以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態を説明する。図1に示す本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、図示しない医療機器に設けられた管路内を洗浄するためのブラシ2が使用可能であるか否かを判定するための装置である。
なお、管路を備えた医療機器の形態は特に限定されるものではないが、例えば生体内に導入される挿入部を有した内視鏡、内視鏡の挿入部を覆う管状のシース、又は生体組織の凝固切開を行う超音波凝固切開具等が挙げられる。
また、ブラシ2の形態は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、ブラシ2は、管路内に挿入可能であって、金属等の材料からなるワイヤ2bと、ワイヤ2bに固定された複数の毛からなる植毛部2aを具備して構成されている。ブラシ2は、ワイヤ2bに沿った方向へ力が加えられることによって管路内を進退移動し、植毛部2aと管路内周面との摺接によって管路内の汚れを落とすものである。以下、洗浄時における植毛部2aの進退移動の方向、すなわちワイヤ2bに沿った方向を、ブラシ2のブラッシング方向と称するものとする。
本実施形態では、植毛部2aは、ワイヤ2bから放射状に延出するように固定された複数の毛が設けられて構成されており、植毛部2aの毛の先端は、ワイヤ2bを略中心とした外径DBの略円筒面にまで達するように設けられている。また、植毛部2aは、ワイヤ2bに沿って長さLBの範囲に設けられている。
なお、ブラシ2において、毛が設けられた領域である植毛部2aの外径DB及び長さLBは、ブラシ2を使用して洗浄する医療機器の管路の形状に応じて適宜に定められるものである。また、図示しないがワイヤ2bは、ブラシ2を用いて洗浄を行う医療機器の管路長に対応した長さと、植毛部2aを管路内において管路に沿って摺動させるに足る弾性を有する。
ブラシ寿命検知装置1は、挿入部10及び測定部20を具備して構成されている。挿入部10は、ブラシ2を挿入可能であって、かつ挿入部10内においてブラシ2がブラッシング方向に移動可能に構成されている。本実施形態では一例として、挿入部10はブラシ2を挿入可能な所定の開口形状を有する穴部11を具備して構成されている。
穴部11は、内部にブラシ2を挿入した場合に、植毛部2aの外周が穴部11の内周面に接触し、かつ少なくとも植毛部2aが全て穴部11内に収容可能な形状を有する。本実施形態では穴部11は、内径DH、深さLHの略円形状の穴である。ここで、穴部11の内径DHは、ブラシ2の植毛部2aを挿入可能であって、かつ植毛部2aの外径DBよりも小さい。また、穴部11の深さLHは、植毛部2aの長さLBよりも深い。
言い換えれば、挿入部10の穴部11は、内部においてブラシ2の植毛部2aが所定の距離だけブラッシング方向に摺動可能なように構成されている。穴部11の内径DHは、前述のようにブラシ2の植毛部2aの寸法によって定められるものであるが、内径DHは、ブラシ2の設計仕様においてブラシ2を用いた洗浄に適しているとされる管路の内径の範囲内であることが好ましい。
また、穴部11の内周面を構成する材料は、金属や合成樹脂等、特に限定されるものではないが、ブラシ2を用いて洗浄する医療機器の管路の内周面を構成する材料と同一であることが好ましい。一例として、医療機器が内視鏡であって、その管路がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなるのであれば、穴部11の内周面は、フッ素樹脂によって構成されることが好ましい。また、穴部11の内周面の表面粗さは特に限定されるものではないが、ブラシ2を用いて洗浄する医療機器の管路の内周面の表面粗さと略同等であることが好ましい。
より具体的に本実施形態では、挿入部10は、内径DH、長さLHの略円筒形状の筒状部12を有してなり、この筒状部12の一端部13側が開放された状態とされている。すなわち、穴部11は、筒状部12の内周部であって、筒状部12の一端部13側に開口している。また、筒状部12の他端部14には、雄ねじ部15が設けられている。
以上に述べたように、本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、挿入部10の穴部11内にブラシ2の植毛部2aが挿入された場合に、植毛部2aの外周が穴部11の内周面に接触するように構成されている。このため、植毛部2aを穴部11内において移動させる場合、植毛部2aと穴部11の内周面との間には摩擦力が生じる。
なお、本実施形態では、挿入部10は、円形の穴部11を具備して構成されているが、挿入部10は、内部においてブラシ2の植毛部2aがブラッシング方向に移動可能な構成であればよい。例えば、挿入部10の穴部11の形状は矩形や多角形であってもよいし、また例えば、挿入部10は、コ字断面やU字断面のような一部が開放された穴部、言い換えれば内部において植毛部2aが移動可能な溝部を具備して構成されるものであってもよい。
測定部20は、挿入部10と、挿入部10内に挿入されたブラシ2との間に生じる摩擦力を測定する構成を有する。言い換えれば、測定部20は、挿入部10内に挿入されたブラシ2を、挿入部10に対して相対的に移動させるために必要な力を測定する。
本実施形態では、測定部20は、挿入部10の穴部11内にブラシ2の植毛部2aを挿入した状態で、植毛部2aをブラッシング方向に移動させる場合の植毛部2aと穴部11との間の摩擦力を測定するための構成を有する。
植毛部2aを穴部11内でブラッシング方向に移動させるための構成は、特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、植毛部2aを穴部11内に挿入した状態で、使用者が手指等によってワイヤ2bに力を加えることによって植毛部2aを穴部11内において移動させるものとする。
また、植毛部2aと穴部11の内周面との摩擦力を測定する構成は、特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、測定部20は、植毛部2aが穴部11内において移動することによって挿入部10に加えられる力を測定するように構成されている。
より具体的には、測定部20は、測定部20に設けられた一端部21及び他端部23について、一端部21及び他端部23を引き離そうとする方向への力、すなわち引張力を測定する構成を有する。
測定部20は、前記引張力を測定するための図示しない測定機構部と、前記引張力の測定結果を表示する表示部25と、を具備している。測定機構部は、例えばばね秤のように機械的に引張力を測定する構成であってもよいし、例えば歪みゲージや圧電素子のように電子的に引張力を測定する構成であってもよい。
測定部20の一端部21には、雌ねじ部22が設けられている。雌ねじ部22は、挿入部10の他端部14に設けられた雄ねじ部15が螺合する形状を有する。挿入部10の雄ねじ部15と、測定部20の雌ねじ部22とが螺合することにより、測定部20の一端部21に挿入部10の他端部14が連結され固定される。
