JP2013168195A - 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ - Google Patents

対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ Download PDF

Info

Publication number
JP2013168195A
JP2013168195A JP2012029553A JP2012029553A JP2013168195A JP 2013168195 A JP2013168195 A JP 2013168195A JP 2012029553 A JP2012029553 A JP 2012029553A JP 2012029553 A JP2012029553 A JP 2012029553A JP 2013168195 A JP2013168195 A JP 2013168195A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lens
phase shift
annular
region
objective lens
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012029553A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5706839B2 (ja
Inventor
Takeshi Shimano
健 島野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Maxell Holdings Ltd
Original Assignee
Hitachi Maxell Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Maxell Ltd filed Critical Hitachi Maxell Ltd
Priority to JP2012029553A priority Critical patent/JP5706839B2/ja
Priority to PCT/JP2013/053587 priority patent/WO2013122175A1/ja
Publication of JP2013168195A publication Critical patent/JP2013168195A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5706839B2 publication Critical patent/JP5706839B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B5/00Optical elements other than lenses
    • G02B5/18Diffraction gratings
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B13/00Optical objectives specially designed for the purposes specified below
    • G02B13/001Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras
    • G02B13/0015Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras characterised by the lens design
    • G02B13/002Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras characterised by the lens design having at least one aspherical surface
    • G02B13/0025Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras characterised by the lens design having at least one aspherical surface having one lens only
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B13/00Optical objectives specially designed for the purposes specified below
    • G02B13/001Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras
    • G02B13/0055Miniaturised objectives for electronic devices, e.g. portable telephones, webcams, PDAs, small digital cameras employing a special optical element
    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11BINFORMATION STORAGE BASED ON RELATIVE MOVEMENT BETWEEN RECORD CARRIER AND TRANSDUCER
    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B7/12Heads, e.g. forming of the optical beam spot or modulation of the optical beam
    • G11B7/135Means for guiding the beam from the source to the record carrier or from the record carrier to the detector
    • G11B7/1365Separate or integrated refractive elements, e.g. wave plates
    • G11B7/1367Stepped phase plates
    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11BINFORMATION STORAGE BASED ON RELATIVE MOVEMENT BETWEEN RECORD CARRIER AND TRANSDUCER
    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B7/12Heads, e.g. forming of the optical beam spot or modulation of the optical beam
    • G11B7/135Means for guiding the beam from the source to the record carrier or from the record carrier to the detector
    • G11B7/1372Lenses
    • G11B7/1374Objective lenses
    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11BINFORMATION STORAGE BASED ON RELATIVE MOVEMENT BETWEEN RECORD CARRIER AND TRANSDUCER
    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B7/12Heads, e.g. forming of the optical beam spot or modulation of the optical beam
    • G11B7/135Means for guiding the beam from the source to the record carrier or from the record carrier to the detector
    • G11B7/1392Means for controlling the beam wavefront, e.g. for correction of aberration
    • G11B7/13922Means for controlling the beam wavefront, e.g. for correction of aberration passive
    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11BINFORMATION STORAGE BASED ON RELATIVE MOVEMENT BETWEEN RECORD CARRIER AND TRANSDUCER
    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B2007/0003Recording, reproducing or erasing systems characterised by the structure or type of the carrier
    • G11B2007/0006Recording, reproducing or erasing systems characterised by the structure or type of the carrier adapted for scanning different types of carrier, e.g. CD & DVD

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Optical Head (AREA)
  • Lenses (AREA)
  • Diffracting Gratings Or Hologram Optical Elements (AREA)

