以下、本発明の第一実施形態に係る横型水冷エンジン1(以下単に「エンジン」という。)の全体構成について、図1から図3を用いて説明する。なお、以下では矢印Fの方向を前方として説明する。また、エンジン1を始動させる際に始動ハンドルを回転させる方向を、始動回転方向として説明する。
図1および図2に示すエンジン1において、シリンダブロック10の上側には、冷却水タンク11と燃料タンク12とが前後に並べて設けられ、シリンダブロック10の下側には、オイルパン13が設けられる。シリンダブロック10の後側には、クランクケース14が設けられ、シリンダブロック10の前側には、シリンダヘッド15が設けられる。シリンダヘッド15の上方には、エアクリーナ16とマフラー17とが左右に並べて設けられる。
また、シリンダブロック10内においては、燃焼する燃料によってピストンがシリンダ内を前後往復動し、このピストンに連結されたコンロッドを介してクランク軸18が回転するように構成される。クランク軸18は、クランクケース14内において左右方向に架設され、軸受けを介してクランクケース14に回転可能に軸支される。クランク軸18には、クランクギヤ181が固定される。クランクケース14内におけるクランク軸18の後方には、クランク軸18と連動可能な始動軸19が、左右方向に架設される。
ギヤケース20は、シリンダブロック10の左側に設けられる。ギヤケース20は、側面視において略矩形状の箱状部材であり、その内部にクランクギヤ181や始動ギヤ191等のギヤ類が収納可能に構成される。図3に示すように、ギヤケース20の左側面後部には、始動軸19が回転可能に軸支され、この始動軸19の左端部は、ギヤケース20に設けられる開口部201内に配置される。開口部201は、側面視(始動軸19の軸方向)において、その左端部が略円形状に開口し、この開口部201の内周面と始動軸19との間は、オイルシール202によってシールされる。ギヤケース20の左側面後部には、開口部201を通じて、始動ハンドル21が着脱可能に構成される。図2に示すように、ギヤケース20の左側面の下方には、エンジンオイルを供給するための給油口24が設けられる。給油口24は、蓋部材241によって蓋されており、この蓋部材241には、検油棒(図示省略)が一体的に設けられる。
次に、図3から図6を用いて、本発明の第一実施形態に係るエンジンの始動装置2について説明する。
エンジンの始動装置2は、エンジン1を手動で始動するものである。エンジンの始動装置2は、始動軸19、始動ハンドル21、インナ部材22、アウタ部材23を具備する。
図3に示すように、始動軸19は、クランク軸18を回転させるものである。始動軸19は、クランクケース14およびギヤケース20に回転可能に軸支される。始動軸19には、始動ギヤ191が固設され、この始動ギヤ191とクランクギヤ181(図1)とが噛合される。始動軸19の左端部(図3において上側方)においては、その軸心部に、エンジン1の始動時に始動ハンドル21を挿入するための差込穴192が設けられる。また、始動軸19の左側端には、一対のカム部193が設けられる。一対のカム部193は、カム係合面193aおよびカム係合面193aから延設されるカム案内面193bから構成される。
カム係合面193aは、始動ハンドル21を始動回転方向(白矢印R1方向)に回転操作させる際に、後述の始動ハンドル21の外周から突出するカムピン211の両端部に当接するように構成される。
カム案内面193bは、始動ハンドル21の回転操作の速度が始動軸19の回転速度より遅い際、つまり、始動ハンドル21が、始動軸19に対して相対的に始動回転方向と逆方向に回転される際に、後述するカムピン211が当接するように構成され、始動ハンドル21を始動軸19から離間するように、カム係合面193aから始動ハンドル21の始動回転方向と逆方向、かつ始動軸19の左側端に向けて延設される斜面に形成される。カム案内面193bは、始動ハンドル21が始動軸19に対して相対的に始動回転方向と逆方向に回転される際に、当接されるカムピン211を始動回転方向と逆方向に向けてカム案内面193b上を摺動させることで、始動ハンドル21を始動軸19から離間可能な所定の角度に構成される。加えて、カム案内面193bは、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際に、カムピン211を始動軸19に対して相対的に始動回転方向に向けて案内面上を摺動させることで、カムピン211がカム係合面193aに係合されるように構成される。
始動ハンドル21は、エンジン1を始動させる際に回転操作するものである。始動ハンドル21は、略クランク状に折れ曲がる丸棒部材によって構成される。始動ハンドル21は、その一側がハンドル操作者に握られるグリップとなり、その他側が始動軸19に係合するように外周面の半径方向外側に突出して一対のカムピン211が設けられる。つまり、ハンドル操作者がグリップを握って始動ハンドル21を回転操作することによって、この回転力がカムピン211によって係合される始動軸19に伝達され、始動ギヤ191、クランクギヤ181を介して、クランク軸18が回動されてエンジン1が始動可能となる。
図3、および図4に示すように、アウタ部材23は、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)と逆方向に回転された際に、始動軸19と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。アウタ部材23は、フランジ部231と、挿入部232と、一対のアウタピン233と、によって構成される。
