JP2011086605A - ショートアーク型放電ランプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】陽極先端面3Dの陽極中心軸L上に凹部30が形成され、凹部は、円周方向に形成された陽極内壁面30Aと、陽極中心軸に対して径方向に広がり平坦に形成された陽極内底面30Bと、陽極内壁面および陽極先端面3Dの境界において陽極中心軸Lから径方向に離間して円周方向に形成された環状角部30Cとを備えて、凹部は陽極先端面から電極の内方側に向けて窪んで形成されており、アークARの大きさを表す指標をD0とし、凹部30の直径をD1(mm)としたとき、比の値D1/D0が、0.25≦D1/D0≦1.2を満足する。なお、前記アークの大きさを表す指標D0は、下記の式で規定される。D0=1.4+2.5(P−1.6)0.5但し、Pはランプ電力(kW)
【選択図】図2
Description
このようにして陽極が消耗すると、蒸発した陽極構成物質は発光管の内壁に付着し、発光管の内壁面を黒化させるという不具合が生じる。そして、発光管の内壁面の黒化が進行すると、放電ランプからの放射束が低下し、照射面での必要な放射照度が不足するため放電ランプを新品のランプに交換する必要があった。
そこで、本発明者らは、これまでのランプが持っていた高い放射照度維持率に加えて、放射輝度すなわち放射束も高い放電ランプを提供する検討を行い、この出願より前に特願2009−154651号として特許出願を行った。
この特許出願は概略以下のようなものである。陽極内壁面、平坦な陽極内底面、および環状角部からなる凹部を陽極先端面に設けることにより、凹部の各点と陰極との電極間の距離が変化して、陽極中心軸の位置と環状角部の位置の2ヶ所で電界強度のピークができ、この陽極中心軸の位置の電界強度のピークは放電ランプの放射輝度を維持するように働き、また環状角部の位置の電界強度のピークは電子を引き付けこの部分の電流密度が上がることで陽極先端面上での一部領域の局所的な電流の集中が緩和され、陽極の消耗を抑制するように働く。
図1は、放電ランプの構成の概略を示す断面図である。
放電ランプ10は、略球状に形成された発光部11と発光部11の両端のそれぞれに連続した直管状の封止部12Aおよび12Bとで構成される発光管を備えている。発光管は、例えば石英ガラスによって一体的に形成されている。封止部12Aおよび12Bには、それぞれ円筒形状を有する給電用の口金13Aおよび13Bが装着されている。
発光管の内部に形成された放電空間Sには、陰極2と陽極3とが、陽極中心軸L上において互いに対向して配置されると共に発光物質が封入されている。
発光物質は、キセノンガス、アルゴンガスおよびクリプトンガスの少なくとも1種以上と、水銀が封入されている。発光物質として、これらの希ガスおよび水銀のうち、いずれか一方のみが封入されていても良い。
陽極3は、円柱状の胴部3Aと、胴部3Aの先端側と後端側のそれぞれに続いて形成される円錐台部3Bおよび3Cとが、例えばタングステンによって一体的に形成されている。後端側の円錐台部3Cには、胴部3Aよりも小径のロッド状のリード部(不図示)が一体的に続いており、リード部が封止部12Bに保持されている。
陽極3は、全長が30〜100mm、胴部3Aの直径が20〜40mm、円錐台部3Bの先端径が5〜20mm、円錐台部3Bの後端径が20〜40mmである。陰極2および陽極3の間の電極間距離は3〜40mmである。
陽極3は、先端に向かって次第に外径が細くなる円錐台部3Bを有し、この円錐台部3Bの先端部に陽極先端面3Dが形成され、陽極先端面3Dの陽極中心軸L上には凹部30が形成されている。
凹部30はこのような形状であるのでその全体形状は、陽極中心軸Lを含む断面が矩形状、即ち円柱形状である。また、凹部30は、円柱形状に限らず、回転円錐台形状であってもかまわない。
図2に示す陽極3においては、陽極先端面3Dよりも陽極の内方側に窪んだ平坦な陽極内底面30Bを備え、この陽極内底面30Bでは陽極中心軸Lに近付くにつれて電界強度が高くなる。また、陽極中心軸Lから径方向外方に離間した位置に環状角部30Cを備えるため、当該位置においても電界強度が高い状態になる。