Abstract

【課題】BD、DVD、CDのいずれの光ディスクに平行光が入射する場合にも、その収差を十分に低減する単一の対物レンズを提供する。
【解決手段】対物レンズ100の3波長共用領域103は、厚さt4の透明媒質層に最適化されたレンズ面に、第1〜第3輪帯位相シフト構造112〜114を一体化して形成する。BD/DVD共用領域104は、厚さt5の透明媒質層に最適化されたレンズ面に、第4の輪帯位相シフト構造117を一体化して形成する。BD専用領域105は、厚さt1の透明媒質層に最適化された非球面レンズ形状とする。各輪帯位相シフト構造は、デフォーカスを主成分とするBDとDVDとCDで互いに相似な波面収差を補正するが、合成された結果、BDとDVDとCDで互いに相似でない波面収差を補正できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、光情報記録媒体へ情報を記録再生する光ピックアップとそれに用いられる対物レンズに関し、さらに詳細には、記録密度の異なる複数の情報記録媒体に対して互換性を有する対物レンズに関する。
光ディスクに代表される光情報記録媒体は、音楽や映像などの民生用としては、CD(Compact Disc)に始まり、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu−ray Disc)と大容量化されてきた。CDは主に音楽用、DVDは標準画質のビデオ用、BDはハイビジョン動画用として用いられている。DVDやBDが新たに製品化される際に、常に業界で配慮されて来たのは下位互換性である。DVDの記録再生装置ではCDを記録再生できるように、BDの記録再生装置ではDVDやCDを記録再生できるように、常に過去のコンテンツを新しいシステムにおいて参照できるように媒体構造や装置が工夫されてきた。
DVDではCDとの互換性をとれるように、対物レンズに位相シフトや回折作用などのための輪帯位相シフト構造が導入された。これによりレーザ光源は赤色と赤外の2つであっても、1つの対物レンズでDVDとCDの両方の光ディスクの記録再生ができるようになっている。しかし、BDではBD専用レンズとDVD/CD互換レンズの2つの対物レンズをレンズアクチュエータに搭載するのがまだ一般的である。これは、輪帯位相シフト構造では2種類の波長の収差性能を両立することができても、3つの波長ですべて満足することが困難であるからである。しかし、転送速度の高速化や、ピックアップ装置、ドライブ装置の小型化、低価格化に向けて、BDを含めて単一の対物レンズで対応する3波長互換レンズの要求が高まっている。
この要求に応えるために、例えば、特許文献1と特許文献2では、対物レンズに入射する光線の発散度合いと収束度合いを波長によって可変させるとともに、回折レンズ素子を組み合わせる構成が提案されている。特に特許文献2では、第1光路差付与構造と第2光路差付与構造を導入し、最も短い波長のそれぞれ奇数倍と偶数倍に0.1波長以内の誤差で光路差を付与することが述べられている。また特許文献3では、3つの波長についてすべて平行光を入射させるとともに、輪帯状回折面を組み合わせる構成が提案されている。
さらに特許文献4では、基本的にBD専用対物レンズと別体として想定された位相補償板において、BDの波長の整数倍の光路差を与える非周期的位相構造を用いて、位相シフトによりDVDとCDの収差を低減するとともに、副次的な非周期的位相構造や、非周期的位相構造を輪帯ごとに非球面とすることによりBDでの収差を許容範囲内で劣化させて、DVDとCDの収差を低減する方法が提案されている。
また特許文献5では、特許文献2と類似した第1光路差付与構造と第2光路差付与構造を用い、実施例1においてレンズに対し平行光を入射してBD、DVD、CDに集光するレンズの設計例が提案されている。ここではBD/DVD/CD共用領域に当たる中央領域において異なる光路差関数で表される2つの回折構造が第1光路差付与構造としてレンズの入射面側に重ねられており、BD/DVD共用領域に当たる中間領域において異なる光路差関数で表される3つの回折構造が第2光路差付与構造として同じくレンズの入射面側に重ねられていることが示されている。出射面側は輪帯位相シフト構造のない単一の非球面構造である。
特許第4062742号公報 特許第3957003号公報 特許第4099662号公報 特表2008−524639号公報 特開2011−96350号公報
特許文献1および2に開示されている構成では、対物レンズに入射する光線が平行光でないことが問題となる場合がある。光ディスクをドライブ装置に装着する場合に、ディスクを回転させるスピンドルモータの回転中心は、ディスクの情報トラックの曲率中心とは必ずしも一致しない。これは光ディスクのような可換媒体を用いる情報記録装置においては不可避のことであり、これに伴って静止している光ピックアップと回転している光ディスクの情報トラックは相対的に位置ずれを生じる。
光ピックアップではこの相対的な位置ずれを補償するために、情報トラックと集光スポットの位置ずれをトラッキング誤差信号として検出し、この信号によって対物レンズを搭載したアクチュエータを駆動している。これによって光スポットは信号再生の間、常に情報トラックを追随することが可能となり、連続的な情報再生を可能としている。しかしながら、スポットを動かすためにアクチュエータでレンズを動かす際に、レンズに入射している光束が平行光であれば、レンズが動いても波面収差は発生しないが、レンズに入射している光束が収束光や発散光となっていると、レンズ移動に伴って対物レンズの主光線が傾くためにコマ収差が発生する。
特に、BDのようなNAの大きいレンズではその影響は深刻である。従って入射光線は平行光であることが望ましい。なお、特許文献1では実施例6が、3波長がすべて倍率0で平行光であるが、収差を補正するための回折面はカップリングレンズにある例であり、対物レンズに入射する光束は発散光や収束光にはなっていないものの、球面収差のある波面となっていると考えられる。この場合にはレンズが動くとコマ収差の発生を招き、やはり好ましくない。また回折作用を用いる複数波長用の互換レンズ素子では、複数の波長で同時に回折効率を100%にすることができず、利用効率が低下するという問題点がある。
また特許文献2では、2種類の光路差付与構造に最も短い波長の奇数倍と偶数倍の光路差を付与することが述べられているが、本願出願人の解析では、BD、DVD、CDを再生する単レンズで入射光をすべて平行光とする場合には、そのような条件での解を見つけることができなかった。また特許文献2の実施例では、いずれも回折レンズ面を必要としており、やはり複数波長での利用効率の低下が問題となる。
特許文献3に開示されている構成では、レンズに入射する光束は3波長とも平行光であるが、実施例にはBD、DVD、CDの波長とNAに該当するものがなく、本願出願人が提起する解決すべき課題に対応した設計例が開示されていない。また特許文献3の実施例では、いずれも回折レンズ面を必要としており、やはり複数波長での利用効率の低下が問題となる。
特許文献4に開示されている構成では、BD収差を劣化させる副次的段差構造を導入するとは言え、BD波長の整数倍の光路差を与える階段構造が基本となっているため、位相構造の設計の自由度が少ない。さらに階段のステップ面をどのような非球面にするのかについても何ら指針がない。このため十分な収差低減効果が得られない懸念がある。また、輪帯位相シフト構造を非球面とするときの自動設計のための変数の設定の開示がない。さらに特許文献4では、位相シフトによって収差を低減するという観点から、補正できる収差量が本質的に小さいという問題点がある。実質的な作動距離(ワーキングディスタンス)の確保のためにはBDに対するCDのデフォーカス量は5λではまだ不足であり、30λ程度は必要であろうと考えられる。
特許文献5に開示されている構成では、基本的に回折構造を用いて光路差付与構造を構成しており、回折構造では基本的に不要な回折次数への光エネルギーの分散による光利用効率の低下が不可避である問題がある。いわゆるブレーズ格子構造を用いることにより、特定波長に対して原理的に回折効率を100%にすることは可能ではあるが、異なる波長の光で共用するためにはすべての波長でブレーズ条件を両立することはできない。
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、BD、DVD、CDのいずれの光ディスクに平行光が入射する場合にも、その収差を十分に低減する単一の対物レンズを提供することを目的とする。その際、回折効率の波長依存性による利用効率低下が見込まれる回折素子を用いることなく、輪帯位相シフト構造による位相シフトを用いて互換を図るとともに、CDの作動距離を十分に確保することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の対物レンズは以下の構成とする。まず前提としては、波長λ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の3つの波長のレーザ光をそれぞれ平行光で入射して、第1、第2、第3の光情報記録媒体のそれぞれ厚さt1、t2、t3(t1<t2<t3)の透明媒質層を通して、それぞれNA1、NA2、NA3(NA1>NA2>NA3)の開口数で集光する。
最内周の第1のレンズ領域では、光軸を中心とした複数の同心円で区分された複数の輪帯からなり、隣接する領域に対して前記波長によって異なる位相差を与え領域内で一様な位相差を与える第1、第2、第3の3つの輪帯位相シフト構造が、1つのレンズ面上に重畳されている。
前記第1のレンズ領域の外側に環状に配置される第2のレンズ領域では、光軸を中心とした複数の同心円で区分された複数の輪帯からなり、隣接する領域に対して前記波長によって異なる位相差を与え領域内で一様な位相差を与える第4の輪帯位相シフト構造が付加されている。
さらに前記第2のレンズ領域の外側に環状に配置される第3のレンズ領域では、前記厚さt1の透明媒質越しに波長λ1のレーザ光を平行光で入射して集光できるように波面収差が最適化された非球面レンズ形状とする。
このとき前記第1のレンズ領域においては、前記第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用が、前記透明媒質の厚さt1と前記透明媒質の厚さt2の中間の厚さt4(t1<t4<t2)の透明媒質越しに波長λ1のレーザ光を集光したときに、3次球面波面収差なく集光できるように最適化されたレンズ面であるようにする。ここで厚さt4の仮想的な透明基板の屈折率は、前記第1の光情報記録媒体の前記透明媒質と同じ屈折率と想定する。なお本願明細書において、このようにレンズがある厚さの基板越しに光を集光するときに、3次球面収差がゼロとなるように面形状が最適化されたレンズを想定し、その基板厚をレンズの固有パラメータの1つとして、「対応基板厚」、「最適基板厚」などと称することとする。
また前記第2のレンズ領域においては、前記第4の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用が、前記透明媒質の厚さt1と前記透明媒質の厚さt2の中間の厚さt5(t1<t5<t2)を対応基板厚とするレンズ面であるようにする。ここで厚さt4の仮想的な透明基板の屈折率は、前記第1の光情報記録媒体の前記透明媒質と同じ屈折率と想定する。
前記第1のレンズ領域の第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造は、これらの輪帯の位相シフト機能を合わせることで、それぞれ前記λ1、λ2、λ3の波長、およびt1、t2、t3の厚さの透明媒質層のいずれに対しても、波面収差をPeak to Peak値で1λ未満に低減できるような深さの段差による位相シフト構造の組み合わせを選ぶ。さらに、該輪帯位相シフト構造による位相シフトを付加する前の波面収差が、RMS波面収差値においては3次球面収差成分よりもデフォーカス成分が大きく、前記デフォーカス成分を含めて波面収差のPeak to Peak値が5λ以上であって、該波面収差の符号は、λ2とλ3の波長では等しい符号であり、これらがλ1波長の波面収差の符号とは相互に反転している輪帯位相シフト構造とする。
前記第2のレンズ領域の第4の輪帯位相シフト構造は、それぞれ前記λ1とλ2の波長、およびt1、t2の厚さの透明媒質のいずれに対しても、波面収差をPeak to Peak値で1λ未満に低減できる構造である。さらには輪帯位相シフト構造によって補償されるべき、位相シフトを付加する前の波面収差が、RMS波面収差値において3次球面収差成分よりもデフォーカス成分が大きいことを想定する。ここでRMS波面収差の3次球面収差成分とデフォーカス成分の算出の都合上、第2のレンズ領域の波面収差の関数が、仮想的に同じ関数のまま第1のレンズ領域にも続いているものとして計算することとする。このときさらに、前記デフォーカス成分を含めて波面収差のPeak to Peak値が10λ以上であり、該波面収差がλ1の波長とλ2の波長とで符号が反転しているものとする。さらには当該波面収差は、λ3の波長においては第1のレンズ領域のλ3の波長の焦点位置における収差が、Peak to Peak値で1λ未満に低減されないような輪帯位相シフト構造とする。
以上のように輪帯位相シフト構造を構成することで、前記第1、第2、第3のレンズ領域に入射する波長λ1のレーザ光は前記第1の光情報記録媒体に集光し、前記第1、第2のレンズ領域に入射する波長λ2のレーザ光は前記第2の光情報記録媒体に集光し、前記第1のレンズ領域に入射する波長λ3のレーザ光は前記第3の光情報記録媒体に集光する。
本発明によれば、BD、DVD、CDのいずれの光ディスクに対しても平行光を入射して信号記録再生ができる単レンズの対物レンズが実現でき、トラッキング動作に伴ってレンズがレーザ光軸から偏心してもコマ収差が発生しない。その際、回折構造を用いず位相シフト構造によってレンズを構成することにより、回折構造を用いた場合に生ずる利用効率の低下の問題を解消することができる。また、補正すべき波面収差にデフォーカスを導入することによりCDの作動距離を実用的な値で確保できるとともに画角特性を改善することができる。さらには、位相シフト構造による段差を多用しても、色収差の増大や、画角特性の劣化を抑えることができる。
本発明の基本的な概念を説明する図である。 段差によって生じる光路差を説明する図である。 図1のレンズに光束が入射している状態の模式図である。 輪帯位相シフト構造による波面収差の補正を説明する模式図である。 BD/DVD領域での設計フローを示す図である。 BD/DVD/CD領域での設計フローを示す図である。 段差深さに対する各波長での位相差の計算結果である。 デフォーカスを付加しない輪帯位相シフト構造で設計した補正する収差波面形状を示す図である(比較例)。 デフォーカスを付加しない輪帯位相シフト構造で設計したレンズ形状と波面収差を示す図である(比較例)。 デフォーカスを含む波面収差を補正する位相シフトレンズの考え方を説明する図である。 実施例1(設計例1)のレンズにおいて補正すべき波面収差を示す図である。 フレア光対策に位相シフトを付加した効果を示す図である。 フレア光対策の位相シフトを付加しない場合を示す図である(比較用)。 設計例1の位相シフト構造で補正したBDの波面収差を示す図である。 設計例1の位相シフト構造で補正したDVDの波面収差を示す図である。 設計例1の位相シフト構造で補正したCDの波面収差を示す図である。 幅の狭い輪帯形状の合成を説明する図である。 設計例1によるレンズ設計形状と波面収差分布を示す図である。 設計例1のレンズの軸上波面収差を干渉縞で表示した図である。 基準となる専用レンズのスポット強度分布を示す図である(比較用)。 設計例1のレンズのスポット強度分布を示す図である(制限開口あり)。 設計例1のレンズのスポット強度分布を示す図である(制限開口なし)。 実施例2(設計例2)のレンズにおいて補正すべき波面収差を示す図である。 設計例2の位相シフト構造で補正したBDの波面収差を示す図である。 設計例2の位相シフト構造で補正したDVDの波面収差を示す図である。 設計例2の位相シフト構造で補正したCDの波面収差を示す図である。 設計例2によるレンズ設計形状と波面収差分布を示す図である。 設計例2のレンズの軸上波面収差を干渉縞で表示した図である。 設計例2のレンズのスポット強度分布を示す図である(制限開口あり)。 設計例2のレンズのスポット強度分布を示す図である(制限開口なし)。 実施例1,2の対物レンズを用いた光ピックアップの実施例である。
以下、本発明を実施する形態について、まず基本的な原理を説明する。
図1は、本発明の基本的な概念を説明する図である。本発明に係る対物レンズ100は基本的にある1つの材料から構成される単レンズであって、図の左側の光が入射する面(以降第1面101と呼ぶ)と図の右側の光が出射する面(以降第2面102と呼ぶ)から構成される。図は光軸130から上の断面図を示しており、実際の対物レンズの形状は光軸130に対して回転対称な形状を仮定する。基本的に平行光を集光するレンズは、平行光を入射する側の面の曲率が大きく(曲率半径が小さく)、収束光を射出する側の面の曲率が小さい(曲率半径が大きい)ことはよく知られている。
第1面101と第2面102には、光軸130を中心とした同心円で区分された3つの領域(レンズ領域)があり、第1面101では最も内側が第1領域103、それに隣接した円環状の領域が第2領域104、その外側の最外周の領域が第3領域105である。
同様に第2面102でも3つの領域(レンズ領域)があり、内側から第1領域106、第2領域107、第3領域108である。第1面の第1領域103と第2面の第1領域106、第1面の第2領域104と第2面の第2領域107、第1面の第3領域105と第2面の第3領域108は、それぞれ基本的に同じ光束が透過する領域であると仮定し、それらの境界が光線109、110、111である。
第1面101の第1領域103には第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114を含み、これらの段差構造によりそれぞれ光路差分布112’、113’、114’で表される光路差を生じるようにしている。それぞれの輪帯位相シフト構造は、その輪帯位相シフト構造の中のいかなる段差においても、その段差の境界を挟んだ両側の領域において、基本的に同じ光路差を生ずるものと想定する。実際のレンズ面形状116(実線で示す)は、輪帯位相シフト構造を付加する前のレンズの非球面形状115(破線で示す)を光軸方向に位相シフトさせて形成し、これにより3つの輪帯位相シフト構造112,113,114の位相差112’、113’、114’が足し合わされた結果の位相シフト量を生じる。
同様にして、第1面101の第2領域104には、第4の輪帯位相シフト構造117があり、その段差構造により光路差分布117’で表される光路差を生じるようにしている。ここでも、その輪帯位相シフト構造の中のいかなる段差においても、その段差の境界を挟んだ両側の領域において、基本的に同じ光路差を生ずるものと想定する。そのような位相差を生じるように、輪帯位相シフト構造を付加する前の非球面形状115を光軸方向に位相シフトし、実際のレンズ面形状116を形成する。
第2面102では、第1、第2、第3領域106,107,108においてレンズ面形状が異なり、実際のレンズ面形状120(実線で示す)は境界で段差を有している。すなわち、第1領域106と第2領域107の間(第1領域106から拡張したレンズ面形状を破線118で示す)、及び第2領域107と第3領域108の間(第2領域107から拡張したレンズ面形状を破線119で示す)では、それぞれ最大5λ以上のサグ量の段差を有している。
一方、第1面101の輪帯位相シフト構造を付加する前のレンズ面形状115は、第2面102のレンズ面形状120と合わせて、BDの波長において特定の基板厚で3次の球面収差がゼロになるようなレンズ形状となっている。特に第1領域103,106に対する特定の基板厚t3と、第2領域104,107に対する特定の基板厚t4は、いずれもDVDの基板厚さとBDのカバー層厚の間の特定の厚さであるが、一般にt3とt4は異なっており、t3をt4より厚くする。なぜならBD,DVD,CDともに集光させるべき第1領域103,106では最も基板厚の厚いCDに集光させる必要があり、第2領域104,107ではCDに集光させる必要がないためである。
図2は、レンズ面に形成した段差により入射光線に生じる光路差を説明する図である。太い折れ線AEGDは、レンズ面内のある1つの段差の近傍を拡大した断面プロファイルである。図面左側から水平な平行光束が入射し、AEGDで表わされるレンズ面によって屈折されたとき、段差EGを境として図面上側の光束と下側の光束の間に生じる光路差は図中の式で表わされる。
ここで、レンズ面は段差近傍で曲率による面の曲がりが見えないくらいに拡大されているとし、線分AEとGDは平行であり、レンズ面であるこれらの線分は鉛直方向に対する傾き角(接線角)がθであり、同時にレンズ面に対する入射光線の入射角がθであると仮定している。
さらに、段差EGは光軸および入射光線に平行と仮定する。また式の中でnはレンズの屈折率を表わしている。このように与えられる光路差を波長λと整数mを用いてmλ+φ(ただし−λ/2<φ≦λ/2)と表わしたとき、本明細書中ではφを位相差と定義する。(φをλを単位として表した場合の方が都合のよいこともあり、この場合は(m+φ)λ(ただし−1/2<φ≦1/2)となるが、以下の説明では上記の定義とする)。伝播する光波においては段差による光路差が光のコヒーレンス長よりも十分短い光路差の範囲内であれば、段差を通り過ぎた後の光の挙動はmではなく、位相差φで左右されるものであることはよく知られている。本件における収差補正量も位相差φの量だけ補正されるのである。
さらに図2より、ある段差によって隣接する輪帯間に生じる光路差および位相差は、段差量EGと光線に対する面の傾斜角θの関数となっていることがわかる。さらに、ある段差による光路差が波長λ1、λ2、λ3でm1λ1+φ1、m2λ2+φ2、m3λ3+φ3で表わされるとき、当然ながらm1、m2、m3は相互に異なる可能性が高く、φ1とφ2とφ3も同様にさらに高い確率で異なる値となる。これによって1つの段差は異なる波長で異なる収差補正量を生じることもわかる。
図1の第1および第2の輪帯位相シフト構造112,113によって加わる光路差および位相差は、面の傾斜角θによらず同一輪帯位相シフト構造、同一領域内ではほぼ一定となるように形成する。しかし、同一領域内においても第1の輪帯位相シフト構造と第2の輪帯位相シフト構造では光路差および位相差は一般に異なっている。
また、第3領域105においては、図1の例では輪帯位相シフト構造を形成していない。これは第3領域がBD専用領域であるため、BD専用レンズ構造とすることができるからである。しかし、DVDやCDの再生時に第3領域105に入射する光線を記録膜面上で十分拡散できるようにするために、必要に応じ、BDで位相差を生じない輪帯位相シフト構造を付加することもできる。
図3は、図1のレンズ100に光束が入射している状態の模式図である。図面右側には、BD,DVD,CDの透明媒質層204,205,206を示す。
