以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔全体の構成〕
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子鍵盤楽器の全体の機能構成を示すブロック図である。同図に示す電子鍵盤楽器1は、鍵(鍵盤)120を有する鍵盤装置10と、ペダル220を有するペダル装置20と、鍵盤装置10やペダル装置20を含む電子鍵盤楽器1の全体を制御する主制御部50とを備えている。鍵盤装置10とペダル装置20及び主制御部50など電子鍵盤楽器1の各部は、バス51を介して互いに接続されている。
まず、図1に示す主制御部50について説明する。主制御部50は、CPU51、フラッシュメモリ(FLASH ROM)52、RAM53などを備えている。CPU51は、鍵盤装置10及びペダル装置20を含む電子鍵盤楽器1の全体の制御を司る。特に、CPU51は、鍵盤装置10のソレノイド140やペダル装置20のソレノイド240の駆動を制御することで、鍵120あるいはペダル220の力覚制御を行う力覚制御手段として機能する。また、フラッシュメモリ52には、CPU51が実行する制御プログラムや各種テーブルデータのほか、鍵120の力覚制御を行うためのデータである鍵盤用力覚付与テーブル80、及びペダル220の力覚制御を行うためのデータであるペダル用力覚付与テーブル85が記憶されている。RAM53は、演奏データ、テキストデータなどの各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算処理結果などを一時的に記憶する領域である。
また、電子鍵盤楽器1には、主制御部50のほか、設定操作部61、表示装置63、音声出力部65、記憶装置(HDD)66、通信インターフェイス68、接続端子部69などが設けられている。通信インターフェイス68は、インターネット(通信ネットワーク)75に繋がれており、当該インターネット75を介してサーバ72との間でデータの送受信を行えるようになっている。接続端子部69は、USB端子やLAN端子などであり、USBケーブル又はLANケーブルなどの接続ケーブル69aで外部の電子機器であるパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と記す。)70と接続されるようになっている。
PC70は、詳細な図示は省略するが、CPUやHDDなどを備えているほか、電子鍵盤楽器1の演奏操作に関する教習内容を含む教習用教材ソフト(教習用教材データ)Sが格納されたDVD−ROMやCD−ROMなど記録媒体73のデータを読み取るための読取装置や、記録媒体73から読み取ったデータ内容を表示するためのディスプレイ71を備えている。なお、教習用教材ソフトSのデータは、記録媒体73に格納されているほか、インターネット75上のサーバ72に格納されているものをPC70のHDDにダウンロードしたものであってもよい。記録媒体73やPC70のHDDから読み取られた教習用教材ソフトSの内容は、ディスプレイ71に画面表示させることができる。また、教習用教材ソフトSのデータをPC70から電子鍵盤楽器1に送ることで、教習用教材ソフトSの内容を電子鍵盤楽器1に設けた表示装置63に表示したり、音声出力部65から音声として出力したりすることも可能である。
また、電子鍵盤楽器1が通信インターフェイス68を介してインターネット75に直接接続されている場合は、教習用教材ソフトSのデータは、インターネット75上のサーバ72から電子鍵盤楽器1の記憶装置66にダウンロードすることが可能である。この場合も、教習用教材ソフトSの内容は、電子鍵盤楽器1の表示装置63に表示したり、音声出力部65から音声として出力したりすることができる。なお、教習用教材ソフトSの内容については、後述する。
また、設定操作部61には、演奏者が設定操作情報を入力するために用いる不図示の各種スイッチなどが含まれ、スイッチの操作による信号がCPU51に供給されるようになっている。表示装置63は、表示制御回路62を介してバス51に接続されており、音声出力部65は、音源回路64を介してバス51に接続されている。
〔鍵盤装置〕
図2は、鍵盤装置10の構成例を示す図であり、鍵120及びその周辺の概略側面図である。また、図3は、鍵盤装置10の動作を説明するための図で、(a)は、鍵120が非押鍵位置にある状態を示し、(b)は、鍵120が押鍵位置にある状態を示している。鍵盤装置10は、平板状のフレーム111と、それぞれがフレーム111に対して回動可能に支持された鍵120及び質量体130と、鍵120と質量体130の間に設置したソレノイド(電磁アクチュエータ)140とを備えて構成されている。
なお、以下の説明では、鍵120の長手方向における両側のうち、電子鍵盤楽器1の演奏者の側を手前あるいは前といい、その反対側を奥あるいは後という。なお、図2では、鍵盤装置10が備える並設された複数の鍵120のうち、1個の鍵120及びその周辺の構成部品を示している。また、同図では、鍵120が白鍵である場合を示しているが、黒鍵の場合も同様の構成になっている。なお、図示は省略するが、鍵盤装置10には、鍵120の動作に応じた楽音を発生させるように、鍵120の動作を電気的な出力に変換するためのスイッチ接点機構も設けられている。
鍵120は、前後方向の中間の位置がフレーム111上の鍵支点112に支持されている。鍵120は、前端120a及び後端120bが鍵支点112を中心に上下方向へ回動可能であり、演奏者による押鍵部120cへの押鍵操作に応じて回動するようになっている。また、鍵120の後端120bの下方には、鍵上限ストッパー121が設置されており、前端120aの下方には、鍵下限ストッパー122が設置されている。鍵上限ストッパー121は、図3(a)に示す非押鍵位置にある鍵120の後端120bの下面に当接し、鍵120の回動を非押鍵位置で規制する。一方、鍵下限ストッパー122は、図3(b)に示す押鍵位置にある鍵120の前端120aの下面に当接し、鍵120の回動を押鍵位置で規制する。
