JP2011067839A - 珪素鋳造用離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐剥離性に優れた離型層を形成することができる珪素鋳造用離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法を提供する。
【解決手段】離型成分としての耐熱性粉体及び下記示性式:SiRlxR2y(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化するか、上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物を加水分解して得られる加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することで離型剤を得ることができ、これを珪素鋳造用鋳型に塗布し、焼成することで、上記バインダー前駆体成分がSiO2成分に変化してバインダー層を形成することにより、耐剥離性に優れた離型層を形成することができる。
【選択図】図1
【解決手段】離型成分としての耐熱性粉体及び下記示性式:SiRlxR2y(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化するか、上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物を加水分解して得られる加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することで離型剤を得ることができ、これを珪素鋳造用鋳型に塗布し、焼成することで、上記バインダー前駆体成分がSiO2成分に変化してバインダー層を形成することにより、耐剥離性に優れた離型層を形成することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、珪素鋳造用鋳型に塗布し、特にこれを焼成して離型剤層を形成するための離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法に関する。
珪素は半金属に分類される元素で、一般的な金属とは異なる性質を持つ元素として様々な分野で使用されている。例えば、鉄中の酸素原子を除去することを目的に、溶融した鉄中に脱酸剤の成分として導入されたアルミニウムの合金の主要成分として添加されたりするような冶金的、金属的な使用方法や、珪素と酸素が結合したシロキサン結合に様々な有機官能基を付加したシリコーン化合物などの使用方法とともに、珪素の重要な工業的利用方法であるところの半導体としての利用方法などがある。
これらの用途のうち、冶金的、金属的使用方法と、シリコーン化合物としての使用方法は、珪素元素単体としてそのまま使用することはほとんどないが、半導体材料としての用途では、珪素単体での使用、更に言えば高純度化した珪素としての使用が前提となる用途である。この半導体用の用途を更に分けると、LSI等の半導体デバイス用ウェハー、太陽電池用ウェハー、スパッタリングターゲット用、高純度雰囲気炉用反射断熱材用などの用途がある。このうち、単結晶珪素としての使用方法に限定されるLSI用ウェハーを除いては、多結晶珪素の結晶形態で使用可能である。
多結晶シリコンの製造方法は、通常、シリコンを型に鋳込むことにより製造される。多結晶シリコンの鋳造方法については、耐熱材料、例えば黒鉛やシリカなどの材料製のルツボが用いられ、溶融珪素が接触する部分のルツボ側に、離型剤となる物質を層状に附着さ
せる方法が広く使用されている。
せる方法が広く使用されている。
例えば、特開平10−182133号公報(特許文献1)では、黒鉛製ルツボの内壁にSiC又はCを離型剤として塗布する技術が開示されている。
特開2002−292449号公報(特許文献2)では、窒化珪素からなる下地剤と、窒化珪素と二酸化珪素を28:72〜75:25の重量比率で混合した混合材料とを重ねて塗布する方法が開示されている。
特開2004−291027号公報(特許文献3)では、窒化珪素と、水素ガス及び酸素ガスの高温火炎中に四塩化珪素を噴射して加熱処理して得られる非晶質微細シリカとを含有し、この微細シリカを窒化珪素との総量の10〜90重量%となるように混合したものを離型剤として使用する技術が開示されている。
特開2006−334671号公報(特許文献4)では、窒化珪素と二酸化珪素を含有した離型剤をプラズマ溶射法で塗布する方法が開示されている。
