JP2011077156A - 蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】容量密度が大きくかつ長期耐久性に優れ、大電流充放電用途に適した蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】正極と負極とリチウム極とを有する蓄電デバイスであって、リチウム極を正極及び負極と直接接触しないように、かつ電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置し、前記負極と前記リチウム極との間に外部回路を用いて電流を流すことによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵する。
【選択図】図3
【解決手段】正極と負極とリチウム極とを有する蓄電デバイスであって、リチウム極を正極及び負極と直接接触しないように、かつ電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置し、前記負極と前記リチウム極との間に外部回路を用いて電流を流すことによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵する。
【選択図】図3
Description
本発明は、大電流充放電用途に適した蓄電デバイスについて、リチウムイオンを予め負極に吸蔵するための技術に関するものである。
従来の大電流で充放電可能な蓄電デバイスとして、電気二重層キャパシタが用いられている。電気二重層キャパシタは、その正極及び負極に、大きな容量密度を得るために高比表面積の活性炭を含む分極性電極を用いて構成されており、また、高い耐電圧を得るために有機系の電解液が用いられている。
有機系の電解液を用いた電気二重層キャパシタの容量密度は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の10分の1以下である。それゆえ、このような蓄電デバイスは更なる容量密度の向上が求められている。
ここで、キャパシタの容量密度を向上させるための手段として、正極に活性炭等の多孔質材料を用い、負極に黒鉛等のリチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料を用いて、電解液に有機溶媒及びリチウム系の電解質を用いた充放電可能な蓄電デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このような蓄電デバイスにおいて、さらに容量密度を向上させるために、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させる方法が用いられている。負極に予めリチウムイオンを吸蔵させる方法としては、リチウム金属を黒鉛からなる負極に接触させ、リチウム金属をイオン化させて炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。許文献2における方法では、リチウム金属と負極に含まれる黒鉛とを電気的に接触させた状態で電解液を含侵させると、リチウム金属から生じたリチウムイオンが負極に含まれる炭素材料に吸蔵されることによる。
また、リチウム金属を複数の貫通孔を備えた集電体からなる電極の積層体に対して、図1に示すように電極積層体の積層方向に配置し、リチウム金属をイオン化させて炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3における方法では、リチウム金属より生じるリチウムイオンが集電体の貫通孔を通過して、負極に含まれる炭素材料に吸蔵されることによる。
しかし、特許文献2に示す従来の方法では、電解液がリチウム金属と黒鉛に接触することにより、黒鉛へのリチウムイオンの吸蔵が開始されると、負極が発熱するため電解液の温度が上昇する。このような場合、電解液に低沸点の溶媒が含まれていると、溶媒が蒸発してしまうという問題があった。
また、特許文献3に示す従来の方法のように、貫通孔を備えた集電体を用いてリチウム金属を電極積層体の積層方向に配置する方法の場合、集電体の貫通孔の部分に位置する電極層は、集電体によって支持されていない。それゆえ、貫通孔を備えていない通常の集電体と比較すると、集電体の電極層に対する集電効率が損なわれて出力特性に悪影響を及ぼすため、大電流充放電用途の蓄電デバイスとしては好ましくなかった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大容量で長時間の課電における容量低下が小さく、かつ大電流充放電用途に適した蓄電デバイスを得るために、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させるための蓄電デバイスの構造及び製造方法を確立することにある。
本発明の蓄電デバイスは、上記課題を解決するために、多孔質材料を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料を含む負極と、リチウム金属を含むリチウム極と、電解液としてリチウム塩の有機溶媒溶液とを備え、正極及び負極は、セパレータを介して交互に積層された電極積層体を形成し、リチウム極は、正極及び負極と直接接触しないように、かつ電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置されることを特徴とする。