図1に示したレンズ100の第1面101の第1領域103に相当する領域には、波長785nmのCD用の入射光束203が入射する。入射光束203は、第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114によって収差が補正され、レンズ100を出射した後、CD用の厚さt3の透明媒質層206を通してレンズ100と反対側の表面にあるCD記録膜面に集光している。第2面102の第1領域106は、第1面の第1領域103に入射した光束203が出射するようにその境界半径位置が設定されている。
また、図1の第1面101の第1領域103と第2領域104の範囲に相当する領域には、波長660nmのDVD用の入射光束202が入射する。入射光束202は、第1領域103の第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114により第1領域103の収差が補正され、また第2領域104の第4の輪帯位相シフト構造117によって第2領域104の収差が補正される。そしてレンズ100を出射した後、DVD用の厚さt2の透明媒質層205を通してレンズ100と反対側の表面にあるDVD記録膜面に集光している。第2面102の第2領域107の外周側境界近傍からは、第1面101の第2領域104に入射した光束202のうち外周側境界近傍に入射した光が出射するようにその境界半径位置が設定されている。
また、図1の第1面101の第1領域103と第2領域104と第3領域105の範囲に相当する領域には、波長405nmのBD用の入射光束201が入射する。入射光束201は、第1領域103の第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114により第1領域103の収差が補正され、また第2領域104の第4の輪帯位相シフト構造117によって第2領域104の収差が補正される。第3領域105に入射した光は収差の補正はなく、第2面102の第3領域108から出射される。そしてレンズ100を出射した後、BD用の厚さt1の透明媒質層204を通してレンズ100と反対側の表面にあるBD記録膜面に集光している。
ここで、実際のBD、DVD、CDに対応して、t1はBDの2層の中間位置の表面からの深さ0.0875mm、t2はDVDの基板厚の0.6mm、t3はCDの基板厚の1.2mmとしてレンズを形成しておく。BDは2層ディスクの規格が一般的であり、2層のそれぞれは表面から0.1mmと0.075mmのカバー層厚さに相当する深さに記録膜が形成されているため、レンズの設計としてはその中間である0.0875mmに合わせておくのが一般的である。
以上の説明においては、第1領域103の第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114が、いずれも第1面101に形成されている例を示した。一般には、第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114のいずれかを第2面102に形成しても、同じ位相シフト効果を持たせることができる。ただし、2つの面に形成すると相互の位置ずれによって収差補正性能が劣化する可能性があり、1つの面に一体に形成する方がそのようなずれが生じにくく好ましい。一方、第2領域104の第4の輪帯位相シフト構造117を、第1領域103の第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造112,113,114と同じ第1面101に形成したが、これを第2面102に形成しても構わない。なぜならこれらは同じ光束に作用するわけではないので、影響はエッジ部分のずれだけであり、ずれの影響する領域の面積は大きくないからである。なお、第1から第4の輪帯位相シフト構造を第2面(出射側)102に形成すると、屈折光が大きな屈折角で出射する際、輪帯の段差の壁面によって一部の光線が遮光されことがある。よって、第1面(入射側)101に段差を設定することで、段差と入射光線を相互に平行とできるため、光線の遮蔽の影響を軽減することができ好ましい。
以上のような輪帯位相シフト構造の概念のもとで、本発明のレンズは、第1領域103に第1、第2、第3の3つの輪帯位相シフト構造112,113,114が合成され、第2領域104に少なくとも1つの第4輪帯位相シフト構造117を有し、第3領域105には輪帯位相シフト構造がない構成とした。ただし、第2領域104と第3領域105には、それぞれ第5の輪帯位相シフト構造と第6の輪帯位相シフト構造を追加した構成とすることもできる。
次に、第1領域103の3つの輪帯位相シフト構造と、第2領域104の1つの輪帯位相シフト構造で、原理的にBD、DVD、CDの3つの波長での収差補正ができることを説明する。
図4は、輪帯位相シフト構造による波面収差の補正を説明する模式図である。ここでは、補正されるべき波面収差とそれから決まる1つの輪帯位相シフト構造、およびその輪帯位相シフト構造による補正後波面収差の関係を示す。図4は円筒座標の3次元グラフになっており、半径はレンズの有効口径内の半径座標、縦軸はあるディスクを対応する波長で再生するときの波面収差を表わしている。
この波面収差をレンズ段差に対応したその波長における位相差φの位相段差で補正する場合、縦軸の収差を等しくφの位相間隔でN輪帯分を刻み、刻んだ境界に当たる半径位置で輪帯境界を決めることになる。刻まれた波面収差曲線は位相シフト量に応じて波面収差値0近傍、すなわち半径座標軸に沿って切り揃えて折り畳まれている。これが収差補正後の波面収差である。このように、段差の位相差φに輪帯数Nを乗じたφ×Nの収差補正量が、補償されるべき波面収差のPeak to Peak値にほぼ対応するように輪帯数Nを決める。
このような輪帯位相シフト構造を別の波長で作用させると、それぞれ対応する異なる位相差φにすべての波長で等しい共通の輪帯数Nを乗じた収差補償量となり、相似な波面収差が補正できる。これらを、第1、第2、第3輪帯位相シフト構造の3つの輪帯位相シフト構造として用いることで、BDとDVDとCDでいずれも収差補正を行う第1領域に適用する。また、第4輪帯位相シフト構造の1つの輪帯位相シフト構造を用いることで、BDとDVDで共に収差補正が必要でCDで収差補正の不要な第2領域に適用する。これより、BDとDVDとCDのいずれにおいても収差補正が可能となる。
1つの輪帯位相シフト構造で補償できる波面収差は、上記で述べたように、異なる波長において、それぞれ相似な波面収差形状であるが、複数の輪帯位相シフト構造のそれぞれにおいては必ずしも相似形状とする必要はない。従って複数の輪帯位相シフト構造を組み合わせる場合には、異なる収差形状を、波長によって異なる配分で補償できるので、異なる波長において補償すべき波面収差は必ずしも相似形状にする必要はない。つまり第1領域において、CDにおいてのみ、デフォーカス波面収差を多く補償するように輪帯位相シフト構造を組み合わせることによって、CDの作動距離(ワーキングディスタンス)をBD、DVDの作動距離とは独立に広げることも原理的に可能である。これに対して、輪帯位相シフト構造を1つだけ用いる第2領域では、BDとDVDの波面収差は相互に相似形状である必要がある。
以上の設計原理を、フローチャートを用いて具体的に説明する。
図5は、BD/DVD領域での設計フローを示す図である。まず第2領域(BD/DVD領域)において、第4の輪帯位相シフト構造を付加する前のベースレンズの対応基板厚tと、BDにおいてどれだけデフォーカス量δを付加するかを初期値として適当に仮定する。これらの値から、BDにおいて補償すべき波面収差形状W(ρ)が決まる。光軸に対して回転対称な波面収差関数W(ρ)は、(1)式のように表される。
Figure 2013168195
ここでAは第m項のゼルニケの波面収差係数であり、m=4はデフォーカス、m=9は3次球面収差、m=16は5次球面収差、m=25は7次球面収差の係数である。一方Z(ρ)はゼルニケ多項式であり、(2)式のように表される。
Figure 2013168195
がデフォーカス、Zが3次球面収差、Z16が5次球面収差、Z25が7次球面収差のゼルニケ多項式である。これらを用いて、図5のBDの波面収差W(ρ)を展開表示する。ABmはBDに対するゼルニケの波面収差係数である。ここでゼルニケ波面収差係数ABmは、基板厚誤差t−tと、デフォーカスδの関数となる。
次に、波面収差の形がBDとDVDで略相似形状となるように、すなわちBDとDVDでデフォーカスのゼルニケ波面収差係数と3次球面収差のゼルニケ波面収差係数の比が等しくなるように、DVDでのデフォーカス量δを決める。DVDでの基板厚ずれはt−tであると仮定すると、デフォーカス量を探索することで、その比を等しく決めることは容易である。一般に、波面収差は低次の項が支配的であるため、球面収差を含む波面収差の形状は、デフォーカスのゼルニケ波面収差係数と、3次球面収差のゼルニケ波面収差係数の比によってほぼ確定できる。この比の値を一定とするように常にデフォーカス量を選ぶとすれば、BDとDVDの波面収差の形状は基板厚誤差によらず、常に相似形状とすることができる。これによって与えられたベースレンズの対応基板厚tに対してBDとDVDの波面収差が確定する。そのときのBDとDVDの波面収差のPeak to Peak値を求めれば、その値は、経験的にそれぞれの基板厚誤差t−t、t−tに比例するので、その比の値α、αを求めておく。
次に、輪帯位相シフト構造の軸上段差量dを適当に仮定すると、BDとDVDの位相シフト量でφ、φを確定できる。それらが輪帯数N個分で、BDとDVDの輪帯を付加する前の波面収差のPeak to Peak値を補償するという連立方程式を、前記α、αを用いてたてることができる。これをNとtについて解けば、ベースレンズの対応基板厚tを決めることができ、その時のBDとDVDの波面収差をN輪帯で補償できる。
ここで、軸上段差量とは、輪帯面を構成する互いに隣接する非球面を、同じ面係数を用いて光軸までそれぞれ仮想的に延長した場合、光軸上におけるそれらの面の間隔のことを意味する。光軸から輪帯の半径位置が離れるほど、光線の屈折角が大きくなり、同じ位相シフト量を実現する段差量の変化が大きくなる。ところが、各輪帯面を、光軸上含め実際の輪帯領域より広い範囲で所定の位置で所定の光が集光できるように設計しておくと、どの半径位置においてもそれらの輪帯面間では光軸上の面間隔を反映した所定の光路差を発生させることができる。これによりすべての半径位置の段差量を、軸上段差量によって代表させて一元的に取り扱うことができる。
またここで輪帯数Nは、その主旨からすれば整数値のように理解しやすいが、実際上連立方程式の解としては必ずしも整数値でなく、実数値であり負の値もありえる。小数点以下の端数は、等しい段差で波面収差を刻んで行く場合に、補正できない残留収差となって表れる。従って小数点以下の小数値は小さい方が望ましい。値が負の場合は、与えた輪帯段差の符号に対して凹凸が反転した構造となる場合の解を意味する。
輪帯数Nがあまり大きい値だと輪帯幅が狭くなって製造が困難となり、あまり小さい値だと逆に位相差が大きいことを意味し、補正後波面のPeak to Peak値が大きいことになる。従って、求めた波面収差形状を用いて図4で説明したように収差補償を行い、得られた位相シフト後の波面収差形状からRMS波面収差量を求め、その値を確認しながら、それが許容値となるように輪帯位相シフト構造の段差を探索すればよい。以上のようにして、第2領域、すなわちBD/DVD領域の輪帯位相シフト構造を決めることができる。
次に図6は、BD/DVD/CD領域での設計フローを示す図である。第1領域(BD/DVD/CD領域)では、3波長共用領域の輪帯位相シフト構造を設計する。第1領域でも第2領域と同様に、複数の輪帯位相シフト構造が補償する波面収差が相似形状であると仮定する。そして、各波長での各輪帯位相シフト構造の位相シフト量の総和が、収差のPeak to Peak値に等しいとする連立方程式から、各輪帯位相シフト構造で分担する輪帯数を求めることができる。複数の輪帯位相シフト構造によって収差を補償し、その複数の輪帯位相シフト構造それぞれが異なる波面収差形状を補償することを許容するようにすることもできる。以下、その方法について説明する。
図6において、まず、輪帯位相シフト構造を付加する前の非球面レンズの対応基板厚tの値と、BD、DVD、CDにおけるデフォーカス量δ、δ、δの値を選定する。ここでtの値は、実際上、第2領域で求めたtより大きく、BDとDVDの基板厚の間の値とする方が好ましいが、設計上はtとは独立に選定できる。またδとδは、その差が第2領域で求めたδ、δの差と一致するように選定する必要がある。なぜなら、第2領域と第1領域においてBD、DVDとも焦点位置を一致させる必要があるからである。しかしデフォーカスの値そのものを一致させる必要はない。なぜなら、輪帯面形状の光学設計の段階で、輪帯位相シフト構造付加後の焦点位置が第1領域と第2領域で一致するように、予めベースレンズの焦点位置を第1領域と、第2領域でずらしておくことも可能であるからである。
以上の値を選定することによって、輪帯位相シフト構造で補償すべきBD、DVD、CDでの波面収差形状W(ρ)、W(ρ)、W(ρ)が確定し、それらをすでに説明したゼルニケ多項式で展開して表示することができる。
次に3種類の輪帯位相シフト構造の軸上段差量を、それぞれ仮定する。これによって、3つの輪帯位相シフト構造によるBD、DVD、CD各波長における位相シフト量φBn、φDn、φCn(n=1,2,3)をそれぞれ確定することができる。
次に、これら3つの波長における3つの位相シフト量、合計9つの位相シフト量を用いて、ゼルニケ収差展開項の各項ABm、ADm、ACm(m=4,9,16,25)ごとに、それぞれの位相シフト量が分担する収差補償量の配分と一致させる条件から、3元1次連立方程式を立てることができる。それぞれの展開項の波面収差形状は、(2)式より決まっているため、異なる波長の展開項成分で必ず相似形状となることは保証されている。従って展開成分個別には、第2領域でのPeak to Peak値に対して適用したのと同様の連立方程式を立てることができるのである。ただし、ゼルニケ係数の値そのものは必ずしもその展開成分のPeak to Peak値とは対応しないが、関数が確定している以上、Peak to Peak値に比例する係数であることは間違いなく、その比例係数も織り込んでNの変数を定義していると考えれば実際上問題ない。
このようにしてゼルニケ展開係数の次数mごとに、3元1次連立方程式を解いて、各輪帯位相シフト構造(n=1,2,3)の配分値Nnmを求めると、結局各輪帯位相シフト構造で3つの波長に対して補償できる波面収差の形状を確定することができる。
従って、求めた波面収差形状を用いて図4で説明したように収差補償を行い、得られた位相シフト後の波面収差形状からRMS波面収差量を求め、その値を確認しながら、それが許容値となるように、輪帯位相シフト構造の軸上段差量を探索すればよい。以上のようにして、第1領域、すなわち3波長共用領域の輪帯位相シフト構造を決めることができる。
以上の説明では、ベースレンズのBD波長における対応基板厚がt4やt5のとき、DVD/CD波長においても対応基板厚は同じくt4、t5であるとし、発生する球面収差はDVD/CDの基板厚t2、t3に対し、t2−t4、t3−t4やt2−t5、t3−t5の基板厚ずれの球面収差が発生すると仮定した。しかし実際の対物レンズでは波長によって屈折率が異なるため、その波長差によって対物レンズで発生する球面収差も混在する。本発明のレンズ設計においては後の実施例でも述べるように、このずれを、予めディスク基板厚の初期設定値によって以下のように補正して設計している。まず、本来のディスク基板厚を用いて位相シフト構造を設計し、レンズ面形状設計した結果、DVDやCDでは波長ずれによってレンズで発生する球面収差分が補正できずに設計結果に残留する。その球面収差が補償されるようなDVDやCD波長における、ディスク基板厚を調べる。調べた結果のディスク基板が本来のディスク基板厚より薄い場合、その基板厚差分だけ、初期の位相構造設計に用いるDVDやCDのディスク基板厚の初期設定値を厚くしておく。これによってレンズ形状を再度設計すると、波長差による球面収差の影響で実効的にDVD、CD波長での対応基板厚が同様にして薄くなり、実際のDVD、CD基板厚に一致するようにすることができる。
さらにまた以上の説明においては、それぞれの連立方程式に入力する輪帯位相シフト構造の位相差がどのような値であっても、いわゆる連立方程式の行列式が0にならない限りは基本的にそれを満足する解があることになる。しかし、図4に示した収差補正後の波面収差が、位相差φの段差のある鋸歯状の曲線波形になることを考えれば、できるだけ小さい位相シフト値で多くの輪帯を刻むようにした方が最終的なRMS波面収差が小さくなることは容易に想像できる。
そこで、連立方程式に入力する位相差の概略値を、図7を用いて決める。図7は段差深さに対する各波長での位相差の計算結果である。ここで、レンズを構成する媒質の屈折率は図中に示した通りであり、媒質への入射角は0°(垂直入射)の場合である。各波長でのカーブが鋸歯状となっているのは、±λ/2を超える光路差はそこから四捨五入した整数波長を差し引いて±λ/2以内に折り畳まれているためである。このように、それぞれの波長ではその波長の違いにより同じ段差量が異なる位相差に見える。
「3波長RMS」という名称の凡例で示しているカーブ301(白抜きの四角のプロット点)は、3つの波長の位相差値の2乗平均平方根値である。すなわちこの値が小さい段差深さの近傍で3波長共用領域の波面収差のRMS値を探索すればよい。また、「赤青2波長RMS」という名称の凡例で示しているカーブ302(白抜きの円形のプロット点)では、同様にして赤色波長と青色波長の位相差値の2乗平均平方根値である。これが小さい段差深さの近傍でBD/DVD領域の段差量を探索すればよい。
このように、本件のレンズ形状においては、3波長共用領域では3種類、BD/DVD共用領域では1種類の輪帯位相シフト構造を用いることで、BD、DVD、CDの3つの光ディスクで同時に収差補正ができる。
実際上は、さらにこれに加えて、不要なフレア光を除去するための輪帯位相シフト構造を追加する必要が生じる場合がある。3波長共用領域では、3つの波長の光をすべて利用する必要があるためにフレア光を除去する輪帯は不要である。BD/DVD領域ではCD光を必要としないため、CD光を選択的に遮光する制限開口がない場合には、この領域を透過するCD光が、必要なCD光の集光状態を劣化させる要因となる可能性がある。さらにBD専用領域では、DVD光とCD光がともに不要となるため、DVDの集光スポットをこの領域を透過する不要なDVD光が劣化させるとともに、CDの集光スポットをこの領域を透過する不要なCD光が劣化させる可能性がある。これらの影響を軽減するためには、BD/DVD領域を透過するBD光とDVD光に影響を与えることなくCD光を拡散させるような輪帯位相シフト構造(以下、第5の輪帯位相シフト構造)と、BD専用領域を透過するBD光に影響を与えることなくDVD光とCD光を拡散させるような輪帯位相シフト構造(以下、第6の輪帯位相シフト構造)を付加すればよい。
図7において、例えば0.8μm程度の深さの輪帯位相シフト構造であれば、BDの位相差を0にしたままDVDとCDの位相差を約0.5λシフトさせることが可能である。これをBD専用領域のフレア光対策の輪帯として付加すればよい。また、例えば3.9μm近傍の深さであれば、BD光とDVD光の位相差をともにほぼ0にしたまま、CD光だけ位相差を約0.5λ付加することが可能である。これをBD/DVD領域のフレア対策の輪帯として付加すればよい。
フレア対策用の輪帯は、原理的に必要な光には影響を及ぼさないため、収差補正用輪帯との相対的な位置のずれはそれほど問題とならない。従って、特にこれらの輪帯を、収差補正用輪帯と同じ面に形成する必要はない。このため、フレア対策輪帯は第2面に形成してもよい。
以上のようにして輪帯を形成するにあたって、本発明では、輪帯位相シフト構造で補正する波面収差にデフォーカスを導入する。以下、デフォーカス導入の必要性について比較例を用いながら説明する。
図8は、比較例として、デフォーカスを付加しない輪帯位相シフト構造で設計した際の補正する収差波面形状を示す。BD、DVD、CDそれぞれについて、3波長共用領域の収差波面と、BD/DVD領域の収差波面を並べて示している。それぞれの領域の収差波面形状においては焦点位置を揃えており、その焦点位置は発生する球面収差に対して最良像点を与える位置にしている。このため補正しなければならない収差量のPeak to Peak 値は1〜2λとそれほど大きくない。段差は重ね合される2種類の輪帯で、3波長共用領域では1.46μmと6.3μm、BD/DVD領域で3.88μmと5.33μmであり、位相差はBD波長では8λにも及ぶ。このような輪帯が54輪帯あり、各輪帯を構成する軸上相当のレンズ厚(軸上レンズ厚)は、ざっと見積もっても0.5mm程度内周から外周にかけて変化することになる。
ただしこの比較例においては、図5、図6で説明した設計原理と異なり、3波長共用領域もBD/DVD領域も、ともに2種類の輪帯位相シフト構造を重ね合わせた構造としている。このようにする場合は、ベースレンズの対応基板厚と2種類の輪帯の輪帯数を合わせた3つの未知数でまず3波長共用領域の輪帯仕様を決定する。そして、求めた対応基板厚を既知として、BD/DVD領域に重ねる2種類の輪帯数を未知数としてBD/DVD領域の輪帯仕様を決定している。このようにするとBD/DVD領域の設計が実際上あまり良い解が得られず、本発明においては図5、図6に示した設計方法に変更した要因でもある。
図9は、デフォーカスを付加しない輪帯位相シフト構造で設計したレンズ形状と波面収差を示す図である。波面収差は、軸上波面収差と画角のある波面収差の形状を示す。輪帯位相シフト構造は基本的に図8の軸上波面収差に対応して設計した。補正後の波面収差のPeak to Peak値を小さく抑えるために、図7において、3つの波長でいずれも位相シフト量が比較的小さくなるような深さとして、例えば1.5μmとか、6.3μmとかの深さを選んで組み合わせている。さらに補正する波面収差量に対して位相シフト量が小さくなるため、輪帯数が多くなり、深い輪帯が多くなる。その結果、ベースレンズに対する形状変化が大きくなって、図9のレンズ形状では異様な凹凸が発生している。なお、レンズ形状はBDとDVDとCDでそれぞれ設計のNAの範囲のみ表示しているが、表示している形状はいずれも共通のレンズである。ディスク基板厚はそれぞれのディスクに合わせて異ならせている。CDの作動距離(WD)は0.41mm程度を確保しているが、これを確保するためにBDのWDを約1mm確保するようにベースレンズを設計している。このため、本来のBD専用レンズに比して、ベースレンズの厚さを薄くせざるを得なくなり、もともと画角特性が十分確保できないレンズをベースとせざるを得なくなってしまっている。
これらのレンズ形状に対して、軸上波面収差は目論見通りBD、DVD、CDともそれぞれ±0.1λ程度に良好に抑えられている。しかし画角をつけた波面収差では、BD、DVD、CDとも0.03°、0.07°、0.15°といったかなり小さい画角に対しても、0.05λ、0.07λと言ったマレシャル基準並みの波面収差量が発生してしまっている。これらはベースレンズの画角特性が不十分であることに加えて、輪帯の段差が深くて輪帯数が多いことから、各輪帯の実効的な軸上レンズ厚の変化が内周から外周にかけて大きく変化してしまっていることにも起因していると考えられる。
