JP2011072933A - 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法 - Google Patents

炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011072933A
JP2011072933A JP2009227972A JP2009227972A JP2011072933A JP 2011072933 A JP2011072933 A JP 2011072933A JP 2009227972 A JP2009227972 A JP 2009227972A JP 2009227972 A JP2009227972 A JP 2009227972A JP 2011072933 A JP2011072933 A JP 2011072933A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogenation catalyst
slurry
mass
catalyst
inorganic oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009227972A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuki Oguma
一樹 小熊
Tetsuya Tanaka
哲也 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JGC Catalysts and Chemicals Ltd
Original Assignee
JGC Catalysts and Chemicals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JGC Catalysts and Chemicals Ltd filed Critical JGC Catalysts and Chemicals Ltd
Priority to JP2009227972A priority Critical patent/JP2011072933A/ja
Publication of JP2011072933A publication Critical patent/JP2011072933A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract

【課題】優れた耐硫黄性を持ち合わせた高性能の水素化触媒を提供する。
【解決手段】炭化水素の水素化触媒は、無機酸化物粒子表面に1)NiOと、2)Cr又はCuCrの少なくとも一方とが担持された改質無機酸化物粒子であって、該改質無機酸化物粒子の平均粒子径が10μm〜50μmの範囲、比表面積が200m/g〜300m/gの範囲にある。
【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィン系炭化水素類や芳香族類などの炭化水素を水素化するための水素化触媒およびその製造方法に関する。
一般的に、原油/ナフサ等の熱分解工程から誘導される各種オレフィン系炭化水素類、特に、芳香族類やオレフィン性高分子類(石油樹脂類)を高付加価値の化合物にするための水素化プロセスには、汎用性の高いNi系触媒が使用されている。
上記Ni系触媒の製造方法としては、一般的には、Niを含有する各種酸化物あるいは水酸化物、炭酸塩等を乾式混合した後、焼成する方法、担体にこれらの化合物の溶液を含浸、浸漬させた後、焼成する方法、あるいは、各種硫酸塩/硝酸塩溶液-アルカリ溶液の沈殿物前躯体を合成し、得られたNi含有塩基性複合体を焼成する方法がとられている。
既存技術によるNi系触媒の製造上の問題点として、1)担体への活性成分含浸、浸漬法では、例えば硝酸塩を用いる場合、硝酸塩類の熱分解・焼成による窒素酸化物ガス類の発生(NO)やそのガス処理にともなって処理設備を設ける必要がありコスト高になっている現状がある。
また、2)酸-アルカリの沈殿法では、原料源に硫酸塩を用いた場合、最終触媒酸化物中の残存硫黄(製造工程にての洗浄不足)の問題により、所定の触媒活性が発現できない場合がある。一方、硝酸塩類の場合、沈殿生成した粒子(スラリー)のろ過洗浄において、大量の窒素排水(NO -イオン)が生じてしまい、排水処理の必要性により製造コストアップになることが多い。
上記の1)、2)においては、ラボスケール製造では大きな問題として取り扱わないケースがあるが、工業的スケール製造では、環境対策や設備対策を強化しなければならない。
上記の背景からも、触媒製造者側は、常に、触媒の「高性能化」と並んで「環境負荷低減」を意識した触媒開発/設計を念頭に置き、また触媒製造を行うべきであることは言うまでも無い。
一方、Ni系触媒系の高性能化を考えた場合、一般的製造上のポイントとしては、例えば沈殿法の場合、表面積を向上させることが可能な沈殿条件(例えば、沈殿温度を上げる、等電点を考慮したpH域で注加させる等)の設定、含浸法などの場合は表面積の高い担体の使用などがある。また表面積以外の観点から、触媒に耐熱性/耐毒性といった機能を付加させる等の様々な対応策もある。これらの課題は部分的にクリアーすることは可能ではあるが、全ての内容をクリアーし、かつ、高い性能を発揮することは困難である。
特に、使用者サイドからの問題である触媒被毒についてはNi系触媒の高性能化・高寿命化には、原料由来の触媒毒への耐被毒作用を備える機能を持つことが最重点となる場合がある。特に、硫黄化合物(ジベンゾチオフェン、ジメチルジベンゾチオフェン、硫化エチル)のNi表面への化合等による永久被毒は、触媒寿命を短命化させてしまうことが知られている。
これら硫黄化合物による触媒被毒対策に関する先行技術出願として、特許文献1には、Ni系共沈物にCuあるいは、Cr化合物を共存させることにより、耐硫黄性が向上することが記載されている。
また、特許文献2には、石油樹脂水素化用プロセスにて、触媒のNi含有量を高くすることが望ましい(Ni換算48〜60%、特に上限限定なし)旨が記載されている。これは、触媒が硫黄被毒されても、活性サイト量を予め、多く存在させておくことにより触媒寿命を延長するものである。
また、特許文献3には、石油樹脂水素化用プロセスにて、Ni−Cu−Mg/珪藻土等から成る触媒は、上記の「硝酸塩―アルカリ沈殿法」にて耐硫黄性が向上する旨が記載されている。
特公昭34−2668号公報:1頁右欄15行目〜23行目、2頁左欄29行目〜右欄24行目 特開平11−286514号公報:段落0012 特開平6−25323号公報:段落0020〜段落0021