また、本発明の蓄電デバイスにおけるリチウム金属の電極積層体と対向する面を、リチウム金属と対向する電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面と略同一の面積とすることが好ましい。リチウム金属より生じるリチウムイオンを負極全体に亘りより均等に吸蔵することができる。
また、本発明の蓄電デバイスを構成するリチウム極は、前記電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面の内、複数にそれぞれ配置されることが好ましい。リチウム金属より生じるリチウムイオンを負極全体に亘りより均等に、かつ短時間で吸蔵することができる。
また、本発明の蓄電デバイスを構成するリチウム極の集電体は、ニッケルからなる多孔質体であることが好ましい。ニッケルからなる集電体は蓄電デバイス中で化学的に安定であるため、蓄電デバイスの耐久性を損なうことなく機能する。
また、本発明の蓄電デバイスの電極を構成するアニオンを吸着、脱離可能な多孔質材料は、活性炭であり、リチウムイオンを吸着、脱離可能な炭素材料は黒鉛であることが好ましい。これらは多くの電解質を吸着または吸蔵するため、蓄電デバイスの容量密度を大きくすることができる。
また、本発明の蓄電デバイスの製造方法では、負極とリチウム極との間に外部回路を用いて電流を流すことによって、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料に予めリチウムイオンを吸蔵する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の蓄電デバイスにおいて、負極に予め吸蔵されるリチウムイオン量をa(mAh)、吸蔵後に前記蓄電デバイスを所定の電圧まで充電させたときのセル容量をb(mAh)、前記負極を3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量をc(mAh)とした時、3≦c/b≦10となるように負極容量が定められ、かつ1.2≦c/a≦5であることが好ましい。負極に吸蔵するリチウムイオンの量を適切にすることができるため、蓄電デバイスの容量密度を増大させることができる。
以上のように、本発明の蓄電デバイスは、多孔質材料を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料を含む負極と、リチウムイオン供給源としてリチウム金属を担持したリチウム極と、リチウム塩を含む有機電解液とを有する蓄電デバイスにおいて、正極及び負極は、セパレータを介して交互に積層された電極積層体を形成し、リチウム極は、正極及び負極と直接接触しないように、かつ電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置される構成である。
それゆえ、リチウム金属より生じるリチウムイオンを電極積層体内部の深さ方向に均等に進入させ、負極に含まれる炭素材料に対して負極全体に亘り均等に吸蔵させることが可能となる。その結果、炭素材料に吸蔵されるリチウムイオンの電荷量には、負極全体から見て部分的な差異が生じることがない。一方、集電体に貫通孔を設けな構成であるため、集電体の集電効率を損なうことがない。したがって、本発明によれば、容量密度を充分に増大させることができるとともに、出力特性を損なわずに長時間の課電における容量低下を小さくすることができるという効果を奏する。
本発明の実施形態について、本発明の蓄電デバイスの構成を示す図2ないし図6に基づいて説明する。なお、図4(A)及び図5において、セパレータ3を理解しやすいよう透明とした。リチウム極9は、電極積層体8の正極及び負極と直接接触しないようにして配置される。これにより、蓄電デバイス中で電解液は高温になることがなく、電解液を構成する溶媒の蒸発を防止することができる。この時、リチウム極9は、正極及び負極と確実に絶縁を図るためにセパレータ(図示無し)で包まれていることが好ましい。
また、リチウム極9は、電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置することによって、積層された全ての負極とリチウム極9の距離をほぼ等しくすることが可能となる。それゆえ、積層された各負極に対するリチウムイオン吸蔵量を均等にすることができる。この時、リチウム極9におけるリチウム金属の電極積層体8と対向する面は、リチウム金属9と対向する電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面と略同一の面積であることが好ましい。そうすれば、リチウムイオンを負極全体に亘りより均等に吸蔵することができる。
