JP2011092121A - 増殖可能な動物細胞の調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞の接着・増殖性に優れるとともに、増殖後は細胞に損傷を与えることなしに培養細胞の脱離が可能な、増殖可能な動物細胞の調製方法及び増殖可能な皮膚細胞などの動物細胞シートの調製方法を提供する。
【解決手段】(1) 少なくとも一部が電極である基板上で動物細胞を培養する工程、及び(2)電極に高周波変動電位を印加して、培養により前記基板表面に付着した細胞を剥離する工程、を含む増殖可能な動物細胞の調製方法。前記高周波変動電位は、周波数が1KHz〜10MHzの範囲であり、かつ±1.0V(vs Ag/AgCl) またはそれより小さい電位の幅とする。剥離時の培養液はカルシウム及びマグネシウムを含まない培養液とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板上で培養した動物細胞を、培養後に基板から増殖可能な状態で剥離して増殖可能な動物細胞を調製する方法、及びこの方法を利用した動物細胞シートの調製方法に関する。特に本発明は、この剥離方法を利用した皮膚細胞シートの調製方法に関する。
再生医療における主な治療素材は、患者もしくはドナーから提供されたヒト細胞であるが、移植治療のためには、このヒト細胞を細胞培養により増殖させて、十分な細胞数を確保することが不可欠である。多くの細胞は、培養面への接着、細胞伸展、及び分裂による増殖の一連の過程を経て増殖する、足場依存性細胞であり、複数回、継代培養することで細胞数を増大させることができる。その際に必要な要素技術は、細胞が接着・伸展・増殖できる培養面、および、培養面からの脱離制御である。細胞の接着・増殖できる面のみならず、増殖した細胞を傷付けることなく、増殖可能な状態で脱離することが重要である。
従来知られている細胞脱離方法としては、酵素法、電気刺激法、及び親水度制御法などである。酵素法は、トリプシンなどのプロテアーゼにより細胞表層のたんぱく質を溶かすことで剥離する方法である。電気刺激法は、培養面に電流を流し、細胞表層のタンパク質を溶解することで剥離する方法である。親水度制御法は、培養面の親水性を高めることで脱離する方法である。これらの方法の中でも、酵素法が一般的な方法となっている。しかし、酵素法は、細胞表層全体を溶解させるために、細胞への損傷が大きく、そのため、再接着・増殖の効率が悪いという問題がある。
電気刺激法は、細胞と培養面の接点で局所的に反応させ迅速な応答を行うことができる方法である。例えば、特許文献1には、培養細胞が付着した電極の電位を調整することで細胞を自発的に剥離させ、損傷が少ない培養細胞を得ることができる、と記載している。また、特許文献2には、電極に接着した細胞を、この電極に定電位を印加して剥離することが記載されている。
特開2005-312343号公報 特開平10-42857号公報
しかるに、特許文献1及び2に記載の方法では、電極に付着した動物細胞は剥離しない場合があり、剥離する場合でも、剥離した細胞は、ダメージを受けており増殖率が低く、増殖力に劣るという問題があった。例えば、特許文献2に記載の条件である、-1.2V(vsAg/AgCl)の定電位では細胞は剥離するが、水素が発生しやすいために細胞が損傷を受け、増殖可能な動物細胞の率は低い。
そこで本発明の目的は、細胞の接着・増殖性に優れるとともに、増殖後は細胞に損傷を与えることなしに培養細胞の脱離が可能な、増殖可能な動物細胞の調製方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、増殖可能な皮膚細胞などの動物細胞シートの調製方法を提供することにある。
本発明者らは、種々の検討を行い、培養細胞の電極表面からの剥離に、高周波変動電位を用いることで、上記課題を解決することができることを見出して本発明を完成させた。
本発明は以下のとおりである。
[1]
(1)少なくとも一部が電極である基板表面上で動物細胞を培養する工程、及び
(2)前記電極に高周波変動電位を印加して、培養により前記基板表面に付着した細胞を剥離する工程、を含む増殖可能な動物細胞の調製方法であって、
前記高周波変動電位は、周波数が1KHz〜10MHzの範囲であり、かつ±1.0V(vs Ag/AgCl)またはそれより小さい電位の幅とすること、及び
剥離時の培養液はカルシウム及びマグネシウムを含まない培養液とすることを特徴とする、前記調製方法。
[2]
前記剥離時の培養液はリン酸緩衝液(Ca2+、Mg2+不含)とする、[1]に記載の調製方法。
