JP2011089075A - トレッド用ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ - Google Patents

トレッド用ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性及び耐テアー性等の耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なトレッド用ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム若しくは天然ゴムと少なくとも一種の共役ジエン系重合体とを含むゴム成分に、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下の軟化剤及びカーボンブラックを含有し、かつ該カーボンブラックが、燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させた後、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られ、該多段急冷媒体導入手段でのトルエン着色透過度が、特定の関係を満たすことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物及び該トレッド用ゴム組成物を用いたタイヤに関し、特に耐摩耗性及び耐テアー性等の耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なトレッド用ゴム組成物及びこれを用いて得られる高性能なタイヤに関するものである。
近年、省エネルギー、省資源の社会的要請の下、自動車の燃料消費量を節約するため、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。このような要求に対し、タイヤの転がり抵抗を減少させる手法として、カーボンブラックの使用量を低減したり、低級カーボンブラックを使用したりすることにより、ヒステリシスロスの低下したゴム組成物をタイヤ部材、特にトレッドゴムに用いる方法が知られている。また、ゴム成分中に占めるポリブタジエンゴムの割合の増大や、ゴム組成物の高弾性化によっても、転がり抵抗を改善することができる。
こうしたなか、例えば特許文献1には、末端変性ポリブタジエンゴム等の末端変性重合体を用いたゴム組成物が開示されており、カーボンブラックの分散性を向上させることによって、タイヤの耐摩耗性及び転がり抵抗の両立を図っている。
特開2005−041975号公報
しかしながら、従来のように、使用するカーボンブラックの配合量を単純に減量すると、ゴム組成物の耐摩耗性の低下を引き起こす可能性がある。また、ゴム成分中に占めるポリブタジエンゴムの割合の増大や、ゴム組成物の高弾性化を図ることに特化すると、ゴム組成物の耐テアー性を含めた耐久性が低下する問題が生じる。一方、特許文献1に開示のゴム組成物によれば、末端変性ポリブタジエンのヒステリシスロスが低減され、耐摩耗性及び転がり抵抗について一定の効果が得られるものの、これら耐久性と転がり抵抗という二つの背反する性能のさらなる向上を図る観点からすれば、依然として改良の余地がある。
そこで、本発明は、耐摩耗性及び耐テアー性等の耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なトレッド用ゴム組成物を提供することを目的としている。また、かかるトレッド用ゴム組成物を用いた、耐摩耗性、耐テアー性及び転がり抵抗が高度にバランスされたタイヤを提供することをも目的としている。
本発明者は、上記課題を解決すべく、特定のガラス転移温度を有する軟化剤と、特定の製法により得られる特定の性状を有するカーボンブラックとを配合したトレッド用ゴム組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム若しくは天然ゴムと少なくとも一種の共役ジエン系重合体とを含むゴム成分に、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下の軟化剤及びカーボンブラックを含有し、かつ
該カーボンブラックが、
燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させた後、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られ、該多段急冷媒体導入手段でのトルエン着色透過度が、下記式(I)及び(II):
10<X<40 ・・・ (I)
90<Z<100 ・・・ (II)
[式中、Xは原料導入位置から第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)で、Zは最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)である]の関係を満たす
ことを特徴とする。
また、前記ゴム成分100質量部に対して、前記軟化剤を0.1〜10.0質量部の量で含有するのが望ましい。
前記共役ジエン系重合体は、少なくとも一つの窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体であってもよい。
また、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックを60質量部以下の量で含有し、さらにシリカを30質量部以下の量で含有するのが望ましい。
さらに、シランカップリング剤を前記シリカに対して20質量%以下の量で含有してもよい。
前記窒素含有官能基は、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基であってもよく、下記式(III):
Figure 2011089075
[式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である]で表される置換アミノ基、及び下記式(IV):
