以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の樹脂エアバッグ(以下、単に、エアバッグとする)20が使用されるエアバッグ装置S1は、図1に示すように、背もたれ部2と座部3とを有した車両用のシート1における座部3に搭載されるものである。そして、このエアバッグ装置S1は、アンチサブマリン用のエアバッグ装置であり、車両の前面衝突時、座部3の前部3a側を上方へ隆起させ、シート1の座部3に着座した乗員Mが、サブマリン現象を生じさせて、座部3上を前方側へ滑ろうとしても、大腿部Tの前部側裏面を隆起させた前部3a側で受け止めて、座部3上の前方への滑りを規制するものである(図8参照)。
なお、サブマリン現象は、着座した乗員Mが、シートベルト装置9のシートベルト10を装着して、背もたれ部2を後方に大きく倒しているような場合に生じ易い。シートベルト装置9は、シートベルト10やバックル12を備えて構成されている。シートベルト10は、タング11をバックル12に締結させれば、図示しないアンカーからタング11までのショルダーベルト部10aが、前方移動しないように、乗員Mの上半身Uを拘束し、タング11から図示しないフロアへの固定部位までのラップベルト部10bが、上方移動や前方移動を規制するように、乗員Mの腰部Wや大腿部Tを拘束することとなる。
シート1の座部3は、下面側にシートクッション6を支持する板金製のシートパン4を備え、第1実施形態の場合には、そのシートパン4の上面4a側に、エアバッグ装置S1のエアバッグ20を介在させて、シートクッション6を配設させている。シートクッション6の周囲には、ファブリック等の表皮7が配設されている。そして、第1実施形態の場合、エアバッグ装置S1は、図8に示すように、シートパン4の上面4a側に載置されたエアバッグ20を膨張させて、座部3の前部3a側を隆起させる。
エアバッグ装置S1は、図1〜4に示すように、ポリアミドやポリプロピレン等のシート状の合成樹脂からなるエアバッグ20と、エアバッグ20の後縁20b側に配置されるインフレーター15と、を備えて構成されている。
インフレーター15は、エアバッグ20を膨張させる膨張用ガスGを発生させるものであり、円柱状の本体部15aと、エアバッグ20の固定側縁部24に挿入される先端側の小径の頭部15bと、を備え、頭部15bに、膨張用ガスGを吐出させるガス吐出口15cを配設させている。本体部15aは、車両の前面衝突時に、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を、図示しないリード線から入力させて作動され、そして、ガス吐出口15cから膨張用ガスGを吐出させることとなる。
なお、インフレーター15は、エアバッグ20の固定側縁部24に挿入された状態で、固定側縁部24の端部の取付部位24eに取り付けられる図示しないクランプに、強固に、固定側縁部24側に挟持されて、図示しないクランプのシートパン4側への固定により、エアバッグ20とともに、シートパン4に固定される。
エアバッグ20は、ポリアミドやポリエステル等のシート状の合成樹脂から周壁21が構成されて、膨張用ガスGの流入によって、相互に厚さ方向で対向する一方側壁部としての上壁部22と他方側壁部としての下壁部23とを離隔させるように、膨らむこととなる。エアバッグ20は、後縁20b側を、左右方向に沿う直線状として、インフレーター15を組み付けてシートパン4側に取付固定される固定側縁部24とし、その固定側縁部24の前方側を、膨張用ガスGの流入時、上壁部22と下壁部23とを相互に離隔させて、上下方向の厚さ寸法を厚くするように膨らむ膨張エリア25としている。すなわち、エアバッグ20は、インフレーター15から吐出される膨張用ガスGの上流側から下流側に流れる方向を、エアバッグ20の厚さ方向と直交する方向の前方側で、かつ、左右方向に広がる放射状としている。そのため、このエアバッグ20では、膨張用ガスGを一方側壁部としての上壁部22と他方側壁部としての下壁部23との間に流すガス供給側部27を、中央の膨張エリア25から離れた外周縁21a側の後縁20b側として、固定側縁部24に、設定している。
この固定側縁部24は、左右方向に沿って延びる円筒状の取付筒部24aを備えて構成され、取付筒部24aは、左端側を閉塞壁24cによって塞いで、右端側に、インフレーター15を挿入させる組付孔24bを開口させている。取付筒部24aの左右両端は、シートパン4に固定される図示しないクランプが装着される取付部位24eとしている。取付部位24e,24e間の中間部位には、膨張用ガスGをエアバッグ20内の前方側へ供給する複数(実施形態では二つ)の開口24dが、取付筒部24aの軸方向に沿って、配設されている。
そして、エアバッグ20の外周縁21aの内、固定側縁部24を除いた膨張エリア25の外周縁は、相互に、エアバッグ20の左右方向に沿った幅方向で対向する二つの対向縁26a,26aと、二つの対向縁26a,26aを連結する先端縁26bと、を有する三方囲繞外周縁26として、構成されている。換言すれば、実施形態の場合、三方囲繞外周縁26は、エアバッグ20の後縁20bを除いて、エアバッグ20の幅方向となる左右方向で対向する対向縁26aとしての左縁20c及び右縁20dと、固定側縁部24から離れた先端縁26bとしての前縁20aと、を備えて構成されている。
さらに、この三方囲繞外周縁26は、厚さ方向に沿う断面を、図4,5に示すように、上壁部22と下壁部23とを半割円弧状に連ならせ、かつ、平面視として、図2,3に示すように、外方に膨らんだ連続する曲線状に形成されている。なお、実施形態の場合、上壁部22と下壁部23とは、三方囲繞外周縁26での結合状態を、膨張前のエアバッグ20の厚さ寸法T0(図6のA参照)に等しい直径寸法D(図5参照)の半円弧状とし、縁部22a,23a相互を突き合わせて、結合されている。
また、三方囲繞外周縁26に囲まれる膨張エリア25には、上壁部22と下壁部23とに、それぞれ、三方囲繞外周縁26に沿って三方囲繞外周縁26側に膨らむ曲線状として、エアバッグ20の厚さ方向に凹む襞部28(28A,28B,28C),33(33A,33B,33C)が、内側にかけて、同心的に、複数(実施形態では三個ずつ)配設されている。これらの各襞部28,33は、それぞれ、エアバッグ20の厚さ方向に沿った断面形状が、凹んだ底部29,34と、底部29,34から両側に拡開するように延びる二つの傾斜部30,31,35,36と、を備えたV字状に形成されている。また、これらの各襞部28,33は、それぞれ、左右方向の中央28a,33aが、最も前端に配置されて、左右両側の端末28b,33bが、固定側縁部24に接近して、左右方向に沿って直線状に並ぶように、配設されている。