特許文献1に記載の触媒の製法として、助触媒としてのCr系化合物を添加する既存技術には、酸-アルカリの沈殿工程中にCrをイオンとして存在させる方法があるが、最適な注加条件にしない限り、ろ過工程にて6価クロム溶出が避けられない場合もある。
また特許文献3に記載のCu、Mgを添加した触媒、あるいは、活性成分Niの大幅な含有量をアップした特許文献2に記載の耐硫黄性水素化用触媒は、いずれも「沈殿法」からなる製法構成が記載されており、先に言及した排水処理の観点などから環境対策や設備対策が必要となる。
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、優れた耐硫黄性を持ち合わせた高性能の水素化触媒を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、環境負荷の低い水素化触媒の製造方法を提供することにある。
本発明に係る炭化水素の水素化触媒は、無機酸化物粒子表面に1)NiOと、2)Cr又はCuCrとの少なくとも一方が担持された改質無機酸化物粒子であって、該改質無機酸化物粒子の平均粒子径が10〜50μmの範囲、比表面積が200〜300m/gの範囲にあることを特徴とする。
前記炭化水素の水素化触媒は、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記改質無機酸化物粒子に含まれる1)NiOの含有割合が50質量%〜80質量%の範囲、2)Cr又はCuCrの少なくとも一方の含有割合が1質量%〜10質量%の範囲にあること。
(b)前記改質無機酸化物粒子の表面のニッケル被覆度が1%〜4%の範囲にあること。
(c)前記無機酸化物粒子が、シリカ、珪藻土、コロイダルシリカから選ばれるものであること。
また他の発明に係る炭化水素の水素化触媒の製造方法は、[1]A)無機酸化物担体、B)Ni含有化合物と、C)CrO又はCuCrの少なくとも一方とを含むスラリーを液相にて粉砕し、平均粒子径を0.6μm以下にする工程と、
[2]前記[1]工程に続いて、スラリーのpHを8.8〜11.2の範囲に調整し、40℃〜95℃で熟成する工程と、
[3]前記[2]工程に続いて、スラリーを噴霧乾燥する処理を行い、造粒する工程と、を含むことを特徴とする。
前記炭化水素の水素化触媒の製造方法は以下の特徴を備えていてもよい。
(d)前記[1]工程で使用する前記スラリーが、A)無機酸化物担体100質量部に対して、B)Ni含有化合物が280〜450質量部及びC)CrO又はCuCrの少なくとも一方が10〜45質量部を含むものであること。
(e)前記B)Ni含有化合物が、塩基性炭酸塩、炭酸塩、酸化物、酢酸塩、水酸化物又はNi金属から選ばれるものであること。
本発明によれば、無機酸化物粒子表面に1)NiO及び2)Cr又はCuCrの少なくとも一方を担持し、また、その平均粒子径が10μm〜50μmの範囲、比表面積が200m/g〜300m/gの範囲となるように調製することにより、炭化水素の水素化に好適であり、且つ、触媒毒(特に、硫黄化合物)に対する耐性の高い水素化触媒を得ることができる。
また他の発明によれば、排水や排ガスを発生することなく水素化触媒を製造することができるので、環境負荷が低く、排水処理などの2次的な処理コストを低く抑えつつ、耐硫黄性の高い触媒を製造することができる。
[水素化触媒]
本発明に係る炭化水素の水素化触媒は、シリカ、珪藻土、コロイダルシリカから選ばれる無機酸化物粒子を担体として、1)NiO及び2)Cr又はCuCrの少なくとも一方を担持した改質無機酸化物粒子である。例えば珪藻土(SiOを主成分とする)を担体とする場合には、NiO−Cr/SiO、NiO−CuCr/SiO、NiO−Cr−CuCr/SiOの組成を有するものが含まれる。ここで左記の「X/Y」の表示は、「Y」が担体をなす無機酸化物、「X」がこの無機酸化物Yに担持される物質を示している。
水素化触媒は、例えば後述のスプレードライヤーなどを用いた噴霧乾燥により造粒する場合には、球状粒子となるが、該粒子の平均粒子径が10μm〜50μmの範囲、比表面積が200m/g〜300m/gの範囲であることを特徴とするものである。平均粒子径および比表面積がこの範囲にあるNi触媒は、水素化反応触媒として好適に使用することができる。
一方で、触媒の平均粒子径が10μmを下回ると触媒を充填した水添反応塔の圧力損失が大きくなり、50μmを超えると噴霧乾燥法による粒子形成が困難になる。また触媒粒子の比表面積が200m/gを下回ると、原料となる石油樹脂類と触媒との接触面積が十分でなく、300m/gを超えると触媒の機械的強度が低下する。なお、前記触媒の平均粒子径として、好適には15〜30nmの範囲が推奨される。また、前記触媒粒子の比表面積は、好適には210〜290m/gの範囲が推奨される。
活性成分であるNiOの含有割合は、水素化触媒である改質無機酸化物粒子において、50質量%〜80質量%の範囲が好ましい。NiOの含有割合が50質量%を下回ると十分な水素化活性が得られにくくなる一方、含有割合が80質量%を超えると、担体(無機酸化物粒子)上に助触媒を担持することが困難になる。NiOの含有割合として、好適には60〜75質量%の範囲が推奨される。また、助触媒であるCr又はCuCrの少なくとも一方の含有割合は、改質無機酸化物粒子において1質量%〜10質量%の範囲が好適である。助触媒の含有割合が1質量%を下回ると、助触媒の添加効果が得られにくくなり、10質量%を超えるとNiOの含有割合が相対的に低くなり水素化活性が低下すると予想される。前記助触媒の含有割合として、好適には2.5〜7.0質量%の範囲が推奨される。
また、ニッケル被覆度(触媒の比表面積に占めるニッケルの比表面積の割合)については、当該ニッケル被覆度が1%〜4%の範囲で十分な水素化活性を得ることができる。一般的には活性成分のニッケル被覆度は高いことが好ましいが、本実施の形態に係る水素化触媒においては、助触媒としてCr又はCuCrを担持して耐硫黄活性を向上させることにより、ニッケル被覆度が4%以下であっても十分な触媒活性を得ることができる。一方、ニッケル被覆度が1%を下回ってしまうと、水素化触媒表面の活性成分の量が少なくなりすぎて、十分な活性を得ることができなくなってしまうと推察される。ニッケル被覆度の範囲として好適には、2.0〜3.8%の範囲が推奨される。
