JP2011094873A - 熱交換器用アルミニウムフィン材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウムよりなる基板2と、その表面に形成した1層又は複数層の塗膜3とからなる。塗膜3の最外層は、表面粗さRaが0.2μm以下の親水性塗膜31からなる。また、親水性塗膜31は、ケン化度90%以上のポリビニルアルコール系樹脂を固形分質量%で50%を超える量含有する。親水性塗膜31の膜厚は、0.3〜10μmであることが好ましい。塗膜3と基板2の間には、化成皮膜からなる下地処理層4を設けることができる。
【選択図】図1
Description
従来、上記プレートフィンには、軽量で熱伝導性及び加工性に優れていることからアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムという)が使用されている。
次いで、この得られたプレートフィンを積層した後に、前記組み付け孔の内部に、別途作製したチューブを挿通させる。
次に、チューブをアルミニウムプレートフィンに拡管固着し、ヘアピン曲げ加工を施した側と反対側のチューブ端部にUベンド管をろう付け加工する工程を経て、熱交換器が作製される。
そのため、アルミニウム板よりなる上記熱交換器用フィン材の表面には、親水性塗膜が形成されている。この親水性塗膜により、結露水を均一な水膜とし、円滑に落下、排出させ、結露水による通風抵抗(空気がフィン間を通過する際の抵抗)を低くし、熱交換器の性能を維持することが可能になる。
そこで、汚染物質がプレートフィンに付着しても親水性を維持できる耐汚染性に優れた塗料組成物及びアルミニウムフィン材が開発されている(特許文献1〜特許文献3参照)
本願発明者らは、水飛び現象の原因を詳細に解析した結果、汚染物質の中でも、ヘキサデエカノール、オクタデカノール等の高級アルコールが水飛び現象の原因となっていることを見出した。そして、これらの汚染物質がフィン材に付着することにより、フィン材が撥水化しなくとも均一な水膜の形成が阻害され、水飛び現象を引き起こすことを見出した。
該塗膜の最外層は、ケン化度90%以上のポリビニルアルコール系樹脂を固形分質量%で50%を超える量含有し、かつ流速5L/時間の温度25℃の流水に24時間曝した後の表面粗さRaが0.2μm以下の親水性塗膜からなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材にある(請求項1)。
そのため、上記熱交換器用アルミニウムフィン材においては、結露水を均一な水膜にすることができ、水飛び現象の発生を抑制することができる。
このように、本発明によれば、ヘキサデカノール等の高級アルコールが付着し難く、水飛び現象を抑制できる熱交換器用アルミニウムフィン材を提供することができる。
上記基板としては、フィン材として用いられるものであれば、いずれのアルミニウムを用いても良い。本明細書において「アルミニウム」は、アルミニウムを主体とする金属及び合金の総称であり、純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む概念である。
複数層から塗膜は、異なる成分組成の塗料を重ね塗りすることにより形成することができる。同一種類の塗料を一回塗布して形成した塗膜は1層であるが、さらに成分組成が同一の塗料を複数回重ね塗りして形成した塗膜も1層である。
この場合には、上記熱交換器用アルミニウムフィン材の耐食性を向上させることができる。
上記耐食性塗膜は、例えば膜厚0.5〜3.0μmで形成することができる。
上記耐食性塗膜の膜厚が0.5μm未満の場合には、耐食性を十分に確保することができなくなるおそれがある。一方、3.0μmを越える場合には、上記熱交換器用アルミニウムフィン材の伝熱性を低下させてしまうおそれがある。
上記化成皮膜としては、例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理、クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛、酸化ジルコニウム等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理、いわゆる化成処理により得られる皮膜を採用することができる。なお、上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には、反応型及び塗布型があるが、本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
下地処理層は、例えば100mg/m2以下で形成することができる。
上記親水性塗膜による上述の高級アルコールに対する付着抑制効果は、上記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が多い程大きくなる。
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が50%以下の場合には、ヘキサデカノール等の高級アルコールが付着し易くなるおそれがある。また、上記親水性塗膜の親水性が低下するおそれがある。より好ましくはポリビニルアルコールの含有量は70%以上がよく、さらにより好ましくは90%以上がよい。
また、ケン化度は、市販のポリビニルアルコール系樹脂のカタログ等に記載されており、これらのカタログスペックから、ケン化度90%以上のポリビニルアルコール系樹脂を採用することができる。
PVAは、図4に示す基本骨格構造を有する合成樹脂であり、PVA変性樹脂は、図4に示す基本骨格構造の水酸基(OH基)の一部を例えばアクリル酸アミド、アルキル基、及びカルボキシル基等で置換した基本骨格構造を有する合成樹脂である。
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、PVA樹脂及び/又はPVA変性樹脂を採用することができる。