以上の検討から、本発明では輪帯の段差量を浅くすることを検討した。しかし段差が浅くなると、位相シフトに小さい値を選べなくなることから、残留収差のPeak to Peak値が大きくならざるを得ない。このためRMS波面収差は大きくなってしまうことが予想される。
そこで本出願人は、回折レンズ方式の考え方の一部を、上記した輪帯位相シフトレンズの設計に導入することに思い至った。以下それについて説明するに当たり、まず位相シフトレンズと回折レンズとの関係について説明する。
回折レンズ方式では、位相シフト方式と類似した位相段差を、補正される収差を位相関数とする周期構造(回折レンズ構造)により決定する。位相関数は、回折レンズ構造によって発生する回折光波面の0次光に対する1次光の位相差であって、n次回折光(nは整数値)の位相差はそのn倍となる。回折レンズを含め、回折素子を透過した光波の複素振幅分布は、位相構造に周期性があれば、位相関数を位相値とする複素指数関数のべき級数で展開でき、このときn次回折光の位相が1次光のn倍となるのがそれに対応している。なぜなら、べき級数のn乗の演算は、指数関数に適用すれば位相値のn倍に等しいからである。ここで位相差そのものは波長には依存せず、実際に補正される光路差は、位相差に波長を乗じることによって求められるため波長に比例することになる。位相関数は実質的に輪帯位置のみを決める関数であり、各輪帯の位相構造そのものには無関係であって、回折効率にも無関係である。回折効率は、先のべき級数展開の各回折次数の光の複素指数関数の係数の絶対値の2乗値に対応している。この回折効率を決めるのは、各輪帯1周期分のべき級数展開する前の位相構造であり、回折素子を透過した直後に入射光に加わる付加位相分布にほかならない。これをべき級数展開する基底関数の位相が位相関数であり、それは各輪帯の位相構造とは無関係である。逆に位相シフトレンズの位相構造は、各次数に分離する前の、素子を透過した直後の光の入射光に対する位相付加分であり、強度分布に直接影響する。
回折レンズの位相関数がべき級数展開の基底関数の位相値であり、位相シフトレンズの位相シフトが補正される位相シフト量そのものであることの違いは、補正される位相量の解釈の違いにもつながっている。回折レンズでは、1つの輪帯で1次回折光に発生する位相量は段差によらず常に1波長であるが、位相シフトレンズでは、1つの輪帯で補正される位相シフト量は光路差から波長の整数倍を除いて±λ/2以内になった位相差の値と理解される。通常はこれを残留収差のPeak to Peak値に対応して0.1λ程度となるようにするため、位相シフトレンズで補正される位相シフト量は、同じ輪帯数に対して回折レンズの位相付加量の1/10程度となる。ただしこれを回折レンズとして解釈するならば、位相付加量は除去した整数波長分に相当する値であって、整数値に対応した回折次数の光が、多数の段差で積算された位相シフト量の包絡線の位相シフト効果を位相シフトレンズのベース非球面に付加した非球面により生成される0次光に対して発生すると理解される。このように位相シフトレンズは、回折光が分離するような条件においては回折レンズとして解釈することも可能である。逆に回折レンズを位相シフトレンズとして解釈することも無条件で可能である。位相シフトレンズのベース非球面は、回折レンズのベース非球面であるところの輪帯位相シフト構造の包絡面ではなく、光軸との光路差分をレンズ面全面にわたって除去した面となり、位相シフトは段差による光路差から整数波長分を除いた分であると解釈される。従って例えば位相差が波長の整数倍となる回折効率100%のブレーズ格子を付加した回折レンズは、位相シフトレンズとしての位相シフト量はゼロであって、レンズ厚を薄くしたり、波長ずれや温度ずれの影響を軽減したりするなどの効果はあるものの、基本条件ではベースレンズに対して何ら収差補正効果のないレンズということになる。
回折レンズの位相関数と位相シフトレンズの位相シフトとのこのような解釈の違いは、残留収差と光利用効率の評価の違いにも表れている。つまり、位相シフトレンズでは、連続的な収差波面を不連続な位相段差で補正するため、本質的に残留収差が避けられないが、回折レンズでは、設計上特定回折次数成分のみの連続的な位相関数の回折光で収差補正するため、見かけ上残留収差が生じない。しかしこれを位相シフトレンズの考え方で解釈するならば、素子を透過した直後の波面では他の次数成分の混在によって残留収差があるにも関わらず、焦点面上でそれらの不要な次数が排除されて残留収差が除去されていると考えることができる。排除された不要な回折次数の成分は、回折効率の低下として評価される。すなわち、位相シフトレンズの残留収差と回折レンズの回折効率の低下は実質的には等価であり、一概に回折レンズの方が収差性能が良いというのは誤解である。逆に位相シフトレンズは回折光が分離しないので回折効率の低下が生じず、光利用効率が高いというのも集光スポット周辺の積分光量としては真実であるが、収差による集光スポット中心強度の低下に表れていることになる。ただし収差が許容範囲であれば利用効率が高い方が望ましいという要求があり、最近の位相シフトレンズの優位につながっている。
回折レンズ方式のもう1つのポイントは、回折レンズに含まれる回折素子そのものにレンズ作用があることである。回折レンズではn次回折光が発生し、それを光学装置に用いる。n次回折光が発生するためにはファーフィールドにおいて他の次数の光との空間的な分離が必要であり、光軸に対して回転対称な回折レンズにおいて、その空間的な分離とは光軸上の異なる焦点位置に各次数の光が分離することを意味する。光軸上の異なる位置に回折光を分離する作用はレンズ作用にほかならない。従って回折レンズは文字通り、回折素子そのものにレンズ作用がある素子である。n次回折光が分離しない回折素子においては一般的な回折素子としての回折が起こっているとは言えず、それは通常は回折素子とは呼ばれない。この回折素子と呼ばれない位相構造を持った光学素子であっても、位相シフトは起こる。つまりレンズに限らず、位相シフト素子は回折が起こるかどうかに関わらず位相シフト素子であるが、回折が起こる位相シフト素子は特に回折素子と呼ばれているわけである。上記において位相シフトレンズは回折効率でなく残留収差として評価すると述べたが、回折光が分離しない位相シフトレンズでは回折効率での評価ができないので通常は残留収差として評価せざるを得ない。逆に回折光が分離するような傾向を持つ条件においては、位相シフトレンズでも光利用効率で評価できる場合がありえる。一方、回折光が分離する回折レンズを素子透過直後の波面で残留収差として評価することもあまり行われていないが原理的には可能なはずである。
回折素子に回折光を分離させるだけのレンズ作用があるかどうかは、位相関数のデフォーカス成分によって決まる。例えば集光スポットの焦点深度は開口数NA、波長λのとき、λ/NA^2で表されるので、それ以上のデフォーカスを与える位相関数のデフォーカスの係数は、W20>(λ/(2×NA^2))×(NA^2)=λ/2、すなわち0.5λ以上のデフォーカス波面収差があればよいことになる。ただしこれは無収差の集光スポットの場合であって、位相関数に収差がある場合はさらに大きいデフォーカスが必要である。
回折素子に回折光を十分に分離するデフォーカス成分がなくとも、実質的に次数が分離すると言える場合があり得る。それは100%の回折効率で回折する場合である。輪帯位相シフト構造が輪帯境界において整数波長の位相段差を持つ場合がこれに当たるが、これは解釈の問題であって、整数波長の位相シフトとしてその現象が生じていると理解することもまたできる。ただし、複数波長の互換の目的で用いる位相シフト素子の場合にすべての波長で同時に位相差を波長の整数倍とすることはないので、このようなケースは本発明での考察からは除外できる。
回折素子が回折光を次数ごとに空間的に分離させるかどうかを決めるもう1つの要因は、輪帯位相シフト構造の周期性である。ある位相シフトレンズを、位相関数に回折光を分離させるだけのデフォーカス成分がある回折レンズ素子として解釈できるように見える場合であっても、実際に輪帯位相シフト構造の各周期の位相構造に周期性がなければ、その位相関数を位相値にもつ複素指数関数でのべき級数展開ができなくなる。すなわち回折光が次数ごとに光軸方向に空間的に分離しなくなる。つまりこの場合にも回折を生じない輪帯位相シフト構造となるため、このような位相シフトレンズは回折レンズでないと言える。
上記では回折レンズの条件として、位相構造のレンズ作用と周期性について述べた。しかしレンズ作用はある意味で周期性の一形態でもある。一般にフーリエ解析に基づく波動、信号理論では、周期関数で表される信号の周波数スペクトルが離散的になることは常識であるが、ニアフィールドである瞳面からファーフィールドである焦点面への光波伝搬のフラウンホーファー回折がフーリエ変換で表されることが前提の波動光学においてもまた同様である。すなわち回折光がファーフィールドにおいて各次数に分離することを持ってそれを生じた位相構造に周期性がある、と解釈することができる。従って、レンズ作用を生じる位相関数のデフォーカス成分もまた位相構造の周期性の現れの1つであると理解できる。以上により、回折レンズはこのような広い意味において位相構造に周期性のある位相シフト素子であると考えることができる。
このような回折レンズに対して位相シフトレンズは、段差による位相シフトによって収差そのものを補正することを主眼としてきた。従ってデフォーカス成分を含まない収差波面そのものを補正するために、回折レンズの位相関数に相当する関数にはデフォーカス成分を本質的に含んでいない。つまり回折レンズでない位相シフトレンズは、回折レンズと異なり位相構造に周期性がなく、集光スポットは空間的に回折光が分離しないのである。このため、輪帯位相シフト構造による位相シフト後の波面収差は、不連続な位相段差を含んだRMS波面収差そのものが所定の値(マレシャル条件の0.07λ、または0.05λ、または0.03λなど)以下となるように設計されてきた。
しかし、上記に述べたように、位相シフトによって3波長互換レンズを実現しようとするとき、小さい位相シフト量とレンズの画角特性が両立しないことが明らかとなったため、今回新たに、位相シフトで補正される波面収差にデフォーカスを導入することにした。これによって、輪帯位相シフト構造の段差を浅くすることによって発生する大きな位相シフト、およびそれに起因する大きな残留波面収差を実効的に低減することを狙う。つまり残留収差の大きい光の成分を、擬似的な回折効果により空間的に分離することを狙うのである。このため、デフォーカスを導入する位相シフトレンズの直接的な評価指標は、波面収差ではなくスポット形状となる。もちろん間接的には波面収差も評価指標とできるが、それはこれまでのようなトータルRMS波面収差ではなく、波面収差をゼルニケ展開により展開した有限次数項(例えば一般的な37項まで)で近似した成分のみの合成値を用いることである。
このような考えの下に設計する位相シフトレンズは、それでは回折レンズなのではないか、という疑問が当然生じる。上記で説明したように、回折光が複数次数に分離するのが回折レンズであり、それを前提とした位相関数による光学設計を経たレンズは当然回折レンズである。しかし本発明では、回折レンズの位相関数が内包しない、各輪帯の位相構造そのものを設計するものである。複数の輪帯位相シフト構造を別々に設計して合成するなどの過程において、輪帯位相シフト構造全体としての空間的な周期性が希薄となり、エネルギーとして収差の大きい成分が、光学系で必要とされる集光スポットから偏在はするとしても、回折レンズのように空間的に各次数が離散的に存在するような強度分布とはなり得ない。従って補正する収差波面にデフォーカスが含まれるからと言って、複数輪帯の合成によって設計された位相シフトレンズは、回折レンズの条件として必要な周期性は持ち得ない。従って、あくまで本発明のレンズは、補正する収差にデフォーカス成分のある位相シフトレンズなのである。
図10は、本発明の基本的な概念であるデフォーカスを含む波面収差を補正する位相シフトレンズの考え方を説明する図である。(a)は輪帯位相シフト構造を付加する前、(b)は輪帯位相シフト構造を付加した後で、それぞれ上段はレンズ形状とそこに入射する光線の概念図を、下段は波面収差(光路差)の瞳面内分布を示す。
(a)の輪帯位相シフト構造を付加する前では、BDの光束L1、DVDの光束L2、CDの光束L3が、基本的には同じ焦点位置P0(ここでは色収差は無視する)に集光している。これに対して、焦点近傍のP1、P2、P3で示した位置にBD、DVD、CDそれぞれの参照球面の曲率中心をおいたとき、参照波面に対する波面収差が下段のW1、W2、W3のように発生したとする。ここでは各々実際の焦点位置(元の焦点位置)と異なる基準焦点位置に対する波面収差であるため、それぞれのデフォーカスの波面収差が加わった波面収差が発生している。
これに対し(b)では、輪帯位相シフト構造を付加することで(a)で発生した波面収差W1、W2、W3を補正する。すなわち、輪帯段差による位相シフトによって波面収差が折り畳まれて、W1’,W2’,W3’で示すように、0(横軸に相当)の近傍に近づいている。このような波面収差分布となった場合、(a)で元々基準とする焦点位置がP1、P2、P3のように元の焦点位置P0からずれた位置であったことを考えれば、(b)で示すように、それぞれの位置P1、P2、P3に実際に光が集光されていることに他ならない。つまり位相シフトによってレンズ作用を生じさせていることになる。この残留収差が十分小さければそれが理想であるが、大きくても集光スポット形状が許容範囲の劣化に留まっていれば、収差の大きい成分が必要な集光スポットから空間的に実質的に分離される形となっていることに相当する。
以上のようにして、デフォーカス成分を含んだ輪帯位相シフト構造の設計を行ったのち、実際の輪帯レンズ面形状を設計する。この場合のレンズ面は、主にBD波長において、対応基板厚t4やt5に対し3次球面収差なく集光できるように保ちつつ、レンズ厚さを位相構造設計の各輪帯面の軸上段差量だけ変化させて設計する。このとき、各輪帯面により第2面も含めて決まる各輪帯領域の近軸焦点距離が輪帯ごとに変化することになる。このため各輪帯の半径位置は、光軸に対して所定の集光角度において集光できるように補正する必要がある。
さらに各輪帯面の近軸焦点位置が輪帯ごとに変化してしまうために、レンズ全体での焦点距離が不明確となる。そこで本件の設計においては、設計したレンズ面形状に斜めに角度θを持って入射する光束が光軸に対して高さhを持って集光される場合、その集光焦点位置を、f=h/tanθによって計算して確定させる。対物レンズの開口数(NA)も、この焦点距離を用いて有効径に対して確定させる。従ってNAの値も、位相構造設計の初期設計値に対して最終的な値が目標の値になるように必要に応じてフィードバックするようにした。
以下、図4、図5、図6、図10で説明した本発明の原理に基づく、本発明の実施例についてさらに具体的に説明する。
まず、本発明の対物レンズの第1の実施例(設計例1)について説明する。
表1は、設計例1における輪帯位相シフト構造の設計結果を示す。設計例1では、全ての輪帯位相シフト構造において、補償する波面収差形状を相似とするようにしている。
(A)は輪帯位相シフト構造を設計するための基本パラメータをまとめた表である。すでに述べたように、輪帯位相シフト構造の設計にあたって、波長ずれにより対物レンズによって発生する球面収差を補正するように、位相構造設計のための基板厚設定値をDVDとCDでは実際の値から予めずらしておく。ここではDVDが0.87mm、CDが1.98mmのときに、対物レンズにおける波長ずれの影響を含めた設計後の球面収差が補償される。また、NAの値はBDが0.85、DVDが0.65、CDが0.53を目標値として、それぞれ0.85、0.6373、0.5014の初期値において設計した。
これらの前提条件において、まず(C)のBD/DVD領域から説明する。(C1)に示す第4輪帯の深さ0.98μmにおいて、ベースレンズの対応基板厚と第4輪帯の輪帯数を、図5に示したBD/DVD領域の連立方程式を解いて決めた。このとき、波面収差のゼルニケ展開項のデフォーカス項A4の3次球面収差項A9に対する比は、適当な初期値に対する試算の結果を用いて−50に設定した。このような条件における連立方程式の解は、対応基板厚0.318mm、輪帯数が24.3であった。このようにベースレンズの対応基板厚は、BDの0.0875mmとDVDの0.6mmの間の値となった。このときBD、DVD、CDの各波長におけるデフォーカス量、収差量、位相差は、(C2)に示す結果となった。BDのデフォーカス量−0.055mmは、輪帯位相シフト構造によってベースレンズの焦点距離が0.055mm短くなることに対応する。このときのデフォーカス量は、DVDで0.106mm、CDで0.272mmであった。第4輪帯の位相差は、BDで0.27λ、DVDで−0.25λ、CDで−0.37λとなり、位相シフトレンズとしてはいずれも大きい値であるが、最終的なレンズ設計結果で確認することにしてこれを採用した。
次に(B)の3波長共用領域を説明する。本設計例においては(B1)に示すように、対応基板厚をBD/DVD領域と同じ0.318mmに設定した。さらに(B2)に示すように、デフォーカス量についてもBD/DVD領域と同じ値に設定した。これによって補正すべき波面収差形状は確定した。このときBDの収差は23.3λ、DVDは−21.6λ、CDは−39.1λとなった。次に第1、第2、第3の輪帯の深さを0から3μmの範囲で変化させて、いろいろな深さの組み合わせに対し、図6に示した3波長共用領域の連立方程式を解いて位相シフト構造を決め、そのときの補正後波面収差量がなるべく小さくなる深さの組み合わせを探した。その結果、第1、第2、第3の輪帯の深さは、それぞれ0.09μm、1.495μm、2.375μmの解を選定した。BD、DVD、CDそれぞれの輪帯ごとの位相差は、やはり最大で0.3λを超える値となっている。これらの輪帯深さは、図7に示したデフォーカス成分のない比較例の6μmにもおよぶ深さに対して非常に浅い値となっている。このため付加される光路差の整数波長成分も1波長から2波長と、8波長にも及ぶ比較例に対して非常に少ない。このため輪帯面を形成するレンズ面の軸上レンズ厚の変化が少なくなり、画角特性を改善することができる。
以上のようにして設計したBD/DVD領域と3波長共用領域の輪帯位相シフト構造を統合し、表1の(D)に示すような輪帯位相シフト構造を設計した。輪帯数は3波長共用領域で126、BD/DVD領域で25、BD専用領域で1、であり、合計152であった。
図11は、表1の位相構造設計結果をもとに、実施例1(設計例1)のレンズにおいて補正すべき波面収差の計算結果を示す図である。計算は比較例の図8と同様に行い、左側が3波長共用領域、右側がその外側のBD/DVD領域である。ここでは単に色収差として生じるBDとCDの焦点位置のずれに、輪帯位相シフト構造によって約0.32mmの焦点位置のずれが加わるようになっている。これによって、BDとDVD/CDの相対的なデフォーカス量が、図8と比較して大きくなっていることがわかる。これは、図8において3波長共用領域とBD/DVD領域の境界近傍で波面収差が極値を持っていたのに対して、図11での極値はBD/DVD領域の外にはずれ、BD/DVD領域の波面傾斜が3波長共用領域と同じ符号となっていることからも明らかである。3波長共用領域での波面収差量は、BDで13λ以上、DVDで−9λ、CDで−17λにも及んでいる。従って、BDに対するCDのデフォーカスがざっと30λに達していることがわかる。BD/DVD領域まで含めれば、BDで約23λ、DVDで−21λ、CDで約―39λとなっている。このような大きな収差量はこれまで位相シフトでの補正は考えられなかった。さらにグラフ内にはRMS波面収差値を示している。3波長共用領域およびBD/DVD領域まで含めた領域とも、3次球面収差のRMS波面収差値(SA3)よりも、デフォーカス成分のRMS波面収差値(defocus)の方が大きくなっている。ここで、補正する波面収差にデフォーカスを含めていない図8の比較例と改めて比較する。図8においては、BD/DVD領域を含めた領域において、デフォーカス成分のRMS波面収差値(defocus)がほとんどゼロに近く、3次球面収差成分のRMS波面収差値(SA3)がデフォーカス成分に対して非常に大きくなっている。これが従来の位相シフトレンズの基本的な設計であり、図11に示す本実施例はこれと大きく異なる点である。
さらに本実施例では、このような位相シフトを加えるに際して、BD/DVD領域にCD光のフレア光を軽減するための位相構造を付加している。これは前記した第5の輪帯位相シフト構造に該当する。位相シフトはBDとDVDでほぼ不感であり、CDにのみ位相シフト効果のあるような深さの段差を、上記で設計した輪帯位相シフト構造に対して交互に加える。具体的には図7において、例えば3.88μm近傍の深さがそのような位相シフトを与える深さである。
図12は、フレア光対策に位相シフトを付加した効果を示す図である。また図13は、比較用としてフレア光対策の位相シフトを付加しない場合を示す図である。各図において上段がBD、中段がDVD、下段がCDであり、左列が整数波長分を含む位相シフト、中央列が整数波長分を含まない位相シフトである。また右列は位相シフト後の波面収差であり、図11の右列の収差曲線から、図12および図13の中央列の位相シフト分を差し引いて収差補償を行った結果である。それぞれ横軸がBD/DVD領域の規格化半径であり、縦軸が位相シフト量または波面収差である。
この場合、BDでは5.01λ、DVDでは2.97λ、CDでは2.48λの位相シフトが生じる。図12では、整数波長分の位相シフトを含む波面収差がBD,DVD,CDいずれにおいても凹凸を繰り返している。これが上記で述べたBD,DVDで不感であり、CDで位相シフトを生じる位相段差である。図13ではこのような位相段差は表れていない。中央列では整数波長分を除いて表示しているため、図12でもこの位相シフトがBDとDVDではほとんど表れず、ほとんど本来の収差補償の位相シフトだけによる位相段差となり、図13とほぼ同じ曲線となる。ところがCDについては、図12の中央列においてほぼ0.5λの位相差が加わるため、図13とは全体の位相シフト曲線の傾きがほぼ反転する。図11の波面収差を補償するのは実質的にこの中央列のカーブとなるため、図11のCDの波面収差がBD/DVD領域で右下がりのカーブであることから、それと反対の右上がりの位相シフトを差し引くことによって波面収差は増大することになる。これにより収差補償後の波面収差は、CDで±0.5λを振り切る区間の数が、図13の略3区間に対して図12では14区間に増えている。これによって波面の傾きが大きくなり、必要な集光スポットに対して光が拡散され、影響が軽減される。
