JP2011089845A - 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents

鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2011089845A
JP2011089845A JP2009242658A JP2009242658A JP2011089845A JP 2011089845 A JP2011089845 A JP 2011089845A JP 2009242658 A JP2009242658 A JP 2009242658A JP 2009242658 A JP2009242658 A JP 2009242658A JP 2011089845 A JP2011089845 A JP 2011089845A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slab
surface temperature
electromotive force
induced electromotive
detection coil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009242658A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5223841B2 (ja
Inventor
Hiroshi Harada
寛 原田
Masaaki Yamana
正哲 山名
Masaki Nagashima
政樹 長嶋
Toshihiro Konno
智弘 今野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2009242658A priority Critical patent/JP5223841B2/ja
Publication of JP2011089845A publication Critical patent/JP2011089845A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5223841B2 publication Critical patent/JP5223841B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)
  • Measurement Of Length, Angles, Or The Like Using Electric Or Magnetic Means (AREA)

Abstract

【課題】鋳片表面温度とバルジング量とを独立して測定する。
【解決手段】鋳型10の短辺側部材11の下方において、鋳片15の短辺側の面に垂直に交流磁界を印加する励磁コイル21と、当該交流磁界の変化を相対的に鋳片15に近い位置で検出する前面側検出コイル22と、当該交流磁界の変化を励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置で検出する背面側検出コイル23とを設ける。また、各ギャップについての誘導起電力と鋳片表面温度との関係を検出コイル22、23毎に求め、求めた結果から、検出コイル22、23で検出される誘導起電力毎に、鋳片表面温度とギャップとの関係(グラフ91、92)を、検出コイル22、23毎に求めておく。検出コイル22、23で誘導起電力が検出されると、当該誘導起電力に対応するグラフ91、92の交点を取得し、取得した交点に対応する鋳片表面温度と、当該交点に対応するギャップに基づくバルジング量を出力する。
【選択図】図4