Figure 2011089075
[式中、R2は、3〜16のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す]で表される環状アミノ基で表される環状アミノ基からなる群から選択されるものであってもよい。
さらに、前記窒素含有官能基は、ヘキサメチレンイミノ基であってもよく、前記共役ジエン系重合体は、ポリブタジエンゴムであってもよい。
前記天然ゴムは、天然ゴムラテックス中のタンパク質を機械的分離方法により部分脱タンパク処理してなるラテックスから得られ、該天然ゴムの総窒素含量が0.1質量%を超え0.4質量%以下であるのが望ましい。
本発明のタイヤは、上記いずれかに記載のトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムとして用いたことを特徴とする。
本発明によれば、天然ゴム及び少なくとも一種の共役ジエン系重合体を含むゴム成分に特定のガラス転移温度を有する軟化剤と、表面に存在するタール成分、特に多環芳香族成分の少ないカーボンブラックとを配合することで、耐摩耗性及び耐テアー性等の耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なトレッド用ゴム組成物を提供することができる。かかるゴム組成物であれば、カーボンブラックの配合量を必要以上に減量することなく、シリカを好適な量で配合することも可能となる。
このようなトレッド用ゴム組成物を用いれば、耐摩耗性、耐テアー性及び転がり抵抗が高度にバランスされた高性能なタイヤを実現することができる。
本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の縦断正面説明図である。
以下、本発明について、必要に応じて図面を参照しつつ具体的に説明する。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム及び少なくとも一種の共役ジエン系重合体を含むゴム成分に、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下の軟化剤及びカーボンブラックを含有し、かつ
該カーボンブラックが、
燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させた後、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られ、該多段急冷媒体導入手段でのトルエン着色透過度が、下記式(I)及び(II):
10<X<40 ・・・ (I)
90<Z<100 ・・・ (II)
[式中、Xは原料導入位置から第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)で、Zは最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)である]の関係を満たす
ことを特徴とする。
一般に、共役ジエン系重合体、特に窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分にカーボンブラックが配合されたゴム組成物においては、ゴム成分に対するカーボンブラックの分散性が向上し、延いてはゴム成分のヒステリシスロスが低減されるため、耐摩耗性及び転がり抵抗を向上させることができる。しかしながら、かかる共役ジエン系重合体に天然ゴムがブレンドされたゴム成分を用いる場合には、ヒステリシスロスの低減効果をさらに向上させることが必要となる。なぜなら、通常の製造方法によって得られる天然ゴムは、天然ゴムラテックス中に含まれる非ゴム成分が残存することにより、その損失正接(tanδ)は高く、発熱性の低減効果が低い場合があるからである。これに対し、本発明のトレッド用ゴム組成物は、共役ジエン系重合体に天然ゴムがブレンドされたゴム成分に、ガラス転移温度の低い軟化剤と特定の製法により得られるカーボンブラックとを配合するため、かかる軟化剤によってtanδを低下させ、表面に存在するタール分が充分低減されたカーボンブラックによってゴム組成物の耐摩耗性及び低発熱性をさらに向上させることが可能となる。
さらに、本発明のトレッド用ゴム組成物は、表面に存在するタール成分の少ないカーボンブラックと共に、窒素含有官能基を有するような特定の変性共役ジエン系重合体を用いることによって、カーボンブラックの分散性が大幅に向上するため、カーボンブラックの補強効果をさらに発揮しつつ、ゴム組成物中のヒステリシスロスをより低減することもできる。このように、本発明のトレッド用ゴム組成物は、共役ジエン系重合体に天然ゴムをブレンドしつつ、タイヤの耐摩耗性、耐テアー性及び転がり抵抗を充分に向上させることができる。
以下、本発明のトレッド用ゴム組成物の各成分について詳述する。
[ゴム成分]
本発明のトレッド用ゴム組成物において、ゴム成分として用いる天然ゴムは、本来、弾性、加工性、破壊特性、低発熱性等に優れるため、トレッドゴムへの用途に適している。しかしながら、天然ゴムの製造方法によっては、天然ゴムラテックス中に存在する非ゴム成分の影響により、天然ゴムが本来有する物性に悪影響を与える場合がある。そこで、本発明のトレッド用ゴム組成物に用いる好適な天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス中のタンパク質を機械的分離方法により部分脱タンパク処理してなるラテックスから得られた、総窒素含量が0.1質量%を超え0.4質量%以下の天然ゴムが挙げられる。かかる天然ゴムは、天然ゴムラテックス中に存在するタンパク質の除去を、酵素処理等の化学的手段は用いず、遠心分離等の機械的手段によって行うことで、タンパク質含量の指標となる総窒素含有量が上記特定した範囲に調整されており、その結果、天然ゴムが本来有する物性を損なうことなく、低発熱性を向上させることができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物に好適な天然ゴムは、例えば、凝固前のラテックスを、その固形ゴムの総窒素含有量が一定範囲となるように、機械的分離手法、好ましくは遠心分離濃縮法によって部分脱タンパク処理を行うことで製造される。ここで、機械的分離手法以外の手法によって脱タンパク処理を行う場合には、固形ゴム中のタンパク質は減少するものの、同時に老化防止作用を有するトコトリエノール等の有効成分も失われるため、天然ゴム本来の耐老化性が低下することがある。
