JP2011092986A - 抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造 - Google Patents

抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接ムラを防止し、溶接不良が生じ難い抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造を提供する。
【解決手段】抵抗溶接方法は、ステージ5の凹部51に半導体素子41を搭載したステム4をセットする。一方、キャップ3の頭部31にワッシャ2を装着する。次いで、ワッシャ2から突出する頭部31を電極1の穴14に挿入し、電極1の先端面13をワッシャ2の上面と接触させた状態で、電極片11の外側からクランプして、電極1でキャップ3を把持する。次に、電極1を移動し、穴14から露出するキャップ3のフランジ部35をステム4に当接させた状態で調芯を行い、フランジ部35をステム4に位置合わせする。そして、電極1の先端面13とフランジ部35との間にワッシャ2を介在させた状態で、電極1からワッシャ2、フランジ部35、ステム4、ステージ5に電流を流して、キャップ3とステム4とを溶接する。
【選択図】図3

Description

本発明は、半導体素子を搭載したステムにキャップを位置合わせして溶接する抵抗溶接方法、それに用いる抵抗溶接用電極及びそれに適したキャップ構造に関する。特に、溶接ムラを防止し、溶接不良が生じ難い抵抗溶接方法に関する。
光通信の分野において、発光素子(半導体レーザ、発光ダイオードなど)や受光素子(フォトダイオードなど)といった半導体素子を搭載した半導体装置が利用されている。半導体装置の一形態として、例えばステムとキャップとを備えるCANタイプパッケージのものが知られている。パッケージを構成するステム及びキャップには、ステンレス鋼、SPC(冷間圧延鋼)、コバールなどの金属材料が一般的に用いられている。
通常、CANタイプの半導体装置は、半導体素子を搭載した円板状のステムに、レンズが取り付けられた円筒状のキャップを溶接して、半導体素子を封止することで構成されている。キャップは、レンズが取り付けられた頭部と、この頭部の一端に形成されてステムに溶接されるフランジ部とを備える。このキャップとステムとの抵抗溶接に関する技術が、例えば特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、下部電極ホルダにステムをクランプし、キャップを上部テーパーコレット電極にクランプし、上部電極を下降させキャップをステムに当接させ、水平方向に位置調整した後、キャップをステムに押圧した状態で、上部電極に溶接電流を流し、キャップとステムとの抵抗溶接を行う抵抗溶接装置が記載されている。この特許文献1に記載された抵抗溶接装置は、上部電極を昇降させる昇降機構に工夫があり、特許文献1には、抵抗溶接用電極に関しては詳しく述べられていない。
特許文献2には、従来の抵抗溶接用コレット電極について述べられている。従来の抵抗溶接用コレット電極は、先端部がスリットにより複数の電極片に分割されており、複数の電極片の先端面が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中心に穴が形成されている。そして、この穴にキャップの頭部を挿入し、電極片の外側をクランプで押さえ、電極片を内側に曲げることで、キャップの頭部を把持できる構造になっている。これにより、キャップのフランジ部をステムに当てて調芯し位置合わせした後、フランジ部をステムに溶接する際に、キャップの位置がずれることが少なく、安定した位置調整精度(調芯精度)が得られる。
しかし、従来のコレット電極では、キャップを把持するため、キャップを把持した状態において電極片同士が互いに接することがなく、先端面には隙間が残る。そのため、電極の先端面とフランジ部との間には、電極片の先端面と接触する接触部分と、電極片の先端面と接触しない非接触部分(隙間の部分)とが生じる。電極からフランジ部に電流を流して溶接する際、非接触部分には電流が流れ難いため、フランジ部のその部分は十分に加熱されない。その結果、フランジ部の全周で溶接状態が均一にならず、溶接ムラが生じて、溶接不良が起こり易い。
