JP2003041357A - シリコン保持容器およびその製造方法 - Google Patents
シリコン保持容器およびその製造方法Info
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Abstract
に、さらに焼結性、機械的強度および生産性に優れる溶
射皮膜を、シリコン溶湯の保持容器を提案すること。 【解決手段】シリコン保持容器の内面に、金属シリコ
ン、シリコン窒化物およびシリコン酸化物からなるシリ
コン系複合サーメットの溶射皮膜を被覆してなるシリコ
ン保持容器。また、前記シリコン系複合サーメット溶射
皮膜は、Si3N4、SiO2および結合材である金属シリコン
とからなるシリコン系サーメット材料を溶射して形成す
る。
Description
解する容器あるいは溶融金属シリコンを保持しておくた
めのシリコン保持容器とその製造方法に関するものであ
る。本発明に係る上記容器は、半導体素子シリコンウエ
ハや太陽光発電用多結晶シリコンウエハなどを製造する
とき、シリコンインゴットを鋳造するときに用いられる
溶融シリカ製鋳型として、あるいは金属シリコンを溶
解、清浄化し、さらに鋳造工場に運搬するるつぼとし
て、さらにはシリコン浴湯を注湯までのあいだ、保持し
ておくための保持容器などを含むものである。
体素子の基板となるシリコンウエハは、高純度のシリコ
ン融液を凝固させ、シリコン単結晶を形成し、これをス
ライシングすることにより製造するのが普通である。例
えば、純シリコン素材を抵抗加熱法または高周波誘導加
熱法などにより融解し、そのシリコン融液に種結晶を浸
して十分になじませたのち、ゆっくりと引き上げ、一方
向凝固させることよって、種結晶の方位配列をもった大
きな円柱状のシリコン単結晶としている。このような製
造工程においては、そのシリコンの溶融・保持容器、即
ちるつぼとして、グラファイト、石英、窒化ホウ素ある
いは白金製のるつぼなどが使用されている。また、太陽
電池用のアモルファスシリコンあるいはポリクリスタル
シリコン等を製造する場合においても、十分に清浄化処
理されたシリコン融液を、上述したるつぼ等の保持容器
に保持しておく必要がある。
の保持容器としてのるつぼの場合、保持金属溶湯が接触
しているるつぼ壁の不純物金属成分により、シリコン融
液が汚染され、シリコンの純度が低下するという問題が
あった。また、近年では安価なシリコンの提供とその生
産性の向上が求められているという背景の下で、るつぼ
の材質も石英の代替として安価な溶融酸化珪素材(溶融
シリカ)が盛んに用いられるようになり、シリコン融液
の汚染に対するさらなる対策が求められている。
ン融液の汚染対策として、酸化けい素焼結材るつぼの融
液接触部にコーティングを施し、シリコン融液がるつぼ
壁に直接接触することを防ぐ方法が検討されてきた。す
なわち、るつぼ壁の内面に、溶融金属との離型性に優れ
かつ、溶融金属に対する濡れ性に優れる酸化物や窒化物
などのコーティング剤を塗布して被覆していたのであ
る。
物、窒化物)は、それ自体が難焼結性であるため、るつ
ぼ壁への接着強度が弱く、部分的に剥離するという欠点
があった。しかも、剥離したコーティング剤は、金属融
液中に混入して新たな不純物となって、却って製品の純
度を低下させる場合があった。
(Si3N4)も用いられるが、この窒化珪素は、金属元素
を含まないため、溶融金属との非反応性に優れる材料と
してよく知られている。しかし、この窒化珪素はまた、
焼結性に乏しい上に、機械的強度を実用レベルのものに
するには、ホットプレスやHIPなどの成形・焼結の処理
が不可欠であり、生産性が悪い。また、形状が比較的大
きく、消耗品としての用途の多いるつぼに対し、上掲の
如き処理を適用することは、経済的な損失が大きいとい
う問題点もあった。
なればなるほど、コーティング剤そのものの化学組成や
コーティング層自体の機械的強度、るつぼ壁への接合強
度などもより高性能なものが求められている。なお、上
記コーティング層を塗布する従来技術は、単位操作での
成膜速度が遅く、実用厚さにするためには多数回の塗布
が必要なるため、生産性ならびにコストの点からも改善
が求められていた。
シリコン製造時にその溶融・保持容器として、例えば、
