JP2011088335A - 繊維強化複合材料 - Google Patents

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【課題】優れた強度及び耐衝撃性を兼ね備えた繊維強化複合材料を提供することにある。
【解決手段】強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、該強化繊維が、単繊維繊度が10〜45dtex、結晶化度が55〜70%の芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする繊維強化複合材料とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化複合材料に関し、例えば自動車、電車、船舶、航空機などの輸送機械における天井、床、側壁、ボンネット、その他スポーツ用品や日用品等に適した、軽量且つ耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料に関する。
ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維で強化した繊維強化複合材料は、軽量で剛性が高く、また強度も優れているので、スポーツ用品、自動車産業、航空機産業、建材などにおいて幅広く使用されている。例えば、テニスラケットにおいては重量当たりの面積を大きくできることから、またゴルフクラブシャフトにおいては軽量でありかつシャフトの剛性設計自由度が大きく、ゴルファーのレベルに合わせたしなり具合の設計ができるため、このような繊維強化複合材料が好んで用いられている。また、以前から軽量・高剛性のメリットが大きい航空機構造材料や人工衛星やロケットの構造部材としても使用されている。
最近では用途展開が拡がるにつれ、剛性・強度といった特性だけでなく、軽量かつ耐衝撃性を高めた材料が求められている。しかしながら、ガラス繊維強化複合材料は、無機繊維の中でも比較的高重量であるため大型化には限界があり、衝撃に対して脆くクラック伝播をおこして完全破壊に到りやすい。また、炭素繊維強化複合材料は、強化繊維の弾性が高いため材料が割れ易く、破壊に至った際に材料が飛散する等の問題点がある。
かかる事情より、耐衝撃性を改良した繊維強化複合材料として、ハニカム構造体の両面に繊維強化複合材を配置した積層構造体(特許文献1)や、金属板と繊維強化樹脂組成物が発泡樹脂組成物を介して接合されている金属樹脂複合構造体(特許文献2)が提案されているが、これら手法によれば耐衝撃性の一定の改善が認められるものの、その性能は十分ではない。
一方、芳香族ポリアミド繊維や超高分子量ポリエチレン繊維などの高強度、高弾性率の有機高分子繊維を補強材とする繊維強化複合材料は、耐衝撃性が優れているものの、剛性が不足しており、用途が著しく限定されている。そこで、有機繊維にガラス繊維を併用した複合材料を用いることが考えられるが、それでも、有機繊維の持つ軽量性の特徴が生かされず、剛性も低下することになる。このため、軽量性を保持しながら、耐衝撃性と剛性も兼ね備えた繊維強化複合材料が望まれている。
特開2007−215328号公報 特開2007−196545号公報
本発明の目的は、上述した従来技術における問題点に鑑み、有機繊維が本来持つ軽量性を損なうことなく、剛性と耐衝撃性を兼ね備えた繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、該強化繊維が、単繊維繊度が10〜45dtex、結晶化度が55〜70%の芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする繊維強化複合材料により上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明の繊維強化複合材料は、繊維繊度が10〜45dtex、結晶化度が55〜70%の芳香族ポリアミド繊維により補強されていることによって、軽量で、しかも優れた剛性及び耐衝撃性とを同時に兼ね備えている。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、該強化繊維が、芳香族ポリアミド繊維である。
本発明の構成する芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸などを、カルボキシル基とアミノ基とが略等モルとなる割合で重縮合して得られるもので、かつ延鎖結合が共軸又は平行であり且つ反対方向に向いているポリアミドである。本発明においては、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましく、さらに具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維等を例示することができ、特に共重合型である後者は、複合材料とした時の機械的強度、特に衝撃強度が高く好ましい。
本発明においては、上記の芳香族ポリアミド繊維が、単繊維繊度が10〜45dtex、結晶化度が55〜70%のであることが肝要である。これにより、剛性と耐衝撃性を同時に兼ね備えた複合材料とするができる。以下、さらに詳細に述べる。
本発明においては、芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度は10〜45dtexとする。複合材料の剛性を高くしようとすれば、一般にはこれを補強する繊維に、高倍率で延伸した単繊維繊度が5dtex以下の高強度、高弾性率繊維を採用することが考えられる。しかし、われわれが検討を行った結果、単繊維繊度を10dtexよりも細くすると、複合材料としたときの剛性が小さくなるだけでなく、例えば、一方向強化プリプレグを作製する時に糸条を開繊させる場合や、樹脂含浸性を良くするため扁平化した糸条で織物を成形する場合、わずかな負荷でも繊維が毛羽立ちや単糸切れが発生したり、開繊性が低下したりするため、著しく成形性を阻害することがわかった。一方、単繊維繊度45dtexよりも太くなると、同じ総重量の繊維を用いた場合、複合材料内の繊維構成本数が少なくなるため繊維補強部分が不均一になり、部分的に十分な補強効果を得られなくなる。また、従来、このように太い単繊維繊度を有する芳香族ポリアミド繊維は一般的でなく、ましてや複合材料用途の応用することは提案されていないのが実情である。