Description

本発明は、鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生しているバルジング量とをオンラインで測定するために用いて好適なものである。
表面及び内部品質が良好な高品位の鋳片を高い生産性で連続鋳造するために、鋳型内及びストランド内で均一な凝固シェルの成長を図る必要がある。しかしながら、鋳型内に注入される溶鋼流に偏りが生じ、溶鋼流が凝固シェルに衝突すると、凝固シェルの再溶解が進行する。局部的な凝固シェル厚の不足が顕著となると、孔あき性ブレークアウトと呼ばれる操業トラブルを招くことがある。このような操業トラブルを未然に防止するために、鋳片表面温度を測定する技術が開示されている(特許文献1を参照)。
冷却水を用いた急冷を行うことによって、鋳型の短辺の直下での鋳片表面温度がキュリー点よりも低い温度になると、その部分で鋳片の磁気変態が起こるので(鋳片が磁性を有するようになるので)、この部分に交流磁界を印加すると磁力線が変化する。特許文献1ではこのことを利用して、鋳型の短辺の直下に、鋳片の長手方向に対して垂直な方向の交流磁界を印加するソレノイド状の励磁コイルと、その励磁コイルによる磁力線の変化を検出するソレノイド状の検出コイルとを設け、予め定めておいた鋳片表面温度と誘導起電力との関係を示す較正式に、検出コイルから出力された誘導起電力を代入して鋳片の表面温度を求めるようにしている。このようにすることにより、多量の水や蒸気等が存在する雰囲気下でも、鋳片表面温度を長時間、安定的に測定することができる。
特開2008−256605号公報
ところで、連続鋳造される鋳片にはバルジングと呼ばれる現象が生じる。バルジングは、鋳型の下方において鋳片を介して相互に対向する位置に配置された複数組のサポートロールの間に鋳片を挟持しながら下方に搬送する際に、サポートロールで支持されていない部分において凝固シェルが溶鋼の静圧に耐え切れずに外側(サポートロール側)に膨らむ現象である。このバルジングも、溶鋼の湯面レベルの変動やブレークアウト等の操業トラブルを招く一因になり得るので、表面及び内部品質が良好な高品位の鋳片を高い生産性で連続鋳造する上で確実に防ぐことが望まれる。
バルジングが生じると鋳片が外側に膨らむので、励磁コイル及び検出コイルと鋳片との距離が変化する。このため、バルジングが生じることによっても励磁コイルによる磁力線は変化するが、前述した特許文献1に記載の技術では、このコイルと鋳片との距離の変化を考慮していないため、正確な鋳片表面温度の測定ができない。そのため、鋳片表面温度と、コイルと鋳片との距離(すなわち、バルジング量)とを分離して測定することが困難であるという問題点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、鋳片表面温度とバルジング量とを独立して測定することを目的とする。
本発明の鋳片状態測定装置は、鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定する鋳片状態測定装置であって、前記鋳片の表面に対して略垂直方向から交流磁界を印加する印加コイルと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で検出する第1の検出コイルと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で検出する第2の検出コイルと、を備え、前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して配置されたセンサーと、前記誘導起電力、前記センサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップ、及び前記鋳片サンプルの表面温度の対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶する記憶手段と、前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記表面温度との組を取得する取得手段と、前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出手段と、を有することを特徴とする。
本発明の鋳片状態測定方法は、鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定する鋳片状態測定方法であって、前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して略垂直方向から印加コイルを用いて交流磁界を印加する印加ステップと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で第1の検出コイルを用いて検出する第1の検出ステップと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で第2の検出コイルを用いて検出する第2の検出ステップと、前記誘導起電力と、前記印加コイル、前記第1の検出コイル、及び前記第2の検出コイルとを備えるセンサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップと、前記鋳片サンプルの表面温度との対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶媒体に記憶する記憶ステップと、前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記表面温度との組を取得する取得ステップと、前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出ステップと、を有することを特徴とする。
本発明のコンピュータプログラムは、鋳片の表面に対して略垂直方向から交流磁界を印加する印加コイルと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で検出する第1の検出コイルと、前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で検出する第2の検出コイルと、を備え、前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して配置されたセンサーを用いて、鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記誘導起電力、前記センサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップ、及び前記鋳片サンプルの表面温度の対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶媒体に記憶する記憶ステップと、前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記鋳片の表面温度との組を取得する取得ステップと、前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明によれば、鋳片の表面に対して略垂直方向から交流磁界を印加する印加コイルと、印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い(鋳片から遠い)位置で検出する第1の検出コイル(第2の検出コイル)と、を備えるセンサーを鋳片の表面温度が変動する領域に対して配置する。また、誘導起電力、センサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップ、及び鋳片サンプルの表面温度の対応関係を示す対応関係データであって、検出コイルで検出される誘導起電力から、ギャップと表面温度との組を出力するための対応関係データを、検出コイルごとに予め記憶しておく。その後、検出コイルにより検出された誘導起電力から、対応関係データを用いて、ギャップと表面温度との組を取得し、取得した値に基づき、鋳片の表面温度と、鋳片におけるバルジング量を導出する。したがって、鋳片表面温度とバルジング量とを独立して測定することができる。