本発明のトレッド用ゴム組成物に好適な天然ゴムは、例えば、原料となる天然ゴムラテックスの遠心分離条件(回転数、時間等)を調整して総窒素含量を制御することができる。天然ゴム中の総窒素含量が0.1質量%以下では、耐熱老化性が低下する場合があり、一方、0.4質量%を超えると、発熱性の低減効果が充分に得られない。
なお、本発明のトレッド用ゴム組成物に好適な天然ゴムは、部分脱タンパク処理を行った後、得られた天然ゴムラテックスを凝固し、乾燥処理することで得ることができる。原料となる天然ゴムラテックスは、特に限定されず、フィールドラテックスや市販のラテックス等を用いることができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物において、上記天然ゴム以外にゴム成分として用いる共役ジエン系重合体としては、ゴム工業界で一般的に用いられるものであれば特に制限されないが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、及び共役ジエン化合物の単独重合体が好ましく、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムが挙げられ、ポリブタジエンゴムが特に好ましい。なかでもこれら共役ジエン系重合体がカーボンブラックやシリカ等の充填剤と相互作用を有する官能基を含む変性剤で変性されてなる、特定の官能基を有する変性共役ジエン系重合体であるのが好ましく、具体的には、例えば、窒素含有官能基、ケイ素を含む官能基又はスズを含む官能基を有する変性共役ジエン系重合体であるのがより好ましい。特に、少なくとも一つの窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体であるのが最適である。この場合、かかる窒素含有官能基としては、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基が好適なものとして挙げられる。これらの官能基を有する変性共役ジエン系重合体であると、カーボンブラック等の充填剤との親和性に優れており、これら充填剤のゴム成分中の分散性をより向上させることが可能となる。なお、これら共役ジエン系重合体は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
また、上記共役ジエン系重合体は、例えば、単量体である共役ジエン化合物を単独で、又は単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との混合物を重合して得ることができるが、上記共役ジエン系重合体の分子中に少なくとも一つの窒素含有官能基を導入して変性共役ジエン系重合体を得る場合、(1)単量体を重合開始剤を用いて重合させ、重合活性部位を有する重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種窒素含有変性剤で変性する方法や、(2)単量体を窒素含有官能基を有する重合開始剤を用いて重合させる方法を採用するのが好ましい。
上記変性共役ジエン系重合体の合成に用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物がより好ましい。なお、重合開始剤として有機リチウム化合物を用いた場合、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とは、アニオン重合で重合される。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られ、該重合体は、窒素含有変性剤で変性することなく、本発明において好適な変性共役ジエン系重合体として用いることができる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
一方、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられ、これらの中でも、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
上記リチウムアミド化合物として、式:Li−AM[式中、AMは、下記式(III)で表される置換アミノ基又は式(IV)で表される環状アミノ基である]で表されるリチウムアミド化合物を用いることで、式(III)で表される置換アミノ基及び式(IV)で表される環状アミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の窒素含有官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が得られる。例えば、リチウムヘキサメチレンイミドを用いた場合、少なくとも一つのヘキサメチレンイミノ基が導入された変性共役ジエン系重合体が得られる。
Figure 2011089075
Figure 2011089075
なお、式(III)において、R1は、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3-フェニル-1-プロピル基及びイソブチル基等が好適に挙げられる。なお、R1は、それぞれ同じでも異なってもよい。一方、式(IV)において、R2は、3〜16個のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、一置換から八置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。また、R2として、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N-アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
