JP2011084630A - 金属−炭素複合材を含む樹脂組成物、成形体及びシート - Google Patents

金属−炭素複合材を含む樹脂組成物、成形体及びシート Download PDF

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達生 藤井
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Abstract

【課題】高い周波数領域での電磁波吸収特性に優れ、かつ軽量な電磁波吸収材として用いることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】炭素を20〜99質量%含み、前記炭素中に金属粒子が分散した金属−炭素複合材(A)と、樹脂(B)と、を含み、組成物中における前記金属−炭素複合材(A)の含有量が、5〜95質量%である樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属−炭素複合材を含む樹脂組成物、成形体及びシートに関する。
近年、携帯情報端末用電子機器に対して情報処理速度の高速化や小型化・軽量化が求められている。それに伴って、回路を動作させるクロック周波数が高くなり、回路が高密度化している。その結果、回路モジュールや伝送路からの電磁波の輻射や、回路間での信号干渉によるノイズが発生しやすくなっている。このような電磁波の輻射やノイズの発生は、携帯情報端末用電子機器の周囲にある他の機器に悪影響を与えたり、携帯情報端末用電子機器の快適な使用を妨げたりする原因となる恐れがある。
従って、これらの携帯情報端末用電子機器から外部への電磁波輻射や、機器内部でのノイズ発生を、抑制することが、携帯情報端末用電子機器に求められている。このような問題に対する解決方法の一つとして、不要電磁波の発生源の近傍に、薄いシート状の電磁波吸収体を配置することが挙げられる。
一方、GHz帯用電波吸収材料としては、扁平性軟磁性金属層を用いた電磁波吸収シートが知られている(特許文献1,2参照)。
特開2006−179901号公報 特開2005−281783号公報
しかしながら、特許文献1,2等に開示されている電波吸収材料では、電磁波吸収材料としての限界周波数は数GHz程度であり、かつ比重が大きいため軽量化が困難であるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い周波数領域での電磁波吸収特性に優れ、かつ軽量な電磁波吸収材として用いることができる樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、磁性損失材料の金属と誘電損失材料の炭素とを複合化した特定の金属−炭素複合材と、樹脂と、を含む樹脂組成物が、高い周波数の広帯域において、優れた電磁波吸収効果を有し、かつ軽量であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下のものを提供する。
〔1〕
炭素を20〜99質量%含み、前記炭素中に金属粒子が分散した金属−炭素複合材(A)と、
樹脂(B)と、を含み、
組成物中における前記金属−炭素複合材(A)の含有量が、5〜95質量%である樹脂組成物。
〔2〕
前記金属粒子は、Fe,Ni,Co,Mo,Cu,Al,Si,Cr,Mn,Zn,Ga,Zr,Nb,Tc,Ag,Cd,In,Ta,W,Re,Os,Ir,Au,Hg,Tl,Pb,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,及びYbからなる群より選択される1種以上の金属原子を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記金属粒子は、Fe,Ni,Co,及びCuからなる群より選択される1種以上の金属を含む前記〔1〕又は〔2〕の樹脂組成物。
〔4〕
前記金属粒子の一次粒子径は、1nm〜200nmである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一つの樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの樹脂組成物から得られる成形体。
〔6〕
前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの樹脂組成物を含むシート。
〔7〕
前記〔6〕のシートと、
前記シート上に積層された粘着層と、
を含む粘着シート。
〔8〕
前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの樹脂組成物を含む塗料。
〔9〕
基材と、
前記基材上に積層された、前記〔8〕の塗料を含む層と、
を含む積層体。
本発明に係る樹脂組成物は、高い周波数領域での電磁波吸収特性に優れ、かつ軽量な電磁波吸収材として用いることができる。
実施例で行ったシートの柔軟性の評価方法を説明するための模式図である。 金属−炭素複合材(A−1)のTEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の樹脂組成物は、炭素を20〜99質量%含み、前記炭素中に金属粒子が分散した金属−炭素複合材(A)と、樹脂(B)と、を含み、組成物中における前記金属−炭素複合材(A)の含有量が、5質量%以上95質量%以下である。組成物中の金属−炭素複合材(A)の含有量が、5質量%未満であると十分な電磁波吸収性能が得られず、95質量%を超えると樹脂(B)と十分に混練させることができない。金属−炭素複合材(A)と、樹脂(B)と、を上記の割合で含む樹脂組成物とすることにより、電磁波吸収特性に優れるだけでなく、軽量性に優れた電磁波吸収材として用いることができる。また、本実施の形態の樹脂組成物は、所望の形状に容易に成形することができるため(成形性)、幅広い用途に用いることができる。
組成物中の金属−炭素複合材(A)の含有量の下限値は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。金属−炭素複合材(A)の含有量を30質量%以上とすることで、より優れた電磁波吸収性能を有する樹脂組成物とすることができる。組成物中の金属−炭素複合材(A)の含有量の上限値は、85質量%以下であることが好ましい。金属−炭素複合材(A)の含有量を85質量%以下とすることで、金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)を、より均一に混練できる。
金属−炭素複合材(A)は、連続相である炭素中に、分散相として金属粒子が存在する構造を有している。さらに、金属粒子は炭素により被覆されていることが好ましい。金属粒子を炭素により被覆することで、空気中の酸素と反応し燃焼することを確実に防止できる。その結果、空気中において樹脂組成物に含まれる金属−炭素複合材(A)中の金属粒子の燃焼を抑えることができ、かつ樹脂組成物の取扱い性をさらに向上でき、その電磁波吸収特性をさらに向上させることができる。