さらに本発明においては、芳香族ポリアミド繊維の結晶化度を55〜70%、好ましくは57〜63%とする必要がある。結晶化度が55%よりも小さいと、繊維が軟らかすぎて十分な補強効果が得ることができない。一方、結晶化度が70%より大きいと、繊維が硬く脆くなり割れてしまい、耐衝撃性に劣る。
本発明において、上記繊度と結晶化度を同時に有する芳香族ポリアミド繊維は、芳香族ポリアミドポリマーを溶媒に溶解したドープを、紡糸口金から吐出し、エアーギャップを介して溶媒水溶液中に紡出し、その後、さらに複数槽の濃度勾配を設けた脱溶媒槽で脱溶媒した後、1.2〜1.4倍に延伸させながら乾燥し、次いで、450〜550℃で8〜15倍に延伸した後、巻き取ることにより製造することができる。
本発明において、強化繊維は、長繊維フィラメントまたは短繊維からなる繊維構造体の形状を有していることが好ましい。特に長繊維フィラメントとして用いる場合は、強化繊維の強度を十分に活用することができる点で好ましく、無撚のマルチフィラメントを用いることが好ましい。一方、補強形態によっては、短繊維として用いる方が適している場合もある。
長繊維フィラメントとして用いる場合は、繊維構造体は、織物、不織布、編物、一方向に引き揃えられた繊維集合体であることが好ましい。たとえば、織物の場合は、平織、平織バスケット織、綾織、朱子織、簾織、あるいは3軸織、4軸織、あるいは3次元織など何れのものであってもかまわない。また、不織布の場合は、ニードルパンチ不織布、ウォータージェットパンチ不織布、スパンボンド不織布などを使用することができる。
一方、短繊維として用いる場合は、繊維構造体は、不織布、紙、あるいは紡績糸として、織物、不織布、編物、一方向に引き揃えられた繊維集合体として用いることができる。織物および不織布の種類としは、上記長繊維フィラメントと同様のものを採用することができる。
上記繊維構造体は、多層積層して用いられるのが一般的である。繊維構造体の厚みは、特に限定されるものではなく、通常0.1〜2mmである。また該繊維構造体の目付については100g/m未満のものを用いた場合は、必要な剛性を持たせるために積層枚数を多くしなければならず、そのため工程数が多くなって作業性が悪くなる。一方目付が500g/mを越える場合は、布帛が嵩高くなって樹脂含浸性が悪くなる。従って上記繊維構造体の目付は100〜500g/mの範囲のものが好ましい。
繊維強化複合材料における繊維含有体積比率Vfは40〜90%が好ましく、50〜80%がより好ましい。Vfが90%を越えると層間の密着力が弱くプレス成形機からの取り出しなどの取り扱い時あるいは切断等の二次加工の際に、はく離が生じるおそれがある。一方、Vfが40%未満ではプレスによる成形で繊維構造体から樹脂が流出し実質的に40%と変わらない結果となる。
一方、本発明に用いるマトリックス樹脂は、熱硬化樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもかまわない。
上記熱硬化性樹脂には特に制限はなく、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは共重合体、変性体、あるいは2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。
上記熱可塑性樹脂においても特に制限はなく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂、上記のエラストマー樹脂等が挙げられる。これらは同様に共重合体、変性体、あるいは2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。
また、上記の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂は複合してもよい。あるいは上記樹脂中に、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、平滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤、抗菌剤、顔料、導電剤、シランカップリング剤、無機系コーティング剤など機能剤を包含していても良い。
以上に説明した本発明の繊維強化複合材料の製造方法としては、ハンドレイアップ法、圧縮成形法などを公知の方法を採用することができ、目的とする形状や、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂といったマトリックス樹脂の種類に応じて最適な成形方法を適用すれば良い。特に圧縮成形法が好ましく、繊維表面に付着した接着剤成分との化学結合を促進させ、強化繊維、特に織物や不織布などの布帛や一方向に引き揃えた繊維集合体とマトリックス樹脂との接着性向上をより効果的に発現させることができる。
さらに、具体的には強化繊維からなる繊維構造体に前記樹脂を含浸、塗布またはラミネートしたシート状プリプレグを用い、積層成形した積層板とすることができる。この際、積層板は、プリプレグを内部に含まれる強化繊維の向きが互いに直交するようにして積層して構成することができる。熱硬化性樹脂の場合、前記強化繊維に熱硬化性樹脂を溶剤に溶解した樹脂組成物を調製し、それを含浸又は塗布後、バーコーターやクリアランスロールなどを用いて余分な樹脂組成物を掻き取ってプリプレグを作製し、このプリプレグを複数枚重ねて積層板とし、加熱加圧する圧縮成形法、あるいはプリプレグを作らないハンドレイアップ法などがある。
一方、熱可塑性樹脂の場合、強化繊維と熱可塑性樹脂フィルムとを交互に複数枚重ね合わせて加熱、加圧する圧縮成形法や、樹脂を予め溶融しておき、その樹脂を強化繊維に付着させる方法も採用することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維である芳香族ポリアミド繊維に太繊度でありながら結晶化度を向上させた繊維を用いることにより、複合材料を目的の用途で使用する際に受ける外力によっても単繊維が変形しにくいため、強化繊維とマトリックス樹脂との密着が維持され、それにより機械的強度が高く、且つ耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料を提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は下記の通りである。
