JP2011088058A - アスベストの無害化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】省エネルギー型のアスベスト無害化方法を提供する。
【解決手段】アスベスト無害化方法は、アスベストと塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化して得られる炭素質物質とを混合し、次いで加熱焼成することを特徴とする。
【選択図】図11
【解決手段】アスベスト無害化方法は、アスベストと塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化して得られる炭素質物質とを混合し、次いで加熱焼成することを特徴とする。
【選択図】図11
Description
本発明は、アスベストの無害化方法に関する。本発明方法は、省エネルギー型のアスベスト無害化方法であり、具体的には、アスベストと塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化することによって得られる炭素質物質とを混合し、次いで比較的低温下で加熱焼成することにより、アスベストを無害化できる。
アスベストは、「石綿」ともいい、天然に産出する繊維状ケイ酸塩鉱物の総称であり、一般にクリソタイル〔白石綿:Mg6Si4O10(OH)8〕やアモサイト〔褐石綿:(Fe,Mg)7Si8O22(OH)2〕などの種類がある。このアスベストは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、及び電気絶縁性等の性質があるため、建設資材、電気製品、自動車、又は家庭用品などの分野で幅広く利用されてきた。
アスベストは、前記のような優れた性質を有するものの、微細なガラス状繊維であり、1本当たり人間の髪の毛の1/5000程度の細さである。空気中のアスベストは微量であれば問題ではないが、高濃度のアスベストが飛散する環境下で長期にわたって特定の作業者や住民がアスベストを大量に吸い込むことが問題となる。すなわち、アスベスト粉塵を人が吸い込むと、いわゆる「ミクロの針」が肺細胞に刺さり、このような状態が続くことにより、石綿肺、肺癌、又は悪性中皮腫などの重大な疾病が引き起こされる。このため、種々の法律などで予防や飛散防止等が規制されており、大量アスベストの吸入防止措置が図られている。特に、2004年10月以降は、労働安全衛生法により、限られた用途以外での輸入及び使用が禁止されている。
しかしながら、日本における輸入アスベストの約9割は建設資材に使用されていたので、アスベスト含有建築資材を用いた建造物の解体作業中に、アスベストが大量に飛散することが今後の問題となっている。このような建築物解体によるアスベストの排出は、2020年から2040年頃にピークを迎えることが予測されており、今後の解体において、作業員のみでなく、建築物周辺の住民の健康への影響も懸念されている。
アスベストの廃棄処理は、産業廃棄物として埋立てする方法があるが、埋立て地に限界があるため、アスベストそれ自体を無害化する処理方法が提案されている。無害化とは、アスベストを溶融して非繊維化することにより、人体に取り込んだ場合に、中皮腫や肺ガンの原因物質とならないようにすることである。アスベストを溶融するには、例えば、クリソタイルの融点(1521℃)以上の温度で加熱することが必要であるが、省エネルギーの観点から、低温下での加熱処理が種々提案されている。
例えば、添加剤を用いずに、密閉型電気炉内でアスベストを1500℃程度で溶解する無害化処理方法(特許文献1)のような高温処理技術の他に、排水処理汚泥の脱水ケーキをアスベストと混合することによって得られる融点降下を利用して、1100℃程度で加熱処理して無害化する方法(特許文献2)も提案されているが、後者の方法でも、省エネルギー型とは言いがたい。
更に低温化する技術としては、例えば、フロン分解物を利用してアスベストを無害化する方法が提案されており、この方法によれば、約550℃での加熱処理による無害化が可能であるとされている(特許文献3)。しかしながら、フロン分解物の調製原料であるクロロフルオロカーボン(CFC)は1995年末に既に全廃されており、又はイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)についても2020年には実質的に全廃が決定しているため、今後大量に排出されるアスベスト発生量と、使用禁止されたフロン発生量のバランスがとれず、フロンを使用する前記方法は、実用化の観点からは問題がある。