また、非接触部分のフランジ部を十分に加熱するため、溶接時の電流を上げることも考えられるが、その場合、接触部分のフランジ部では急激な発熱により、湯玉(溶接粒や飛沫とも呼ばれる)が発生する。これがキャップ内に残留すると、不良品の原因となる。さらに、電極の消耗が激しい。
このような問題を解決するため、特許文献2では、電極片の先端に永久磁石を埋め込み、この磁石の磁力によってキャップを保持することを提案している。これにより、キャップを把持したときに電極片同士を機械的に接触させ、可能な限り隙間を小さくすることで、フランジ部の全周にできるだけ均一な電流を流すことが試みられている。
その他、特許文献3には、ステムに溶接されるフランジ部の底面にプロジェクションを設けたキャップの構造が記載されている。
特開2003‐154463号公報 特開2007‐83247号公報 特開2008‐109099号公報
しかし、従来技術では、溶接ムラを確実に防止することができず、溶接不良を排除できない虞がある。
確かに、特許文献2では、磁力によってキャップを保持することで、電極でキャップを把持してフランジ部をステムに溶接する際に、電極片同士を機械的に接触させ、電極の先端面の隙間を閉鎖状態にしている。しかしながら、この場合であっても、電極の先端面において、電極片同士の境界が存在し、隙間が完全に消失することはないから、電極の先端面が完全に連続した円環状にならない。そのため、電極からフランジ部に電流を流しても、フランジ部の全周に亘って均一な電流分布を達成することができないことも考えられ得る。また、特許文献2に記載の抵抗溶接用電極は、電極片の先端に磁石を埋設することで構成されており、作製に手間がかかる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、溶接ムラを防止し、溶接不良が生じ難い抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造を提供することにある。
本発明者は、キャップのフランジ部とステムとを溶接するにあたり、電極の先端面からフランジ部とステムとの界面までの間を、導電性部材(フランジ部を含む)で構成し、かつ、この距離を0.8mm以上にすることで、界面における電流分布が均一になり、溶接ムラを防止できるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明の抵抗溶接方法は、複数の電極片の先端面が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中心に穴が形成されたコレット電極を用い、この穴にキャップの頭部を保持して電極に通電することで、穴から露出するキャップのフランジ部を半導体素子が搭載されたステムに溶接する方法である。そして、電極で保持したキャップのフランジ部をステムの所定位置に位置合わせし、電極の先端面からフランジ部とステムとの界面までの間を導電性部材で構成すると共に、この先端面から界面までの距離を0.8mm以上にして溶接することを特徴とする。
この構成によれば、フランジ部のステムに溶接される面において全周に亘って電流分布が均一になり、溶接ムラを防止し、溶接不良が生じ難い。また、本発明に用いるコレット電極は、従来と同様に先端部が複数の電極片に分割され、電極片を内側に弾性変形させることによってキャップの頭部を把持できる構造になっているため、安定した位置調整精度(調芯精度)が得られる。
一般的な半導体装置の寸法は規格によって定められており、キャップの寸法もそれに基づいて決められているのが通常である。例えば、キャップの頭部は、外径:3.2〜3.75mm、高さ(頭部上面からフランジ部までの距離):2.2〜4.0mmであり、フランジ部は、幅(頭部外周面からフランジ部外縁までの距離):100〜300μm、厚さ:500μm程度である。
電極の先端面からフランジ部とステムとの界面までの間を導電性部材で構成すると共に、この先端面から界面までの距離を0.8mm以上にする手段としては、例えば次の手段を採用することができる。