このように、陽極3は陽極中心軸Lと環状角部30Cとの両方の位置で電界強度が高い状態になることによって、陰極2から発した電子が陽極中心軸Lおよび環状角部30Cのそれぞれに分散して引き付けられるため、陽極中心軸Lに引き付けられる電子の量が低減される。
したがって、ランプ1は、ランプ2に比べて、放射輝度を維持しながら、放射照度維持率を高いものとすることが出来るようになっている。
以上が、特願2009−154651号の内容である。
すなわち、放射輝度が高い放電ランプでも、放射照度維持率の低い放電ランプでは、発光管の内壁面が短時間で黒化し、短期間でランプからの必要な放射束が得られなくなり、ランプ寿命が短くて放電ランプを頻繁に取り替える必要が有る。これは、取替え作業の煩雑さに加えて、取替えに伴う露光装置の停止時間(ダウンタイム)や、ランプ点灯後の露光装置が定常温度に戻るまでの時間などが露光に使用できない時間となり、生産性が劣る露光装置となってしまう問題が有る。
また、放射照度維持率が高い放電ランプであっても、紫外光の放射輝度が小さいと露光に必要な露光量が足りず、結果的に露光時間が長くなり生産性が劣る露光装置となってしまう問題が有る。
アークの放射輝度分布をBとすると、「アークから放射される放射束」Lは、以下の式(1)に示すように放射輝度分布Bを面積(ds)及び立体角(dΩ)で積分を行うことによって求められる。
式(1) L=∬BdsdΩ
「点灯初期のアークから放射される放射束」L0は、発光管を介して取り出されるので、「ある時間経過後のランプから放射される放射束」L1は、発光管の透過率をTとすると、以下の式(2)に示すように放射束L0と透過率Tの積で表される。
式(2) L1=L0T
この透過率Tは、陽極などからの蒸発物が時間と共に発光管に付着することによる黒化や光の散乱に大きく起因しているので、点灯時間の関数で表される放射照度維持率η(t)(%)に置き換えて近似することができる。したがって、時刻tにおける「ランプから放射される放射束」L1(t)は、
と表される。
紫外線の総放射量である「積算放射量φ」は、時刻tにおける「ランプから放射される放射束」L1(t)の時間積分で表されるので、以下の式(4)に示すようになる。
ここで、放射照度維持率η(t)は発光管内面への上記蒸発物の堆積に密接に関連しており単純な指数関数で近似することができるので、点灯t0時間後の放射照度維持率をη(t0)%とすると、その減衰定数を以下の式(5)で表すことができる。
したがって、式(4)を用いると、点灯t0時間後の積算放射量φは、更に式(6)のように表される。
この式(6)から、積算放射量φは、「点灯初期のアークから放射される放射束」L0と、t0時間経過後の放射照度維持率η(t0)を用いて算出することができることが分かる。
後段の段落0042、0043において、積算放射量φを求める際には、この「点灯初期のアークから放射される放射束」L0と、t0時間経過後の放射照度維持率η(t0)とを使用することになる。
発光管内に互いに対向するように陽極および陰極が配置され、前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加してアークを発生させるショートアーク型放電ランプにおいて、
前記陽極は、陽極先端面の陽極中心軸上に凹部が形成され、
前記凹部は、前記陽極先端面より窪んで円周方向に形成された陽極内壁面と、前記陽極内壁面に続いて形成され陽極中心軸に対して径方向に広がり平坦に形成された陽極内底面と、陽極中心軸から径方向に離間して前記陽極先端面および前記陽極内壁面の境界において円周方向に形成された環状角部とからなり、これらの3つの構成からなる凹部は前記陽極先端面から電極の内方側に向けて窪んで形成されており、
前記アークの大きさを表す指標をD0とし、前記凹部の直径をD1(mm)としたとき、比の値D1/D0は、0.25≦D1/D0≦1.2を満足することを特徴とする。
なお、前記アークの大きさを表す指標D0は、下記の式で規定される。
D0=1.4+2.5(P−1.6)0.5
但し、Pはランプ電力(kW)
請求項1に記載のショートアーク型放電ランプであって、前記凹部の深さが0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする。