ここで本実施の形態に係る水素化触媒は、後述する噴霧乾燥法にて製造する場合には排水処理を設ける必要がないという点においてコスト的に優れているが、他の方法による上述の要件を備えた水素化触媒の製造を除外するものではない。例えば乾式混合や沈殿法により製造してもよい。これらの場合には水素化触媒の形状が球状粒子とはならない場合もあるが、担体である無機酸化物粒子に1)NiOと、2)Cr又はCuCrの少なくとも一方とを担持し、例えばレーザー回折/散乱方式などにより計測された平均粒子径が10μm〜50μmの範囲内、BET法などにより計測された比表面積が200m/g〜300m/gの範囲内にあれば、耐硫黄性が高く、石油樹脂類の水素化に適した水素化触媒として使用することができる。
[水素化触媒の製造方法]
本発明に係る水素化触媒の製造方法の一例を挙げると、担体である珪藻土と、水添作用を有するNiの原料となる塩基性炭酸ニッケルと、無水クロム酸(CrO)や銅クロマイト(CuCr)等の化合物と、を10〜30℃の温度にて水系溶媒中に混合して固形物含有スラリーを調製し、該固形物を湿式粉砕する。しかる後、このスラリーに10%アンモニア水を加えてpH調整(例えばpH=11.0)を行うと共に加熱熟成(例えば90℃で1時間)した後、噴霧乾燥して球状化した乾燥物(次の何れかの一般式で表される
(xNi(OH)・yNiCO−{Cr}/SiO)、
(xNi(OH)・yNiCO−{CuCr}/SiO)又は
(xNi(OH)・yNiCO−{mCr ・nCuCr}/SiO、但し、いずれもx>0、y>0である。)
を得た後、例えば回転式流動焼成炉にて焼成するものである。
なお、前記無水クロム酸は、前記焼成により酸化クロム(III)(Cr)となって水素化触媒の構成成分となる。また、銅クロマイトは、前記焼成による化学変化は受けないので銅クロマイトとして、同じく水素化触媒の構成成分となる。酸化クロム(III)及び銅クロマイトは、何れも水素化触媒に耐硫黄性を付与するための助触媒として機能する。
上述のように、Niや助触媒の原料となる化合物を、担体となる珪藻土等のスラリーに予め添加しておくことにより担体とNi及び助触媒成分との親和力を高めることができる。また湿式粉砕及び噴霧乾燥を用いることにより、従来の沈殿法により調製されたNi系珪藻土触媒に比べて比表面積が高いものを得ることができる。また、本製造方法は、沈殿法と比較して沈殿-熟成-洗浄といった多工程を経由せず、ろ過洗浄等による大量な廃水処理およびCr系有害物処理が不用となるといった観点から、耐硫黄性効果を得るための助触媒の取扱いも容易となる。
本発明の水素化触媒を調製するためのNi原料としては、例えば塩基性炭酸塩、酸化物、酢酸塩、水酸化物、単体金属などから選ばれるものであり、Ni原料は、一般に結晶性の原料に比べて凹凸が多い非晶質であることが好ましい。また、担体種は、珪藻土、シリカ、コロイダルシリカ、シリカゾル、アルミナ、アルミナゾル、ゼオライトから選ばれるものであり、特にシリカ成分系が望ましい。それは、例えばスラリーに投入されるNi前駆体の微粒子が凹凸の多い非晶質である場合には、当該前駆体が結晶質である場合に比べて、液相状態(スラリー状態)にて担体珪藻土表面との反応が進行しやすく、担体への表面担持、固定化が容易となり、最終的な触媒性能の向上に寄与することに繋がるからである。
本発明に係る水素化触媒の製造方法においては、次のA)、B)及びC)の固形分と溶媒とを混合してスラリーを調製する。スラリーの調製方法は公知の方法で構わない。通常は、ボールミルなどが使用される。
A)無機酸化物担体、
B)Ni含有化合物、
C)CrO又はCuCrの少なくとも一方
これら固形分の配合量は、A)無機酸化物担体100質量部に対して、B)Ni含有化合物が280〜450質量部及びC)CrO又はCuCrの少なくとも一方が10〜45質量部が使用される。ここで、B)Ni含有化合物の配合比範囲及びC)CrO又はCuCrの少なくとも一方の配合比範囲は、それぞれ、本発明に係る水素化触媒の製造方法による最終生成物である水素化触媒におけるNiOの割合が50質量%〜80質量%、助触媒の割合が1〜10質量%となるように設定されたものである。
前記固形分と混合する溶媒の配合量については、前記A)、B)及びC)の各固形分を含んだスラリーが調製できる量であれば、格別に限定されるものではないが、例えば、固形分濃度が10質量%〜30質量%となるような量の溶媒が使用される。ここで使用される溶媒としては、水(水道水、純水、イオン交換水)、アルコール、ヘキサン、トルエン、塩化メチレン、シリコーン等を挙げることができる。このうち好適には水道水、純水、イオン交換水などが使用される。また、前記溶媒は、所望により固形成分の分散性を調整する目的で界面活性剤を含んだものであっても構わない。混合温度については、通常は10℃〜30℃の範囲で混合される。
この様なスラリーについて湿式粉砕処理を行う。湿式粉砕とは、強力な剪断力を加えることができる粉砕機または分散機を用い、スラリー成分のアグロメレーション(塊状化)を防ぎながら分散または粉砕させる操作である。
湿式粉砕に使用する装置としては、本発明の目的を達成できるものであれば格別に限定されるものではないが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等の湿式媒体攪拌ミル(湿式粉砕機)が例示される。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石等を原料としたビーズが使用可能である。
本発明においては、湿式粉砕処理によりスラリー中の粒子の平均粒子径が0.6μm以下とすることが好ましく、さらには0.5μm以下にまで処理することが好ましい。0.6μm以上の場合、構成された球状粒子の表面積も低下するので、後の工程に適用しても本発明に係る耐硫黄性Ni触媒を得ることが容易ではない。なお、前記湿式粉砕処理において、スラリー中の粒子の平均粒子径の下限については格別に制限されるものではないが、通常は0.4μmとなる。
湿式粉砕を終了したスラリーについては、スラリーのpH調整および熟成加熱処理を施すことが、最終的な触媒性能を左右することになる。すなわち湿式粉砕直後における塩基性炭酸ニッケル、クロム化合物/珪藻土のスラリーは、各々の成分が超微粒化して共存している状態であるが、珪藻土担体上にニッケルや助触媒がまだ担持されていない状態である。したがって、反応性の低い珪藻土を微粒子化した状態にて、当該珪藻土表面に第2成分(助触媒成分)の化合物及びNi前駆体を化合させることが重要である。