一方、塩化ビニル樹脂壁紙の廃材についてもまた、再利用方法の開発が強く求められている。
この塩化ビニル樹脂壁紙は、塩化ビニル樹脂に可塑剤、安定剤、顔料及び石灰石粉末を加えて調製した樹脂組成物を裏紙(ベース紙)に塗布して製造される。この塩化ビニル樹脂壁紙は、建築物の内装用壁紙として優れた特性を有することから、壁紙の全出荷量の約90%を占めている。
塩化ビニル系樹脂は、前記の内装用壁紙に利用されているだけでなく、その代表的な用途を挙げるだけでも、例えば、各種パイプ及び継手、建材等の異形製品、波板や平板を含む板材、硬質あるいは軟質フィルム・シート、電線被覆材、床材、及び人造レザー等の配合品などがあり、広範に利用されているので、それらの廃材も多量に発生する。しかしながら、塩化ビニル系樹脂廃材を焼却処理すると、腐食性の塩化水素ガスが発生して焼却炉が損傷されやすく、場合によりダイオキシン類等の含塩素有害ガスが発生するおそれもある。また、燃焼ガス中の塩化水素を希塩酸として回収しても利用価値がなく、中和処理して放流するにも中和剤や希釈水のコストがかかる。
この塩化ビニル樹脂壁紙は、塩化ビニル樹脂に可塑剤、安定剤、顔料及び石灰石粉末を加えて調製した樹脂組成物を裏紙(ベース紙)に塗布して製造される。この塩化ビニル樹脂壁紙は、建築物の内装用壁紙として優れた特性を有することから、壁紙の全出荷量の約90%を占めている。
塩化ビニル系樹脂は、前記の内装用壁紙に利用されているだけでなく、その代表的な用途を挙げるだけでも、例えば、各種パイプ及び継手、建材等の異形製品、波板や平板を含む板材、硬質あるいは軟質フィルム・シート、電線被覆材、床材、及び人造レザー等の配合品などがあり、広範に利用されているので、それらの廃材も多量に発生する。しかしながら、塩化ビニル系樹脂廃材を焼却処理すると、腐食性の塩化水素ガスが発生して焼却炉が損傷されやすく、場合によりダイオキシン類等の含塩素有害ガスが発生するおそれもある。また、燃焼ガス中の塩化水素を希塩酸として回収しても利用価値がなく、中和処理して放流するにも中和剤や希釈水のコストがかかる。
本発明者は、前記の塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化して得られる炭素質物質を、アスベストの無害化熱処理に添加剤として利用すると、低温下での無害化処理が可能になることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明の課題は、建築物内装用塩化ビニル樹脂壁紙の廃材を炭化することよって得られる炭素質物質を、アスベストの無害化熱処理の添加剤として用いることにより、アスベストの無害化熱処理における熱処理温度を低下させ、アスベスト無害化処理の省エネルギー化と塩化ビニル樹脂壁紙廃材の再利用との2つの問題点を同時に解決することができる手段を提供することにある。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明の課題は、建築物内装用塩化ビニル樹脂壁紙の廃材を炭化することよって得られる炭素質物質を、アスベストの無害化熱処理の添加剤として用いることにより、アスベストの無害化熱処理における熱処理温度を低下させ、アスベスト無害化処理の省エネルギー化と塩化ビニル樹脂壁紙廃材の再利用との2つの問題点を同時に解決することができる手段を提供することにある。
前記の課題は、本発明により、アスベストと塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化して得られる炭素質物質とを混合し、次いでこの混合物を焼成することを特徴とする、アスベストの無害化方法によって解決することができる。
本発明によるアスベストの無害化方法の好ましい態様によれば、アスベストと前記炭素質物質との混合物を500℃以上で焼成する。
本発明方法によれば、アスベストと、塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化することによって得られる炭素質物質とを混合し、この混合物を比較的低温下で焼成することによって、アスベストを無害化することができるので、省エネルギー型のアスベスト無害化方法を提供することができる。
また、本発明方法では、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として利用するので、大量発生が問題となっている塩化ビニル樹脂壁紙廃材の有効な再利用方法を提供することができる。