るつぼを使用する場合、高純度の金属シリコンを得るた
めには、るつぼ壁からの不純物によるシリコン融液の汚
染を防止することが必要である。そこで、汚染防止のた
めに、そのるつぼの内表面に酸化物や窒化物などの耐熱
性コーティングを施すことが多いが、一般にこれらのコ
ーティング材は焼結性に乏しく、機械的強度も低いとい
う欠点があり、生産性および経済性の面からも改善が求
められていた。
いる上述した課題を解決すること、即ち、容器からのシ
リコン融液の汚染を効果的に防止できると共に、さらに
焼結性、機械的強度、生産性にも優れるシリコン溶湯の
保持容器を提案することにある。
保持容器の溶湯接触面に、シリコン溶湯と反応しにく
く、その溶湯の流動に対する耐エロージョン性に優れ、
しかも金属汚染が少なく、高品質・高歩留りのインゴッ
トを得るために有効に作用する溶射皮膜形成技術を提案
することにある。
述した問題点について鋭意検討した結果、発明者らは、
上記の目的を実現するには、下記の要旨構成に係る技術
の採用が有効になるとの知見を得て、本発明を完成し
た。
ン保持容器の内面に、金属シリコンとシリコン窒化物お
よびシリコン酸化物からなるシリコン系複合サーメット
溶射皮膜を被覆してなるシリコン保持容器を提案する。
このような構成において、前記シリコン系複合サーメッ
ト溶射皮膜は、窒化物が溶融金属に対して非反応性の役
割を果すと共に、この窒化物と複合化する酸化物のガラ
ス結合相ならびに金属シリコンの結合相が互いに複合化
することで、融液流動に対して耐エロージョン性を示す
ようになる。
合サーメット溶射皮膜は、Si3N4およびSiO2の混合物に
対して結合材である金属シリコンを加えてなるシリコン
系複合サーメット材料を溶射して形成することが好まし
い。また、このシリコン保持容器は、酸化珪素、窒化ホ
ウ素およびグラファイトのいずれかの材質を用いて形成
したものであること、そのうちの前記酸化珪素(SiO2)
は、溶融シリカ材を用いることが好ましい。
に、金属シリコン、シリコン窒化物およびシリコン酸化
物からなるシリコン系複合サーメット材料を溶射するこ
とにより、シリコン系複合サーメット溶射皮膜を被覆し
てなるシリコン保持容器の製造方法である。
容器は、酸化珪素、窒化ホウ素およびグラファイトのい
ずれかの材質を用いて形成したものであることが好まし
く、また、上記溶射皮膜は、プラズマ溶射、高速ガス炎
溶射、ガス粉末式溶射あるいは、爆発式溶射などの溶射
法によって被覆形成することが好ましい。
合サーメット溶射皮膜は、金属シリコン(X):シリコン
窒化物(Y):シリコン酸化物(Z)の混合割合が、容量比で
X:Y:Z=20〜50:77〜30:3〜20であることが好まし
い。
コン窒化物の溶射皮膜化について長年に亘り種々の検討
を重ねた。その結果、このシリコン窒化物には、さら
に、シリコン酸化物と金属シリコンを所定の割合で混合
したシリコン系複合サーメット材料(混合原料)を用い
ることが有効であることを突き止めた。すなわち、まず
容器の所定の表面を清浄化し、次いで前記シリコン系複
合サーメット材料を溶射して、シリコン系サーメット溶
射皮膜を形成し、その後、研磨加工等による表面形状の
精度調整を行なうことが望ましい。
ためには、Al2O3などの焼結助剤を添加し、ホットプレ
スあるいはHIPを用いて成形を行なう必要があった。す
なわち、酸化物、炭化物、ほう化物あるいは窒化物など
の無機質非金属材料を用いて溶射皮膜を形成する場合、
結合剤として金属を添加するのが基本である。しかしな
がら、本発明では、その対象が高純度金属シリコンを融
解し、保持するための容器であるため、製品となる金属
シリコンとは異なる金属を結合剤として用いることは不
適当であると考えた。そこで、本発明では、取り扱う高
純度金属がシリコンであるため、結合剤もまた高純度の
シリコンを結合剤として用いることにしたのである。
コンを用いることの他に、シリコン酸化物を添加するこ
ととした。本発明において、シリコン酸化物をも用いる
理由は、例えば、プラズマ溶射中に、プラズマ炎中でこ
のシリコン酸化物(SiO2)が軟化して、少なくとも一部の
Si3N4を包み込むように付着し、さらに前記金属シリコ
ンが、Si3N4およびSiO2の両方を覆うように付着してSi3