担体表面にこれらの物質を固定化する手法として、スラリーをアルカリ性とするすなわち、スラリーのpHを上昇させることによりスラリー中に溶解しているシリカを珪藻土表面に溶出させ、これにより、Niや助触媒の化合物を担体表面に固定することができる。この際、スラリーを加熱してNi及び助触媒原料の酸化反応を促進し、Niをニッケルシリケート(Ni(OH)SiOCO)化し、また助触媒原料からCrやCuCrを生成することにより、水素化樹脂の水素化機能及び耐硫黄性を水素化触媒に持たせることができる。
熟成温度は40℃〜95℃、好ましくは、55℃〜93℃、熟成時間は0.5時間〜3時間、好ましくは0.8時間〜2時間の範囲が好適である。熟成温度が低く、熟成時間が短いと、触媒表面への活性成分や助触媒の固定が十分でなく、活性成分の粒子と助触媒の粒子を混合しただけの状態となってしまう。一方、熟成温度が高すぎるとスラリーが沸騰して、担体表面に活性成分や助触媒を溶出させにくくなり、熟成時間を3時間よりも長くしても担体表面に活性成分や助触媒を溶出させる効果が頭打ちになる。
またスラリーのpHは8.8〜11.2の範囲が好ましく、pHが8.8未満になると担体表面に活性成分や助触媒を担持または固定化させる効果が小さくなる。実用上、スラリーのpHは11.2程度で構わない。活性成分や助触媒を担体表面に担持又は固定化する上でpH8.8〜11.2のアルカリ性に調整すれば十分である。
前記スラリーの噴霧乾燥処理としては、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法など従来公知の方法を採用することができる。特に、特公平2−61406号公報に開示された2流体ノズル方法は、粒子径分布の均一な球状酸化物微粒子集合体を得ることができ、また平均粒子径をコントロールすることが容易であるので好ましい。さらに担体や活性成分(Ni)及び助触媒をスラリー中で微粒子化して、噴霧乾燥することにより、噴霧乾燥により形成された球状粒子に、活性成分や助触媒を均一分散させる効果も得られるものと考えられる。
このときの乾燥温度は、スラリー濃度、噴霧速度等によっても異なるが、スプレードライヤーを使用する場合、例えば、スプレードライヤーの入口温度としては200℃〜300℃、出口温度100℃〜150℃などの条件が好ましい。噴霧速度については、格別に制限されるものではないが、通常は噴霧速度0.5L/分〜3L/分の範囲で行われる。なお、回転ディスク型のアトマイザー式噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を使用する場合は、例えば、20000〜40000rpm(回転数/分)で処理されるが、この範囲に限定されるものではない。
噴霧乾燥処理により得られた球状粒子は、例えば300℃〜500℃の温度で例えば回転式流動焼成炉にて焼成することにより本実施の形態に係る耐硫黄性を備えた水素化触媒(改質無機酸化物)を調製することができる。なお、焼成温度については、好適には330〜380℃の範囲が推奨される。
[適用プロセス]
本実施の形態に係る耐硫黄性を備えた水素化触媒は、トルエン、ベンゼン等の芳香族類を水素化するプロセスや、C4〜C5留分(主としてC5留分)あるいはC5〜C9留分(主としてC9留分)を重合して得られた石油樹脂類を水素化するプロセスへの適用に有用である。
初めに、水素化触媒の分析方法または測定方法を以下に記す。
[平均粒子径の測定方法]
レーザー回折/散乱方式粒度分布測定装置(堀場製作所製:LA−700)にイオン交換水を投入し、その透過率が75〜95%となるように試料(水素化触媒粉末)を加えた。その後、2wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液約20mlを加えて1分間超音波分散を行い、平均粒子径を測定した。
[比表面積の測定方法]
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用い、窒素吸着法(BET法)による試料(水素化触媒粉末)への窒素の吸着量に基づき、BET1点法により比表面積を算出した。
[水素吸着量の測定方法]
試料(水素化触媒粉末)を静止系ガス吸着装置(自社にてガラス細工にて作成、真空ポンプ、デジタルマノメーター、ガス溜めバルーン、ガラスサンプラー管、小型電気炉等にて構成)を用いて、420℃に加熱した水素雰囲気下で水素還元、真空脱気した後、常温下で水素吸着させた。水素吸着量は、平衡圧と吸着量の関係:ラングミュラー型吸着として取扱い、化学吸着量を算出した。
[水素化触媒活性及び耐硫黄性試験方法]
試料(水素化触媒顆粒24−32mesh)を直径6mmφのパルス反応装置(自社にてガラス細工にて作成、小型電気炉、温度コントローラー、ガスクロマトグラフィーに接続)に充填して触媒層を形成し、420℃に加熱した水素雰囲気下で水素還元した。次いで、キャリーガス(水素ガス)を流しながら反応装置の温度を130℃に維持し、ベンゼン/硫化エチルをそれぞれ交互に1μLずつパルス的に触媒層に供給した。反応物は、キャリヤーガスと共に、直結TCD−GC(Thermal Conductivity Detector-Gas Chromatography)に導入し、ベンゼン転化率を分析した。耐硫黄性の評価は、硫化エチル(触媒被毒物質)パルス注入した後の2回目(ベンゼン-硫化エチルの交互)のベンゼン転化率にて相対評価した。
[ニッケル被覆度評価方法]
本願におけるニッケル被覆度は、「(S1)/(S2)」[%]を意味する。ここで、S1は「表面に半露出したNiOの比表面積」[m/g]を、S2は「改質無機酸化物粒子の比表面積」[m/g]を表す。
S2の値は、前記[比表面積の測定方法]により準じて得られた改質無機酸化物粒子の比表面積[m/g]を表す。
S1の値は、前記[水素吸着量の測定方法]に準じて得られた改質無機酸化物の水素還元(420℃)後の表面水素吸着量から、1個の水素分子(H)が、表面に半露出したNi原子(2個)に吸着するという前提に基づき、半露出したNi原子の個数(p)を求め、「表面に半露出したNiの比表面積」[m/g]を算定した。半露出Ni原子の個数(p)は、以下の関係式(1)式より算出した。
p[個数/g]=水素吸着量[μmol/g]×アボガドル定数[個数/mol]×2…(1)
[実施例1]
塩基性炭酸ニッケル(NiCO・2Ni(OH)・4HO、和光純薬工業(株)製)360g、珪藻土(セライト社製)90g、銅クロマイト(CuCr)18g、および水道水1080gを25℃にて混合し、約1550gのスラリーを調製した。得られたスラリーをビーズ径0.5mmのZrビーズ430ccを充填した循環方式型湿式粉砕機(アシザワ・ファインテック(株)LABSTAR)にて、回転数2480rpm、循環量1L/minの条件でスラリー中の固形物の平均粒子径が0.5μm以下になるまで粉砕した。