また、鍵支点112より後方のフレーム111上には、質量体130を支持するための柱状の支持部114が設けられている。支持部114は、フレーム111上で隣接する鍵120の間から、複数鍵域ごとに1つの割合で各鍵120の真上に張り出している。支持部114に支持された質量体130は、各鍵120に対応して設置されており、鍵支点112よりも後側の真上位置に設置されている。質量体130は、支持部114の上端に設けた質量体支点131から後方に延びる直線棒状のシャンク部132と、該シャンク部132の先端に取り付けた所定の質量を有する質量部(錘)133とを備えて構成されている。シャンク部132は、質量体支点131に回動自在に支持されており、鍵120の長手方向に沿う垂直面内で上下に回動するようになっている。質量部133は、シャンク部132の先端においてその回動方向に沿って延びる棒状に形成されている。この質量体130は、質量体支点131を中心にシャンク部132を腕として質量部133が鍵120の後端近傍の上方で上下方向に回動するようになっている。
支持部114には、質量体130の回動を下限位置と上限位置とでそれぞれ規制するための質量体上限ストッパー134及び質量体下限ストッパー135が設けられている。これら質量体下限ストッパー135及び質量体上限ストッパー134によって、質量体130は、図3(a)に示すように、シャンク部132が質量体支点131から後側の斜め下方向に延びる下限位置と、図4(b)に示すように、シャンク部132が質量体支点131から後側の略水平方向に延びる上限位置との間で回動するように規制される。質量体130は、後述するプランジャ142を介して鍵120の動作に連動するようになっており、ソレノイド140との協働によって、鍵120にその演奏操作に対する反力を与えるものである。
鍵120及び質量体130に所定の駆動力を付与するためのソレノイド140は、鍵支点112より後側の鍵120の上面と、質量体130のシャンク部132との間に設置されている。ソレノイド140は、双方向駆動型のアクチュエータであり、上下に同軸状に並べて設置した往動コイル141aと復動コイル141bからなるコイル141と、コイル141の内側に嵌挿された1本のプランジャ142とを備えて構成されている。コイル141は、支持部114及びフレーム111に対して固定されている。
質量体130のシャンク部132におけるプランジャ142の上端に対向する位置には、円筒状のローラ136が取り付けられている。ローラ136は、軸方向が鍵120の配列方向に沿う水平向きで、下側面(円筒面)がプランジャ142の上端面に載置されている。一方、プランジャ142の下端は、鍵120の上面に設けたスクリュー(ネジ)125の上に載置されている。
ソレノイド140は、往動コイル141a及び復動コイル141bに駆動電流が供給されることで、プランジャ142を上下双方向へ駆動するようになっている。すなわち、復動コイル141bに駆動電流が供給されると、プランジャ142は下側へ移動する。これにより、プランジャ142から鍵120の鍵支点112よりも後側に対して下向きの荷重が付与されるので、鍵120の離鍵方向へかかる荷重が増加する。一方、往動コイル141aに駆動電流が供給されると、プランジャ142は上側へ移動する。これにより、プランジャ142から鍵120の鍵支点112よりも後側に対して下向きにかかる荷重が軽減されるので、鍵120の離鍵方向へかかる荷重が減少する。
また、鍵盤装置10には、鍵120の位置を検出するための鍵位置センサ145が設置されている。鍵位置センサ145は、コイル140側に設けた受光部と、プランジャ142側に設けた反射面とを互いに対向させて配置しており、反射面で反射した光を受光部で受光するように構成した反射式センサである。反射面は、上下方向の各位置の反射光量が連続的に変化するように構成されている。したがって、受光部の出力信号に基づいてプランジャ142及び鍵120の位置を一義的に特定できる。
鍵120の駆動制御回路は、図1に示すように、主制御部50と、主制御部50の指令に応じてソレノイド140に駆動用のPWM(パルス幅変調)信号を出力するソレノイド制御ドライバ148を備えている。主制御部50のフラッシュメモリ52には、鍵盤用力覚付与テーブル80が格納されている。鍵位置センサ145によって検出された鍵120の位置情報は、主制御部50に出力されるようになっている。主制御部50からの制御信号は、ソレノイド制御ドライバ148に入力される。ソレノイド制御ドライバ148は、主制御部50からの制御信号に基づいて、ソレノイド140に駆動用の信号を供給する。
図4(a)は、フラッシュメモリ52に格納された鍵盤用力覚付与テーブル80の構成例を示す図である。鍵盤用力覚付与テーブル80は、鍵盤装置10のソレノイド140が発生すべき駆動力のパターンを格納したテーブルである。鍵盤用力覚付与テーブル80には、押鍵用テーブル81と離鍵用テーブル82とが用意されている。また、これら押鍵用テーブル81と離鍵用テーブル82はそれぞれ、反力パターンテーブル81a,82aと指令値テーブル81b,82bを備えている。反力パターンテーブル81a,82aは、鍵位置センサ145の検出値(または該検出値から算出した鍵120の速度、加速度などの値)の信号に対する出力値を参照するためのテーブルである。また、指令値テーブル81b,82bは、ソレノイド制御ドライバ148に上記の出力値を発生させる指令値を参照するためのテーブルである。なお、鍵盤用力覚付与テーブル80は、後述するように、自然鍵盤楽器の鍵盤におけるエスケープメント(いわゆるジャック抜け)領域の操作感覚を再現するための駆動制御情報(第1のエスケープメント駆動制御情報)を含んでいる。
