しかしながら、上記特許文献1〜3による場合、光ファイバの端面に他の光ファイバの端面を一旦接続した後で他の光ファイバを引き離すと、屈折率整合体の一部が他の光ファイバの端面に付着し、光ファイバの端面の屈折率整合体の量が不足する。また、光ファイバの端面の屈折率整合体の外周側に存在するゴミが、コア付近に移動し、他の光ファイバの端面を再接続すると接続損失が大きくなる可能性がある。
本発明は上記事実を考慮し、一旦接続を解除した光ファイバに他の光ファイバを、接続損失を増加させることなく再接続することができる光ファイバ端面構造、光ファイバ接続構造、光コネクタ、メカニカルスプライス、及び光ファイバ端面構造を備えた接続方法を得ることが目的である。
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る光ファイバ端面構造は、第1の光ファイバの端面の少なくともコア部に、半固形状で、かつ、前記第1の光ファイバの軸方向と交差する方向に切り込み部が形成され、第2の光ファイバの端面が接続される屈折率整合剤が付着されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面の少なくともコア部に、第1の光ファイバの軸方向と交差する方向に切り込み部が形成された半固形状の屈折率整合剤が付着されており、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を接続する。この接続後に第2の光ファイバの端面を第1の光ファイバの端面から引き離す(第2の光ファイバの端面の接続を解除する)と、屈折率整合剤が切り込み部で切り離され、当該切り込み部の一方側の屈折率整合剤が第2の光ファイバの端面に付着し、第1の光ファイバの端面に付着された屈折率整合剤に切り込み部の切断面が現れる。この状態で、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を再接続することができる。その際、屈折率整合剤の切り込み部の位置を適切に設定することによって、第1の光ファイバの端面に付着された屈折率整合剤の量が不足することが阻止される。また、第1の光ファイバの端面に付着された屈折率整合剤に切り込み部の切断面が現れているため、ゴミなどの付着が阻止され、第2の光ファイバの端面の再接続時に接続損失(伝送損失)が大きくなることが抑制される。
また、上記目的を達成するために、請求項2の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1に記載の発明において、前記切り込み部が前記第1の光ファイバの軸方向に複数形成されているものである。
本発明によれば、屈折率整合剤に切り込み部が第1の光ファイバの軸方向に複数形成されており、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を接続した後、第1の光ファイバの端面から第2の光ファイバの端面を引き離すと、屈折率整合剤が複数の切り込み部の1つで切り離され、第1の光ファイバの端面に付着された屈折率整合剤に切り込み部の切断面が現れる。さらに、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を再接続し、その後、第1の光ファイバの端面から第2の光ファイバの端面を引き離すと、屈折率整合剤が他の切り込み部で切り離され、第1の光ファイバの端面の屈折率整合剤に当該切り込み部の切断面が現れる。このため、第2の光ファイバの端面を複数回接続することができると共に、再接続時に接続損失(伝送損失)が大きくなることが抑制される。
また、請求項3の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項2に記載の発明において、前記切り込み部は、前記第1の光ファイバの端面から遠い順に深さが深く形成されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して接続された第2の光ファイバの端面を引き離すと、第1の光ファイバの端面から遠く、切り込み部の深さが深い順で切り込み部が切り離され、第1の光ファイバの端面の屈折率整合剤に深さが浅い切り込み部が残る。これによって、屈折率整合剤の切り込み部を第1の光ファイバの端面から遠い順に効率よく切り離し、第2の光ファイバの端面を複数回接続することができる。
請求項4の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発明において、前記切り込み部が前記コア部の延長領域を除いた部位に形成されているものである。
本発明によれば、屈折率整合剤の切り込み部が第1の光ファイバのコア部の延長領域を除いた部位に形成されており、接続損失が大きくなることをより確実に抑制することができる。
請求項5の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発明において、前記切り込み部は、軸方向に沿った断面がV字溝状に形成されているものである。