本発明の実施形態を示し、鋳片状態測定装置が設けられた連続鋳造機の一部分の構成の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、鋳片の短辺側の面の表面温度の温度パターンの一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、鋳片状態測定装置の構成の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、センサーから発生する交流磁界(磁力線)の様子の一例を概念的に示す図である。 本発明の実施形態を示し、検出コイルの巻数と誘導起電力との関係の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、鋳片に印加される交流磁界の周波数と、表皮深さとの関係の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、鋳片表面温度と、検出コイルの誘導起電力との関係の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、ギャップを異ならせた場合における、鋳片表面温度と、検出コイルの誘導起電力との関係の一例を示す図である。 本発明の実施形態を示し、各検出コイルで検出される誘導起電力(電圧)における特性曲線(鋳片表面温度(鋳片温度)とギャップとの関係)の一例を示す図である。 本発明の実施例を示し、鋳片表面温度と測定時間との関係を示す図である。 本発明の実施例を示し、バルジング量と測定時間との関係を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、内部が直方体形状の鋳型を用いてスラブを下方から引き抜いて連続鋳造する際に鋳型の直下において鋳片表面温度並びにバルジング量を測定する場合を例に挙げて説明する。
図1は、鋳片状態測定装置が設けられた連続鋳造機の一部分の構成の一例を示す図である。具体的に図1の上図は、連続鋳造機の横断面図であり、図1の下図は、連続鋳造機の縦断面図である。尚、図1では、説明の都合上、各部の構成を簡略化して示している。
図1において、鋳型10は、短辺側部材11a、11bと、長辺側部材12a、12bと、を有する。前述したように鋳型10の内部は直方体形状となっている。浸漬ノズル13は、鋳型10の上方から内部にかけて上下方向に延設されている。溶鋼14は、図示しないタンディッシュを経由して、浸漬ノズル13によって鋳型10の内部へ連続的に注がれる。溶鋼14は、鋳型10の内部において、そのエッジの領域が凝固して凝固シェルになり、鋳片15として鋳型10から下方に引き出される。鋳型10の短辺側部材11a、11bの直下には、それぞれ2本のサポートロール16a・16b、16c・16dが設けられている。更に、サポートロール16b、16dの直下には、それぞれ鋳片状態測定装置20a、20bが設けられている。ここで、鋳型10の短辺側部材11a(11b)、サポートロール16a、16b(16c、16d)、及び鋳片状態測定装置20a(20b)のセンサー部分(図3の符号21〜24で示されている部分)は一体で動くようにしている。すなわち、鋳片15の鋳造幅を調整するために、鋳型10の短辺側部材11a(11b)が水平方向に移動すると、それに連動してサポートロール16a、16b(16c、16d)及び鋳片状態測定装置20a(20b)のセンサー部分も水平方向に移動する。このように、鋳型10の短辺側部材11a(11b)、サポートロール16a、16b(16c、16d)、及び鋳片状態測定装置20a(20b)のセンサー部分の位置関係は、鋳型10の短辺側部材11a(11b)が移動しても変わらない。これにより、鋳片15の幅を種々変更するべく鋳型10を調整したとしても、鋳片状態測定装置20と鋳片15の短辺側の表面との間の冷間時における距離を略一定にすること、すなわち、後述する励磁コイル21によって鋳片15の短辺側の表面に対して略垂直に印加される交流磁界を略一定にすることができる。
図示しないが、鋳型10よりも下方において、鋳片15の長辺側の面は、鋳型10の直下から鋳片15の最終凝固位置まで多数のサポートロールで支えられている。これに対し、鋳片15の短辺側の面は、鋳型10の直下に設けられた数本のサポートロールで支えられているに過ぎない(図1では、鋳片15の短辺側の面が、それぞれ2本のサポートロール16a・16b、16c・16dで支えられている場合を例に挙げて示している)。そのため、鋳片15の長辺側の面については、サポートロールの間に冷却用のノズルチップを凝固完了位置まで配して冷却することができる。これに対し、鋳片15の短辺側の面については、鋳型10の直下のサポートロール16a〜16dがある領域内で鋳片15の表面温度を低下させて溶鋼ヘッドに耐え得る凝固シェル厚を確保する必要がある。したがって、鋳型10の直下の鋳片15の短辺側の面を水等で強冷却することになる。このため、鋳片15の短辺側の面の表面温度は、概略図2に示すような温度パターンを示す。図2に示すように、鋳片15の短辺側の面の表面温度は、前述した強冷却によって、鋳型10の直下の位置で一旦キュリー点Tcよりも低下した後、復熱によりキュリー点Tcよりも上昇する。キュリー点Tcは磁気変態点であり、鋼は、常温からキュリー点Tcまでは強磁性体であり、キュリー点Tcを超えると常磁性体、さらに高温になると非磁性体に変化する。尚、図2において、領域iは鋳型10の内部の領域に対応し、領域iiは、サポートロール16a〜16dが存在している冷却帯の領域に対応する。
図3は、鋳片状態測定装置20の構成の一例を示す図である。尚、本実施形態では、鋳片状態測定装置20a、20bは同じものであるとする。
図3において、鋳片状態測定装置20は、励磁コイル21と、前面側検出コイル22と、背面側検出コイル23と、パイプ24と、発振器25と、定電流アンプ26と、信号処理器27と、ロックインアンプ28と、演算装置29とを有している。
パイプ24は、例えば、外径30mmのガラスエポキシ製(絶縁体製)のパイプである。励磁コイル21は、パイプ24に巻き回されたソレノイド状のコイルであり、交流磁界を発生させるためのものである。本実施形態では、外径1mmのポリエステル被覆銅線を300回巻いたものを励磁コイル21としている。前面側検出コイル22は、励磁コイル21により発生された交流磁界(磁力線)の時間的な変化を表す誘導起電力を検出するためのソレノイド状のコイルであり、励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置でパイプ24に巻き回されている。背面側検出コイル23も、前面側検出コイル22と同様に、励磁コイル21により発生された交流磁界に基づく磁力線の時間的な変化を表す誘導起電力を検出するためのソレノイド状のコイルであるが、背面側検出コイル23は、励磁コイル21よりも前面側検出コイル22から遠い位置でパイプ24に巻き回されている。本実施形態では、外径0.3mmのポリエステル被覆銅線を用いて、前面側検出コイル22、及び背面側検出コイル23をそれぞれ構成している。尚、前面側検出コイル22、及び背面側検出コイル23の巻数については、図5を参照しながら後述する。
励磁コイル21、前面側検出コイル22、及び背面側検出コイル23のコイル一式はセンサーとしてステンレス製円筒ケース(図示せず)に収納され、このステンレス製円筒ケース内は乾燥空気で強制冷却されている。また、パイプ24の径の中心を通る軸が、鋳片15の短辺方向の中心に一致するようにパイプ24を配置することが好ましい。鋳片15の端の部分の表面温度は中央部分に比べて低いため、パイプ24を鋳片15の短辺方向の端の部分に配置すると、後述するようにして行う鋳片15の表面温度の測定を正確に行うことが困難になるためである。
尚、以下の説明では、前面側検出コイル22と背面側検出コイル23を、必要に応じて、検出コイル22、23と略称する。
図4は、センサーから発生する交流磁界(磁力線)の様子の一例を概念的に示す図である。
図4において、励磁コイル21から、鋳型10の短辺側の表面に対して略垂直方向から交流磁界が印加され、交流磁束が鋳片15に励磁される。そうすると、鋳片15の表面温度、並びに鋳片15とセンサーとの間の距離によって磁力線の分布が変化し、検出コイル22、23で検出される誘導起電力が変化する。すなわち、検出コイル22、23には、N×dφc/dt(N:検出コイル22、23の巻数、φc:検出コイル22、23の鎖交磁束数、t:時間)の誘導起電力が誘導されるところ、鋳片15の表面温度、並びに鋳片15とセンサーとの間の距離によって交流磁束φの分布が変わると、検出コイル22、23の鎖交磁束数φcが変わり、検出コイル22、23に誘導される電圧が変化する。