次に、鍵盤装置10の動作について説明する。鍵120は、鍵支点112の前後の質量(自重)バランスによって生じる押鍵方向への付勢力と、プランジャ142を介してかかる質量体130からの荷重との大小関係によって、押鍵力が作用していない状態では、図3(a)に示す非押鍵位置にある。このとき、質量体130は、シャンク部132が質量体下限ストッパー135に当接した下限位置にある。一方、非押鍵位置にある鍵120が押鍵操作されると、鍵120は、プランジャ142を介して質量体130を押し上げながら鍵支点112を中心に押鍵方向へ回動する。こうして、図3(b)に示す押鍵位置となる。鍵120が押鍵位置のとき、プランジャ142を介して鍵120によって押し上げられた質量体130は、シャンク部132が質量体上限ストッパー134に当接する上限位置にある。そして、鍵120に対する押鍵力が解除されると、鍵120には、自重で下方へ回動する質量体130からプランジャ142を介して荷重が加わる。鍵120は、この荷重と自重バランスとの両方によって非押鍵位置へ復帰する。
このような質量体130の慣性質量を利用した鍵120の動作が行われる際に、主制御部50でソレノイド140の駆動を制御することで、押鍵操作に対する反力の力覚制御を行うことができる。本実施形態の鍵盤装置10では、アコースティックピアノでアクション機構の作用に基づいて指に感じられる独特の鍵タッチ感(抵抗感)を再現すべく、当該アコースティックピアノの鍵タッチ感に相当する反力特性をソレノイド140で鍵120に付与するようになっている。
図5は、鍵120の力覚制御の手順を説明するためのフローチャートである。鍵120の力覚制御では、まず、鍵120の位置情報を初期化する(ステップST1−1)。その後、鍵位置センサ145にて検出した鍵120の位置(押鍵量)を読み込む(ステップST1−2)。また、鍵速度センサを設けている場合は、検出した鍵の速度を読み込み(ステップST1−3)、鍵加速度センサを設けている場合は、検出した鍵120の加速度を読み込む(ステップST1−4)。鍵速度センサを設けていない場合は、鍵位置センサ145で検出した鍵位置データの差分から鍵速度を算出してもよい(ステップ1−3)。また、鍵加速度センサを設けていない場合は、鍵速度データの差分から鍵加速度を算出(ステップST1−4)してもよい。なお、鍵盤装置10に角度センサや角速度センサを設置している場合は、それらで検出した鍵角度や鍵角速度を読み込んでもよい。
次に、ステップST1−3で読み込んだ鍵速度の検出値(あるいは算出値)の符号(正負)を判定する(ステップST1−5)。その結果、鍵速度が正である場合は、鍵120が押鍵過程にあるので、鍵盤用力覚付与テーブル80の押鍵用テーブル81を選択し、これを読み込む(ステップST1−6)。一方、鍵120の速度が負である場合は、鍵120が離鍵過程にあるので、鍵盤用力覚付与テーブル80の離鍵用テーブル82を選択し、これを読み込む(ステップST1−7)。続いて、読み込んだ上記いずれかのテーブル81,82の反力パターンテーブル81a,82aを参照して、ソレノイド140の出力を決定するとともに、指令値テーブル81b,82bを参照して、ソレノイド140の出力を発生させるための指令値を決定する。そして、決定した指令値をソレノイド制御ドライバ148へ出力し(ステップST1−8)、ソレノイド140を駆動する。その後、新たな鍵位置情報の入力があるか否かを判断する(ステップST1−9)。その結果、新たな鍵位置情報の入力があれば(YES)、ステップST1−2からの処理を再度実行し、新たな鍵位置情報の入力が無ければ(NO)、処理を終了する。このようにして、鍵盤用力覚付与テーブル80に基づく反力の制御が行われる。
図6(a)は、鍵盤用力覚付与テーブル80による力覚制御を行った場合の鍵120の変位(押鍵量)と押鍵操作をする指にかかる反力の分布との関係を示すグラフであり、鍵120を比較的ゆっくりと押鍵操作したときの反力分布である。なお、このグラフでは、押鍵時における反力分布のみを示しており、離鍵時における反力分布は省略している。また、図6(a)の反力分布は、電子鍵盤楽器1のフラッシュメモリ52にあらかじめ格納されている鍵盤用力覚付与テーブル80に基づく反力分布である。鍵120の力覚制御では、鍵120にかかる質量体130の質量あるいは慣性負荷による反力L1と、ソレノイド140で鍵120に付与される反力L2とを合わせたもの(図6の一点鎖線)が、押鍵操作を行う演奏者の指にかかる反力となる。この演奏者の指にかかる反力の分布は、質量体130の反力L1とソレノイド140で付与される反力L2との協働によるものであり、それによってアコースティックピアノの反力分布を再現したものとなっている。
この場合、押鍵操作を行う演奏者の指にかかる反力は、押鍵量がゼロのときの初期値(荷重ゼロ)から、以下で説明する領域A,領域B,領域C,領域Dの四箇所の変化を含む分布になっている。領域Aは、押鍵初期において、静止状態にある鍵120及び質量体130の持ち上げが開始される際の静荷重による反力分布である。押鍵初期には、まだソレノイド140によるプランジャ142の駆動は無く、鍵120には質量体130からの反力のみが作用している。この領域Aは、静止状態にある鍵120及び質量体130の静荷重によるものであるが、アコースティックピアノの押鍵に対する反力特性でも、押鍵初期には、鍵及びハンマの持ち上げによって同様の分布が現れる。領域Bは、ソレノイド140によるプランジャ142の駆動が開始される際の反力分布である。この領域Bでは、アコースティックピアノのアクション機構で、鍵によるダンパーの持ち上げが開始される際に鍵にかかる反力が再現されている。