本発明によれば、屈折率整合剤の切り込み部は、軸方向に沿った断面がV字溝状に形成されており、例えば、金型を用いて切り込み部を形成することができる。これによって、切り込み部の形状や深さ等の精度が向上する。
請求項6の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の発明において、第1の光ファイバの端面に前記屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続したときに、前記屈折率整合剤が前記第1の光ファイバの端面と前記第2の光ファイバの端面との間から前記第1の光ファイバ又は前記第2の光ファイバの外周面にはみ出さない大きさと硬さとされているものである。
本発明によれば、屈折率整合剤の大きさと硬さを適切に設定することにより、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続したときに、屈折率整合剤が第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間から第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出さない。このため、第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面に屈折率整合剤がはみ出すことにより第1の光ファイバ又は第2の光ファイバに力が加わることが阻止され、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生が抑制される。また、第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出した屈折率整合剤にゴミが付着することが防止される。
請求項7の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の発明において、前記屈折率整合剤がシリコーン樹脂であるものである。
本発明によれば、屈折率整合剤がシリコーン樹脂であり、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間にシリコーン樹脂が介在されることで、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間に空気等が入りにくく、接続損失が大きくなることがより確実に抑制される。
一方、上記目的を達成するために、請求項8の発明に係る光ファイバ接続構造は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバの端面に、空孔が形成された第2の光ファイバが接続されているものである。
本発明によれば、第2の光ファイバの端面に空孔が形成されている場合でも、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間に屈折率整合剤を介在させて接続することができる。また、第1の光ファイバの端面から第2の光ファイバを引き離したときに、屈折率整合剤が切り込み部で切り離されるので、第1の光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を再接続することができる。その際、第1の光ファイバの端面の屈折率整合剤へのゴミなどの付着が阻止され、接続損失(伝送損失)が大きくなることを抑制することができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項9の発明に係る光コネクタは、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が形成された第1の光ファイバがフェルールに内蔵された内蔵光ファイバであり、前記内蔵光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面とが接続されているものである。
本発明によれば、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が形成された第1の光ファイバがフェルールに内蔵された内蔵光ファイバであり、内蔵光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を接続した後、内蔵光ファイバの端面から第2の光ファイバの端面を引き離したときに、屈折率整合剤が切り込み部で切り離されるので、内蔵光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を再接続することができる。その際、内蔵光ファイバの端面の屈折率整合剤へのゴミなどの付着が阻止され、接続損失(伝送損失)が大きくなることを抑制することができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項10の発明に係るメカニカルスプライスは、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバの端面に、第2の光ファイバの端面が接続されているものである。