前述したように、サポートロール16b(16d)が配置されている領域では鋳片15の短辺側の面の表面温度は、キュリー点Tcよりも高い温度からキュリー点Tcよりも低い温度に変化し、サポートロール16b(16d)の直下では、キュリー点Tcよりも低い温度からキュリー点Tcよりも高い温度に復熱する。すなわち、鋳片15の表面は、その温度によって、非磁性体、常磁性体、又は強磁性体になる。鋳片15の表面が非磁性体の場合には、図4の破線41a、41bで示すように真空中と同様に磁界が広がりながら鋳片15の内部まで侵入する。これに対し、鋳片15の表面が磁性を帯びると、図4の実線42a〜42cで示すように磁性を帯びた部分に磁界が集中することにより磁力線の分布が大幅に変化する。このことは鋳片15が常磁性体の場合よりも強磁性体の場合に顕著になる。また、鋳片15がセンサーと離れている場合よりも、鋳片15がセンサーに近づいている場合の方が、図4の実線42a〜42cで示すように磁性を帯びた部分に磁界が集中し易くなる。
このように、磁力線の分布は、鋳片15の表面の磁気特性と、鋳片15とセンサーとの間の距離とによって決まる。そこで、本実施形態では、以上のようにして生じる磁力線の分布の時間的な変化を、鋳片状態測定装置20a(20b)をサポートロール16b(16d)の直下(鋳片15の短辺側を強冷却する冷却帯の直下)に配置した2つの検出コイル22、23によって検出するようにしている。
尚、以下の説明では、鋳片15とセンサーとの間の最短距離を必要に応じてギャップと称する。
図5は、検出コイル22、23の巻数と誘導起電力(検出コイル電圧)との関係の一例を示す図である。図5では、巻数以外の条件を同じにして各検出コイル22、23における誘導起電力を測定している。図3、図4に示したように、背面側検出コイル23は、鋳片15からの距離が前面側検出コイル22よりも遠くなる。このため、図5に示すように、前面側検出コイル22と背面側検出コイル23との巻数が同じであると、背面側検出コイル23が検出する誘導起電力は、前面側検出コイル22が検出する誘導起電力よりも小さくなる。誘導起電力の値が小さいと、前述した磁力線の分布の変化に対する誘導起電力の値の変化が小さくなり(鈍感になり)、磁力線の分布の変化を誘導起電力により適切に検出することができなくなる虞がある。そこで、背面側検出コイル23で検出する誘導起電力を大きくする(ここでは、前面側検出コイル22で検出する誘導起電力と同程度とする)ために、背面側検出コイル23の巻数を前面側検出コイル22の巻数よりも増やしている。図5に示す例では、背面側検出コイル23の巻数を300ターンにし、前面側検出コイル22の巻数を100ターンにすると、各検出コイル22、23で同じオーダーの電圧値を得ることができることを示している。本実施形態では、このことを踏まえ、前面側検出コイル22の巻数を100ターンにし、背面側検出コイル23の巻数を300ターンとした。
図3の説明に戻り、発振器25は、交流信号を定電流アンプ26に出力する。図6は、鋳片15に印加される交流磁界の周波数と、表皮深さとの関係の一例を示す図である。図6において、グラフ61は、鋳片15の比透磁率が「1」となったときの関係を示し、グラフ62は、鋳片15の比透磁率が「200」となったときの関係を示す。
交流磁界の周波数が高周波側であると、交流磁界が鋳片15に浸透する深さである表皮深さが薄くなるため、交流磁界がより鋳片15の表面に集中することになる。そうすると、その交流磁界(磁力線)の分布が、鋳片15の表面温度に依存しづらくなり、検出コイル22、23で検出される誘導起電力に、鋳片15の表面温度の情報が反映されづらくなる。また、交流磁界の周波数が高周波側であると、その交流磁界(磁力線)の分布が、鋳片15の表面にあるオシレーションマーク等の僅かな凹凸に過敏に反応してしまい、検出コイル22、23で検出される誘導起電力にノイズが多く含まれる虞がある。このことを考慮して図6を見てみると、20Hzまでは比透磁率が「200」程度であったとしても表皮深さを10mm程度(0.01m程度)に確保できるので、鋳片15に印加する交流磁界の周波数の上限は20Hzとするのが好ましい。また、このようにすることにより、検出コイル22、23で検出される誘導起電力が大きくなり過ぎることを防止することができる。一方、鋳片15に印加する交流磁界の周波数が0.5Hz未満になると、検出コイル22、23から検出される誘導起電力の信号を位相検波する際の時定数が1分以上必要となり、測定装置の応答速度が遅くなる等、信号処理が困難になる虞がある。よって、鋳片15に印加する交流磁界の周波数の下限は0.5Hzとするのが好ましい。
以上のことから、発振器25から発振して励磁コイル21に印加する交流電力の周波数は、0.5Hz以上、20Hz以下の範囲であるのが好ましい。本実施形態では、このことを踏まえ、発振器25から出力される交流信号の周波数を1.5Hzとした。
定電流アンプ26は、発振器25で生成された1.5Hzの交流信号を一定の大きさの交流電流に増幅して励磁コイル21の両端に印加すると共に、ロックインアンプ28に1.5Hzの信号を参照信号として出力する。信号処理器27は、オペアンプ、抵抗、コンデンサ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ等を備え、検出コイル22、23で検出された誘導起電力を入力し、電圧増幅やフィルター処理等の信号処理を行う。ロックインアンプ28は、検出コイル22、23で検出された誘導起電力の信号が信号処理器27で処理されると、その信号から、参照信号と同一の周波数(1.5Hz)の電圧値(振幅)を抽出して出力するアナログ機器である。また、ロックインアンプ28は、検出コイル22、23で検出された誘導起電力の信号と、参照信号との位相差も検出する。
尚、信号処理器27及びロックインアンプ28の機能をソフトウェアで代替処理することもできる。このようにする場合には、前面側検出コイル22及び背面側検出コイル23で検出された誘導起電力の信号を、AD変換器を通してパソコン等のコンピュータに取り込み、信号処理器27とロックインアンプ28の機能をソフトウェアプログラムで実現すればよい。
演算装置29は、ロックインアンプ28で得られた「検出コイル22、23の誘導起電力の信号」をデジタル信号に変換した上で入力し、その信号に基づいて、鋳片15の表面温度とバルジング量を計算する。このように鋳片15の表面温度とバルジング量を計算するために、本実施形態では、検出コイル22、23で検出される誘導起電力毎に、鋳片15と同じ種類の鋳片サンプルの表面温度とギャップ量との関係(特性曲線)を、検出コイル22、23のそれぞれについて予め定め求めておき、演算装置29に記憶しておく。ここで、検出コイル22、23の特性曲線が異なる特性(異なる関数形)となり、これらの特性曲線に交点が生じるように、検出コイル22、23の励磁コイル21に対する位置関係を変えるようにしている。尚、演算装置29は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、各種インターフェース、及びコンピュータディスプレイを備えた情報処理装置により実現することができる。
図7は、鋳片表面温度(温度)と、検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)との関係の一例を示す図である。ここでは、まず、鋳片サンプルを加熱炉によって1200℃程度まで加熱した。そして、この加熱した鋳片サンプルの表面下約1mmの位置に熱電対を配置した。そして、加熱した鋳片サンプルの表面に対して略垂直な方向から、図3、図4に示したセンサー(励磁コイル21)により交流磁界を印加する。この状態で熱電対により測定された鋳片サンプルの温度を横軸(鋳片表面温度)とし、その温度のときに検出コイル22で検出された誘導起電力を縦軸(電圧)として順次プロットすると、図7に示すグラフ71が得られる。図7に示すように、検出コイル22によって検出された誘導起電力は、高温側及び低温側では略一定であるが、キュリー点Tcをはさんだ測定温度区間において大きく変化することが確認された。これは、本実施形態によるセンサーが、キュリー点Tcをはさんだ測定温度区間における磁気特性の変化を感度良く検出できることを示している。すなわち、図7は、キュリー点Tcよりも約200℃低い温度(約550℃)からキュリー点Tcよりも約100℃高い温度(約850℃)の温度領域で鋳片15の表面の温度を測定する温度計として本実施形態によるセンサーを活用できることを意味している。
尚、ここでは、検出コイル22に対するグラフ71を示しているが、検出コイル23に対するグラフも、概ね図7に示すような変化を示す。