領域Cは、領域Bよりも若干小さい反力の増加量であり、ソレノイド140の駆動で創生される反力分布である。領域Cでは、アコースティックピアノでの押鍵途中にアクション機構の各部が動作することで鍵に付与される反力(いわゆるアクションバネ荷重)が再現されている。領域Dは、ソレノイド140の駆動で創生される反力の急激かつ大きな増加及び減少を伴う山型の分布である。この領域Dでは、アコースティックピアノのアクション機構におけるエスケープメント(いわゆるジャック嵌合状態からのジャック抜け)に伴って鍵にかかる負荷の急激な変化が再現されている。ここで、鍵盤用力覚付与テーブル80に含まれている第1のエスケープメント駆動制御情報は、自然鍵盤楽器の鍵盤におけるエスケープメント領域の操作感覚を再現するためのテーブルデータである。したがって、領域Dで鍵120に生じる反力は、この第1のエスケープメント駆動制御情報によって再現されたものである。
〔ペダル装置〕
次に、ペダル装置20について説明する。図7は、ペダル装置20の構成例を示す図で、(a)は、概略側断面図、(b)は、正面図である。ペダル装置20は、フレーム232に対して回動可能に支持された複数のペダルを備えており、本実施形態では、グランドピアノにおけるダンパーペダル、ソステヌートペダル、ソフトペダルに相当する3本のペダルが設置されているが、同図では、ダンパーペダルに相当する演奏者から見て最も右側に位置するペダル220のみを示し、他のペダルは図示を省略している。本発明は、ダンパーペダルに相当するペダル220に適用されるので、以下では、ペダル220及びその周辺の構成部品について説明する。
フレーム232は、金属などで構成された板状部材を適宜に折り曲げて、略矩形の箱型に形成されている。フレーム232は、複数のペダルに対応する位置に跨る横長形状で、前壁232aにおけるペダル220の取付箇所には、開口部233が形成されている。ペダル220は、長尺状に形成された略平板状の部材からなり、前側が足で踏込操作する操作部220aになっており、後側がフレーム232に取り付けられる取付部220bになっている。そして、フレーム232の開口部233は、ペダル220の断面よりも大きな矩形状に形成されている。
ペダル220は、取付部220bが開口部233からフレーム232内に差し込まれた状態で、操作部220aがフレーム232の前方に突出している。このとき、ペダル220は、取付部220bの中間がペダル支点234に支持されており、該ペダル支点234を中心として長手方向が上下に揺動自在になっている。
ペダル220の下面側には、復帰バネ235が設置されている。復帰バネ235は、金属などの弾性を有する線材をコイル状に巻き回してなるバネ材であり、コイル軸方向に圧縮されることで弾発力(付勢力)を生じるものである。復帰バネ235は、ペダル支点234より前方に配置されており、その位置のペダル220を上方に向かって付勢するようになっている。
また、ペダル220の操作に対して電気的な駆動力による反力を発生する駆動手段として、ペダル220の上面側に設置したソレノイド240を備えている。ソレノイド240は、ペダル支点234よりも後方に配置されており、コイル241と、コイル241の中央に設置された進退移動可能なロッド242とを備えている。また、コイル241の外側(上下及び外周)を覆う位置には、ヨーク(磁性体)246が設置されている。ロッド242は、軸方向が上下方向に配置され、下端がペダル220の上面に当接している。また、ロッド242の上端には、平板状の板部材243が取り付けられている。板部材243は、その面がロッド242の軸方向と直交するように取り付けられており、板部材243がヨーク246の上端に当接する位置で、ロッド242の下端が初期位置にあるペダル220の上面に当接するようになっている。また、板部材243と、ソレノイド240の真上に張り出したフレーム232の上壁232bとの間には、コイル状のバネ(付勢手段)244が介在している。このバネ244により、ロッド242が下方へ付勢されている。
また、ペダル装置20には、ペダル220の位置を検出するペダル位置センサ245が設けられている。ペダル位置センサ245は、一例として、ペダル220に取り付けたシャッタ245aと、該シャッタ245aにより光路が遮蔽されるフォトセンサ245bとを備えた光学式センサで構成することができる。この場合、ペダル220の位置変化に応じて遮光量が連続的に変化するようにシャッタ245aの形状を設定し、フォトセンサ245bの出力信号からペダル220の位置が一義的に特定されるようにする。なお、ここでは、ペダル位置センサ245を設置した場合を説明したが、それ以外にも、ペダル220の速度、加速度、角度、角速度をそれぞれ検出するペダル速度センサ、ペダル加速度センサ、ペダル角度センサ、ペダル角速度センサのいずれか、あるいはこれらのうちの複数を設置することも可能である。
また、ペダル220には、ガイド部材236が取り付けられている。ガイド部材236は、取付部220bの前端に設置された略矩形状の部材である。このガイド部材236は、ペダル220の揺動に伴ってフレーム232内で上下移動してペダル220の揺動をガイドする。また、ペダル220は、踏込操作が開始される最上位置で、ガイド部材236の上端が上限ストッパー237に当接するようになっている。一方、最上位置にあるペダル220の下面に対して所定距離を有する位置には、ペダル220の下限位置を規定するための下限ストッパー238が設置されている。なお、図示は省略するが、ペダル装置20には、ペダル220の動作を電気的な出力に変換するためのスイッチ接点やボリューム検出部などの機構も設けられている。
ペダル装置20の駆動制御回路は、図1に示すように、主制御部50と、主制御部50の指令に応じてソレノイド240に駆動用のPWM(パルス幅変調)信号を出力するソレノイド制御ドライバ248を備えている。主制御部50のフラッシュメモリ52には、ペダル用力覚付与テーブル85が格納されている。ペダル位置センサ245によって検出されたペダル220の位置情報は、主制御部50に出力されるようになっている。主制御部50からの制御信号は、ソレノイド制御ドライバ248に入力される。ソレノイド制御ドライバ248は、主制御部50からの制御信号に基づいてソレノイド240に駆動用の信号を供給する。