さらに、第1実施形態では、各襞部28,33では、エアバッグ20の厚さ方向に沿った断面形状が、それぞれ、底部29,34を、襞部28,33の幅方向に沿った中央から、三方囲繞外周縁26から離れる内側へずらして、底部29,34から両側に延びる両傾斜部30,31,35,36における底部29,34から立ち上がる傾斜角度θf,θb(図5参照)に関し、三方囲繞外周縁26側の傾斜部30,35より内側の傾斜部31,36を大きくして(θf<θb)、形成されている(図5参照)。
さらにまた、第1実施形態では、各襞部28,33が、それぞれ、内側から三方囲繞外周縁26に接近するに従って、図5に示すように、底部29,34の凹む深さ寸法dU2,dU1,dU0,dD2,dD1,dD0を深くするように(dU2<dU1<dU0,dD2<dD1<dD0)、形成されている。
さらに、第1実施形態では、襞部28,33が、上壁部22と下壁部23との両方に配置されるとともに、襞部28,33の凹んだ底部29,34が、上壁部22と下壁部23との間で、厚さ方向と直交する方向で、ずれて、配設されている。
そしてさらに、襞部28,33を設けた部位である膨張エリア25の肉厚寸法t0が、膨張用ガスGを流入させて所定厚さ寸法T1(図6参照)を確保して膨張を完了させた際に、襞部28,33の外表面側への反転を抑制される範囲内として、設定されている。勿論、この肉厚寸法t0は、エアバッグ20への膨張用ガスGの流入時、各襞部28,33が、塑性変形しつつ、開口幅寸法WU1,WU2,WU3,WD1,WD2,WD3(図5参照)を開口幅寸法WU10,WU20,WU30,WD10,WD20,WD30(図6のC参照)に広げることができるようにも、設定されている。
実施形態の場合、エアバッグ20は、単体での膨張前の厚さ寸法T0を約25〜32mmとし、膨張完了時の内圧値を230KPa程度として、膨張を完了させ、その際のエアバッグ20単体での厚さ寸法T1を約115〜130mmとするように設定されており、肉厚寸法t0を0.5〜2.2mmとしたポリアミド製としている。さらに、実施形態のエアバッグ20では、伸び(D638)を40〜200%、曲げ弾性率(D790)を1000〜3000MPaとして、リブ38が無い状態として重力が作用しても、上壁部22の全域を下方側に曲げるように変形させることなく、全体の形状を維持できるような形状保持性を確保している。
そして、実施形態のエアバッグ20では、一方側壁部としての上壁部22と他方側壁部としての下壁部23とを連結して、上壁部22と下壁部23との相互の接近を規制するリブ38が、エアバッグ20の厚さ方向と直交する方向の縁となる外周縁21aから、隙間を空けて、複数配設されている。各リブ38は、長方形の平板状として、エアバッグ20の膨張時に、上壁部22と下壁部23との連結を解除するように、構成されている。各リブ38の肉厚寸法t1(図5参照)は、重量のある乗員Mが、座部3に勢い良く座っても、上壁部22を下壁部23に接触させないように設定されている。
また、各リブ38は、実施形態の場合、上壁部22の元部端38a側を、上壁部22と一体成形され、先端38bを溶着や接着により下壁部23側に連結させており、エアバッグ20の膨張時、先端38bを下壁部23から剥離させている。
なお、実施形態のエアバッグ20は、上壁部22側が、リブ38や固定側縁部24の上側半分とともに、一体的に、射出成形により形成され、下壁部23側が、固定側縁部24の下側半分とともに、一体的に、射出成形により形成され、射出成形された上壁部22側と下壁部23側とは、固定側縁部24を含めた外周縁21aの部位(縁部22a,23a)相互を、振動溶着等の溶着や接着により、強固に結合させ、その結合より弱い結合力として、各リブ38の先端38bを、溶着や接着を利用して、下壁部23に結合させている。
また、第1実施形態では、各リブ38が、上壁部22の襞部28における傾斜部31の頂部31a付近に、元部端38aを接続させて、先端38bを下壁部23側に延ばしている。
さらに、第1実施形態では、各リブ38が、ガス供給側部27から流れる膨張用ガスGの上流側から下流側にかけて、順に、上流側リブ39、中間リブ40、及び、下流側リブ41を、配列させるとともに、複数列(実施形態では三列)配設されている。さらに、実施形態の場合、各列のそれぞれの膨張用ガスの上流側に配置される上流側リブ39が、最も厚く膨らむ膨張エリア25を囲むように、配置されて、各列の下流側リブ41が、膨張エリア25から放射状に広がる位置に、配置されている。
さらに、実施形態の場合、図2,3に示すように、膨張用ガスGの上流側と下流側とに配置されるリブ38の配列状態として、膨張用ガスGの下流側に配置されたリブに対して直線状に流れる膨張用ガスG(GL,GM,GR)を、上流側のリブが、遮蔽できる位置に配置されるように、設定されている。すなわち、実施形態の場合、複数のリブ38の内、一つの列では、膨張エリア25から放射状に斜め左前方に延びるように、内側の襞部28Cの頂部31a付近に配置された上流側リブ39L、襞部28Bの頂部31a付近に配置された中間リブ40L、及び、外側の襞部28Aの頂部31a付近に配置された下流側リブ41Lが、配置されて、上流側の上流側リブ39Lが、その上流側リブ39Lより膨張用ガスGの下流側に配置された中間リブ40Lに対して直線状に流れる膨張用ガスGLを、遮蔽できる位置に配置され、中間リブ40Lが、その中間リブ40Lより下流側となる下流側リブ41Lに対して直線状に流れる膨張用ガスGLを、遮蔽できる位置に、配設されている。
同様に、複数のリブ38の内、膨張エリア25から放射状に斜め右前方に延びるように、内側の襞部28Cの頂部31a付近に配置された上流側リブ39R、襞部28Bの頂部31a付近に配置された中間リブ40R、及び、外側の襞部28Aの頂部31a付近に配置された下流側リブ41Rも、同様な配列位置に配設され、また、複数のリブ38の内、膨張エリア25から放射状に前方に延びるように、内側の襞部28Cの頂部31a付近に配置された上流側リブ39M、襞部28Bの頂部31a付近に配置された中間リブ40M、及び、外側の襞部28Aの頂部31a付近に配置された下流側リブ41Mも、同様な配列位置に配設されている。