一方、測定部20の他端部23には、フック24が設けられている。フック24は、ブラシ寿命検知装置1を、基台部3に吊り下げるためのものである。なお、図1に示すように、穴部11の略中心軸の延長線上に、測定部20の一端部21及び他端部23が配置されるように、測定部20と挿入部10とが連結されることが好ましい。
表示部25には、引張力の大きさを示すための目盛26、引張力の測定結果を目盛26を指し示すことで表示する指針27、及び目盛26上において所定の大きさの閾値Thを表示する指標部28が設けられている。閾値Thの値については、後述するものとする。なお、表示部25は、測定した引張力のピーク値(最大値)を表示する、いわゆるピークホールド機能を備えるものであることが好ましい。
なお、本実施形態では表示部25は、目盛26と指針27によって引張力の測定結果を表示する、いわゆるアナログ式の表示形態としたが、表示部25は、液晶表示装置や真空蛍光表示装置等の電子式の表示装置を備え、引張力の測定結果を数値やグラフで表示する、いわゆるデジタル式の表示形態であってもよい。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1において、図2に示すように、挿入部10の穴部11内に、ブラシ2の植毛部2a全体を挿入した後に、図3に示すように、ワイヤ2bに力を加えて植毛部2aを穴部11の開口側(一端部13側)に移動させると、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力は、挿入部10に連結された測定部20に対して一端部21を他端部23から引き離そうとする引張力として作用する。このため、測定部20は、測定部20に作用する引張力を測定することにより、ブラシ2の植毛部2aと挿入部10との間に生じる摩擦力を測定することができる。
以上に説明した構成を有するブラシ寿命検知装置1を用いた、ブラシ2が使用可能であるか否かを判定するためのブラシ寿命検知方法を、以下に説明する。図4に、穴部11の内周面に対して静止した状態の植毛部2aを一端部13側に所定の速度で移動させた場合の、測定部20によって測定される植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力の時間変化のグラフを示す。
図4のグラフにおいて、横軸は時間t、縦軸は摩擦力Fである。また、図4において、曲線C1、C2及びC3は、それぞれ、未使用のブラシ2を使用した場合、再使用を繰り返したが使用可能な状態のブラシ2を使用した場合、及び再使用を繰り返した結果使用不可能となった状態のブラシ2を使用した場合を示している。
穴部11の内周面に対して静止した状態の植毛部2aを移動させるためには、植毛部2aと穴部11の内周面との間の最大静止摩擦力よりも大きな力をワイヤ2bに加えなければならない。この最大静止摩擦力は、植毛部2aと穴部11の内周面との間の動摩擦力よりも大きい。このため、図4に示すように、測定部20によって測定される摩擦力は、植毛部2aの動き始めに最大となるピークが存在し、その後略一定となる。
そして、曲線C1、C2及びC3として示すように、ブラシ2の植毛部2aと、穴部11の内周面との間の摩擦力は、再使用を繰り返すことによる毛の折れ曲がり、毛の脱落、及び毛の弾性の低下等の植毛部2aの劣化によって徐々に弱くなる。
したがって、あらかじめ実験によってブラシ2が使用可能である場合の摩擦力の下限値を求め、この下限値もしくはこの下限値よりも所定の値だけ小さい値を閾値Thとして定めておくことによって、測定部20によって測定された摩擦力が前記閾値Thよりも小さいブラシ2を使用不可能として判定することによって、ブラシ2の寿命を客観的に判定することができる。
なお、測定部20によって測定され表示部25に表示される摩擦力の測定結果において、閾値Thとの比較が容易な値は、最大静止摩擦力に対応するピーク値と、動摩擦力に対応する一定値、の2つの値である。本発明では、この摩擦力のピーク値及び一定値のうち、少なくとも一方を閾値Thと比較することによって、ブラシ2の寿命の判定を行う。
本実施形態では一例として、測定部20によって測定される摩擦力のピーク値が、図4の曲線C1及びC2のように閾値Th以上であれば、そのブラシ2を使用可能な状態であると判定するものとする。これは、本実施形態のように使用者の手指等の力によってブラシ2の植毛部2aを移動させる場合には、植毛部2aを一定の速度で移動させることが困難であることから、摩擦力のピーク値の測定のばらつきの方が一定値の測定のばらつきよりも小さくなるからである。また、測定部20の表示部25が、ピーク値を表示するピークホールド機能を有するものであれば、指標部28が示す閾値Thとの比較が容易となる。
次に、本実施形態のブラシ寿命検知装置1を用いた、ブラシ2が使用可能であるか否かを判定するためのブラシ寿命検知方法の具体例を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS01において、図2に示すように、挿入部10の穴部11内に、ブラシ2の植毛部2a全体を挿入する。次に、ステップS02において、図3に示すように、ワイヤ2bに力を加えることによって、植毛部2aを穴部11の開口側に向かって移動させる。
そして、ステップS03において、測定部20の表示部25において指針27が指し示した摩擦力のピーク値Fmaxを読み取る。次に、ステップS04において、摩擦力のピーク値Fmaxが、閾値Th以上であるか否かを判定する。
本実施形態では、表示部25の目盛26上に、閾値Thを表示する指標部28が設けられていることから、実際には、ステップS02において植毛部2aを穴部11の開口側に向かって移動させた際に、表示部25における指針27が、指標部28が示す閾値Thに達したか否かを確認することによって、ステップS04の判定を行うことができる。
S04の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Thよりも小さい場合には、ステップS05へ移行して、ブラシ2は使用不可能であると判定する。一方、S04の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Th以上であった場合には、ステップS06へ移行してブラシ2は使用可能であると判定する。
以上に説明したように、本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、ブラシ2の植毛部2aを挿入可能な穴部11を有する挿入部10と、挿入部10内においてブラシ2の植毛部2aを挿入部10に対して相対的に移動させた際の、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力を測定する測定部20と、を具備して構成されている。
そして、そしてこのような構成を有するブラシ寿命検知装置1を用いれば、穴部11の開口部から穴部11内に植毛部2aを挿入した後に、植毛部2aを穴部11の開口部側へ移動させ、ブラシ2の植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力の値と、所定の値である閾値Thとの大小を比較する、という単純な作業を行うだけで、ブラシ2が使用可能であるか否かを客観的に判定することができる。すなわち、本実施形態によれば、ブラシ2の寿命を容易かつ確実に判定することができる。