更に、陽極と陰極の間に形成されるアークの大きさを表す指標D0と陽極に設けた凹部の直径D1(mm)の比の値D1/D0が、0.25≦D1/D0≦1.2の関係を満たすことにより、積算放射量の多いランプを得ることができる。
放電ランプの構成は、段落0010から0015の記載および図1と図2の内容と同じであるので、この部分の説明を引用することで省略する。
したがって、凹部30の大きさとアークARの大きさの比の値D1/D0は、段落0022で説明した「積算放射量」と密接に関連しており、積算放射量の最適範囲をD1/D0の関数として見出すことができると考えられる。ここで、凹部の大きさD1はアークが覆う程度を表す指標に用いる値であり、このD1とアークの大きさとを対比させる必要が有ることから、凹部の大きさD1として凹部の直径すなわち環状角部の直径を用いることとする。
アークは、封入物がプラズマ化した領域を指すものであり、その大きさを測定し、特定することは困難である。
そこで、例えば、アークは当然に電流密度分布と密接に関連しており、電流密度分布がアークの分布の一形態とみなせるので、電流密度分布を測定してアークの大きさを求めることも考えられる。しかしながら、この電流密度分布を厳密に直接測定する事は困難とされており、また、この電流密度分布は連続的に変化しているので、この電流密度分布によってもアークの分布を明確に定めることは困難でありアークの大きさを特定できない。このように、「電流密度分布」の測定によって、「アークの大きさ」を特定することは極めて困難または不可能なことである。
そこで、放射輝度分布の測定を行う。
発光物質が水銀の場合は、陰極2と陽極3との間に高電圧を印加すると、陰極2から放出された電子が放電空間Sに封入された水銀の原子に衝突し、水銀の原子が励起状態になり、励起状態から下位のエネルギー状態に遷移するときに種々の放射光を放射する。この放射光を特定波長、例えば波長365nmだけを通過させるバンドパスフィルターに通し、放射の輝度分布を求める。この波長365nmの紫外線の輝度分布は、電極中心軸L上の任意の点における径方向の輝度分布であり、それを図4に示す。この分布のプロファイルは、放射輝度をJ(r)、径方向の電極中心軸からの距離をrとすると、下記式(7)で近似して表すことができる。
式(7) J(r)=J0exp〔−(r/r0)2〕
ここで、J0はアークの中心での放射輝度であり、r0は中心での放射輝度J0が1/e(≒0.37)に減衰するところの中心からの距離(mm)である。上記放射輝度分布の式(7)は、アークに流れる電流の多くが電極の中心からr0の距離内に集中していることを示している。
このr0を2倍して得られる2r0を「仮想直径」と考えると、この2r0は、「アークの大きさを表す指標」D0として用いることができる。ただし、実際のアークの大きさはこの仮想直径である「アークの大きさを表す指標」D0の値を超えて拡がっていることに注意すべきである。
ところで、アークは電極先端の物理的形状の影響を受けてその形状が変化する。陽極先端面に凹部を設けた電極を用いた放電ランプを用いて前記指標を作成しようとすると、凹部の大きさが異なるランプ毎にアークは凹部から異なる影響を受けることになる。これでは、ランプ毎に「アークの大きさを表す指標」D0が異なってしまい基準の指標として用いることができない。「アークの大きさを表す指標」D0は、指標であり基準とすべき値であるので、変動しない変わらない値でなければならない。そこで、アークが陽極先端形状に影響されないように、凹部を有さず平坦であるごく普通の陽極を用いた放電ランプを用いて、「アークの大きさを表す指標」D0を作成し、これを基準の指標とした。
この実験用放電ランプA1〜A5を表1に示すランプ電力Pで点灯させ、陽極近傍のアークの放射輝度分布を測定し、それらの放射輝度分布に対して式(7)に従いフィティングを行ってr0を求め、「アークの大きさを表す指標」D0の値を求めた。
それらの実験結果を表1に示す。
式(8) D0=1.4+2.5(P−1.6)0.5
この式(8)から、ランプ電力P(kW)が知られているランプについては、放射輝度分布を測定しなくても、「アークの大きさを表す指標」D0を求めることができるようになる。
そこで、凹部の直径D1と「アークの大きさを表す指標」D0の比の値D1/D0を変数として、積算放射量を求めるための実験を行った。
<ランプB1〜B10の基本構成>
・陽極3の凹部の深さ : 0.4mm