本発明によれば、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を接続した後、第1の光ファイバの端面から第2の光ファイバの端面を引き離したときに、屈折率整合剤が切り込み部で切り離されるので、第1の光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を再接続することができる。その際、第1の光ファイバの端面の屈折率整合剤へのゴミなどの付着が阻止され、接続損失(伝送損失)が大きくなることを抑制することができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項11の発明に係る接続方法は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバに、第2の光ファイバを接続する接続方法であって、前記第1の光ファイバの端面に付着された前記屈折率整合剤に前記第2の光ファイバの端面を突き当てて接続する工程と、前記第2の光ファイバの端面を前記第1の光ファイバの端面から引き離し、前記切り込み部で前記屈折率整合剤を切り離す工程と、前記第1の光ファイバの端面に付着した前記屈折率整合剤の切断面に、前記第2の光ファイバの端面を突き当てて再接続する工程と、を有するものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面に付着された屈折率整合剤に第2の光ファイバの端面を突き当てて接続する。その後、第2の光ファイバの端面を第1の光ファイバの端面から引き離し、切り込み部で屈折率整合剤を切り離す。これによって、切り込み部の一方側の屈折率整合剤が第2の光ファイバの端面に付着し、第1の光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤に切り込み部の切断面が現れる。この状態で、第1の光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤の切断面に第2の光ファイバの端面を突き当てて再接続する。その際、第1の光ファイバの端面に付着した屈折率整合剤に切断面が現れているため、ゴミなどの付着が阻止され、第2の光ファイバの端面の再接続時に接続損失(伝送損失)が大きくなることを抑制することができる。
本発明によれば、一旦接続を解除した第1の光ファイバの端面に第2の光ファイバの端面を、接続損失を増加させることなく再接続することができる。
以下、図1〜図4を用いて、本発明の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタの第1実施形態について説明する。
図1には、現場組立型光コネクタ10の全体構成が示されている。また、図2Aには、この光コネクタ10に内蔵される光ファイバの端面とこれに接続される他の光ファイバの端面付近が斜視図にて示されている。また、図2Bには、この光コネクタ10に内蔵される光ファイバに他の光ファイバを接続した状態が示されている。図1に示されるように、光コネクタ10は、第2の光ファイバとしての光ファイバ40を位置決め固定するためのファイバ固定部20と、ファイバ固定部20の上部側を覆う蓋部材14と、蓋部材14をファイバ固定部20に向けてばね力により押圧するクランプ部材16と、を備えている。
基板12は、蓋部材14により光ファイバ40が押し当てられるファイバ固定部20と、ファイバ固定部20の一端側に固着された筒状の鍔部22に挿入される略円柱状のフェルール24と、を備えている。ファイバ固定部20は、長手方向と直交する方向の断面が略矩形状に形成されており、長手方向に沿って平面状の上面部20Aを備えている。上面部20Aには、長手方向に沿って浅い溝部20Bとこの溝部20Bよりも深くかつ幅広の溝部20Cとが連続して形成されている。溝部20B、20Cは、長手方向と直交する方向の断面が略V字状に形成されている。
フェルール24の芯部には、第1の光ファイバとしての光ファイバ26が内蔵されており、光ファイバ26の端部26Aがフェルール24の鍔部22側から突出している。鍔部22側から突出した光ファイバ26は、ファイバ固定部20の溝部20Bに挿入されている。
光ファイバ40は、芯部に配置された裸光ファイバ40Aの長手方向後端側に裸光ファイバ40Aの周囲を樹脂等で被覆した被覆部40Bを備えている。光ファイバ40の裸光ファイバ40Aはファイバ固定部20の溝部20Bに保持され、光ファイバ40の被覆部40Bはファイバ固定部20の溝部20Cに保持されるようになっている。
蓋部材14は、ファイバ固定部20の溝部20B、20Cに挿入される光ファイバ40を押さえるものである。蓋部材14は、長手方向と直交する方向の断面が略矩形状に形成されており、長手方向に沿って平面状の下面部14Aが形成されている。蓋部材14の下面部14Aとファイバ固定部20の上面部20Aとが突き合わされるように配置されている。