図4(b)は、フラッシュメモリ52に格納されたペダル用力覚付与テーブル85の構成例を示す図である。ペダル用力覚付与テーブル85は、ペダル装置20のソレノイド240が発生すべき反力のパターンを格納したテーブルである。ペダル用力覚付与テーブル85には、押ペダル用のテーブル86と戻りペダル用のテーブル87が用意されている。さらに、押ペダル用のテーブル86と戻りペダル用のテーブル87はそれぞれ、反力パターンテーブル86a,87aと指令値テーブル86b,87bを備えている。反力パターンテーブル86a,87aは、ペダル位置センサ245の検出値(または該検出値から算出したペダル220の速度、加速度などの値)に対するソレノイド240の出力値を参照するためのテーブルである。指令値テーブル86b,87bは、ソレノイド240に上記の出力値を発生させる指令値を参照するためのテーブルである。なお、ペダル用力覚付与テーブル85は、後述するように、自然鍵盤楽器のペダルにおけるハーフペダル領域の操作感覚を再現するための駆動制御情報(第1のハーフペダル駆動制御情報)を含んでいる。
ペダル装置20の動作について説明する。ペダル220が初期位置にあるとき、ペダル220の自重と、ガイド部材236が上限ストッパー237から受ける抗力と、復帰バネ235の付勢力と、バネ244の付勢力の各力が釣り合っており、ペダル220は、前後方向(長手方向)が略水平な状態(図7における実線で示す状態)で静止している。この状態のペダル220を踏み込むと、ペダル支点234を中心に回動し、復帰バネ235が圧縮されるとともに、バネ244が圧縮されてロッド242が上方へ移動する。これにより、ペダル220には、復帰バネ235の付勢力による反力とバネ244の付勢力による反力とが付与される。さらにペダル220を踏み込むと、ペダル220は、図7における点線で示すように、下限ストッパー238に当接して停止する。一方、ペダル220を踏み込んでいる力を弱めると、復帰バネ235の付勢力とバネ244の付勢力とによりペダル220は逆向きに回動し、初期位置へ復帰する。このようにペダル220が復帰バネ235やバネ244の付勢力で移動する過程で、ソレノイド240のコイル241に電圧を印加してロッド242を駆動させれば、復帰バネ235やバネ244からペダル220に与えられる反力をソレノイド240による反力でアシストすることができる。したがって、主制御部50によりソレノイド240の駆動を制御することで、ペダル220の操作に対する反力の力覚制御を行うことができる。
図8は、ペダル220の力覚制御の手順を説明するためのフローチャートである。ペダル220の力覚制御では、まず、ペダル220の位置情報を初期化する(ステップST2−1)。その後、ペダル位置センサ245で検出したペダル220の位置(踏込量)を読み込む(ステップST2−2)。また、ペダル速度センサを設けている場合は、検出したペダル220の速度を読み込み(ステップST2−3)、ペダル加速度センサを設けている場合は、検出したペダル220の加速度を読み込む(ステップST2−4)。ペダル速度センサを設けていない場合は、ペダル位置センサ245で検出したペダル位置データの差分からペダル速度を算出してもよい(ステップ2−3)。また、ペダル加速度センサを設けていない場合は、ペダル速度データの差分からペダル加速度を算出(ステップST2−4)してもよい。なお、ペダル装置20に角度センサや角速度センサを設置している場合は、それらで検出したペダル角度やペダル角速度を読み込んでもよい。
次に、ステップST2−3で読み込んだペダル速度の検出値(あるいは算出値)の符号(正負)を判定する(ステップST2−5)。その結果、ペダル速度が正である場合は、ペダル220が踏み込まれる(押ペダル)過程にあるので、ペダル用力覚付与テーブル(図4(b)参照)85から押ペダル用テーブル86を選択し、これを読み込む(ステップST2−6)。一方、ペダル220の速度が負である場合は、ペダル220の踏み込みが解除される(戻りペダル)過程にあるので、ペダル用力覚付与テーブル85から戻りペダル用テーブル87を選択し、これを読み込む(ステップST2−7)。続いて、読み込んだ上記いずれかのテーブル86,87の反力パターンテーブル86a,87aを参照して、ソレノイド240の出力を決定するとともに、指令値テーブル86b,87bを参照して、ソレノイド240の出力を発生させるための指令値を決定する。そして、決定した指令値をソレノイド制御ドライバ248へ出力し(ステップST2−8)、ソレノイド240を駆動する。その後、新たなペダル位置情報の入力があるか否かを判断する(ステップST2−9)。その結果、新たなペダル位置情報の入力があれば(YES)、ステップST2−2からの処理を再度実行し、新たなペダル位置情報の入力が無ければ(NO)、処理を終了する。このようにして、ペダル用力覚付与テーブル85に基づくペダル反力の制御が行われる。
図9(a)は、ペダル用力覚付与テーブル85による力覚制御を行った場合のペダル220の変位(踏込量)Xと反力(荷重)Fの関係を示すグラフである。なお、このグラフでは、ペダル踏込時における反力分布のみを示しており、ペダル戻り時における反力分布は省略している。また、この力覚制御における反力パターン(ペダル変位に対する反力分布)は、付勢手段である復帰バネ235及びバネ244による反力F1と、駆動手段であるソレノイド240による反力F2とが合わさった反力になっている。