図8は、ギャップを異ならせた場合における、鋳片表面温度(温度)と、検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)との関係の一例を示す図である。ここでも、図7に示したグラフ71を得たのと同じようにして鋳片表面温度(温度)と検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)との関係をプロットする。ただし、ここでは、パイプ24の鋳片サンプル側の端部と、鋳片サンプルのパイプ側の表面との最短距離をギャップとし、そのギャップを20mm、30mm、40mmとした場合の鋳片表面温度とセンサー電圧との関係をプロットする。図8において、グラフ81、82、83は、それぞれギャップが20mm、30mm、40mmのときの関係を示す。図8に示すように、鋳片表面温度とギャップによりセンサー電圧が変化することが分かる。
本実施形態では、図8に示すような関係を、検出コイル22、23毎に個別に測定する。そして、測定した結果に基づいて、検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)毎に、鋳片表面温度とギャップとの関係を表す特性曲線(式)を、キュリー点Tcを含む所定の測定温度区間内(例えば550℃〜850℃)において、検出コイル22、23のそれぞれについて求め、演算装置29に予め記憶させる。尚、ここでは、ギャップが20mm、30mm、40mmの3つの場合を例に挙げて説明する。
演算装置29は、検出コイル22、23で検出された誘導起電力に対応する特性曲線であって、検出コイル22についての特性曲線と検出コイル23についての特性曲線との交点を取得する。
図9は、各検出コイル22、23で検出される誘導起電力(電圧)における特性曲線(鋳片表面温度(鋳片温度)とギャップとの関係)の一例を示す図である。図9において、グラフ91は、検出コイル22についての特性曲線である。グラフ91は、ギャップを異ならせた場合における、鋳片表面温度(温度)と、検出コイル22の誘導起電力(電圧)との関係(図8を参照)から、ある誘導起電力(例えば、図8における6.35V)における各ギャップ(図8に示した例では20mm、30mm、40mm)と鋳片表面温度(例えば、図8におけるT1、T2、T3)とを求め、求めたギャップと鋳片表面温度(鋳片温度)とをプロットし、プロットした点を結ぶことにより得られる。一方、グラフ92は、検出コイル23についての特性曲線であり、グラフ91と同様にして得られる。このようなグラフ91、92が、検出コイル22、23で検出される誘導起電力毎に作成され、予め記憶される。
演算装置29は、検出コイル22についての特性曲線(グラフ91)と検出コイル23についての特性曲線(グラフ92)との交点に対応する鋳片表面温度(鋳片温度)を鋳片15の短辺側の面の表面温度とする。また、演算装置29は、求めた交点に対応するギャップ(図9に示す例では30mm)から、冷間時(バルジングが起こっていない場合)における所定のギャップを減算した値をバルジング量とする。このように本実施形態では、先ず、ギャップ量を仮定し、各検出コイル22、23で検出された誘導起電力から、仮定したギャップ量に対応する鋳片表面温度を推定する。ギャップ量の仮定が正しければ両方の検出コイルについて推定された鋳片表面温度は一致するのに対し、間違っていれば一致しないことになる。本実施形態では、このことを利用して、各検出コイル22、23で検出された誘導起電力から、鋳片表面温度とギャップとを独立して推算するようにしている。
尚、検出コイル22、23で検出された誘導起電力(電圧)に対応する特性曲線(グラフ91、92)がない場合には、記憶されている特性曲線を用いた補間処理を行って、検出コイル22、23で検出された誘導起電力(電圧)に対応する特性曲線を求めるようにすることができる。また、対応関係データの一例である特性曲線に基づくデータとして、例えば、グラフ91、92ではなく、グラフ91、92の交点のデータを記憶するようにしてもよい。
また、図8から明らかなように、鋳片表面温度(温度)が測定温度区間を超えると鋳片は非磁性体となるため、検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)は一定値となる。電圧値が一定値(最小値)の場合、電圧値は温度とギャップに依存しないため、温度は予め定められている上限値を、ギャップは予め定められている値をそれぞれリターンさせる(採用する)。なお、温度が上限値を超えると明らかに冷却不足であり、異常状態と判断することができる。一方、鋳片表面温度(温度)が測定温度区間よりも低ければ鋳片は磁性体となるため、電圧値はギャップのみに依存する。その場合、温度は予め定められている下限値を、ギャップは電圧値に応じた値をそれぞれリターンさせる。なお、ギャップが冷間時のギャップ量よりも明らかに小さければバルジングが生じていることであり、バルジング量に応じて異常か正常かを判断することができる。
一方、鋳片表面温度(温度)が測定温度区間内であれば、検出コイル22、23のそれぞれについて、ある電圧値について温度とギャップに関する特性曲線が予め求まっていれば、特性曲線は検出コイル22、23で異なるため必ず交点を求めることができる。ただし、検出コイル22、23のそれぞれについて各ギャップにおける鋳片表面温度を比較する場合には、温度が一致しない場合もある。その場合、各検出コイル22、23から求めた鋳片表面温度の差の符号が逆転する2点(2つの温度差)を選択し、その2点の間で温度差が0となる点(鋳片表面温度(温度)とギャップとにより定まる点)を比例配分で内挿することで求める。そして、求めた点に対応するギャップから冷間時における所定のギャップ量を減算した値をバルジング量とする。
尚、ここでは、20mm、30mm、40mmの(10mmピッチでの)3つのギャップについて特性曲線(グラフ91、92)の交点を求める場合を例に挙げて示した。しかしながら、例えば、5mmピッチ或いは2mmピッチ等のより短いピッチでの特性曲線に基づいて、鋳片表面温度とギャップとを推定することが測定精度の面で好ましいことは勿論である。
また、冷間時(バルジングが起こっていない場合)における所定のギャップの起点と終点は、図8に示したような関係式を得た際のギャップの起点と終点とに対応させるようにする。すなわち、ここでは、パイプ24の鋳片サンプル側の端部と、鋳片サンプルのパイプ側の表面との最短距離をギャップとして図8に示した関係式を求めたので、冷間時(バルジングが起こっていない場合)における所定のギャップも、パイプ24の鋳片サンプル側の端部と、冷間時の(バルジングが起こっていない)鋳片サンプルのパイプ側の表面との最短距離を採用する。ここでは、ギャップの基点(起点又は終点)を、パイプ24の鋳片サンプル側の端部としたが、ギャップの基点はこれに限定されず、センサーの任意の位置をギャップの基点とすることができる。
[実施例]
本願発明者らは、鋳片状態測定装置20a、20bを用いて鋳片15の表面温度とバルジング量を求める実験を行った。その実験の条件は、以下に示す通りである。
(実験条件)
鋳片幅:1000〜1800mm
鋳造速度:0.75〜1.2m/分
鋼種:中炭素Al−キルド鋼
センサー設置位置:鋳型内湯面レベルから1m下方であって、鋳型の短辺側の冷却帯の直下
センサー(パイプの鋳片側の端部)と鋳片の短辺側の表面との最短距離:30mm
励磁コイルに印加する交流電流の周波数:1.5Hz
図10は、鋳片表面温度と測定時間との関係を示す図である。具体的に図10(a)は、鋳片状態測定装置20a、20bの代わりに放射温度計を配置し、放射温度計で鋳片15の短辺側の表面温度を測定した結果を示す図である。一方、図10(b)は、鋳片状態測定装置20a、20bで鋳片15の短辺側の表面温度を測定した結果を示す図である。
図10(a)に示すように、放射温度計を用いた場合には、放射温度計が、放射温度計と鋳片15の短辺側の表面との間に存在する水膜や水蒸気の影響を受けるため、測定値が大きくばらついており、鋳片表面温度を正確に測定することができなかった。これに対し、図10(b)に示すように、鋳片状態測定装置20a、20bを用いれば鋳片表面温度を長時間、安定して測定することができることが分かる。
図11は、バルジング量と測定時間との関係を示す図である。図11においてセンサー値は、鋳片状態測定装置20a、20bを用いて求めたバルジング量を示し、実測値は、鋳片15を観察して計測したバルジング量を示す。図11に示すように、鋳片状態測定装置20a、20bを用いて求めたバルジング量は実際のバルジング量に近い値になることが分かる。
