JP2011065291A - エンハンス画像処理装置、及び医療用観察システム - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の微細構造を患者の個人差の影響を受けることなく良好にエンハンス表示させることができるエンハンス画像処理装置を提供すること。
【解決手段】エンハンス画像処理装置を、被写体画像に含まれる特定構造を分析する分析手段と、分析結果に従って被写体画像から特定構造の画像を分離生成する分離画像生成手段と、分離生成された特定構造の画像にエンハンス処理を施すエンハンス手段とから構成した。
【選択図】図4
【解決手段】エンハンス画像処理装置を、被写体画像に含まれる特定構造を分析する分析手段と、分析結果に従って被写体画像から特定構造の画像を分離生成する分離画像生成手段と、分離生成された特定構造の画像にエンハンス処理を施すエンハンス手段とから構成した。
【選択図】図4
Description
この発明は、被写体画像にエンハンスをかけるエンハンス画像処理装置及び医療用観察システムに関する。
術者が患者の体腔内を診断する際に使用する医療機器として、ファイバスコープや電子スコープが一般的に知られている。例えば、電子スコープを使用する術者は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入して、挿入部先端に備えられた挿入先端部を被写体近傍に導く。術者は、電子スコープやビデオプロセッサの操作部を必要に応じて操作して、光源装置から放射された照明光によって被写体を照明する。術者は、照明された被写体の反射光像を挿入先端部に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子によって撮像する。術者は、撮像された被写体の映像をモニタを通じて観察し診断や施術等を行う。
近年、統計的なデータを用いて画像処理演算を行い、特定の波長域の分光画像を生成する医療用観察システムが提案されている。このような医療用観察システムの具体的構成例は、例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の医療用観察システムは、絞り位置、撮像素子のカラーチップ特性、ランプの種類等から分光特性を推定して、分光特性に適したマトリクスデータを選択する。分光画像は、選択されたマトリクスデータを用いた画像処理演算によって生成される。特許文献1の記載によれば、組織の性状や血管等の微細構造を際立たせた分光画像が、医療用観察システムの各要素の分光特性の相違の影響を受けることなく良好な色再現性で得られる。
ところで、組織の性状や血管等の分光特性にも患者毎に個人差がある。医療用観察システム側の各要素の分光特性を考慮して画像処理演算を行うという特許文献1に記載の構成では、患者の個人差に対応できないため、患者によっては組織の性状や血管等に対するエンハンスがかかり難いこともある。そこで、例えば、組織の性状や血管等をエンハンスさせるのに好適なマトリクスデータを患者毎に予め用意して画像処理演算を行う構成が考えられる。しかし、そのようなマトリクスデータを予め用意するためには膨大な臨床試験等が必要であり、また、開発コストやリードタイムの増加が避けられない。仮にマトリクスデータを用意できたとしても、その中から患者の分光特性に適合したマトリクスデータを患者毎に適切に選択するのは難しく、有効な解決手段とはいえない。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特定の微細構造を患者の個人差の影響を受けることなく良好にエンハンス表示させることができるエンハンス画像処理装置、及び医療用観察システムを提供することである。
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るエンハンス画像処理装置は、被写体画像に含まれる特定構造を分析する分析手段と、分析結果に従って被写体画像から特定構造の画像を分離生成する分離画像生成手段と、分離生成された特定構造の画像にエンハンス処理を施すエンハンス手段とを有することを特徴とした装置である。
本発明に係るエンハンス画像処理装置によれば、エンハンス処理の実行に先立って血管画像が分離生成されて、血管画像以外の他の成分画像(例えば粘膜)が除去された状態でエンハンス処理が行われる。エンハンスが血管画像以外の他の成分画像にもかかるという問題が有効に避けられるため、患者(個人差)によってエンハンスがかかり難いという不具合が解消されて、エンハンスが血管画像に対して効果的にかかることとなる。
分析手段は、被写体画像から特定構造の画像を分離生成するための、被写体画像を構成する各色成分の信号の混合比を画素単位で推定する構成としてもよい。
被写体画像は例えば血管と粘膜を含む画像であり、特定構造は例えば血管である。
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る医療用観察システムは、被写体を撮影する電子スコープと、電子スコープによって撮影された被写体画像が入力する上記のエンハンス画像処理装置とを有することを特徴としたシステムである。