・水銀量 : 25mg/cm3
・キセノンガス : 室温で2×105Pa
・電極間距離L : 5.5mm
・ランプ電力P : 7.5kW(定電力)
各ランプの陽極は、その先端面に陽極内壁面と平坦に形成された陽極内底面と環状角部からなる凹部を有しているが、その凹部の大きさは、表2に示すように、「アークの大きさを表す指標」D0に対する凹部30の直径D1(mm)の比の値D1/D0がそれぞれ異なるようにしてある。
比較例として、比の値D1/D0が零、即ち、凹部を有しない陽極を備える比較用放電ランプXも作製し用意した。比較用放電ランプXは陽極先端面に凹部が無い点以外は実験用放電ランプBと同じ基本構成を有している。
段落0022の式(3)において、点灯初期の状態は時間tが0であるので、T(t)はT(0)でほぼ1であり、L1(0)=L0となる。これは、実験bで求めることができた各ランプの点灯初期の放射束は、「点灯初期のランプから放射される放射束」L1(0)のことであるが、この放射束が実は「点灯初期のアークから放射される放射束」L0に等しいということを示している。したがって、式(6)の「点灯初期のアークから放射される放射束」L0には、実験bで求めた各ランプの点灯初期の放射束L1の値を代入して計算できることが分かる。
縦軸は相対積算放射量、横軸は比の値D1/D0である。
比の値D1/D0が小さい領域では相対積算放射量はほとんど変化無く、0.2付近から増大し、0.65付近で最大になり、その後減少する。比の値D1/D0が1.2辺りで比の値D1/D0が0の場合と同じ値になり、その後更に減少している。
凹部30の深さHが0.5mmを超えると、電極間距離が長くなるため、ランプ電圧が上昇する。ショートアーク型放電ランプ10は、点灯用電源として定電力電源を使用しているため、上記のようにランプ電圧が上昇すると、陰極および陽極間に供給するランプ電流を下げるように制御され、放射輝度が低下することになる。このような放射輝度の低下は、凹部30の深さHが深くなるに従って顕著になる。
一方、凹部30の深さHが0.1mm未満であると凹部30が実質的に無くなり、環状角部による電界強度の集中の効果が無くなり高い放射照度維持率を得ることができなくなる。
したがって、放電ランプの放射輝度の低下を可及的に小さくし、かつ高い放射照度維持率を得るためには、凹部30の深さHを0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
11 発光部
12A,12B 封止部
13A,13B 口金
2 陰極
2A 胴部
2B 先端部
3 陽極
3B,3C 円錐台部
3A 胴部
3D 陽極先端面
30 凹部
30A 陽極内壁面
30B 陽極内底面
30C 環状角部
AR アーク
Claims (2)
- 発光管内に互いに対向するように陽極および陰極が配置され、前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加してアークを発生させるショートアーク型放電ランプにおいて、
前記陽極は、陽極先端面の陽極中心軸上に凹部が形成され、
前記凹部は、前記陽極先端面より窪んで円周方向に形成された陽極内壁面と、前記陽極内壁面に続いて形成され陽極中心軸に対して径方向に広がり平坦に形成された陽極内底面と、陽極中心軸から径方向に離間して前記陽極先端面および前記陽極内壁面の境界において円周方向に形成された環状角部とからなり、これらの3つの構成からなる凹部は前記陽極先端面から電極の内方側に向けて窪んで形成されており、
前記アークの大きさを表す指標をD0とし、前記凹部の直径をD1(mm)としたとき、比の値D1/D0は、0.25≦D1/D0≦1.2を満足する
ことを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
前記アークの大きさを表す指標D0は、下記の式で規定される。
D0=1.4+2.5(P−1.6)0.5
但し、Pはランプ電力(kW) - 前記凹部の深さは0.1mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項1記載のショートアーク型放電ランプ。
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