JP5847446B2 - 細胞培養容器およびそれを用いた培養装置 - Google Patents
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Description
細胞を操作する有効な技術としては、誘電泳動が注目されている。誘電泳動に関する系統的な研究と理論解析は、1970年代にPohlによってはじめられた(非特許文献1を参照)。バクテリアや細胞などのマイクロサイズ生体物質は、初期の研究から既に主な操作対象として取り上げられており、バイオテクノロジーは主要な応用分野の一つであった。
ここで、a:球形近似したときの細胞の半径、ε0:真空の誘電率、εm:培地の比誘電率、E:電界強度であり、∇は勾配を表す演算子である。この場合、∇E2は、電界強度の二乗E2の勾配なので、その位置でどれだけE2が傾斜をもっているか、つまり電界が空間的にどれだけ急に変化をするかを意味する。また、Kはクラウジウス・モソッティ数と呼ばれ、式2で表される。ここで、εb *およびεm *はそれぞれ、細胞および培地の複素誘電率を表す。Re[K]は、クラウジウス・モソッティ数の実部を表すと定義すると、Re[K]>0は正の誘電泳動を表し、細胞は電界勾配と同方向、つまり、電界集中部に向かって泳動される。Re[K]<0は負の誘電泳動を表し、電界集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部に向かって泳動される。
一般に複素誘電率εr *は式3で表される。
ここで、εr:細胞あるいは培地の比誘電率、σ:細胞あるいは培地の導電率、ω:印加電界の角周波数を表す。式1、式2、式3から、誘電泳動力は、細胞の半径、クラウジウス・モソッティ数の実部および電界強度に依存することがわかる。また、クラウジウス・モソッティ数の実部は、培地および細胞の複素誘電率、電界周波数に依存して変化することがわかる。
細胞を保持および培養する細胞培養容器を具備する細胞培養装置であって、細胞培養容器に培地を供給または排出する供給・排出部と、細胞培養容器に設けられた電極に電圧印加する電源を有し、細胞培養容器は、筐体で囲まれ培地を保持する空間部と、空間部の底面上に設けられ細胞を接着し保持する細胞接着部とを有し、細胞接着部は、空間部内の細胞を細胞接着部に誘導して固定する細胞固定機構と、細胞接着部に接着されている細胞を剥離する細胞剥離機構とを備え、細胞固定機構は、細胞接着部に設けられた電極に前記空間部に不均一電場を発生する電圧印加手段を有し、細胞剥離機構は、細胞接着部に設けられた電極に空間部に電気分解を発生する電圧印加手段を有することを特徴とする。
<第1の実施形態>
本発明に係る細胞培養容器の一構成例を図1に基づいて説明する。
<第2の実施形態>
本実施形態は、本発明における下部電極間のインピーダンスを計測することによって細胞分布や細胞の増殖状況を推定する方法について説明する。
式4はCR並列等価回路の合成インピーダンスZを表す式、式5はCR並列等価回路のレジスタンスrを表す式、式6はCR並列等価回路のリアクタンスxを表す式、式7はCR並列等価回路の抵抗Rを表す式、式8はCR並列等価回路の静電容量Cを表す式である。
<第3の実施形態>
本実施形態は、細胞固定機構電極のギャップ間距離、印加電圧および印加周波数について説明する。
ここで、E:電界強度、V:印加電圧、d:電極ギャップ間距離を表す。
細胞培養用培地の主な組成である水は、理論上1.23Vで電気分解を起こすため、印加電圧Vは1.23V以下にする必要があり、好ましくは1V以下が良い。なお、印加電圧Vを低くすると、誘電泳動力が弱く、増殖に時間がかかる欠点があるので、実用面から印加電圧の下限は20mV程度が好ましい。また、薄膜電極で細胞を操作する場合では、電界強度Eは、1×104V/m以上にする必要があるため、電極ギャップ間距離dは、123μm以下になる。さらに、培養対象細胞が動物細胞の場合では、平均直径が10μmとなるため、電極ギャップ間の距離は20μm〜30μmが望ましい。
式10は、上記電極間のインピーダンスの大きさを表す。
式中のSは、電極間対向面積である。式10より、電極ギャップ間距離dが一定となる時、印加周波数fが大きくなればなるほど、インピーダンスが小さくなることがわかる。つまり、高周波数を印加すると、電極間の抵抗が小さくなり、流れる電流が大きくなる。その結果、培地の温度が上昇し、細胞に適した培養環境を逸脱したり、電流制御系の複雑化を招く。さらに、高周波発生装置の実現手段などを考慮すると、実用的な誘電泳動力を得るためには、印加周波数は、10MHz以下が望ましい。なお、印加周波数が低下すると水の電気分解が生じやすくなるので、下限値としては100Hz程度が好ましい。
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、本発明における他の構成の細胞培養容器について図12、図13を用いて説明する。