その後、循環方式型湿式粉砕機からスラリーを回収し、2Lのホーロ容器にて1時間攪拌したした後、アンモニア水(アンモニア濃度15vol%)10gを滴下して、pHを10.0に調整し、その後、90℃に設定した温度コントローラー/ヒーターにてスラリーを攪拌しながら1時間懸濁熟成(加熱処理)した。冷却後のスラリー性状としては、pH=10.0、スラリー内の粒子の平均粒子サイズ1.1μmであった。
加熱処理したスラリーは、チューブポンプにて回転ディスク型のアトマイザー式スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、LB−8型)に供し、入口温度230℃、出口温度110℃、アトマイザー回転数27000rpmの条件で噴霧乾燥を実施し、平均粒子径が20μmの球状粒子を得た。なお、得られた球状粒子を以下、「触媒前躯体」と称する。この触媒前躯体を回転式流動焼成炉(小型キルン)にて、空気流量1L/min、370℃の条件下で1時間焼成してNiO―CuCr/SiOからなる水素化触媒を得た。
なお、投入した原料(固形分)のうち、塩基性炭酸ニッケルは、焼成(370℃)により分解してNiOとなって、最終生成物である水素化触媒に含有される。(銅クロマイトは焼成により変化すること無く、銅クロマイトとして水素化触媒に含有される。)
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、3質量%となった。
[実施例2]
添加したCr源の最終酸化物が水素化触媒の6質量%となるように換算して、[実施例1]と同様の方法にて水素化触媒を調製した。実施例1における銅クロマイトの使用量を36gとした他は、実施例1の製造方法と同様にして、NiO―CuCr/SiOからなる水素化触媒を得た。この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、銅クロマイトの割合は、6質量%となった。
[実施例3]
塩基性炭酸ニッケル(NiCO・2Ni(OH)・4HO、和光純薬工業(株)製)360g、珪藻土(セライト社製)90g、CrOを12g、および水道水1080gを25℃にて混合し、約1550gのスラリーを調製した。得られたスラリーをビーズ径0.5mmのZrビーズ430ccを充填した循環方式型湿式粉砕機(アシザワ・ファインテック(株)LABSTAR)にて、回転数2480rpm、循環量1L/minの条件でスラリー中の固形物の平均粒子径が0.5μm以下になるまで粉砕した。
その後、循環方式型湿式粉砕機からスラリーを回収し、2Lのホーロ容器にて1時間攪拌したした後、アンモニア水(アンモニア濃度15vol%)10gを滴下して、pH10に調整した。その後、90℃に設定した温度コントローラー/ヒーターにてスラリーを攪拌しながら1時間懸濁熟成(加熱処理)した。冷却後のスラリー性状としては、pH=10.0、スラリー内の粒子の平均粒子サイズ1.1μmであった。
加熱処理したスラリーは、チューブポンプにて回転ディスク型のアトマイザー式スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、LB−8型)に供し、入口温度230℃、出口温度110℃、アトマイザー回転数27000rpmの条件で噴霧乾燥を実施し、平均粒子径が20μmの球状粒子を得た。なお、得られた球状粒子を以下、「触媒前躯体」と称する。この触媒前躯体を回転式流動焼成炉(小型キルン)にて、空気流量1L/min、370℃の条件下で1時間焼成してNiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。
なお、投入した原料(固形分)のうち、塩基性炭酸ニッケルは、焼成(370℃)により分解してNiOとなり、CrOは同じく焼成(370℃)によりCrとなって、最終生成物である水素化触媒に含有される。
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、3質量%となった。
[実施例4]
実施例3におけるCrOの使用量を24gとした他は、実施例3の製造方法と同様にして、NiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、6質量%となった。
[実施例5]
実施例3におけるCrOの使用量を36gとした他は、実施例3の製造方法と同様にして、NiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、9質量%となった。
[実施例6]
実施例3におけるCrOの使用量を12gとし、スラリーの懸濁熟成温度を60℃に変更した他は、実施例3の製造方法と同様にして、NiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、3質量%となった。
[実施例7]
実施例3におけるCrOの使用量を12gとし、懸濁熟成前のスラリーのpHが9.0になるようにアンモニア水(アンモニア濃度15vol%)を添加した他は、実施例3の製造方法と同様にして、NiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。
この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、3質量%となった。
[実施例8]
実施例3におけるCrOの使用量を12gとし、懸濁熟成前のスラリーのpHが11.0になるようにアンモニア水(アンモニア濃度15vol%)を添加した他は、実施例3の製造方法と同様にして、NiO―Cr/SiOからなる水素化触媒を得た。 この水素化触媒に含まれるNiOの割合は、72質量%、Crの割合は、3質量%となった。
沈殿法にて製造した水素化触媒、及びスラリーの懸濁熟成温度を30℃とした水素化触媒について各[実施例]と同様に、平均粒子径、比表面積、水素吸着量、耐硫黄触媒活性を計測した。
[参考例1]
硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)900g(和光純薬工業株式会社製)((NiO)換算で、水素化触媒中に72質量%相当)、を水道水3.6Lに溶解させ、106gの珪藻土(セライト社)を分散させ、72℃に保温しておく(母液(A))。別容器にて、炭酸ナトリウム633g(関東化学)を水道水3.2Lに溶解させ、75℃にて保温しておく(アルカリ溶液(B))。母液(A)にアルカリ液(B)を80分かけてチューブポンプにて注加する。アルカリ液(B)の注加中は、液温を72℃に保持し、注加終了後も同温度で、2時間熟成する。2時間経過後、17.3gの銅クロマイト(CuCr)(水素化触媒中に6質量%相当)を投入した後、30分保持する。しかる後、真空ろ過(ヌッチェ)にて、スラリーをろ過してケーク状塊を得る。このケークを10L温水(50℃)に投入、スラリー化し、この懸濁洗浄―ろ過を繰り返す。ろ液の電気伝導度が、1ms/cm以下にて洗浄終了とする。本比較例では、350μs/cmであった。ろ過後のケークブロックを破砕しつつ、スラリー濃度22質量%に調整した。次いで、得られたスラリーは、チューブポンプにて回転ディスク型のアトマイザー式スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、LB−8型)に供し、入口温度230℃、出口温度110℃、アトマイザー回転数27000rpmの条件で噴霧乾燥を実施し、平均粒子径が20μmの球状粒子(触媒前躯体)を得た。得られた触媒前躯体を回転式流動焼成炉(小型キルン)にて、空気流量1L/min、370℃の条件下で1時間焼成してNiO―CuCr/SiOからなる水素化触媒を得た。
[比較例2]
塩基性炭酸ニッケル(和光純薬工業(株))360g、珪藻土(セライト社)90g、銅クロマイト18g(水素化触媒中に3質量%相当)、および水道水1080gを25℃にて混合し、約1550gのスラリーを調製した。得られたスラリーをビーズ径0.5mmのZrビーズ430ccを充填した循環方式型湿式粉砕機(アシザワ・ファインテック(株)、LABSTAR)にて、回転数2480rpm、循環量1L/minの条件でスラリー中の固形物の平均粒子径が0.5μm以下になるまで粉砕した。
その後、循環方式型湿式粉砕機からスラリーを回収し、2Lのホーロ容器にて1時間攪拌したした後、アンモニア水(アンモニア濃度15vol%)10gを滴下し、pH10.0に調整した。その後、常温(30℃)にてスラリーを攪拌しながら1時間懸濁熟成(加熱処理)した。冷却後のスラリー性状としては、pH=10.0、スラリー内の粒子の平均粒子サイズ0.7μmであった。
加熱処理したスラリーは、チューブポンプにて回転ディスク型のアトマイザー式スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、LB−8型)に供し、入口温度230℃、出口温度110℃、アトマイザー回転数27000rpmの条件で噴霧乾燥を実施し、平均粒子径が20μmの球状粒子(触媒前躯体)を得た。得られた触媒前躯体を回転式流動焼成炉(小型キルン)にて、空気流量1L/min、370℃の条件下で1時間焼成してNiO―CuCr/SiOからなる水素化触媒を得た。
[実施例1〜8]、[参考例1]、[比較例2]に係る水素化触媒の調製条件を(表1)、(表2)に示し、触媒性状を(表3)に示す。

(表1)
Figure 2011072933
(表2)
Figure 2011072933

(表3)
Figure 2011072933
(表1〜表3)に示した各実施例の結果によれば、助触媒がCuCrの水素化触媒[実施例1〜2]、助触媒がCrの水素化触媒[実施例3〜8]のいずれの水素化触媒においても触媒被毒物質である硫化エチルをパルス注入した後の2回目のベンゼンの転化率(以下、耐硫黄活性という)がほぼ90%以上となり、高い耐硫黄活性を得ることができている。ここで[実施例2]は耐硫黄活性が88%と、90%よりも低い値となっているが、±2%程度はデータ変動の範囲内であり、[実施例2]の水素化触媒についても十分に高い耐硫黄活性を有していると評価している。
水素化触媒におけるCuCrの割合を3重量%〜6重量%で変化させた[実施例1〜2]、及び水素化触媒におけるCrの割合を3重量%〜9重量%で変化させた[実施例3〜5]の結果によれば、いずれもほぼ90%以上の耐硫黄活性が得られているが、CuCr、Crの双方とも、助触媒の担持量を増やすと若干の耐硫黄活性の低下が観察される。これは、耐硫黄活性の低下というよりも、水素化触媒表面のNiOの存在割合が小さくなることによる水素化活性の低下によるものではないかと考えられる。その根拠として、これらの実施例では最終酸化物であるNiOの添加量は一定であるが、CuCr又はCrの添加量を増やすにつれてニッケル被覆度の値が小さくなる傾向が見られることからも確認できる。
原料スラリーの熟成温度を変化させた[実施例3、6](助触媒はCr)を比較すると、熟成温度の高い方が耐硫黄高活性となる結果が得られた。また、助触媒の種類は異なるが、[実施例1]、[比較例2](助触媒はCuCr)の比較によれば、熟成温度が90℃である[実施例1]では耐硫黄活性が92%であったのに対し、熟成温度が30℃である[比較例2]では耐硫黄活性が20%と、硫黄に対する耐性の低い水素化触媒となった。
原料スラリーのpHを8.8〜11.0の範囲に調整してスラリー中に溶解しているシリカを珪藻土表面に溶出させる反応は、原料スラリーの熟成期間中に進行する。この熟成期間中の温度を例えば40℃以上、さらに好適には60℃〜90℃に保つことによって、スラリー中の活性成分(Ni含有化合物)及び助触媒原料の双方を担体である無機酸化物粒子上に効率よく固定することができるものと考えられる。
例えば熟成温度が30℃と低い[比較例2]では、ニッケル被覆度の値が5.9%と[実施例1]の3.5%に比べて高く、より多くのNiOが触媒表面に剥き出しの状態となっている。これは、熟成温度が低かったことから、CuCrを珪藻土表面に十分に固定することができず、触媒中にはCuCr粒子とNiOが担持された珪藻土粒子とがばらばらに混在した状態となっているに過ぎないのではないかと予想される。このため、熟成温度の低い[比較例2]では理論上、[実施例1]と同量の助触媒を添加しても十分な耐硫黄活性を得ることができないのではないかと考えられる。
また噴霧乾燥法に替えて共沈法を用いた[参考例1]では、ニッケル被覆度が9.4%と各実施例と[実施例1]と比較して高く、また耐触媒活性も84%と目標の90%と比較して低かった。共沈法を用いた本例においても触媒表面に十分な量の助触媒(CuCr)を担持することができておらず、CuCr粒子とNiOが担持された珪藻土粒子とがばらばらに混在した状態となっていて、[実施例1]と等量の助触媒を加えても高い耐硫黄活性を得ることができなかったのではないかと考えられる。
