくなる。
【0079】
さらに、この例2で用いた硝子材料は、前述の例1で用いた光学硝子材料とは異なり、硝子転移温度は約530℃と高い。このため、実際にレンズを成形する際には硝子転移温度より数十度高い温度で成形する必要があるので、一般には超硬材料の金型が用いられるが、硝子転移温度が高いと金型表面の粗さが劣化する程度が早く、金型の寿命が短くなる。このように、例2においては、非球面形状の加工精度低下、硝子成形温度の高さなどの問題により、レンズ成形歩留まりが悪くなる。
【0080】
例2で得られた対物レンズに対し、波長405nmの青色レーザー光学干渉計を用いて、+15nm〜−15nmの範囲で可能な限り波長を変動させ、レンズ光軸にほぼ平行な3.6mmφの平行光束を入射して対物レンズの波面収差を測定した。その結果、作動距離は0.7mm前後と長い作動距離が得られ、波長405nm付近の光学性能は、測定光学系の残留収差を含んでも波面収差のRMSは0.02λ〜0.04λと十分実用可能な光学性能が得られた。しかし、400nmより短い波長か、または、410nmより長い波長に対しては、波面収差のRMSは使用可能な目安である0.04λを大きく越えてしまい、405nmを中心波長として±5nm以上の波長変動に対しては実用不可能な光学特性となった。
【0081】
「例3(実施例)」
本発明に係る対物レンズの他の実施例として、例3の対物レンズの設計形状値を表6〜表8に示し、図5には例3の対物レンズに対応する形状断面図を示す。
【0082】
例3の対物レンズ31は、硝子レンズ31aと樹脂レンズ31bとを単体レンズのように合わせて一体化した複合レンズとなっている。この例3は、硝子レンズ31aの硝子材料として、TeO2 、ZnO、Na2 Oを主成分とする高屈折率の光学硝子材料を用い、樹脂レンズ31bの樹脂材料として、従来から光学材料として使用されているポリカーボネートを使用した例である。
【0083】
上記例1の表1と同様に、表6における面番号1,2で表される第1面および第2面は、対物レンズ31における樹脂レンズ31bのレンズ面である。また、面番号3,4で表される第3面および第4面は、対物レンズ31における硝子レンズ31aのレンズ面である。
【0084】
【表6】
【0085】
上記第1面〜第4面は、上記例1と同様に(3)式で表される非球面形状によって、これらの面の面外径までレンズ面として決定される。この例3におけるRn、kn、Aniの値を表7および表8に示す。
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
さらに、例3の対物レンズの設計性能として、波長λ=405±15nm、すなわち390nm〜420nmの範囲における波面収差の値を図6に示す。図6は、図2の例1の場合と同様に、光軸に平行な3.6mmφの入射光束に対する波面収差のRMSの値を示したものである。この図6より、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差のRMSは0.02λ以下であり、レンズの収差としては回折限界程度以上、すなわち、ほぼ回折限界性能、または回折限界性能を有していることがわかる。したがって、例3の対物レンズによれば、青色レーザーピックアップに十分使用可能である良好な光学性能が得られる。
【0089】
例3では、対物レンズ31の外径D1は4.5mmφである。そして、光情報記録媒体側の開口数NAが0.85となるときの第1面の有効径、すなわち入射光束径Eは3.6mmφである。ここで、例1と同様、周辺ツバ部6は硝子レンズ31a側に設けるため、第1面に相当する樹脂レンズ31bの非球面の外径は、レンズ面径だけで良い。よって、第1面における樹脂レンズ31bの外径(レンズ面径)D2は、ピックアップ搭載時の取り付け偏芯やサーボ駆動時の光束の斜め入射などによってもレンズ面のエッジで光束の一部がカットされることのないように、3.8mmφとしてある。
【0090】
また、樹脂レンズ31bの硝子レンズ面側の第2面の有効径と、硝子レンズ31aの樹脂レンズ面側の第3面の有効径は共に3.1mmφである。これに対し、硝子レンズ31aの樹脂レンズ面側の第3面におけるレンズ面径は、余裕を見て3.3mmφとしてある。また、硝子レンズ31aと樹脂レンズ31bとの界面の第3面において、第3面のレンズ面径3.3mmφから外側のレンズ外径D1=4.5mmφまでの領域に相当する周辺ツバ部6を形成する平面部7が、青色レーザーピックアップに搭載固定されるときの基準平面部となる。