図14〜16は、図11の波面収差に対し、表1に示す設計結果を適用して位相シフト構造により補正した結果を示す。図14はBDの波面収差、図15はDVDの波面収差、図16はCDの波面収差であり、ともに横軸は規格化瞳半径であり、それぞれBD、DVD、CDの有効範囲のみを表示している。BDの波面収差を基準に、各輪帯位相シフト構造が補償を分担する波面収差形状を位相シフトで刻んで波面収差を決定している。このためBDでは全体に波面収差のエンベロープ変動が少ないが、DVDとCDではややエンベロープが変動している。その理由は以下と推定している。すなわち本実施例においては、BD/DVD領域のみならず、3波長共用領域においても重ね合わせるすべての輪帯位相シフト構造において、補償する波面収差形状を相似とするようにした。その際、相似形とするために考慮した波面収差成分が、デフォーカス成分と3次球面収差成分のみであったため、高次球面収差成分の比が必ずしも一致せず、補償残留成分として表れたものと見られる。これらは第2の実施例において説明するように、各展開項成分ごとに各輪帯位相シフト構造の補償配分を決定する方法により改善できる。
補償後の波面収差量は、図14のBDでは−0.17λから0.13λの範囲の0.3λp−p(p−pはPeak to Peakを意味する)、図15のDVDでは−0.21λから0.12λの0.33λp−p、図16のCDでは−0.38λから0.22λの0.6λp−pの範囲に収差が抑えられている。各図においてその波形の周期性を確認すると、図14においては規格化半径0の中心位置から2〜3輪帯ごとに波形が波打っているが、その本数や配置などから必ずしも周期性がない。BD/DVD領域においては輪帯位相シフト構造が第4の輪帯だけであるため、周期性があるように見受けられる。しかしBD/DVD領域を透過して光ディスク光学系で使用される光は、3波長共用領域とBD/DVD領域を用いるDVD光と、3波長共用領域とBD/DVD領域とBD専用領域を用いるBD光であるため、使用領域全体として周期性がないのは言うまでもない。従って光軸方向に集光スポットが次数ごとに分離することはなく、回折レンズではなく位相シフトレンズとなると考えられる。
なお、上記の輪帯位相シフト構造において3波長共用領域の輪帯位置を決めるにあたっては、3つの輪帯位相シフト構造で別々に輪帯位置を決めたあとで、1面に合成したときにあまり幅の狭い輪帯が生じないようにする。そのため、第1、第2、第3のレンズ領域の境界部に隣接しない輪帯領域において、入射瞳面に投影した幅の狭い輪帯は、その両側の輪帯境界における位相シフト値を重みとして加重平均した半径位置に、両側の位相シフトを合成した位相シフト量を付加するように調整した。
図17は、幅の狭い輪帯形状の合成を説明する図である。2つの輪帯位相シフト構造による位相シフト形状を401、402とするとき、領域405においてそれら2つの位相シフトの境界が近接している。ここで図の左右方向がレンズの半径方向の空間座標、上下方向が輪帯による位相シフト量を示す。これらの近接する輪帯の位相シフトをそのまま合成すると、符号403のように近接領域405において幅の狭い輪帯406を生じることになる。輪帯406の幅が実際に加工可能な寸法以下の場合には、この近接する輪帯境界を404のように1つの段差407として合成する必要がある。ここで近接する2つの位相シフト量では、輪帯位相シフト構造402の方が輪帯位相シフト構造401より大きいため、2つの輪帯を合成した新たな輪帯境界407はもとの402の輪帯境界に近づけている。具体的には、近接する2つの輪帯境界半径を、2つの位相シフト量の絶対値の比によって内分する半径位置を新たな輪帯境界とする。位相シフトの大きい輪帯位相シフト構造では当然ながら補償する収差量も大きいため、輪帯境界位置が理想的な状態からずれると、位相シフトの小さい輪帯境界がずれるときよりも残留する収差量が大きくなる。従って位相シフトの大きい輪帯境界は、位相シフトの小さい輪帯境界よりもずれが小さくなるように配置するのが望ましい。以上の方法により、輪帯幅は最少でも3μm以上となるようにした。
次に、表1、図11、図14〜16に示した位相構造を持つレンズ面形状の光学設計について説明する。光学設計ではまずBD専用領域に相当するレンズ面を有する一様な輪帯のないBD専用対物レンズを、画角特性の許す限り作動距離を広げて光学設計ソフトを用いて最適設計する。次にこのレンズの第2面から焦点までの距離(バックフォーカス)と第1面と第2面の面間隔を固定したまま、BD、DVDの波面収差が図11のBD、DVDの波面収差となるように第1面と第2面を最適設計する。次に第2面を固定して、位相構造設計したBD/DVD領域の各輪帯の位相シフト量となるように軸上レンズ厚を変えて、第1面のBD/DVD領域のすべての輪帯面で同じ図11の波面収差となるように最適設計する。
次に、もとのBD専用領域のレンズの、第2面から焦点までの距離(バックフォーカス)と第1面と第2面の面間隔を固定したまま、BD、DVD、CDの波面収差が図11の各波面収差となるように第1面の面形状を最適設計する。このとき、第2面はBD/DVD領域の面を用いる。次に位相構造設計した3波長共用領域の各輪帯の位相シフト量となるように軸上レンズ厚を変えて、第1面の3波長共用領域のすべての輪帯面で同じ図11の波面収差が得られるように最適設計する。得られた各輪帯の面形状から計算される近軸焦点距離に対して、第2面を出射する屈折光線が所定の傾きで集光されるように各輪帯境界での輪帯境界位置を微調整する。
次にその半径位置で位相シフトに対応した非球面形状を、曲率半径と円錐定数、または2次非球面係数と4次非球面係数で最小2乗フィッティングする。これらのパラメータを光学設計ソフトに初期値として入力し、図14〜16の波面収差を目標としてさらに最適設計する。このようにすると、第1面が位相構造設計した輪帯数の輪帯位相シフト面、第2面が3波長共用領域とBD/DVD領域の互換領域と、BD専用領域で異なる非球面形状となる。
表2は、実施例1(設計例1)におけるレンズ基本仕様値(基本パラメータ)を示す。基本仕様値としては、波長、レンズやディスク面の面間隔、レンズやディスクの屈折率、および有効光束径を含む。ここでBDの有効光束径はBD専用領域の外径を示し、DVDの有効光束径はBD/DVD共用領域の外径を示し、CDの有効光束径は3波長共用領域の外径を示す。
Figure 2013168195
表3A,表3Bは、レンズ第1面の輪帯位相シフト構造を示す。輪帯数は152本あり、第0から第104輪帯までが3波長共用領域、第105から第150輪帯までがBD/DVD共用領域、第151輪帯がBD専用領域である。ここで軸上サグ量は、(3)式で表される非球面式のA0である。
Figure 2013168195
軸上サグ量は第0輪帯では0である。第0輪帯から第104輪帯までは曲率半径(曲率cの逆数)と円錐定数κだけで表されている。一方、第105輪帯から第150輪帯までは非球面式の曲率cは0であり、A2とA4のみで表されている。このように少ない項数で表されるのは、輪帯の幅が狭く、少ない項数でも必要な形状が十分記述できるためである。表内の軸上サグ量、開口半径、曲率半径の単位はmmである。
Figure 2013168195
Figure 2013168195
Figure 2013168195
表4は、レンズ第2面の非球面式のA4までの係数である。パラメータは表3A,3Bと同様のものである。表内の軸上サグ量、開口半径、曲率半径の単位はmmである。第2面では、3波長共用領域とBD/DVD領域は同じ非球面である第0輪帯(輪帯番号0)の形状をしており、BD専用領域は第1輪帯(輪帯番号1)の面形状をしている。
Figure 2013168195
表5は、レンズ第1面の第0〜150輪帯と第151輪帯、およびレンズ第2面の第0輪帯と第1輪帯についてのA6以降の非球面係数である。第1面の第151輪帯はBD専用領域であり、領域が広いため、第2面の第1、第2輪帯とともに多くの非球面係数を必要とする。
Figure 2013168195
図18は、設計例1のレンズ設計形状と、軸上波面収差分布と像高の波面収差分布を、BD、DVD、CDそれぞれについて光線追跡により解析した結果を示す。レンズ形状はBD、DVD、CDともBD専用領域まで含めて表示しているが、DVDとCDの有効径は表示している範囲より狭い領域となる。つまりDVDとCDについては不要なフレア光線を含めて表示している。さらに図中には、有効径、焦点距離(f)、開口数(NA)、作動距離(WD)の値を示す。
ここで本実施例の輪帯位相シフトレンズでは、以下のようにして焦点距離を決めている。輪帯位相シフトレンズでは、位相シフトさせる軸上段差量だけ局所的にレンズ厚を変えて、所定の焦点位置での波面収差が所定の形状となるように各輪帯面の非球面形状を決定する。このときレンズ厚を変化させるのに伴い、幾何光学的な焦点距離が各輪帯で厳密には異なる値となる。従来の輪帯位相シフトレンズでは波面収差にデフォーカスを含めていなかったため、輪帯位相シフト構造で補償されるべき波面収差が小さく、輪帯数は本実施例のレンズに比べて少なく、また輪帯幅も広かった。そのため、実効的な焦点距離は中心の第0輪帯の幾何光学的な焦点距離で代用しても支障がなかった。しかし本実施例の輪帯位相シフトレンズでは輪帯数が多く、各輪帯の幾何光学的な焦点距離の変化は数十μmにも及ぶ。そこで対物レンズの実効的な焦点距離を、設計形状に対応させて以下のように定量化している。すなわち、わずかに画角をつけた入射光の波動光学的集光スポット中心強度が結像する像高が、焦点距離に画角θのtanθを乗じた値となっていると考えられるので、その像高値をtanθで除して焦点距離としている。図18の設計例では、BD,DVD,CDのそれぞれの焦点距離は、1.788mm、1.972mm、2.080mmである。
BD,DVD,CDの各焦点距離に応じて各有効径に対しNA値を決めており、図18ではBDは0.850、DVDは0.635、CDでは0.519となっている。有効径はBDで3.04mmであり、図9(比較例)の3.74mmに対して小さくなっている。一般に、3.74mmφはハーフハイトと呼ばれる厚さのドライブ装置用であり、3mmφはスリムタイプと呼ばれる薄いドライブ装置用である。作動距離(WD)はBDで0.626mm、DVDで0.498mm、CDで0.244mmを確保している。有効径が図9の比較例と異なるので、WDの値で単純に比較することが難しいが、BD,DVD,CDのそれぞれの焦点距離は図18では1.788mm、1.972mm、2.080mmである。これらを図9の2.2mm、2.259mm、2.44mmと比較すると、CDの焦点距離とBDの焦点距離の比は1.11倍から1.16倍に広がっていることから、輪帯位相シフト構造による焦点距離拡大効果が表れていることがわかる。またDVDとCDのNAは0.635、0.519であり、図9の0.611、0.466より大きくなっている。これはDVDやCDの記録にも対応させることを意図した設計であるためである。
光線図においては各波長の有効領域内の光線であっても、見かけ上、必ずしもディスクの記録膜面に集光していないように見えている。しかしこれは光線の幾何光学的な光路であって、実際の集光スポットの強度分布を反映するものではない。実際には波面収差および波動光学的な集光スポット分布で評価されるべきものである。
波面収差も同様にBDの有効範囲を表示している。BDの軸上波面収差は、3波長共用領域とBD/DVD領域で0.3λp−p程度の振幅で細かく変動している。これは図14の位相構造設計に対応し、ほぼ目標通りの波面収差を生じる面形状が設計できている。BDのBD専用領域の波面は当然ながら平らになっており、これも図14と対応している。DVDの軸上波面収差は、3波長共用領域とBD/DVD領域では約0.3λp−pの変動があり、BD専用領域で急激に±0.5λを超える変動が始まっている。図では必ずしも±0.5λに達していないように見えるが、これはサンプリング点数の設定によるもので、これもほぼ図15と対応している。CDの軸上波面収差は、3波長共用領域では0.4λp−p程度の振幅で変動しているが、BD/DVD領域とBD専用領域では急激に±0.5λを超える変動が始まっており、これも図16とほぼ対応している。これらの収差は図9の比較例と比べると格段に大きいが、その影響は以降のスポット分布で評価する。
次に図18の画角特性(像高特性)について述べる。画角は波面収差の表示が有効範囲で±0.5λの範囲に収まる必要性から、BDでは0.1°、DVDでは0.2°、CDでは0.3°の設定となっている。これらの値は図9の比較例の0.03°、0.07°、0.15°に対してすでに2倍から3倍に広がっており、後で述べるように実効的な収差量も十分実用的な値となっている。
図18に示した波面収差分布は、有効径内の収差量を数値的に把握するのに適しているが、有効径外のフレア光の影響などは確認しにくい。そこで図19には、軸上波面収差の干渉縞画像を合成して示した。左からBD、DVD、CDの場合であり、いずれもBD有効径の範囲で示している。また収差量の可視化のために、いずれの画像にも画面横軸方向に10λのチルト波面収差を付加している。これにより、まっすぐではっきりした10本の縦縞が等間隔に並んでいるのが理想状態であり、そこからのずれが収差量を表している。フレア光は干渉縞が細かいほど影響が少なく、粗い部分が問題となる可能性のある箇所である。ただし、干渉縞が画素のピッチに近くなったことによって発生したモアレ縞も部分的に混在しているので注意が必要である(対称性から考えにくい局所的な円形の薄い縞はモアレと考えられる)。これによりBD、DVDでは有効径内ではほぼ良好な干渉縞が現れており、CDでは有効径内でやや干渉縞の鮮明度が低下していることから効率の低下を示している。DVDとCDの外周部のフレア光領域は基本的には十分細かい干渉縞となっているが、CDのBD/DVD領域において薄い干渉縞があり、これがモアレ縞かどうかは判断に迷うところである。またCDのBD専用領域の最外周において少し干渉縞が粗く鮮明となっているところがあり、この領域にはBDに不感な深さのフレア対策輪帯を付加してもよい。
次に表6には、波面収差のゼルニケ展開解析結果を示す。ここでは図18の光線追跡結果から、BD、DVD、CDそれぞれについて軸上の波面収差と画角に対する波面収差を、ゼルニケ展開項のRMS波面収差成分値とそれらを合成した波面収差値とで示している。
表6の(A)は軸上波面収差であり、回転対称な項番号9、16、25、36、37の球面収差とFit errorおよびそれらの合成値を示している。Totalはフィッティング前のRMS波面収差であり、5〜37Totalは第5項から第37項までのゼルニケ係数の合成値を意味しているが、画角がゼロの軸上の波面収差の場合には、中心対称な5つの球面収差のみの合成値である。これによれば、フィッティング前のTotal波面収差の値は、BDで0.058λrms、DVDで0.073λrms、CDで0.118λrmsと大きいが、本実施例の輪帯位相シフタを用いた対物レンズでは、これは光利用効率の指標と解釈することができる。例えばマレシャルの評価基準とされる0.07λrmsは、集光スポットの中心強度が無収差に対して80%に低下する場合の波面収差量として知られている。このような中心強度はストレール強度と呼ばれ、RMS波面収差値Wrmsに対して1−(2πWrms/λ)で近似できる。ストレール強度はスポットの中心強度の比率であるが、もしスポット径が無収差と変化なければ、ほぼ光利用効率と等価であると解釈することができる。本実施例において上記よりストレール強度を計算すると、BDは87%、DVDは79%、CDは45%と推定される。一方、5〜37Totalの波面収差値は、本実施例においては、実際に集光される光スポットの品質を反映した通常の波面収差としての評価指標となる。これらはBD、DVD、CDでそれぞれ0.009λrms、0.021λrms、0.003λrmsといずれも十分に小さい。これらについては後で説明するスポット分布の評価によって検証する。
これらのトータルRMS波面収差の解釈は、図18に示した残留収差の変動成分が通常の波面収差ではフィッティングが不可能なくらい激しく変動しており、逆に言えば通常の光学系ではこれらの成分が焦点面上で拡散して実用上影響しなくなることに対応する。この激しく変動する成分はFit errorに反映されている。従来の位相シフトレンズではこの成分も評価指標に勘案されていたが、補正収差にデフォーカス成分を導入した本実施例においてはそれが光軸上に離れた位置に偏在すると推定され、本実施例では除外して評価してよいものと考えられる。
また表6の(B)は画角をつけた光の波面収差展開結果である。斜め入射光のため、軸上の評価結果になかった回転対称でない収差成分が付加されており、表示されている項数が増えている。これについても軸上収差と同様に5〜37Totalの収差量は画角0.1°のBDで0.020λrms、画角0.2°のDVDで0.030λrms、画角0.3°のCDで0.026λrmsとなっている。いずれも実用上期待される波面収差量としてはやや大きいが、比較例よりは大きく改善している。収差成分としては第8項の3次コマ収差(Coma3)がいずれも支配的であり、BDで0.015λrms、DVDで0.022λrms、CDで0.023λrmsである。3次コマ収差は画角に比例することから0.3°換算すると、BDで0.045λrms、DVDで0.033λrms、CDで0.023λrmsであり、コマ収差としてはBDが大きい。
Figure 2013168195
以下、スポット強度分布の評価結果について説明する。図20は比較の基準となる専用レンズのスポット強度分布の計算結果である。BDは波長が0.405μm、NAが0.85、DVDは波長が0.66μm、NAが0.65、CDは波長が0.785μm、NAが0.53であり、本実施例で想定している記録用のNA値となっている。また入射光強度は瞳面全体にわたって平らであると仮定している。上段はスポット形状の鳥瞰図であり、表示範囲はBDで2μm□、DVDで4μm□、CDで6μm□である。図中、WEXは中心強度に対して強度が1/e^2になるスポット径をμm単位で示している。SDXは中心強度に対するサイドローブの強度の比である。S.I.はストレール強度であり、無収差中心強度で規格化した中心強度であり、専用レンズでは理想状態であるためこれはいずれも1になる。下段は光軸方向のスポット中心強度値を示しており、フレア光が光軸方向にずれた焦点位置に集光していればピークが表れるものと考えられる。ここでは理想的なスポットであるため当然いずれも不要な強度ピークは現れていない。
図21は、設計例1によるレンズのスポット強度分布の計算結果であり、焦点面内の集光スポット分布と光軸方向の中心強度分布を示す。ここでは、DVD、CDとも所定の有効光束径以外の領域を遮光する制限開口が付加されている場合とする。すなわち、有効口径範囲以外の不要な光が理想的に遮断される場合を想定している。BDでは図20(比較例)の専用レンズとほぼ同等の計算結果となり良好であるが、DVDについてはスポット径WEXが専用レンズの0.84μmから0.86μmに大きくなっている。しかしサイドローブ比SDXは良好であるため、これはNAの値が理想状態の0.65から、図18で示すように0.635に小さくなってしまっていることに起因するものと推定される。実際上、このNA比は0.977であり、上記スポット径比の逆数と一致していることからもそれが裏付けられる。つまりこれはDVDのNAの初期設定値にフィードバックすることにより補償でき、本質的な問題ではないことを意味している。CDのスポット径WEXも同様にして、1.22μmから1.23μmに大きくなっているが、これもNAが0.53の理想値から0.52に小さくなっていることによると考えられる。従って以上より、原理的にほぼ意図した設計結果が得られていることが確認できた。ストレール強度S.I.はBDで0.87、DVDで0.81、CDで0.56であり、それぞれのNAの専用レンズに比較した光利用効率がほぼこれらの値になることが期待できる。
しかし図21に説明した計算結果は、DVD、CDにおいて理想的な制限開口によりフレア光が除去された場合に相当している。そのような有効径を可変とする制限開口は、液晶素子などにより原理的に可能ではあるが、実際の光ピックアップにおいてはコストの増大を招き好ましくない。そこで図22には、制限開口がなく、DVDでもCDでも光がBDの有効径全体に入射している場合のスポット分布を示す。これを制限開口を有する図21と比較すると、DVDではスポット径、光軸上中心強度分布ともほとんど変化がない。すなわちBD専用領域のDVDフレア光はほとんど影響していないことがわかる。ところがCDの集光スポット径WEXは図21と比較すると、1.23μmから1.17μmに逆に小さくなっている。これは本実施例でフレア対策をしていないBD専用領域のCD光によるものと思われるが、サイドローブ強度比SDXは良好であり、光軸方向強度分布のフレア光も小さく許容範囲と考えられる。
次に、本発明の対物レンズの第2の実施例(設計例2)について説明する。
表7は、設計例2における輪帯位相シフト構造の設計結果を示す。設計例2では、各輪帯位相シフト構造において、補償する波面収差形状が相似でない構成としている。
(A)は輪帯位相シフト構造を設計するための基本パラメータをまとめた表である。波長ずれにより対物レンズによって発生する球面収差を補正するように、位相構造設計のための基板厚設定値をDVDとCDでは実際の値から予めずらしておく。ここではDVDが0.77mm、CDが1.8mmのときに、対物レンズにおける波長ずれの影響を含めた設計後の球面収差が補償される。また、NAの値はBDが0.85、DVDが0.65、CDが0.53を目標値として、それぞれ0.85、0.64、0.51の初期値において設計した。
これらの前提条件において、まず(C)のBD/DVD領域から説明する。(C1)に示す第4輪帯の深さ0.976μmにおいて、ベースレンズの対応基板厚と第4輪帯の輪帯数を、図5に示したBD/DVD領域の連立方程式を解いて決めた。このとき、波面収差のゼルニケ展開項のデフォーカス項A4の3次球面収差項A9に対する比は、適当な初期値に対する試算の結果を用いて−114に設定した。このような条件における連立方程式の解は、対応基板厚0.285mm、輪帯数が29.3であった。このようにベースレンズの対応基板厚は、BDの0.0875mmとDVDの0.6mmの間の値となった。このときBD、DVD、CDの各波長におけるデフォーカス量、収差量、位相差は、(C2)に示すような結果となった。BDのデフォーカス量−0.065mmは、輪帯位相シフト構造によってベースレンズの焦点距離が0.065mm短くなることに対応する。このときのデフォーカス量は、DVDで0.135mm、CDで0.364mmであった。第4輪帯の位相差はBDで0.26λ、DVDで−0.25λ、CDで−0.38λとした。デフォーカス量は、表1(設計例1)と比較して大きくしており、DVD、CDのNAを大きくしても作動距離が狭くならないようにしている。
次に(B)の3波長共用領域を説明する。設計例2においては(B2)に示すようにベースレンズの対応基板厚を0.39mmとし、(C1)に示したBD/DVD領域の0.285mmと異ならせている。ただし、このときBD、DVDの焦点位置が3波長共用領域とBD/DVD領域で一致するように、BDとDVDのデフォーカス量の間隔は等しくしている。すなわちBDとDVDのデフォーカスの間隔は、(C2)において0.135+0.065=0.200mmであり、(B2)においても0.140+0.060=0.200mmである。このようにしておいて、面形状の最適設計の段階で、ベースレンズの焦点位置を3波長共用領域とBD/DVD領域の間で実効的に調整して、焦点位置を一致させる。これより、CD再生も必要な3波長互換領域において、ベースレンズの対応基板厚をCDの1.2mmに近づけ、WD確保のため大きなデフォーカス成分が必要なCDでの収差補償量を緩和している。