フランジ部231は、アウタ部材23をギヤケース20の左側面(図3において上側方)に固設するものである。フランジ部231には、ギヤケース20に取り付けるための一対のボルト孔231aが形成される。また、フランジ部231の中央部には、一側端部がギヤケース20の開口部201内に嵌合可能な略円筒状の支持孔231bが形成される。フランジ部231は、支持孔231bの軸心と始動軸19の軸心とが一致するように、開口部201に支持孔231bの一側端を嵌合されて、ギヤケース20にボルト25によって固設される。
挿入部232は、始動ハンドル21が挿入されるものである。挿入部232は、略円筒状に形成され、一方向クラッチ232aを介して、フランジ部231に対して始動回転方向(白矢印R1方向)にのみ相対回転可能なように支持孔231bの内部に設けられる。この際、挿入部232は、挿入部232の軸心が始動軸19の軸心と一致するように、支持孔231bに設けられる。
一対のアウタピン233は、後述のインナ部材22を着脱自在に係合するものである。一対のアウタピン233は、挿入部232の内周面から挿入部232の半径方向内側に突出して設けられる。一対のアウタピン233は、円形断面の軸部材であり、挿入部232の軸心に対して対称な位置に配置される。
図5、および図6に示すように、インナ部材22は、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)と逆方向に回転された際に、始動軸19と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。インナ部材22は、始動ハンドル21に外嵌される円筒状の部材である。インナ部材22は、始動ハンドル21に外嵌された状態で、始動ハンドル21とともに挿通されるピン212(図3参照)によって、始動ハンドル21の他側方(始動軸19側方)に固定される。インナ部材22の円筒端部(始動軸19側方)には、一対の切欠きカム部221が形成される。一対の切欠きカム部221は、インナ部材22の軸中心(図6に示す一点鎖線)に対して対称(点対称)な形状とされる。つまり、一対の切欠きカム部221は、インナ部材22の軸中心を基準として180度回転させると一致する形状とされる。
一対の切欠きカム部221は、係合面221a、および係合面221aから延設される案内面221bから構成される。
係合面221aは、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)に回転操作される際に、アウタピン233に当接する切欠きカム部221の一側面から構成され、アウタピン233と係合可能なように略円弧状に形成される。つまり、係合面221aの形状は、アウタピン233の外周に沿うように形成される。また、切欠きカム部221の一側面の開口側方(始動軸19側方)には、始動回転方向にむけて案内面221bと略平行に延設される斜面221cを有する凸部221dが設けられる。
案内面221bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、アウタピン233に当接される切欠きカム部221の他側面から構成され、係合面221aから始動ハンドル21の始動回転方向、かつ切欠きカム部221の開口側方に向けて延設される斜面に形成される。案内面221bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、アウタピン233に当接されて始動回転方向と逆方向にアウタピン233上を摺動されることで、始動ハンドル21を始動軸19から離間可能な角度に傾斜して構成される。加えて、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際には、案内面221bがアウタピン233に当接されて始動回転方向にアウタピン233上を摺動されることで、係合面221aがアウタピン233に係合されるように構成される。
係合面221aは、始動軸19のカム係合面193aにカムピン211が係合すると同時に、アウタピン233が係合するように構成される。加えて、係合面221a(切欠きカム部221)の閉口側端(始動ハンドル21側方)から切欠きカム部221の開口側端までの距離である切欠深さL1(図3、図6参照)は、始動軸19のカム係合面193a(カム部193)の閉口側端(エンジン1側方)からカム部193の開口側端(始動ハンドル21側方)までの距離であるカム深さL2(図3参照)より大きく構成される。つまり、始動ハンドル21を始動軸19から離間する際に、案内面221bによって始動ハンドル21が移動される距離は、カム深さL2より大きくなるよう構成される。また、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際には、切欠きカム部221にアウタピン233が係合した後にカム部193にカムピン211が係合するように構成される。
次に、図7から図11を用いて、始動ハンドル21を着脱する様子ついて説明する。
図7(a)に示すように、エンジン1を始動させる場合、始動ハンドル21がギヤケース20の開口部201を通じて、始動軸19の差込穴192に差し込まれる(図8参照)。この際、始動ハンドル21は、始動ハンドル21に固定されるインナ部材22の切欠きカム部221の案内面221bによって、切欠きカム部221の係合面221aにアウタピン233が係合するように案内される。つまり、インナ部材22が、アウタ部材23の挿入部232に挿入されると(黒矢印X1方向)、切欠きカム部221の案内面221bの一端部(切欠きカム部221の開口側方)がアウタ部材23に設けられるアウタピン233に当接される。そして、図7(b)に示すように、この当接状態のままでさらに前記挿入がされると、案内面221bは、始動回転方向(白矢印R1方向)に向かってアウタピン233上を摺動される。その後、始動ハンドル21が始動回転方向に向かって回転されながら、案内面221bの他端部(係合面221a側)がアウタピン233に至ると、係合面221aは、アウタピン233に係合される。