【0091】
同様に、光情報記録媒体側のNAが0.85となるときの第4面の有効径、すなわち出射光束径D3は2.4mmφであり、これに対し、レンズ面径D4は2.6mmφと大きくしてある。この第4面と第5面の面間隔0.2233mmが第4面のレンズの凹面の深さを示し、第5面はこの第4面のレンズ面外側の平面部8を示している。この第5面は、第3面と同様にレンズ外径D1=4.5mmφまでの平面部となっている。前述の第3面の平面部7と第5面の平面部8との光軸5方向の間隔が対物レンズ31の周辺ツバ部6の厚さ、いわゆる周辺ツバ厚T1を示し、例3では、この周辺ツバ厚T1は約0.53mmであり、十分な厚さを有している。
【0092】
第6面と第7面は上記例1と同様に光情報記録媒体面を示す。この例3では、作動距離LはL=0.6721mmである。また、作動距離Lと入射光束径Eとの比はL/E=0.6721/3.60≒1/5.356、すなわち、1/6以上であり、長い作動距離が得られることを示している。
【0093】
また、第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、第3面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、第4面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとすると、
PI=1/2.024230=0.494015008>0、
PO=1/1.389049=0.719917007>0、
GI=1/1.389049=0.719917007>0、
GO=1/2.703306=0.369917427>0
である。これから、
PO=GI>PI>GO>0
となる。例3の場合、硝子レンズ31aが光情報記録媒体側に配置されているので、PI,PO,GI,GOは前述の(1)式を満足する良好な曲率の関係を有していることがわかる。
【0094】
さらに、例3では、入射側のレンズ中心頂点の接線15とレンズ非球面の接線16とのなす傾斜角θの最大値は、レンズ周辺部で49.9°である。ここで、各レンズ面のレンズ中心頂点の接線に対してレンズ面の接線のなす角度の最大値は、第1面では前記θ=49.9°、第2面と第3面では58.0°、第4面では19.2°であり、非球面金型加工においてもさほど製作困難ではない非球面形状となっている。
【0095】
また、例3において硝子レンズ31aに用いた硝子材料は、例1と同じ光学硝子材料を使用している。一方、例3において樹脂レンズ31bに用いた樹脂材料は、光学用樹脂として一般的に用いられているポリカーボネート樹脂であり、この樹脂材料の波長405nm付近での屈折率は1.62231であり、レンズ中心部の厚さは0.5mmとしている。なお、樹脂レンズ31bの厚さは、例1と同様、0.01mm程度の薄肉のものや0.5mm以上の厚肉のものであっても、硝子レンズ31aの硝子材料との組み合わせにおける最適化設計を行うことによって種々の厚さを実現可能である。
【0096】
例3で得られた対物レンズに対し、波長405nmの青色レーザー光学干渉計を用いて、+15nm〜−15nmの範囲で可能な限り波長を変動させ、レンズ光軸にほぼ平行な3.6mmφの平行光束を入射して対物レンズの波面収差を測定した。その結果、波長390nm〜420nmの全範囲において、測定光学系の残留収差を含んでも波面収差のRMSは0.02λ〜0.04λ、すなわち0.04λ以下であり、十分実用可能な高い光学性能を示した。また、作動距離は0.67mm前後と十分長い作動距離が得られた。
【0097】
「例4(実施例)」
本発明に係る対物レンズの他の実施例として、例4の対物レンズの設計形状値を表9〜表11に示し、図7には例4の対物レンズに対応する形状断面図を示す。
【0098】
この例4の対物レンズ41は、硝子レンズ41aと樹脂レンズ41bとを単体レンズのように合わせて一体化した複合レンズとなっている。この例4は、硝子レンズ41aの硝子材料として、TeO2 、ZnO、Na2 Oを主成分とする高屈折率の光学硝子材料を用い、樹脂レンズ41bの樹脂材料として、波長405nm付近の透過率が高く、波長変動に対して屈折率変動の少ない低分散性を有し、かつ、低屈折率の光学材料であるサイトップ樹脂を使用した複合レンズの例である。