特開2002−292449号公報(特許文献2)では、窒化珪素からなる下地剤と、窒化珪素と二酸化珪素を28:72〜75:25の重量比率で混合した混合材料とを重ねて塗布する方法が開示されている。
特開2004−291027号公報(特許文献3)では、窒化珪素と、水素ガス及び酸素ガスの高温火炎中に四塩化珪素を噴射して加熱処理して得られる非晶質微細シリカとを含有し、この微細シリカを窒化珪素との総量の10〜90重量%となるように混合したものを離型剤として使用する技術が開示されている。
特開2006−334671号公報(特許文献4)では、窒化珪素と二酸化珪素を含有した離型剤をプラズマ溶射法で塗布する方法が開示されている。
このように、先行技術では、離型剤成分として主に窒化珪素と二酸化珪素が使用されている。このうち窒化珪素は耐熱性材料であって、離型剤主成分として機能している。一方、二酸化珪素は、溶融珪素中に徐々に溶解する性質があり、しかも溶融珪素と親和するので溶融珪素の凝固時に強固に固着してしまい、離型性ではなく結着剤としての性質が発揮される材料である。それにもかかわらず、上記先行技術に二酸化珪素が積極的に使用されるのは、本来の離型剤である窒化珪素層が脆く、機械的作用や熱的な変動などでルツボから剥離し易いので、その剥離を抑制するためのバインダーとしての目的が主であった。
窒化珪素や炭化珪素などの実効的な耐熱性材料としての離型剤成分に対してバインダーとして機能する二酸化珪素は、その形態や離型剤との混合状態でバインダー機能が大きく変化することは上述の先行技術でも確認できる。例えば、特開2004−291027号公報(特許文献3)では、従来の平均粒径20μm程度の二酸化珪素に代わり、酸水素燃焼法で作成した平均粒径0.05μmの非晶質シリカを使用することで、粗大窒化珪素の周囲に微細シリカが取り巻き、窒化珪素同士が強固に附着する効果を誘発するとされる。
通常、離型剤をルツボ壁に離型剤層として固着する方法は、窒化珪素粒子などの離型剤成分粒子と、バインダーとなる二酸化珪素粒子を、適当な分散媒、例えば水などと撹拌して均質なスラリーとし、それを塗布や吹きつけなどで固着後、乾燥・焼成するものであった。この方法では、スラリーとしては均質であっても、塗布後、或いは焼成後には、二酸化珪素が偏析する可能性もあり、離型剤の主成分である窒化珪素などの耐熱性粉体周囲をバインダー成分である二酸化珪素が確実に取り囲むには40〜60質量%程度の相当量の二酸化珪素を添加しなければならなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐剥離性に優れた離型層を形成することができる珪素鋳造用離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、離型成分としての耐熱性粉体及び下記示性式:SiRl xR2 y(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)で示されるハロゲン化珪素化合物(バインダー前駆体成分)を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化するか、あるいは上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物を加水分解して得られる加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することで、バインダー成分の配合割合を低減した離型剤を得ることができ、これを珪素鋳造用鋳型に塗布し、焼成することで、上記バインダー前駆体成分がSiO2成分に変化してバインダー層を形成することにより、耐剥離性に優れた離型層を形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、下記の珪素鋳造用離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法を提供する。
請求項1:
耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。
請求項2:
耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物の加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。
請求項3:
耐熱性粉体及びハロゲン化珪素化合物を撹拌しながら加水分解する請求項1又は2記載の調製方法。
請求項4:
加水分解用の水分が水蒸気である請求項1、2又は3記載の調製方法。
