JP2011074166A - 二重被覆ダイヤモンド研磨材粒子及びその製造方法 - Google Patents

二重被覆ダイヤモンド研磨材粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
工具マトリックス中に保持使用された構成において、熱放散性の良好なダイヤモンド粒子を提供すること。
【解決手段】
溶融塩中に整粒されたダイヤモンド粉末と、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびSiから選ばれる第一の金属の粉末とを分散させ、ダイヤモンド粒子の表面に該金属の炭化物からなる第一被覆層を形成し、次いで前記第一被覆層の上に電気めっきまたは化学めっきによりCu又はCuを主体とする合金からなる第二被覆層を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、二重被覆ダイヤモンド研磨材粒子、特に放熱性に優れたダイヤモンド研磨材粒子及びその製造方法に関する。
ダイヤモンド粒子を用いた工具の製作、特に結合剤として金属を用いる工具の製作に際し、ボンド材による保持力の向上を目的として、粒子表面に金属炭化物膜を形成する技術が知られている。
特公平6-23394
これは結合剤金属に対する濡れ性(化学反応性)が、ダイヤモンド(炭素)よりも金属炭化物の方が良好であることに基づいている。しかもダイヤモンド粒子表面を覆っている金属炭化物の炭素は、ダイヤモンド粒子から供給されることから、粒子表面と金属炭化物とは連続しており、結果としてダイヤモンド粒子が金属炭化物層を介した化学結合によって結合剤金属中に固定されることとなる。
ダイヤモンド粒子表面に金属炭化物膜を形成する技術としては、蒸着、スパッタリング、CVDなどの手法が知られており、加熱下で粒子表面に生成された金属とダイヤモンドとの反応によって、炭化物が形成される。
一方、より簡単に金属炭化物膜を形成する技術としてパイロゾル法が知られている。これは金属イオンを含む溶融塩中にダイヤモンド粒子を浸漬させて、金属イオンとダイヤモンドとの反応により粒子表面に炭化物被覆を形成させる方法であって、融液中における反応であることから、粒子表面全面にほぼ均一な厚さの被覆を容易に形成でき、またサブミクロン級の粒子表面にも被覆形成が可能という特徴を有する。
ダイヤモンド粒子を覆っている金属炭化物膜は、工具製作時の加熱状態で粒子を保持するマトリックス金属に濡れることによって、マトリックス内に強固に保持され、また加熱時の雰囲気ガスからダイヤモンドを保護する機能も発揮していると理解されている。
別の分野の工具として、樹脂系の結合剤を用いる場合には、破砕されやすい粒子の脱落防止や、粒子の保持面積の向上を目的とし、全体として粒子の有効利用率を高める手段としてニッケルや銅の金属被覆を施した粒子が用いられている。
特公昭45-22477 特公昭49-13666
銅被覆を施した粒子においては、研磨加工の作用点に生じた熱を速やかに拡散させ、局部加熱による結合剤の劣化の防止が可能であることから、冷却材を用いない研削・研磨加工用の粒子として広く用いられている。ただし使用に耐える銅めっきを直接ダイヤモンド粒子上に施すことは困難なため、固着強度の向上を目的とする中間層として、ダイヤモンド粒子表面にダイヤモンドの質量に対して20%程度のニッケルめっき層を施してから、銅めっき層を形成することが多い。
これらの粒子においてはダイヤモンドと金属被覆との間の結合はあまり期待できず、粒子は単に金属被覆の殻の中に保持されている状態であるとも言える。このため金属被覆による粒子の保持効果は必ずしも十分ではなかった。
本発明の主な目的は前記した欠点の克服、特に、工具マトリックス中に保持使用された構成における熱放散性の良好なダイヤモンド粒子を提供することにある。
このような粒子は、本発明によれば、ダイヤモンド(炭素)に比して工具マトリックス(結合剤)への濡れ性の良好な金属炭化物膜を粒子のダイヤモンド表面に形成し、さらにその上に銅めっきを施すことによって達成される。
本発明のダイヤモンド粒子は、基体を構成するダイヤモンド粒子が表面に隣接する第一被覆層及び該被覆層の外面に隣接する第二被覆層を有し、上記第一被覆層はダイヤモンド粒子の表面において炭素と化学結合した、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびSiから選ばれる第一の金属の炭化物を含有し、また上記第二被覆層はCuからなることを特徴とする。