N4粒子を固定して擬似粒子化しながら飛行することで、
金属シリコンをマトリックス(結合剤層)とするシリコ
ンの窒化物および酸化物を含むシリコン系複合サーメッ
トの積層構造化した溶射皮膜が得られる。このような溶
射皮膜は、強度もまた高いものになる。
ン(M・Si)x、シリコン窒化物(Si3N4) yおよびシリコン酸
化物(SiO2)zを下記の混合比率(容量比)で混合したも
のを用いる。 X:Y:Z =20〜50:77〜30:3〜20
を20〜50に限定する理由は、20より少ないと、酸化物と
窒化物間の結合材として機能が十分でなく、皮膜強度が
得られない結果、融液の移動接触によるエロージョン損
耗に耐えられず、また、50より多いと、存在する皮膜中
の金属Si域が大きくなり、融液凝固時までに皮膜と融液
の拡散反応層が生成して、凝固製品表面の不純物含有層
が増大してしまうためである。また、好ましくは、30〜
45である。また、(SiO2)zを3〜20に限定する理由は、3
より少ないと、難焼結性によりSi3N4粒子間結合強度が
得られず、20を超えるとSi3N4の融液低ぬれ性が阻害さ
れることにある。好ましくは、7〜13である。また、(Si
3N4)yは、サーメット皮膜強度および融液とのぬれ性の
点から上記(M・Si)xおよび(SiO2)zの量を最適化すること
で決定される。
シリカ)を用いることが好ましい。工業用SiO2材には、
珪砂を原料とした不透明品である溶融シリカと、水晶を
原料として製造された透明品の溶融石英があり、本用途
では物性上、いずれも用いることができる。しかしなが
ら、本発明において溶融シリカを用いることが好ましい
理由としては、溶融シリカ製品が一般に、珪砂を溶融し
てSiO2主体の粗原料を得た後、これを粉砕することによ
って粉体化し、さらに成形することで要求する形状が得
られること、さらに、この成形品を焼結することにより
製品に必要な機械的強度を付与することができることに
ある。つまり、このように溶融シリカ材を用いた製品
は、成形性に優れ、かつ大型のものも得られやすいとい
う特徴がある。
炎溶射、ガス粉末式溶射あるいは、爆発式溶射技術によ
り、保持容器内の少なくとも溶融金属に接する部分の表
面に、膜厚:20〜500μm、好ましくは40〜300μm程度の
厚みに溶射する。このように膜厚を限定する理由は、40
μmより薄いと、サーメット粒子間の連結が十分でな
く、融液がその間隙を通じて、るつぼ基材自体と接触す
るおそれがあり、また、300μmより厚いと皮膜が剥離す
る危険性が高くなるためである。
形成する被膜層として、シリコン系複合サーメット材料
を溶射して、金属シリコンおよびSiO2に加えて下記の組
成のSi3N4の混合粉末を用いた。
iO2は純度99.8%のものを使用した。これらの原料粉末の
混合比率は、容量比でSi:Si3N4:SiO2=40:50:10と
した。また、混合粉末は、予め造粒して平均粒径が25±
3μm程度の溶射材料粉末とした。図1は、本発明に係る
複合溶射皮膜の断面構造例を示したものである。図示の
符号1は溶融シリカ製基材、2は複合溶射皮膜を示す。
シリコン系複合サーメット溶射皮膜を被覆した溶融シリ
カ基材とシリコン融液との相互作用について調査を行な
った。試料として寸法:100×50×6mmの溶融シリカ基材
を使用した。この試料表面に、容量比でSi:Si3N4:SiO
2=40:50:10の割合で混合した溶射材料を、大気プラズ
マ溶射法により300μmの厚さに溶射して、シリコン系複
合サーメット溶射皮膜を形成した。このように溶射皮膜
を形成した試料を、350×350×400(h)mmの大きさの溶融
シリカ製るつぼの底面に設置し、上方からシリコン融液
を注湯して、融液落下による皮膜の耐エロージョン特性
および融液接触による影響について調査を行なった。る
つぼは、電熱ヒータを用いて外部より加熱し、シリコン
融液を溶融状態に保った状態で3時間保持した。
し、表面を観察した。目視観察した範囲では、皮膜の基
材からの剥離は認められず、良好な接合性と非反応性を
示していた。また、融液落下による皮膜への影響も認め
られなかった。
いられるシリコン太陽電池用多結晶シリコンウエハを製
造するための多結晶シリコンインゴット鋳造鋳型の内面