ペダル用力覚付与テーブル85による力覚制御では、ペダル踏込時において、ペダル220の踏込量が小さく、反力の変化率が小さい領域A1と、ペダル220の踏込量が増して、反力の変化率が大きくなる領域A2と、さらにペダル220の踏込量が増して、再度、反力の変化率が小さくなる領域A3の三種類の領域を有している。領域A1では、アコースティックピアノにおいてダンパーの荷重がダンパーペダルに掛かる前の状態が再現され、領域A2では、ペダルとダンパーの連結部を介してダンパーに踏込力が伝わり始め、連結部全体が有する弾性要素からの反力が次第に増加する状態が再現され、領域A3では、ダンパーが完全に弦から離れて摩擦が減少するとともに、連結部全体が有する弾性要素からの反力が増加しなくなる状態が再現されている。
このように、本実施形態の力覚制御装置では、アコースティックピアノのダンパーペダルの反力パターンが忠実に再現されている。この場合、特に、領域A2の後半から領域A3の前半にかけて、ダンパーのリフトに起因するハーフペダル領域Mの反力パターンが再現されている。したがって、ペダル220がハーフペダル領域Mに位置する際の押鍵に伴う楽音の音色や響きを適宜に設定しておけば、電子鍵盤楽器1の演奏者は、ハーフペダル領域Mを利用して楽音の音色や響きなどを微妙に変化させる高度な演奏操作を行うことが可能となる。ここで、ペダル用力覚付与テーブル85に含まれている第1のハーフペダル駆動制御情報は、自然鍵盤楽器のペダルにおけるハーフペダル領域Mの操作感覚を再現するためのデータである。したがって、上記のハーフペダル領域でペダル220に生じる反力は、この第1のハーフペダル駆動制御情報によって再現されたものである。
〔エスケープメント領域又はハーフペダル領域の操作感覚変更〕
本実施形態では、既述のように、電子鍵盤楽器1とのデータの授受が可能な外部機器であるPC70、電子鍵盤楽器1又はPC70で読取可能なDVD−ROMなどの記録媒体73、電子鍵盤楽器1又はPC70が接続された通信ネットワーク75上のサーバ72、の少なくともいずれかに、電子鍵盤楽器1の演奏技術に関する教習用教材ソフトSが格納されている。図10は、教習用教材ソフトSに含まれるデータ内容の一例を示す概念図である。同図に示すように、教習用教材ソフトSは、教習内容を区分する複数の教習テーマ91及び教習レベルを区分する複数のレッスン92を含んで構成されている。
すなわち、図10に示す教習用教材ソフトSでは、教習テーマ91は、教習テーマ1、教習テーマ2、教習テーマ3・・・に分類されており、さらに、各教習テーマに含まれるレッスン92は、Lesson1、Lesson2、Lesson3・・・に分類されている。各Lessonには、PC70のディスプレイ71の表示内容を制御するための表示制御データ93、鍵盤装置10のソレノイド140又はペダル装置20のソレノイド240の駆動を制御するためのソレノイド駆動制御データ94、具体的な演奏方法などの指示を行うための演奏指示データ95などが格納されている。そして、図10に示す例では、教習テーマ1のLesson1のソレノイド駆動制御データ94内に、鍵盤用力覚付与テーブル80´が含まれている。また、教習テーマ3のLesson1のソレノイド駆動制御データ94内に、ペダル用力覚付与テーブル85´が含まれている。すなわち、教習用教材ソフトSが有する複数の教習テーマ91またはレッスン92の少なくともいずれかに対応して、鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´が格納されている。
鍵盤用力覚付与テーブル80´は、第2のエスケープメント駆動制御情報を含んでいる。この第2のエスケープメント駆動制御情報は、フラッシュメモリ52に格納された元の鍵盤用力覚付与テーブル80に含まれる第1のエスケープメント駆動制御情報によって再現された鍵120のエスケープメント領域の操作感覚を変更するための情報である。また、ペダル用力覚付与テーブル85´は、第2のエスケープメント駆動制御情報を含んでいる。この第2のエスケープメント駆動制御情報は、フラッシュメモリ52に格納された元のペダル用力覚付与テーブル85に含まれる第1のハーフペダル駆動制御情報によって再現されるハーフペダル領域の操作感覚を変更するための情報である。
また、本実施形態の電子鍵盤楽器1は、既述のように、接続端子部69又は通信インターフェイス68を介して外部のPC70又はインターネット75に接続されている。そして、電子鍵盤楽器1では、これら接続を経由して、教習用教材ソフトSに含まれる複数の教習テーマ91又はレッスン92から1つの教習テーマ91またはレッスン92を読み出し、当該読み出した教習テーマ91又はレッスン92に含まれている鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´を取り込むようになっている。
そして、本実施形態の電子鍵盤楽器1では、鍵盤120のエスケープメントに関する教習が行われる際、通信インターフェイス68又は接続端子部69を介して取り込んだ教習用教材ソフトSに含まれる鍵盤用力覚付与テーブル80´で、あらかじめフラッシュメモリ52に記憶されている元の鍵盤用力覚付与テーブル80を書き換えて変更する。そして、変更した鍵盤用力覚付与テーブル80´に基づいて、ソレノイド140の駆動を制御することで、変更した鍵120のエスケープメント領域の操作感覚を出力するようになっている。
この手順を具体的に説明する。図11は、エスケープメントに関する教習に基づく処理のフローチャートである。同図に示す処理は、現在のレッスンが鍵120のエスケープメント(いわゆるジャック抜け)に関するものである場合に行われる。したがって、現在のレッスンがエスケープメントに関するものでない場合(ステップST3−1でNO)は、そのまま処理を終了する。現在のレッスンがエスケープメントに関するものである場合(ステップST3−1でYES)、PC70のディスプレイ71に教習用教材ソフトSから読み出されたエスケープメントに関する教習内容が表示される(ステップST3−2)。そして、電子鍵盤楽器1は、教習用教材ソフトSに含まれる鍵盤用力覚付与テーブル80´をPC70から取り込み、これをフラッシュメモリ52に記憶されている元の鍵盤用力覚付与テーブル80と書き換える(ステップST3−3)。その後、電子鍵盤楽器1の主制御部50は、書き換えられた鍵盤用力覚付与テーブル80´に従って、PWMディユーティ比を変更した指令値をソレノイド制御ドライバ148に出力する(ステップST3−4)。