図8(a)、および図8(b)に示すように、始動ハンドル21に設けられるカムピン211は、始動ハンドル21のインナ部材22の切欠きカム部221がアウタ部材23のアウタピン233に当接された後に、始動軸19のカム部193のカム案内面193bに当接されて始動回転方向(白矢印R1方向)に向かってカム案内面193b上を摺動される。その後、カムピン211は、カム係合面193aに係合される。
以上より、始動ハンドル21は、カムピン211を介して始動軸19と係合され、インナ部材22、アウタピン233を介してアウタ部材23と係合される。
図9に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)に回転操作されると、アウタピン233を介してインナ部材22と係合されているアウタ部材23の挿入部232は、一方向クラッチ232aの作用によりフランジ部231に対して始動回転方向に相対回転される。つまり、始動ハンドル21は、インナ部材22の切欠きカム部221の係合面221aが、始動軸19の軸回り方向においてアウタ部材23のアウタピン233に係合された状態で、アウタ部材23の挿入部232とともに回転操作される。同時に、始動ハンドル21は、インナ部材22の切欠きカム部221の係合面221aの凸部221dが、始動軸19の軸方向においてアウタ部材23のアウタピン233に係合された状態で、アウタ部材23の挿入部232とともに回転操作される。従って、始動ハンドル21は、始動軸19の軸方向に外れない。始動ハンドル21の回転力は、カムピン211を介して始動ハンドル21と係合される始動軸19に伝達され、始動ギヤ191、クランクギヤ181を介して、クランク軸18が回転される。
図10(a)、および図10(b)に示すように、エンジン1の始動が成功して、始動軸19の回転速度が始動ハンドル21を回転操作する速度よりも速くなると、始動ハンドル21のカムピン211は、始動軸19のカム部193のカム案内面193bに当接されて始動軸19に対して始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)にカム案内面193b上を摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19との係合を解除され、始動軸19から離間する方向(黒矢印X2方向)に移動される、この際、インナ部材22は、凸部221dの斜面221cがアウタ部材23のアウタピン233に当接されて始動回転方向と逆方向に摺動され、アウタ部材23との係合を解除される。従って、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。
エンジン1の始動が失敗した場合、上死点の手前まで圧縮動作して上死点を越えることができなかったピストンによるシリンダ内の圧縮力の反動によって、クランク軸18が逆方向(エンジン1の始動が成功した場合のクランク軸18の回転方向とは逆方向)に回転する。クランク軸18の回転力は、クランクギヤ181、始動ギヤ191を介して始動軸19に伝達され、始動軸19に係合される始動ハンドル21が回転される(図1参照)。これにより、図11(a)、および図11(b)に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)に回転されると、アウタピン233を介してインナ部材22と係合されているアウタ部材23の挿入部232は、一方向クラッチ232aの作用によりフランジ部231に対して始動回転方向と逆方向に相対回転されない。つまり、始動ハンドル21のみが始動回転方向と逆方向に回転される。よって、インナ部材22は、切欠きカム部221の係合面221aがアウタ部材23のアウタピン233との係合を解除され、切欠きカム部221の案内面221bがアウタピン233に当接されて始動回転方向と逆方向に摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から離間する方向(黒矢印X2方向)に移動される。従って、始動ハンドル21の移動量がカム部193のカム深さL2を超えると、始動ハンドル21は、始動軸19との係合が解除され、エンジン1から解放される。
以上のごとく、第一実施形態に係るエンジンの始動装置2は、エンジン1の始動軸19と、始動軸19に着脱自在に構成された始動ハンドル21と、始動ハンドル21側に設けられたインナ部材22と、始動軸19の周囲のエンジン1側に固定されたアウタ部材23と、からなり、始動ハンドル21を始動回転方向に回転操作することでエンジン1を始動するエンジン1の始動装置2であって、エンジン1側に固定されたアウタ部材23には、始動ハンドル21の始動回転方向にのみ回転可能な一方向クラッチ232aを配置し、一方向クラッチ232aを介してアウタ部材23にアウタピン233を設けるとともに、始動ハンドル21側のインナ部材22には、始動ハンドル21が始動回転方向に回転する際にはアウタピン233に係合し、かつ、始動軸19が始動回転方向とは逆方向に回転する際にはアウタピン233を解放することにより始動ハンドル21をエンジン1側から解放する切欠きカム部221を配置したものである。
このように構成することにより、エンジン1に一方向クラッチ232aを設け、始動ハンドル21に切欠きカム部221を有するインナ部材22を設けるだけで、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際にのみ固定されるアウタピン233とインナ部材22の切欠きカム部221の作用によって、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。これにより、簡易な構成で始動軸19の逆回転時にエンジン1から始動ハンドル21を解放することができ、かつ取り扱いが容易である。