また、本実施形態では、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力の測定結果を表示する表示部25に、所定の閾値Thを示す指標部28が設けられている。このため、本実施形態によれば、摩擦力の測定結果が、この指標部28によって示された閾値Thに達したか否かのみを認識するだけで、ブラシ2が使用可能であるか否かを判定することができる。したがって、測定結果の読み間違い等の人為的ミスが生じにくく、かつ容易な作業でブラシ2の寿命を確実に判定することができる。
なお、本実施形態では、挿入部10及び測定部20を基台3に固定して、ブラシ2の植毛部2aを移動させることによって、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力を測定しているが、本発明はこの形態に限られるものではない。例えば、基台部3に固定されたブラシ2を挿入部10内に挿入し、挿入部10を移動させることによって摩擦力を測定する構成であってもよい。また、測定部20は、挿入部10に固定される形態に限らず、ブラシ2に固定される形態であっても、摩擦力を測定することは可能である。
また、本実施形態では、挿入部10の穴部11内において、植毛部2aを穴部11の開口部側(一端部13側)に移動させた場合の、植毛部2aと穴部11の内周面との摩擦力を測定して、ブラシ2の寿命の判定に用いているが、挿入部10内におけるブラシ2の相対的な移動の方向は本実施形態のみに限られるものではない。
例えば、測定部20が、一端部21と他端部23とを近づけようとする方向の圧縮力を測定可能なものであれば、ブラシ2の植毛部2aを穴部11の奥側(他端部14側)に移動させる際の摩擦力を、測定部20によって測定することができる。
また、測定部20が、引張力及び圧縮力を測定することが可能な、いわゆるプッシュプルゲージと称されるような形態を有するものであれば、穴部11内において植毛部2aを往復の2方向に移動させた場合のそれぞれの摩擦力を測定して、ブラシ2の寿命の判定に用いることができる。
このように、植毛部2aを穴部11内においてブラッシング方向に往復移動させて、各方向への移動時の摩擦力を測定し、その値を比較することによって、植毛部2aの毛が一様に一方向に倒れてしまっているような、洗浄に好ましくない状態を検出することができる。
また、摩擦力の測定は、ブラッシング方向の一方の移動方向について複数回測定される形態であってもよい。このように、摩擦力を複数回測定し、それらの平均値によってブラシ2の寿命の判定を行えば、測定のばらつきによる誤判定を防止することができる。
また、本実施形態では、閾値Thを示す指標部28を、目盛26上の所定の数値を指し示す形態として説明したが、指標部28は本実施形態に限られるものではない。例えば、指標部28は、測定部20による摩擦力の測定結果が閾値Th以上である場合に、使用者に対して視覚や聴覚等によって摩擦力が閾値Thを超えたことを通知する形態であってもよい。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を図6から図8を参照して説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、複数種類のブラシ2についての寿命の判定を行うことができるように構成されている。なお、ブラシ2の種類を定義する要素は、植毛部2aの寸法(直径DB及び長さLB)だけではなく、毛の弾性、材料及び本数等々によって定まる植毛部2aの特性も含まれる。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、ブラシ2の種類に応じて挿入部10の形状を変更可能である点と、表示部25において指標部28によって示される閾値Thの値を変更可能である点が、第1の実施形態と異なる。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、挿入部10が測定部20に対して着脱自在であって、測定部20に連結される挿入部10が、穴部11の内径DHの異なる複数の挿入部10に交換可能に構成されている。
第1の実施形態で説明したように、挿入部10と測定部20とは、雄ねじ15と雌ねじ22が螺合することによって連結されるものであり、着脱可能に構成されている。図示しないが、ブラシ寿命検知装置1は、穴部11の内径DHが異なる複数の挿入部10を備えており、これらをブラシ2の種類に応じて適宜に交換可能に構成されている。
なお、ブラシ2の種類に応じて挿入部10の形状を変更する方法は、本実施形態のようにあらかじめ用意された形状の異なる複数の挿入部10を交換する方法のみに限られるものではない。例えば、挿入部10は、内径DHの異なる複数の穴部11を具備してなり、ブラシ2の種類に応じてブラシ2を挿入する穴部11を適宜に選択する構成であってもよい。また、例えば、挿入部10は、断面積を変更可能な穴部を具備する構成であってもよい。穴部の断面積を変更可能とする構成としては、例えば穴部の断面形状が略矩形状であって、一方の互いに対向する内壁面間の距離を変更可能とする構成が考えられる。
測定部20は、表示部25において指標部28によって示される閾値Thの値を変更可能に構成されている。表示部25が、目盛26及び指針27を用いたアナログ式の表示形態を有する本実施形態では、図6に示すように、指標部28が目盛26に沿って移動可能に設けられている。これにより、本実施形態の表示部25は、指標部28を目盛26上の任意の数値を指し示す位置に移動して固定することにより、閾値Thの値を任意に変更することができる。
なお、指標部28によって示される閾値Thを変更可能にするための構成は、本実施形態に限られるものではない。例えば、指標部28は表示部25に固定されており、指標部28に対して目盛26及び指針27の原点が移動可能な構成であってもよい。このような構成であれば、閾値Thを変更しても、表示部25上における指標部28の位置は常に一定であるため、指標部28に対する指針27の位置関係の確認を行いやすくなる。
また、例えば、表示部25がいわゆるデジタル式の表示形態である場合には、ボタンスイッチ等の入力装置を用いて、表示装置に表示される閾値Thの値を変更する。また、表示部25がデジタル式の表示形態である場合には、表示部25は、あらかじめ複数の値の異なる閾値Thを記憶する記憶部を具備し、この記憶部に記憶された閾値Thの中から選択して表示装置に表示する形態であってもよい。
以上に説明したように、ブラシ寿命検知装置1は、ブラシ2の種類に応じて挿入部10の形状、及び閾値Thの値を変更することが可能に構成されているものであるが、このブラシ2の種類に応じた、挿入部10の形状及び閾値Thの選択は、あらかじめ定められた対応関係に基づいて行われる。
本実施形態では一例として、図7に示すような対応表に基づいて、寿命の判定を行うブラシ2の種類に応じた挿入部10の穴部11の内径DH及び閾値Thを決定する。本実施形態では、図7に示すように、ブラシ2についてはブラシA、ブラシB及びブラシCの3種類が存在し、挿入部10については、穴部11の内径DHが1mm〜3.6mmである6種類が存在する。