クランプ部材16は、長手方向と直交する方向の断面が略U字状に形成されており、クランプ部材16で蓋部材14とファイバ固定部20とを挟み込むことによって、蓋部材14をファイバ固定部20に向けてばね力により押圧する構成となっている。
図2Aに示されるように、光ファイバ26(第1の光ファイバ)は略円柱状に形成されており、軸心のコア部27Aと、このコア部27Aの周囲のクラッド27Bと、を備えている。光ファイバ26の軸方向先端の端面26Bには、コア部27Aを含む中心部に半固形状(いわゆるゲル状)の屈折率整合剤30が付着されている。屈折率整合剤30は、光ファイバ26の端面26Bの縁を除く中心部の矩形状の領域に付着されている。
光ファイバ40(第2の光ファイバ)の裸光ファイバ40Aは略円柱状に形成されており、軸心のコア部41Aと、このコア部41Aの周囲のクラッド41Bと、を備えている。光ファイバ40の裸光ファイバ40Aの軸方向先端の端面40Cには屈折率整合剤は塗布されてない。
屈折率整合剤30は、ブロック状に形成されており、光ファイバ26の軸方向と直交する方向、すなわち光ファイバ26の端面26Bとほぼ平行に2つの切り込み部32が形成されている。2つの切り込み部32の一端側は、屈折率整合剤30の途中まで形成されて屈折率整合剤30の側面部まで貫通しておらず、屈折率整合剤30の側面部は長手方向に連続している。
図2Bに示されるように、光ファイバ26に光ファイバ40を接続する際には、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを接続する。屈折率整合剤30は、光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間に介在させることで、光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間に空気が入ることによって生じるフレネル反射を回避し、接続損失(伝送損失)を低減するものである。光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを突き当てて接続したとき、屈折率整合剤30が光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ26の外周面又は光ファイバ40の外周面にはみ出さないように、屈折率整合剤30の付着位置、大きさ、硬さが設定されている。
屈折率整合剤30の作製方法としては、まず金型を作製し、その金型に材料を流し込んで半固形状に固めることで、ブロック状の屈折率整合剤を作製する。その後、屈折率整合剤をレーザーで加工することにより、屈折率整合剤の表面に対して直交する方向に複数の面状の切り込み部32を形成し、屈折率整合剤30が完成する。本実施形態では、屈折率整合剤30の大きさは、一辺が約50μmの立方体である。屈折率整合剤30は、顕微鏡を用いて光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部に付着させる。そのとき、光ファイバ26の端面26Bに対して切り込み部32がほぼ平行になるように屈折率整合剤30を付着させる。
屈折率整合剤30の材料として、シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂等が用いられる。また、屈折率調整の為に、フッ素等の屈折率調整剤を添加しても良い。屈折率整合剤30の硬さの指標である針入度(JIS K 2235 ワックス針入度試験法)は、55〜110度が好ましい。ここで、針入度とは、アスファルト、ワックス、グリースなどの柔軟体の硬さを表わす数値で、測定針が一定の時間で一定の重力により物質に貫入する距離をいう。
本実施形態では、屈折率整合剤30の材料として、オプトシール(製品名:信越化学工業株式会社製)が用いられている。オプトシールは、石英ガラスに近い高透明性を有するグリース状のオイルコンパウンドであり、屈折率は1.47で光ファイバ26、40の屈折率と同程度であり、オイルコンパウンドの厚みが10mmでの可視光線(400〜700nm)透過率は90%以上を示している。
次に、本実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタ10の作用並びに効果について説明する。
図1に示されるように、光コネクタ10を光ファイバ40に取り付ける際には、ファイバ固定部20の溝部20B、20Cに光ファイバ40を裸光ファイバ40A側から軸方向に沿って挿入し、ファイバ固定部20の溝部20Bに配置された光ファイバ26の端面26Bに接続する。