第1実施形態のエアバッグ20は、既述したように、上壁部22側と下壁部23側とをそれぞれ射出成形で形成して、両者を、リブ38や固定側縁部24を含めた外周縁21aの部位で、溶着等を利用して、接合させれば、製造でき、そして、固定側縁部24の取付筒部24a内に、インフレーター15を挿入させれば、エアバッグ装置S1を組み立てることができる。組み立てたエアバッグ装置S1は、取付筒部24aの左右の取付部位24e,24eを、図示しないクランプを利用して、シート1の座部3におけるシートパン4上に、取付固定すれば、シート1に組み付けることができ、その後、図示しないエアバッグ作動回路へ接続させる所定のリード線をインフレーター15に結線させつつ、シートクッション6や表皮7を座部3の上面側に組み付け、リード線を図示しないエアバッグ作動回路に結線させるとともに、シート1を車両のフロアに組み付ければ、エアバッグ装置S1を車両に搭載することができる。
エアバッグ装置S1の車両への搭載後、車両が前面衝突して、エアバッグ装置S1が作動されれば、インフレーター15がガス吐出口15cから膨張用ガスGを吐出し、膨張用ガスGが、取付筒部24aの各開口24dからエアバッグ20の膨張エリア25内に流入され、エアバッグ20が、図6のA〜Cに示すように、各リブ38の先端38bを下壁部23から分離させて、厚く膨らむこととなる。そのため、エアバッグ装置S1では、図8に示すように、エアバッグ20の下面20fがシートパン4に支持されて、シートパン4からの高さHを、略厚さ寸法T1(図6のC参照)分高くするように、座部3の前部3aを隆起させることができて、シート1の座部3に着座した乗員Mが、サブマリン現象を生じさせて、座部3上を前方側へ滑ろうとしても、大腿部Tの前部側裏面を隆起させた前部3a側で受け止めて、座部3上の前方への滑りを好適に規制することができる。
そして、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張前の状態において、周囲から厚さを縮める方向に押圧されても、リブ38により、対向する上壁部22と下壁部23との接触を防止できて、接触時に生ずる異音の発生を防止できる。
また、各リブ38は、エアバッグ20の厚さ方向と直交する方向の外周縁21aから、隙間を空けて、配設されて、外周縁21aから連なって配設されていない。そのため、外周縁21aから離れたエアバッグ20の中央付近の膨張エリア25を厚く膨らませる際、外周縁21aからリブ38に至るまでのエリア付近において、皺の発生を抑制して、円滑に膨らませることができる。ちなみに、エアバッグ20の外周縁21aから連なってリブが配設されれば、塑性変形させてエアバッグ20を膨らませる際、外周縁21aからリブのエリアにかける剛性が高くなり過ぎて、皺が発生し易くなり、皺が発生すれば、その部位に、応力集中が生じて、ガス漏れを招くような穴を発生させることから、好ましくない。
さらに、リブ38を設ければ、逆に、一方側壁部としての上壁部22と他方側壁部としての下壁部23との離隔距離S0(図5参照)を大きくすることができて、上壁部22と下壁部23とが連結されるエアバッグ20の三方囲繞外周縁26において、上壁部22と下壁部23との離隔距離S0が小さい場合に比べて、曲率を大きくして(直径寸法Dを大きくして)、上壁部22と下壁部23とを連結することができる。そのため、エアバッグ20の膨張時、上壁部22と下壁部23とが相互に離れように膨らんで、上壁部22と下壁部23とのエアバッグ20の三方囲繞外周縁26での縁部22a,23aが、相互の交差角度θ0(図6のC参照)を広げる際、図5の二点鎖線に示すように、エアバッグ20の三方囲繞外周縁26における厚さ方向の断面の頂部26c(縁部22a,23a相互の結合部位と一致する)からそれぞれ離れた部位21b,21cを中心に、曲げ塑性変形することができて、応力集中を抑えて変形でき、エアバッグ20の三方囲繞外周縁26の破損を抑制することができる。
したがって、第1実施形態のエアバッグ20では、厚さ方向で対向する上壁部22と下壁部23との相互の収納時の接触を規制できて、異音の発生を防止でき、また、塑性変形させて膨張させる構成としても、外周縁21aとリブ38との間のエリア付近における皺や三方囲繞外周縁26(外周縁21a)の破損の発生を抑制して、円滑に膨らませることができる。
そして、第1実施形態では、リブ38が、エアバッグ20の膨張時に、上壁部22と下壁部23との連結を解除するように、構成されており、膨張時の上壁部22と下壁部23との離隔距離を大きくすることができ、エアバッグ20を、厚さ寸法T0を厚さ寸法T1とするように、大きく膨らませることができる。
また、第1実施形態では、膨張用ガスGの上流側から下流側に流れる方向を、エアバッグ20の厚さ方向と直交する前方側として、膨張用ガスGを上壁部22と下壁部23との間に流すガス供給側部27としての固定側縁部24が、中央から離れた外周縁21a側の後縁20bに配設されている。そして、各リブ38が、ガス供給側部27から流れる膨張用ガスGの下流側から上流側にかけて、複数配設されるとともに、膨張用ガスGの上流側と下流側とに配置されるリブ38の配列状態として、膨張用ガスGの下流側に配置されたリブ38に対して直線状に流れる膨張用ガスGを、上流側のリブ38が、遮蔽できる位置に配置されるように、設定されている。そのため、下流側のリブ38(例えば、下流側リブ41Mや中間リブ40M)に直線的に流れる膨張用ガスGMが、上流側のリブ38(上流側リブ39M)によって、遮蔽されることから、下流側の下流側リブ41Mや中間リブ40Mが、膨張用ガスGMの流れの影響を受けず、上流側リブ39Mが、下流側の中間リブ40Mや下流側リブ41Mより先に、上壁部22と下壁部23との連結を解除させるように、容易に、設定できる。換言すれば、このような構成のエアバッグ20では、膨張初期に最先に厚く膨らませる膨張エリア25を、上流側の上流側リブ39L,39M,39R付近として、容易に設定することができる。