に対して、本発明にかかるシリコン系複合サーメット溶
射皮膜を形成した。使用した鋳型は、Al2O 3:2000ppm、
Fe2O3:200ppmを含む溶融シリカ製であり、寸法は350×
350×400(h)mmである。この鋳型底面に、容量比でSi:Si
3N4:SiO2=40:50:10の割合で混合した溶射材料粉末を、
大気プラズマ溶射法により、50〜70μmの厚さに溶射し
てシリコン系複合サーメット溶射皮膜を形成した。
ルコールを溶媒としてスラリー状とし、鋳型底面に刷け
塗りあるいは噴霧法により塗布したのち、900℃で焼成
して皮膜形成したものを用いた。鋳造後のシリコンイン
ゴット製品の表層部における異種材料による汚染につい
て調査した結果を表2に示す。
合例では、シリコンインゴット表層において検出された
異種材料は、SiO2のみであった。また、表層からの侵入
深さは数μmであった。このSiO2は、Siの大気中酸化に
よるものである。従って、このSiO2は、インゴットを除
去しろ2mm以下で、面切削することで完全に除去するこ
とができた。そのため、インゴット歩留は、98%以上で
あった。
てSi3N4の他、さらにAl2O3やSiO2、Fe2O3などが検出さ
れた。とくに、金属元素としてAlおよびFeが認められ、
また、異種材料の表層からの侵入深さは、数100μmであ
った。表層に検出されたこれらの異種材料を除去するた
めには、両面を10mm厚さで面切削する必要があり、製品
インゴットの歩留は、94%前後まで低下した。
純度を要求される金属シリコンの鋳造用るつぼにおい
て、このるつぼの溶湯接触面にSi/Si3N4/SiO2からなる
シリコン系複合サーメット溶射材料をプラズマで溶射
し、被覆形成することによって、溶融シリカるつぼと融
液との直接接触を防ぎ、るつぼ材による汚染を解消でき
るとともに、従来から用いられてきたSi3N4単独塗布層
と比較してより強固な離型性機能層を形成することがで
きる。その結果、高純度シリコンインゴットの製品歩留
向上とSi3N4材料の消費抑制をはかることができる。
顕微鏡写真である。
Claims (8)
- 【請求項1】 シリコン保持容器の内面に、金属シリコ
ン、シリコン窒化物およびシリコン酸化物からなるシリ
コン系複合サーメット溶射皮膜を、被覆してなるシリコ
ン保持容器。 - 【請求項2】 前記シリコン系複合サーメット溶射皮膜
は、Si3N4およびSiO 2の混合物に対し、結合材である金
属シリコンを加えてなるシリコン系複合サーメット材料
を溶射して形成したものであることを特徴とする請求項
1に記載のシリコン保持容器。 - 【請求項3】 上記シリコン系複合サーメット溶射皮膜
は、金属シリコン(X):シリコン窒化物(Y):シリコン酸
化物(Z)の混合割合が、容量比でX:Y:Z=20〜50:77〜
30:3〜20であることを特徴とする請求項1または2に
記載のシリコン保持容器。 - 【請求項4】 前記シリコン保持容器は、酸化珪素、窒
化ホウ素およびグラファイトのいずれかの材質を用いて
形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のい
ずれか1項に記載のシリコン保持容器。 - 【請求項5】 前記酸化珪素(SiO2)は、溶融シリカであ
ることを特徴とする請求項4に記載のシリコン保持容
器。 - 【請求項6】 シリコン保持容器の内面に、金属シリコ
ン、シリコン窒化物およびシリコン酸化物からなるシリ
コン系複合サーメット材料を溶射することにより、シリ
コン系複合サーメット溶射皮膜を被覆形成することを特
徴とするシリコン保持容器の製造方法。 - 【請求項7】 前記シリコン保持容器は、酸化珪素、窒
化ホウ素およびグラファイトのいずれかの材質を用いて
形成したものであることを特徴とする請求項6に記載の
シリコン保持容器の製造方法。 - 【請求項8】 上記シリコン系サーメット溶射皮膜は、
金属シリコン(X):シリコン窒化物(Y):シリコン酸化物
(Z)の混合割合が、容量比でX:Y:Z=20〜50:77〜30:
3〜20であることを特徴とする請求項6に記載のシリコ
ン保持容器の製造方法。
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