連続相である炭素は、その構造や形状は限定されない。例えば、無定形、結晶性、非結晶性等の構造でもよく、針状、チューブ状、コイル状、板状、粒状等の形状であってもよい。
金属−炭素複合材(A)は、(A)中に、炭素を20質量%以上99質量%以下含むものであり、30質量%以上90質量%以下含むことが好ましい。炭素の含有量を30質量%以上とすることで、樹脂組成物を軽量化できるとともに、電磁波吸収特性をさらに向上させることができる。炭素の含有量を90質量%以下とすることで、金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)をより均一に混練することができる。
金属粒子は、金属原子を含む粒子であればよく、その種類は特に限定されない。金属粒子は、Fe,Ni,Co,Mo,Cu,Al,Si,Cr,Mn,Zn,Ga,Zr,Nb,Tc,Ag,Cd,In,Ta,W,Re,Os,Ir,Au,Hg,Tl,Pb,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,及びYbからなる群より選択される1種以上の金属原子を含むことが好ましい。これにより、より優れた電磁波吸収性能を発揮することができる。それらの中でも、Fe,Ni,Co,及びCuからなる群より選択される1種以上の金属原子を含むことが好ましい。これにより、樹脂組成物を成形体とした際の電磁波吸収性能をさらに高めることができる。そして、上記の金属以外の金属が含まれていてもよい。
金属粒子の形態は、電磁波吸収性能の観点から、金属単体や合金が好ましいが、金属酸化物や金属炭化物、金属窒化物、金属水酸化物等が含まれてもよい。
金属粒子の一次粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましい。一次粒子径が小さいほど、電磁波吸収特性に優れる。上記の金属粒子の粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)による粒度分布測定により求めることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM−2010)により5箇所を撮像し、各々の画像を元に一次粒子径を測ることで、映像ごとの個数平均を求める。5箇所それぞれの個数平均の平均を求めることで、粒子径を求めることができる。金属粒子の形状は特に限定されず、粒状、扁平状、針状等の形状であってもよく、粒子ごとに形状が異なってもよい。
金属−炭素複合材(A)の形態は特に限定されないが、樹脂とより複合化させる観点から粉体であることが好ましい。ここで、粉体とは、金属−炭素複合材(A)の50%体積平均粒子径が1nm〜200μmであるものをいい、樹脂との混練性の観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは70μm以下であり、金属−炭素複合材(A)の樹脂中での分散性の観点から、10nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましい。ここで、「50%体積平均粒径(D50)」とは、体積粒径の累積分布関数において累積度数が全体の50%になるときの体積粒径値である。例えば、金属−炭素複合材(A)の50%体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(「HELOS&RODOS」、SYMPATEC社製)により求めることができる。
金属−炭素複合材(A)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うこともできる。例えば、上記金属粒子を形成する金属原子のイオンと有機化合物の錯体を形成した後、この錯体を重合させて重合物とし、その重合物を炭化する方法によって得ることができる。製造方法については、例えば、J.Jpn.Soc.Powder Powder Metallurgy Vol.52,No.8,p.640−p.645に開示されている。
本実施の形態の樹脂(B)は、特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、及び酢酸ビニルからなる群から選択される1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体;ポリフェニレンエーテル、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート等が挙げられる。それらの中でも、柔軟性や金属−炭素複合材(A)との混練性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン等が挙げられる。それらの中でも、金属−炭素複合材(A)との混練性の観点からエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。
上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、官能基を有する化合物で変成されたものでもよい。官能基としてはビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水基、エステル基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エポキシ基、及びハロゲンから選ばれる1つ、又は2つ以上を含んでもよい。
上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、分子鎖内にF原子、Cl原子、Br原子を有するものが難燃性に優れており、好ましく用いることができる。前記樹脂(B)は、上述した樹脂を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態の樹脂組成物には目的に応じて添加剤を加えてもよい。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、及び加工助剤等が挙げられる。これらの種類は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
本実施の形態の樹脂組成物は、例えば、金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)を混合することにより得ることができるが、その方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)を溶融状態、溶液状態、又は固形状態で混合することにより得ることができる。それらの中でも、製造工程の経済性に優れることや、(A)成分と(B)成分を均一に混合できるということから、金属−炭素複合材(A)を、溶融状態の樹脂(B)と混合することが好ましい。