さらに、リチウム極9は、電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面の内、複数にそれぞれ配置されることが好ましい。負極にリチウムイオンを吸蔵するために要する時間を大幅に短縮することができる。この時、電極積層体8に対して2つのリチウム極9を対向するように配置するとさらに好ましい。そうすれば、リチウム極9を複数設けることによって、リチウムイオン供給源の面積が増大するため、単位時間当りにより多くのリチウムイオンを負極に吸蔵させることができ、製造に要する時間を大幅に短縮することができる。また、負極全体に亘りより均等にリチウムイオンを吸蔵させることができる。
一方、リチウムイオンは、負極とリチウム極9との間に外部回路を通じて電流を流すことによってリチウム極から生じ、電解液を介して負極に吸蔵される。負極に吸蔵されるリチウムイオンの量は、電荷量として算出される。例えば、負極とリチウム極とを短絡させた時の電荷量を計測し、所定の電荷量に到達した時に短絡を終了させると、負極へのリチウムイオンの吸蔵が完了する。
また、電荷量から電流値と時間を計算し、負極とリチウム極9との間に所定時間一定の電流を流すことによって、所定の電荷量に相当するリチウムイオンを吸蔵させることができる。このような方法を用いた場合、外部回路を通じて負極とリチウム極9との間に流れる電流値を設定できるため、リチウムイオンの吸蔵開始と共に温度が上昇して電解液を構成する溶媒が気化するという問題が生じることはない。
本発明において、負極に吸蔵させるリチウムイオンの量は、次のように設定する。すなわち、前記負極に予め吸蔵されるリチウムイオン量をa(mAh)、吸蔵後に蓄電デバイスを所定の電圧まで充電させた時のセル容量をb(mAh)、負極を3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量をc(mAh)とした場合に、3≦c/b≦10とする。c/bが10よりも大きい場合、リチウムイオンが吸蔵され負極の重量が増加するに伴って蓄電デバイスの重量が増加するため、容量密度(蓄電デバイスの重量当りの容量)が低下する。
また、予め吸蔵させるリチウムイオン量は1.2≦c/a≦5であることが好ましい。c/aが1.2よりも小さい場合、負極に予め吸蔵させるリチウムイオンの量が多過ぎ、負極には、リチウムイオンをさらに吸蔵して充電できる容量がほとんど残されておらず、容量密度が低下する。また、c/aが5よりも大きい場合、負極に予め吸蔵させるリチウムイオンの量が少な過ぎ、蓄電デバイスの課電に伴う容量低下が大きくなる。
リチウム極9に担持するリチウム金属6の重量は、負極に吸蔵させるリチウムイオンの電荷量で決定される。リチウム金属6は、負極へのリチウムイオンの吸蔵が完了した時点で、全て溶解するようにすることが好ましい。
負極への予備的なリチウムイオンの吸蔵が完了した後には、外装外部に導出されているリチウム極のリード端子12を除去しても良いし、除去しなくても良い。リチウム極のリード端子12を除去しない場合には、リチウム極9に担持するリチウム金属6の重量を、リチウムイオンの吸蔵に要する量よりも大きくなるようにすることが好ましい。そうすれば、負極への予備的なリチウムイオンの吸蔵が完了した後に、残存したリチウム金属6を利用し、リチウム極9を参照極として負極及び正極の電位を観察することができる。
また、本蓄電デバイスを長期間使用して容量が低下した後に、負極とリチウム極9との間に再度電流を流すことによって、負極にリチウムイオンを追加で吸蔵することができる。そうすれば、低下した蓄電デバイスの容量を回復させることができる。
リチウム金属6を担持したリチウム極集電体7は、ニッケルまたはステンレスからなるメッシュ等の多孔体であることが好ましい。ニッケルはリチウムとの反応性が低く、蓄電デバイス中で安定であるため特に好ましい。
アニオンを吸着、脱離可能な多孔質材料は、比表面積が800〜3000m2/gの活性炭であることが好ましく、他にも比表面積及び導電性の大きいカーボンナノ材料、メソポーラスカーボン等を用いることができる。活性炭の原料としては、やしがら、フェノール樹脂、コークス等を使用することができ、水蒸気賦活法、アルカリ賦活法等によって賦活されることが好ましい。
正極に用いられる分極性電極1は、当該技術分野において従来より広く知られている技術を用いて製造することができる。例えば、活性炭とカーボンブラック等の導電助剤とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを混合・混練して得られる合材を圧延してシート状に成形したものを、導電性接着剤を介して集電体に貼り合せる方法によって分極性電極1を製造することができる。
また、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミドイミまたはポリイミド等のバインダと、水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の分散媒と、活性炭及び導電助剤とを分散して得られる合材をドクターブレードによる他、ダイコーター、コンマコーターまたはロールコーター等の各種コーターを用いて集電体に塗工する方法によっても、分極性電極1を製造することができる。
分極性電極1には、電気伝導度を大きくするために、導電助剤が含まれることが好ましい。導電助剤は、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維(VGCF)であり、分極性電極中に0.1〜20重量%含まれることが好ましい。