本発明によって作成された、内側に金属炭化物の薄層と、外側に銅の被覆層とを有するダイヤモンド粒子は、工具マトリックス中に保持使用されたときの良好な保持力及び熱放散性に基づく研削性能の向上に加えて、後述するように、外層を構成する銅の高導電性に基づいて、電着工具作成時に、高効率で電着操作を行えるという利点も得られる。
研削・研磨工具用ダイヤモンド粒子において、樹脂系結合剤用の粒子として上述したように銅めっきダイヤモンド粒子が多用されるが、かかる銅被覆粒子の製作に際しては、上述したように銅めっき層のダイヤモンド粒子に対する固着強度を高める目的から、ダイヤモンド粒子表面に予め下地層としてニッケルめっきを施すことが行われている。しかもこのニッケルめっきダイヤモンド粒子の全面を覆う必要があることから、10%(質量基準。以下同様)を超える厚めっきを必要とし、銅による熱拡散効果が十分に発揮されない欠点があった。
例えば市販の銅被覆粒子では、下地層として粒子に対して約20%のニッケルめっきを施し、その上に約30%の銅めっきが施されている。この場合のめっき厚さは、粒子を直径100μmの真球と仮定すると、厚さ約2 μmのニッケル層上に約4μmの銅被覆が存在する計算になる。
しかし本発明においては、金属炭化物膜がダイヤモンド粒子表面に形成されることにより、上記のニッケルめっきによる中間層の形成が不要となる。しかも本発明方法によるパイロゾル法による炭化物形成では、nmオーダーの厚さの緻密な組織の薄膜を、粒子全面に均一に形成することが可能であることから、中間層による熱拡散効果が向上し、結果として銅めっき層による熱の拡散効果の向上によって樹脂系結合剤の劣化が抑制され、ダイヤモンドの脱落に起因する工具寿命の低下の阻止が可能となった。
例えば上記粒子の場合、0.5%のチタン添加によって粒子全面を覆うTiC膜の形成が可能であるが、計算による膜の厚さは0.06μmに過ぎず、研削加工の際にダイヤモンド粒子先端部に生じた熱を被覆の銅へ散らす効果が、従来のニッケル下地層に比して格段に向上する。
表面の銅めっき層は、また工具製作に用いられるほぼ全ての金属系マトリックス材料と相溶性を有する。このため、焼結工程を経由する工具製作用の粒子としても有用であって、マトリックス材料による粒子の保持強度の向上に伴う粒子の脱落防止、粒子の有効利用による工具寿命の向上、また切込量を大きくする高負荷加工が可能になると共に、工具の加工面における粒子の突き出し高さが大きく取れることによる加工エネルギーの減少が可能となる。
また前記したニッケル下地めっきの代わりに金属炭化物被覆を施すことによる効果として、ダイヤモンド工具を用いた加工工程で生じる高温において、ダイヤモンドの黒鉛化、酸化を効果的に阻止する作用も挙げられる。ニッケルは高温において炭素の相転移を促進する作用があり、高圧力下では黒鉛からダイヤモンドへの反応を促進するが、常圧下では逆にダイヤモンドの黒鉛化を促進することが知られている。従ってダイヤモンドに接する被覆層材料としてニッケルに代えて金属炭化物を用いることで、黒鉛化促進の要因が除かれ、また緻密な金属炭化物被覆は、ダイヤモンドが酸素によって侵食されるのを効果的に阻止している。
本発明品の別の用途として、細かなダイヤモンド粒子を用いた懸濁めっきにおいて、銅めっき層をプラスに帯電させることにより、効率よく陰極側の支持体金属上に固着させることが可能となる。この手法を用いることにより、分散粒子濃度の低い条件における電着操作を用いて粒子が均一に分散した工具の製作、あるいは電着速度を高めることによる生産性の向上が可能となった。
本発明において、ダイヤモンド粒子表面に隣接して形成される前記第一被覆層の量は、基体のダイヤモンドに対する質量比において0.5%以上で顕著である。ただし10%を超えると熱伝導阻害の原因となるので、これらの範囲内に設定するのが好適である。なお本発明における%表示は、別段の表示がない限り、全て質量基準による。
一方、銅からなる第二被覆層による効果はダイヤモンドに対する比率2%以上で顕著であるが、100%を超えるとダイヤモンド粒子本来の切れ味が得にくくなる。
本発明で使用するダイヤモンド粒子としては、平均粒径において0.5μm以上0.5mm以下のものが利用可能である。
本発明において前記第二の被覆層を構成する銅は純銅に限定する必要はないが、熱や電気の伝導性を考慮すると純度の高いほど好ましい。銅被覆層の形成には、化学めっきによるのが簡便であるが、合金化に伴う熱伝導度低下の欠点があるので、電気めっき、あるいは蒸着などの方法がより好ましい。