その際、図2Aに示されるように、光ファイバ26の端面26Bには、コア部27Aを含む中心部に半固形状の屈折率整合剤30が付着されており、図2Bに示されるように、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の裸光ファイバ40Aの端面40Cを突き当てて接続する。なお、ここで「突き当てて」とは、一方の光ファイバに、接続すべき光ファイバを、その光ファイバが曲がらない程度の押圧力で光ファイバ同士を突き当てることを意図している。このように光ファイバ26と光ファイバ40とを接続することで、屈折率整合剤30が光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出しにくくなる。これによって、屈折率整合剤30が光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出すことにより光ファイバ26又は光ファイバ40に力が加わることが阻止され、光ファイバ26と光ファイバ40との軸ずれの発生を抑制することができる。さらに、屈折率整合剤30が光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出しにくいため、ゴミの付着を抑制することができる。
一方、光ファイバ26に光ファイバ40を接続した後、検査等により接続に具具合が発生し光ファイバ40の接続をやり直す場合などには、図3に示されるように、光ファイバ40を光ファイバ26に対して矢印に示す軸方向に引き離し、光ファイバ40の接続を解除する。その際、屈折率整合剤30が切り込み部32の一つで切り離され、切り込み部32の一方側の第1皮膜30Aが光ファイバ40の端面40Cに付着し、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤30に切り込み部32の他方側の第2皮膜30Bの表面30Cが現れる(図4参照)。屈折率整合剤30の第2皮膜30Bの表面30C(切断面)が現れるため、ゴミ36などの付着が防止される。
このとき、屈折率整合剤30の切り込み部32の第1皮膜30Aと第2皮膜30Bとの接着力よりも、第2皮膜30Bと光ファイバ40の端面40Cとの接着力が大きくなるように調整している。
光ファイバ40の端面40Cには屈折率整合剤30の第1皮膜30Aが付着しているため、光ファイバ40を再接続する前に光ファイバ40の端面40Cを洗浄し、乾燥させる。その後、図1に示されるように、光コネクタ10のファイバ固定部20の溝部20B、20Cに、光ファイバ40を裸光ファイバ40A側から軸方向に沿って再度挿入する。そして、図4に示されるように、光ファイバ26の端面26Bの屈折率整合剤30の第2皮膜30Bを介して光ファイバ40の端面40Cを再接続する。その際、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤30に切り込み部32の他方側の第2皮膜30Bの表面30Cが現れているため、ゴミなどの付着がない。また、切り込み部32の位置を適切に設定することによって、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤30の量が不足するのを防止することができる。このため、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続した時に接続損失(伝送損失)が大きくなることが抑制され、安定した光学特性が得られる。
屈折率整合剤30には切り込み部32があるため、光ファイバ26に対して光ファイバ40の接続を解除し、再び光ファイバ40を接続することができる。すなわち、光ファイバ40の接続を解除すると、屈折率整合剤30が切り込み部32で切断され、切り込み部32の一方側の第2皮膜30Bが光ファイバ40の端面40Cに付着し、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30の第3皮膜30Dの表面(切断面)が現れる。このため、屈折率整合剤30の第3皮膜30Dの表面へのゴミなどの付着が阻止される。また、切り込み部32の位置を適切に設定することによって、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤30の量が不足するのを防止することができ、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続することができる。
図8A〜図8Cには、比較例の光ファイバ200の端面構造が示されている。図8A及び図8Bに示されるように、光ファイバ200の端面200Aのほぼ全面に、屈折率整合剤230が凸曲面状に付着されている。この構成では、図8Cに示されるように、光ファイバ200の端面200Aに屈折率整合剤230を介して光ファイバ202の端面202Aを突き当てると、屈折率整合剤230が光ファイバ200の端面200Aと光ファイバ202の端面202Aとの間から光ファイバ200、光ファイバ202の外周面側にはみ出し、ゴミが付着しやすい(ゴミを取り込みやすくなる)。