さらに、実施形態の場合、膨張用ガスGの上流側から下流側に配置される複数のリブ38は、複数列(実施形態では、L,M,Rと添え字を付けた三列)、配設して、各列のそれぞれの膨張用ガスGの上流側に配置される上流側リブ39L,39M,39Rを、最も厚く膨らむ膨張エリア25を囲むように、配置し、各列の下流側の中間リブ40L,40M,40Rや下流側リブ41L,41M,41Rを、膨張エリア25から放射状に広がる位置に、配置している。そのため、このようなエアバッグ20では、放射状に配置された複数のリブ38で囲まれたエアバッグ20の中央付近に、最も厚く膨らむ膨張エリア25を配置させることができて、その膨張エリア25を、円滑に、膨張初期から膨らませ、かつ、皺の発生を抑制して、円滑に、最も厚く膨らませることができる。そして、第1実施形態では、膨張初期に、乗員Mの大腿部Tの前部裏面側付近を好適に受け止めることができるように、膨張エリア25の内でも、上流側リブ39M付近が、膨張初期に、厚く膨らむように、設定されている。
さらに、第1実施形態では、ガス供給側部27から離れた外周縁21aを、エアバッグ20の幅方向の両縁(対向縁)26a,26aとガス供給側部27から離れた先端縁26bとを備えるとともに、外方に膨らんだ連続する曲線状に形成する三方囲繞外周縁26として、構成している。さらに、エアバッグ20の厚さ方向に凹む襞部28,33が、上壁部22と下壁部23とに、三方囲繞外周縁26に沿う曲線状とし、かつ、内側にかけて、同心的に、複数配設されている。そして、各襞部28,33が、それぞれ、エアバッグ20の厚さ方向に沿った断面形状を、凹んだ底部29,34と、底部29から両側に拡開するように延びる二つの傾斜部30,31,35,36と、を設けたV字状に形成して、膨張用ガスの流入時、開口幅寸法WU1,WU2,WU3,WD1,WD2,WD3(図5参照)を開口幅寸法WU10,WU20,WU30,WD10,WD20,WD30(図6のC参照)に広げるように塑性変形しつつ、エアバッグ20を膨らませている。そのため、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張用ガスGを流入させれば、上壁部22と下壁部23とが、リブ38を分離させつつ、相互に離隔するように、厚さ寸法T0を厚さ寸法T1とするように膨らむ。この時、三方囲繞外周縁26における上壁部22と下壁部23との縁部22a,23aが、相互の交差角度θ0を広げつつ、各襞部28,33における底部29,34を間にする両傾斜部30,31,35,36が、相互の交差角度を広げたり、あるいは、傾斜部30,31,35,36の頂部30a,31a,35a,36a側における周囲への交差角度を広げたりして、換言すれば、各襞部28,33が開口幅寸法を広げるように塑性変形することによって、厚さ寸法を大きくするように膨らむことができて、襞部28,33の深さ寸法dU2,dU1,dU0,dD2,dD1,dD0や開口幅寸法WU1,WU2,WU3,WD1,WD2,WD3の増減に比例させて、エアバッグ20を容易に厚く膨らませることができる。
さらに、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張時、三方囲繞外周縁26が、直線部分を備えず、外側へ膨らむ連続した曲線状としているため、三方囲繞外周縁26に、部分的にエアバッグ20の中央側へ凹んで生ずる皺が、発生し難い。また、膨張エリア25の複数の襞部28,33も、三方囲繞外周縁26に沿う曲線状として、内側にかけて、同心的に配設されており、最も厚さを厚くする部位、すなわち、最も内側の襞部28C,33Cにおける内側の傾斜部31,36の頂部31a,36a付近、にかけて、三方囲繞外周縁26側から内側にかける傾斜部30,31,35,36の頂部30a,31a、35a、36aを、皺を発生させずに、順に、高く変位させることができる。そのため、このようなエアバッグ20では、膨張完了時、三方囲繞外周縁26やその内側の襞部28,33を設けた膨張エリア25での皺の発生を抑えて、円滑に膨らんで、膨張を完了させることができる。
そしてさらに、第1実施形態のエアバッグ20では、リブ38が、上壁部22の襞部28における頂部31a付近に、一方の端部、実施形態では元部端38aを、接続させている。そのため、このエアバッグ20では、襞部28の最も外表面側に突出する傾斜部31の頂部31a付近に、リブ38が配設されて、押圧され易い頂部31a付近が、直接的に、リブ38に支持されて、凹み難くなり、頂部31a付近が部分的に凹んで、ぺこぺこする異音の発生も、的確に、防止可能となる。
そしてさらに、第1実施形態のエアバッグ20では、襞部28,33が、上壁部22と下壁部23との両方に配置されて、襞部28,33の凹んだ底部29,34が、上壁部22と下壁部23との間で、厚さ方向と直交する方向で、ずらして配設されており、上壁部22と下壁部23との襞部28,33における底部29,34相互が、厚さ方向で重ならない。そのため、エアバッグ20が、収納時の厚さ寸法T0を小さくするように構成して、厚さ寸法T0を小さくする方向に外力を作用されて変形しても、上壁部22と下壁部23との襞部28,33における底部29,34付近の相互接触を、極力、防止できて、リブ38を配置させていない個所でも、接触時に発生する異音を生じさせ難い。勿論、このような構成では、上壁部22と下壁部23との襞部28,33の深さを深くしても、上壁部22と下壁部23との襞部28,33の底部29,34が、厚さ方向と直交する方向でずれて、相互に当たり難いことから、エアバッグ20の収納時における厚さ寸法T0の増加を抑えて、コンパクトに収納することができる。
勿論、上記の点を考慮しなければ、一方側壁部としての上壁部22と他方側壁部としての下壁部23とに設ける襞部28,33の底部29,34を、厚さ方向で重なるように、配設してもよい。さらに、膨張完了時のエアバッグが、その厚さ寸法T1を小さくしてもよい場合には、一方側壁部としての上壁部22、あるいは、他方側壁部としての下壁部23、の一方だけに、複数の襞部28,33を設けてもよい。