上記重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。なお、上記重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。さらに、重合反応の反応温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲がより好ましい。
さらに、上記重合活性部位を有する重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有する窒素含有化合物が好ましい。上記変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
上記重合活性部位を有する重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有する窒素含有化合物が好ましい。上記変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
窒素含有官能基を有する重合開始剤により重合して得た重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、変性剤としてカップリング剤を用いた場合、得られる変性共役ジエン系重合体の分子中に複数の窒素含有官能基が導入され、カーボンブラックの分散性を大幅に向上できる。なお、カップリング剤として、具体的には、SnCl4、R3SnCl3、R3 2SnCl2、R3 3SnCl、SiCl4、R3SiCl3、R3 2SiCl2、R3 3SiCl等が好ましく、R3として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。特に、カップリング剤としては、SnCl4及びSiCl4が好ましい。
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。さらに、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲がより好ましい。
本発明のトレッド用ゴム組成物のゴム成分は、天然ゴムのみ、或いは天然ゴムと上記共役ジエン系重合体の少なくとも一種とを含むことを要し、いずれの場合も天然ゴム及び該共役ジエン系重合体を合計で50質量%以上含むことが好ましく、特に、ゴム成分中に該共役ジエン系重合体を10〜50質量%含むことが好ましい。上記ゴム成分中の変性共役ジエン系重合体の含有量が10質量%未満では、充填剤との相互作用を充分に発揮することができないおそれがあり、一方、50質量%を超えると、作業性が低下する場合がある。なお、天然ゴム及び変性共役ジエン系重合体以外のゴム成分が含まれる場合においては、ゴム工業界で使用される一般的なゴム成分をブレンドすることができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物のゴム成分は、天然ゴムと上記共役ジエン系重合体の少なくとも一種とを含む場合、天然ゴム(A)と共役ジエン系重合体(B)との質量比(A/B)が、90/10〜50/50であることが好ましく、80/20〜50/50であることがより好ましい。ここで、天然ゴムと共役ジエン系重合体の合計に占める共役ジエン系重合体の割合が10質量%未満では(即ち、天然ゴムの割合が90質量%を超えると)、カーボンブラックの分散性の向上が不十分で、低ロス効果が充分に得られないことがあり、一方、共役ジエン系重合体の割合が50質量%を超えると(即ち、天然ゴムの割合が50質量%未満では)、耐テアー性が不十分なことがあり、また、作業性が低下する。
[軟化剤]
本発明のゴム組成物に用いられる軟化剤は、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下、好ましくは−60℃以下、より好ましくは−70℃以下であることを特徴としている。下限値については特に制限されないが、通常−110℃以上である。一般に、ゴム組成物に軟化剤を配合すると、ゴムの弾性率が低下する傾向にある。その結果、転がり抵抗も悪化するおそれがあるが、本発明のように上記範囲内のガラス転移温度を有する軟化剤を配合すると、ゴム組成物の損失正接(tanδ)を低下させるとともに転がり抵抗をも低下させることが可能となる。かかる軟化剤としては、上記ガラス転移温度を有するものであれば特に制限されないが、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ステアリン酸等の脂肪酸、綿実油、大豆油等の脂肪油、特殊プロセスオイル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。具体的には、例えば上市のものとして、スプレンダーR−400(花王社製)、A/O MIX(三共油化製)を好適に用いることができる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(DSC)で測定される値である。
[カーボンブラック]
本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラックは、燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させた後、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより製造されることを特徴としており、以下に、図を参照しながら、該カーボンブラックの製造方法を詳細に説明する。