請求項5:
熱処理温度が400〜1200℃である請求項1乃至4のいずれか1項記載の調製方法。
請求項6:
溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒である請求項1乃至5のいずれか1項記載の調製方法。
請求項7:
耐熱性粉体が、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、硼化窒素及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載の調製方法。
請求項8:
請求項1乃至7のいずれか1項記載の珪素鋳造用離型剤を鋳型に塗布した後、焼成して、珪素鋳造用鋳型表面に離型剤層を形成することを特徴とする珪素鋳造用鋳型の製造方法。
請求項1:
耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。
請求項2:
耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物の加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。
請求項3:
耐熱性粉体及びハロゲン化珪素化合物を撹拌しながら加水分解する請求項1又は2記載の調製方法。
請求項4:
加水分解用の水分が水蒸気である請求項1、2又は3記載の調製方法。
請求項5:
熱処理温度が400〜1200℃である請求項1乃至4のいずれか1項記載の調製方法。
請求項6:
溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒である請求項1乃至5のいずれか1項記載の調製方法。
請求項7:
耐熱性粉体が、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、硼化窒素及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載の調製方法。
請求項8:
請求項1乃至7のいずれか1項記載の珪素鋳造用離型剤を鋳型に塗布した後、焼成して、珪素鋳造用鋳型表面に離型剤層を形成することを特徴とする珪素鋳造用鋳型の製造方法。
本発明によれば、耐熱性材料を取り囲むようにハロゲン化珪素化合物から得られるバインダーを均一に存在させることができ、最低量のバインダーで耐剥離性に優れた離型層を形成することができる珪素鋳造用離型剤を提供することができる。
本発明の調製方法は、示性式:SiRl xR2 y(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)で示されるハロゲン化珪素化合物を出発物質として用いるバインダー原料を使用し、これを耐熱性粉体と混合した後、加水分解することに特徴がある。
本発明の離型剤は、離型成分としての耐熱性粉体と、これを結着する上記ハロゲン化珪素化合物から得られるバインダー成分とを含有する。このうち、耐熱性粉体は、珪素の溶融温度である1450℃ないしはそれ以上の温度となる実溶融温度で安定的に固体状態を維持でき、しかも溶融珪素と実質的に反応しない物質が採用される。具体的には、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、棚化窒素、酸化ジルコニウム等の耐熱物質が挙げられ、その一種類ないし二種類以上を耐熱性粉体として使用することができる。この場合、耐熱性粉体の平均粒径は、0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。平均粒径が小さすぎると微細粒子の製造コストが増加し、また取り扱いづらくなり、大きすぎると塗布時の離型剤層の強度が低下する場合がある。なお、平均粒径は遠心沈降式の粒度分布測定器や電子顕微鏡測定等により測定することができる。
バインダーとしては、二酸化珪素が主に用いられる。これは1450℃ないしはそれ以上の温度では二酸化珪素は高粘度の半溶融状態となり、これが耐熱性粉体同士を粘着的に結着することでバインダーとしての機能を果たすことができるからである。本発明では、バインダーとして、二酸化珪素の前駆体であるハロゲン化珪素化合物を用いる。ハロゲン化珪素化合物としては、下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物が挙げられる。
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物が挙げられる。