負極は、電極に含まれる活物質として活性炭の代わりに、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料が用いられる他は正極と同様の方法で製造される。炭素材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素等であることが好ましい。
電解液は、電解質としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解して用いられる。リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiAsF6、またはLiSbF6の内より選択される1種類、または2種類以上の混合物であることが好ましい。
有機溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、またはジメトキシエタン等であって、これらを単独、または2種類以上混合して用いることが好ましい。電解液中のリチウム塩の濃度は、0.5〜2.5mol/Lであることが好ましく、0.75〜2.0mol/Lであるとさらに好ましい。
〔実施例1〕
図3及び図4は本発明の蓄電デバイス内部の構成を示している。セパレータ3は、正極は、分極性電極1及びアルミ箔からなる正極集電体2を一体化してなる。分極性電極1は、石油ピッチを原料として水蒸気賦活により得られる比表面積1500m2/gの活性炭80重量%と、カーボンブラック10重量%と、PTFE10重量%とをエタノールと共に混練した物を、シート状に圧延し、アルミニウム箔に導電性接着剤を介して貼り合せてなる。この時の分極性電極1の厚みは400μmである。
図3及び図4は本発明の蓄電デバイス内部の構成を示している。セパレータ3は、正極は、分極性電極1及びアルミ箔からなる正極集電体2を一体化してなる。分極性電極1は、石油ピッチを原料として水蒸気賦活により得られる比表面積1500m2/gの活性炭80重量%と、カーボンブラック10重量%と、PTFE10重量%とをエタノールと共に混練した物を、シート状に圧延し、アルミニウム箔に導電性接着剤を介して貼り合せてなる。この時の分極性電極1の厚みは400μmである。
負極は、炭素電極4及び銅箔からなる負極集電体5を一体化してなる。負極炭素電極4は、PVDFをNMPに溶解し、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な人造黒鉛を分散させた液を銅箔にドクターブレードを用いて塗工し、乾燥させて得られる。塗工された負極の銅箔を除く厚みは140μmであり、人造黒鉛とPVDFとの配合比率は、90:10である。
電極積層体8は、リード端子取り付け用の耳部を残して80mm×100mmに成形した正極及び負極をセパレータ3を介して対向させて交互に積層されている。リチウム極9は、リチウムイオン供給源であるリチウム金属6とニッケルからなる集電体7によって構成されている。リチウム金属6は、厚みが300μmである板であって、35mm×100mmの大きさに成形されている。この時、リチウム金属6は、正極及び負極と直接接触しないように、電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置されている。ニッケルからなる集電体7は、メッシュ状であって二つ折にされており、その間にリチウム金属6を挟持して圧着することにより担持している。そして、集電体7には、リード端子としてニッケル板12が溶接により取り付けられている。
電極積層体8において、正極及び負極のリード端子取り付け用の耳部は、正極、負極ごとに1つに束ねられ、それぞれにリード端子11が超音波溶接により取り付けられている。電極積層体8とリチウム極9は、電解液としてLiPF6をエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの1:1混合溶媒に溶解した1.0mol/L溶液に含浸され、外装10としてアルミラミネートフィルムを用いて外装されている。この時、図6に示すように、正極及び負極のリード端子11とリチウム極リード端子12は、それぞれセル13の外部に導出されている。
このようにして作製したセル13の負極とリチウム極9を、外部回路を通して短絡させることによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵した。この時、負極に吸蔵されるリチウムイオン量が、外部回路を用いた計測で2000mAhになった時に、吸蔵を終了して実施例1のセルを得た。このリチウムイオンの吸蔵に要した時間は400時間であった。
実施例1のセルを3.6Vまで充電したときの容量は920mAhであった。負極をリチウム金属を対極として3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量は7200mAhであった。また、セル容量と負極容量の比(c/b)は7.8であった。予め吸蔵されたリチウムイオン量と負極容量の比(c/a)は、3.6であった。
〔実施例2〕