本発明によれば、特定の微細構造を患者の個人差の影響を受けることなく良好にエンハンス表示させることができるエンハンス画像処理装置及び医療用観察システムが提供される。
以下、添付された各図面を参照しつつ、本発明の実施形態の医療用観察システムについて説明する。なお、本実施形態の電子スコープには、一般な電子スコープと同じく、鉗子チャンネルや送気送水ノズル等が備えられている。但し、本明細書又は各図面においては、本発明の特徴に直接的には関係しないこの種の構成要素の説明又は図示を便宜上省略している。本実施形態のプロセッサについても同様に、電子スコープ対応の一般的なプロセッサに搭載されている、本発明の特徴に直接的には関係しない構成要素の説明又は図示を便宜上省略している。また、本発明の特徴を明瞭に説明する便宜上、医療用観察システム側の各要素に起因する分光特性のばらつきは、本明細書中で言及がない限り、特段考慮しない。
図1は、本実施形態の医療用観察システム1の外観図である。図1に示されるように、医療用観察システム1は、被写体を撮影するための電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓管によって外装された挿入可撓部11を有している。挿入可撓部11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された挿入先端部12が連結されている。挿入可撓部11と挿入先端部12との連結箇所は、挿入可撓部11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作によって屈曲自在に構成されている。挿入先端部12の方向が上記遠隔操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
図1に示されるように、医療用観察システム1は、プロセッサ200を有している。プロセッサ200は、電子スコープ100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施の形態では、信号処理装置と光源装置を別体で構成してもよい。
プロセッサ200には、電子スコープ100の基端に設けられたコネクタ部10に対応するコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20は、コネクタ部10に対応する連結構造を有し、電子スコープ100とプロセッサ200とを電気的にかつ光学的に接続するように構成されている。
図2は、医療用観察システム1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、医療用観察システム1は、所定のケーブルを介してプロセッサ200に接続されたモニタ300を有している。なお、図1においては、図面を簡略化するため、本発明に係る特徴的構成を有さないモニタ300を図示省略している。
図2に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、医療用観察システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを医療用観察システム1内の各種回路に出力する。
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ210によって集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、LCB(light carrying bundle)102の入射端に入射する。
絞り212には、図示省略されたアームやギヤなどの伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作されて開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102の内部を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102を伝播した照明光は、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端から射出する。LCB102の射出端から射出した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCDであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた信号に変換する。変換された信号は、プリアンプ110によって増幅されてドライバ信号処理回路112に入力する。
ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ204のクロックパルスに基づいて、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。メモリ114には、電子スコープ100の固有情報(例えば固体撮像素子108の画素数や感度、対応可能なレート、或いは型番など)が格納されている。ドライバ信号処理回路112は、メモリ114にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。