また、上記親水性塗膜は、消泡剤を含有することもできる。
接触角が50°を越える場合には、上記親水性塗膜の親水性が不十分になるおそれがある。接触角50°以下の親水性塗膜は、上記の所定のポリビニルアルコール系樹脂の含有量を50%以上にすることにより実現することができる。より好ましくは45°以下がよい。上記親水性塗膜は、流速5L/時間の温度25℃の流水に24時間曝した後及び流水に曝す前において、上述の水との接触角が50°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。
一般に、上記親水性塗膜は、流水に曝した後は、表面粗さRaが大きくなる傾向にあるが、本発明においては、上記のごとく流水に曝した後における表面粗さRaが0.2μm以下になっている。
そのため、熱交換器用アルミニウムフィン材としての実使用環境下でヘキサデカノール等の高級アルコールの付着を長期間抑制することができる。
上記表面粗さRaが0.2μmを越える場合には、ヘキサデカノール及びオクタデカノール等の高級アルコールの蒸気が、上記親水性塗膜の表面に接触した際に微粒子となって付着し易くなり、さらに付着した後に脱落し難くなる。そのため、水飛び現象を抑制することが困難になるおそれがある。
上記親水性塗膜の膜厚が0.3μm未満の場合には、その親水性効果を十分に発揮することができなくなるおそれがある。一方、10μmを超える場合には、上記熱交換器用アルミニウムフィン材の伝熱性を低下させてしまうおそれがある。より好ましくは、上記親水性塗膜の膜厚は1μm〜5μm以下がよい。
本例は、本発明の実施例にかかる熱交換器用アルミニウムフィン材(試料E1〜試料E5)及び比較例にかかる熱交換器用アルミニウムフィン材(試料C1〜試料C5)を作製し、これらの特性を評価する例である。
本発明の実施例にかかる熱交換器用アルミニウムフィン材1(試料E2〜試料E5)は、図1に示すごとく、アルミニウムよりなる基板2と、その表面に形成した親水性塗膜31からなる塗膜3とを有する。
また、熱交換器用アルミニウムフィン材1(試料E2〜試料E5)においては、図1に示すごとく、基板2と塗膜3との間、即ち、基板2と親水性塗膜31との間に、化成皮膜からなる下地処理層4が形成されている。
まず、アルミニウムよりなる基板2として、JIS A 1050−H26、厚み0.1mmのアルミニウム板を準備した。
次に、基板2に対してリン酸クロメートを浸漬処理することにより、基板2の表面にリン酸クロメートよりなる化成皮膜4を形成した。
各試料について、親水性塗膜が含有するPVA系樹脂のケン化度、その含有量、PVA系樹脂以外の成分、及び耐食性塗膜の有無を表1に示す。なお、親水性塗膜は、表1に示すPVA系樹脂とPVA系樹脂以外の成分との合計量100質量部からなる。
具体的には、まず、各試料を100mm×100mm角に切断し、流速5L/時間の流水(温度25℃)に24時間曝した。次いで、各試料から走査型レーザー顕微鏡観察用の試料を調整し、走査型レーザー顕微鏡により、100倍の倍率で、板の圧延方向と平行な方向で表面粗さRaを測定した。測定は同一条件の試料についてそれぞれ7回ずつ実施し、その平均を求めた。その結果を表1に示す。
<耐汚染性>
各試料を100mm×100mm角に切断し、流速5L/時間の流水(温度25℃)に24時間曝した。次いで、図3に示すごとく、容積100Lの蓋50付きの円柱形容器5を準備し、この円柱形容器5の底部にヒータ6を配置し、さらにヒータ6上にヘキサデカノールを40ml入れた直径約100mmのビーカ7を配置した。
また、円柱形容器5の上部に、その直径方向に伸びる針金81を張り、さらにこの針金81から円柱形容器5の底部の方向に針金82を垂らした。そして、針金82の端部に、各試料の熱交換器用アルミニウムフィン材1を取り付けた。
次に、ヒータ6を作動させて、ビーカ7内のヘキサデカノールを加熱し、温度60℃で保持した。この状態で円柱形容器5の上部に蓋50を配置して円柱形容器5内を密閉した。このように、熱交換器用アルミニウムフィン材1がヘキサデカノールの蒸気に曝される状態にして、72時間保持した。
次に、各試料に付着したヘキサデカノールをエタノールにより抽出し、ガスクロマトグラフィ分析によりその付着量を定量した。
その結果を表2に示す。
接触角計を用いて液滴法により接触角を測定した。
具体的には、各試料の親水性塗膜上に水2μlを滴下し、10秒以内にELMA社製ゴニオメータを用いて、水との接触角を測定した。
接触角は、流水に曝す前の初期状態の試料と、流速5L/時間の流水(温度25℃)に24時間曝した試料についてそれぞれ測定した。
その結果を表2に示す。
また、試料C3は、表面粗さRaが大きすぎ、試料C4はポリビニルアルコール系樹脂の含有量が少なすぎたため、これらの試料C3及び試料C4は、やはりヘキサデカノールの付着量が多くなっていた。
また、試料C5は、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が低すぎて、流水に曝した後における親水性塗膜の親水性が大きく劣化していた。また、耐汚染性についても、ヘキサデカノールの付着量が多くなっていた。これは、ケン化度の低いポリビニルアルコール系樹脂を用いたため、流水に曝したときに親水性塗膜から流出するポリビニルアルコール系樹脂の量が多くなったことによると考えられる。
2 基板
3 塗膜
31 親水性塗膜
Claims (1)
- アルミニウムよりなる基板と、該基板の表面に形成した1層又は複数層の塗膜とからなり、
該塗膜の最外層は、ケン化度90%以上のポリビニルアルコール系樹脂を固形分質量%で50%を超える量含有し、かつ流速5L/時間の温度25℃の流水に24時間曝した後の表面粗さRaが0.2μm以下の親水性塗膜からなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
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