ここで、上記式中、R1の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。R2のハロゲン原子としては、塩素、フッ素、臭素等が挙げられる。具体的なハロゲン化珪素化合物の例としては、SiCl4、SiHCl3、CH3SiCl3、(CH3)2SiCl2、(CH3)SiHCl2、H(CH3)2CSiCl3等の物質が挙げられるが、これらはどれも液体であり、ハロゲン化珪素化合物の分子中の“≡Si−ハロゲン”なる結合が水分の存在下で切れ、近傍のSiと結合して≡Si−O−Si≡結合となるいわゆる加水分解反応によって高分子化することが知られている。本発明では、この加水分解反応を耐熱性粉体の表面で実施することで、耐熱性粉体表面をバインダー成分で囲うことが可能となり、最小量のバインダー成分で良好な効果が発揮できる。
本発明の調製方法の例として、まず、耐熱性粉体とハロゲン化珪素化合物を混合する。この場合、ハロゲン化珪素化合物の必要量は、混合した際に耐熱性粉体の表面を濡らす程度を最低必要量とするが、多くても耐熱性粉体が浸る程度で充分である。具体的には、バインダーの使用量を低減する観点から、耐熱性粉体100質量部に対してハロゲン化珪素化合物が5質量部以下であることが好ましい。
場合によって、離型剤処方に相当量の二酸化珪素を必要とするときがあれば、その場合は、ハロゲン化珪素化合物だけではなく、二酸化珪素そのものを処方に加えればよい。この二酸化珪素もヒューム状、粒状などの形態の違い、サイズの違いや、非晶質・結晶質などの構造の違いがあるが適宜選定すればよい。
耐熱性粉体に対し、ハロゲン化珪素化合物量が少なくて撹拌混合が容易でない場合は、必要に応じ、耐熱性粉体、ハロゲン化珪素化合物ともに反応せず、ハロゲン化珪素化合物を溶解する有機溶媒、例えばベンゼンや、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類等を加えることで、液体と固体の比をコントロールすることができ、後工程の操作が容易になることもあるが、有機溶媒への水の溶解度やハロゲン化珪素化合物の蒸発に考慮する必要がある。有機溶媒を添加する際の配合量は、有機溶媒とハロゲン化珪素化合物の合計量で、耐熱性粉体100質量部に対して5〜200質量部、特に20〜100質量部が好ましい。
このハロゲン化珪素化合物、耐熱性粉体、及び必要により溶媒を含む混合物を撹拌する。撹拌の目的は、液体と固体を均質に混合するためである。撹拌には、撹拌棒等で強制的に撹拌する方法や、容器の振動・回転等による撹拌、ガスを導入することで粒を舞い上がらせる撹拌などがあるが、処理量や固体と液体との量比等に応じて任意の撹拌方法を採用すればよい。
次に、撹拌中のハロゲン化珪素化合物と耐熱性粉体を含む混合物に水分を導入する。この水分によってハロゲン化珪素化合物は加水分解反応を起こす。このハロゲン化珪素化合物と水分との加水分解反応は、反応が直ぐに進行するので反応の制御には考慮する必要がある。例えば、加水分解用として水分を導入する際に、液体の水や水の飛沫を導入するのではなく、水蒸気を含んだガス、例えば水蒸気を含む窒素を導入したり、更に加水分解速度を遅くするために、系内を冷却したりするなどの対策が必要となることがある。従って、加水分解反応は−20〜50℃で行うことが好ましい。
ハロゲン化珪素化合物は、水蒸気と接触することで珪素−ハロゲン結合が切れ、Si−O・結合となり、更に重合して≡Si−O−Si≡なるシロキサン結合をもった加水分解生成物が形成される。この場合、ハロゲン化珪素化合物の分子式中のハロゲン元素が2個の場合は、シロキサン結合は直鎖となるので、加水分解生成物は液体状或いはオイル状の物質となる。また、ハロゲン原子が分子中に3つ以上存在するハロゲン化珪素化合物では、重合が三次元的に進むので加水分解生成物は固体となる。
加水分解反応は、水蒸気とハロゲン化珪素化合物とが接触した際に進む。このときハロゲン化珪素化合物は、耐熱性粉体の周囲に存在しているので加水分解は耐熱性粉体の周囲で進行することになり、最終的には耐熱性粉体を取り囲むように加水分解生成物層が形成される。ハロゲン化珪素化合物の量が多く、耐熱性粉体に対して充分な量のハロゲン化珪素化合物が存在する場合は、加水分解反応は耐熱性粉体の周囲以外でも進行することがある。この加水分解生成物は、耐熱性粉体周囲で生成した加水分解生成物同様に後述の焼成によって二酸化珪素になり、同様にバインダー成分として有効であるので、離型剤成分の設定に応じてハロゲン化珪素化合物量を決定すれば良い。なお、加水分解反応では、副生成物として塩化水素が生成するので加水分解反応は耐食性を考慮した容器中で実施する必要がある。