また、光ファイバ200の端面200Aに対する光ファイバ202の端面202Aの接続を解除すると、屈折率整合剤230の一部が光ファイバ202の端面202Aに付着し、図9に示されるように、光ファイバ200の端面200Aに付着している屈折率整合剤230の量が減り、光ファイバ202の端面202Aを再接続するときに屈折率整合剤230の量が不足する可能性がある。さらに、光ファイバ200の端面200Aの外周側に存在していたゴミ36が、光ファイバ200の端面200Aのコア部27A付近に移動してしまい、光ファイバ40を再接続した場合に、接続損失(伝送損失)が増大する可能性がある。
これに対して、本実施形態では、光ファイバ26の端面26Bに対する光ファイバ40の端面40Cの接続を解除したときに、屈折率整合剤30が切り込み部32で切り離されて新たな表面が現れるため、光ファイバ26に屈折率整合剤30を介して光ファイバ40を再接続しても接続損失の増大を抑制することができる。また、屈折率整合剤30に複数(本実施形態では2つ)の切り込み部32が形成されているので、一旦光ファイバ26に対する光ファイバ40の接続を解除した後、光ファイバ26に光ファイバ40を複数回(本実施形態では2回)接続することができる。
次に、本発明の第2実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、図5に示されるように、光コネクタのファイバ固定部(図1参照)に内蔵された光ファイバ26の端面26Bには、第1実施形態の屈折率整合剤30に代えて、複数(本実施形態では2つ)の切り込み部52を備えたブロック状の屈折率整合剤50が付着されている。切り込み部52は、光ファイバ26の端面26Bとほぼ平行に屈折率整合剤50の4つの側面部(図5中の上下左右の側面部)に貫通するように設けられている。
このような構成では、光ファイバ26の端面26Bに付着された屈折率整合剤50を介して光ファイバ40の端面40Cを接続した後、この光ファイバ40の端面40Cの接続を解除すると、屈折率整合剤50が切り込み部52の一つで切り離されて、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤50の第2皮膜50Bの表面が現れる。その際、切り込み部52が屈折率整合剤50の4つの側面部に貫通するように設けられており、光ファイバ40の端面40Cの接続を解除したときに、屈折率整合剤50が切り込み部52で離れやすく、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤50の第2皮膜50Bの表面がより確実に露出する。このため、屈折率整合剤50の第2皮膜50Bへのゴミなどの付着がなく、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤50を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続したときに接続損失の増大が抑制され、安定した光学特性が得られる。
次に、本発明の第3実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1及び第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、図6A、図6Bに示されるように、光コネクタのファイバ固定部(図1参照)に内蔵された光ファイバ26の端面26Bには、第1実施形態の屈折率整合剤30等に代えて、ブロック状の屈折率整合剤60が付着されている。屈折率整合剤60には、光ファイバ26の軸方向に沿った両側の側面部60A(図6A中の上下の側面部60A)に、光ファイバ26の軸方向と直交する方向に、それぞれ1本の切り込み部62が設けられている。切り込み部62は、軸方向に沿った断面が略V字溝状に形成されており、光ファイバ26の端面26Bに沿った方向に設けられている。
この屈折率整合剤60では、光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部に屈折率整合剤60を付着したときに、側面部60Aの両側の切り込み部62が光ファイバ26のコア部27Aの延長線上の領域を除いた部位となるように設けられている。本実施形態では、例えば、コア部27Aの直径は約10μmに設定されており、側面部60Aの両側の切り込み部62の深部の間の距離Dは約20μmに設定されている。
この屈折率整合剤60は、略V字状の溝を備えた金型にシリコーン樹脂等の材料を流し込んで固めることによって形成することができる。金型に材料を流し込んで切り込み部62を形成した場合は、レーザー加工により切り込み部を形成した場合に比べて切り込み部62の深さや形状を精度よく形成することができる。
