JP2011083728A - 複合分離膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性や耐久性に優れ、成膜が容易であり、膜が薄膜であり高い透過性能を有する複合分離膜を提供すること。
【解決手段】有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、前記無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とが、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす複合分離膜の提供による。
【選択図】図1
【解決手段】有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、前記無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とが、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす複合分離膜の提供による。
【選択図】図1
Description
本発明は、無機材料からなる支持体と有機材料からなる膜とを備える複合分離膜、及びその製造方法に関する。
環境改善や省エネルギーの観点から、各種ガス等の混合物から特定のガス等を瀘過分離する分離膜の開発が進められている。例えば、炭素膜や、ポリスルホン膜、シリコーン膜、ポリアミド膜、ポリイミド膜等の有機高分子膜が、分離膜として知られている。このような分離膜は、実用上、主たる分離性能を発揮する膜自体の部分(単に膜という)だけでは使用出来ず、一般に、それを支持する支持体(基材ともいう)ととともに、複合構造を形成し、複合膜(複合分離膜)として用いられる。
例えば、特許文献1、2には、膜及び支持体がともに有機高分子材料からなる、複合膜が開示されている。特許文献1の複合膜は、例えばポリジオルガノシロキサンからなる多孔質膜を支持体として、それにフッ素高分子を含むグラフト共重合体からなる膜を配設したものであり、アルコール分離可能な分離膜である。特許文献2の複合膜は、疎水性多孔質膜を支持体として、それに親水性の高分子ゲルからなる膜を配設したものであり、二酸化炭素(ガス)を分離可能な分離膜である。
又、特許文献3には、無機材料からなる多孔質の基材(支持体)と、有機材料からなる分離膜(膜)と、からなる分離膜配設体(複合膜)が開示されている。この分離膜配設体における無機材料は例えばアルミナであり、好ましい有機材料は水溶性高分子である。この分離膜配設体は、アルコールを分離することが出来るものである。
しかしながら、特許文献1、2に開示された複合膜のように、膜及び支持体がともに有機高分子材料からなるものであると、複合膜としての耐熱性や耐久性が、支持体の有機材料によって制限されるおそれがある。又、有機材料は、炭化水素を含む雰囲気中では膨潤し易く、支持体として使用することが困難である。
特許文献3に開示された複合膜(分離膜配設体)のように、支持体(基材)が無機多孔質であると、多くの場合、それは親水性であるため、膜(有機分離膜)を形成する有機高分子(水溶液)が支持体中に浸み込んでしまい、膜の薄膜化が困難になるおそれがある。一方、支持体を疎水性とすれば、有機高分子(水溶液)が弾かれて、成膜が困難になる場合がある(特許文献2の段落0002の記載を参照)。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐熱性や耐久性に優れ、成膜が容易であり、膜が薄膜であり高い透過性能を有する複合分離膜を提供することである。
研究が重ねられた結果、無機材料からなる多孔質支持体の表層における平均細孔径と、膜を形成する有機高分子(化合物)の平均分子量と、の関係を規定することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、先ず、本発明によれば、無機多孔質支持体と、その無機多孔質支持体の表面に配設された有機高分子膜と、を備え、その有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とが、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす複合分離膜が提供される。
上記関係は、2000D<Mw<10000000、と表現することも出来る。高分子とは、有機高分子化合物のことを指す。Mwと表現される通り、本発明にいう平均分子量は、重量平均分子量である。平均分子量は、よく知られた高分子であれば公知であり、又、例えば、光散乱法等によって求めることが出来る。
有機高分子膜は無機多孔質支持体の少なくとも表面に配設される。本発明は、有機高分子膜が、無機多孔質支持体に確りと固定され、且つ、無機多孔質支持体の中には殆ど入り込んでいない複合分離膜であるが、有機高分子膜が、僅かに、無機多孔質支持体の中に入り込む態様を含む。本発明における無機多孔質支持体の表面の平均細孔径は、パームポロメーターやナノパームポロメーターによって測定される値とする。