(1)電極の先端面とフランジ部との間に、電極の周方向に連続する環状の導電性部材(ワッシャ)を介在させる。
(2)電極の先端面をフランジ部と接触させ、フランジ部の厚さを0.8mm以上とする。
環状の導電性部材を介在させる場合は、例えば、電極でキャップを保持する前に、予めキャップの頭部に環状の導電性部材を装着しておくという簡易な作業で実現できる。また、環状の導電性部材は、溶接完了後にキャップから取り外して、繰り返し使うことができる。電極の先端面に環状の導電性部材を固定して一体化した構成としてもよい。
フランジ部を厚くした場合は、半導体装置を半導体モジュールに実装する際に、フランジ部を厚くした分だけ、半導体モジュールにおける半導体装置周辺の実装スペースが減少する。つまり、その分だけ他の部品が実装できなくなる虞がある。しかし、半導体モジュールに別途実装スペースを確保できる場合などは、フランジ部を厚くしても問題ない。フランジ部を厚くする場合は、環状の導電性部材を用いる必要がない。
本発明の抵抗溶接用電極は、複数の電極片の先端面が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中央に穴が形成されている。そして、導電性材料からなり、周方向に連続する環状の導電性部材を備える。環状の導電性部材は、一方の平面が電極の先端面に接触するように固定されており、環状の導電性部材の厚さが、0.3mm以上であることを特徴とする。
本発明のキャップ構造は、ステムに搭載された半導体素子を覆う頭部と、この頭部の一端に形成されてステムに溶接されるフランジ部とを備える。そして、フランジ部の厚さが、0.8mm以上であることを特徴とする。
上記した環状の導電性部材に求められる条件としては、導電性材料からなり、周方向に連続する環状であることの他に、適度な厚さと内径を有することが望まれる。
環状の導電性部材の厚さは、特に限定されないが、例えば0.3mm以上とすることが挙げられる。0.3mm以上とする理由は、上述したように一般的なフランジ部の厚さは500μm(0.5mm)程度であるので、フランジ部を含めた導電性部材の厚さが0.8mm以上を実現するためである。また、環状の導電性部材を厚くすると、その分電極に把持されるキャップ頭部の掴み代が短くなる。掴み代が短くなり過ぎると、電極で安定して保持できなくなるため、位置調整精度が低下する虞がある。そこで、環状の導電性部材の厚さの上限は1.0mm未満とすることが好ましい。
環状の導電性部材の内径は、少なくともキャップの頭部が挿入でき(頭部の外径よりも大きく)、かつ、フランジ部に当接する(フランジ部の外径よりも小さい)程度の大きさが必要である。環状の導電性部材の内径は、キャップのフランジ部の外径よりも100μm超小さくすることが好ましい。100μm超小さくすることで、フランジ部との接触面積を確保し易い。また、これにより、環状の導電性部材をキャップの頭部に挿入して装着した際、フランジ部の軸に対して偏心した位置に環状の導電性部材が装着されたとしても、環状の導電性部材がフランジ部の全周に接触し易くなる。さらに、環状の導電性部材の内径は、キャップの頭部の外径よりも20μm以上大きくすることが好ましい。20μm以上とすることで、頭部に挿入し易くなる。一方、環状の導電性部材の外径は、フランジ部との接触面積を確保する観点から、フランジ部の外径よりも大きくすることが好ましい。
環状の導電性部材は、導電性材料からなる。導電性材料としては、例えば銅、アルミニウム又はこれらの合金、或いはステンレス鋼などが挙げられる。中でも、強度、硬度及び導電性のバランスに優れた銅合金からなることが好ましい。具体的な銅合金としては、電極材料にも使用されているニッケル及びベリリウムを添加した銅合金(例、東芝マテリアル株式会社 商品名「NBC」)が挙げられる。また、環状の導電性部材がステンレス鋼からなる場合、銅合金に比べて、優れた耐摩耗性を発揮すると考えられる。ステンレス鋼としては、キャップ材料にも使用されているフェライト系ステンレス鋼(例、下村特殊製鋼株式会社 商品名「SF20T」)が挙げられる。