この加水分解生成物は、前駆体であるハロゲン化珪素化合物の構造中にアルキル基が存在する場合は、そのアルキル基を酸化雰囲気中で焼成することで酸化除去する必要がある。この酸化除去は、離型剤をルツボにコーティングする前でも良いし、コーティング後のルツボの焼成時でも良いが、コーティング時の取り扱い易さから事前に焼成するのがよい。加水分解生成物にアルキル基が存在する場合は、熱処理によりこのアルキル基が分解する。この際に、熱処理雰囲気が不活性雰囲気であると、分解したアルキル基の炭素がそのまま加水分解生成物に黒色を呈して存在することがあるが、これを防止するには加水分解生成物の焼成を大気或いは酸化雰囲気としてこの炭素を燃焼させることで白色の二酸化珪素となる。焼成は400〜1200℃の温度、特には500〜800℃で10〜120分、特に20〜60分間熱処理することが好ましく、この処理で700℃程度まで加熱すれば、ほぼ完全にアルキル基は酸化除去され二酸化珪素となる。
本発明の離型剤は、このようにして得られた耐熱性粉体とバインダー(バインダー前駆体)を含む混合物を、水等の分散媒に分散させてスラリー化したもので、必要により、界面活性剤などの分散剤やPVA等の室温で離型剤層の形状を保持する油脂成分等のその他の添加物質を含むことができる。
離型剤のルツボヘのコーティングは、耐熱性粉体、バインダー(バインダー前駆体)及び分散媒である液体物質を含む混合物をスラリー化した状態で塗布される。この際、事前に焼成(熱処理)された加水分解生成物を使用する場合は、加水分解生成物は二酸化珪素となっているので表面は親水性であるために、分散媒である液体物質は水で充分である。事前の焼成(熱処理)を実施していない加水分解生成物を使用してスラリー化する場合は、加水分解生成物にはアルキル基が存在しているので親水性が弱まり、疎水性の傾向となることもある。その場合は、分散媒である液体物質は水だけでは充分な分散状態とならないこともあるので、水にアルコール類、エーテル類等の水溶性溶媒を加えたり、上記の有機溶媒だけの液体物質で分散することになる。
耐熱性粉体、バインダー(バインダー前駆体)及び液体物質等をスラリー化して得られる離型剤は、次いでルツボに塗布される。スラリーは必要に応じて結着剤や界面活性剤などの成分を添加してスラリー調整をしてからルツボに塗布する。塗布はハケ塗り、コテ塗り、スプレーコーティングなどの塗布方法が適宜用いられる。ルツボヘの塗布は、使用するスラリーの粘度や塗布量によって塗布厚が決まる。塗布厚は、塗布層の機械的強度の確保や、塗布厚みの不均一に対応するといった点から、100〜2000μmが好ましい。塗布後は液体物質蒸発除去のために40〜300℃で10〜240分間加熱されて液体成分が除かれるが、このときの塗布層の厚さが離型剤層厚になる。この厚が目的とする厚さに満たなければ再度スラリーを重ねて塗布することで離型剤層厚を確保することになる。
ルツボに塗布した離型剤層は、次いで400〜1200℃の高温雰囲気で10分〜4時間熱処理されて離型剤層が形成される。
以下、実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、平均粒径は、電子顕微鏡の写真により目視で測定した。
[実施例1]
図1に示すように、平均粒径0.5μmの窒化珪素50gを500ccのガラス製のフラスコ1に入れ、ここに10gの四塩化珪素を入れた。フラスコ上部から差し込んであるポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根2でこの固液混合体3を撹拌混合した。フラスコ内では窒化珪素粉全体が湿潤状態になったように見られた。なお、フラスコは5℃に温度管理した水浴4に浸漬した。
図1に示すように、平均粒径0.5μmの窒化珪素50gを500ccのガラス製のフラスコ1に入れ、ここに10gの四塩化珪素を入れた。フラスコ上部から差し込んであるポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根2でこの固液混合体3を撹拌混合した。フラスコ内では窒化珪素粉全体が湿潤状態になったように見られた。なお、フラスコは5℃に温度管理した水浴4に浸漬した。
これとは別に、0℃に温度管理した液体6に浸漬しているバブラー7中に水を入れ、窒素ガスにてバブリングすることで湿潤窒素とし、これをノズル5を通じてフラスコ中に導入した。導入時、フラスコ内は加水分解で発生したモヤ状の加水分解生成物が発生したが、そのまま撹拌とガス導入を継続すると、やがてフラスコ内の湿潤状態は和らいだ。