無機多孔質支持体を形成する無機材料としては、セラミック又は金属を例示することが出来る。無機材料は、セラミックであることが、より好ましい。セラミックとしては、アルミナ、チタニア、シリカ、コージェライト、ジルコニア、ムライト等を挙げることが出来る。又、無機多孔質支持体の気孔率は、限定されるものではないが、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。
無機多孔質支持体の表面の平均細孔径Dは、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす限りにおいて限定されない。この関係により、有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwから、自ずと一定の範囲に定まる平均細孔径Dは、0.001μm以上、0.5μm以下(1nm以上、500nm以下)であることが好ましい。無機多孔質支持体は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。無機多孔質支持体が複層構造である場合には、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径Dが、有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たせばよく、有機高分子膜と接しない内部においては、上記関係を満たさなくともよい。
無機多孔質支持体の全体形状(複合分離膜としての形状も同じ)は特に限定されず、円筒、角筒等の筒(チューブ)状、円柱、角柱等の柱状等、円板状、多角形板状等の板状等を例示することが出来る。無機多孔質支持体の形状は、複合分離膜の使用目的等に合致するよう、適宜、決定すればよい。容積に対する有機高分子膜の面積比率を大きく出来ることから、好ましい形状としてモノリス形状を挙げることが出来る。又、無機多孔質支持体の大きさ(複合分離膜としての大きさも同じ)は特に限定されず、必要な強度を満たすとともに、分離対象である流体の透過性を損なわない範囲で、使用目的等に合わせて、適宜、決定すればよい。
本発明に係る複合分離膜において、有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とは、(Mw/2000)<5000であることを条件として、D<(Mw/2500)となる関係を満たすことが好ましく、D<(Mw/3000)となる関係を満たすことがより好ましい。
又、本発明に係る複合分離膜において、有機高分子膜を形成する高分子は水溶性であることが好ましい。そのため、有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwは、D<(Mw/2000)であることを条件として、(Mw/2000)<4000となる関係を満たすことが好ましく、(Mw/2000)<3000となる関係を満たすことがより好ましい。
本発明に係る複合分離膜においては、上記無機多孔質支持体が、親水性を有することが好ましい。
換言すれば、無機多孔質支持体は、疎水性ではないことが好ましい。好ましい無機多孔質支持体は、セラミック製又は金属製のものであるが、多くの場合、セラミックや金属等からなる無機多孔質支持体は、親水性を備える。本発明における好ましい親水性の程度は、水の接触角が90°未満である。
次に、本発明によれば、無機材料を用いて無機多孔質支持体を得て、その無機多孔質支持体の表面に、その無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]に対し、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす平均分子量Mwの高分子を含有する有機高分子膜前駆体を配設し、その有機高分子膜前駆体を乾燥処理する過程を経て、無機多孔質支持体と、その無機多孔質支持体の表面に配設された有機高分子膜と、を備える複合分離膜を得る複合分離膜の製造方法が提供される。
本発明に係る複合分離膜の製造方法は、本発明に係る複合分離膜を製造する手段として好適なものである。有機高分子膜前駆体を配設し、の一例は、有機高分子水溶液を塗布すること、である。
本発明に係る複合分離膜の製造方法においては、有機高分子膜前駆体が有機高分子溶液であり、無機多孔質支持体が親水性を有することが好ましい。
本発明に係る複合分離膜の製造方法において、有機高分子膜前駆体に含有される高分子の平均分子量Mwと、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とは、(Mw/2000)<5000であることを条件として、D<(Mw/2500)となる関係を満たすことが好ましく、D<(Mw/3000)となる関係を満たすことがより好ましい。
又、本発明に係る複合分離膜の製造方法において、有機高分子膜前駆体に含有される高分子の平均分子量Mwは、D<(Mw/2000)であることを条件として、(Mw/2000)<4000となる関係を満たすことが好ましく、(Mw/2000)<3000となる関係を満たすことがより好ましい。