以上に検討したように、原料スラリーのpHを8.8〜11.2の範囲に調整し、40℃〜95℃の温度で例えば1時間程度熟成することにより、高い耐硫黄活性を備えた水素化触媒を得ることができる。そして[実施例1〜8]のニッケル被覆度を見てみると、2.1%〜3.5%と、[参考例1][比較例2]の5.9%〜9.4%に比べて低いニッケル被覆度で高い耐硫黄活性を得ることができている。これは、水素化触媒の表面に、活性成分であるNiOのみならず、助触媒(CuCr、Cr)も担持された状態となっていることにより例えば、これらの粒子がばらばらに混合されている状態に比べて高い耐硫黄活性が得られるのではないかと予想される。ニッケル被覆度は1%〜4%程度の範囲内であれば、水素化触媒活性を失うことなく、耐硫黄活性を高める効果が発揮できると予想される。

Claims (7)

  1. 無機酸化物粒子表面に1)NiOと、2)Cr又はCuCrの少なくとも一方とが担持された改質無機酸化物粒子であって、該改質無機酸化物粒子の平均粒子径が10μm〜50μmの範囲、比表面積が200m/g〜300m/gの範囲にあることを特徴とする炭化水素の水素化触媒。
  2. 前記改質無機酸化物粒子に含まれる1)NiOの含有割合が50質量%〜80質量%の範囲、2)Cr又はCuCrの少なくとも一方の含有割合が1質量%〜10質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の炭化水素の水素化触媒。
  3. 前記改質無機酸化物粒子の表面のニッケル被覆度が1%〜4%の範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の炭化水素の水素化触媒。
  4. 前記無機酸化物粒子が、シリカ、珪藻土、又は、コロイダルシリカから選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の炭化水素の水素化触媒。
  5. [1]A)無機酸化物担体、B)Ni含有化合物と、C)CrO又はCuCrの少なくとも一方とを含むスラリーを液相にて粉砕し、平均粒子径を0.6μm以下にする工程と、
    [2]前記[1]工程に続いて、スラリーのpHを8.8〜11.2の範囲に調整し、40℃〜95℃で熟成する工程と、
    [3]前記[2]工程に続いて、スラリーを噴霧乾燥する処理を行い、造粒する工程と、を含むことを特徴とする炭化水素の水素化触媒の製造方法。
  6. 前記スラリーが、A)無機酸化物担体100質量部に対して、B)Ni含有化合物が280〜450質量部及びC)CrO又はCuCrの少なくとも一方が10〜45質量部を含むものであることを特徴とする請求項5記載の炭化水素の水素化触媒の製造方法。
  7. 前記B)Ni含有化合物が、塩基性炭酸塩、炭酸塩、酸化物、酢酸塩、水酸化物又はNi金属から選ばれるものであることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の炭化水素の水素化触媒の製造方法。
JP2009227972A 2009-09-30 2009-09-30 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法 Pending JP2011072933A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009227972A JP2011072933A (ja) 2009-09-30 2009-09-30 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009227972A JP2011072933A (ja) 2009-09-30 2009-09-30 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011072933A true JP2011072933A (ja) 2011-04-14

Family

ID=44017508

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009227972A Pending JP2011072933A (ja) 2009-09-30 2009-09-30 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011072933A (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015037312A1 (ja) * 2013-09-13 2015-03-19 堺化学工業株式会社 水素添加用触媒粒子の製造方法及び水素添加用触媒粒子
CN107790161A (zh) * 2016-08-29 2018-03-13 中国石油化工股份有限公司 制备加氢处理催化剂的方法
CN109395738A (zh) * 2018-11-24 2019-03-01 陈泽平 一种用于碳五石油树脂加氢催化剂及制备方法
CN109395739A (zh) * 2018-11-24 2019-03-01 陈泽平 一种石油树脂加氢催化剂及其制备方法
CN111717942A (zh) * 2020-07-01 2020-09-29 江西核工业兴中新材料有限公司 一种类球形高密度碱式碳酸镍的制备方法
JP2021505385A (ja) * 2017-12-29 2021-02-18 ハンファ ソリューションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
CN113164925A (zh) * 2018-12-31 2021-07-23 韩华思路信株式会社 氢化反应用催化剂及其制备方法
JP2022539357A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP2022539358A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP2022539359A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用ニッケル触媒及びその製造方法

Cited By (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015037312A1 (ja) * 2013-09-13 2015-03-19 堺化学工業株式会社 水素添加用触媒粒子の製造方法及び水素添加用触媒粒子
CN107790161A (zh) * 2016-08-29 2018-03-13 中国石油化工股份有限公司 制备加氢处理催化剂的方法
CN107790161B (zh) * 2016-08-29 2020-03-17 中国石油化工股份有限公司 制备加氢处理催化剂的方法