リチウム極9の配置以外は実施例と同様にして実施例2のセル13を作製した。実施例2のセル13において、リチウム極9は図5に示すように、電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面の内、互いに対向する2つの面にそれぞれ配置されている。このようにして作製したセル13の負極とリチウム極9を、外部回路を通して短絡させることによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵した。この時、負極に吸蔵されるリチウムイオン量が、外部回路を用いた計測で2000mAhになった時に、吸蔵を終了して実施例2のセルを得た。このリチウムイオンの吸蔵に要した時間は180時間であった。
リチウム極9の配置以外は実施例と同様にして実施例2のセル13を作製した。実施例2のセル13において、リチウム極9は図5に示すように、電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面の内、互いに対向する2つの面にそれぞれ配置されている。このようにして作製したセル13の負極とリチウム極9を、外部回路を通して短絡させることによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵した。この時、負極に吸蔵されるリチウムイオン量が、外部回路を用いた計測で2000mAhになった時に、吸蔵を終了して実施例2のセルを得た。このリチウムイオンの吸蔵に要した時間は180時間であった。
〔比較例1〕
リチウム極9の構成と配置以外は実施例1と同様にして比較例1のセルを作製した。リチウム極9は、ニッケルメッシュに圧着されたリチウム金属6を銅箔からなる集電体5と直接接するよう構成され、図1に示すように配置されている。リチウム金属6は、電荷量2000mAhに相当するように厚み300μmのリチウム金属板を成形したものであって、銅箔に圧着されている。作製したセルを25℃の雰囲気において30日間放置することによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させて比較例1のセルを得た。
リチウム極9の構成と配置以外は実施例1と同様にして比較例1のセルを作製した。リチウム極9は、ニッケルメッシュに圧着されたリチウム金属6を銅箔からなる集電体5と直接接するよう構成され、図1に示すように配置されている。リチウム金属6は、電荷量2000mAhに相当するように厚み300μmのリチウム金属板を成形したものであって、銅箔に圧着されている。作製したセルを25℃の雰囲気において30日間放置することによって、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させて比較例1のセルを得た。
比較例1のセルを3.6Vまで充電した時の容量は1000mAhであった。負極をリチウム金属6を対極として3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量は7200mAhであった。また、セル容量と負極容量との比(c/b)は7.2であった。リチウム金属が全て溶解した場合、予め吸蔵されたリチウムイオン量と負極容量の比(c/a)は3.6であった。
〔比較例2〕
負極炭素電極4の厚みを70μmとし、リチウム極9を設けない構成とした以外は、実施例と同様にして比較例2のセルを作製した。よって、比較例2のセルには、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させていない。
負極炭素電極4の厚みを70μmとし、リチウム極9を設けない構成とした以外は、実施例と同様にして比較例2のセルを作製した。よって、比較例2のセルには、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させていない。
比較例2のセルを3.6Vまで充電した時の容量は1000mAhであった。そして、負極をリチウム金属6を対極として3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量は3600mAhであった。また、セル容量と負極容量との比(c/a)は3.6であった。
〔評価〕
このようにして作製した実施例1、比較例1及び比較例2のセルについて、3.6Vから2.8Vの範囲における放電容量を測定した。その結果を表1に示す。表1から明らかなように、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させた実施例1のセルは、リチウム金属6を銅箔と直接接触するように配置した比較例2のセルよりも放電容量が大きいことが分かる。
このようにして作製した実施例1、比較例1及び比較例2のセルについて、3.6Vから2.8Vの範囲における放電容量を測定した。その結果を表1に示す。表1から明らかなように、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させた実施例1のセルは、リチウム金属6を銅箔と直接接触するように配置した比較例2のセルよりも放電容量が大きいことが分かる。
一方、負極を70μmとした比較例2のセルは、比較例1のセルよりも大きな放電容量を示している。これは、初回充電時における負極の不可逆容量が小さくなり、初期充放電効率が良くなることが要因である。しかし、この場合でも実施例1のセルの容量密度が最も大きくなる。