さらに設計例2では、第1、第2、第3の3つの輪帯位相シフト構造がそれぞれ補償する波面収差は、相互に相似形でない構成としている。すなわち設計例1(表1)では、組み合わせる3つの輪帯位相シフト構造が、ゼルニケの3次球面収差係数A9とデフォーカスの係数A4がすべて等しくなるようにしていた。それに対して設計例2では、(B1)に示すように、A4位相比とA9位相比の値を各輪帯位相シフト構造で異ならせている。ここで位相比とは、図6において説明した連立方程式の解として得られる、各収差次数成分に配分される輪帯数に比例する量である。ゼルニケ係数の値そのものは、収差量のPeak to Peak値とは異なるため、位相比は輪帯数そのものではない。それでここでは、各輪帯位相シフト構造が補償できる波面収差の各ゼルニケ展開成分の係数の値を、1つの段差の位相シフト量で割った値ということで位相比と称している。すなわち位相比に段差の位相差を乗じたものがゼルニケ係数になるので、同じ輪帯位相シフト構造のゼルニケ係数の位相比はゼルニケ係数の比と等しい。(B1)において、第1、第2、第3輪帯位相シフト構造のA4位相比とA9位相比の比が異なっているのは一目瞭然である。
以上のようにすると、(B2)の「整数分含む位相総和」の値を、設計例1(表1)と比較して大幅に小さくすることができた。これは実際にレンズの表面につける段差の総和を反映した値である。この値を小さくすると、波長が変化したときに発生する色収差を小さくすることができる。
以上のようにして設計したBD/DVD領域と3波長共用領域の輪帯位相シフト構造を統合し、表7の(D)に示すような輪帯位相シフト構造を設計した。輪帯数は3波長共用領域で148、BD/DVD領域で29、BD専用領域で1、であり、合計178であった。このとき最も狭い輪帯幅でもあまり狭くなりすぎないように、図17で説明したような輪帯境界の統合を行った。
Figure 2013168195
図23は、表7の位相構造設計結果をもとに、実施例2(設計例2)のレンズにおいて補正すべき波面収差の計算結果を示す図である。図11(設計例1)と同様に、デフォーカスのRMS波面収差値(defocus)と3次球面収差のRMS波面収差値(SA3)も示している。3波長共用領域において図11と比較すると、デフォーカスと3次球面収差の比がBDとDVDとCDでそれぞれ大きく異なっている。表7においては、重ねる3つの輪帯位相シフト構造が補償する波面収差が相互に相似でないことを説明したが、その結果、BDとDVDとCDのトータルの波面収差も相似でなくなっている。ただし、当然ながら、重ね合わされている3つのうちの1つの輪帯位相シフト構造が補償する波面収差は、BD、DVD、CDのそれぞれにおいて相似形となっている。
図24〜26は、図23の波面収差に対し、表7に示す設計結果を適用して位相シフト構造により補正した結果を示す。図24はBDの波面収差、図25はDVDの波面収差、図26はCDの波面収差であり、ともに横軸は規格化瞳半径であり、それぞれBD、DVD、CDの有効範囲のみを表示している。BDの波面収差を基準に、各輪帯位相シフト構造が補償を分担する波面収差形状を位相シフトで刻んで波面収差を決定している。設計例1の図14〜16と比較すると、DVDとCDにおけるエンベロープの変動が改善している。設計例1においては、BDの波面収差を基準として3次球面収差とデフォーカスのみの比率が同じになるようにDVDとCDの補償波面収差を決めて、そのPeak to Peak値が3波長で補償されるように輪帯位相シフト構造を決めていた。しかし設計例2においてはPeak to Peak値でなく、デフォーカスから3、5、7次のゼルニケ係数の値が3波長で補償されるように輪帯位相シフト構造を決めているため、補償の精度が向上している。このためエンベロープが平坦化したものと考えられる。エンベロープが平坦化すると最終的な波面収差も低減し、集光スポット性能が改善する。しかし設計例2では、BD/DVD共用領域においては1つの輪帯だけを用いているため、ここでは設計例1と同様に3つの波長で補償される波面収差を相似形としなければならず、デフォーカスと3次球面収差のみしか考慮されていないため、DVDの最外周領域において少しエンベロープ変動が残留している。
なお、設計例2ではBD/DVD領域では輪帯位相シフト構造を1つにしたが、それを複数化して3波長共用領域と同様の設計をすることも原理的には可能である。
次に、このように設計した輪帯位相シフト構造を持つ各輪帯面の非球面形状を設計した。表8は、実施例2(設計例2)におけるレンズ基本仕様値(基本パラメータ)を示す。基本仕様値としては、波長、レンズやディスク面の面間隔、レンズやディスクの屈折率、および有効光束径を含む。
Figure 2013168195
表9A,表9Bは、レンズ第1面の輪帯位相シフト構造を示す。輪帯数は178本あり、第0から第147輪帯までが3波長共用領域、第148から第176輪帯までがBD/DVD共用領域、第177輪帯がBD専用領域である。ここで軸上サグ量は設計例1と同様に(3)式のA0であり、軸上の第0輪帯では0である。第0輪帯から第115輪帯までは曲率半径(曲率cの逆数)と円錐定数κだけで表されている。一方、第116輪帯から第176輪帯までは非球面式の曲率cは0であり、A2とA4のみで表されている。このように少ない項数で表されるのは、輪帯の幅が狭く、少ない項数でも必要な形状が十分記述できるためである。表内の軸上サグ量、開口半径、曲率半径の単位はmmである。
Figure 2013168195
Figure 2013168195
Figure 2013168195
表10は、レンズ第2面の非球面式のA4までの係数である。パラメータは表9A,9Bと同様のものである。表内の軸上サグ量、開口半径、曲率半径の単位はmmである。第2面では、3波長共用領域が第0輪帯(輪帯番号0)、BD/DVD領域が第1輪帯(輪帯番号1)、BD専用領域が第2輪帯(輪帯番号2)の面形状をしている。設計例1と異なり、第2面を3輪帯構成としたのは、補正する波面収差を3波長共用領域とBD/DVD領域で変えたため、これらの領域で第2面を共通の面にしたままでは、位相構造設計の補償後波面収差を3波長で両立するのが困難となったためである。なお、これらの面係数と表11に示す面係数を用いることにより、3波長共用領域の第2面の形状をBD/DVD領域にまで拡張した面形状の、BD/DVD領域の面形状に対するサグ量の差は、BD波長に対して−9λから+12λの範囲に渡っていた。同様にして、BD/DVD領域の面形状をBD専用領域まで拡大した面形状の、BD専用領域の面形状に対するサグ量の差は、−10λから−137λに渡っていた。このように第2面の3つの領域の面形状は実質的にも異なる面である。
Figure 2013168195
表11は、レンズ第1面の第0〜176輪帯と第177輪帯、およびレンズ第2面の第0、第1、第2輪帯についてのA6以降の非球面係数である。第1面の第177輪帯はBD専用領域であり、領域が広いため、第2面の各輪帯とともに多くの非球面係数を必要とする。
Figure 2013168195
図27は、設計例2のレンズ設計形状と、軸上波面収差分布と像高の波面収差分布を、BD、DVD、CDそれぞれについて示している。レンズ形状はBD専用領域まで含めて示しており、DVD、CDについては不要なフレア光を含めて表示している。さらに図中には、有効径、焦点距離(f)、開口数(NA)、作動距離(WD)の値を示す。
DVDのNAは0.646とほぼ目標値となったものの、CDのNAが0.57と大きくなっている。またBDの波面収差でわかるように、BD専用領域とBD/DVD領域の境界において、光線透過位置の不整合が生じ、波面収差が局所的に大きくなっている。これは第2面を3輪帯にした影響と考えられる。しかし設計例1においてもBD専用領域とBD/DVD共用領域の境界は第2面で不連続であったはずなので、段差が軽減するようにサグ量を調整することにより解消できると考える。DVD、CDの波面収差もBDの有効径範囲まで示しているため、有効径外は±0.5λ以上の範囲を大きく変動しているが、有効径内の波面収差は、位相構造設計結果にほぼ対応したエンベロープ振幅となっている。DVDではやや球面収差が残留しており、もう少しDVDの位相構造設計基板厚への再フィードバックが必要な兆候を示している。
図28は、設計例2における軸上波面収差の干渉縞画像を示す。設計例1(図19)と比較して、BDの互換領域の干渉縞の鮮明度が低下しており、利用効率の低下を反映している。また、BDのBD専用領域とBD/DVD領域の境界に円環状の筋が入っているのは、第2面における輪帯領域の不整合によると考えられる。CDの干渉縞では、設計例1に比較して互換領域における粗い干渉縞が中間と最外周と2本見受けられ、これらの領域にはBDに対して不感なフレア対策輪帯を付加すると効果的である。
次に表12には、波面収差のゼルニケ展開解析結果を示す。ここでは図27の光線追跡結果から、BD、DVD、CDそれぞれについて軸上の波面収差と画角に対する波面収差を、ゼルニケ展開項のRMS波面収差成分値とそれらを合成した波面収差値とで示している。
(A)は軸上波面収差であり、軸上のTotal波面収差はBDで0.079λrms、DVDで0.106λrms、CDで0.125λrmsとなり、設計例1(表6)に比較しても大きくなっている。これに伴いストレール強度も、それぞれ0.75、0.55、0.38となり、設計例1に比べて光利用効率がやや低下することを意味している。一方、実質的な集光スポット品質を反映する第5項から37項までのRMS波面収差の合成値では、BDが0.010λrms、DVDが0.025λrms、CDが0.028λrmsとなり、やや大きいながらも許容範囲の値となっている。DVDとCDで値が大きくなっている要因は、主に第9項の3次球面収差(SA3)が支配的であることから、設計上は位相構造設計基板厚への再フィードバックでリカバリが期待できるとともに、実際のレンズにおいてもBDで必須の球面収差補償機構により吸収が可能である。球面収差補償機構としては、対物レンズに入射させる光を平行光とするコリメートレンズを光軸方向に微動させて光の発散収束度合いを変えるのが一般的である。
一方、(B)の画角のある場合の第5から37項の合成波面収差は、BDが画角0.1°で0.018λrms、DVDが画角0.2°で0.047λrms、CDが0.3°で0.042λrmsとなっている。いずれも軸上収差に対する増大の要因は第8項の3次球面収差(Coma3)であるが、BDの−0.007λrmsは、画角0.3°換算でも−0.021λrmsであり許容できる。DVDの0.034λrmsは画角0.3°換算で0.051λrmsであり、やや大きく改善は必要である。CDは画角0.3°において0.024λrmsであるので許容範囲といえる。
Figure 2013168195
図29は、設計例2によるレンズのスポット強度分布の計算結果である。ここでは、DVDとCDはそれぞれの有効径範囲で制限開口がある場合を想定している。図20(比較例)の専用レンズと比較して、BDでは面内分布、光軸方向分布ともほとんど差がなく、良好である。DVDでは、スポット径WEXが専用レンズの0.835μmから0.873μmとかなり大きくなっている。これは設計例1と比較して、NAは目標値の0.65に近づいているが波面収差が増大したのが影響したと見られる。CDでは、スポット径WEXが専用レンズの1.22μmから1.13μmと小さくなっている。これは図27で述べたように、NAが0.57と大きくなってしまったことによると見られる。しかしこのスポット径はちょうどNAの比に反比例しており、サイドローブの増大もないことから、本質的な問題ではなく、設計フィードバックによって補正を行えるものと考えられる。
図30は、制限開口がなく、DVDとCDについてBD有効径範囲のフレア光も含めて計算したスポット分布である。これを制限開口を有する図29と比較すると、DVDでは焦点面上のスポット径についてほとんど差が見られず、フレア光の影響は現れていない。光軸方向中心強度分布を見ると、焦点面から約100μmレンズ寄りの位置でピーク強度比にして5%程度の迷光が発生しているが、ピーク強度も小さくレンズ側でもあることから問題はないと考えられる。CDでは焦点面上のスポット径がさらに小さくなっている。光軸方向の中心強度分布も焦点からレンズ側で広い範囲にフレア光が現れているが、強度が小さいのでフレア光としての影響は少ないと考えられる。
以上述べた2つの実施例(設計例1と設計例2)について、各収差量を比較する。
表13は、色収差の発生量を比較したものである。ここで色収差の単位はμm/nmであり、波長が1nm変化した場合の最良像点位置の移動量を示している。設計例1での色収差は、BDが0.9、DVDが0.72、CDが0.92であるのに対して、設計例2ではそれぞれ0.67、0.52、0.57に低減している。これは設計例1(表1)に対して、設計例2(表7)の整数分含む位相総和値が大幅に小さくなっていることに起因している。このように、設計例2では、集光スポット性能としては全体的に設計例1より劣るが、もともと期待された色収差での効果は大きい。
Figure 2013168195
表14は、各種ずれ要因に対する3次コマ収差の発生量を比較したものである。コマ収差は画角、レンズ傾き、ディスク傾きで発生するが、幾何学的関係から、画角のコマ収差は、同じ角度のレンズ傾きのコマ収差とディスク傾きのコマ収差のほぼ和になる関係がある。表ではいずれもほぼこの関係が成り立っていることがわかる。ここでレンズを搭載する光ピックアップにおいては、ディスクに対してピックアップの相対的な傾きを調整することが望ましいが、ディスクの反りの状態によってディスクごとにその関係が変わるため、理想的にはディスク合わせた調整がされることが望ましい。これを行うために近年の光ピックアップでは、対物レンズの駆動軸をディスクの半径方向、焦点方向に加えて、傾きも駆動できるようになっており、再生信号のジッタによってこの傾きを調整するようにされている。従ってディスクの傾きによって発生するコマ収差をレンズの傾きによって補正できるようにする必要がある。その意味で、表に示したコマ収差比(ディスク傾きのコマ収差量に対するレンズ傾きのコマ収差量の比)がある程度の大きさ(絶対値)があることが望ましい。コマ収差比の値は、3波長互換レンズの場合DVDにおいて小さくなりがちであり、設計例1では0.22であるが、設計例2では0.71まで回復している。
Figure 2013168195
以上のような設計例2の優位点は、3波長共用領域の対応基板厚をBD/DVD領域より大きくし、3波長共用領域で重ねる3つの輪帯位相シフト構造の補償する波面収差の形状を相互に相似形状でなくしていることで可能となっている。
次に表15は、設計例1、2におけるCDの作動距離(WD)の拡大効果をまとめたものである。ここではBD、DVD、CDについて、実際の作動距離と、補正波面収差にデフォーカス成分がない場合(比較例)の作動距離の換算値を示す。設計例1、2とも、CDのWDはデフォーカス波面収差がない場合にはいずれもマイナスの値となっているのに対して、実際の設計値では0.23mm以上のプラスの値が実現できている。これは補正波面収差にデフォーカス成分を含めたことによる効果であり、これよりCDの作動距離の確保という課題に対する本実施例の有効性が確認できる。
以上の実施例で示したレンズ設計例ではまだ必ずしも性能が十分でなく、改善の余地があることは否めない。しかし原理的に本実施例のアプローチによって個々に個別性能改善の効果があり、残課題は設計フィードバックによる改善の見込みが期待できることから、本実施例の有効性は確認できたと考える。
図31は、前記実施例1,2の対物レンズを用いた光ピックアップの実施例を示す構成図である。光ディスクはスピンドルモータ2により回転させ、光ピックアップ1は前記したBD、DVD、CD互換の対物レンズ100を介して光ディスクの透明媒質層(BD:204、DVD:205、CD:206)に光ビームを集光し、情報の記録再生を行う。
BDの記録再生の場合は、青紫色レーザパッケージ11内に実装された青紫色半導体レーザチップ12から出射されるBD用発散光は、トラッキング用3ビーム生成用のグレーティング13とダイクロイックプリズム14を透過し、ビームスプリッタ15を反射してコリメートレンズ16によってほぼ平行光に変換される。コリメートレンズ16はムービングエレメント17によって光軸方向に微動可能となっており、ムービングエレメント17はステッピングモータ18で回転するスクリューシャフトによって所定位置に移動、固定が可能となっている。
コリメートレンズ16を光軸方向に可動させるのは、記録再生層に応じてコリメートレンズ位置を変えることが必要となるからである。すなわち、BDの2層記録膜のどちらの層を選択して記録再生をするかによって、対物レンズ100に対する実効的なカバーガラス厚が変化し、それによって球面収差が発生する。コリメートレンズ位置を変えることで対物レンズ100に入射する光束の発散/収束度合いを変化させ、対物レンズで発生する球面収差を相殺させる。さらに対物レンズ100は、低コスト化のためにプラスチック射出成形によって成形することを想定しているため、温度変化による屈折率変化によっても球面収差を発生する。これについてもコリメートレンズ位置によって補正することができる。そのため対物レンズ100の近くには温度センサ28を配置している。
コリメートレンズ16によって平行光とされた青紫色レーザビームは、立ち上げプリズム19を反射して対物レンズ100によりBD透明媒質層204越しに記録膜に集光される。BD透明媒質層204は実際上、2層BDの場合には選択する層によってその厚さが実質的に変化することになる。記録膜を反射した光は再び対物レンズ100、立ち上げプリズム19、コリメートレンズ16を経て、ビームスプリッタ15を透過し、凹レンズ22を通してOEIC(光電気変換集積回路)23に集光される。
OEIC23には、グレーティング13によって生成された図示していないサブビームも入射され、それぞれ所定の分割光検出領域により個別の光電流信号となって光量検出される。各領域の検出信号は図示していない演算回路によって、所定の焦点ずれ信号、トラッキング誤差信号、再生信号が生成される。生成された焦点ずれ信号とトラッキング誤差信号は、光ピックアップ1を搭載する記録再生装置によって、対物レンズアクチュエータ20にフィードバックされ、ディスクが回転しても集光スポットが情報トラックを追随するように制御される。
一方、DVDやCDの記録再生の場合は、2波長半導体レーザパッケージ24内のDVD用赤色半導体レーザチップ25またはCD用赤外半導体レーザチップ26から、赤色レーザビームまたは赤外レーザビームが射出される。ただしこれらは同時に放射されることはなく、記録再生するディスクに応じてどちらか一方だけが放射される。これらのレーザ光は、DVD/CDトラッキング用3ビーム生成用の2波長グレーティング27によってトラッキング用サブビームが生成されるとともに、ダイクロイックプリズム14とビームスプリッタ15を反射してコリメートレンズ16によって平行光に変換される。その平行光は立ち上げプリズム19によって反射され対物レンズ100に入射し、赤色レーザ光はDVD透明媒質層205、赤外レーザ光はCD透明媒質層206越しに記録膜に集光される。
記録膜を反射した赤色または赤外レーザ光は、対物レンズ100、立ち上げプリズム19、コリメートレンズ16の光路を戻り、ビームスプリッタ15を透過して凹レンズ22を通してBDの信号再生に用いたのと同じOEIC23に集光される。そしてBDと同様にして分割光検出領域からの光電流信号によって、焦点ずれ信号、トラッキング誤差信号、再生信号を生成する。
ここでBD、DVD、CD用のビーム径について述べる。対物レンズ100に入射されるDVD、CD用の平行ビームは、それぞれDVD、CD有効径より広い範囲に照射されるが、記録膜面にはそれぞれの有効径範囲の光のみが有効に集光されるようにする。つまり、有効径範囲外の光は集光されずにディスク上の広い範囲に拡散されるので、記録再生には実際上支障を生じない。ただし有効径範囲外の光量があまり大きいと、半導体レーザ光の光利用効率が低下し、記録のための高パワーを集光することが困難となる。これを避けるためには、DVDやCDの有効径に合わせて半導体レーザチップからの放射光の発散角がそれぞれの有効径に比例して小さくなっていることが望ましい。つまり有効径はBD>DVD>CDの大小関係にあるので、半導体レーザ光の発光角をBD>DVD>CDとすることで、有効径に対する光利用効率を3つの波長で揃えることができる。
本実施例で搭載する対物レンズ100はBD、DVD、CDとも平行光を入射して集光する対物レンズであり、トラッキング動作に伴って対物レンズが光軸から偏心しても収差が発生せず、1個のレンズで3つの光記録媒体(BD、DVD、CD)の記録再生が可能であるので、光ピックアップの小型軽量化、低価格化に有効である。
1:光ピックアップ、
2:スピンドルモータ、
11:青紫色半導体レーザパッケージ、
12:青紫色半導体レーザチップ(BD用)、
13:グレーティング、
14:ダイクロイックプリズム、
15:ビームスプリッタ、
16:コリメートレンズ、
17:ムービングエレメント、
18:ステッピングモータ、
19:立ち上げプリズム、
20:対物レンズアクチュエータ、
22:凹レンズ、
23:OEIC、
24:2波長半導体レーザパッケージ、
25:赤色半導体レーザチップ(DVD用)、
26:赤外半導体レーザチップ(CD用)、
27:2波長グレーティング、
28:温度センサ、
100:対物レンズ、
101:第1面、
102:第2面、
103:第1面の第1領域(3波長共用領域)、
104:第1面の第2領域(BD/DVD共用領域)、
105:第1面の第3領域(BD専用領域)、
106:第2面の第1領域(3波長共用領域)、
107:第2面の第2領域(BD/DVD共用領域)、
108:第2面の第3領域(BD専用領域)、
109:第1領域最外周に入射する光線、
110:第2領域最外周に入射する光線、
111:第3領域最外周に入射する光線、
112,112’:第1の輪帯位相シフト構造とそれによる光路差分布、
113,113’:第2の輪帯位相シフト構造とそれによる光路差分布、
114,114’:第3の輪帯位相シフト構造とそれによる光路差分布、
115:輪帯位相シフト構造を付加する前のレンズの非球面形状、
116:実際のレンズ面形状、
117,117’:第4の輪帯位相シフト構造とそれによる光路差分布、
118:第2面の第1領域のレンズ面形状を第2領域まで拡張したレンズ面形状、
119:第2面の第2領域のレンズ面形状を第3領域まで拡張したレンズ面形状、
120:第2面の第3領域のレンズ面形状、
130:光軸、
201:BD用の入射光束、
202:DVD用の入射光束、
203:CD用の入射光束、
204:BD透明媒質層(厚さt1)、
205:DVD透明媒質層(厚さt2)、
206:CDの透明媒質層(厚さt3)、
401:合成前の第1の輪帯位相シフト構造の位相シフト分布、
402:合成前の第2の輪帯位相シフト構造の位相シフト分布、
403:2つの位相シフト分布を単純に合成した場合の位相シフト分布、
404:合成の結果生じた狭い輪帯をなくすよう調整した位相シフト分布、
405:2つの位相シフト境界が近接した領域、
406:狭い輪帯、
407:調整後の段差部。