例えば本実施形態では、寿命の判定を行うブラシ2の種類がブラシAである場合には、穴部11の内径DHが1mm又は1.2mmの挿入部10を用いる。また、ここで穴部11の内径DHが1mmの挿入部10を選択した場合には、閾値Thは50gである。
次に、本実施形態のブラシ寿命検知装置1を用いた、ブラシ2の寿命検知方法の具体例を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS21において、図7の対応表を参照して、寿命の判定を行うブラシ2の種類に対応した内径DHの穴部11を有する挿入部10を選択し、測定部20に連結する。ここで、対応表において複数種類の挿入部10がブラシ2の寿命の判定に対応している場合には、当該ブラシ2を使用して洗浄する医療機器の管路の内径に最も近いものを選択する。
次に、ステップS22において、図7の対応表を参照して、寿命の判定を行うブラシ2の種類と、ステップS21で選択した挿入部10の穴部11の内径DHと、に対応した閾値Thを確認する。そして、表示部25において、この対応した閾値Thを示すように指標部28を設定する。本実施形態では、指標部28を移動させることによって、目盛26上において指標部28が指し示す数値を、前記対応した閾値Thに変更する。
そして、ステップS23において、挿入部10の穴部11内に、ブラシ2の植毛部2a全体を挿入する。次に、ステップS24において、ワイヤ2bに力を加えることによって、植毛部2aを穴部11の開口側に向かって移動させる。
次に、ステップS25において、測定部20の表示部25において指針27が指し示した摩擦力のピーク値Fmaxを読み取る。次に、ステップS26において、摩擦力のピーク値Fmaxが、閾値Th以上であるか否かを判定する。
S26の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Thよりも小さい場合には、ステップS27へ移行して、ブラシ2は使用不可能であると判定する。一方、S26の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Th以上であった場合には、ステップS28へ移行してブラシ2は使用可能であると判定する。
以上に説明した本実施形態のブラシ寿命検知装置1を用いれば、異なる形状や特性を有する複数種類のブラシ2についての寿命の判定を行うことができる。その他の効果は、第1の実施形態と同様である。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を図9から図11を参照して説明する。以下では第2の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第2の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、第2の実施形態と同様に、複数種類のブラシ2についての寿命の判定を行うことができるように構成されている。そして本実施形態のブラシ寿命検知装置1は、測定部20おいて測定された摩擦力を、所定の範囲Rと比較する構成である点が第2の実施形態と異なる。
具体的に、所定の範囲Rとは、所定の2つの値によって定められる摩擦力の値の範囲であり、本実施形態では、所定の範囲Rは、下限閾値Thl以上、上限閾値Thu以下の値の範囲とする。
そして、本実施形態のブラシ寿命検知装置1では、表示部25において、指標部28は、所定の範囲Rを示すように構成されている。表示部25が、目盛26及び指針27を用いたアナログ式の表示形態を有する本実施形態では、図9に示すように、指標部28は、下限閾値Thlを示す下限指標28aと、上限閾値Thuを示す上限指標28bを具備して構成されている。
下限指標28a及び上限指標28bは、第2の実施形態と同様に、目盛26に沿って移動可能に設けられている。本実施形態の指標部28は、表示部25の目盛上においてそれぞれ所定の値を指し示す下限指標28a及び上限指標28bによって、所定の範囲Rを表示する。
本実施形態の指標部28が示す所定の範囲Rは、ブラシ2の種類及び挿入部10の形状の組み合わせに対応してあらかじめ定められている。本実施形態では、図10に示すような対応表に基づいて、寿命の判定を行うブラシ2の種類に応じた挿入部10の穴部11の内径DHと、所定の範囲Rを定義する下限閾値Thl及び上限閾値Thuを決定する。
例えば本実施形態では、寿命の判定を行うブラシ2の種類がブラシAである場合には、穴部11の内径DHが1mm又は1.2mmの挿入部10を用いる。また、ここで穴部11の内径DHが1mmの挿入部10を選択した場合には、下限閾値Thlは50gであり、上限閾値Thuは80gである。
次に、以上に説明した本実施形態のブラシ寿命検知装置1を用いた、ブラシ2の寿命検知方法の具体例を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS31において、図10の対応表を参照して、寿命の判定を行うブラシ2の種類に対応した内径DHの穴部11を有する挿入部10を選択し、測定部20に連結する。ここで、対応表において複数種類の挿入部10がブラシ2の寿命の判定に対応している場合には、当該ブラシ2を使用して洗浄する医療機器の管路の内径に最も近いものを選択する。
次に、ステップS32において、図10の対応表を参照して、寿命の判定を行うブラシ2の種類と、ステップS31で選択した挿入部10の穴部11の内径DHと、の組み合わせに対応した下限閾値Thlを確認する。そして、表示部25において、この対応した下限閾値Thlを示すように下限指標部28aを設定する。本実施形態では、下限指標部28aを移動させることによって、目盛26上において下限指標部28aが指し示す数値を、前記対応した下限閾値Thlに変更する。
次に、ステップS33において、図10の対応表を参照して、寿命の判定を行うブラシ2の種類と、ステップS31で選択した挿入部10の穴部11の内径DHと、の組み合わせに対応した上限閾値Thuを確認する。そして、表示部25において、この対応した上限閾値Thuを示すように上限指標部28bを設定する。本実施形態では、上限指標部28bを移動させることによって、目盛26上において下限指標部28aが指し示す数値を、前記対応した上限閾値Thuに変更する。以上のステップS32及びステップS33によって、表示部25において、指標部28が所定の範囲Rを示すように設定される。
次に、ステップS34において、挿入部10の穴部11内に、ブラシ2の植毛部2a全体を挿入する。次に、ステップS35において、ワイヤ2bに力を加えることによって、植毛部2aを穴部11の開口側に向かって移動させる。そしてステップS36において、測定部20の表示部25において指針27が指し示した摩擦力のピーク値Fmaxを読み取る。
次に、ステップS37において、摩擦力のピーク値Fmaxが、上限閾値Thu以下であるか否かを判定する。ステップS37の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが上限閾値Thuよりも大きい場合には、ステップS38へ移行して、何らかの異常が発生したと判定する。ここで、何らかの異常とは、例えば、ブラシ2の種類に対して誤った形状の挿入部10や所定の範囲Rを選択してしまった場合等である。