ドライバ信号処理回路112は、メモリ114から読み出された固有情報をシステムコントローラ202に、固体撮像素子108の出力信号を信号処理回路220に、それぞれ出力する。ドライバ信号処理回路112とシステムコントローラ202又は信号処理回路220との間には、フォトカップラなどを使用した絶縁回路(不図示)が配置されている。すなわち、電子スコープ100とプロセッサ200は、電気的に絶縁されている。
システムコントローラ202は、ドライバ信号処理回路112から出力された上記固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。なお、システムコントローラ202は、電子スコープの型番と、この型番の電子スコープに適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。この場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
図3は、信号処理回路220の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、ドライバ信号処理回路112を介して出力された固体撮像素子108の出力信号は、Y/C分離回路222に入力する。Y/C分離回路222は、固体撮像素子108の出力信号を輝度信号Yと色信号Cに同期分離する。輝度信号処理回路224は、同期分離された輝度信号Yのコントラスト調整やブランキング調整等の各種信号処理を行う。RGB変換回路226は、同期分離された色信号Cのゲイン調整等を行い、輝度信号Yと色信号Cを原色信号(R信号、G信号、B信号)に変換して、通常色処理回路228とエンハンス処理回路234に出力する。
通常色処理回路228は、原色信号から輝度信号Yを差し引いた色差信号R−Y、B−Yの復調等を行う。通常色表示用フレームメモリ230には、輝度信号処理回路224が出力した輝度信号Y、通常色処理回路228が出力した色差信号R−Y、B−Yの各信号が順次入力して、フレーム単位でバッファリングされる。通常色表示用フレームメモリ230は、バッファリングされた各信号をタイミングコントローラ204によって制御されたタイミングで第一後処理回路232に出力する。第一後処理回路232は、通常色表示用フレームメモリ230からの入力信号をNTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換する。この映像信号は、スイッチSWが第一後処理回路232側にスイッチングされている期間、モニタ300に順次入力する。モニタ300には、被写体の通常のカラー画像が表示される。スイッチSWは、術者によるフロントパネル218の操作によって切替自在である。
エンハンス処理回路234は、原色信号に対して所定のエンハンス処理を行う。図4は、このエンハンス処理を説明するための図であり、説明の便宜上、処理信号を可視化して示したものである。ここで例示的に説明するエンハンス処理では、エンハンスが血管と粘膜で構成される被写体のうち血管にかけられる。
エンハンス処理回路234には、原画像を構成するRGBの各原色信号(図4参照)が入力する。エンハンス処理回路234は、エンハンス処理の実行に先立ち、入力した原色信号から血管と粘膜の各独立成分を分離生成するのに最適な混合比を画素単位で推定して原色信号を混合し、血管画像(より正確には、ヘモグロビンの濃度を表現するモノクロ画像)と粘膜画像とを分離生成する。その後のエンハンス処理では、分離画像のうち少なくとも血管画像が利用される。別の表現によれば、粘膜画像の分離生成又は利用は必須ではない。なお、ここで分離生成された血管画像は、粘膜情報が失われて血管情報だけが残されているから、粘膜成分の輝度値が高く血管成分の輝度値が低い。
具体的には、エンハンス処理回路234は、多変量の観測信号x(t)を複数の加法的な成分(分離信号y(t))に分離する独立成分分析(Independent Component Analysis)を用いて粘膜成分と血管成分とを分離する。独立成分分析は周知の計算手法であり、例えば刊行物1(陳延偉、「独立成分分析(1) −カクテルパーティー効果」, MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.21 No.1, January 2003, p81-85)や、刊行物2(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』、[平成21年8月検索]、インターネット、〈http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E6%88%90%E5%88%86%E5%88%86%E6%9E%90〉参照)等で参照される。独立成分分析において、各分離信号y(t)を互いに統計的に独立化(無相関化)させる分離行列をWと定義した場合、次の式(1)が満たされる。
図5は、独立成分分析によって血管と粘膜の各独立成分を分離する処理を説明するための図である。図5においては、被写体の表面付近の構造を粘膜層ρmと血管層ρhとによって模式的に示す。図5に示されるように、ランプ208から放射された照明光は、粘膜層ρm又は血管層ρhで散乱する。この散乱成分は、対物レンズ106に入射して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