また、本発明方法では、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として利用するので、大量発生が問題となっている塩化ビニル樹脂壁紙廃材の有効な再利用方法を提供することができる。
以下、本発明によるアスベスト無害化方法を説明する。
本発明のアスベスト無害化方法は、アスベストと、塩化ビニル樹脂壁紙の廃材を炭化することによって得られる炭素質物質とを混合し、次いでこの混合物を加熱焼成することにより行われる。
本発明のアスベスト無害化方法は、アスベストと、塩化ビニル樹脂壁紙の廃材を炭化することによって得られる炭素質物質とを混合し、次いでこの混合物を加熱焼成することにより行われる。
ここで、「アスベストの無害化」とは、形態的には、微細繊維状アスベストを処理することにより、人体に取り込んだ場合に微細繊維状アスベストが細胞に突き刺さって発生する中皮腫や肺ガンの原因物質とならない形態(すなわち、非微細繊維状)に変化させることを意味する。形態的な無害化は、顕微鏡(特に、走査型電子顕微鏡)による観察で確認することができる。
また、化学的には、アスベストの主成分であるケイ酸マグネシウムが焼成処理により分解され、ケイ素とマグネシウムとの結合が切断されたことを確認することによって、完全な無害化を確認することができる。前記の切断は、例えば、X線回折測定によって確認することができる。
本発明方法における「アスベストの無害化」は、前記の化学的な完全無害化を含むことは勿論のこと、ケイ素とマグネシウムとの結合が未切断状態であっても、微細繊維状アスベストが相互に融着して微細繊維状アスベストが消失し、形態的に非微細繊維状に変化した状態も含む。
また、化学的には、アスベストの主成分であるケイ酸マグネシウムが焼成処理により分解され、ケイ素とマグネシウムとの結合が切断されたことを確認することによって、完全な無害化を確認することができる。前記の切断は、例えば、X線回折測定によって確認することができる。
本発明方法における「アスベストの無害化」は、前記の化学的な完全無害化を含むことは勿論のこと、ケイ素とマグネシウムとの結合が未切断状態であっても、微細繊維状アスベストが相互に融着して微細繊維状アスベストが消失し、形態的に非微細繊維状に変化した状態も含む。
本発明方法による無害化処理の対象となるアスベストは、特に限定されず、任意のアスベストを対象とすることができ、例えば、クリソタイル、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、又はアクチノライトを挙げることができる。また、アスベストを構成材料として製造された各種の加工品、すなわち、アスベスト含有物質も無害化処理の対象とすることが可能である。ここで、アスベスト含有物質とは、例えば、アスベストを含んだスレート板、屋根瓦、水道管、自動車のブレーキ、アセチレンボンベの充填材、あるいは耐火被覆材等を意味する。
本発明方法においては、アスベストの無害化処理の添加剤として、建築物内装用塩化ビニル樹脂壁紙の廃材を炭化することによって得られる炭素質物質を用いる。ここで、建築物内装用塩化ビニル樹脂壁紙とは、塩化ビニル樹脂に、可塑剤、安定剤、光遮蔽材、及び粉末充填材を加えて調製した樹脂組成物を裏紙(ベース紙)に塗布して製造され、建築物の内装用として使用される壁紙を意味する。また、その廃材とは、壁紙として実際に使用されたか否かとは関係なく、廃棄対象となった壁紙材料を意味し、例えば、メーカーで規格外品として発生する廃材、ビルや住宅等でのリフォーム又は解体の際に発生する廃材、あるいはビルや住宅等の新築現場で端材として発生する廃材が含まれる。
前記壁紙の標準的組成は、塩化ビニル樹脂20〜40質量%、可塑剤(例えば、フタル酸エステル系可塑剤)10〜20質量%、安定剤(例えば、ステアリン酸カルシウムなどのカルシウム系安定剤)1〜2質量%、光遮蔽材(例えば、二酸化チタン光遮蔽材)2〜10質量%、粉末充填材(例えば、炭酸カルシウム粉末充填材)15〜35質量%、及び裏紙20〜30質量%である。
前記廃材を炭化して炭素質物質とする前に、加熱炉への安定供給と均一加熱を図るため、破砕しておくことが好ましい。破砕処理後の廃材の大きさが、破片の長径として、好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下となるように処理する。