また、切欠きカム部221には、始動ハンドル21が回転操作される際、アウタピン233と係合して始動ハンドル21を始動軸19の軸方向に抜けやすくなるのを防止する凸部221dが設けられているものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動ハンドル21を回転操作する際に、アウタピン233に係合される係合面221aの凸部221dによって、始動軸19の軸方向に移動不能となる。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から外れ難くなる。
また、始動軸19を始動回転方向に回転させるために、始動ハンドル21の一側端にはカムピン211が設けられ、始動軸19を始動回転方向に回転させるために、始動軸19の一側端には、カムピン211が係合するカム係合面193aを有するカム部193が設けられており、始動軸19の一側端からカム係合面193aまでの距離が、始動軸19が始動回転方向とは逆方向に回転する際には、始動ハンドル21をエンジン1側から解放する切欠きカム部221の開口側端から、アウタピン233が係合する切欠きカム部221の係合面221aまでの距離よりも小さくなるように構成したものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動軸19の逆回転により始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転操作される際に、始動ハンドル21が、切欠きカム部221によって始動軸19から離間される距離は、始動軸19の一側端からカム係合面193aまでの距離より大きい。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から確実、かつ円滑に外れる。また、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際、切欠きカム部221にアウタピン233が係合した後にカム部193にカムピン211が係合するので、始動軸19と始動ハンドル21とを容易に係合させることができる。
次に、図12および図14を用いて、第二実施形態に係るエンジンの始動装置3の構成について説明する。なお、以下の実施形態において、前述の実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
エンジンの始動装置3は、エンジン1を手動で始動するものである。エンジンの始動装置3は始動ハンドル21、インナ部材32、アウタ部材33を具備する。
図12、および図13に示すように、インナ部材32は、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)と逆方向に回転された際に、始動軸19と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。インナ部材32は、始動ハンドル21に外嵌される円筒状の部材である。インナ部材32は、一方向クラッチ321を介して、始動ハンドル21に対して始動回転方向と逆方向にのみ相対回転可能なように始動ハンドル21の他側方(始動軸19側方)に設けられる。また、インナ部材32には、外周面の半径方向外側に突出して一対のインナピン322が設けられる。インナピン322は、インナ部材32を後述のアウタ部材33に着脱自在に係合するものである。
アウタ部材33は、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転された際に、始動軸19と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。アウタ部材33は、フランジ部331と、挿入部332と、によって構成される。
フランジ部331は、アウタ部材33をギヤケース20の左側面に固設するものである。フランジ部331には、ギヤケース20に取り付けるための一対のボルト孔331aが形成される。また、フランジ部331の中央部には、一側端部がギヤケース20の開口部201内に嵌合可能な略円筒状の挿入部332が形成される。フランジ部331は、挿入部332の軸心と始動軸19の軸心とが一致するように、開口部201に挿入部332の一側端を嵌合されて、ギヤケース20にボルト25によって固設される。
挿入部332は、始動ハンドル21が挿入されるものである。挿入部332は、略円筒状に形成され、円筒端部(始動ハンドル21側方)には、一対の切欠きカム部333が形成される。一対の切欠きカム部333は、アウタ部材33の軸中心(図13に示す一点鎖線)に対して対称(点対称)な形状とされる。つまり、一対の切欠きカム部333は、アウタ部材33の軸中心を基準として180度回転させると一致する形状とされる。
一対の切欠きカム部333は、係合面333a、および係合面333aから延設される案内面333bから構成される。
係合面333aは、始動ハンドル21が始動回転方向に回転操作される際に、インナピン322に当接する切欠きカム部333の一側面から構成され、インナピン322と係合可能なように略円弧状に形成される。つまり、係合面333aの形状は、インナピン322の外周に沿うように形成される。また、切欠きカム部333の一側面の開口側方(始動軸19側方)には、始動回転方向と逆方向にむけて案内面333bと略平行に延設される斜面333cを有する凸部333dが設けられる。凸部333dが設けられる。