一方、ステップS37の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが上限閾値Thu以下である場合には、ステップS39に移行する。ステップS39では、摩擦力のピーク値Fmaxが、下限閾値Thl以上であるか否かを判定する。
S39の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが下限閾値Thlよりも小さい場合には、ステップS40へ移行して、ブラシ2は使用不可能であると判定する。一方、S39の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが下限閾値Thl以上であった場合には、ステップS41へ移行してブラシ2は使用可能であると判定する。
以上のステップS37からステップS41は、摩擦力のピーク値Fmaxが所定の範囲R内であるか否かを判定し、その判定結果に応じてブラシ2の寿命の判定を行うものである。実際には、表示部25の目盛26上に、所定の範囲Rを表示する指標部28が設けられていることから、ステップS35において植毛部2aを穴部11の開口側に向かって移動させた際に、指針27が示す最大の値が、指標部28が示す所定の範囲R内であったか否かを確認することによって、ステップS37からステップS41の判定を行うことができる。
以上に説明した本実施形態のブラシ寿命検知装置1を用いれば、異なる形状や特性を有する複数種類のブラシ2についての寿命の判定を行うことができる。また、誤った挿入部10や所定の範囲Rの組み合わせによってブラシ2の寿命の判定をしてしまうといった異常を検出することもできるため、より確実にブラシ2の寿命の判定を行うことができる。その他の効果は、第1の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態を図12から図14を参照して説明する。前述した第1から第3の実施形態では、測定部20によって測定され表示部25に表示される摩擦力の値を、使用者が視認してブラシ2の寿命の判定を行う構成であるが、本発明はこの形態に限られるものではない。本実施形態のブラシ寿命検知装置1bは、ブラシ2の寿命の判定をブラシ寿命検知装置1bによって自動で行われる点が、前述した第1から第3の実施形態と異なる。以下では第1から第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図12及び図13に示すように、本実施形態のブラシ寿命検知装置1bは、基台部30、挿入部10b、測定部20b、制御部70、閾値選択部80及び判定表示部50を具備して主に構成されている。
基台部30は、台座部31、移動ステージ部32及びガイド部33を具備して構成されている。台座部31は、本実施形態では机上や装置上に載置もしくは固定可能に構成されている。台座部31には、移動ステージ部32を移動可能に支持するガイド部33が配設されている。
ガイド部33は、移動ステージ部32を、直線状の軸に沿って進退移動可能に案内支持する機構を有する。ガイド部33は、例えば、直線状のレール部と、レール部に沿って走行するスライド部とを具備して構成される。また、移動ステージ部32は、挿入部10bを着脱自在に保持する保持部34を有して構成されている。
挿入部10bは、ブラシ2を挿入可能であって、かつ挿入部20内においてブラシ2が移動可能に構成されている。本実施形態では、挿入部10bは、第1の実施形態と同様に、内径DH、深さLHの穴部11が形成された筒状の部材である。挿入部10bは、穴部11の中心軸が、移動ステージ部32の移動軸と略平行となるように、保持部34によって移動ステージ部32に固定される。
測定部20bは、挿入部10b内に挿入されたブラシ2と、挿入部10bとの間に生じる摩擦力を測定するためのものである。本実施形態では、測定部20bは、台座部31と移動ステージ部32との間に挟持されるように配設されている。測定部20bは、例えば歪みゲージや圧電素子等を具備してなり、移動ステージ部32に対して移動軸と平行な方向に加えられる力を電子的に測定可能なように構成されている。
前述したように、挿入部10bの穴部11が移動ステージ32の移動軸と平行に配設されていることから、測定部20bは、ブラシ2の植毛部2aが穴部11内を移動する際の植毛部2aと穴部11の内周面との摩擦力を測定することができる。
制御部50は、ブラシ寿命検知装置1bの各構成要素の動作を、所定のプログラムに基づいて制御する装置であり、例えば演算装置、記憶装置及び入出力装置等を具備して構成されるコンピュータにより構成される。
制御部70には、記憶部72及び演算部71が設けられている。記憶部72は、ブラシ2の寿命を判定するために用いるための複数の所定の閾値Thを記憶している。また演算部71は、記憶部72に記憶された閾値Thと、測定部20bによって測定された摩擦力とを比較し、その大小関係からブラシ2が使用可能か否かの判定を行うものである。本実施形態では、演算部71は、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力のピーク値Fmaxと、閾値Thとを比較する。なお、第1の実施形態で述べたように、演算部71は、植毛部2aと穴部11の内周面との間の動摩擦力と、閾値Thとを比較するものであってもよい。
閾値選択部80は、制御部70の記憶部72に記憶された複数の閾値Thのうちから1つを選択するためのものである。なお閾値選択部80の構成は、手動又は自動により複数の閾値Thのうちから1つを選択する形態であれば、特に限定されるものではない。
例えば、閾値選択部80は、使用者が指示を入力することが可能な指示入力部を具備してなり、入力された指示に応じて複数の閾値Thのうちから1つを選択する構成であってもよい。また例えば、閾値選択部80は、ブラシ2の種類及び挿入部10bの形状の少なくとも一方を自動的に認識し、認識した結果に応じた閾値Thを選択する構成であってもよい。
本実施形態では一例として、閾値選択部80は、指示入力部としてのロータリースイッチを具備して構成されており、ロータリースイッチの回転角度に応じて異なる値の閾値Thを選択するための選択信号を制御部70へ出力する。
また、本実施形態では、ブラシ寿命検知装置1bによる、ブラシ2の寿命の判定動作の開始を指示を入力するための、プッシュスイッチである判定開始スイッチ61が配設されている。
判定表示部50は、演算部71におけるブラシ2が使用可能か否かの判定の結果を表示出力する表示装置を備えて構成されている。本実施形態では一例として、判定表示部50は、発光装置を備えたOKランプ51及びNGランプ52を具備してなる。判定表示部50は、演算部71による判定が使用可能である場合にはOKランプ51が点灯し、判定が使用不可能である場合にはNGランプ52が点灯するように構成されている。
なお、判定表示部50は、液晶表示装置や真空蛍光表示装置等の文字や図画を表示可能な形態であってもよい。また、判定表示部50は、スピーカーを備え、音によって演算部71における判定の結果を出力する形態であってもよい。
また、図示しないが、台座部31内には、ブラシ寿命検知装置1bの動作に必要な電源を各部に供給するための電源装置が配設されている。