Claims (19)

  1. 波長λ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の3つの波長のレーザ光を、それぞれ第1、第2、第3の光情報記録媒体に集光して情報の記録再生を行う単一の対物レンズにおいて、
    前記3つの波長のレーザ光をそれぞれ平行光で入射して、前記第1、第2、第3の光情報記録媒体のそれぞれ厚さt1、t2、t3(t1<t2<t3)の透明媒質層を通して、それぞれNA1、NA2、NA3(NA1>NA2>NA3)の開口数で集光するものであり、
    光軸を中心とした複数の同心円で区分された複数の輪帯からなり、隣接する領域に対して前記波長によって異なる位相差を与え領域内で一様な位相差を与える第1、第2、第3の3つの輪帯位相シフト構造が、1つのレンズ面上に重畳された最内周の第1のレンズ領域と、
    前記第1のレンズ領域の外側に環状に配置され、光軸を中心とした複数の同心円で区分された複数の輪帯からなり、隣接する領域に対して前記波長によって異なる位相差を与え領域内で一様な位相差を与える第4の輪帯位相シフト構造が付加された第2のレンズ領域と、
    前記第2のレンズ領域の外側に環状に配置され、前記厚さt1の透明媒質越しに波長λ1のレーザ光を集光するように波面収差が設定された非球面レンズ形状を有する第3のレンズ領域と、を有し、
    前記第1、第2、第3のレンズ領域に入射する波長λ1のレーザ光を前記第1の光情報記録媒体に集光し、前記第1、第2のレンズ領域に入射する波長λ2のレーザ光を前記第2の光情報記録媒体に集光し、前記第1のレンズ領域に入射する波長λ3のレーザ光を前記第3の光情報記録媒体に集光することを特徴とする対物レンズ。
  2. 請求項1に記載の対物レンズであって、
    前記第1のレンズ領域においては、前記第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用が、前記第1の光情報記録媒体の透明媒質層と同じ屈折率を有し、前記透明媒質層の厚さt1と前記透明媒質層の厚さt2の中間の厚さt4(t1<t4<t2)の透明媒質越しに波長λ1のレーザ光を3次球面収差なく集光するように設定されたレンズ面であり、
    前記第2のレンズ領域においては、前記第4の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用が、前記第1の光情報記録媒体の透明媒質層と同じ屈折率を有し、前記透明媒質層の厚さt1と前記透明媒質層の厚さt2の中間の厚さt5(t1<t5<t2)の透明媒質越しに波長λ1のレーザ光を3次球面収差なく集光するように設定されたレンズ面であることを特徴とする対物レンズ。
  3. 請求項2に記載の対物レンズであって、
    前記第1のレンズ領域の前記第1、第2、第3の輪帯位相シフト構造は、これらの輪帯の位相シフト機能を合わせることで、それぞれ前記λ1、λ2、λ3の波長、およびt1、t2、t3の厚さの透明媒質層のいずれに対しても、波面収差をPeak to Peak値で1λ未満に低減するとともに、該輪帯位相シフト構造による位相シフトを付加する前の波面収差が、RMS波面収差値において3次球面収差成分よりもデフォーカス成分が大きく、前記デフォーカス成分を含めて波面収差のPeak to Peak値が5λ以上であり、該波面収差がλ1の波長とλ2、λ3の波長とで相互に符号が反転している輪帯位相シフト構造であり、
    前記第2のレンズ領域の前記第4の輪帯位相シフト構造は、それぞれ前記λ1とλ2の波長、およびt1、t2の厚さの透明媒質のいずれに対しても、波面収差をPeak to Peak値で1λ未満に低減するとともに、前記第1のレンズ領域と合わせた領域の輪帯位相シフト構造による位相シフトを付加する前の波面収差が、RMS波面収差値において、3次球面収差成分よりもデフォーカス成分が大きく、前記デフォーカス成分を含めて波面収差のPeak to Peak値が10λ以上であり、該波面収差がλ1の波長とλ2の波長とで符号が反転しており、λ3の波長においては前記第1のレンズ領域のλ3の波長の焦点位置における波面収差がPeak to Peak値で1λ未満に低減されない輪帯位相シフト構造であることを特徴とする対物レンズ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第1から第4の輪帯位相シフト構造で付加される光路差(mλ+φ)から整数波長分の光路長(mλ)を除去して±(1/2)波長以内の光路差(φ)とする際の、整数値(m)の絶対値が3以下であることを特徴とする対物レンズ。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第2のレンズ領域において、さらに、λ1とλ2の波長に対して共に略整数倍の光路差を与えるとともに、λ3の波長に対しては整数波長分を除去した実質的な位相差の絶対値が0.3λ以上であるように位相差が調整された第5の輪帯位相シフト構造が付加されたことを特徴とする対物レンズ。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第3のレンズ領域において、さらに、λ1の波長に対して略整数倍の光路差を与えるとともに、λ2とλ3の波長に対しては整数波長分を除去した実質的な位相差の絶対値が0.3λ以上であるように位相差が調整された第6の輪帯位相シフト構造が付加されたことを特徴とする対物レンズ。
  7. 請求項5または6に記載の対物レンズであって、
    前記第5または第6の輪帯位相シフト構造が、互いに隣接する輪帯で位相シフトの符号が交互に反転していることを特徴とする対物レンズ。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第1から第4の輪帯位相シフト構造が当該対物レンズの入射側面上に形成されていることを特徴とする対物レンズ。
  9. 請求項5または6に記載の対物レンズであって、
    前記第5または第6の輪帯位相シフト構造が、当該対物レンズの出射側面上に形成されていることを特徴とする対物レンズ。
  10. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第1、第2、第3のレンズ領域の境界部に隣接しない輪帯領域の入射瞳面に投影した輪帯幅の最小値が3μm以下とならないように、輪帯幅が3μm以下となる輪帯は隣接する輪帯と結合し、結合した輪帯の位相差を加算した位相差を与える輪帯とすることを特徴とする対物レンズ。
  11. 請求項5に記載の対物レンズであって、
    前記第2のレンズ領域の前記第5の輪帯位相シフト構造が前記第4の輪帯位相シフト構造と異なる面に付加されていることを特徴とする対物レンズ。
  12. 請求項6に記載の対物レンズであって、
    前記第3のレンズ領域の前記第6の輪帯位相シフト構造が前記第2のレンズ領域の前記第5の輪帯位相シフト構造と同じ面に付加されていることを特徴とする対物レンズ。
  13. 請求項5に記載の対物レンズであって、
    前記第2のレンズ領域の前記第5の輪帯位相シフト構造が前記第4の輪帯位相シフト構造と同じ面に付加させるとともに、輪帯位置をそろえて輪帯高さだけをフレア除去の条件の位相差となるように調整したことを特徴とする対物レンズ。
  14. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    前記第1のレンズ領域において前記第1から第3の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用で3次球面収差なく透明媒質越しに集光できる当該透明媒質層の厚さt3が、前記第2のレンズ領域において前記第4の輪帯位相シフト構造により付加された位相差を除いたレンズ作用で3次球面収差なく透明媒質層越しに集光できる当該透明媒質層の厚さt4以上となるように設定されたことを特徴とする対物レンズ。
  15. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    出射面上において前記第1のレンズ領域を透過する光が出射する領域の非球面形状を記述する係数を用いて、前記第2のレンズ領域を透過する光が出射する領域まで拡張した仮想的な出射面の形状に対し、前記第2のレンズ領域を透過する光が出射する領域の実際の非球面形状が、サグ量にして5λ以上となるような有意な差を有するような非球面形状であることを特徴とする対物レンズ。
  16. 請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズであって、
    出射面上において前記第2のレンズ領域を透過する光が出射する領域の非球面形状を記述する係数を用いて、前記第3のレンズ領域を透過する光が出射する領域まで拡張した仮想的な出射面の形状に対し、前記第3のレンズ領域を透過する光が出射する領域の実際の非球面形状が、サグ量にして5λ以上となるような有意な差を有するような非球面形状であることを特徴とする対物レンズ。
  17. 請求項1から16のいずれかに記載の対物レンズを搭載した光ピックアップにおいて、
    前記λ1、λ2、λ3の3つの波長のレーザ光を放射する半導体レーザと、
    前記レーザ光を平行ビームに変換して前記対物レンズに導くとともに、光軸方向に可動できるコリメートレンズと、
    前記対物レンズによって、前記第1、第2、第3の光情報記録媒体に集光され、反射した反射光を、前記半導体レーザからの光路から分離するビームスプリッタと、
    前記分離された反射光を集光して信号検出を行う光検出器を備えることを特徴とする光ピックアップ。
  18. 請求項17に記載の光ピックアップであって、
    前記対物レンズの周辺に温度センサを配置して、検出温度に応じて前記コリメートレンズの位置の制御を行うことを特徴とする光ピックアップ。
  19. 請求項17に記載の光ピックアップであって、
    前記半導体レーザから放射されるλ1、λ2、λ3の3つの波長のレーザ光の放射ビームの発散角をθ1、θ2、θ3とするとき、θ1>θ2>θ3の関係とすることを特徴とする光ピックアップ。
JP2012029553A 2012-02-14 2012-02-14 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ Active JP5706839B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012029553A JP5706839B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ
PCT/JP2013/053587 WO2013122175A1 (ja) 2012-02-14 2013-02-14 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012029553A JP5706839B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013168195A true JP2013168195A (ja) 2013-08-29
JP5706839B2 JP5706839B2 (ja) 2015-04-22