本発明の抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造は、キャップのフランジ部とステムとを溶接するにあたり、電極の先端面からフランジ部とステムとの界面までの間を、導電性部材で構成し、かつ、この距離を0.8mm以上にして溶接することで、溶接ムラを防止し、溶接不良を低減することができる。
本発明の抵抗溶接方法に用いる抵抗溶接用電極を説明する図であり、(A)は電極の概略正面図、(B)は電極の先端面側から見た概略底面図である。 本発明の抵抗溶接方法に用いるワッシャ(環状の導電性部材)の概略斜視図である。 本発明の抵抗溶接方法を説明する概略図である。 本発明の抵抗溶接方法を説明する概略図である。 本発明の抵抗溶接用電極を説明する図であり、(A)は電極の概略正面図、(B)は電極を先端面側から見た概略底面図である。 本発明の抵抗溶接用電極の別の例を説明する図であり、電極の先端面側から見た概略底面図である。
本発明の抵抗溶接方法を図1〜4を参照して説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。
[抵抗溶接用電極]
図1に示す抵抗溶接用電極1は、銅合金(東芝マテリアル株式会社 商品名「NBC」)からなり、円筒状である。そして、先端部がスリット12により3つの電極片11に分割されており、各電極片11の先端面13が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中心に穴14が形成されている。
この電極1は、穴14に対象物(後述するキャップ)を挿入し、電極片11の外側からクランプして穴14を縮径し、その締め付け力によって対象物を把持できる構造になっている。この例では、自然解放時(クランプしていない状態)における電極1の穴14の径が3.36mmである(図1(B)を参照)。またクランプしたとき、先端面13において隣接する電極片間の隙間Y(但し、その最も内側での測定値)のうち最も大きい隙間Yが0.02mmである。さらに、先端面13の円環(図1(B)中、右上から左下へのハッチングで示す部分)の内外径差が5.4mmである。
[環状の導電性部材(ワッシャ)]
図2に示す環状の導電性部材(以下では単にワッシャと呼ぶ)2は、電極1と同じ銅合金(NBC)からなり、周方向に連続する円環状である。この例では、ワッシャの厚さTwが0.5mmであり、ワッシャの内径φi及び外径φoがそれぞれ、3.25mm及び6.0mmである。
[キャップ、ステム]
次に、本発明において溶接対象となるキャップとステムについて説明する。キャップとステムは、半導体装置のパッケージを構成する部材である。図3に示すキャップ3は、円筒状の部材であり、レンズ33が取り付けられた頭部31と、この頭部31の一端に形成されたフランジ部35とを備える。一方、ステム4は、円板状の部材であり、上面に半導体素子41が搭載されている。半導体素子41は、ステム4に挿通されたリードピン42と電気的に接続されている。そして、キャップ3は、頭部31がステム4に搭載された半導体素子41を覆い、フランジ部35がステム4に溶接されることで、半導体素子41を封止する。また、ステム4に溶接されるフランジ部35の底面には、例えば特許文献3に示すようなプロジェクション(図示せず)が形成されている。
この例では、キャップ3にはステンレス鋼(下村特殊製鋼株式会社 商品名「SF20T」)を使用し、ステム4にはSPCを使用している。また、頭部の外径aが3.2mm、頭部の高さThが2.2mmであり、フランジ部の外径bが3.4mm(幅cが100μm)、フランジ部の厚さTfが500μmである(図3を参照)。
以上説明した抵抗溶接用電極1とワッシャ2とを用いて、キャップ3とステム4とを溶接する本発明の抵抗溶接方法について説明する。なお、電極以外は、従来の抵抗溶接装置を使用することができる。
抵抗溶接装置のステージ5の凹部51に半導体素子41を搭載したステム4をセットする(図3を参照)。一方、キャップ3の頭部31にワッシャ2を装着する。次いで、ワッシャ2から突出する頭部31を電極1の穴14に挿入し、電極片11の外側からクランプ(図示せず)で押圧して電極片11を内側に弾性変形させることによって、電極1でキャップ3を把持する。このとき、電極1(電極片11)の先端面13をワッシャ2の上面と接触させると共に、スリット12が狭められ、穴14の径が3.2mmまで縮径される(図4を参照)。また、キャップ3を把持した状態において、電極片11同士は互いに接することがなく、先端面13には隙間が残る。