以上のように本実施形態では、鋳片15の短辺側の面を支持するサポートロール16a〜16dの直下において、鋳片15の短辺側の面の表面に対して略垂直方向に交流磁界を印加するための励磁コイル21と、当該交流磁界(磁力線)の変化を励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置において検出する前面側検出コイル22と、当該交流磁界(磁力線)の変化を励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置において検出する背面側検出コイル23とを設ける。また、複数のギャップのそれぞれについての誘導起電力と鋳片表面温度との関係式を検出コイル22、23毎に求め、求めた結果から、検出コイル22、23で検出される誘導起電力毎に、鋳片の表面温度とギャップ量との関係(グラフ91、92)を、検出コイル22、23のそれぞれについて求めて予め記憶しておく。検出コイル22、23で誘導起電力が検出されると、当該誘導起電力に対応するグラフ91、92の交点を求める。そして、求めた交点に対応する鋳片表面温度と、当該交点に対応するギャップに基づくバルジング量との出力(表示や記憶媒体への記憶)を行う。
したがって、鋼の連続鋳造を行う鋳型10の直下であって多量の水や水蒸気等が存在する苛酷な雰囲気下においても、鋳片表面温度及びバルジング量を長時間、直接的に且つ安定的に独立して測定することができる。換言すれば、鋳型10の直下の冷却帯で鋳片表面温度がキュリー点Tc以下まで一旦冷却され、その直後に、復熱により鋳片表面温度が上昇する部分の鋳片15の表面温度とバルジング量を長時間、直接的にかつ安定的に測定することができる。また、鋳型10の直下で測定するため、バルジングの発生をより早期に把握することが可能となり、適切な鋳造条件を早期に選択することが可能となる。また、鋳片15のサイズに関わらず測定を行うことができるので、鋳片15のサイズに依存することなく鋳片表面温度及びバルジング量を測定することができる。以上のことから、操業異常であるブレークアウトや溶鋼流に偏りが生じる偏流を迅速に且つ確実に検知することが可能となる。
また、本実施形態では、相対的に鋳片15から遠い位置に配置する背面側検出コイル23の巻数を、相対的に鋳片15に近い位置に配置する前面側検出コイル22の巻数よりも多くした。これにより、前面側検出コイル22で検出される誘導起電力と、背面側検出コイル23で検出される誘導起電力との双方を、磁力線の分布の変化に合わせて敏感に変化させることができ、検出コイル22、23で検出される誘導起電力が磁力線の分布の変化を適切に捉えることができる。
また、本実施形態では、0.5Hz以上20Hz以下の範囲の交流磁界を印加するようにしたので、検出コイル22、23で検出される誘導起電力の信号を確実に処理することができると共に、交流磁界を鋳片15の内部まで侵入させることができる。これにより、検出コイル22、23で検出される誘導起電力に鋳片15の温度の情報を確実に含めさせることができると共に、検出コイル22、23で検出される誘導起電力にノイズが多量に発生してしまうことを確実に防止することができる。
尚、本実施形態では、複数のギャップのそれぞれについての誘導起電力と鋳片表面温度との関係式を検出コイル22、23毎に求める場合を例に挙げて説明した。しかしながら、検出コイル22、23により検出された誘導起電力から、その誘導起電力に対応する鋳片表面温度及びギャップを求めることができるように、誘導起電力と、鋳片表面温度と、ギャップとの関係を求めることができれば必ずしも関係式を求める必要はない。例えば、誘導起電力と、鋳片表面温度と、ギャップとを相互に関連付けるテーブルを検出コイル22、23毎に作成してもよい。
また、複数のギャップのそれぞれについての誘導起電力と鋳片表面温度との関係式や、前述したテーブルのデータを用いて補間処理を行って、当該複数のギャップと異なる値のギャップにおける誘導起電力と鋳片表面温度との関係を求めるようにしてもよい。このようにすれば、多くのギャップについて、鋳片表面温度(温度)と、検出コイル22、23の誘導起電力(電圧)との関係を求めなくても(図8に示すグラフの数を多くしなくても)、鋳片表面温度とギャップ(すなわち、バルジング量)を高精度に求めることができる。
また、本実施形態では、励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置に前面側検出コイル22を、励磁コイル21よりも鋳片15から遠い位置に背面側検出コイル23を、同一のパイプ24に巻き回した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、励磁コイル21で発生する交流磁界の変化を検出することができ、且つ、相対的に鋳片15から遠い位置に一方の検出コイル(背面側検出コイル23)を、相対的に鋳片15に近い位置に他方の検出コイル(前面側検出コイル22)をそれぞれ巻き回していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、前面側検出コイル22及び背面側検出コイル23共に、励磁コイル21よりも鋳片15に近い位置、又は励磁コイル21よりも鋳片15から遠い位置に配置するようにしてもよい。また、前面側検出コイル22又は背面側検出コイル23を励磁コイル21の上に、励磁コイル21と絶縁された状態で巻き回してもよい。
また、本実施形態のように、鋳型10の短辺側のサポートロール16の直下に鋳片状態測定装置20a、20bを配置すれば、バルジングの発生やブレークアウトを早期に検出することができるので好ましいが、鋳片状態測定装置20a、20bを必ずしもこの位置に配置する必要はない。すなわち、表面温度が変動する領域(好ましくはキュリー点Tcを挟んで変動する領域)に対して配置していれば、鋳片状態測定装置20a、20bをどこに配置してもよい。
また、本実施形態のように2つの鋳片状態測定装置20a、20bを配置すれば、鋳片15の短辺側の両側においてバルジングの発生やブレークアウトを検出することができるので好ましいが、鋳片状態測定装置20a、20bの一方だけを配置するようにしてもよい。
また、発振器25と、定電流アンプ26と、信号処理器27と、ロックインアンプ28と、演算装置29は、2つのセンサーで共用するようにしてもよい。
以上説明した本実施形態においては、例えば、励磁コイル21により印加コイルが実現され、前面側検出コイル22(背面側検出コイル23)により第1(第2)の検出コイルが実現される。また、例えば、図9に示すグラフ91、92のデータが対応関係データの一例であり、その関係式を演算装置29が予め記憶することにより記憶手段が実現される。また、例えば、演算装置29が、図9に示すグラフ91、92の交点を求めることにより取得手段が実現される。また、例えば、演算装置29が、グラフ91、92の交点に対応する鋳片推定温度から、鋳片15の短辺側の面の表面温度を求めると共に、当該交点に対応する対応するギャップから、鋳片15のバルジング量を求めることにより導出手段が実現される。
また、本実施形態では、検出コイル22、23で検出される誘導起電力毎に、鋳片の表面温度とギャップ量との関係(グラフ91、92)を、検出コイル22、23のそれぞれについて求めて予め記憶しておき、検出コイル22、23で誘導起電力が検出されると、当該誘導起電力に対応するグラフ91、92の交点を求め、求めた交点に対応する鋳片表面温度と、当該交点に対応するギャップに基づくバルジング量とを得るようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、次のようにすることができる。まず、検出コイル22、23で誘導起電力が検出されると、当該検出コイルについての関係式から、その誘導起電力に対応する鋳片表面温度及びギャップを求める。そして、各検出コイル22、23について求めた、同一のギャップに対応する鋳片表面温度の温度差を求め、その温度差が最も小さい(好ましくは0の)鋳片表面温度と、当該鋳片表面温度に対応するギャップに基づくバルジング量を導出する。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
10 鋳型
11 短辺側部材
12 長辺側部材
13 浸漬ノズル
14 溶鋼
15 鋳片
16 サポートロール
20 鋳片状態測定装置
21 励磁コイル
22 前面側検出コイル
23 背面側検出コイル
24 パイプ
25 発振器
26 定電流アンプ
27 信号処理器
28 ロックインアンプ
29 演算装置