案内面333bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、インナピン322に当接される切欠きカム部333の他側面から構成され、係合面333aから始動ハンドル21の始動回転方向と逆方向、かつ切欠きカム部333の開口側方に向けて延設される斜面に形成される。案内面333bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、インナピン322が当接されて、インナピン322が始動回転方向と逆方向に案内面333b上を摺動されることで、始動ハンドル21を始動軸19から離間可能な角度に傾斜して構成される。加えて、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際には、インナピン322が案内面333bに当接されて、インナピン322が始動回転方向に案内面333b上を摺動されることで、インナピン322が係合面333aに係合されるように構成される。
次に、図14から図17を用いて、始動ハンドル21を着脱する様子ついて説明する。
図14(a)に示すように、エンジン1を始動させる場合、始動ハンドル21がギヤケース20の開口部201を通じて、始動軸19の差込穴192に差し込まれる。この際、始動ハンドル21は、インナ部材32に設けられるインナピン322が、アウタ部材33の切欠きカム部333の案内面333bによって切欠きカム部333の係合面333aに係合するように案内される。つまり、インナ部材32が、アウタ部材33の挿入部332に挿入されると(図14に示す黒矢印方向)、インナピン322が切欠きカム部333の案内面333bの一端部(切欠きカム部333の開口側方)に当接される。そして、図14(b)に示すように、この当接状態のままでさらに前記挿入がされると、インナピン322は、始動回転方向に向かって案内面333b上を摺動される。その後、インナピン322が案内面333bの他端部(係合面333a側)に至ると、インナピン322が係合面333aに係合される。また、始動ハンドル21に設けられるカムピン211は、インナ部材32のインナピン322がアウタ部材33の切欠きカム部333に当接された後に、始動軸19のカム部193のカム案内面193bに当接されて始動回転方向に向かってカム案内面193b上を摺動される。その後、カムピン211は、カム係合面193aに係合される(図8参照)。従って、始動ハンドル21は、カムピン211を介して始動軸19と係合され、インナ部材32、インナピン322を介してアウタ部材33と係合される。
図15に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向に回転操作されると、インナピン322を介してアウタ部材33と係合されているインナ部材32は、一方向クラッチ321の作用により始動ハンドル21に対して始動回転方向と逆方向に相対回転する。つまり、始動ハンドル21は、インナ部材32のインナピン322が、始動軸19の軸(図13に示す一点鎖線)回り方向において、アウタ部材33の切欠きカム部333の係合面333aに係合された状態で(始動ハンドル21のみが)回転操作される。同時に、始動ハンドル21は、インナ部材32のインナピン322が、始動軸19の軸方向において、アウタ部材33の係合面333aの凸部333dに係合された状態で始動ハンドル21のみが回転操作される。従って、始動ハンドル21が始動回転方向に回転操作される際に、始動ハンドル21は、始動軸19の軸方向に外れない。始動ハンドル21の回転力は、カムピン211を介して始動ハンドル21と係合される始動軸19に伝達され、始動ギヤ191、クランクギヤ181を介して、クランク軸18が回転される。
図16(a)、および図16(b)に示すように、エンジン1の始動が成功して、始動軸19の回転速度が始動ハンドル21を回転操作する速度よりも速くなると、始動ハンドル21のカムピン211は、始動軸19のカム部193のカム案内面193bに当接されて始動軸19に対して始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)に案内面333b上を摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19との係合を解除され、始動軸19から離間する方向に移動される、この際、インナ部材32は、インナピン322がアウタ部材33の凸部333dの斜面333cに当接されて始動回転方向と逆方向に摺動され、アウタ部材33との係合を解除される。従って、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。
エンジン1の始動が失敗した場合、上死点の手前まで圧縮動作して上死点を越えることができなかったピストンによるシリンダ内の圧縮力の反動によって、クランク軸18が逆方向(エンジン1の始動が成功した場合のクランク軸18の回転方向とは逆方向)に回転する。クランク軸18の回転力は、クランクギヤ181、始動ギヤ191を介して始動軸19に伝達され、始動軸19に係合される始動ハンドル21が回動される。これにより、図17(a)、および図17(b)に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)に回転されると、インナピン322を介してアウタ部材33と係合されているインナ部材32は、一方向クラッチ321の作用により始動ハンドル21に対して始動回転方向に相対回転されない。つまり、始動ハンドル21とインナ部材32とが始動回転方向と逆方向に回転される。よって、インナ部材32は、インナピン322がアウタ部材33の切欠きカム部333の係合面333aとの係合を解除され、インナピン322が切欠きカム部333の案内面333bに当接されて始動回転方向と逆方向に摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から離間する方向(黒矢印X2方向)に移動される。従って、始動ハンドル21の移動量がカム部193のカム深さL2(図3参照)を超えると、始動ハンドル21は、始動軸19との係合が解除され、エンジン1から解放される。