次に、本実施形態のブラシ寿命検知装置1bの動作を、図14に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS51では、判定開始スイッチ61が操作されて、判定動作の開始指示が入力されるまで待機する。判定開始スイッチ61から開始指示が入力された場合には、ステップS52に移行する。
ステップS52では、測定部20bによって測定される力の値の変動を監視し、所定の幅以上の力の変動が検知されるまで待機する。このステップS52は、挿入部10bの穴部11内におけるブラシ2の植毛部2bの移動が開始したことを検知するステップである。所定の幅以上の力の変動が検知された場合には、ステップS53へ移行する。
ステップS53では、所定の幅以上の力の変動が検知された後の所定の期間内において測定部20によって測定された、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力のピーク値Fmaxを検出する。次に、ステップS54において、閾値選択部80から入力された選択信号に対応した閾値Thを、記憶部72から読み出す。
そして、ステップS55において、摩擦力のピーク値Fmaxが、閾値Th以上であるか否かを演算部71によって判定する。
S55の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Thよりも小さい場合には、ステップS56において、演算部71は、ブラシ2は使用不可能であると判定する。そしてステップS57において、表示部50のNGランプ52を点灯し、ブラシ2が使用不可能であるとの判定結果を表示出力する。
一方、S55の判定の結果、摩擦力のピーク値Fmaxが閾値Th以上であった場合には、ステップS58において、演算部71は、ブラシ2は使用可能であると判定する。そしてステップS59において、表示部50のOKランプ51を点灯し、ブラシ2が使用可能であるとの判定結果を表示出力する。
次に、以上に説明した構成を有する本実施形態のブラシ寿命検知装置1bを用いて、ブラシ2の寿命を判定するには、まず、寿命の判定を行うブラシ2の種類に対応した内径DHの穴部11を有する挿入部10bを選択し、移動ステージ部32に固定する。
次に、寿命の判定を行うブラシ2の種類と、ステップS61で選択した挿入部10の穴部11の内径DHと、に対応した閾値Thを確認する。そして、閾値選択部80を操作して、この対応した閾値Thを選択するように指示を入力する。この操作によって、閾値選択部80からは所定の閾値Thを選択する選択信号が出力される。
次に、挿入部10bの穴部11内に、挿入部10bの一端部13側からブラシ2の植毛部2a全体を挿入する。この時点では、判定開始スイッチ61が操作されていないため、挿入部10bに力が加えられてもブラシ寿命検知装置1bは判定動作を行わない。次に、判定開始スイッチ61を操作する。これにより、ブラシ寿命検知装置1bは、測定部20bにより測定される力の値の変動に基づいた判定動作を開始する。
そして、ワイヤ2bに力を加えることによって、植毛部2aを穴部11の一端部13側に向かって移動させる。このとき、摩擦力のピーク値Fmaxが、閾値選択部80を操作することによって選択した閾値Thよりも小さければNGランプ52が点灯し、閾値Th以上であればOKランプ51が点灯する。そして、NGランプ52及びOKランプ51のどちらが点灯したかを確認し、ブラシ2が使用可能であるか否かを判断する。
以上に説明したように、本実施形態のブラシ寿命検知装置1bでは、ブラシ2と挿入部10bとの間の摩擦力のピーク値Fmaxと、閾値Thとの比較判定が自動的に行われるため、使用者の誤読等を防止することができ、より確実にブラシ2の寿命の判定を行うことができる。その他の効果は、前述した実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、閾値選択部80を使用者が操作することによって、記憶部72に記憶された複数の閾値Thのうちから1つを使用者が手動で選択する構成としたが、所定の閾値Thを選択する構成は本実施形態に限られるものではない。
例えば、閾値選択部80は、図7に示すような挿入部10bの形状とブラシ2の種類と閾値Thの関係に付いての対応表を記憶しており、使用者が閾値選択部80を操作することによって入力される挿入部10bの形状の情報及びブラシ2の種類の情報に基づいて、対応表を参照し、自動的に所定の閾値Thを選択する構成であってもよい。
このような構成であれば、使用者は、対応表を参照して閾値Thを確認する必要がなく、挿入部10bの形状と情報及びブラシ2を入力するだけでよいため、操作がより容易となり、かつ閾値Thの誤選択を防止することができる。
また、本実施形態では、植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力のピーク値Fmaxが所定の閾値Th以上であるか否かによってブラシ2の寿命を判定しているが、第3の実施形態のように、摩擦力のピーク値Fmaxが所定の範囲R内であるか否かでブラシ2の寿命の判定を行う構成であってもよい。
(第5の実施形態)
以下に、本発明の第5の実施形態を図15及び図16を参照して説明する。前述した第4の実施形態では、使用者が力を加えることによってブラシ2を挿入部10b内で移動させる形態であるが、本発明はこの形態に限られるものではない。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1cは、ブラシ2の移動を自動的に行う構成と、ブラシ2の寿命を判定する方法が、前述した第4の実施形態と異なる。以下では第4の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図15に示すように、本実施形態のブラシ寿命検知装置1cは、挿入部10bに対してブラシ2を相対的に移動させる駆動部90を具備して構成されている。
挿入部10bに対してブラシ2を相対的に移動させることが可能であれば、駆動部90の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、駆動部90は、ブラシ2のワイヤ部2bを把持して、ブラシ2を移動させる構成を有する。
具体的に本実施形態の駆動部90は、把持部91、ガイド部92及び動力部93を具備して構成されている。把持部91は、ブラシ2のワイヤ2bを把持するクランプ状の構成を有する。
ガイド部92は、把持部91を、台座部31に対して挿入部10bの穴部11の中心軸と略平行な軸上において進退移動可能に案内支持する構成を有する。ガイド部92は、例えば、直線状のレール部と、レール部に沿って走行するスライド部とを具備して構成される。
動力部93は、把持部91をガイド部92に沿って進退駆動する構成を有する。動力部93は、例えば、ボールネジと、ボールネジを回転駆動する電動サーボモータとを具備して構成されている。なお、動力部93の構成は本実施形態に限られるものではなく、ボールネジを駆動する動力源はステッピングモータであってもよい。また、動力部93は、ボールネジの代わりにラック&ピニオン機構やベルト機構によって把持部91を駆動する構成であってもよい。また、動力部93は、リニアモータであってもよい。