Claims (9)

  1. 鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定する鋳片状態測定装置であって、
    前記鋳片の表面に対して略垂直方向から交流磁界を印加する印加コイルと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で検出する第1の検出コイルと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で検出する第2の検出コイルと、を備え、
    前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して配置されたセンサーと、
    前記誘導起電力、前記センサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップ、及び前記鋳片サンプルの表面温度の対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶する記憶手段と、
    前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記表面温度との組を取得する取得手段と、
    前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出手段と、を有することを特徴とする鋳片状態測定装置。
  2. 前記記憶手段は、前記第1の検出コイル及び前記第2の検出コイルのそれぞれについての、前記ギャップと前記表面温度との関係を前記誘導起電力毎に示す特性曲線に基づくデータを、前記対応関係データとして記憶し、
    前記取得手段は、前記検出コイルにより検出された誘導起電力に対応する前記特性曲線であって、前記第1の検出コイルについての前記特性曲線と、前記第2の検出コイルについての前記特性曲線との交点を取得し、
    前記導出手段は、前記取得手段により取得された前記特性曲線の交点の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出することを特徴とする請求項1に記載の鋳片状態測定装置。
  3. 前記第2の検出コイルの巻数は、前記第1の検出コイルの巻数よりも多いことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳片状態測定装置。
  4. 前記印加コイルは、0.5Hz以上20Hz以下の範囲の周波数の交流磁界を印加することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の鋳片状態測定装置。
  5. 前記センサーは、前記鋳片の表面温度が、前記鋳片のキュリー点を挟んで変動する領域に対して配置されており、
    前記対応関係データに含まれる鋳片サンプルの表面温度は、前記鋳片のキュリー点を含む温度区間内の温度であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の鋳片状態測定装置。
  6. 前記鋳片は、連続鋳造機における鋳型から下方に引き抜かれた鋳片であり、
    前記センサーは、前記鋳型の直下で前記鋳片の短辺側の表面を冷却する冷却帯よりも下方において、前記鋳片の短辺側の表面に対して配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の鋳片状態測定装置。
  7. 前記第1の検出コイルは、前記印加コイルよりも前記鋳片に近い位置に配置され、
    前記第2の検出コイルは、前記印加コイルよりも前記鋳片から遠い位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の鋳片状態測定装置。
  8. 鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定する鋳片状態測定方法であって、
    前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して略垂直方向から印加コイルを用いて交流磁界を印加する印加ステップと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で第1の検出コイルを用いて検出する第1の検出ステップと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で第2の検出コイルを用いて検出する第2の検出ステップと、
    前記誘導起電力と、前記印加コイル、前記第1の検出コイル、及び前記第2の検出コイルとを備えるセンサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップと、前記鋳片サンプルの表面温度との対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶媒体に記憶する記憶ステップと、
    前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記表面温度との組を取得する取得ステップと、
    前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出ステップと、を有することを特徴とする鋳片状態測定方法。
  9. 鋳片の表面に対して略垂直方向から交流磁界を印加する印加コイルと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片に近い位置で検出する第1の検出コイルと、
    前記印加コイルにより印加された交流磁界の時間的な変化を表す誘導起電力を、相対的に前記鋳片から遠い位置で検出する第2の検出コイルと、を備え、
    前記鋳片の表面温度が変動する領域に対して配置されたセンサーを用いて、鋳片の表面温度と、当該鋳片に発生するバルジング量とをオンラインで測定することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
    前記誘導起電力、前記センサーと鋳片サンプルとの間の距離であるギャップ、及び前記鋳片サンプルの表面温度の対応関係を示す対応関係データであって、前記検出コイルで検出される誘導起電力から、前記ギャップと、前記表面温度との組を出力するための対応関係データを、前記検出コイルごとに予め記憶媒体に記憶する記憶ステップと、
    前記検出コイルにより検出された誘導起電力から、前記対応関係データを用いて、前記ギャップと前記鋳片の表面温度との組を取得する取得ステップと、
    前記ギャップと前記表面温度との組の値に基づいて、前記鋳片の表面温度と、前記鋳片におけるバルジング量とを導出する導出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
JP2009242658A 2009-10-21 2009-10-21 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム Active JP5223841B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009242658A JP5223841B2 (ja) 2009-10-21 2009-10-21 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009242658A JP5223841B2 (ja) 2009-10-21 2009-10-21 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011089845A true JP2011089845A (ja) 2011-05-06
JP5223841B2 JP5223841B2 (ja) 2013-06-26