[3]
前記高周波変動電位は、矩形波、正弦波、または三角波である、[1]または[2]に記載の調製方法。
[4]
前記基板表面は、全面が電極である[1]〜[3]のいずれかに記載の調製方法。
[5]
前記基板表面は、一部が電極であり、工程(2)において電極表面上及び電極近傍の非電極表面上の細胞を剥離する[1]〜[3]のいずれかに記載の調製方法。
[6]
剥離した増殖可能な動物細胞を、さらに継代して増殖可能な動物細胞を維持する工程を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の調製方法。
[7]
培養して細胞をシート状にし、シート状の細胞を増殖可能な状態で剥離して、増殖可能な動物細胞シートを得る、[1]〜[6]のいずれかに記載の調製方法。
[8]
動物細胞が皮膚細胞である、[1]〜[7]のいずれかに記載の調製方法。
本発明によれば、高周波変動電位の印加により、電極に付着した動物細胞は良好に剥離でき、かつ剥離した細胞の増殖率は高く、増殖力に優れた動物細胞が得られる。本発明によれば、化学的な継代法では変異などを伴う危険性のある幹細胞、iPS細胞などについても継代が可能である。
工程(1)〜(2)の説明図を示す。 参考例1における電極作製手順の説明図を示す。 実施例1で得た、電圧印加時間0分、30分、60分の電極表面の画像を示す。 実施例1で得た、電気剥離後、細胞をカルチャ―ボトルに継代した後の電極表面の画像を示す。 比較例1で得た、電圧印加時間0分、60分の画像を示す。 比較例2で得た、培地中のヒト皮膚繊維芽細胞に±1.0V、3MHzの電位印加を加えた後の電極表面の画像を示す。 比較例3で得た、-1.0V(vs. Ag/AgCl)の定電位を0分、60分印加した後の電極表面の画像を示す。 比較例3で得た、電気剥離後、細胞をカルチャ―ボトルに継代した後の電極表面の画像を示す。 実施例2で得た、電圧印加時間0分、30分、60分の電極表面の画像を示す。 参考例2におけるITO電極の表面の水に対する接触角の測定結果を示す。
本発明は、増殖可能な動物細胞の調製方法に関する。
本発明の方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
工程(1)
工程(1)は、少なくとも一部が電極である基板表面上で動物細胞を培養する工程である。動物細胞を培養する少なくとも一部が電極である基板としては特に制限はない。前記基板表面は、全面が電極であっても、一部が電極であり、一部は、非電極(基板)であってもよい。さらに、少なくとも一部が電極である基板は、例えば、電極以外の基板に電極層を設けたものであっても、カーボン電極等のように全体が電極であるものであってもよい。電極以外の基板に電極層を設けたものの場合、基板は、絶縁性の基板の表面の一部または全部に電極を有するものであることができる。そのような電極を有する基板は、例えば、スライドガラスに酸化インジウム(ITO)をコーティングしたものであることができる。但し、絶縁性の基板は、スライドガラスに限定される意図ではなく、非導電性の固体であれば特に制限はなく、非導電性の有機材料や無機材料からなるものであることができる。非導電性の有機材料や無機材料としては、ガラス以外に、例えば、プラスチックやセラミックス等を挙げることもできる。電極は、酸化インジウム(ITO) に限定される意図ではなく、公知の電極材料からなるものを適宜利用できる。
基板に電極層を設けたもの場合、基板表面の全部に電極層を設けたもの、電極基板の表面の一部に電極層を設けたもののいずれであってもよく、電極基板の表面の一部に電極層を設けたものの場合、電極層は例えば、アレイ状であっても縞状であってもよい。本発明の方法は、特に培養の結果、シート状になった動物細胞を、動物細胞に損傷を与えることなく容易に剥離できるものであり、電極層は、動物細胞シートの所望の大きさ(面積や寸法)を考慮して適宜決定できる。例えば、電極の面積は、例えば、1〜900cm2の範囲であることができる。