次に、バルブ8を操作してノズル5から水分を含まない高純度窒素を導入し、同時に、フラスコを浸漬している水浴4を70℃まで上昇させて加水分解で生成した塩化水素ガスを脱気した。フラスコ内の固形物を取り出したところ塩化水素臭を少し感じた。また固形分の質量を測定したところ50.3gであった。
次に、バルブ8を操作してノズル5から水分を含まない高純度窒素を導入し、同時に、フラスコを浸漬している水浴4を70℃まで上昇させて加水分解で生成した塩化水素ガスを脱気した。フラスコ内の固形物を取り出したところ塩化水素臭を少し感じた。また固形分の質量を測定したところ50.3gであった。
この固形物10gと10質量%ポバール(商品名:ポバール、林純薬工業(株)製)水溶液20cc、純水5ccを調合し、小型ボールミルにて6時間撹拌して塗布用スラリー(離型剤)とした。
このスラリーをシリカ製のルツボ(ID100mmφ×200mmh)に注ぎ、ルツボ内面がスラリーで全面濡れるようにしてから余分なスラリーを戻し、ルツボを50℃の乾燥機内で乾燥させた。このルツボヘ、注入→内全面湿潤→乾燥を三回繰り返したのちにルツボを電気炉内に入れて電気炉を1000℃まで昇温し、1時間保持後に冷却した。ルツボには離型剤が付着しており剥離した個所は無かった。
このスラリーをシリカ製のルツボ(ID100mmφ×200mmh)に注ぎ、ルツボ内面がスラリーで全面濡れるようにしてから余分なスラリーを戻し、ルツボを50℃の乾燥機内で乾燥させた。このルツボヘ、注入→内全面湿潤→乾燥を三回繰り返したのちにルツボを電気炉内に入れて電気炉を1000℃まで昇温し、1時間保持後に冷却した。ルツボには離型剤が付着しており剥離した個所は無かった。
このルツボに珪素を1kg充填してからルツボをブリッジマン炉に装着し、1500℃に加熱して珪素を溶融した。引き続き、ルツボをゆっくりと降下させることで珪素をルツボ下部より凝固を開始させた。規定時間(10時間)ルツボの下降を継続した後にブリッジマン炉を降温した。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材のシリカとの固着は無かった。また、離型剤層は一部剥離しているものの、ほとんどの離型剤がルツボに付着していた。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材のシリカとの固着は無かった。また、離型剤層は一部剥離しているものの、ほとんどの離型剤がルツボに付着していた。
[実施例2]
ハロゲン化珪素化合物としてメチルトリクロロシラン9gを使用した以外は実施例1と同様に加水分解処理及び脱塩化水素処理を実施した。これを更に700℃の大気雰囲気炉で1時間熱処理してから実施例1と同様の方法でスラリー化し、シリカ製ルツボに塗布・乾燥・焼成した。
ハロゲン化珪素化合物としてメチルトリクロロシラン9gを使用した以外は実施例1と同様に加水分解処理及び脱塩化水素処理を実施した。これを更に700℃の大気雰囲気炉で1時間熱処理してから実施例1と同様の方法でスラリー化し、シリカ製ルツボに塗布・乾燥・焼成した。
このルツボに珪素を1kg充填してからルツボをブリッジマン炉に装着し、1500℃に加熱して珪素を溶融した。引き続き、ルツボをゆっくりと降下させることで珪素をルツボ下部より凝固を開始させた。規定時間(10時間)ルツボの下降を継続した後にブリッジマン炉を降温した。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材のシリカとの固着は無かった。また、離型剤層は一部剥離しているものの、ほとんどの離型剤がルツボに付着していた。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材のシリカとの固着は無かった。また、離型剤層は一部剥離しているものの、ほとんどの離型剤がルツボに付着していた。
[比較例1]
平均粒径0.5μmの窒化珪素50gを500ccのガラス製のフラスコ4に入れ、更にヒュームドシリカ(日本アエロジル製 アエロジル200)を0.3gフラスコ中に入れ、更にフラスコ上部から差し込んであるポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根2での固液混合体を充分撹拌混合した。なお、フラスコは10℃に温度管理した水浴4に浸漬した。