図1は、本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の縦断正面説明図である。カーボンブラック製造炉1は、その内部が燃焼帯域と反応帯域と反応停止帯域とを連設した構造であり、その全体が耐火物で覆われている。また、カーボンブラック製造炉1は、燃焼帯域として、可燃性流体導入室と、炉頭部外周から酸素含有ガス導入管によって導入された酸素含有ガスを、整流板を用いて整流して可燃性流体導入室へ導入する酸素含有ガス導入用円筒と、酸素含有ガス導入用円筒の中心軸に設置され、可燃性流体導入室へ燃焼用炭化水素を導入する燃料油噴霧装置導入管とを備える。燃焼帯域内では、燃焼用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成する。
カーボンブラック製造炉1は、反応帯域として、円筒が次第に収れんする収れん室と、収れん室の下流側に4つの原料油噴霧口を含む原料油導入室と、原料油導入室の下流側に反応室10とを備える。該原料油噴霧口は、燃焼帯域からの高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入する。反応帯域内では、高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼又は熱分解反応により、原料炭化水素をカーボンブラックに転化する。
カーボンブラック製造炉1は、反応停止帯域として、多段急冷媒体導入手段12を有する反応継続兼冷却室11を備える。多段急冷媒体導入手段12は、反応帯域からの高温燃焼ガス流に対して、水などの急冷媒体を噴霧する。反応停止帯域内では、高温燃焼ガス流を急冷媒体により急冷して反応を終結する。また、カーボンブラック製造炉1は、反応帯域あるいは反応停止帯域において、ガス体を導入する装置をさらに備えてもよい。ここで、「ガス体」としては、空気、酸素と炭化水素の混合物、これらの燃焼反応による燃焼ガス等が使用可能である。このようにして、カーボンブラックの製造において、反応ガス流が反応停止帯域に入るまでの各帯域における平均反応温度と滞留時間を制御して、各段階でのカーボンブラックのトルエン着色透過度X、Y及びZを所望の値にすることにより、本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックが得られる。
次に、上記カーボンブラック製造炉1における各帯域について説明する。燃焼帯域とは、燃料と空気との反応により高温ガス流が生成される領域であり、この下流端は原料油が反応装置内に導入される点(複数位置で導入される場合は最も上流側)を指す。また、反応帯域とは、原料炭化水素が導入された点(複数位置の場合は最も上流側)から反応継続兼冷却室11内の多段急冷水噴霧手段12(これらの手段は反応継続兼冷却室11内で抜き差し自在であり、生産する品種、特性により使用位置は選択される)の作動(水等の冷媒体を導入する)点までを指す。すなわち、原料油噴霧口で原料油を導入し、多段急冷媒体導入手段12で水を導入した場合、この間の領域が反応帯域となる。反応停止帯域とは、急冷水圧入噴霧手段を作動させた点よりも下側(図1では右側)の帯域を指す。図1において、反応継続兼冷却室11という名称を用いたのは、原料導入時点から前記反応停止用急冷水圧入噴霧手段の作動時点までが反応帯域、それ以降が反応停止帯域であり、この急冷水導入位置が要求されるカーボンブラック性能により移動することがあるためである。
上記製造方法により得られるカーボンブラックは、下記式(I)及び式(II)の関係を満たすことを要する。なお、図1においては、Xが、第一番目の急冷媒体導入手段12−Xより急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)であり、Zが、最後の急冷媒体導入手段12−Zにより急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)である。ここで、上記製造方法により得られるカーボンブラックが下記式(I)及び式(II)の関係を満たせば、段階的にトルエン着色透過度を規定することにより、カーボンブラックの粒径と表面物性のバランス化を図ることができ、補強性を上げ、耐摩耗性を向上させることができる。
10<X<40 ・・・ (I)
90<Z<100 ・・・ (II)
上記したように、このような性状を有するカーボンブラックは、反応温度及び滞留時間を制御することにより、得ることができる。例えば、反応帯域内に原料が噴霧導入されてから、第1番目の急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間をt1(秒)、この帯域での平均反応温度をT1(℃)とし、第1番目の急冷媒体が導入されてから、第2番目の急冷媒体導入手段(図1において、12−Y)により急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間をt2(秒)、この帯域での平均反応温度をT2(℃)とし、さらに、第2番目の急冷媒体が導入されてから、最後の急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間(即ち、反応停止帯域通過までの帯域における滞留時間)をt3(秒)、この帯域内での平均反応温度をT3(℃)とした場合、それらの滞留時間及び平均反応温度が、下記式(V)、式(VI)及び式(VII):
2.00 ≦ α1 ≦ 5.00 ・・・ (V)
5.00 ≦ α2 ≦ 9.00 ・・・ (VI)
−2.5 ×(α1+α2)+ 85.0 ≦ β ≦ 90.0 ・・・ (VII)
[式中、α1=t1×T1、α2=t2×T2、β=t3×T3である]の関係を満たすように制御されることにより、本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックを確実に得ることができる。