また、ブラシ寿命検知装置1cは、測定部20bによって植毛部2aと穴部11の内周面との間の動摩擦力Fmovを測定し、演算部71において動摩擦力Fmovと所定の範囲Rとを比較し、その比較結果に基づいてブラシ2の寿命を判定する。動摩擦力Fmovの測定は、挿入部10b内においてブラシ2を所定の一定速度で移動させることによって行われる。
また、本実施形態では、第4の実施形態のように動摩擦力Fmovを単一の閾値Thと比較してブラシ2の寿命を判定するのではなく、動摩擦力Fmovを所定の範囲Rと比較し、その比較結果に基づいてブラシ2の寿命を判定する構成を有する。
具体的に本実施形態では、記憶部72は、図10に示すような、あらかじめブラシ2の種類及び挿入部10の形状の組み合わせに応じた所定の範囲R(下限閾値Thl及び上限閾値Thu)を定めた対応表を記憶している。そして、閾値選択部80は、記憶部72に記憶された複数の所定の範囲Rのうちから1つを選択する。
次に、本実施形態のブラシ寿命検知装置1cの動作を、図16に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS71では、判定開始スイッチ61が操作されて、判定動作の開始指示が入力されるまで待機する。判定開始スイッチ61が操作され、開始指示が入力された場合には、ステップS72に移行する。
ステップS72では、駆動部90によって、挿入部10b内においてブラシ2をブラッシング方向の一方に向かって、所定の一定速度で移動させる。そして、ステップS73において、ブラシ2の移動開始から所定の時間が経過するまで待機する。ブラシ2の移動開始から所定の時間が経過した後に、ステップS74において、測定部20bによって、植毛部2aと穴部11の内周面との間の動摩擦力Fmovを測定する。
ここで、ブラシ2の移動開始から動摩擦力Fmovの測定を行う前に、ステップS73において所定の時間待機するのは、ブラシ2の移動開始時における力の測定結果の乱れの影響を排除して、正確に動摩擦力Fmovを測定するためである。ブラシ2の移動開始時における力の測定結果の乱れは、例えば挿入部10bとブラシ2との間の摩擦力が最大静止摩擦力Fmaxから動摩擦力Fmovへ遷移する影響や、ブラシ2の植毛部2aの毛の並び方向が変化することによる影響によって起こる。
なお、ブラシ2の移動開始時における測定部20bによる力の測定結果の乱れの影響を排除する方法は、本実施形態に限られるものではなく、例えば所定の距離だけ移動した後に動摩擦力Fmovを測定する方法であってもよいし、測定部20bによって測定される単位時間あたりの力の変動幅が所定の値以下となった後に動摩擦力Fmovを測定する方法であってもよい。
次に、ステップS75において、閾値選択部80から入力された選択信号に対応した所定の範囲Rを、記憶部72から読み出す。すなわち、所定の範囲Rを定義する下限閾値Thl及び上限閾値Thuを記憶部72から読み出す。そして、ステップS76において、動摩擦力Fmovが、上限閾値Thu以上であるか否かを演算部71によって判定する。
ステップS76の判定の結果、動摩擦力Fmovが上限閾値Thuよりも大きい場合には、ステップS77へ移行して、演算部71は、何らかの異常が発生したと判定する。ここで、何らかの異常とは、例えば、ブラシ2に対して誤った組み合わせの挿入部10bが装着されている場合や、所定の範囲Rを誤選択してしまった場合等である。そして、ステップS78において、表示部50のNGランプ52を点滅させ、何らかの異常の発生が検出されたことを表示出力する。
一方、ステップS76の判定の結果、動摩擦力Fmovが上限閾値Thu以下である場合には、ステップS79に移行する。ステップS79では、動摩擦力Fmovが、下限閾値Thl以上であるか否かを判定する。
S79の判定の結果、動摩擦力Fmovが下限閾値Thlよりも小さい場合には、ステップS80へ移行して、演算部71は、ブラシ2は使用不可能であると判定する。そしてステップS81において、表示部50のNGランプ52を点灯し、ブラシ2が使用不可能であるとの判定結果を表示出力する。
一方、S79の判定の結果、動摩擦力Fmovが下限閾値Thl以上であった場合には、ステップS82において、演算部71は、ブラシ2は使用可能であると判定する。そしてステップS83において、表示部50のOKランプ51を点灯し、ブラシ2が使用可能であるとの判定結果を表示出力する。
以上に説明した本実施形態のブラシ寿命検知装置1cを用いれば、自動的にブラシ2についての寿命の判定を行うことができる。また、ブラシ2の挿入部10bに対する移動が駆動部90によって自動的に行われることから、ブラシ2の移動速度にばらつきが生じず、第3の実施形態に比してより正確にブラシ2の寿命の判定を行うことができる。
また、測定部20bによる植毛部2aと穴部11の内周面との間の摩擦力の測定結果は、ピーク値Fmaxよりも動摩擦力Fmovの方がばらつきが小さいため、第3の実施形態に比してより正確にブラシ2の寿命の判定を行うことができる。その他の効果は、前述した実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、挿入部10b内においてブラシ2を一方向に移動させた場合の動摩擦力Fmovを測定し、ブラシ2の寿命を判定する構成としたが、挿入部10b内においてブラシ2を往復の2方向に移動させた場合のそれぞれの動摩擦力Fmovを測定して、ブラシ2の寿命の判定に用いる構成であってもよい。
このように、ブラシ2を挿入部10b内においてブラッシング方向に往復移動させて、それぞれの方向への移動時の動摩擦力Fmovを測定し、その値を比較することによって、植毛部2aの毛が一様に一方向に倒れてしまっているような、洗浄に好ましくない状態を検出することができる。
(第6の実施形態)
以下に、本発明の第6の実施形態を図17を参照して説明する。本実施形態のブラシ寿命検知装置1dは、図17に示すように、台座部31に対して挿入部10bが固定されており、挿入部10b内においてブラシ2を移動させる際に駆動部90が発生する推力に基づいてブラシ2と挿入部10bとの間の摩擦力を測定する点が、第5の実施形態と異なる。以下では第5の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
本実施形態の駆動部90の動力部93は、電動サーボモータを具備して構成されている。ブラシ寿命検知装置1dの測定部は、電動サーボモータを駆動制御する際の電流値から、駆動部90が発生する推力を算出し、推力の値からブラシ2と挿入部10bとの間の摩擦力を測定する。本実施形態の測定部は、挿入部10b内において、ブラシ2を所定の一定の速度で移動させるように電動サーボモータを制御した場合の電流値から、動摩擦力Fmovを測定する。他の構成及び動作は、第5の実施形態と同様である。
このような構成を有する本実施形態では、ブラシ2と挿入部10bとの間の摩擦力を測定するための歪みゲージや圧電素子等の構成が不要となるため、第5の実施形態に比して装置構成を簡易なものとすることができる。
(第7の実施形態)