続いて、場合により破砕した廃材を、加熱炉、例えば、回転炉、固定床炉、又は流動床炉などを使用して、400℃以上で炭化する。炭化温度の上限は特に限定されないが、例えば、500℃程度の炭化で十分である。なお、炭化は実質的に不活性なガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、酸化反応に関して不活性なガス、例えば、窒素ガスを用いることができる。なお、「実質的に」とは、前記不活性ガス雰囲気において、2容量%以下の酸素の混入を許容することができることを意味する。加熱炉としては、外熱型回転炉を用いることが好ましい。外熱型回転炉を使用した場合、炭化速度は伝熱速度律速であり、平均滞留時間としておおよそ1〜2時間となる。なお、炭素質物質の温度が設定温度に到達した時点で炭化は完了している。
400〜600℃での炭化により得られる炭素質物質の組成は、炭化物25〜35質量%、二酸化チタン5〜15質量%、塩化カルシウム25〜55質量%、炭酸カルシウム13〜25質量%、その他2〜5質量%である。
ここで、炭化反応について詳述する。
炭化炉に装入された廃材が加熱され、200℃から350℃になると、廃材中の塩化ビニル樹脂から塩化水素が脱離する。脱離した塩化水素の約75%は廃材中の炭酸カルシウムと反応し、塩化カルシウムとなって固定される。塩化水素が脱離した塩化ビニル樹脂由来のピッチ状物質は可塑剤と共に溶融して裏紙に含浸され一体化する。300℃から500℃にかけては熱分解と縮重合が進行し、多環炭化水素化合物が生成する。最終的に、450〜800℃の範囲で粉粒状の炭素質物質となる。この炭素質物質には塩化カルシウム、炭酸カルシウム及び二酸化チタンなどの無機物が含有されている。
炭化炉に装入された廃材が加熱され、200℃から350℃になると、廃材中の塩化ビニル樹脂から塩化水素が脱離する。脱離した塩化水素の約75%は廃材中の炭酸カルシウムと反応し、塩化カルシウムとなって固定される。塩化水素が脱離した塩化ビニル樹脂由来のピッチ状物質は可塑剤と共に溶融して裏紙に含浸され一体化する。300℃から500℃にかけては熱分解と縮重合が進行し、多環炭化水素化合物が生成する。最終的に、450〜800℃の範囲で粉粒状の炭素質物質となる。この炭素質物質には塩化カルシウム、炭酸カルシウム及び二酸化チタンなどの無機物が含有されている。
本発明方法では、まずアスベストと前記の炭化方法によって調製された炭素質物質とを混合する。アスベスト(A)と炭素質物質(B)との混合比率(A/B:質量比)は、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.2〜0.3である。混合比率(A/B)が0.1未満であると炭素質物質を不必要に消費し、0.4を超えるとアスベストの無害化が不十分となる。
アスベストと炭素質物質との混合は、両者を充分に混合させるために、例えば混練することが好ましい。混練は、例えば、オムニミキサーなどを用いて行うことができる。
アスベストと炭素質物質との混合は、両者を充分に混合させるために、例えば混練することが好ましい。混練は、例えば、オムニミキサーなどを用いて行うことができる。
次いで、加熱炉、例えば、回転炉、固定床炉、又は流動床炉などを使用し、アスベストと炭素質物質との混合物を、500℃以上(好ましくは550℃以上)で、酸化雰囲気下焼成する。500℃未満の温度では、アスベストを充分に無害化することができない。一方、アスベストの無害化の観点では焼成温度の上限は特に限定されないが、エネルギー効率の観点から、例えば、800℃を超える温度で焼成する必要はない。焼成炉としては、回転式加熱炉を用いることが好ましい。焼成処理は、無害化を確認することによって終了することができる。無害化の確認は、前記の通り、形態的又は化学的に行うことができる。
[作用]
本発明方法において、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として用いることによって、省エネルギー型のアスベスト無害化方法が実現する理由は現在のところ解明されたわけではないが、以下のように推定することができる。
アスベストの融点は、前記の通り1500℃以上であるので、アスベストの溶融分解のためには、非常に高い加熱温度を必要とする。しかしながら、アスベストを加熱する際に、カルシウム化合物が存在すると、アスベストの分解温度が低下することが知られている。
本発明方法では、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として用いるので、前記炭素質物質は、カルシウム化合物として炭酸カルシウムと塩化カルシウムとを含有している。