次に、電極1を移動し、穴14から露出するキャップ3のフランジ部35をステム4に当接させた状態で、レンズ33の光軸と半導体素子41の光軸とが一致するように調芯作業を行い、フランジ部35をステム4の上面に位置合わせする。そして、キャップ3をステム4に押し付けた状態で、電極1に溶接電流を供給し、電極1からワッシャ2、フランジ部35、ステム4、ステージ5に電流を流して、フランジ部35とステム4とを溶接する。このとき、ワッシャ2が電極1の先端面13とフランジ部35との間に介在する。
(試験1)
以上説明した本発明の抵抗溶接方法を用いて、キャップとステムとの溶接を行い、ワッシャの厚さと位置調整精度の関係について評価した。位置調整精度は、溶接後、半導体素子の光軸に対するレンズの光軸のX方向とY方向のずれを、光学顕微鏡を用いてレンズ上面から観察することで測定した。そして、溶接して作製したn個について、芯ずれのばらつきを、規格値に対するばらつき(3σ)でCpk値(工程能力指数)として評価した。ここでは、n=11とし、X方向とY方向のそれぞれについてCpk値を求めた。ワッシャの厚さTw=0.5mmの場合の結果を表1に示す。
なお、Cpk値は、Cpl値とCpu値の小さい方の値とし、Cpl値及びCpu値はそれぞれ、次のようにして求めた。
Cpl=(ばらつきの平均値−規格値下限)/3σ
Cpu=(ばらつきの平均値−規格値上限)/3σ
また、ワッシャを用いなかった場合、ワッシャを厚さ1.0mmのものに変更した場合のそれぞれの場合についても、芯ずれのばらつきを評価した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 2011092986
この結果から、ワッシャの厚さTw=0.5mmの場合及びワッシャなしの場合は、X方向とY方向のそれぞれのCpk値が1.33以上であり、良好な位置調整精度を示していることが分かる。これに対し、ワッシャの厚さTw=1.0mmの場合は、Cpk値が1.33未満であり、位置調整精度が悪化していることが分かる。これは、電極でキャップを把持したとき、ワッシャの厚さ分だけキャップ頭部の掴み代が短くなるので、電極でキャップを安定して保持することができなかったことが原因と考えられる。言い換えれば、掴み代が十分に(例えば1.2mm超)取れるのであれば、ワッシャの厚さが1.0mm以上であっても問題ないと考えられる。
(試験2)
本発明の抵抗溶接方法を用いて溶接した場合の溶接強度について評価した。ここでは、厚さが0.5mmのワッシャを用いて溶接したものを5つ作製し、それぞれの溶接強度を測定して、その平均値を求めた。なお、ワッシャの内径などのその他の条件は、上述したとおりである。
溶接強度は、強度測定器(荷重計)を用いて測定した。具体的には、ステムを固定した状態で、キャップの頭部外周面に測定ピンを押し当ててキャップの軸方向と直交する方向に荷重を加えていき、キャップとステムとに破断されたときの荷重(kg)を測定した。その結果を表2に示す。
また、ワッシャを用いなかった場合、ワッシャを厚さ0.3mm及び0.1mmのものに変更した場合のそれぞれの場合についても、溶接強度を評価した。その結果を表2に併せて示す。
Figure 2011092986
この結果から、ワッシャの厚さTw=0.5mmの場合及びTw=0.3mmの場合は、ワッシャの厚さTw=0.1mmの場合及びワッシャなしの場合と比較して、高い溶接強度を示していることが分かる。これは、キャップとステムとを溶接する際、電極の先端面とフランジ部との間にワッシャが介在することで、電極の先端面からフランジ部とステムとの界面までの間を導電性部材で構成すると共に、この距離を0.8mm以上にして溶接することにより、フランジ部のステムに溶接される面において全周に亘って電流分布が均一になる。その結果、溶接ムラが防止され、キャップとステムとの溶接状態が良好であることから、溶接強度が向上したものと考えられる。