【0099】
上記例1の表1と同様に、表9における面番号1,2で表される第1面および第2面は、対物レンズ41における樹脂レンズ41bのレンズ面である。また、面番号3,4で表される第3面および第4面は、対物レンズ41における硝子レンズ41aのレンズ面である。
【0100】
【表9】
【0101】
上記第1面〜第4面は、上記例1と同様に(3)式で表される非球面形状によって、これらの面の面外径までレンズ面として決定される。この例4におけるRn、kn、Aniの値を表10および表11に示す。
【0102】
【表10】
【0103】
【表11】
【0104】
さらに、例4の対物レンズの設計性能として、波長λ=405±15nm、すなわち390nm〜420nmの範囲における波面収差の値を図8に示す。図8は、図2の例1の場合と同様に、光軸に平行な3.6mmφの入射光束に対する波面収差のRMSの値を示したものである。この図8より、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差のRMSは0.02λ以下であり、レンズの収差としては回折限界程度以上、すなわち、ほぼ回折限界性能、または回折限界性能を有していることがわかる。したがって、例4の対物レンズによれば、青色レーザーピックアップに十分使用可能である良好な光学性能が得られる。
【0105】
例4では、対物レンズ41の外径D1は4.5mmφである。そして、光情報記録媒体側の開口数NAが0.85となるときの第1面の有効径、すなわち入射光束径Eは3.6mmφである。ここで、例1と同様、周辺ツバ部6は硝子レンズ41a側に設けるため、第1面に相当する樹脂レンズ41bの非球面の外径は、レンズ面径だけで良い。よって、第1面における樹脂レンズ41bの外径(レンズ面径)D2は、ピックアップ搭載時の取り付け偏芯やサーボ駆動時の光束の斜め入射などによってもレンズ面のエッジで光束の一部がカットされることのないように、3.8mmφとしてある。
【0106】
また、樹脂レンズ41bの硝子レンズ面側の第2面の有効径と、硝子レンズ41aの樹脂レンズ面側の第3面の有効径は共に3.53mmφである。これに対し、硝子レンズ41aの樹脂レンズ面側の第3面におけるレンズ面径は、第1面と同じレンズ面径D2=3.8mmφとしてある。また、硝子レンズ41aと樹脂レンズ41bとの界面の第3面において、第3面のレンズ面径3.8mmφから外側のレンズ外径D1=4.5mmφまでの領域に相当する周辺ツバ部6を形成する平面部7が、青色レーザーピックアップに搭載固定されるときの基準平面部となる。
【0107】
同様に、光情報記録媒体側のNAが0.85となるときの第4面の有効径、すなわち出射光束径D3は2.87mmφであり、これに対し、レンズ面径D4は3.2mmφと大きくしてある。この第4面と第5面の面間隔0.2544mmが第4面のレンズの凹面の深さを示し、第5面はこの第4面のレンズ面外側の平面部8を示している。この第5面は、第3面と同様にレンズ外径D1=4.5mmφまでの平面部となっている。前述の第3面の平面部7と第5面の平面部8との光軸5方向の間隔が対物レンズ41の周辺ツバ部6の厚さ、いわゆる周辺ツバ厚T1を示し、例4では、この周辺ツバ厚T1は約0.63mmであり、十分な厚さを有している。
【0108】
第6面と第7面は上記例1と同様に光情報記録媒体面を示す。この例4では、作動距離LはL=0.8327mmである。また、作動距離Lと入射光束径Eとの比はL/E=0.8327/3.60≒1/4.323、すなわち、1/6以上であり、かなり長い作動距離が得られることを示している。
【0109】
また、第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、第3面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、第4面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとすると、
PI=1/2.083918=0.47986533>0、
PO=1/1.657842=0.60319379>0、
GI=1/1.657842=0.60319379>0、
GO=1/3.387378=0.29521358>0
である。これから、