また、第1実施形態のエアバッグ20では、各襞部28,33におけるエアバッグ20の厚さ方向に沿った断面形状が、それぞれ、襞部28,33の底部29,34を、襞部28,33の幅方向に沿った中央から、三方囲繞外周縁26から離れる内側へずらし、底部29,34から両側に延びる両傾斜部30,31,35,36における底部29,34から立ち上がる傾斜角度θf,θbに関し、三方囲繞外周縁26側の傾斜部30,35より内側の傾斜部31,36を大きくして、形成している。このような構成では、襞部28,33における底部29,34を間にした両側の傾斜部30,31,35,36は、膨張用ガスGの流入時、それぞれ、エアバッグ20の内周面側の直交方向の外向きに、膨張用ガスGの圧力GFを受けることなり、その際の圧力GFは、厚さ方向に沿って外向きに作用する「外向き分力」VFと、襞部28,33の幅方向に沿う、すなわち、エアバッグ20の厚さ方向と直交するエアバッグ20の上壁部22や下壁部23の面(上面20eや下面20f)に沿って、相互に打ち消し合う「面沿い分力」LFF,LFBと、に分けられる(図5参照)。そして、傾斜角度θfが小さな三方囲繞外周縁26側の傾斜部30,35は、内側の傾斜部31,36に比べて、膨張用ガスGの圧力に応じて、小さな傾斜角度θf分、大きな割合で外向き分力(VF=GF×cosθf>GF×cosθb(なぜなら、90°未満のθf<θbである))を受ける。さらに、その三方囲繞外周縁26側の傾斜部30,35は、底部29,34が三方囲繞外周縁26から離れた内側にずれており、内側の傾斜部31,36に比べて、厚さ方向に沿った投影面積(SHAf>SHAb)が広い。さらにまた、三方囲繞外周縁26側の傾斜部30,35は、三方囲繞外周縁26側となる外縁側に配置されており、内側の傾斜部31,36に比べて、三方囲繞外周縁26側に沿った面積自体も広い(図2の斜線で示したSAfの傾斜部30のエリア>図2の点状に示したSAbの傾斜部31のエリア参照)。その結果、このような構成のエアバッグ20では、迅速に、襞部28,33を膨らませる方向に移動させることができて、素早く、膨張させることができる。
ちなみに、上記と相違して、襞部28,33の底部29,34が、襞部28,33の幅方向の中央や三方囲繞外周縁26側にずれて配置されていれば、膨張用ガスの圧力に応じて大きな割合で外向き分力VFを受ける傾斜部31,36は、底部から内側に延びる部位となるが、その内側の傾斜部31,36は、外側の傾斜部30,35より、三方囲繞外周縁26から離れた内側となることから、結果的に、エアバッグ全体から見れば小さい面積となって、エアバッグを迅速に膨らませる点で、劣ることとなる。
さらに、第1実施形態では、襞部28,33の断面形状に関して、襞部28,33の幅方向に沿った中央から底部29,34を内側にずらすとともに、各襞部28,33が、内側から三方囲繞外周縁26に接近するに従って、底部29,34の凹む深さ寸法dU2,dU1,dU0,dD2,dD1,dD0を深くするように(dU2<dU1<dU0,dD2<dD1<dD0)、形成されている。
このような構成では、最先に厚さを増加させる部位を、安定して、最も内側の襞部28,33における内側の傾斜部31C,36Cの頂部31Ca,36Ca付近に、設定できる。すなわち、膨張用ガスGの流入時、エアバッグ20は、三方囲繞外周縁26における上壁部22と下壁部23とが、相互の交差角度θ0を広げつつ、各襞部28,33における底部29,34を間にする両傾斜部30,31や両傾斜部35,36が、相互の交差角度を広げたり、あるいは、傾斜部30,31,35,36の頂部30a,31a,35a,36a側における周囲への交差角度を広げたりして、厚さ寸法T0が厚さ寸法T1に増すこととなり、最も内側の襞部28C,33Cにおける内側の傾斜部31C,36Cの頂部31Ca,36Ca付近は、それらの広がった交差角度の合計で、厚さを増すこととなる。そのため、エアバッグ20の膨張初期には、図6のBに示すように、交差角度の変位を積算させる作用により、最も内側の襞部28C、33Cにおける内側の傾斜部31C,36Cの頂部31Ca,36Ca付近が、確実かつ安定して、エアバッグ20の上壁部22や下壁部23から突出し、最先に厚さを増加させることができる。
ちなみに、第1実施形態では、傾斜部31Cの頂部31Caが、エアバッグ20の膨張初期から乗員Mの大腿部Tの前部裏面側を好適に止めることができる配置位置として、座部3の前部3a側に、配置されている。
なお、第1実施形態では、アンチサブマリン用のシート1の座部3に搭載されるエアバッグ装置S1に使用するエアバッグ20として、平面視で半円弧状の襞部28C,33Cの傾斜部31C,36Cの頂部31Ca,36Ca付近を最も高く膨らませるものを例示したが、図9〜11に示すエアバッグ装置S2に使用されるエアバッグ20Aのように、構成してもよい。
このエアバッグ装置S2は、車両のドア51に搭載され、車両の側面衝突時、インフレーター15がガス吐出口15cから膨張用ガスGを吐出させ、エアバッグ20Aが、ドアトリム52を車内側に繰り出すように膨張を完了させ、ドアトリム52を介在させて、車外側に移動する乗員を受け止めるものである。
そして、このエアバッグ20Aでは、第1実施形態のエアバッグ20と略同様に半割円板状として、同様な材料から形成されており、インフレーター15を設けたガス供給側部27とした固定側縁部24と、三方囲繞外周縁26に囲まれた膨張エリア25と、を備えている。そして、ドアトリム52側の一方側壁部22Aが、三方囲繞外周縁26に沿って曲線状でかつ同心的に配置される二つの襞部28(28A,28B)を備えているものの、取付ベース53側に支持される他方側壁部23Aが、固定側縁部24側に接近して、襞部33(33D,33E)を、配設させて構成されている。これらの襞部33D,33Eは、固定側縁部24側も厚く膨らませて、エアバッグ20Aの全域を略同じ厚さで膨張させるために配設されている。そして、三方囲繞外周縁26は、エアバッグ20Aの膨張完了時に、固定側縁部24近傍における三方囲繞外周縁26の端末26ab付近に、皺を発生させないように、エアバッグ20Aの左右方向の幅寸法を狭めるように、端末26ab付近を円弧状に縮小させて、剛性の高い固定側縁部24に連ならせている。さらに、襞部33D,33Eは、それらの端末26abと直線状の固定側縁部24とに沿い、かつ、内側で、極力、同心的(相似形)となるように、配設されている。
また、一方側壁部22Aと他方側壁部23Aとの接触を防止するリブ38は、エアバッグ20Aの内周面側の各襞部28,33の底部29,34に元部端38aを配置させて、先端38bを対向する他方側壁部23A若しくは一方側壁部22Bに接合させている。