図12の構成の細胞培養容器では、増殖培養後の細胞を剥離する際、上部電極3は伸縮機構3Aによって培地5Aの上表面に接し、さらにスイッチ13BをOFF、13AをONにする。上記操作によって、下部電極4と上部電極3の間では、直流電源12から直流電界が印加される。適切な直流電圧を印加すれば、下部電極表面に起こる電気分解の効果により、細胞を培養面から剥離することができる。
本実施例では、3T3細胞とDMEM培地を用いた結果を説明したが、同程度の大きさの他の動物細胞や導電率同等の培地を用いた場合でも同様な結果が得ることができる。
Claims (13)
- 細胞を保持および培養する細胞培養容器であって、
筐体で囲まれ培地を保持する空間部と、
前記空間部の底面上に設けられ細胞を接着し保持する細胞接着部とを有し、
前記細胞接着部は、前記空間部内の細胞を前記細胞接着部に誘導して固定する細胞固定機構と、前記細胞接着部に接着されている細胞を剥離する細胞剥離機構とを備え、
前記細胞固定機構は、前記細胞接着部に設けられた電極に前記空間部に不均一電場を発生する電圧印加手段を有し、
前記細胞剥離機構は、前記細胞接着部に設けられた電極に前記空間部に電気分解を発生する電圧印加手段を有することを特徴とする細胞培養容器。 - 前記細胞固定機構に設けられた電極が、強電界部と弱電界部とからなる不均一な電場を発生させるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。
- 前記細胞固定機構に設けられた電極は、前記強電界部と弱電界部とが周期的に繰り返すように配設されていることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養容器。
- 前記培地が前記細胞に対して負の誘電泳動力を与える条件下において、
前記細胞固定機構に設けられた電極は、前記負の誘電泳動力によって前記細胞接着部に該細胞が固定されるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。 - 前記細胞固定機構に設けられた電極は、前記負の誘電泳動力によって前記細胞接着部の弱電界部に該細胞が固定されるように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の細胞培養容器
- 前記細胞剥離機構は、前記剥離用電極が前記細胞接着部に直流電場を印加するように配設され前記細胞接着部に接着されている細胞を剥離することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。
- 前記細胞固定機構に設けられた電極間の電気信号の変化によって前記細胞の分布と増殖状況を取得することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。
- 前記細胞固定機構に設けられた電極に印加する印加電圧が、20mV〜1.23Vの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養容器。
- 前記細胞固定機構に設けられた電極に印加する印加周波数が、100HZ〜10MHzの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養容器。
- 前記細胞固定機構に設けられた電極の電極ギャップ間距離が、123μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養容器。
- 前記電極が、白金、金、クロム、パラジウム、ロジウム、銀、アルミニウム、タングステン、ITOのいずれか、又はこれらの組み合わせの材料からなる請求項2に記載の細胞培養容器。
- 細胞を保持および培養する細胞培養容器を具備する細胞培養装置であって、
前記細胞培養容器に培地を供給または排出する供給・排出部と、
前記細胞培養容器に設けられた電極に電圧印加する電源を有し、
前記細胞培養容器は、
筐体で囲まれ培地を保持する空間部と、
前記空間部の底面上に設けられ細胞を接着し保持する細胞接着部とを有し、
前記細胞接着部は、前記空間部内の細胞を前記細胞接着部に誘導して固定する細胞固定機構と、前記細胞接着部に接着されている細胞を剥離する細胞剥離機構とを備え、
前記細胞固定機構は、前記細胞接着部に設けられた電極に前記空間部に不均一電場を発生する電圧印加手段を有し、
前記細胞剥離機構は、前記細胞接着部に設けられた電極に前記空間部に電気分解を発生する電圧印加手段を有することを特徴とする細胞培養装置。 - 前記電源は、前記電極に交流電界を与える第1電源と、前記電極に直流電界を与える第2電源とを有し、
前記細胞固定機構は、前記第1電源を印加することにより稼働し、前記細胞剥離機構は、前記第2電源を印加することにより稼働することを特徴とする請求項12に記載の細胞培養装置。
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