Family

ID=48984284

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012029553A Active JP5706839B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5706839B2 (ja)
WO (1) WO2013122175A1 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016021075A1 (ja) * 2014-08-08 2016-02-11 株式会社メニコン 回折多焦点レンズおよび回折多焦点レンズの製造方法
JP2018116800A (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 株式会社日立情映テック 回折レンズおよびそれを用いた車載用灯具
US10792147B2 (en) 2018-08-09 2020-10-06 Nikon Corporation Ophthalmic lens and method of manufacturing ophthalmic lens

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7402781B2 (ja) * 2020-10-28 2023-12-21 株式会社日立製作所 撮像光学系、撮像装置および焦点深度拡大光学システム

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006060082A (ja) * 2004-08-20 2006-03-02 Sony Corp レーザ出射装置及び光学ヘッド
JP2010015651A (ja) * 2008-07-04 2010-01-21 Sony Corp 光ピックアップ及びこれを用いた光ディスク装置
WO2011033789A1 (ja) * 2009-09-17 2011-03-24 パナソニック株式会社 対物レンズ素子
JP2011096350A (ja) * 2009-09-29 2011-05-12 Konica Minolta Opto Inc 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置
JP2011216176A (ja) * 2010-03-19 2011-10-27 Hoya Corp 光情報記録再生装置用対物光学系、及び光情報記録再生装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006060082A (ja) * 2004-08-20 2006-03-02 Sony Corp レーザ出射装置及び光学ヘッド
JP2010015651A (ja) * 2008-07-04 2010-01-21 Sony Corp 光ピックアップ及びこれを用いた光ディスク装置
WO2011033789A1 (ja) * 2009-09-17 2011-03-24 パナソニック株式会社 対物レンズ素子
JP2011096350A (ja) * 2009-09-29 2011-05-12 Konica Minolta Opto Inc 光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置
JP2011216176A (ja) * 2010-03-19 2011-10-27 Hoya Corp 光情報記録再生装置用対物光学系、及び光情報記録再生装置

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016021075A1 (ja) * 2014-08-08 2016-02-11 株式会社メニコン 回折多焦点レンズおよび回折多焦点レンズの製造方法
JPWO2016021075A1 (ja) * 2014-08-08 2017-05-18 株式会社メニコン 回折多焦点レンズおよび回折多焦点レンズの製造方法
US10747022B2 (en) 2014-08-08 2020-08-18 Menicon Co., Ltd. Diffractive multi-focal lens and method for manufacturing diffractive multi-focal lens
JP2018116800A (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 株式会社日立情映テック 回折レンズおよびそれを用いた車載用灯具
WO2018135500A1 (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 マクセル情映テック株式会社 回折レンズおよびそれを用いた車載用灯具
US10781989B2 (en) 2017-01-17 2020-09-22 Maxell Joei Tech Co., Ltd. Diffraction lens and vehicular lamp using same
JP7001345B2 (ja) 2017-01-17 2022-02-03 マクセルフロンティア株式会社 回折レンズおよびそれを用いた車載用灯具
US10792147B2 (en) 2018-08-09 2020-10-06 Nikon Corporation Ophthalmic lens and method of manufacturing ophthalmic lens

Also Published As

Publication number Publication date
JP5706839B2 (ja) 2015-04-22
WO2013122175A1 (ja) 2013-08-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6671247B1 (en) Optical pick-up apparatus, optical element, and objective lens having diffracting section
US8116187B2 (en) Design method of optical element and optical element through which a plurality of light beams having different design wavelengths pass
US20110122755A1 (en) Objective Lens and Optical Pickup Apparatus
WO2010071125A1 (ja) 対物光学素子及び光ピックアップ装置
US8111602B2 (en) Objective lens, optical pickup device, and optical disk drive
KR20060115879A (ko) 대물 광학계, 광픽업 장치 및 광정보 기록 재생 장치
JP5706839B2 (ja) 対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ
EP1612783A2 (en) Objective lens and optical pickup apparatus
US8385181B2 (en) Objective lens and optical pickup apparatus
JP2011023092A (ja) 対物レンズ、光ピックアップ及び光ディスク装置
US7843792B2 (en) Optical information recording /reproducing device and objective lens for the same
US8699312B2 (en) Optical information recording/reproducing apparatus and objective optical system for the same
JP4254549B2 (ja) 光ピックアップ装置及び回折光学素子
KR20060047694A (ko) 파장 선택 소자, 대물 광학계, 광픽업 장치 및 광디스크의드라이브 장치
JP3689328B2 (ja) 光ヘッド用対物レンズ
US20090252021A1 (en) Multifocal objective lens and optical information recording/reproducing device
KR100496591B1 (ko) 광픽업용 대물렌즈
JP4828303B2 (ja) 光情報記録再生装置用対物レンズおよび光情報記録再生装置
JP2003344759A (ja) 光記録媒体用対物レンズおよびこれを用いた光ピックアップ装置
JP2011165224A (ja) 光ピックアップおよび光ディスク装置、コンピュータ、光ディスクプレーヤ、光ディスクレコーダ
JP5613593B2 (ja) 対物レンズ及び光ピックアップ装置
JP2010055683A (ja) 対物光学素子及び光ピックアップ装置
JP2004006005A (ja) 光ピックアップ装置
JP4488334B2 (ja) 光ディスク用対物レンズ
JP2010055732A (ja) 対物光学素子及び光ピックアップ装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140820

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20140908

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20141118

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150114

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150227

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5706839

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250