金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)との混合には、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押し出し機、一軸押し出し機、ロールミキサー等の混練機を用いることができる。
樹脂組成物は、所望の形状の成形体とすることができる。本実施の形態の成形体は、電磁波吸収用材料として好適に用いることができる。樹脂組成物を成形する方法としては、射出成形、溶液キャスト法、トランスファー成形、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形、プレス成形、ラバープレス成形、圧延等の加工法により、フィルム、シート等の所望の形状に成形できる。これらの成形加工は必要に応じ、磁場や電場存在下で行うこともでき、超音波、電磁波、紫外線等のエネルギー線を照射しながら行うこともできる。
本実施の形態の成形体は、シートとして好適に用いることができる。すなわち、本実施の形態の成形体をシート状にすることができる。シートの厚みは、特に限定されないが、強度や取扱性の観点から10μm以上が好ましく、加工性の観点から1cm以下が好ましい。なお、本実施形態のシートは、「フィルム」とよばれることもある。
本実施形態の成形体は、柔軟性や成形性に優れるため、本実施の形態のシートは、容易に折り曲げたり、曲面に沿って貼り付けたりすることができる。特に、本実施の形態のシートは、電磁波吸収用シートとして好適に用いることができる。
機械的特性や耐溶剤性を向上させる観点から、金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)を混練した後、架橋させることが好ましい。架橋の方法としては、特に限定されず、電離性放射線を照射して架橋する方法、及び有機過酸化物又はアゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤を用いて架橋する方法等が挙げられる。
本実施の形態において、樹脂組成物を含むシートは、前記シートの表面に積層された粘着層をさらに含む粘着シートとして好適に用いることができる。粘着層が積層されたシートとすることで、所望の場所にシートを直接貼り付けることができる。粘着層をシートに積層させる方法としては、特に限定されず、両面テープをシートの表面に貼り付ける方法や、粘着材をシート表面に塗布する方法等が挙げられる。粘着層は、前記シートの一方の表面のみに積層してもよいし、両方の表面に積層させてもよい。
粘着層に用いられる粘着材は、特に限定されず、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系等の公知の粘着材等が挙げられる。
本実施の形態において、樹脂組成物を含む塗料として用いることができる。その場合、樹脂組成物と、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、プロパノール、シクロヘキサン、及びヘキサン等からなる群から選ばれる1種以上の溶剤と、を混合することにより、塗料とすることができる。本実施の形態の塗料は、塗り性の観点から、溶液、エマルジョン、懸濁、スラリー、ペースト状態にして用いることや、硬化性を有する液状のシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂等に分散させて用いることが好ましい。
樹脂組成物を含有する塗料を塗布することにより、塗布物に電磁波吸収機能を付与することができる。塗布される材料は特に限定されない。塗布の具体例としては、フィルムやシート等の各種成形体に塗布する場合や、電磁波反射を防止する目的で金属構造物に塗布する場合等が挙げられる。
本実施の形態においては、基材シート表面に本実施の形態の塗料を塗布することによって、基材シートと、基材シート表面に積層された前記塗料を含む層と、を含むシートとすることが好ましい。このシートは、電磁波吸収用シートとして好適に用いることができる。
基材シートとしては、一般的に用いられている樹脂製のシートであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレンノキサイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリアミド等の樹脂を含むシートであることが好ましい。基材シートの厚みは、用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm〜1cmとすることができる。
塗料を含む層の厚みは、特に限定されないが、10μm〜0.5mmが好ましい。前記厚みを10μm以上とすることで、より優れた電磁波吸収特性を基材シートに付与でき、0.5mm以下とすることで、より優れた加工性を基材シートに付与できる。
本実施の形態の成形体及びシートは、携帯情報端末用電子機器の誤作動防止のための電磁波吸収体や、電子機器配線板の不要電磁波吸収体等として好適に用いることができる。特に、本実施の形態の樹脂組成物の好ましい態様として、1GHz以上、より好ましくは10GHz以上、の高周波数帯で電磁波吸収特性を有し、かつ比重を2以下にすることも可能であり、高周波数帯の電磁波吸収特性を有しながら軽量の電磁波吸収体とすることができる。
以下、本実施の形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
<金属−炭素複合材(A)の定量分析>
金属−炭素複合材(A)を105℃で2時間乾燥した後、下記の定量元素分析方法により測定を行った。
炭素についてはJIS G 1211(高周波誘導加熱燃焼−赤外線吸収法)、FeはJIS G 1281(塩化第一鉄すず還元重クロム酸カリウム滴定法)、NiについてはJIS G 1216(ジメチルグリオキシム沈殿分離エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム、亜鉛逆滴定法)、CuはJIS H 1051(電解重量法)、CoはICP法(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)により、夫々測定を行った。
<金属−炭素複合材(A)と樹脂(B)との混練性の評価方法>
金属−炭素複合材(A)と樹脂を、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製、「LABOPLASTOMILL 4C150−01」)に入れ、160℃で10分回転させて混合物を得た。得られた混合物のまとまりを、目視で評価した。まとまっている場合は合格(○)、まとまっていない場合は不合格(×)とした。
<シートの柔軟性の評価方法>