このエアバッグ20Aでは、インフレーター15からの膨張用ガスGを流入させれば、各リブ38の先端38bを他方側壁部23A若しくは一方側壁部22Bから分離させつつ、各襞部28,33がそれぞれの開口幅寸法を広げるように塑性変形して、他方側壁部23Aを一方側壁部22Aから離隔させつつ、厚さ寸法を増加させるように、膨張する。そして、このエアバッグ20Aでは、側面視におけるエアバッグ20Aの厚さ方向で襞部28,33の配置エリアを重ねずに、上部20h側と下部20i側とで、襞部28,33の配置エリアを大きくずらしたことから、エアバッグ20Aの膨張エリア25を、広い面で、均等の厚さで膨張させることが可能となって、エアバッグ装置S2を取り付けた取付ベース53側から、ドアトリム52を車内側に平行移動させることができ、かつ、乗員の受止時も、上下や前後左右で、ドアトリム52を傾けることなく、乗員を受け止めることが可能となる。
なお、図11の符号54の部材は、ドアトリム52を保持するように取付ベース53から延びて、弾性変形して伸び可能な支持材である。
また、第1,2実施形態のエアバッグ20,20Aでは、射出成形を利用して、形成したが、図12〜14に示すエアバッグ装置S3のエアバッグ20Bのように、ポリアミド等の合成樹脂を使用するブロー成形を利用して、形成してもよい。このエアバッグ20Bは、インフレーター15の組付が容易となるように、固定側縁部24内の取付筒部24aを、予め、射出成形によって形成しておいて、取付筒部24a以外のエアバッグ20Bの部位をブロー成形により形成している。そして、ブロー成形後の固定側縁部24内に取付筒部24aを挿入するとともに、取付筒部24aの組付孔24bへインフレーター15を挿入し、左右両端の取付部位24e,24eの外周を図示しないクランプで挟持し、これらのクランプをシートパン4の上面4a側に固定すれば、インフレーター15とともにエアバッグ20Bをシートパン4に取付固定できて、エアバッグ装置S3を座部3に搭載することができる。
なお、このような別体の取付筒部24aは、第1実施形態のエアバッグ20の固定側縁部24に適用してもよい。その際、取付筒部24a近傍には、上壁部22と下壁部23とを連結するリブ38を設けてもよい。
さらに、このエアバッグ20Bでは、一方側壁部としての上壁部22Bと下壁部23Bとから相互に接近するように断面U字状の襞部56,57を設け、襞部56,57の先端56a,57a相互を剥離可能に融着させて、襞部56,57以外の部位の上壁部22Bと下壁部23Bとの接触を規制するリブ38Bを、襞部56,57から形成している。
そのため、このエアバッグ20Bでは、周囲から厚さを縮める方向に押圧されても、複数のリブ38Bにより、襞部56,57以外の部位の対向する上壁部22Bと下壁部23Bとの接触を防止できる。
また、各リブ38Bは、エアバッグ20Bの厚さ方向と直交する方向の縁となる外周縁21aから、隙間を空けて、配設され、外周縁21aから連なって配設されていない。そのため、外周縁21aから離れたエアバッグ20Bの中央付近を厚く膨らませる際、外周縁21aからリブ38Bに至るまでのエリア付近において、皺の発生を抑制して、円滑に膨らませることができる。
さらに、リブ38Bを設ければ、逆に、上壁部22Bと下壁部23との離隔距離S0を大きくすることができて、上壁部22Bと下壁部23Bとが連結されるエアバッグ20Bの外周縁21aにおいて、上壁部22Bと下壁部23Bとの離隔距離S0が小さい場合に比べて、曲率を大きくして(直径寸法Dを、エアバッグ20Bの厚さ寸法T0と同一とするように、大きくして)、上壁部22Bと下壁部23Bとを半円弧状に連結することができる。そのため、エアバッグ20Bの膨張時、上壁部22Bと下壁部23Bとが相互に離れように膨らんで、上壁部22Bと下壁部23Bとのエアバッグ20Bの外周縁21aでの縁部22a,23aが、相互の交差角度θ0(図13の二点鎖線参照)を広げる際、エアバッグ20Bの外周縁21aにおける厚さ方向の断面の頂部21aaからそれぞれ離れた部位21b,21cを中心に、曲げ塑性変形することができて、応力集中を抑えて変形でき、エアバッグ20Bの外周縁21aの破損を抑制することができる。
したがって、第3実施形態のエアバッグ20Bでも、第1実施形態と同様に、収納時において、厚さ方向で対向する上壁部22Bと下壁部23Bとの襞部56,57以外の部位での相互接触を規制できて、異音の発生を防止でき、また、塑性変形させて膨張させる構成としても、外周縁21aとリブ38Bとの間のエリア付近における皺や外周縁21aの破損の発生を抑制して、円滑に膨らませることができ、さらに、リブ38Bが分断されて、上壁部22Bと下壁部23Bとの離隔距離が大きくなるように、大きな厚さ寸法T1として膨張を完了させることができる。
さらに、この第3実施形態では、襞部56,57が、表面側の開口を広げるように、部分的に曲げ塑性変形できることから、第1,2実施形態に近似して、一層、厚さ寸法を厚くして、膨張を完了させることができる。
なお、第1実施形態のエアバッグ20の変形例として、襞部28,33を設けつつブロー成形して、エアバッグ20を形成してもよく、その場合には、襞部28の底部29を部分的に凹ませて下壁部23に融着させたり、あるいは、襞部33の底部34を部分的に凹ませて上壁部22に融着させたり、あるいは、襞部28の底部29と下壁部23との部位を、若しくは、襞部33の底部34と上壁部22との部位を、相互に接近させるように凹ませて融着させ、融着面から分断可能なリブ38を形成してもよい。
また、襞部を設けずにエアバッグを形成してもよく、図15〜18に示す第4実施形態のエアバッグ装置S4のエアバッグ20Cのように、構成してもよい。このエアバッグ20Cは、第2実施形態のエアバッグ20Aと同様に、ドア51に搭載されるエアバッグ装置S4に使用され、ポリアミド等の合成樹脂から射出成形を利用して、相互に厚さ方向で対向する一方側壁部22C側と他方側壁部23C側とを成形して、相互に、溶着や接着を利用して、結合させて、形成している。一方側壁部22Cと他方側壁部23Cとの接触を規制する平板状のリブ38Cは、元部端38a側を一方側壁部22Cに結合させて、先端38bを、他方側壁部23Cに対し、外周縁21aの一方側壁部22Cと他方側壁部23Cとの縁部22a,23a相互の結合力より、弱い結合力で、溶着や接着により、結合させている。