上記カーボンブラック製造炉1は、炉内の温度をモニターするため、任意の数箇所に熱電対を炉内に挿入できる構造を備える。平均反応温度T1、T2、T3を算出するために、各工程(各帯域)で、少なくとも2箇所、望ましくは3〜4箇所の温度を測定することが好ましい。さらに、滞留時間t1、t2、t3の算出は、公知の熱力学的計算方法によって導入反応ガス流体の体積を算出し、次式により算出するものとする。なお、原料油の分解反応及び急冷媒体による体積増加は無視するものとする。
滞留時間t1(sec)=原料炭化水素導入位置から第1番目の急冷媒体導入位置までの反応炉内通過容積(m3)/反応ガス流体の体積(m3/sec)
滞留時間t2(sec)=第1番目の急冷媒体導入位置から第2番目の急冷媒体が導入されるまでの反応炉内通過容積(m3)/反応ガス流体の体積(m3/sec)
滞留時間t3(sec)=第2番目の急冷媒体導入位置から最後の急冷媒体が導入されるまでの反応炉内通過容積(m3)/反応ガス流体の体積(m3/sec)
さらに、上記カーボンブラックとして、下記の関係式(VIII)、(IX)及び(X)
20<X<40 ・・・ (VIII)
50<Y<60 ・・・ (IX)
90<Z<95 ・・・ (X)
[式中、Yは第2番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度を示し、X及びZは前記と同義である。]
を満たすように制御して得られたものを好適に用いることができる。
なお、上記トルエン着色透過度は、JIS K 6218:1997の第8項B法に記載の方法により測定され、純粋なトルエンとの百分率で表示される。
上記カーボンブラックは、水素放出率が、0.3質量%を超えるのが好ましく、0.35質量%以上であるのがより好ましい。上限値については特に制限されないが、通常0.4質量%程度である。この水素放出率が0.3質量%を超えると、本発明のゴム組成物の耐摩耗性がさらに向上し、かつ発熱性もより低減される。
なお、上記水素放出率は、(1)カーボンブラック試料を105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温まで冷却し、(2)スズ製のチューブ状サンプル容器に約10mgを精秤して、圧着及び密栓し、(3)水素分析装置(堀場製作所EMGA621W)でアルゴン気流下、2000℃で15分間加熱したときの水素ガス発生量を測定し、その質量分率で表示される。
さらに、上記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸収量(DBP)が95〜220mL/100g、圧縮DBP吸収量(24M4DBP)が90〜200mL/100g、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)が70〜200m2/gであるものが好ましい。
なお、ジブチルフタレート吸収量(DBP)及び圧縮DBP吸収量(24M4DBP)は、ASTM D2414−88(JIS K6217−4:2001)に記載の方法により測定され、カーボンブラック100g当たりに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の体積mLで表示される。また、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)は、JIS K6217−3:2001に記載の方法により測定され、カーボンブラック単位質量当たりの比表面積m2/gで表示される。
[ゴム組成物]
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記軟化剤を0.1〜10.0質量部、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部の量で配合してなるのが望ましい。軟化剤の配合量が0.1質量部未満では、転がり抵抗を充分に低下できないおそれがあり、10.0質量部を超えると、ゴムの強度が必要以上に低下し、耐摩耗性が悪化する傾向にある。
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記カーボンブラックを10〜250質量部の量で配合してなるのが望ましい。カーボンブラックの配合量が10質量部未満では、ゴム組成物の補強性を充分に確保することができず、一方、250質量部を超えると、カーボンブラックの分散性が低下し、ゴム組成物の耐摩耗性、耐テアー性及び耐発熱性が低下する場合がある。しかしながら、カーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して60質量以下であるゴム組成物に、さらにシリカをゴム成分100質量部に対して30質量部以下、好ましくは5〜15質量部の範囲で配合することで、ゴム組成物の補強性(耐摩耗性)を確保することができ、さらには、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低減することができる。すなわち、カーボンブラックの配合量を必要以上に減量することなく、シリカを好適な量で配合することが可能となり、ゴム組成物の低ロス性及び補強性(耐摩耗性)の両立が高いレベルで可能となる。なお、シリカとしては、特に限定されないが、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。
さらに、本発明のトレッド用ゴム組成物においてシリカを配合する場合には、シリカ−ゴム成分間の結合を強化して補強性をさらに高めた上で、シリカの分散性を向上させるために、さらに、シランカップリング剤を用いることが好ましい。本発明のトレッド用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカの配合量に対して20質量%以下が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。シランカップリング剤の含有量がシリカの配合量に対して20質量%を超えると、補強性や分散性を改良する効果が飽和に達し、配合コストが上昇してしまう。なお、シランカップリング剤としては、特に制限されず、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が好適に挙げられる。