また、アレイ状とは、例えば、縦列及び横列それぞれに複数の微小領域として、電極層が配置されることを意味する。縦列及び横列それぞれの微小領域の数は特に制限はなく、動物細胞の種類(サイズ)や動物細胞をアレイ状に配置した基板の利用目的等に応じて適宜決定できるが、例えば、縦10〜105×横10〜105の範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。アレイ状電極層表面の形状は、矩形(三角形、正方形、長方形、多角形等)や円形、楕円形等、適宜決定できる。アレイ状の各電極表面の寸法は、1つの電極表面に1つの動物細胞が付着できる寸法であることができる。動物細胞の寸法は、細胞により様々であるので、付着させる動物細胞の寸法に応じて、電極表面の寸法は適宜決定できる。但し、例えば、動物細胞がHeLaである場合、電極表面の寸法は、例えば、25〜100μmの範囲であることができる。また、アレイ状の各電極表面の寸法は、1つの電極表面に2つ以上の動物細胞が付着できる寸法であることもできる。さらに、各電極の間隔も、例えば、25〜100μmの範囲であることができる。
また、縞状の電極層は、例えば、同じ幅の帯状の電極層を等間隔または異なる間隔で複数設けたもの、異なる幅の帯状の電極層を等間隔または異なる間隔で複数設けたもののいずれであってもよい。帯状の電極層の幅及び帯状の電極層の間の間隔は、特に制限はないが、いずれも独立に例えば、25〜100μmの範囲であることができる。
後述するが、工程(2)においては、電極表面上のみならず、電極近傍の非電極表面上の細胞も剥離でき、非電極表面上で剥離できる細胞は、電極からの距離が、高周波変動電位の周波数と電位にもよるが、約100μm以内である。従って、アレイ状及び縞状いずれの場合も、電極の間隔も、上記25〜100μmの範囲であれば、非電極表面上の細胞も剥離できる。
基板表面へのアレイ状または縞状電極層の形成は、例えば、基板表面に電極層をコーティングし、アレイ状または縞状電極表面用のマスクを電極層表面に形成し、次いで、マスクを介して電極層表面をエッチングし、マスクを除去することで形成することができる。あるいは、基板表面へのアレイ状または縞状電極表面の形成は、基板表面に電極層をアレイ状または縞状電極表面用のマスクを介してコーティングし、次いでマスクを除去することで形成することができる。電極層の形成や電極層表面のエッチング等は、常法を用いて適宜実施できる。
本発明において、増殖可能な動物細胞を調製する対照となる動物細胞は、特に制限はなく、例えば、皮膚細胞、幹細胞、iPS細胞などであることができる。
少なくとも一部が電極である基板表面での動物細胞の培養条件は、動物細胞の種類に応じて公知の培養条件を適宜採用することができる。少なくとも一部が電極である基板表面に、動物細胞を含む培養液を供給し、動物細胞の種類に応じた培養条件で培養すると、電極表面及び非電極表面がある場合には非電極表面にも動物細胞が付着する。少なくとも一部が電極である基板表面での動物細胞の培養は、動物細胞が個別に存在する条件で実施することも、動物細胞が塊を形成する条件で実施することも、さらに動物細胞がシート状に塊を形成する条件で実施することもできる。本発明においては、工程(2)において、塊を形成した動物細胞でも、シート状に塊を形成した動物細胞でも、細胞を増殖可能な状態で剥離することができる。
工程(2)
工程(2)は、培養して細胞が付着した少なくとも一部が電極である基板の電極に高周波変動電位を印加して細胞を剥離する工程である。電極に付着した細胞及び電極近傍の非電極表面上の細胞は、高周波変動電位を印加することで剥離する。高周波変動電位は、具体的には、周波数は1KHz〜10MHz の範囲、好ましくは1〜5MHzの範囲とすることができ、 電位は、例えば、±1.0V(vs Ag/AgCl)またはそれより小さい電位の幅とすることができ、例えば、±0.9V(vs Ag/AgCl)、±0.8V(vs Ag/AgCl)などにすることもできる。高周波変動電位の波形は、例えば、矩形波、正弦波、三角波等であることができる。
さらに、高周波変動電位の印加の際には、剥離時の培養液は、カルシウム及びマグネシウムを含まない培地とすることが適当である。カルシウムまたはマグネシウムを含む培養液中で高周波変動電位を印加しても、細胞は電気的に剥離出来なかったからである。高周波変動電位の印加の際には、剥離時の培養液は、例えば、リン酸緩衝液(Ca2+、Mg2+不含)[PBS(-)]、ハンクス緩衝塩(Ca2+、Mg2+不含)等であることができ、中でもPBS(-)であることが、好ましい。
工程(2)においては、電極表面上のみならず、電極近傍の非電極表面上の細胞も剥離でき、非電極表面上で剥離できる細胞は、電極からの距離が、高周波変動電位の周波数と電位にもよるが、約100μm以内である。高周波変動電位の印加の際には、電極上の細胞には電位が直接的に印加され、非電極表面上の細胞には電位が間接的に印加される。従って、電位の印加による細胞へのストレスは、非電極表面上の細胞の方が相対的に小さく、電位の印加によって細胞の損傷が生じる場合(そのような高周波変動電位の条件)であっても、非電極表面上の細胞の方が、損傷が少ないか、または無い傾向がある。電位の印加によって細胞の損傷が生じる程の強い高周波変動電位を採用するのは、細胞の付着が強固であり、剥離しにくい場合であるので、そのような場合には、非電極表面上の細胞の剥離を優先的に行うような、電極の形状や配置、さらには、非電極表面の選択を行い、非電極表面上の細胞の剥離を積極的に行うこともできる。