そこで、キャップとステムとに破断した後、ステムの上面を光学顕微鏡で観察して、溶接状態を確認した。その結果、ワッシャの厚さTw=0.5mmの場合及びTw=0.3mmの場合は、フランジ部に対応する円形の溶接痕が明瞭に観察され、溶接ムラがなく、溶接状態が良好であった。これに対し、ワッシャの厚さTw=0.1mmの場合及びワッシャなしの場合は、溶接が十分でない箇所が観察され、溶接ムラが見られたため、溶接強度が低下したものと考えられる。
(試験3)
次に、ワッシャの内径と溶接状態の関係について評価した。ここでは、内径が3.25mmのワッシャと内径が3.38mmのワッシャとを用意し、それぞれのワッシャを用いて溶接したものを作製した。なお、ワッシャの厚さは、いずれも0.5mmであり、その他の条件は、上述したとおりである。
溶接状態は、キャップとステムとに破断して分解した後、ステムの上面を光学顕微鏡で観察して確認した。その結果、ワッシャの内径φi=3.25mmの場合は、フランジ部に対応する円形の溶接痕が明瞭に観察され、溶接ムラがなく、溶接状態が良好であった。これに対し、ワッシャの内径φi=3.38mmの場合は、溶接が十分でない箇所(ステム表面のコーティングが剥げていない箇所)が観察され、溶接ムラが見られたため、溶接状態が不良であった。これは、ワッシャの内径が大きくなると、フランジ部との接触面積を十分に確保できなくなることから、溶接状態が悪化したものと考えられる。
(試験4)
キャップと同じ材質のステンレス鋼(SF20T)で形成されたワッシャを用いて、キャップとステムとの溶接を行い、その場合の溶接強度について評価した。ここでは、ワッシャの寸法を、厚さTw=0.5mm、内径φi=3.25mm、外径φo=6.0mmとし、その他の条件は、上述のとおりである。また、溶接強度の評価方法は、上記した試験2と同じである。その結果を表3に示す。
Figure 2011092986
この結果から、ステンレス鋼のワッシャを用いた場合であっても、銅合金のワッシャを用いた場合(表2を参照)と同等の高い溶接強度を示していることが分かる。また、これはフランジ部の厚さを1.0mmとしたのと同じと考えられ、この結果から、フランジ部を厚く(例えば0.8mm以上)することで、ワッシャを用いなくても、溶接ムラを防止できるものと推定される。さらに、ステンレス鋼のワッシャを用いた場合の溶接状態についても、上記した試験2と同様の方法で確認したところ、溶接ムラがなく、溶接状態が良好であった。
次に、本発明の抵抗溶接電極を図5を参照して説明する。図5に示す抵抗溶接用電極1は、先端面13にワッシャ2が固定されている点が図1に示す電極1と相違しており、以下、この相違点を中心に説明する。
この電極1は、先端面13にワッシャ2の一方の平面が接触するように固定され、ワッシャ2が一体化されている。このワッシャ2は、図2に示すワッシャと同じであり、厚さTwが0.5mmであり、内径φi及び外径φoがそれぞれ、3.25mm及び6.0mmである。
ワッシャ2の電極1への固定は、ワッシャ2の孔と電極1の穴14とが重なるようにワッシャ2を配置し、1つの電極片11の先端面13に固定用ネジ21でネジ止めして固定している。具体的には、ワッシャ2の他方の平面に、径方向に延びる長形の凹部22が形成され、その凹部22の底面には、ワッシャ2の一方の平面まで貫通する貫通孔が形成されている。そして、凹部22にネジ21の頭部が収納されるように貫通孔にネジ21を挿入し、電極片11の先端面13に設けられたネジ穴に螺合してネジ止めしている(図5(B)を参照)。
この電極1を利用すれば、キャップとステムとを溶接する際、電極1の先端面13とフランジ部との間にワッシャ2が介在することになるため、上述したように、溶接ムラを防止し、溶接不良を低減することができる。また、先端面13にワッシャ2が取り付けられているため、キャップにワッシャ2を装着する作業を省略することができる。さらに、貫通孔を電極1の径方向に延びる長孔としたことで、その貫通孔内でネジ21の径方向への移動を許容し、電極1でキャップを把持する際、電極片11の内側(穴14を形成する壁面)がキャップ頭部の外周面に接触するように、電極片11を径方向(内側)に弾性変形させることが可能である。