本発明のトレッド用ゴム組成物には、天然ゴム及び上記共役ジエン系重合体を含むゴム成分、上記カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のトレッド用ゴム組成物は、上記ゴム成分に、上記カーボンブラックと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
[タイヤ]
本発明のタイヤは、上述のトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムとして用いたことを特徴とし、重荷重用タイヤとして特に好適である。本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドゴムとして用いているため、耐摩耗性、耐テアー性及び転がり抵抗が高度にバランスされている。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッドに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[天然ゴムB(部分脱タンパク処理した天然ゴム)の製造例]
アンモニア0.4質量%を添加した天然ゴムラテックス(CT−1)を、ラテックスセパレーターSLP−3000(斉藤遠心機工業製)を用いて回転数7500rpmで15分間遠心分離することにより濃縮した。さらに、濃縮したラテックスを回転数7500rpmで15分間遠心分離した。得られた濃縮ラテックスを固形分として約20%に希釈した後、蟻酸を添加し、一晩放置後、凝固して得られたゴム分を、110℃で210分間乾燥し、部分脱タンパク処理した天然ゴム(天然ゴムB)を製造した。得られた天然ゴムBの総窒素含有量は、ケルダール法によって測定したところ、0.15質量%であった。
[変性ポリブタジエンゴム(HMI-BR)の製造例]
乾燥し、窒素置換した約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエン50g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン0.513mmolを加え、さらにn-ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を具えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、この重合反応系に、変性剤(カップリング剤)として四塩化スズ0.100mmolを速やかに加え、さらに50℃で30分間攪拌して変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、さらに常法に従って乾燥して変性ポリブタジエンゴム(HMI-BR)を得た。得られたHMI-BRは、ブタジエン部分のビニル結合量が14%で、ガラス転移温度(Tg)が‐95℃で、カップリング効率が65%であった。
なお、得られたHMI-BRについて、1H-NMRスペクトルの積分比からブタジエン部分のビニル結合量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布曲線の全体の面積に対する最も高分子量側のピーク面積の割合からカップリング率を、DSCの曲線の変曲点からガラス転移温度を求めた。
[カーボンブラックの製造例]
図1に示すカーボンブラック製造炉1を用いて、カーボンブラックを製造した。ここで、多段冷却媒体導入手段12としては、第1番目の急冷媒体導入手段12−X、第2番目の急冷媒体導入手段12−Y及び最後の急冷媒体導入手段12−Zからなる3段急冷媒体導入手段を用いた。また、製造炉内の温度をモニターするため、任意の数カ所に熱電対を炉内に挿入できる構造を備える上記製造炉を用いた。カーボンブラック製造炉において、燃料には比重0.8622(15℃/4℃)のA重油を用い、原料油としては表1に示した性状の重質油を使用した。また、表2に示すカーボンブラック製造炉の操作条件により、下記に示す物性を備えたカーボンブラックA〜Bを製造した。
得られたカーボンブラックについて、ASTM D2414-88(JIS K6217-97)に準拠してジブチルフタレート(DBP)吸収量を、ASTM D3037-88に準拠して窒素吸着比表面積(N2SA)を、ASTM D3265-88に準拠して比着色力(TINT)を、JIS K6218-97に準拠してトルエン着色透過度を夫々測定した。
Figure 2011089075
Figure 2011089075
次に、上記変性ポリブタジエンゴム及びカーボンブラックを用いて、表3〜4に示す配合処方のゴム組成物を常法に従って調製し、該ゴム組成物をトレッドゴムに適用した、サイズ:11R22.5の重荷重用タイヤを常法に従って試作し、転がり抵抗、耐摩耗性及び耐テアー性を下記の方法で評価した。結果を表3〜4に示す。
《転がり抵抗》
供試タイヤに対し、正規荷重及び内圧の下、80km/hでの転がり抵抗を測定し、比較例1の転がり抵抗を100として指数表示した。指数値が大きい程良好であり、転がり抵抗が小さいことを示す。
《耐摩耗性》
供試タイヤをトラックのドライブ軸に装着して10万km走行した後の摩耗量を測定し、比較例1の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
《耐テアー性》
供試タイヤをトラックのドライブ軸に装着して10万km走行した後のテアーの総長さを測定し、比較例1のテアー総長さの逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、傷の数が少なく、耐テアー性に優れることを示す。
Figure 2011089075
Figure 2011089075
*3:RSS#3
*4:上記製造方法により得られた天然ゴムB
*5:JSR社製、BR01
*6:上記製造方法により得られた変性ポリブタジエンゴム