(1)補強用繊維の結晶化度
広角X線回折法にて、Bruker AXS製X線回折装置(D8 DISCOVER with RAD−3a RU−300 GADDS Super Speed)を用い、Cu−Kα線での散乱強度を測定し、次式で結晶化度を計算した。
結晶化度=結晶部の散乱強度/全散乱強度×100(%)
(2)繊維強化複合材料の曲げ弾性率
JIS K 7171に準拠し、厚さ2mm、長さ60mm、幅15mmの試験片を用いて、支点間距離48mmでの3点曲げにて測定した。
(3)繊維強化複合材料の衝撃強度
JIS K 7111に準拠し、厚さ2mm、長さ80mm、幅10mmの試験片を用いて測定した。
[実施例1]
紡糸用のドープは、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(共重合モル比が1:1の全芳香族ポリアミド)の濃度6重量%のNMP溶液を用いた。得られたドープを用い、孔数200ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し、その後、15槽かつ濃度勾配が10%〜0.001重量%の脱溶媒槽で脱溶媒した後、1.3倍に延伸させながら乾燥し、次いで、温度500℃下で10倍に延伸した後、巻き取ることにより、結晶化度が70%、単繊維繊度が10dtexのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を得た。得られた繊維を用い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン系硬化剤を混合して塗付した離型紙(樹脂目付40g/m)をあらかじめ巻きつけておいたドラムワインダーに、繊維目付が100g/mとなるように巻きつけた。さらに繊維の上から前記エポキシ樹脂を塗布した離型紙を貼り合せて一方向引き揃えシート(以下、UDシート)を作成し、このUDシートを真空下、温度90℃、圧力5kg/cmで5分間加熱加圧加工を行い、プリプレグシートとした。さらに前記プリプレグシート表裏面の離型紙を剥離した後、所定の大きさにカットして17枚積層し、真空下、温度130℃、圧力5kg/cmで2時間加熱加圧加工を行い、厚さ2mm、Vf60%の繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、前記(2)、(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。
[実施例2]
得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度が45dtexとなる以外は、実施例1と同様に実施し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、前記(2)、(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。なお、単繊維繊度は、口金からのポリマー吐出量を実施例1より増加させることにより調整した。
[比較例1]
製糸において延伸倍率を10倍から5倍に変更した以外は、実施例1と同様に実施し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、前記(2)、(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。なお、単繊維繊度は、延伸倍率に合わせて口金からのポリマー吐出量を実施例1より減少させて調整した。
[比較例2]
得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度が45dtexとなる以外は、比較例1と同様に実施し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、前記(2)、(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。なお、単繊維繊度は、口金からのポリマー吐出量を比較例1より増加させて調整した。
[比較例3]
得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度が1.7dtexとし、脱溶媒した後に延伸せず乾燥した以外は、実施例1と同様に実施し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、前記(2)、(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。なお、単繊維繊度は、口金からのポリマー吐出量を実施例1より減少させて調整した。
Figure 2011088335
本発明の耐衝撃性複合材料は、高い強度と優れた耐衝撃性とを兼備し、例えば自動車、電車、船舶、航空機などの輸送機械における天井、床、側壁、ボンネット、その他スポーツ用品や日用品等広範な用途に用いることができる。

Claims (5)

  1. 強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、該強化繊維が、単繊維繊度が10〜45dtex、結晶化度が55〜70%の芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする繊維強化複合材料。
  2. 繊維強化複合材料において、強化繊維が、繊維構造体の形状で存在する請求項1記載の繊維強化複合材料。
  3. 繊維構造体が、織物、不織布、紙、編物、または、一方向に引き揃えられた長繊維集合体である請求項2に記載の繊維強化複合材料。
  4. 芳香族ポリアミド繊維がパラ型芳香族ポリアミドである請求項1記載の繊維強化複合材料。
  5. パラ型芳香族ポリアミド繊維が、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維である請求項4に記載の繊維強化複合材料。
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