本発明に係る複合分離膜は、有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とが、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たすので、無機多孔質支持体の表面から細孔内への有機高分子膜の浸入が抑制されており、且つ、良好に成膜されていて、有機高分子膜が、欠陥のない薄膜になっている。
本発明に係る複合分離膜によって実現される有機高分子膜の膜厚は、0.01〜2μmであり、好ましくは0.05〜1μmである。よって、本発明に係る複合分離膜は、分離膜として用いたときに、流速が大きくとれ且つ圧力損失は小さく、透過性に優れ、且つ、良好な分離性能を発揮する。D<(Mw/2000)の関係を満たさない場合には、無機多孔質支持体の表面から細孔内へ有機高分子膜が浸入していて、細孔内へ侵入した分を含む有機高分子膜は厚膜となり易い。そして、その結果、流速は小さく圧力損失が大きく、透過性に劣るものとなる。又、(Mw/2000)<5000の関係を満たさない場合(Mw≧10000000の場合)には、材料(有機高分子化合物)の溶解性の悪さに起因して、欠陥を有する有機高分子膜となり易い。
本発明に係る複合分離膜は、支持体がセラミックスや金属等の無機多孔質であるので、耐熱性や耐久性に優れている。複合膜としての耐熱性や耐久性が、支持体によって制限されることがない。又、炭化水素を含む雰囲気中でも、支持体が膨潤することはなく、使用可能である。
本発明に係る複合分離膜は、その好ましい態様において、無機多孔質支持体が親水性を有するので、(有機高分子水溶液を乾燥して作られたものであれば)有機高分子膜と無機多孔質支持体とのなじみが良好であり、有機高分子膜にピンホールは生じ難くなっていて、品質に優れる。
本発明に係る複合分離膜は、有機高分子膜が、水溶性を示す高分子、又は、水溶性を示さない高分子、で形成することが出来るが、水溶性を示す高分子で形成されることがより好ましい。水溶性を示す高分子は、有機溶媒を用いずに使用することが出来るので、水溶性を示す高分子を使用すれば、複合分離膜の製造過程において環境負荷軽減に寄与するとともに、複合分離膜を製造し易くなる。このような水溶性を示す高分子の例として、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリアミド、ポリエーテル、多糖類系ポリマーからなる高分子群から選ばれる何れかの高分子、又はその高分子の誘導体若しくは変性体である高分子、若しくはその高分子を少なくとも1種類以上含む共重合体である高分子を示すことが出来る。又、水溶性を示さない高分子の例として、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、セルロース系ポリマーからなる高分子群から選ばれる何れかの高分子、又はその高分子の誘導体若しくは変性体である高分子、若しくはその高分子を少なくとも1種類以上含む共重合体である高分子を示すことが出来る。
本発明に係る複合分離膜の製造方法は、上記の本発明に係る複合分離膜を得ることが出来る点に、その効果が認められる。即ち、本発明に係る複合分離膜の製造方法は、無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]に対し、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす平均分子量Mwの高分子を含有する有機高分子膜前駆体を配設し、その有機高分子膜前駆体を乾燥処理する過程を経て、複合分離膜を得るので、無機多孔質支持体の表面から細孔内への有機高分子膜前駆体の浸入が抑制され、且つ、有機高分子膜を、ピンホール等の欠陥なく、良好に成膜することが出来る。D<(Mw/2000)の関係を満たさない場合には、無機多孔質支持体の表面から細孔内へ有機高分子膜前駆体が浸入してしまい、細孔内へ侵入した分を含めると、厚膜の有機高分子膜となってしまう。その結果、得られる複合分離膜は、分離膜として使用したときに、流速は小さく圧力損失は大きくなり、透過性に劣るものとなる。(Mw/2000)<5000の関係を満たさない場合(Mw≧10000000の場合)には、有機高分子膜前駆体の溶解性が悪く、それに起因して成膜し難く、その結果、有機高分子膜に欠陥が生じ易い。
又、本発明に係る複合分離膜の製造方法は、その好ましい態様において、有機高分子膜前駆体が有機高分子水溶液であり、無機多孔質支持体が親水性を有するので、有機高分子水溶液(その溶媒(水))と、無機多孔質支持体とが、なじみ易く、有機高分子膜を成膜した際に、ピンホールが生じ難い。
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
先ず、本発明に係る複合分離膜について説明する。図1に示される複合分離膜10は、無機多孔質支持体12と、その無機多孔質支持体12の表面に配設された有機高分子膜11と、を備える。有機高分子膜11は薄膜であり、無機多孔質支持体12の内部に、殆ど入り込んでいない。
これに対し、図2に示される従来の複合分離膜20も、無機多孔質支持体22と、その無機多孔質支持体22の表面に配設された有機高分子膜21と、を備えるものであるが、有機高分子膜21は、無機多孔質支持体22の内部に入り込み、全体として有機高分子膜21は厚くなっている。