PO=GI>PI>GO>0
となる。例4の場合、硝子レンズ41aが光情報記録媒体側に配置されているので、PI,PO,GI,GOは前述の(1)式を満足する良好な曲率の関係を有していることがわかる。
【0110】
さらに、例4では、入射側のレンズ中心頂点の接線15とレンズ非球面の接線16とのなす傾斜角θの最大値は、レンズ周辺部で52.9°である。ここで、各レンズ面のレンズ中心頂点の接線に対してレンズ面の接線のなす角度の最大値は、第1面では前記θ=52.9°、第2面と第3面では52.0°、第4面では14.8°であり、非球面金型加工においてもさほど製作困難ではない非球面形状となっている。
【0111】
また、例4において硝子レンズ41aに用いた硝子材料は、例1と同じ光学硝子材料を使用している。一方、例4において樹脂レンズ41bに用いた樹脂材料は、旭硝子株式会社製のサイトップ樹脂であり、この樹脂材料の波長405nm付近での屈折率は1.34798であり、レンズ中心部の厚さは0.01mmとしている。なお、樹脂レンズ41bの厚さは、例1と同様、0.01mm程度の薄肉のものや0.5mm以上の厚肉のものであっても、硝子レンズ41aの硝子材料との組み合わせにおける最適化設計を行うことによって種々の厚さを実現可能である。
【0112】
例4で得られた対物レンズに対し、波長405nmの青色レーザー光学干渉計を用いて、+15nm〜−15nmの範囲で可能な限り波長を変動させ、レンズ光軸にほぼ平行な3.6mmφの平行光束を入射して対物レンズの波面収差を測定した。その結果、波長390nm〜420nmの全範囲において、測定光学系の残留収差を含んでも波面収差のRMSは0.02λ〜0.04λ、すなわち0.04λ以下であり、十分実用可能な高い光学性能を示した。また、作動距離は0.83mm前後と非常に長い作動距離が得られた。
【0113】
上述した例1、例3および例4のような本実施例によれば、波長405nm付近の発振波長を有するレーザー光源を使用する青色レーザーピックアップにおいて、発振波長405nmを中心とした±15nm程度の波長変動を有するものに使用した場合に、この波長変動が生じる可能性のある波長390nm〜420nmの全範囲において、ほぼ回折限界性能、または回折限界性能である高い光学性能を有する対物レンズを、鉛を含まない光学材料で実現できる。
【0114】
また、レンズの外径が5.0mmφ以下で、入射光束径をE、レンズと光情報記録媒体間の作動距離をLとしたときにL/Eの比が1/6以上となる長作動距離を有し、小型で高開口数の青色レーザーピックアップ用対物レンズを得ることができる。また、硝子レンズと樹脂レンズとを合わせて一体化した複合レンズとしたため、単レンズと同様な取り扱いができる。さらに、硝子レンズ部分は比較的低温で成形でき、成形が容易であるため、対物レンズを安価に製作することができる。また、対物レンズの非球面形状は傾斜が大き過ぎることなく、加工精度を向上できる。
【0115】
特に、青色DVD対応の光ピックアップ用対物レンズとしては、NA=0.85という高開口数を維持しながら長い作動距離を有しているので、高速回転する光情報記録媒体に対するフォーカシング制御やトラッキング制御のためのサーボ駆動などの際に、対物レンズが光情報記録媒体に接触してしまうことを回避できる。
【0116】
また、本実施形例の対物レンズを、650nmレーザーを用いる現行DVD、780nmレーザーを用いるCD、CD−Rなどの厚い光透過保護層厚を有する光情報記録媒体の記録再生用ピックアップに用いる際にも、光情報記録媒体に接触する可能性の少なく、互換レンズとしても有用なピックアップ用レンズを得ることができる。さらに、青色DVD専用レンズとしてならば、外径2mmあるいはそれ以下の対物レンズとしても実現可能であるので、光情報記録媒体に接触することなしに記録再生できる超小型の青色レーザーピックアップ用対物レンズが得られる。
【0117】
【発明の効果】
本発明によれば、レンズの外径が5.0mmφ以下で、入射光束径をE、レンズと光情報記録媒体間の作動距離をLとしたときにL/Eの比が1/6以上となるような小型で高開口数かつ長作動距離を有するとともに、波長405nm付近のレーザー光に対して、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差が0.04λ以下である高い光学性能を有する光ピックアップ用の対物レンズを提供できる。