このエアバッグ20Cでも、複数のリブ38Cにより、一方側壁部22Cと他方側壁部23Cとの接触を防止できるとともに、各リブ38Cが、エアバッグ20Cの外周縁21aから、隙間を空けて、配設され、外周縁21aから連なって配設されていないことから、外周縁21aからリブ38Cに至るまでのエリア付近において、皺の発生を抑制して、円滑に膨らませることができる。
さらに、リブ38Cにより、エアバッグ20Cの外周縁21aにおける縁部22a,23a相互を、曲率を大きくして(直径寸法Dを、エアバッグ20Cの厚さ寸法T0と同一とするように、大きくして)、半円弧状に連結することができるため、第1,2実施形態と同様に、エアバッグ20Cの膨張時、外周縁21aにおける応力集中を抑えて変形でき、外周縁21aの破損を抑制することができる。
さらにまた、このエアバッグ20Cでも、膨張時、リブ38Cの先端38bが他方側壁部23から分離されて、一方側壁部22Cと他方側壁部23Cとの離隔距離が大きくなるように、厚さ寸法を大きくして、膨張を完了させることができる。なお、このエアバッグ20Cでは、膨張時、襞部を備えていないことから、膨らむ厚さ寸法を、第2実施形態のエアバッグ20Aに比べて、抑制されるものの、一方側壁部22Cや他方側壁部23C自体が、その膜長を延ばすように塑性変形して、エアバッグ20Cを膨らませることとなる。
なお、第1,2,4実施形態のエアバッグ20,20A,20Cでは、平板状のリブ38,38Cが、元部端38aから離れた先端38bを、下壁部23等から剥離させるように、分離させたが、下壁部23等に結合させた先端38bと元部端38aとの間に、引張力の作用時にリブを分断させるような切欠き等からなる分断予定部を設け、エアバッグの膨張時、リブの分断予定部を破断させて、一方側壁部と他方側壁部との離隔距離を広げて、エアバッグを大きく膨らませてもよい。
勿論、図19に示す第5実施形態のエアバッグ装置S5に使用されるエアバッグ20Dのように、対向する一方側壁部22Dと他方側壁部23Dからリブ形成部位59を突出させるとともに突き合わせて結合させることにより、リブ38Dを形成し、エアバッグ20Dの膨張時、その突き合わせ面38cにおいて、リブ38Dを分断させるように構成してもよい。なお、このエアバッグ20Dも、第1実施形態のエアバッグ20と同様なポリアミド等の合成樹脂から、射出成形を利用して、形成されている。
さらに、図20,21に示す第6実施形態のエアバッグ装置S6に使用するエアバッグ20Eのように、一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとを連結するリブ38Eを、エアバッグ20Eの膨張完了時においても、一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとの連結状態を維持するように、形成してもよい。このエアバッグ20Eも、第1実施形態のエアバッグ20と同様なポリアミド等の合成樹脂から、射出成形を利用して、形成されている。
そして、このエアバッグ20Eでも、複数のリブ38Eにより、一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとの接触を防止できるとともに、各リブ38Eが、エアバッグ20Eの外周縁21aから、隙間を空けて、配設され、外周縁21aから連なって配設されていないことから、外周縁21aからリブ38Eに至るまでのエリア付近において、皺の発生を抑制して、円滑に膨らませることができる。
さらに、リブ38Eにより、エアバッグ20Eの外周縁21aにおける縁部22a,23a相互を、曲率を大きくして(直径寸法Dを、エアバッグ20Eの厚さ寸法T0と同一とするように、大きくして)、半円弧状に連結することができる。そのため、第1,2実施形態と同様に、エアバッグ20Eの膨張時、一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとが相互に離れように膨らんで、一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとのエアバッグ20Eの外周縁21aでの縁部22a,23aが、相互の交差角度θ0(図20の二点鎖線参照)を広げる際、エアバッグ20Eの外周縁21aにおける厚さ方向の断面の頂部21aa(縁部22a,23a相互の結合部位に一致する)からそれぞれ離れた部位21b,21cを中心に、曲げ塑性変形することができて、応力集中を抑えて変形でき、エアバッグ20Eの外周縁21aの破損を抑制することができる。
なお、第6実施形態では、エアバッグ20Eの膨張時、リブ38Eが一方側壁部22Eと他方側壁部23Eとの連結状態を維持することから、リブを分断させたり、壁部から分離させる場合に比べて、膨らんだ厚さ寸法を大きく確保し難いものの、リブ38Eを設けることにより、膨張前のエアバッグ20Eの厚さ寸法T0自体を大きくできて、リブ38Eの高さ寸法HLを大きくすれば、膨張前後の膨らむ割合自体は、同じでも、膨張完了後の膨らんだ状態でのエアバッグ20E自体の厚さ寸法(嵩高さ)T1を大きくすることができる。
また、図22〜25に示す第7実施形態のエアバッグ20Fのように、アンチサブマリン用のエアバッグ装置S7に使用される場合、エアバッグ20Fの周壁21を構成する上壁部22Fと下壁部23Fとの内の、下方に配置される下壁部23Fを、シートパン4と兼用してもよい。
すなわち、このエアバッグ20Fでは、膨張時に車両用のシート1の座部3の前部3a側を隆起させるように、座部3のシートクッション6の下面側に配設されて、下壁部23Fが上壁部22Fより剛性を有し、逆に、上壁部22Fが、下壁部23Fより、塑性変形しつつ、膨らみ易いように構成されている。第7実施形態の場合、上壁部22Fと下壁部23Fとは、相互に溶着・接着し易いポリアミドやポリプロピレン等の合成樹脂から形成されているものの、下壁部23Fが、上壁部22Fより厚肉として、剛性を確保されている。
そして、第7実施形態の下壁部23Fは、シートクッション6の略全域の下方に配設されて、シートクッション6を、リブ38を有した上壁部22Fを介在させて、下方から支持可能な略長方形板形状に形成されている。また、下壁部23Fは、外周縁23bの少なくとも左右両縁の左縁23lと右縁23rとが、座部3の左右両縁に配設されたシート1の座部フレーム1aに取り付けられて、座部フレーム1aに保持されている。ちなみに、実施形態の場合、下壁部23Fは、外周縁23bの前縁23fでも、座部フレーム1aに取り付けられて保持されている。