アスベストの溶融分解反応において、カルシウム化合物として炭酸カルシウムを添加すると、アスベストの分解温度は1300℃程度へ低下する。融点降下の程度が小さいのは、アスベストと炭酸カルシウムから生成する酸化カルシウムとが1300℃程度ではいずれも固体であり、固相反応となるためである。
本発明方法において、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として用いることによって、省エネルギー型のアスベスト無害化方法が実現する理由は現在のところ解明されたわけではないが、以下のように推定することができる。
アスベストの融点は、前記の通り1500℃以上であるので、アスベストの溶融分解のためには、非常に高い加熱温度を必要とする。しかしながら、アスベストを加熱する際に、カルシウム化合物が存在すると、アスベストの分解温度が低下することが知られている。
本発明方法では、塩化ビニル樹脂壁紙廃材から得られる炭素質物質を添加剤として用いるので、前記炭素質物質は、カルシウム化合物として炭酸カルシウムと塩化カルシウムとを含有している。
アスベストの溶融分解反応において、カルシウム化合物として炭酸カルシウムを添加すると、アスベストの分解温度は1300℃程度へ低下する。融点降下の程度が小さいのは、アスベストと炭酸カルシウムから生成する酸化カルシウムとが1300℃程度ではいずれも固体であり、固相反応となるためである。
一方、炭酸カルシウムに加えて、塩化カルシウムを添加すると、アスベストの分解が約500℃において開始されるものと考えられる。これは、塩化カルシウムの融点が787℃であるため、塩化カルシウム自体の融点降下から、約500℃においても塩化カルシウムの一部が軟化して、焼成反応が固相反応から固液反応様に変化するためと考えられる。
更に、前記炭素質物質は炭素源を有しているため、この炭素源が焼成炉内で燃焼源となり、外部から供給される熱に加えて、内部から熱エネルギーが供給されるため、一層効率的に焼成が促進される。
なお、本発明方法の原理は、上記の推論によって限定されるものではない。
更に、前記炭素質物質は炭素源を有しているため、この炭素源が焼成炉内で燃焼源となり、外部から供給される熱に加えて、内部から熱エネルギーが供給されるため、一層効率的に焼成が促進される。
なお、本発明方法の原理は、上記の推論によって限定されるものではない。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(1)炭素質物質の調製
炭素質物質の出発原料となる廃材としては、内装用塩化ビニル樹脂壁紙の施工端材を40mm以下に破砕して用いた。前記施工端材の組成は、塩化ビニル樹脂32質量%、フタル酸エステル系可塑剤16質量%、カルシウム系安定剤2質量%、二酸化チタン光遮蔽材4質量%、炭酸カルシウム粉末充填材25質量%、及び裏紙21質量%であった。
あらかじめ窒素で置換し、600℃に加熱された炭化炉に前記施工端材の破砕物を、20kg/hで連続投入し、滞留時間1時間で取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物(炭素質物質)の収量は9.5kg/hであり、その形状は15mm以下の粉粒状であった。
炭素質物質の出発原料となる廃材としては、内装用塩化ビニル樹脂壁紙の施工端材を40mm以下に破砕して用いた。前記施工端材の組成は、塩化ビニル樹脂32質量%、フタル酸エステル系可塑剤16質量%、カルシウム系安定剤2質量%、二酸化チタン光遮蔽材4質量%、炭酸カルシウム粉末充填材25質量%、及び裏紙21質量%であった。
あらかじめ窒素で置換し、600℃に加熱された炭化炉に前記施工端材の破砕物を、20kg/hで連続投入し、滞留時間1時間で取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物(炭素質物質)の収量は9.5kg/hであり、その形状は15mm以下の粉粒状であった。
得られた炭素質物質の質量組成は以下の通りであった。
炭化物:28%
二酸化チタン:8%
塩化カルシウム:45%
炭酸カルシウム:13%
その他:6%
炭化物:28%
二酸化チタン:8%
塩化カルシウム:45%
炭酸カルシウム:13%
その他:6%
(2)アスベストの加熱処理
アスベストとしては、クリソタイル(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
前記アスベスト2gと前記工程(1)で調製した炭素質物質10gとを乳鉢により混練した。