10cm四方のシートを図1に示すように手で折り曲げ、10秒後に手を離して放置した後のシートの状態を観察した。折り目などもつかず折り曲げる前の元の状態に復元されれば合格(○)、折り目などはつくが元の状態に復元される場合は(△)、元の状態に復元されなければ不合格(×)とした。
<シートの比重の評価方法>
電子比重計(SD−200L、ALFA MIRAGE社製)を用いて、アルキメデス法に準じて比重の測定を行った。
<シートの電磁波吸収特性の評価方法>
IEC規格のIEC62333−1、IEC62333−2に準じて、ベクトルネットワークアナライザーE8361A(Agligent Technologies社製)と、トランスミッションアッテネーションパワーレシオ測定システム(キーコム社製)を用いて伝送特性を測定し、その結果から下記の式に基づき伝送損失(Rtp)を算出して電磁波吸収特性を評価した。電磁波吸収特性は、5GHzの電磁波と、10GHzの電磁波について測定した。
tp=−10Log10(10S21/10/(1−10S11/10)) [dB]
21:シート配置時のマイクロストリップラインのトランスミッション [dB]
11:シート配置時のマイクロストリップラインのリターンロス [dB]
[実施例1]
Fe(NO33・9H2O(和光純薬工業社製)20gと、Ni(NO32・6H2O(和光純薬工業社製)72gと、Cu(NO32・3H2O(和光純薬工業社製)13gと、クエン酸(和光純薬工業社製)343gと、蒸留水(和光純薬工業社製)321gを混合して混合物とした。この混合物にアンモニア水を加え、pH7に調整した。続いて、エチレングリコール(和光純薬工業社製)333gを混合物に添加し、70℃で1時間攪拌した。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌して、重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、300℃で3時間焼成した後、700℃で1時間さらに焼成し、炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、金属−炭素複合粉末(A−1)を得た。金属−炭素複合粉末(A−1)を、乳鉢で粉砕した後、エタノール中で超音波分散させ、サンプルを支持基板上に固定させて、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子製、JEM−2010)を用いて44万倍で撮像した。図2に、金属−炭素複合粉末(A−1)の透過型電子顕微鏡(TEM)の写真を示す。図2によれば、炭素に被覆された金属粒子が、金属−炭素複合粉末(A−1)中に分散した状態で存在していることが確認された。
ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)24gを、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製、「LABOPLASTOMILL 4C150−01」)に投入し、樹脂温度160℃、ミキサー回転数50rpmで加熱しながら1分間混練した。その後、同じ条件で混練しながら、炭素複合材(A−1)24gを少しずつ、5分間かけて添加した。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−1)の合計100質量部に対し50質量部であった。添加終了後、同じ条件でさらに10分間加熱混練して、樹脂組成物48gを得た。
得られた樹脂組成物を、真空圧縮成形機(「SFV−30」、神藤金属工業所社製)を用いて、170℃、10MPaの条件下で5分間圧縮成形して、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例2]
金属−炭素複合粉末(A−1)48gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)の代わりに塩素化ポリエチレン(B−2)14gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物62gを得た。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−2)の合計100質量部に対し78質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例3]
金属−炭素複合粉末(A−1)30gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)の代わりにスチレン−ブタジエン共重合体(B−3)(スチレン/ブタジエン比率:30/70)20gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物50gを得た。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−3)の合計100質量部に対し60質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例4]
金属−炭素複合粉末(A−1)55gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)10gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物65gを得た。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−1)の合計100質量部に対し85質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例5]
Fe(NO33・9H2O 20gと、Ni(NO32・6H2O 58gと、クエン酸240gと、蒸留水225gを混合して混合物とした。この混合物にアンモニア水を加え、pH7に調整した。続いて、エチレングリコール231gを混合物に添加し、70℃で1時間攪拌した。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌し重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、300℃で3時間焼成した後、700℃で1時間焼成して炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、金属−炭素複合粉末(A−2)を得た。
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−2)36gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)19gとを用いた以外は、実施例1と同じ条件で操作を行い、樹脂組成物55gを得た。(A−2)の配合量は(A−2)と(B−1)の合計100質量部に対し66質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例6]