以上のごとく、第二実施形態に係るエンジンの始動装置3は、エンジン1の始動軸19と、始動軸19に着脱自在に構成された始動ハンドル21と、始動ハンドル21側に設けられたインナ部材32と、始動軸19の周囲のエンジン1側に固定されたアウタ部材33とからなり、始動ハンドル21を始動回転方向に回転操作することでエンジン1を始動するエンジンの始動装置3であって、始動ハンドル21側には、インナ部材32が始動ハンドル21の始動回転方向とは逆方向にのみ回転可能となるように一方向クラッチ321を配置し、一方向クラッチ321を介してインナ部材32にインナピン322を設けるとともに、エンジン1側のアウタ部材33には、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転された場合に、インナピン322を解放することにより始動ハンドル21をエンジン1側から解放する切欠きカム部333を配置したものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動ハンドル21に一方向クラッチ321を設け、エンジン1に切欠きカム部333を有するアウタ部材33を設けるだけで、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際にのみ始動ハンドル21とともに回転するインナピン322とアウタ部材33の切欠きカム部333の作用によって、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。これにより、簡易な構成で始動軸19の逆回転時にエンジン1から始動ハンドル21を解放することができ、かつ取り扱いが容易である。
また、切欠きカム部333には、始動ハンドル21が回転操作される際、インナピン322と係合して始動ハンドル21を始動軸19の軸方向に抜けやすくなるのを防止する凸部333dが設けられているものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動ハンドル21を回転操作する際に、係合面333aの凸部333dによって、インナピン322が始動軸19の軸方向に移動不能となる。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から外れ難くなる。
また、始動軸19を始動回転方向に回転させるために、始動ハンドル21の一側端にはカムピン211が設けられ、始動軸19を始動回転方向に回転させるために、始動軸19の一側端には、カムピン211が係合するカム係合面193aを有するカム部193が設けられており、始動軸19の一側端からカム係合面193aまでの距離が、始動軸19が始動回転方向とは逆方向に回転する際には、始動ハンドル21をエンジン1側から解放する切欠きカム部221の開口側端から、インナピン322が係合する切欠きカム部333の係合面333aまでの距離よりも小さくなるように構成したものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動軸19の逆回転により始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、始動ハンドル21が、切欠きカム部333によって始動軸19から離間される距離は、始動軸19の一側端からカム係合面193aまでの距離より大きい。これにより、始動ハンドル21は、始動軸19から確実、かつ円滑に外れる。また、始動ハンドル21を始動軸19に係合させる際、切欠きカム部333にインナピン322が係合した後にカム部193にカムピン211が係合するので、始動軸19と始動ハンドル21とを容易に係合させることができる。
次に、図18および図19を用いて、第三実施形態に係るエンジンの始動装置4の構成について説明する。なお、以下の実施形態において、前述の実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
エンジンの始動装置4は、エンジン1を手動で始動するものである。エンジン1始動装置4は、始動軸39、始動ハンドル21、インナ部材42、アウタ部材43を具備する。
図18、および図19に示すように、始動軸39は、軸受けを介してクランクケース14およびギヤケース20に回転可能に軸支される。始動軸39には、始動ギヤ191が固設され、この始動ギヤ191とクランクギヤ181とが噛合される(図1参照)。始動軸39の左端部においては、始動軸39に係合するように外周面の半径方向外側に突出して一対の始動軸ピン391が設けられる。
始動ハンドル21は、エンジン1を始動させる際に回転操作するものである。始動ハンドル21は、略クランク状に折れ曲がる丸棒部材によって構成される。始動ハンドル21は、その一側がハンドル操作者に握られるグリップとなり、その他側端部(始動軸39側方)に、後述するアウタ部材43に設けられるアウタピン433、および始動軸39に設けられる始動軸ピン391に係合されるインナ部材42が設けられる。つまり、ハンドル操作者がグリップを握って始動ハンドル21を回転操作することによって、この回転力がインナ部材42によって係合される始動軸39に伝達され、始動ギヤ191、クランクギヤ181を介して、クランク軸18が回動されてエンジン1が始動可能となる。
アウタ部材43は、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)と逆方向に回転された際に、始動軸39と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。アウタ部材43は、フランジ部431と、挿入部432と、一対のアウタピン433と、によって構成される。