焼成炉として、外熱式管状炉(内径=60mm;材質=石英;加熱源=電熱)を用い、前記混練物を石英ボートに入れ、大気中で所定温度(500℃から800℃まで100℃きざみの各温度)に設定した炉内で、1時間焼成した。焼成後に、走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線回折測定により、得られた焼成物の評価を行った。
アスベストとしては、クリソタイル(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
前記アスベスト2gと前記工程(1)で調製した炭素質物質10gとを乳鉢により混練した。
焼成炉として、外熱式管状炉(内径=60mm;材質=石英;加熱源=電熱)を用い、前記混練物を石英ボートに入れ、大気中で所定温度(500℃から800℃まで100℃きざみの各温度)に設定した炉内で、1時間焼成した。焼成後に、走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線回折測定により、得られた焼成物の評価を行った。
(3)走査型電子顕微鏡によるアスベスト焼成物の形態観察
(a)加熱処理実施前
乳鉢で混練する前のアスベスト試料を、倍率500倍で観察した場合の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示し、倍率5000倍で観察した場合のSEM写真を図2に示す。
図1及び図2に示すように、加熱処理実施前のアスベストは、微細繊維が集合して、繊維束を形成していた。
(a)加熱処理実施前
乳鉢で混練する前のアスベスト試料を、倍率500倍で観察した場合の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示し、倍率5000倍で観察した場合のSEM写真を図2に示す。
図1及び図2に示すように、加熱処理実施前のアスベストは、微細繊維が集合して、繊維束を形成していた。
(b)500℃での加熱処理
前記炭素質物質の存在下で500℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図3に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図4に示す。
図3及び図4に示すように、アスベスト微細繊維の表面に炭酸カルシウム等が融着すると共に、アスベストの微細繊維が相互に融着して繊維径の太い繊維束が形成され、アスベストの微細繊維の消失が観察された。
前記炭素質物質の存在下で500℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図3に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図4に示す。
図3及び図4に示すように、アスベスト微細繊維の表面に炭酸カルシウム等が融着すると共に、アスベストの微細繊維が相互に融着して繊維径の太い繊維束が形成され、アスベストの微細繊維の消失が観察された。
(c)600℃での加熱処理
前記炭素質物質の存在下で600℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図5に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図6に示す。
図5及び図6に示すように、焼成物中にはアスベストの微細繊維は観察されなかった。すなわち、600℃での加熱処理によって、アスベストを無害化することができた。
前記炭素質物質の存在下で600℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図5に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図6に示す。
図5及び図6に示すように、焼成物中にはアスベストの微細繊維は観察されなかった。すなわち、600℃での加熱処理によって、アスベストを無害化することができた。
(d)700℃及び800℃での加熱処理
前記炭素質物質の存在下で700℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図7に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図8に示す。
更に、前記炭素質物質の存在下で800℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図9に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図10に示す。