このような構成では、光ファイバ26の端面26Bに付着された屈折率整合剤60を介して光ファイバ40の端面40Cを接続した後、この光ファイバ40の端面40Cの接続を解除すると、屈折率整合剤60が側面部60Aの両側の切り込み部62に沿って切断され、屈折率整合剤60の一方側が光ファイバ40の端面40Cに付着し、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤60に切り込み部62の切断面が現れる。このため、屈折率整合剤60の切断面へのゴミなどの付着がなく、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤60を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続したときに接続損失の増大が抑制され、安定した光学特性が得られる。
また、屈折率整合剤60の切り込み部62が光ファイバ26のコア部27Aの延長線上の領域を除いた部位に形成されているため、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤60を介して光ファイバ40の端面40Cを接続したときに、切り込み部62により接続損失が大きくなるのを抑制することができる。
次に、本発明の第4実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、図7に示されるように、光コネクタのファイバ固定部(図1参照)に内蔵された光ファイバ26の端面26Bには、第1実施形態の屈折率整合剤30等に代えて、ブロック状の屈折率整合剤70が付着されている。屈折率整合剤70には、光ファイバ26の軸方向に沿った両側の側面部70A(図7中の上下の側面部70A)に、光ファイバ26の軸方向と直交する方向に、すなわち光ファイバ26の端面26Bに沿って複数(本実施形態では3本)の切り込み部71、72、73が設けられている。切り込み部71、72、73は、軸方向に沿った断面が略V字溝状に形成されており、光ファイバ26の端面26Bから遠くなるに従って深さが深くなるように形成されている。すなわち、光ファイバ26の端面26Bに近い切り込み部71に比べて光ファイバ26の端面26Bから遠い切り込み部72、73の深さが徐々に深くなるように形成されている。
このような構成では、光ファイバ26の端面26Bに付着された屈折率整合剤70を介して光ファイバ40の端面40Cを接続した後、この光ファイバ40の端面40Cの接続を解除すると、屈折率整合剤70が深さの最も深い切り込み部73に沿って切断され、屈折率整合剤70の一方側が光ファイバ40の端面40Cに付着し、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤70に切り込み部73の切断面が現れる。このため、屈折率整合剤70の切断面へのゴミなどの付着がなく、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤70を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続したときに接続損失の増大が抑制され、安定した光学特性が得られる。
また、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤70を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続した後、光ファイバ40の端面40Cの接続を解除した場合、屈折率整合剤70が上記切り込み部73の次に深さが深い切り込み部72に沿って切断され、光ファイバ26の端面26Bに付着している屈折率整合剤70に切り込み部72の切断面が現れる。このように光ファイバ26の端面26Bから遠い順に深さが深い切り込み部73、72、71を形成することで、光ファイバ40の端面40Cの接続を解除したときに、深さが深い順番で切り込み部73、72、71が切断されるため、効率よく切り込み部73、72、71を切断して光ファイバ40の端面40Cを複数回(本実施形態では3回)接続することができる。
次に、本発明の第5実施形態の光ファイバ端面構造が適用されたメカニカルスプライスについて説明する。なお、第1〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図10Aに示されるように、メカニカルスプライス80は、矩形状の基板82と、矩形状の蓋部材84と、を備えている。基板82の上面部20Aには、長手方向中央部に浅い溝部20Bと、この溝部20Bの長手方向両側に溝部20Bよりも深くかつ幅広の溝部20Cとが連続して形成されている。基板82の溝部20Bの長手方向中間部には、屈折率整合剤90が配置される溝86が形成されている。基板82の長手方向一端側から、第1の光ファイバとしての光ファイバ88が挿入されて屈折率整合剤90に付着され、また、基板82の長手方向他端側から、第2の光ファイバとしての光ファイバ40が挿入されて屈折率整合剤90を介して光ファイバ88に接続される構成となっている。
光ファイバ88は、芯部に配置された裸光ファイバ88Aの外周に被覆部88Bが設けられており、光ファイバ88の軸方向端部には裸光ファイバ88Aが露出している。光ファイバ88と光ファイバ40とが接続される際には、それぞれの裸光ファイバ88A、40Aが基板82の溝部20Bに保持され、それぞれの被覆部88B、40Bが基板82の長手方向両側の溝部20Cに保持される。