本発明の方法においては、図1に示すように、工程(1)において基板の電極表面または電極及び非電極表面で動物細胞を培養し、付着させる。(A)は基板の全面が電極表面である場合、(B)及び(C)は基板の一部が電極であり、一部が非電極表面である場合である。いずれの場合にも、工程(1)において高周波変動電位を印加]することで、電極表面または電極及び非電極表面に付着した動物細胞を剥離することができる。
本発明の方法は、剥離した増殖可能な動物細胞を、さらに継代して増殖可能な動物細胞を維持する工程を含むことができる。動物細胞を維持する方法は、動物細胞の種類に応じて適宜採用できる。
工程(1)において、シート状の塊として動物細胞を電極表面上に培養、付着させ、このシート状の動物細胞を増殖可能な状態で剥離することができる。そのため、再生医療等の分野で非常に有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
参考例1
(1)電極作製
以下の手順に従って、電極及び3電極培養系を作製した。図2に電極作製の手順の説明図を示す。
1)スライドグラス(図2左上)上の中央部に酸化インジウム(ITO)を6.3〜7.5Ω/cm2でコーティングしたパターン電極(1cm×1cm)を作製した(図2左下)。パターン電極は、左下に示すように、4つの領域に分けて作製され、各領域のパターンA〜Dは図2の中央に示す。黒い部分がガラス表面で、白い部分がITO電極表面である。実施例では、この態様のパターン電極を用いた。
2)このスライドグラスの端の部分をダイヤモンドドリルで穴をあけ、導電性樹脂(Dotite, D-550, 藤倉化成(株))で導線とITO電極をつなげた。
3)ラブテックチェンバースライド(Lab-tek chamber slike, 177410, NalgeNunc)のチェンバー部分を取り外し、水槽修復用のシリコンボンド(東芝シリコーン, TSE382-C クリア)でITOパターン電極上に接着した。
4)ラブテックチェンバースライドのフタ部分を2か所、ダイヤモンドドリルで穴をあけ、白金電極と銀/塩化銀電極を接続した。
5)フタとチェンバーを組み合わせて、3電極培養系(右上写真)を完成させた。
実施例1
参考例1で作製した3電極培養系を用いて、以下の手順で動物細胞の電気的継代法を実施した。
1)血清含有培地に懸濁させた動物細胞(正常ヒト皮膚繊維芽細胞)を3電極培養系のITOパターン電極チェンバー内に播種し、数日間培養した。
2)細胞が電極基板上に付着したことを確認し、ITOパターン電極チェンバー内をPBS(-)に置き換えた。
3)ファンクションジェネレーター(AD8624A, A&D company, Tokyo, Japan)を接続したポテンシオスタット(PS-14, Toho technical research)で、3MHz, ±1.0V(vs. Ag/AgCl)の矩形波変動電位を、3電極培養系にしたITOパターン電極に印加した。
4)電極から剥離した細胞を回収し、新しいカルチャーボトルに移した後、細胞付着率および細胞増殖の有無を、位相差顕微鏡(CKX-41, Olympus)で観察した。
結果を図3に、電圧印加時間0分、30分、60分の画像を示す。3MHz, -1.0 〜 +1.0V(vs. Ag/ AgCl)の電圧印加条件では、30分以上の印加で細胞を剥離することに成功した。その際、電流は検出されなかった(電気化学反応なし)。電気剥離後、細胞をカルチャ―ボトルに継代すると、図4に示すように、4時間後には88%の細胞(99個/112個)が正常に付着、増殖することを確認した。
比較例1
電圧印加条件を3MHz, -0.4 〜 +0.4V(vs. Ag/ AgCl)に替えた以外は、実施例1と同様の条件で、電極からの細胞剥離を試みた。結果を図5に、電圧印加時間0分、60分の画像を示す。この電圧印加条件では、60分の印加でも細胞はほとんど剥離しなかった。
比較例2
培地中のヒト皮膚繊維芽細胞に±1.0V、3MHzの電位印加を48hr加えても、図6に示すように、培地中のカルシウムやマグネシウムによる影響で細胞は、剥がれない。