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−2)62gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)5gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物67gを得た。(A−2)の配合量は(A−2)と(B−1)の合計100質量部に対し92質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例7]
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−2)16gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)30gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物46gを得た。(A−2)の配合量は(A−2)と(B−1)の合計100質量部に対し35質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例8]
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−2)4gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)36gとを用いた以外は、実施例1と同じ操作を行い、樹脂組成物40gを得た。(A−2)の配合量は(A−2)と(B−1)の合計100質量部に対し10質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例9]
Fe(NO33・9H2O 12gと、Ni(NO32・6H2O 44gと、クエン酸144gと、蒸留水110gを混合して混合物とした。この混合物にアンモニア水を加え、pH7に調整した。続いて、エチレングリコール140gを混合物に添加し、70℃で1時間攪拌した。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌し重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、300℃で3時間焼成した後、700℃で1時間さらに焼成して炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、金属−炭素複合粉末(A−3)を得た。
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−3)50gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)の代わりに(B−2)13gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物63gを得た。(A−3)の配合量は(A−3)と(B−2)の合計100質量部に対し80質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得たシートの評価結果を表4に示す。
[実施例10]
Fe(NO33・9H2O 20gと、Ni(NO32・6H2O 29gと、Co(NO32・6H2O 29gと、クエン酸144gと、蒸留水120gを混合して混合物とした。この混合物に、アンモニア水を加え、pH7に調整した。エチレングリコール280gを混合物に添加し、70℃、1時間で攪拌した。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌し重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、300℃で3時間焼成した後、700℃で1時間さらに焼成して炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、炭素複合粉末(A−4)を得た。
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−4)37gと、
ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)18gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物55gを得た。(A−4)の配合量は(A−4)と(B−1)の合計100質量部に対し67質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表4に示す。
[実施例11]
Fe(NO33・9H2O 122gと、Co(NO32・6H2O 59gと、クエン酸 480gと、エチレングリコール 470gとを添加し、70℃で1時間攪拌して混合物を得た。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌し重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、110℃で2時間焼成した後、650℃で1時間さらに焼成して炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、炭素複合粉末(A−5)を得た。
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−5)43gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)14gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物57gを得た。(A−5)の配合量は(A−5)と(B−1)の合計100質量部に対し75質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表5に示す。
[実施例12]
Fe(NO33・9H2O 81gと、Co(NO32・6H2O 58gと、クエン酸 384gと、エチレングリコール 495gとを添加し、70℃で1時間攪拌して混合物を得た。その後、混合物を、130℃で6時間攪拌した後、180℃で6時間さらに攪拌し重合体を得た。得られた重合体を炭化焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、110℃で2時間焼成した後、600℃で1時間さらに焼成して炭化体を得た。得られた炭化体をメノウの乳鉢で粉砕し、炭素複合粉末(A−6)を得た。
金属−炭素複合粉末(A−1)の代わりに金属−炭素複合粉末(A−6)31gと、
ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)21gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物52gを得た。(A−6)の配合量は(A−6)と(B−1)の合計100質量部に対し60質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表5に示す。
[比較例1]
金属−炭素複合粉末(A−1)75gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)2gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったが、両成分がまとまらず樹脂組成物とすることができなかった。そのため、シートを得ることもできなかった。
[比較例2]
金属−炭素複合粉末(A−1)1gと、ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)32gとを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物33gを得た。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−1)の合計100質量部に対し3質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表5に示す。
[比較例3]
比較例3では、電磁波吸収材料として市販されている大同特殊鋼社製の「パーマロイ」(C−1)と、三菱化学社製のカーボンブラック(C−2)とを併用して、樹脂組成物及びシートを製造した。ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)21gを、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製、「LABOPLASTOMILL 4C150−01」)に投入し、樹脂温度160℃、ミキサー回転数50rpmで加熱しながら1分間混練した。その後、同じ条件で混練しながら、「パーマロイ」(C−1)16gを少しずつ、2分間かけて添加した。その後、カーボンブラック(C−2)を26g、5分間かけて添加した。(B−1)、(C−1)及び(C−2)の合計100質量部に対する(C−1)の配合量は25質量部であり、(C−2)の配合量は41質量部であった。添加終了後、同じ条件でさらに10分間加熱混練し、樹脂組成物63gを得た。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。電磁波吸収特性は、シートに柔軟性がなく割れやすいため、評価を行うことはできなった。
[比較例4]
ウレア基含有ポリジメチルシロキサン(B−1)21gをラボプラストミル(東洋精機製作所社製、「LABOPLASTOMILL 4C150−01」)に投入し、樹脂温度160℃、ミキサー回転数50rpmで加熱しながら1分間混練した。その後、同じ条件で混練しながら、「パーマロイ」(C−1)120gを少しずつ、2分間かけて添加した。添加終了後、そのまま10分間加熱混練を続けることにより、樹脂組成物141gを得た。(C−1)と(B−1)の合計100質量部に対する(C−1)の配合量は、85質量部であった。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件で圧縮成形し、厚み0.5mmのシートを得た。シートの評価結果を表5に示す。
各実施例及び各比較例で使用した金属−炭素複合材(A)の組成を表1に示し、各実施例及び各比較例で使用した樹脂(B)を表2に示し、比較例で使用した(C−1)と(C−2)の物性を表3に示す。
表4及び表5に示すように、各実施例のシートは、樹脂との混練性及びシートの柔軟性が良好であり、かつ比重が2.0以下であり、5GHz及び10GHzの電磁波吸収特性が優れていた。以上より、各実施例の樹脂組成物から得られたシートは、シート成形性に優れ、軽量であり、かつ高周波帯の電磁波に対しても優れた電磁波吸収特性を有することが確認された。
比較例1では、(A−1)成分と(B−1)成分とを混練ができず、シート化することができなかった。比較例2では、シートを得ることはできたが、5GHzと10GHzの電磁波吸収特性は認められなかった。
そして、実施例5では(A−2)成分と(B−1)とを用いることで、シート成形性に優れ、軽量、かつ優れた電磁波吸収特性を有するシートを得ることができた。それに対し、比較例3のシートは、シートに柔軟性がなく、割れやすいシートであることが確認された。比較例4のシートは、電磁波吸収特性は有していたが、比重3.8であり重いシートであることが確認された。
本発明の樹脂組成物は、電子機器配線板等の不要電磁波吸収体、情報通信機器の誤作動防止のための電磁波吸収体等として好適に使用できる。

Claims (9)

  1. 炭素を20〜99質量%含み、前記炭素中に金属粒子が分散した金属−炭素複合材(A)と、
    樹脂(B)と、を含み、
    組成物中における前記金属−炭素複合材(A)の含有量が、5〜95質量%である樹脂組成物。
  2. 前記金属粒子は、Fe,Ni,Co,Mo,Cu,Al,Si,Cr,Mn,Zn,Ga,Zr,Nb,Tc,Ag,Cd,In,Ta,W,Re,Os,Ir,Au,Hg,Tl,Pb,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,及びYbからなる群より選択される1種以上の金属原子を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記金属粒子は、Fe,Ni,Co,及びCuからなる群より選択される1種以上の金属を含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記金属粒子の一次粒子径が、1nm〜200nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物から得られる成形体。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むシート。
  7. 請求項6に記載のシートと、
    前記シート上に積層された粘着層と、
    を含む粘着シート。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む塗料。
  9. 基材と、
    前記基材上に積層された、請求項8に記載の塗料を含む層と、
    を含む積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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