図6(b)は、書き換えられた鍵盤用力覚付与テーブル80´による力覚制御を行った場合の鍵120の変位(押鍵量)と鍵120から押鍵操作をする指にかかる反力の分布との関係を示すグラフである。教育用教材ソフトSに含まれる鍵盤用力覚付与テーブル80´は、フラッシュメモリ52に記憶されている元の鍵盤用力覚付与テーブル80によるエスケープメント領域の押鍵に対する反力(負荷)を約2倍に変更する内容の力覚付与テーブルである。したがって、図6(b)に示すように、エスケープメント領域の押鍵に対する反力(負荷)が通常時に比べて約2倍に強調される。(ステップST3−5)。エスケープメントに関するレッスンが終了する前(ステップST3−6でNO)は、ステップST3−4及びステップST3−5の処理を繰り返して実行する。エスケープメントに関するレッスンが終了したら(ステップST3−6でYES)、PC70のディスプレイ71に次のレッスン内容が表示される(ステップST3−7)。この際、主制御部50は、フラッシュメモリ52内の書き換えられていた鍵盤用力覚付与テーブル80´を元の鍵盤用力覚付与テーブル80に戻す。これにより、エスケープメント領域のタッチ感が通常の負荷に戻される(ステップST3−9)ので、鍵120の反力分布は、再度、図6(a)に示す分布になる。
一方、本実施形態の電子鍵盤楽器1では、ペダル220の操作におけるハーフペダルに関する教習が行われる際、ペダル220の踏込操作に対する力覚制御において、通信インターフェイス68又は接続端子部69を介して取り込んだ教習用教材ソフトSに含まれるペダル用力覚付与テーブル85´で、フラッシュメモリ52に記憶されている元のペダル用力覚付与テーブル85を書き換えて変更する。そして、変更したペダル用力覚付与テーブル85´に基づいてソレノイド240の駆動を制御することで、変更したハーフペダル領域の操作感覚を出力するようになっている。
この手順を具体的に説明する。図12は、ハーフペダルに関する教習に基づく処理のフローチャートである。同図に示す処理は、現在のレッスンがハーフペダル操作に関するものである場合に行われる。したがって、現在のレッスンがハーフペダル操作に関するものでない場合(ステップST4−1でNO)は、そのまま処理を終了する。現在のレッスンがハーフペダル操作に関するものである場合(ステップST4−1でYES)、PC70のディスプレイ71に教習用教材ソフトSから読み出されたハーフペダルに関する教習内容が表示される(ステップST4−2)。そして、電子鍵盤楽器1は、教育用教材ソフトSに含まれるペダル用力覚付与テーブル85´をPC70から取り込み、これでフラッシュメモリ52に記憶されている元のペダル用力覚付与テーブル85を書き換える(ステップST4−3)。その後、電子鍵盤楽器1の主制御部50は、書き換えられたペダル用力覚付与テーブル85´に従って、PWMディユーティ比を変更した指令値をソレノイド制御ドライバ248に出力する(ステップST4−4)。
ここで、図9(b)は、書き換えられたペダル用力覚付与テーブル85´による力覚制御を行った場合のペダル220の変位(踏込量)Xと反力(荷重)Fとの関係を示すグラフである。図9(b)に示すように、教育用教材ソフトSに含まれるペダル用力覚付与テーブル85´は、フラッシュメモリ52に記憶されている元のペダル用力覚付与テーブル85によるハーフペダル領域の踏込感覚(負荷)を約2倍に変更する内容の力覚付与テーブルである。したがって、図9(b)に示すように、ハーフペダル領域のペダル踏込感(負荷)が通常時に比べて約2倍に強調される。(ステップST4−5)。ハーフペダルに関するレッスンが終了する前(ステップST4−6でNO)は、ステップST4−4及びステップST4−5の処理を繰り返して実行する。ハーフペダルに関するレッスンが終了したら(ステップST4−6でYES)、PC70のディスプレイ71に次のレッスン内容が表示される(ステップST4−7)。この際、主制御部50は、フラッシュメモリ52内の書き換えられていたペダル用力覚付与テーブル85´を元のペダル用力覚付与テーブル85に戻す。これにより、ハーフペダル領域のペダル踏込感が通常の負荷に戻される(ステップST4−9)ので、ペダル220の反力分布は、再度、図9(a)に示す分布になる。
以上説明したように、本実施形態の電子鍵盤楽器1では、フラッシュメモリ52に記憶されている鍵盤用力覚付与テーブル80によって再現されるエスケープメント領域の鍵120の操作感覚を変更するための鍵盤用力覚付与テーブル80´、又はペダル用力覚付与テーブル85によって再現されるハーフペダル領域の鍵120の操作感覚を変更するためのペダル用力覚付与テーブル85´を外部から取り込み、フラッシュメモリ52に記憶されている元の鍵盤用力覚付与テーブル80又はペダル用力覚付与テーブル85を書き換えて変更する。そして、変更後の鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´に基づいて、鍵120のエスケープメント領域の操作感覚、又はペダル220のハーフペダル領域の操作感覚を作り出すことができる。この場合、あらかじめフラッシュメモリ52に記憶されている元の鍵盤用力覚付与テーブル80又はペダル用力覚付与テーブル85に基づく操作感覚よりも、変更後の鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´に基づく操作感覚の方が、エスケープメント領域における鍵120の演奏操作に対する反力、又はハーフペダル領域におけるペダル220の演奏操作に対する反力が大きくなるようにしている。