*7:上記製造方法により得られたカーボンブラックA
*8:上記製造方法により得られたカーボンブラックB
*9:東ソーシリカ社製、ニップシールAQ
*10:信越化学工業(株)社製、ABC−856
*11:三共油化製、A/O MIX、ガラス転移温度−40℃
*12:花王社製、スプレンダーR−400、ガラス転移温度−80℃
*13:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*14:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
表3〜4によれば、天然ゴム及び共役ジエン系重合体からなるゴム成分に、−40℃以下のTgである軟化剤と特定の製法により得られたカーボンブラックとが配合されたゴム組成物を用いた実施例1〜6のタイヤは、優れた転がり抵抗、耐摩耗性及び耐テアー性をバランスよく兼ね備えていることが分かる。なかでも、実施例1と実施例4、又は実施例7と実施例8を比較すれば、共役ジエン系重合体として変性共役ジエン系重合体を採用することで、より優れた効果を発揮できることも明らかである。
また、カーボンブラックにシリカ及びシランカップリング剤を併用したゴム組成物を用いた実施例6と比較例4を比較すれば、カーボンブラックの配合量を減らしてシリカを配合しても、上記軟化剤とゴム成分として好適な変性共役ジエン系重合体との作用により、耐摩耗性及び耐テアー性を充分に確保することができ、さらには、転がり抵抗を大幅に低減できることが分かる。
さらに、実施例6と実施例7を比較すれば、充填剤としてシリカを配合する場合においても、必要以上にカーボンブラックの配合量を減じることなく、同等の効果を保持し得ることも示されている。
1 カーボンブラック製造炉
10 反応室
11 反応継続兼冷却室
12 多段急冷媒体導入手段
12−X 第1番目の急冷媒体導入手段
12−Y 第2番目の急冷媒体導入手段
12−Z 最後の急冷媒体導入手段

Claims (11)

  1. 天然ゴム若しくは天然ゴムと少なくとも一種の共役ジエン系重合体とを含むゴム成分に、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下の軟化剤及びカーボンブラックを含有し、かつ
    該カーボンブラックが、
    燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させた後、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られ、該多段急冷媒体導入手段でのトルエン着色透過度が、下記式(I)及び(II):
    10<X<40 ・・・ (I)
    90<Z<100 ・・・ (II)
    [式中、Xは原料導入位置から第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)で、Zは最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)である]の関係を満たす
    ことを特徴とするトレッド用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分100質量部に対して、前記軟化剤を0.1〜10.0質量部の量で含有することを特徴とする請求項1に記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. 前記共役ジエン系重合体が、少なくとも一つの窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックを60質量部以下の量で含有し、さらにシリカを30質量部以下の量で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  5. さらに、シランカップリング剤を前記シリカに対して20質量%以下の量で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  6. 前記窒素含有官能基が、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基であることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
  7. 前記窒素含有官能基が、下記式(III):
    Figure 2011089075
    [式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である]で表される置換アミノ基、及び下記式(IV):
    Figure 2011089075
    [式中、R2は、3〜16のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す]で表される環状アミノ基で表される環状アミノ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載のトレッド用ゴム組成物。
  8. 前記窒素含有官能基が、ヘキサメチレンイミノ基であることを特徴とする請求項7に記載のトレッド用ゴム組成物。
  9. 前記共役ジエン系重合体が、ポリブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  10. 前記天然ゴムが、天然ゴムラテックス中のタンパク質を機械的分離方法により部分脱タンパク処理してなるラテックスから得られ、該天然ゴムの総窒素含量が0.1質量%を超え0.4質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトレッド用ゴム組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムとして用いたタイヤ。
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