(変形例)
図5に示す電極1の場合では、一つの電極片11にワッシャを固定する構造について説明したが、複数の電極片11に対しワッシャを固定してもよい。図6に示すワッシャ2の固定構造は、ワッシャ2の他方の平面における各電極片11と対応する位置に、径方向に延びる長形の凹部22とその下面に貫通孔とが3つ形成されている。そして、それぞれの貫通孔に固定用ネジ21を挿入し、各電極片11の先端面13に設けられたネジ穴に螺合して3箇所でネジ止めしている。このように、複数の電極片に対しワッシャを固定することで、電極1に対してワッシャ2が回転することを防止し、また、電極1の穴14に対しワッシャ2を同軸に保持し易い。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ワッシャやキャップの材質及び寸法を適宜変更したり、電極のスリットの数を増やし、4つ以上の電極片に分割してもよい。また、ワッシャを用いる場合、複数のワッシャを重ねて用いてもよい。さらに、円環状に限らず、環状の導電性部材であれば同様の効果が期待できる。
本発明の抵抗溶接方法、抵抗溶接用電極及びキャップ構造は、キャップとステムとを溶接して半導体装置を製造するのに好適に利用できる。
1 抵抗溶接用電極(コレット電極)
11 電極片 12 スリット 13 先端面 14 穴
2 ワッシャ(環状の導電性部材)
21 固定用ネジ 22 凹部
3 キャップ
31 頭部 33 レンズ 35 フランジ部
4 ステム
41 半導体素子 42 リードピン
5 ステージ
51 凹部

Claims (8)

  1. 複数の電極片の先端面が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中心に穴が形成されたコレット電極を用い、この穴にキャップの頭部を保持して前記電極に通電することで、前記穴から露出する前記キャップのフランジ部を半導体素子が搭載されたステムに溶接する抵抗溶接方法であって、
    前記電極で保持した前記キャップのフランジ部を前記ステムの所定位置に位置合わせし、
    前記電極の先端面から前記フランジ部と前記ステムとの界面までの間を導電性部材で構成すると共に、この先端面から前記界面までの距離を0.8mm以上にして溶接することを特徴とする抵抗溶接方法。
  2. 前記電極の先端面と前記フランジ部との間に、前記電極の周方向に連続する環状の導電性部材を介在させることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接方法。
  3. 前記環状の導電性部材の厚さを、0.3mm以上とすることを特徴とする請求項2に記載の抵抗溶接方法。
  4. 前記環状の導電性部材の内径を、前記キャップのフランジ部の外径よりも100μm超小さくすることを特徴とする請求項2又は3に記載の抵抗溶接方法。
  5. 前記環状の導電性部材が、銅合金からなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の抵抗溶接方法。
  6. 前記電極の先端面を前記フランジ部と接触させ、前記フランジ部の厚さを0.8mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接方法。
  7. 複数の電極片の先端面が互いに間隔をあけて円環状に配置され、この円環の中央に穴が形成された抵抗溶接用電極であって、
    導電性材料からなり、周方向に連続する環状の導電性部材を備え、
    前記環状の導電性部材は、一方の平面が電極の先端面に接触するように固定されており、
    前記環状の導電性部材の厚さが、0.3mm以上であることを特徴とする抵抗溶接用電極。
  8. ステムに搭載された半導体素子を覆う頭部と、この頭部の一端に形成されて前記ステムに溶接されるフランジ部とを備え、前記半導体素子を封止するキャップの構造であって、
    前記フランジ部の厚さが、0.8mm以上であることを特徴とするキャップ構造。
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