図示を省略するが、メカニカルスプライス80は、基板82と蓋部材84を挟み込むクランプ部材を備えており、クランプ部材のばね力により蓋部材84で光ファイバ88及び光ファイバ40が溝部20Bと溝部20Cに押し当てられて把持されるようになっている。
図10B、図11及び図12Bに示されるように、屈折率整合剤90には、光ファイバ88の軸方向に沿った両側の側面部90A(図10B中の上下の側面部90A)に、光ファイバ88の軸方向と直交する方向に、すなわち光ファイバ88の端面88Cに沿って複数(本実施形態では2本)の切り込み部91、92がそれぞれ設けられている。切り込み部91、92は、長手方向に沿った断面が略V字状に形成されている。また、一方の側面部90A(図10B中の下側の側面部90A)の切り込み部91と切り込み部92の間には、基板82の溝86に形成された凹状の係合部86Aに係合される突出部94が設けられている。突出部94は、切り込み部91、92の壁面と連続して形成された台形状となっており、係合部86Aは、突出部94が係合される台形溝となっている。屈折率整合剤90は、半固形状(いわゆるゲル状)の材料からなり、本実施形態ではシリコーン樹脂が用いられている。
このメカニカルスプライス80では、まず、基板82の溝部20Bの長手方向中間部に形成された溝86に屈折率整合剤90を嵌め込み、溝86に形成された係合部86Aに屈折率整合剤90の突出部94を係合させる。この状態で、図12A及び図12Bに示されるように、基板82の長手方向一端側から溝部20B、20Cに光ファイバ88を挿入し、光ファイバ88の端面88Cに屈折率整合剤90を付着させる。このとき、屈折率整合剤90を光ファイバ88の端面88Cのコア部27Aを含む領域に付着させる。
また、図12A及び図12Bに示されるように、基板82の長手方向他端側から溝部20B、20Cに光ファイバ40を挿入し、光ファイバ88の端面88Cに屈折率整合剤90を介して光ファイバ40の端面40Cを突き当てる。この状態で、図13に示されるように、基板82の上方を蓋部材84で覆うと共に、クランプ部材(図示省略)で基板82と蓋部材84を挟み込むことで、クランプ部材のばね力により蓋部材84で光ファイバ88及び光ファイバ40が溝部20B、20Cに押し当てられて固定される。
一方、光ファイバ88の端面88Cに屈折率整合剤90を介して光ファイバ40の端面40Cを接続した後、光ファイバ88と光ファイバ40とを軸方向両側に移動させてこれらの接続を解除すると、屈折率整合剤90の突出部94が基板82の係合部86Aに係合されているため、屈折率整合剤90が切り込み部91、92で切断されて屈折率整合剤90の両側が光ファイバ88の端面88Cと光ファイバ40の端面40Cにそれぞれ付着し、屈折率整合剤90の中間部(突出部94を備えた部位)が基板82に残る。すなわち、屈折率整合剤90が切り込み部91、92で切断されて屈折率整合剤90の中間部の両側に切り込み部91、92の切断面が現れる。
光ファイバ88の端面88Cと光ファイバ40の端面40Cを洗浄、乾燥させた後、基板82の長手方向一端側から溝部20B、20Cに光ファイバ88を挿入し、基板82の長手方向他端側から溝部20B、20Cに光ファイバ40を挿入し、光ファイバ88の端面88Cに屈折率整合剤90を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続する。このとき、屈折率整合剤90の中間部の両側に切り込み部91、92の切断面が現れているため、ゴミなどの付着が阻止される。このため、光ファイバ88の端面88Cに屈折率整合剤90を介して光ファイバ40の端面40Cを再接続したときに接続損失の増大が抑制され、安定した光学特性が得られる。
なお、接続作業の簡易化のために、蓋部材84を、光ファイバ88の中央部分を固定する蓋と、光ファイバ40の中央部分を固定する蓋と、それぞれの光ファイバ88、40の接続部を固定する蓋に3分割し、それぞれの蓋を個別にクランプするクランプ部材を用意し、まず、光ファイバ88を蓋とクランプで固定し、光ファイバ40の接続作業を行い、それぞれに対応する蓋によって固定しても良い。
なお、上述した第1実施形態、第2実施形態及び第4実施形態は光コネクタの例であるが、同様の複数の切り込み部を備えた屈折率整合剤の構成をメカニカルスプライスに適用してもよい。
上述した第1実施形態〜第4実施形態においては、第1の光ファイバの端面のコア部を含んだ中心部に屈折率整合剤を付着させているが、これに限定されず、第1の光ファイバの端面の全面に屈折率整合剤を付着させてもよい。
上述した第1実施形態〜第5実施形態では、第1の光ファイバに接続される第2の光ファイバとして、空孔がないタイプの光ファイバ40が用いられているが、軸方向に空孔が形成された光ファイバを上記実施形態に適用しても同様の効果を得ることができる。