フランジ部431は、アウタ部材43をギヤケース20の左側面に固設するものである。フランジ部431には、ギヤケース20に取り付けるための一対のボルト孔431aが形成される。また、フランジ部431の中央部には、一側端部がギヤケース20の開口部201内に嵌合可能な略円筒状の支持孔431bが形成される。フランジ部431は、支持孔431bの軸心と始動軸39の軸心とが一致するように、開口部201に支持孔431bの一側端を嵌合されて、ギヤケース20にボルト25によって固設される。
挿入部432は、始動ハンドル21が挿入されるものである。挿入部432は、略円筒状に形成され、一方向クラッチ432aを介して、フランジ部431に対して始動回転方向にのみ相対回転可能なように支持孔431bの内部に設けられる。この際、挿入部432は、挿入部432の軸心が始動軸39の軸心と一致するように、支持孔431bに設けられる。
一対のアウタピン433は、後述のインナ部材42を着脱自在に係合するものである。一対のアウタピン433は、挿入部432の内周面から挿入部432の半径方向内側に突出して設けられる。アウタピン433は、円形断面の軸部材であり、挿入部432の軸心に対して対称な位置に配置される。アウタピン433は、始動軸39の始動軸ピン391より始動ハンドル21側方に設けられる。また、アウタピン433は、始動軸39の始動軸ピン391、またはアウタピン433が回転しても、互いに干渉しないように構成される。つまり、図21に示すように、始動軸ピン391の軸心とアウタピン433の軸心が平行となる位置では、両者の間に隙間を有する構成としている。
図18、および図19に示すように、インナ部材42は、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転された際に、始動軸39と始動ハンドル21との係合を解除させ、始動ハンドル21をエンジン1から解放するものである。インナ部材42は、始動ハンドル21の他側端部(始動軸39側方)に設けられ、始動軸39が挿入可能に形成される円筒状の部材である。インナ部材42は、その軸心が始動ハンドル21の軸心と一致するように始動ハンドル21の他側端にピン212によって固定される。インナ部材42の円筒端部(始動軸39側方)には、一対の切欠きカム部421が形成される。一対の切欠きカム部421は、インナ部材42の軸中心(図19に示す一点鎖線)に対して対称(点対称)な形状とされる。つまり、一対の切欠きカム部421は、インナ部材42の軸中心を基準として180度回転させると一致する形状とされる。
一対の切欠きカム部421は、係合面421a、および係合面421aから延設される案内面421bから構成される。
係合面421aは、始動ハンドル21が始動回転方向に回転操作される際に、アウタピン433に当接する切欠きカム部421の一側面から構成され、アウタピン433と係合可能なように略円弧状に形成される。つまり、係合面421aの形状は、アウタピン433の外周に沿うように形成される。
案内面421bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、アウタピン433に当接される切欠きカム部421の他側面から構成され、係合面421a、から始動ハンドル21の始動回転方向、かつ切欠きカム部421の開口側方に向けて延設される斜面に形成される。案内面421bは、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、アウタピン433に当接されて始動回転方向と逆方向にアウタピン433上を摺動されることで、始動ハンドル21を始動軸39から離間可能な角度に傾斜して構成される。加えて、始動ハンドル21を始動軸39に係合させる際には、案内面421bがアウタピン433に当接されて始動回転方向にアウタピン433上を摺動されることで、係合面421aがアウタピン433に係合されるように構成される。
次に、図20から図23を用いて、始動ハンドル21を着脱する様子ついて説明する。
図20(a)に示すように、エンジン1を始動させる場合、始動ハンドル21に固定されるインナ部材42がアウタ部材43の挿入部432に挿入される。この際、始動ハンドル21は、インナ部材42の切欠きカム部421の案内面421bによって、切欠きカム部421の係合面421aにアウタピン433が係合するように案内される。つまり、インナ部材42が、アウタ部材43の挿入部432に挿入されると(黒矢印X1方向)、切欠きカム部421の案内面421bの一端部(切欠きカム部421の開口側方)がアウタ部材43に設けられるアウタピン433に当接される。そして、図20(b)に示すように、この当接状態のままでさらに前記挿入がされると、案内面421bは、始動回転方向(白矢印R1方向)に向かってアウタピン433上を摺動される。その後、案内面421bの他端部がアウタピン433に至ると、係合面421aがアウタピン433に係合される。また、案内面421bは、案内面421bがアウタピン433に当接された後に、始動軸39に設けられる始動軸ピン391に当接されて始動回転方向に向かって始動軸ピン391上を摺動される。その後、始動軸ピン391に係合面421aが係合される。従って、始動ハンドル21は、インナ部材42、始動軸ピン391を介して始動軸39と係合され、インナ部材42、アウタピン433を介してアウタ部材43と係合される。