Family

ID=44108234

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009242658A Active JP5223841B2 (ja) 2009-10-21 2009-10-21 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5223841B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5834331A (ja) * 1981-08-25 1983-02-28 Nippon Kokan Kk <Nkk> 温度測定装置
JP2007192042A (ja) * 2006-01-17 2007-08-02 Shimadzu Corp 真空ポンプ
JP2008102073A (ja) * 2006-10-20 2008-05-01 Jfe Steel Kk 電磁気特性測定方法および装置
JP2008256605A (ja) * 2007-04-06 2008-10-23 Nippon Steel Corp 鋳片表面温度の測定装置および鋳片表面温度の測定方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5834331A (ja) * 1981-08-25 1983-02-28 Nippon Kokan Kk <Nkk> 温度測定装置
JP2007192042A (ja) * 2006-01-17 2007-08-02 Shimadzu Corp 真空ポンプ
JP2008102073A (ja) * 2006-10-20 2008-05-01 Jfe Steel Kk 電磁気特性測定方法および装置
JP2008256605A (ja) * 2007-04-06 2008-10-23 Nippon Steel Corp 鋳片表面温度の測定装置および鋳片表面温度の測定方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5223841B2 (ja) 2013-06-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6472778B2 (ja) 金属ターゲットの微細構造を監視するシステム、その方法、及び、金属ターゲットの製造方法
KR100768395B1 (ko) 연속주조주편의 응고완료위치검지방법 및 검지장치 및연속주조주편의 제조방법
JP4842195B2 (ja) 鋳片表面温度の測定装置および鋳片表面温度の測定方法
KR101302228B1 (ko) 주조편 표면 온도 측정 장치 및 주조편 표면 온도 측정 방법
JP4453556B2 (ja) 連続鋳造鋳片の製造方法
GB2490393A (en) Monitoring microstructure of a metal target
JP5223841B2 (ja) 鋳片状態測定装置、鋳片状態測定方法、及びコンピュータプログラム
JP4505536B2 (ja) 鋳片表面温度の測定装置および鋳片表面温度の測定方法
JP5079714B2 (ja) 表面状態測定装置及び表面状態測定方法
JP5223842B2 (ja) 鋳片表面温度導出装置及び鋳片表面温度導出方法
JP5915589B2 (ja) 連続鋳造鋳型の温度測定方法
JP2005177860A (ja) 連続鋳造鋳片の凝固完了位置検知方法及び検知装置並びに連続鋳造鋳片の製造方法
JPH02140621A (ja) 渦流式モールドレベル計
JP2001314951A (ja) 電磁鋳造におけるモールド湯面レベル計測方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120209

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130206

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130212

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130225

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5223841

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160322

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350