又、複合分離膜20では、無機多孔質支持体22の内部の細孔に、膜化していない有機高分子が分散して存在する。しかし、複合分離膜10では、膜化していない有機高分子は、無機多孔質支持体12の内部の細孔に存在しない。
複合分離膜10の無機多孔質支持体12は、その表面が(例えば)アルミナ粒子からなり、(例えば)気孔率が40%であり、(例えば)平均細孔径Dが0.01μm(10nm)の、構造体である。有機高分子膜11は、(例えば)平均分子量Mwが50000のポリエチレングリコールで形成されたものであり、その厚さは(例えば)1μmである。この場合に、D=10、(Mw/2000)=25、であるから、D<(Mw/2000)<5000、の関係が成立する。有機高分子膜11がポリエチレングリコールで形成された複合分離膜10は、(例えば)水−アルコールの分離膜として用いることが出来る。
次に、本発明に係る複合分離膜の製造方法について、上記の複合分離膜10を製造する場合を例にとって、説明する。本発明に係る複合分離膜の製造方法では、先ず、公知の手段に基づき、無機材料を用いて無機多孔質支持体12を得る。(例えば)アルミナ粒子からなる支持体上に、アルミナゾルを付着、乾燥、焼成することによって、(例えば)平均細孔径Dが0.01μm(10nm)の無機多孔質支持体12を得ることが出来る。
次に、得られた無機多孔質支持体12の表面の平均細孔径D(=10)に対し、D<(Mw/2000)<5000となる関係を満たす、平均分子量Mwが50000の、ポリエチレングリコールを含有する有機高分子水溶液を作製し、これを無機多孔質支持体12の表面に、無機多孔質支持体12の細孔が閉塞するように塗布する。その後、乾燥処理すれば、無機多孔質支持体12の表面に有機高分子膜11が配設された複合分離膜を得ることが出来る。
塗布する手段としては、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等を例示することが出来る。無機多孔質支持体12の細孔を閉塞させるには、繰り返し塗布すればよい。有機高分子水溶液における、ポリエチレングリコールの濃度は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることが特に好ましい。有機高分子水溶液の粘度は、好ましくは1〜10000mPa・s、特に好ましくは1〜1000mPa・sである。乾燥処理は、(例えば)0〜150℃、好ましくは25〜100℃の温度で、(例えば)0.1〜24時間、好ましくは0.5〜5時間、行えばよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)アルミナ粒子を用いて、外径10mm、長さ100mmの、円筒状の無機多孔質支持体(アルミナ多孔質支持体)を得た。その無機多孔質支持体の平均細孔径Dは0.01μm(10nm)であった。そして、平均分子量Mwが100000のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を、濃度を1質量%として用意し、これを、無機多孔質支持体の表面に、塗布し、80℃で乾燥させ、無機多孔質支持体の表面に有機高分子膜(PVA膜)を成膜して、無機多孔質支持体の表面に配設された有機高分子膜を備える複合分離膜を得た。D=10、(Mw/2000)=50であるから、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす。
尚、PVA膜の成膜は、無機多孔質支持体の表面の細孔が閉塞されるまで、塗布と乾燥を繰り返し行った。成膜後の膜表面(PVA水溶液を乾燥させた膜の表面)に、窒素ガスで0.8MPaの圧力を印加し、その状態で、膜裏面にリークする窒素ガスの量が100ml/min・m2以下となった段階で、無機多孔質支持体の細孔が閉塞された、と判断した。実施例1においては、最後の塗布と乾燥の後の、窒素ガスのリーク量は、96ml/min・m2であった。
得られた複合分離膜について、電子顕微鏡を用いて微構造観察を行ったところ、無機多孔質支持体の表面上のみに、膜厚が約1μmの有機高分子膜が成膜された構造となっていることが確認出来た。又、成膜の前後の重量を測定し、その変化から高分子の付着量を求めたところ、0.10mg/cm2であった。この高分子の付着量に基づけば、全ての高分子(PVA)が無機多孔質支持体の表面上に存在していると考えられた。
(実施例2)PVA水溶液の代わりに、平均分子量Mwが50000のポリエチレングリコール(PEG)水溶液を、濃度を1質量%として用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、複合分離膜を作製した。D=10、(Mw/2000)=25であるから、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす。実施例2においては、最後の塗布と乾燥の後の、窒素ガスのリーク量は、52ml/min・m2であった。
得られた複合分離膜について、電子顕微鏡を用いて微構造観察を行ったところ、実施例1と同様に、無機多孔質支持体の表面上のみに、膜厚が約1μmの有機高分子膜が成膜された構造となっていることが確認出来た。又、成膜の前後の重量を測定し、その変化から高分子の付着量を求めたところ、0.09mg/cm2であった。この高分子の付着量に基づけば、全ての高分子(PEG)が無機多孔質支持体の表面上に存在していると考えられた。