以下に、本発明の第7の実施形態を図18を参照して説明する。本実施形態のブラシ寿命検知装置1eは、ブラシ2が把持部91eを介して台座部31に固定されており、挿入部10bを台座部31に対して移動させることにより、挿入部10b内においてブラシ2を相対的に移動させる点が、第6の実施形態と異なる。以下では第6の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1eの駆動部90eは、ガイド部92e及び動力部93eを具備して構成されている。ガイド部92eは、挿入部10bを保持する保持部34を、台座部31に対して挿入部10bの穴部11の中心軸と略平行な軸上において進退移動可能に案内支持する構成を有する。ガイド部92eは、例えば、直線状のレール部と、レール部に沿って走行するスライド部とを具備して構成される。
動力部93eは、保持部34をガイド部92eに沿って進退駆動する構成を有する。動力部93eは、例えば、ボールネジと、ボールネジを回転駆動する電動サーボモータとを具備して構成されている。
ブラシ寿命検知装置1eの測定部は、第6の実施形態と同様に、電動サーボモータを駆動制御する際の電流値から、駆動部90eが発生する推力を算出し、ブラシ2と挿入部10bとの間の摩擦力を測定する。他の構成及び動作は、第6の実施形態と同様である。
(第8の実施形態)
以下に、本発明の第8の実施形態を図19から図21を参照して説明する。本実施形態のブラシ寿命検知装置1fは、主に挿入部10fの形態及びブラシ2の寿命の判定方法の一部が第6の実施形態と異なる。以下では第6の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
本実施形態の挿入部10fは、他端部14f側の穴部11の内周面に試薬16が配設されている。ここで挿入部10fの他端部14fとは、本実施形態では、管状の挿入部10fにおいて、穴部11内にブラシ2が挿入される側である一端部13f側とは反対の端部である。
試薬16は、ブラシ2が有する穴部11の内周面に対する洗浄の効果を視覚的に確認するために、穴部11内において医療機器の管路内に付着する汚れを擬似的に再現するものである。試薬16は、使用可能なブラシ2、すなわち正常な洗浄の効果を有するブラシ2によってブラッシングされた場合には、穴部11の内周面から剥落するように構成されている。
試薬16の形態は、ブラシ2によるブラッシングの後の内周面からの剥落の様子、言い換えれば穴部11の内周面に付着している様子を視覚的に確認可能な形態であれば、特に限定されるものではない。ここで、視覚的な確認な形態とは、自然光下での肉眼視によって視認可能な形態に限られるものではなく、例えば紫外線等の特殊光を照射することによって視認可能となる形態であってもよいし、また例えば他の試薬と反応させることによって視認可能となる形態であってもよい。
このような試薬16の具体例としては、例えば、食紅を加えることによって着色されたペースト状の小麦粉、蛍光染料が加えられたペースト状の小麦粉、又はタンパク質等が挙げられる。試薬16が着色されたペースト状の小麦粉であれば、自然光下において試薬16が穴部11内に付着している様子を視認可能である。また、試薬16が蛍光染料が加えられたペースト状の小麦粉であれば、紫外線を照射することによって試薬16が穴部11内に付着している様子を視認可能である。また、試薬16がタンパク質であれば、挿入部10fの他端部14fをタンパク質と反応する薬液に浸漬することで、試薬16が穴部11内に付着している様子を視認可能である。
本実施形態では一例として、試薬16は、食紅によって着色されたペースト状の小麦粉であり、図20に示すように穴部11の内周面に塗布されている。なお、図20では、試薬16は穴部11の内周面に一定の厚さで塗布されているように図示されているが、試薬16の厚さは不均一であってもよいし、また穴部11を塞ぐ程に厚く塗布されてもよい。
なお、挿入部10fの少なくとも試薬16が配設された他端部14fは、試薬16の視認を容易とするために、可視光を透過するように構成されていることが好ましい。
次に、本実施形態のブラシ寿命検知装置1fの動作を、図21に示すフローチャートを参照して説明する。図21に示すように本実施形態は、演算部71が動摩擦力Fmovと所定の範囲Rとを比較し、その比較結果からブラシ2の寿命の判定を行う動作までは、第6の実施形態と同様である。
本実施形態のブラシ寿命検知装置1fは、演算部71がステップS82及びステップS83においてブラシ2は使用可能であると判定した後に、さらにステップS90及びステップS91の動作を行う点が、第6の実施形態と異なる。
ステップS90では、ブラシ2の植毛部2aを、試薬16が配設された挿入部10fの他端部14fにおいて所定の回数だけブラッシング方向に往復移動させる。そして、ステップS91において、ブラシ2の植毛部2aを、挿入部10fの一端部13f側へ移動させる。すなわち、試薬16が配設された挿入部10fの他端部14fからブラシ2の植毛部2aを退避させる。
以上に説明した本実施形態のブラシ寿命検知装置1fを用いれば、自動的にブラシ2についての寿命の判定を行うことができるとともに、使用可能と判定されたブラシ2について、試薬16の挿入部10fからの剥落の様子を目視で確認することによって、使用者がブラシ2が使用可能であることを具体的に追認することができる。
なお、ブラシ寿命検知装置1fは、挿入部10fの他端部14fを撮影可能なデジタルカメラ等の撮像装置を具備し、個々のブラシ2について寿命の判定結果と、試薬16の剥落の様子を撮像した画像とを関連付けて記憶する構成であってもよい。このような構成によれば、ブラシ2の使用履歴と洗浄の効果の変化を追跡して管理することが可能となる。
(第9の実施形態)
以下に、本発明の第9の実施形態として、本発明に係るブラシ寿命検知装置を備えた内視鏡洗浄装置の例について説明する。
図22に示す本実施形態の内視鏡洗浄装置100は、医療機器である内視鏡110の少なくとも洗浄処理を行うための装置である。内視鏡洗浄装置100は、内視鏡110を収容可能な洗浄槽101を具備して構成されている。また、内視鏡洗浄装置100には、洗浄槽101内に収容された内視鏡110の管路111内において、ブラシ2を往復移動させる、ブラシ駆動装置102が配設されている。そして本実施形態の内視鏡洗浄装置100には、第4の実施形態のブラシ寿命検知装置1bが、配設されている。
なお、内視鏡洗浄装置100には、洗浄槽101内に収容された内視鏡110を、洗浄液等に浸漬させることで洗浄処理する構成も配設されるが、これらは公知の構成であるため説明を省略するものとする。
このような構成を有する内視鏡洗浄装置100では、ブラシ2による内視鏡110の管路111内の洗浄処理に先立って、ブラシ寿命検知装置1bを用いて、ブラシ2が使用可能であるか否かを容易かつ確実に確認することができ、内視鏡110の管路111内を確実に洗浄することができる。
なお、内視鏡洗浄装置100の制御部と、ブラシ寿命検知装置1bとは電気的に接続されており、ブラシ寿命検知装置1bによる判定の結果、ブラシ2が使用不可能であると判定された場合には、制御部は内視鏡洗浄装置100による内視鏡110の洗浄処理を開始しない構成であってもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うブラシ寿命検知装置及び内視鏡洗浄装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。