比較例3
参考例1で作製した3電極培養系を用いて、以下の手順で動物細胞への定電位印加による剥離を実施した。
1)血清含有培地に懸濁させた動物細胞(正常ヒト皮膚繊維芽細胞)をITOパターン電極チェンバー内に播種し、数日間培養した。
2)細胞が電極基板上に付着したことを確認し、ITOパターン電極チェンバー内をPBS(-)に置き換えた。
3)ポテンシオスタット(PS-14, Toho technical research)で、-1.0V(vs. Ag/AgCl)の定電位を、3電極培養系にしたITOパターン電極に印加した。
4)位相差顕微鏡(CKX-41, Olympus)で観察した。
5)0.4%トリパンブルー in PBS(-)溶液で(ICN Biomedicals, Aurora, Ohio, USA)、電位印加60分後における動物細胞の生死を判別した。
結果を図7に、電圧印加時間0分、60分の画像を示す。この電圧印加条件では、細胞は球形化するだけで電極基板上からはほとんど剥がれなかった。トリパンブルー判別の結果を図8に示す。透明で光っている細胞が生きている細胞である。青く染まっている細胞は死んだ細胞である。細胞の生存率は11%(23/217個)であった。
実施例2
図1の(C)に相当する電極基板を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞の培養及び剥離を行った。図9に電圧印加時間0分、30分、60分の画像を示す。3MHz, -1.0 〜 +1.0V(vs. Ag/ AgCl)の電圧印加条件では、30分以上の印加で細胞を剥離することに成功した。その際、電流は検出されなかった(電気化学反応なし)。電気剥離後、細胞をカルチャ―ボトルに継代すると、24時間後まで細胞が正常に付着し、増殖することを確認した。
参考例2
ITO電極に定電位または高周波変動電位を印加したときのITO電極の表面の水に対する接触角を測定した。測定は、シクロオクタンを満たした電解槽中のITO電極の表面に水滴を載せ、定電位(-0.4Vまたは+0.4V(vs. Ag/AgCl))印加(24時間)前後の接触角または高周波変動電位(±1.0V、3MHz、矩形波変動電位)を30分若しくは60分印加前後の接触角を測定することで行った。結果を図10に示す。-0.4V及び+0.4Vの定電位(vs. Ag/AgCl)は24時間の印加により、水に対する接触角が約20〜30%低下したのに対して、高周波変動電位の印加は30分または60分の印加で約20〜40%低下し、電極の親水性がより短時間に増加することが分かる。この結果から、本発明における動物細胞の高周波変動電位印加による剥離は、電極表面の親水性の増加が一因であると推察される。
本発明は、再生医療等の増殖可能な動物細胞を必要とする分野に有用である。

Claims (8)

  1. (1)少なくとも一部が電極である基板表面上で動物細胞を培養する工程、及び
    (2)前記電極に高周波変動電位を印加して、培養により前記基板表面に付着した細胞を剥離する工程、を含む増殖可能な動物細胞の調製方法であって、
    前記高周波変動電位は、周波数が1KHz〜10MHzの範囲であり、かつ±1.0V(vs Ag/AgCl)またはそれより小さい電位の幅とすること、及び
    剥離時の培養液はカルシウム及びマグネシウムを含まない培養液とすることを特徴とする、前記調製方法。
  2. 前記剥離時の培養液はリン酸緩衝液(Ca2+、Mg2+不含)とする、請求項1に記載の調製方法。
  3. 前記高周波変動電位は、矩形波、正弦波、または三角波である、請求項1または2に記載の調製方法。
  4. 前記基板表面は、全面が電極である請求項1〜3のいずれかに記載の調製方法。
  5. 前記基板表面は、一部が電極であり、工程(2)において電極表面上及び電極近傍の非電極表面上の細胞を剥離する請求項1〜3のいずれかに記載の調製方法。
  6. 剥離した増殖可能な動物細胞を、さらに継代して増殖可能な動物細胞を維持する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の調製方法。
  7. 培養して細胞をシート状にし、シート状の細胞を増殖可能な状態で剥離して、増殖可能な動物細胞シートを得る、請求項1〜6のいずれかに記載の調製方法。
  8. 動物細胞が皮膚細胞である、請求項1〜7のいずれかに記載の調製方法。
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