図7〜図10に示すように、焼成物中にはアスベストの微細繊維は観察されなかった。すなわち、700℃及び800℃での加熱処理によって、アスベストを無害化することができた。
前記炭素質物質の存在下で700℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図7に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図8に示す。
更に、前記炭素質物質の存在下で800℃にてアスベストを加熱処理して得た焼成物を、倍率500倍で観察したSEM写真を図9に示し、倍率5000倍で観察したSEM写真を図10に示す。
図7〜図10に示すように、焼成物中にはアスベストの微細繊維は観察されなかった。すなわち、700℃及び800℃での加熱処理によって、アスベストを無害化することができた。
(4)X線回折測定
クリソタイル試料、及び500℃、600℃、700℃、800℃でクリソタイルを無害化処理して得られた焼成物のX線回折図を図11に示す。なお、図11において、各曲線は、相互比較を容易にするために回折強度に関して平行移動して図示してある。
図11において、クリソタイルのピークa(2θ=約12°)及びピークb(2θ=約25°)が、それぞれMg−Si結合の存在を示しているのに対し、焼成物では、それらのピークがいずれも消失している。更に焼成物では、MgOの存在を示すピークc(2θ=約43°)及びピークd(2θ=約62°)が現れる。
以上のように、前記工程(1)で調製した炭素質物質の存在下で500℃以上にて加熱処理を実施すると、Mg−Si結合が切断されてアスベスト(クリソタイル)が無害化できることが分かる。
クリソタイル試料、及び500℃、600℃、700℃、800℃でクリソタイルを無害化処理して得られた焼成物のX線回折図を図11に示す。なお、図11において、各曲線は、相互比較を容易にするために回折強度に関して平行移動して図示してある。
図11において、クリソタイルのピークa(2θ=約12°)及びピークb(2θ=約25°)が、それぞれMg−Si結合の存在を示しているのに対し、焼成物では、それらのピークがいずれも消失している。更に焼成物では、MgOの存在を示すピークc(2θ=約43°)及びピークd(2θ=約62°)が現れる。
以上のように、前記工程(1)で調製した炭素質物質の存在下で500℃以上にて加熱処理を実施すると、Mg−Si結合が切断されてアスベスト(クリソタイル)が無害化できることが分かる。
本発明方法は、省エネルギー型のアスベスト無害化方法として利用することができると共に、塩化ビニル樹脂壁紙廃材の再利用方法を提供する。
Claims (2)
- アスベストと塩化ビニル樹脂壁紙廃材を炭化して得られる炭素質物質とを混合し、次いでこの混合物を焼成することを特徴とする、アスベストの無害化方法。
- アスベストと前記炭素質物質との混合物を500℃以上で焼成する、請求項1に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009242951A JP2011088058A (ja) | 2009-10-22 | 2009-10-22 | アスベストの無害化方法 |
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ID=44106835
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JP (1) | JP2011088058A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113843257A (zh) * | 2021-09-22 | 2021-12-28 | 西南科技大学 | 一种石棉废物的无害化处理方法、无石棉物料及其应用 |
-
2009
- 2009-10-22 JP JP2009242951A patent/JP2011088058A/ja active Pending
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CN113843257A (zh) * | 2021-09-22 | 2021-12-28 | 西南科技大学 | 一种石棉废物的无害化处理方法、无石棉物料及其应用 |
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