実施例1及び比較例2のセルについて、50℃の雰囲気において3.6Vの電圧を課電し続けることによる劣化加速試験を1000時間実施した。劣化加速試験後に3.6Vから2.8Vの範囲における放電容量(mAh)を測定し、劣化加速試験前後の放電容量の差(mAh)を課電前の放電容量(mAh)で割ることにより、容量低下率を算出した。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように、電極積層体8の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置し、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させた実施例1のセルは容量低下率が0%であり、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させていない比較例2のセルは容量低下率が20%である。すなわち、実施例1のセルは、比較例2のセルのように課電よる容量低下が起こっていないことが分かる。
以上のことから、実施例で示したようにリチウム極9を正極及び負極と直接接触しないように、電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置し、負極に予めリチウムイオンを吸蔵させることによって、容量密度が大きく、かつ長期耐久性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
また、電極積層体8に対して2つのリチウム極9を対向するように配置することによって、負極にリチウムイオンを吸蔵するために要する時間を大幅に短縮することができる。
なお、本発明は、電極積層体8として正極及び負極をセパレータとともに巻回することにより円筒型または扁平型に作製したものを適用しても、同様の発明の効果を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、大容量、高耐久性を有し、大電流放電可能な蓄電デバイスとして、瞬時電圧低下補償装置、風力発電機、太陽光発電機、自動車等に好適に用いることができる。
1 分極性電極
2 正極集電体
3 セパレータ
4 炭素電極
5 負極集電体
6 リチウム金属
7 リチウム極集電体
8 電極積層体
9 リチウム極
10 外装
11 リード端子
12 リチウム極リード端子
13 セル(蓄電デバイス)
2 正極集電体
3 セパレータ
4 炭素電極
5 負極集電体
6 リチウム金属
7 リチウム極集電体
8 電極積層体
9 リチウム極
10 外装
11 リード端子
12 リチウム極リード端子
13 セル(蓄電デバイス)
Claims (7)
- 多孔質材料を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料を含む負極と、リチウム金属を含むリチウム極と、電解液としてリチウム塩の有機溶媒溶液とを備える蓄電デバイスにおいて、
前記正極及び負極は、セパレータを介して交互に積層された電極積層体を形成し、
前記リチウム極は、前記正極及び負極と直接接触しないように、かつ前記電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面に対して略平行に対向するように配置されることを特徴とする蓄電デバイス。 - 前記リチウム金属の前記電極積層体と対向する面は、前記リチウム金属と対向する前記電極積層体の前記正極及び負極の端面が露出している面と略同一の面積であることを特徴とする請求項1記載の蓄電デバイス。
- 前記リチウム極は、前記電極積層体の正極及び負極の端面が露出している面の内、複数にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1または2記載の蓄電デバイス。
- 前記リチウム金属を含むリチウム極は、ニッケルからなる多孔質の集電体にリチウム金属が担持されていることを特徴とする請求項1ないし3記載の蓄電デバイス。
- 前記アニオンを吸着、脱離可能な多孔質材料は活性炭であって、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料は黒鉛であることを特徴とする請求項1ないし4記載の蓄電デバイス。
- 請求項1ないし5において、前記負極と前記リチウム極との間に外部回路を用いて電流を流すことによって、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素材料に予めリチウムイオンを吸蔵する工程を含むことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
- 前記負極に予め吸蔵されるリチウムイオン量をa(mAh)、吸蔵後に前記蓄電デバイスを所定の電圧まで充電させたときのセル容量をb(mAh)、前記負極を3.0VLi/Li+から0.01VLi/Li+まで充電させた時の容量をc(mAh)とした時、3≦c/b≦10となるように負極容量が定められ、かつ1.2≦c/a≦5であることを特徴とする請求項6記載の蓄電デバイスの製造方法。
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