【0118】
また、樹脂レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、硝子レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとしたとき、硝子レンズが光情報記録媒体側に配置される場合は、PO=GI>PI>GO>0、樹脂レンズが光情報記録媒体側に配置される場合は、GI>PO>GO=PI>0の関係を満足することにより、小型、高開口数、長作動距離を同時に満たし、単体レンズのように取り扱い可能な光ピックアップ用の対物レンズを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態および例1の実施例に係る対物レンズの構成を示す図であり、対物レンズの光軸を通る断面図。
【図2】本発明の例1の実施例に係る対物レンズの波長390nm〜420nmの範囲における波面収差を示す特性図。
【図3】本発明に対する比較例に係る対物レンズの構成を示す図であり、対物レンズの光軸を通る断面図。
【図4】本発明に対する比較例に係る対物レンズの波長390nm〜420nmの範囲における波面収差を示す特性図。
【図5】本発明の例3の実施例に係る対物レンズの構成を示す図であり、対物レンズの光軸を通る断面図。
【図6】本発明の例3の実施例に係る対物レンズの波長390nm〜420nmの範囲における波面収差を示す特性図。
【図7】本発明の例4の実施例に係る対物レンズの構成を示す図であり、対物レンズの光軸を通る断面図。
【図8】本発明の例4の実施例に係る対物レンズの波長390nm〜420nmの範囲における波面収差を示す特性図。
【符号の説明】
1,31,41:対物レンズ
1a,31a,41a:硝子レンズ
1b,31b,41b:樹脂レンズ
2:コリメータレンズ
3:光情報記録媒体
4:情報記録面
5:光軸
6:周辺ツバ部
7:入射側の面である第1面の平面部
8:射出側の面である第5面の平面部
9:媒体表面
11:樹脂レンズの入射側の非球面(第1面)
12:樹脂レンズの射出側の非球面(硝子レンズとの界面、第2面)
13:硝子レンズの入射側の非球面(樹脂レンズとの界面、第3面)
14:硝子レンズの射出側の非球面(第4面)
15:入射側のレンズ中心頂点の接線
16:入射側のレンズ非球面の接線
D1:レンズの外径
D2:第1面におけるレンズ面径
D3:第2面の有効径(出射光束径)
D4:第2面におけるレンズ面径
E:第1面の有効径(入射光束径)
L:作動距離
θ:入射側のレンズ非球面の傾斜角
T1:周辺ツバ厚
Claims (2)
- 光情報記録媒体の情報記録面に集光して情報の記録または再生を行う光学系に用いる対物レンズであって、
前記光情報記録媒体側の開口数が0.80〜0.87で、かつ、外径が1.0mmφ〜5.0mmφのレンズであり、また、波長390nm〜420nmの全範囲において波面収差が0.04λ以下であり、
この対物レンズは光学硝子材料からなる硝子レンズと樹脂材料からなる樹脂レンズとが単体レンズのように複合化されて一体化されており、前記光学硝子材料の390nm〜420nmの波長に対する屈折率が1.85〜2.20、前記樹脂材料の390nm〜420nmの波長に対する屈折率が1.20〜1.70であり、
この対物レンズへの光源からの入射光束径をE、前記対物レンズと前記光情報記録媒体との間の作動距離をLとしたとき、LとEの比L/Eが1/6以上となるような作動距離を有することを特徴とする対物レンズ。 - 前記樹脂レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をPI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をPO、前記硝子レンズにおける光源側の第1面のレンズ面頂点近傍の曲率をGI、光情報記録媒体側の第2面のレンズ面頂点近傍の曲率をGOとしたとき、
前記硝子レンズが光情報記録媒体側に配置される場合、PO=GI>PI>GO>0、前記樹脂レンズが光情報記録媒体側に配置される場合、GI>PO>GO=PI>0の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
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