図21に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向(白矢印R1方向)に回転操作されると、アウタピン433を介してインナ部材42と係合されているアウタ部材43の挿入部432は、一方向クラッチ432aの作用によりフランジ部431に対して始動回転方向に相対回転される。つまり、始動ハンドル21は、インナ部材42の切欠きカム部421が、始動軸39の軸(図19に示す一点鎖線)回り方向において、アウタ部材43のアウタピン433に係合された状態でアウタ部材43の挿入部432とともに回転操作される。始動ハンドル21の回転力は、始動軸ピン391を介して始動ハンドル21と係合される始動軸39に伝達され、始動ギヤ191、クランクギヤ181を介して、クランク軸18が回転される。
図22(a)、および図22(b)に示すように、エンジン1の始動が成功して、始動軸39の回転速度が始動ハンドル21を回転操作する速度よりも速くなると、始動ハンドル21のインナ部材42は、切欠きカム部421の案内面421bが始動軸39の始動軸ピン391に当接されて始動軸39に対して始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)に始動軸ピン391上を摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸39との係合を解除され、始動軸39から離間する方向に移動される、従って、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。
エンジン1の始動が失敗した場合、上死点の手前まで圧縮動作して上死点を越えることができなかったピストンによるシリンダ内の圧縮力の反動によって、クランク軸18が逆方向(エンジン1の始動が成功した場合のクランク軸18の回転方向とは逆方向)に回転する。クランク軸18の回転力は、クランクギヤ181、始動ギヤ191を介して始動軸39に伝達され、始動軸39に係合される始動ハンドル21が回動される。これにより、図23に示すように、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向(白矢印R2方向)に回転されると、アウタピン433を介してインナ部材42と係合されているアウタ部材43の挿入部432は、一方向クラッチ432aの作用によりフランジ部431に対して始動回転方向と逆方向に相対回転されない。つまり、始動ハンドル21のみが始動回転方向と逆方向に回転される。よって、インナ部材42は、切欠きカム部421の係合面421aがアウタ部材43のアウタピン433との係合を解除され、切欠きカム部421の案内面421bがアウタピン433に当接されてアウタ部材43に対して始動回転方向と逆方向に摺動される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸39から離間する方向(黒矢印方向X2方向)に移動される。インナ部材42は、切欠きカム部421の係合面421aがアウタピン433より始動軸39側方にある始動軸ピン391との係合の係合を解除された後に、切欠きカム部421と始動ハンドル21を始動軸39から離間させているアウタピン433との係合を解除される。従って、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。
以上のごとく、第三実施形態に係るエンジンの始動装置4は、エンジン1の始動軸39と、始動軸39に着脱自在に構成された始動ハンドル21と、始動ハンドル21側に設けられたインナ部材42と、始動軸39の周囲のエンジン1側に固定されたアウタ部材43とからなり、始動ハンドル21を始動回転方向に回転操作することでエンジン1を始動するエンジンの始動装置4であって、エンジン1側に固定されたアウタ部材43には、始動ハンドル21の始動回転方向にのみ回転可能な一方向クラッチ432aを配置し、一方向クラッチ432aを介してアウタ部材43にアウタピン433を設けるとともに、始動ハンドル21側のインナ部材42には、始動ハンドル21が始動回転方向に回転する際にはアウタピン433に係合し、かつ、始動軸19が始動回転方向とは逆方向に回転する際にはアウタピン433を解放することにより始動ハンドル21をエンジン1側から解放する切欠きカム部421を配置するとともに、始動軸39に始動軸ピン391を設け、始動軸ピン391を切欠きカム部421に係合可能に構成したものである。
このように構成することにより、エンジン1に一方向クラッチ432aを設け、始動ハンドル21に切欠きカム部421を有するインナ部材42を設けるだけで、始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際にのみ固定されるアウタピン433とインナ部材42の切欠きカム部421の作用によって、始動ハンドル21は、エンジン1から解放される。これにより、簡易な構成で始動軸39の逆回転時にエンジン1から始動ハンドル21を解放することができ、かつ取り扱いが容易である。
また、始動ハンドル21をエンジン1の始動軸39に装着した状態において、アウタピン433は、始動軸ピン391よりもエンジン1と反対側である始動ハンドル21側に近接するように位置をずらして配置されているものである。
このように構成することにより、前述に記載の発明の効果に加えて、始動軸39の逆回転により始動ハンドル21が始動回転方向と逆方向に回転される際に、アウタピン433は、始動軸ピン391よりも始動ハンドル21に近接しているので、始動軸ピン391が切欠きカム部421との係合を解除された後に、切欠きカム部421との係合を解除される。これにより、始動ハンドル21は、始動軸39から確実、かつ円滑に外れる。また、始動ハンドル21を始動軸39に係合させる際、切欠きカム部421にアウタピン433が係合した後に切欠きカム部421に始動軸ピン391が係合するので、始動軸39と始動ハンドル21とを容易に係合させることができる。