なお、上壁部22Fは、下壁部23Fより剛性を低くしているものの、上方へ膨らんでいるエリア(後述する凸部22cのエリア)は、リブ38により、下方への落ち込みが抑制されている。したがって、この下壁部23Fは、凸部22cのエリアを含めて、シートクッション6の全域を下方から支持している。
上壁部22Fは、膨張用ガスGの流入時、下壁部23Fから離れるように膨らみ可能に、下壁部23Fより、塑性変形し易いように、薄肉に形成されている。さらに、エアバッグ20Fが膨らむ際、座部3の前部3aを円滑に上方に隆起させることができるように、前部3aの左右方向の略中央の直下付近、すなわち、最も厚く膨らむ膨張エリア25、を囲むように、下方へ凹む襞部28を、複数、備えて構成されている。実施形態の場合、襞部28は、上方から見て、前方へ突出するU字状として、略同心的に、二つ設けられている。なお、上壁部22Fは、膨張用ガスGを流入させるエリアを、第1実施形態のエアバッグ20の平面形状と略同形状とするように、下壁部23Fから上方へ突出する略半円板形状の凸部22cを備え、その凸部22cのエリアに、二つの襞部28や膨張エリア25を設けている。なお、下壁部23F側には、凸部22cに対応して、下方へ凹む凹部23cが配設されている。そのため、このエアバッグ20Fでは、これらの凸部22cと凹部23cとの間の流入スペース20sに膨張用ガスGが流入されて、膨らむこととなる。
そして、二つの襞部28A,28Bの内、膨張エリア25に近い側の襞部28Bが、リブ38Fと兼用とされるとともに、膨張時に下壁部23Fに対して分離可能として、その底部29を下壁部23Fに溶着させて、下壁部23Fに連結されている。
また、このエアバッグ20Fでは、上壁部22Fと下壁部23Fとの凸部22cや凹部23cの周囲における外周縁22b,23b相互を、広い面積で、熱溶着等により結合させて、外周縁21aが、形成されている。さらに、このエアバッグ20Fでは、膨張エリア25の後方に、下壁部23Fに熱溶着させるように、取付筒部24aを内蔵させた状態で、上壁部22Fと下壁部23Fとを結合させている。なお、インフレーター15は、取付筒部24aを内蔵させた状態でエアバッグ20Fを形成した後に、取付筒部24a内に挿入されている。
このエアバッグ装置S7の作動時には、図23の二点鎖線に示すように、インフレーター15がガス吐出口15cから膨張用ガスGを吐出させて、膨張用ガスGが、開口24dを経て、流入スペース20s内に流入されれば、襞部28Bの底部29が下壁部23Fから分離し、襞部28A,28Bの開口幅寸法WUFを広げるように(図24参照)、襞部28の底部29等が塑性変形して、膨張エリア25の上壁部22Fが、剛性を有して下方への落ち込みを抑制された下壁部23Fから、離れるように上方へ膨らみ、シートクッション6を持ち上げて、座部3の前部3aを隆起させることとなる。
そして、この第7実施形態のエアバッグ20Fでも、外周縁(22b,23b)21aから隙間を空けてリブ38Fが配設されている。そのため、このエアバッグ20Fでも、第1実施形態と同様に、厚さ方向で対向する上壁部22Fと下壁部23Fとの相互の収納時の接触を、規制できて、異音の発生を防止でき、また、塑性変形させて膨張させる構成としても、外周縁21aとリブ38Fとの間のエリア付近における皺や外周縁の破損の発生を抑制して、円滑に膨らませることができ、さらに、リブ38Fが下壁部23Fから離れて、厚さ寸法T0から大きな厚さ寸法T1とするように、膨張を完了させることができる(図25のA,B参照)。
そしてさらに、このエアバッグ20Fでは、下壁部23Fが、シート1の座部フレーム1aに保持される構成として、シートクッション6を支持可能なシートパン4と兼用とされており、別途、シートパン4を利用しなくとも、アンチサブマリン用のエアバッグ装置S7を搭載したシート1を形成できて、シート1の構成部品点数や組付工数を、低減することができる。
なお、エアバッグ20Fの膨張時には、剛性を有した下壁部23F上で、上壁部22F側だけが上方へ膨らんで、座部3の前部3a側を隆起させることとなる。しかし、上壁部22Fは、塑性変形し易いように、下壁部23Fより剛性を低下させて伸び可能な薄肉とし、かつ、開口幅寸法WUFを広げて上方へ膨らみ可能な複数の襞部28A,28Bを設け、さらに、厚さ寸法T1を大きくして膨張できるように、膨張時に下壁部23Fから離れるリブ38F兼用の襞部28Bを備えて、構成されていることから、十分に、座部3の前部3a側を隆起させることができる。その結果、エアバッグ20Fが膨張を完了させれば、シート1の座部3に着座した乗員Mが、サブマリン現象を生じさせて、座部3上を前方側へ滑ろうとしても、大腿部Tの前部側裏面を隆起させた前部3a側で受け止めて、座部3上の前方への滑りを好適に規制することができる。
なお、第7実施形態では、上壁部22Fと下壁部23Fとに関し、相互の良好な溶着性や接着性を考慮し、共に同種材料を使用し、下壁部23Fを上壁部22Fより厚肉として、下壁部23Fの剛性を確保する場合を示したが、他に、上壁部22Fの合成樹脂材料に比べて、下壁部23Fのフィラー等の補強材の充填量を多くしたり、あるいは、上壁部22Fと下壁部23Fとの相互の良好な溶着性や接着性を確保できれば、上壁部22Fの形成材料と異ならせて、下壁部23F自体を、剛性を確保できる合成樹脂材料から形成してもよい。
また、第7実施形態では、上壁部22Fが塑性変形し易いように、上壁部22Fを下壁部23Fより薄肉とした場合を示したが、他に、下壁部23Fの合成樹脂材料に比べて、上壁部22Fのフィラー等の充填量を少なくして剛性を低下させたり、あるいは、上壁部22Fと下壁部23Fとの相互の良好な溶着性や接着性を確保できれば、下壁部23Fの形成材料と異ならせて、上壁部22F自体を、伸びを確保できる合成樹脂材料から形成してもよい。
さらに、第7実施形態のエアバッグ20Fでは、外側の襞部28Aが、底部29を下壁部23Fに当設させていないが、勿論、この襞部28Aも、リブ38Fを形成するように、下壁部23Fに当設させたり、さらに、分離可能として、下壁部23Fに連結させてもよい。さらにまた、襞部28は、3つ以上設けて、適宜、それらの内の一つや複数、あるいは、全てを、リブ38Fと兼用としてもよい。