(実施例3)無機多孔質支持体の平均細孔径Dを3.0μm(3000nm)とした。そして、平均分子量Mwが8000000のPEG水溶液を、濃度を0.1質量%として用いた。これら以外は、実施例1と同様にして、複合分離膜を作製した。D=3000、(Mw/2000)=4000であるから、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす。実施例3においては、最後の塗布と乾燥の後の、窒素ガスのリーク量は、94ml/min・m2であった。
得られた複合分離膜について、電子顕微鏡を用いて微構造観察を行ったところ、実施例1と同様に、無機多孔質支持体の表面上のみに、膜厚が約2μmの有機高分子膜が成膜された構造となっていることが確認出来た。又、成膜の前後の重量を測定しその変化から高分子の付着量を求めたところ、0.17mg/cm2であった。この高分子の付着量に基づけば、全ての高分子(PEG)が無機多孔質支持体の表面上に存在していると考えられた。
(比較例1)無機多孔質支持体の平均細孔径Dを0.1μm(100nm)とした。それ以外は、実施例1と同様にして、複合分離膜を作製した。D=100、(Mw/2000)=50であるから、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たさない。比較例1においては、最後の塗布と乾燥の後の、窒素ガスのリーク量は、79ml/min・m2であった。
得られた複合分離膜について、電子顕微鏡を用いて微構造観察を行ったところ、無機多孔質支持体の表面上に、膜厚が約2μmの有機高分子膜が成膜されているだけでなく、無機多孔質支持体の内部(細孔)にも、多量の高分子(PVA)が堆積していることが判明した。又、成膜の前後の重量を測定し、その変化から高分子の付着量を求めたところ、2.49mg/cm2であった。この高分子の付着量に基づけば、9割程度の高分子が無機多孔質支持体の内部に浸入していると考えられた。
(比較例2)平均分子量Mwが2000000のPEG水溶液を、濃度を1質量%として用いた。それ以外は、実施例3と同様にして、複合分離膜を作製した。D=3000、(Mw/2000)=1000であるから、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たさない。比較例2においては、成膜を10回繰り返しても、窒素ガスのリーク量が100ml/min・m2以下とならなかったため、それ以上の成膜を中止した。
得られた複合分離膜について、電子顕微鏡を用いて微構造観察を行ったところ、無機多孔質支持体の表面上には、有機高分子膜が確認されず、全ての高分子(PEG)が成膜せずに、分散して、無機多孔質支持体の内部(細孔)に存在していると考えられた。
(考察)高分子の付着量の差から、比較例1と比べて、実施例1、2においては、同様の無機多孔質支持体を用いたにもかかわらず、1/20程度の高分子の付着量によって、無機多孔質支持体の細孔が閉塞されることがわかった。即ち、実施例1、2では、比較例1と比べて、大幅な薄膜化が可能となった。又、実施例3と比較例2の比較により、無機多孔質支持体の内部への高分子の浸入を抑制することにより、無機多孔質支持体の細孔閉塞が可能であることがわかった。
本発明に係る複合分離膜及びその製造方法は、複数の物質(気体、液体等)の混合物から特定の物質(気体、液体等)を選択的に分離する分離用フィルタ及びそれを製造する手段として、好適に利用される。
10 複合分離膜
11 有機高分子膜
12 無機多孔質支持体
20 複合分離膜
21 有機高分子膜
22 無機多孔質支持体
11 有機高分子膜
12 無機多孔質支持体
20 複合分離膜
21 有機高分子膜
22 無機多孔質支持体
Claims (4)
- 無機多孔質支持体と、その無機多孔質支持体の表面に配設された有機高分子膜と、を備え、
その有機高分子膜を形成する高分子の平均分子量Mwと、前記無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]とが、
D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす複合分離膜。 - 前記無機多孔質支持体が、親水性を有する請求項1に記載の複合分離膜。
- 無機材料を用いて無機多孔質支持体を得て、
その無機多孔質支持体の表面に、その無機多孔質支持体の表面の平均細孔径D[nm]に対し、D<(Mw/2000)<5000、となる関係を満たす平均分子量Mwの高分子を含有する有機高分子膜前駆体を配設し、その有機高分子膜前駆体を乾燥処理する過程を経て、
無機多孔質支持体と、その無機多孔質支持体の表面に配設された有機高分子膜と、を備える複合分離膜を得る複合分離膜の製造方法。 - 前記有機高分子膜前駆体が有機高分子溶液であり、前記無機多孔質支持体が親水性を有する請求項3に記載の複合分離膜の製造方法。
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