以上説明したように、本実施形態の電子鍵盤楽器1によれば、外部から取り込んだ教習用教材ソフトSに含まれる情報に従って、鍵120のエスケープメント領域に関する操作感覚、又はペダル220のハーフペダル領域に関する操作感覚を変化させることで、演奏技術の習得者に対して、エスケープメント領域又はハーフペダル領域に関する教習内容を感覚的により分かり易く習得させることができる。すなわち、上記のように、エスケープメント領域において鍵120から指にかかる荷重(負荷)の変化量を通常時の約2倍程度に大きくしたり、ハーフペダル領域においてペダル220から足にかかる荷重(負荷)の変化量を通常時の約2倍程度に大きくしたりすることで、エスケープメント領域又はハーフペダル領域の負荷を強調すれば、演奏初心者にエスケープメントやハーフペダルの感覚を良好に把握させることが可能となる。これにより、演奏技術を習得する者が、エスケープメントやハーフペダルの教習内容を分かり易く習得できるようになる。また、外部から取り込んだ教習用教材ソフトSのデータに従って鍵120の操作感覚を変化させるので、エスケープメント又はハーフペダルの教習を行うときにだけ、鍵120から指にかかる荷重(負荷)又はペダル220から足にかかる荷重(負荷)を変化させることができ、それ以外のときは、通常の荷重とすることができる。したがって、鍵120やペダル220の操作感覚を教習内容に応じて必要なときにだけ適切に変化させることができる。
また、本実施形態では、電子鍵盤楽器1の演奏技術に関する教習用教材ソフトSは、電子鍵盤楽器1とのデータの授受が可能なPC70、電子鍵盤楽器1又はPC70でデータ読取可能なDVD−ROM73、電子鍵盤楽器1又はPC70が接続された通信ネットワーク75上のサーバ72の少なくともいずれかに格納されている。そして、PC70で教習用教材ソフトSに含まれるいずれかの教習テーマ91又はレッスン92を読み出した際に、電子鍵盤楽器1の主制御部50は、当該読み出した教習テーマ91又はレッスン92に対応する鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´を取り込み、それに基づいて、鍵120のエスケープメント領域の操作感覚、又はペダル220のハーフペダル領域の操作感覚を変更するようにしている。これにより、教習用教材ソフトSの内容に従って電子鍵盤楽器1の鍵120のタッチ感又はペダル220の踏込感を変化させることができるので、教習用教材ソフトSの内容と鍵120又はペダル220の操作感覚とを連動させることができる。したがって、演奏技術の習得者にとって、エスケープメントやハーフペダルに関する教習用教材ソフトSの内容を感覚的に理解し易くなり、これらの迅速かつ確実な習得が可能となる。
また、本実施形態の電子鍵盤楽器1では、教習用教材ソフトSは、インターネット75上のサーバ72に格納されていてもよい。この場合、インターネット75経由でPC70にダウンロードされた教習用教材ソフトSから、鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´を取り込むようにするとよい。これによれば、演奏技術の習得者が自宅などにいながら、最新内容の教習用教材ソフトSを容易に入手することができ、当該教習用教材ソフトSから取り込んだ鍵盤用力覚付与テーブル80´又はペダル用力覚付与テーブル85´によって、エスケープメントやハーフペダルの演奏技術を効果的に習得できるようになる。したがって、教習用教材ソフトSを用いた演奏教習の利便性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。たとえば、上記実施形態では、DVD−ROMなどの記録媒体73に記録された教習用教材ソフトSをPC70で読み出すか、あるいはインターネット75上のサーバ72に格納されている教習用教材ソフトSをPC70にダウンロードし、当該PC70から教習用教材ソフトSに含まれるデータを電子鍵盤楽器1に取り込む場合を説明したが、これ以外にも、インターネット75上のサーバ72に格納されている教習用教材ソフトSは、電子鍵盤楽器1に直接ダウンロードすることも可能である。その場合は、電子鍵盤楽器1の表示装置63で教習用教材ソフトSの内容を表示したり、音声出力部65で音声を出力したりすることができる。また、電子鍵盤楽器1にDVD−ROMなどの記録媒体73の読取装置を設けていれば、記録媒体73に記録された教習用教材ソフトSを電子鍵盤楽器1で直接読み取ることもできる。
また、上記実施形態では、エスケープメント領域の操作感覚の変更や、ハーフペダル領域の操作感覚の変更を行う際、電子鍵盤楽器1のフラッシュメモリ52に格納されている力覚付与テーブル80,85を、教習用教材ソフトSに含まれる力覚付与テーブル80´,85´で書き換えて変更する場合を説明したが、これ以外にも、変更前の力覚付与テーブル80,85と変更後の力覚付与テーブル80´,85´の両方をあらかじめ電子鍵盤楽器1のフラッシュメモリ52に格納しておき、力覚付与テーブル80,85と力覚付与テーブル80´,85´との選択に関する指示データを電子鍵盤楽器1に取り込むことで、エスケープメント領域の操作感覚又はハーフペダル領域の操作感覚の変更を行うように構成することも可能である。この場合、上記の指示データは、教習用教材ソフトSに含まれるようにしてよい。
また、上記実施形態におけるエスケープメント領域の操作感覚やハーフペダル領域の操作感覚の具体的な変更方法は一例である。したがって、上記のように、エスケープメント領域の操作感覚やハーフペダル領域の操作感覚を元の負荷の2倍程度に強調するような変更を行う以外にも、エスケープメント領域やハーフペダル領域の荷重を他の分布や大きさに変更することも可能である。