平均粒径100μmのダイヤモンド粉末IRV140/170メッシュ(トーメイダイヤ製) 100gと、0.5gのチタン粉末(粒径40μm)とを容量500mlのステンレスビーカーへ入れ、モル比でNaCl: KCl=1: 1の混合塩(共晶温度約660℃)約300gを加えた。このビーカーを炉内で800℃に加熱し2時間保持した。
放冷後、炉より取り出し、ビーカー中の塩を水に溶かして除去し、次いで6N-HClを加えて1時間煮沸し、未反応チタンを溶解・除去した。さらに水洗・乾燥工程を経て、約0.5%のTiCで被覆された粒子を得た。得られた粉末は黒色を呈しており、X線回折によって、ダイヤモンドと共にTiCと同定された。また計算上のTiCによる被覆厚さは約0.06μmと見積もられた。
次いで無電解銅めっきによって、ダイヤモンド粒子に対して30%の銅被覆をTiC上に形成した。めっき浴の組成はg/l表示で、硫酸銅:10、ロッシェル塩:50、水酸化ナトリウム:10、ホルマリン:10ml/lとした。
得られた銅被覆の厚さは計算値で約3μmと見積もられた。この粒子を用いて下記条件によるレジンボンド砥石を作製、ダイヤモンド焼結体表面の乾式平坦化加工に使用し、性能を従来技術による銅被覆粒子を用いた砥石と比較した。
砥石の形式 6A2 ディスク型砥石 外径 225mm、内径 125mm
結合剤 エポキシ樹脂
集中度 100
砥石回転数 1500 rpm
押付け圧力 50kgf/cm2
対比の結果、従来技術による砥石の寿命が平均1ケ月であったのに対し、本発明による粒子を用いた砥石寿命は平均1.6ケ月であり、顕著な粒子の脱落阻止効果が認められた。
平均粒径21μmのダイヤモンド粉末IRM20-30 (トーメイダイヤ製) 200gと、4.5gのチタン粉末(粒径40μm)とを用い、実施例1と同じ方法でダイヤモンド表面へ約0.04μm(計算値)のTiC被覆を形成した。得られたTiC被覆ダイヤモンドの半量にはさらに、ワット浴を用いて銅めっきを行い、約1μm(計算値)の銅めっき層を形成した。
TiC被覆のままの粒子と、さらにその上に銅めっきで被覆した粒子とを用い、それぞれスルファミン酸ニッケル浴中に懸濁させて、ニッケルめっき条件における浴抵抗値の測定を行った。めっき液中における懸濁量はそれぞれ30g/lとし、陽極としてはニッケル板を、陰極には水酸化ナトリウム水溶液中で脱脂し次いで希塩酸中で洗浄した1.2mmφSUS線を用いた。
粒子を懸濁させた液の抵抗値測定の結果、TiC被覆のままの粒子が約60Ω/cmであったのに対し、上に銅めっきを施した粒子では約40Ω/cmであり、懸濁めっきに好ましい効果が得られることが分かった。
本発明のダイヤモンド粒子は、研磨材粒子をレジンで結合した工具としての使用において、或いは電着工具の製作において、格段の性能及び操作性が達成される。

Claims (5)

  1. 基体を構成するダイヤモンド粒子が表面に隣接する第一被覆層及び該被覆層の外面に隣接する第二被覆層を有し、上記第一被覆層はダイヤモンド粒子の表面において炭素と化学結合した、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびSiから選ばれる第一の金属の炭化物を含有し、また上記第二被覆層はCu又はCuを主体とする合金からなることを特徴とする、二重被覆ダイヤモンド研磨材粒子。
  2. 前記第一被覆層がダイヤモンド粒子に対する比率(質量比。以下同様)が0.5%以上10%以下である、請求項1に記載のダイヤモンド研磨材粒子。
  3. 前記第二被覆層がCuからなり、かつダイヤモンドに対する比率が2%以上100%以下である、請求項1に記載のダイヤモンド研磨材粒子。
  4. 前記ダイヤモンド粒子の平均粒径が0.5μm以上0.5mm以下である、請求項1に記載のダイヤモンド研磨材粒子。
  5. (1) 溶融塩中に整粒されたダイヤモンド粉末と、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびSiから選ばれる第一の金属の粉末とを分散させ、ダイヤモンド粒子の表面に該金属の炭化物からなる第一被覆層を形成する段階、
    (2) 次いで前記第一被覆層の上に電気メッキまたは化学メッキによりCu又はCuを主体とする合金からなる第二の被覆層を形成する段階
    を有する二重被覆ダイヤモンド研磨材粒子の製造方法。

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