平均粒径0.5μmの窒化珪素50gを500ccのガラス製のフラスコ4に入れ、更にヒュームドシリカ(日本アエロジル製 アエロジル200)を0.3gフラスコ中に入れ、更にフラスコ上部から差し込んであるポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根2での固液混合体を充分撹拌混合した。なお、フラスコは10℃に温度管理した水浴4に浸漬した。
この固形物10gと10質量%ポバール(商品名:ポバール、林純薬工業(株)製)水溶液20cc、純水5ccを調合し、小型ボールミルで6時間撹拌して塗布用スラリー(離型剤)とした。
このスラリーをシリカ製のルツボ(ID100mmφ×200mmh)に注ぎ、ルツボ内面がスラリーで全面濡れるようにしてから余分なスラリーを戻し、ルツボを50℃の乾燥機内で乾燥させた。このルツボヘ、注入→内全面湿潤→乾燥を三回繰り返したのちにルツボを電気炉内に入れて電気炉を1000℃まで昇温し、1時間保持後に冷却した。ルツボには離型剤が付着しており剥離した個所は無かった。
このスラリーをシリカ製のルツボ(ID100mmφ×200mmh)に注ぎ、ルツボ内面がスラリーで全面濡れるようにしてから余分なスラリーを戻し、ルツボを50℃の乾燥機内で乾燥させた。このルツボヘ、注入→内全面湿潤→乾燥を三回繰り返したのちにルツボを電気炉内に入れて電気炉を1000℃まで昇温し、1時間保持後に冷却した。ルツボには離型剤が付着しており剥離した個所は無かった。
このルツボに珪素を1kg充填してからルツボをブリッジマン炉に装着し、1500℃に加熱して珪素を溶融した。引き続き、ルツボをゆっくりと降下させることで珪素をルツボ下部より凝固を開始させた。規定時間(10時間)ルツボの下降を継続した後にブリッジマン炉を降温した。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材とは一部固着しており、また離型剤層は全体の50質量%程度が剥離していた。
炉よりルツボを取り出したところ、珪素とルツボ材とは一部固着しており、また離型剤層は全体の50質量%程度が剥離していた。
1 フラスコ
2 撹拌羽根
3 固液混合体
4 水浴
5 ノズル
6 液体
7 バブラー
8 バルブ
2 撹拌羽根
3 固液混合体
4 水浴
5 ノズル
6 液体
7 バブラー
8 バルブ
Claims (8)
- 耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。 - 耐熱性粉体及び下記示性式:
SiRl xR2 y
(但し、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、R2はハロゲン原子であり、xは0〜2の整数、yは2〜4の整数、x+y=4である。)
で示されるハロゲン化珪素化合物を混合し、該ハロゲン化珪素化合物を加水分解した後、上記耐熱性粉体及び上記ハロゲン化珪素化合物の加水分解生成物の混合物を熱処理し、これに溶媒を加えてスラリー化することを特徴とする珪素鋳造用離型剤の調製方法。 - 耐熱性粉体及びハロゲン化珪素化合物を撹拌しながら加水分解する請求項1又は2記載の調製方法。
- 加水分解用の水分が水蒸気である請求項1、2又は3記載の調製方法。
- 熱処理温度が400〜1200℃である請求項1乃至4のいずれか1項記載の調製方法。
- 溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒である請求項1乃至5のいずれか1項記載の調製方法。
- 耐熱性粉体が、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、硼化窒素及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載の調製方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1項記載の珪素鋳造用離型剤を鋳型に塗布した後、焼成して、珪素鋳造用鋳型表面に離型剤層を形成することを特徴とする珪素鋳造用鋳型の製造方法。
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JP2009220977A JP2011067839A (ja) | 2009-09-25 | 2009-09-25 | 珪素鋳造用離型剤の調製方法及び珪素鋳造用鋳型の製造方法 |
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2009
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