JP2021505385A (ja) * 2017-12-29 2021-02-18 ハンファ ソリューションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
CN109395738A (zh) * 2018-11-24 2019-03-01 陈泽平 一种用于碳五石油树脂加氢催化剂及制备方法
CN109395739A (zh) * 2018-11-24 2019-03-01 陈泽平 一种石油树脂加氢催化剂及其制备方法
JP2022513180A (ja) * 2018-12-31 2022-02-07 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びこれの製造方法
CN113164925A (zh) * 2018-12-31 2021-07-23 韩华思路信株式会社 氢化反应用催化剂及其制备方法
JP7352631B2 (ja) 2018-12-31 2023-09-28 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びこれの製造方法
CN113164925B (zh) * 2018-12-31 2023-10-31 韩华思路信株式会社 氢化反应用催化剂及其制备方法
US11878286B2 (en) 2018-12-31 2024-01-23 Hanwha Solutions Corporation Catalyst for hydrogenation reaction and preparation method for same
JP2022539357A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP2022539358A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP2022539359A (ja) * 2019-06-28 2022-09-08 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用ニッケル触媒及びその製造方法
JP7304976B2 (ja) 2019-06-28 2023-07-07 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP7304977B2 (ja) 2019-06-28 2023-07-07 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用触媒及びその製造方法
JP7352664B2 (ja) 2019-06-28 2023-09-28 ハンファ ソルーションズ コーポレーション 水素化反応用ニッケル触媒及びその製造方法
CN111717942A (zh) * 2020-07-01 2020-09-29 江西核工业兴中新材料有限公司 一种类球形高密度碱式碳酸镍的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2011072933A (ja) 炭化水素の水素化触媒及び炭化水素の水素化触媒の製造方法
EP1392432B1 (en) Method for making a high surface area, small crystallite size catalyst for Fischer-Tropsch synthesis
KR101487352B1 (ko) 실리카계 재료 및 그 제조 방법, 및 귀금속 담지물 및 그것을 촉매로서 이용하는 카르복실산류의 제조 방법
AU2019219869B2 (en) Catalyst for low temperature slurry bed Fischer-Tropsch synthesis
US20090186953A1 (en) Oxide mixture
CN106179381B (zh) 加氢精制催化剂的制法
CA2826520C (en) A method of preparing a catalyst precursor
CN106179474B (zh) 一种加氢精制催化剂及其制法
JP2010222151A (ja) シリカ系材料及びその製造方法並びに金属担持物
US2888501A (en) Process and catalyst for isomerizing hydrocarbons
Herwig et al. Hierarchically Structured porous spinels via an epoxide-mediated sol–gel process accompanied by polymerization-induced phase separation
KR100830726B1 (ko) 시클로올레핀 제조용 촉매 및 제조 방법
CN106179385B (zh) 一种加氢精制催化剂的制备方法
CN116528978A (zh) 包含1-30重量%结晶碱式碳酸铝铵的二氧化硅-氧化铝组合物及其制备方法
CN108722468B (zh) 一种丙烷脱氢催化剂及其制备方法和丙烷脱氢制丙烯的方法
KR20230098108A (ko) 수소화반응용 니켈 촉매 및 그 제조방법
JP2016000686A (ja) シリカ系材料及びその製造方法、並びに貴金属担持物及びそれを触媒として用いるカルボン酸類の製造方法
JP2010069451A (ja) ペロブスカイト型酸化触媒およびその製造方法
Basrur et al. Catalyst Synthesis and Characterization
Liu et al. Synthesis, characterization and hydrodesulfurization activity of silica-dispersed NiMoW trimetallic catalysts
JP4931099B2 (ja) シクロオレフィン製造用触媒及び、シクロオレフィンの製造方法
CN106179380B (zh) 一种加氢精制催化剂及其制备方法
Minato et al. Cobalt-based catalysts prepared by a sol–gel method for thiophene hydrodesulfurization
CN106179379B (zh) 一种加氢处理催化剂的制法
WO2008060980A2 (en) Oxidation processes using functional surface catalyst composition