照明光の分光特性をE(x、y、λ)と定義し、粘膜に含まれる吸収成分の濃度をρm(x、y)と定義し、血液中のヘモグロビンの濃度をρh(x、y)と定義し、それぞれの色素の交差係数をσm(λ)、σh(λ)と定義し、粘膜層ρmの光学的な厚みをlm(λ)と定義し、血管層ρhの光学的な厚みをlh(λ)と定義し、固体撮像素子108の感度に応じて決められる定数をCと定義し、固体撮像素子108の分光感度をSi(λ)と定義した場合、固体撮像素子108の画素(x、y)の輝度信号vi(i=R、G、B)は、次の式(2)に示される通りである。
式(2)のceを底とする指数関数は、照明光が粘膜層ρm又は血管層ρhでどの程度減衰するかを示している。
固体撮像素子108の分光感度Si(λ)が狭帯域である場合、Si(λ)をδ(λi)に近似することができる。この近似を式(2)に適用すると、次の式(3)が成立する。
式(3)の対数をとり、RGBそれぞれの応答を行列で表すと、次の式(4)が導かれる。
式(4)は、次の式(5)に書き換えられる。
式(5)の左辺は、RGBの輝度と照明光の照度との差を数式化した、観測可能な既知の成分であり、観測信号x(t)と定義する。更に、式(5)の右辺右の行列を各成分が独立した分離信号y(t)と定義し、式(5)の右辺左の行列を分離行列Wの逆行列と定義する。式(5)においては、ρm(x、y)、ρn(x、y)が互いに独立する粘膜成分、血管成分である。エンハンス処理回路234は、例えばカルバック・ライブラー・ダイバージェンス(Kullback-Leibler divergence)や高次統計量(kurtosis)等を用いて、ρm(x、y)、ρn(x、y)を互いに独立させる分離行列Wを画素毎に推定する。エンハンス処理回路234は、血管画像又は粘膜画像を構成する原色信号の混合比を推定結果に応じて画素単位で決定する。エンハンス処理回路234は、決定された混合比で原色信号を混合して、血管画像又は粘膜画像の分離画像を生成する。エンハンス処理回路234は、分離生成された血管画像又は粘膜画像を構成する各原色信号に対して所定のエンハンス処理を行う。
色処理回路236は、エンハンス処理後の原色信号から輝度信号Yを差し引いた色差信号R−Y、B−Yの復調等を行う。エンハンス表示用フレームメモリ238には、輝度信号処理回路224が出力した輝度信号Y、エンハンス処理回路234が出力した色差信号R−Y、B−Yの各信号が順次入力して、フレーム単位でバッファリングされる。エンハンス表示用フレームメモリ238は、バッファリングされた各信号をタイミングコントローラ204によって制御されたタイミングで第二後処理回路240に出力する。第二後処理回路240は、エンハンス表示用フレームメモリ238からの入力信号をNTSCやPAL等の所定の規格に準拠した映像信号に変換する。この映像信号は、スイッチSWが第二後処理回路240側にスイッチングされている期間、モニタ300に順次入力する。モニタ300には、例えば血管等の微細構造をエンハンスしたカラー画像が表示される。
本実施形態の医療用観察システム1では、血管画像を分離生成して血管画像以外の他の成分画像(例えば粘膜)を除去した状態でエンハンス処理を行うため、エンハンスが血管画像に対して効果的にかかる。別の表現によれば、エンハンス処理の実行に先立って血管画像を分離生成することにより、エンハンスが血管画像以外の他の成分画像にもかかるという問題(患者によってエンハンスがかかり難いという不具合)が有効に避けられる。
また、本実施形態のエンハンス処理によれば、血管や粘膜等の分光特性に患者毎の個人差がある場合にも、血管や粘膜等をばらつきの無い一定の色で再現することができる。以下においては、エンハンス処理回路234によるエンハンス処理の具体的実施例を3例説明する。なお、各実施例において、前述の実施形態の構成と同一の又は同様の構成には同一の又は同様の符号を付して説明を省略する。
図6は、本発明の実施例1のエンハンス処理回路234Aの構成を示すブロック図である。図7は、本実施例1を説明するための図であり、説明の便宜上、エンハンス処理回路234Aで処理される信号を可視化して示したものである。図6に示されるように、エンハンス処理回路234Aは、血管成分分離処理回路1234A、及びRGBの各色に対応した乗算器M1R、M1G、M1Bを有している。
乗算器M1Rには、カラーの原画像を構成するG成分の原画像(図7の符号O1G)が入力する。乗算器M1Rは、原画像O1Gの各画素に係数α1R(固定値)をかけてエンハンス画像(図7の符号E1R)を生成する。エンハンス画像E1Rは、R成分のエンハンス画像として色処理回路236で処理される。
血管成分分離処理回路1234Aには、カラーの原画像を構成するRGBの各成分の原画像が入力する。血管成分分離処理回路1234Aは、前述の分離生成処理によって原画像から血管画像(図7の符号V1)を分離生成する。血管成分分離処理回路1234Aは、分離生成された血管画像V1を乗算器M1G及びM1Bに出力する。乗算器M1G、M1Bはそれぞれ、血管画像V1の各画素に係数α1G、α1B(共に変動値)をかけてG、B成分のエンハンス画像(図7の符号E1G、E1B)を生成する。
エンハンス画像E1Rは、原画像O1Gを用いて生成されるため、原画像に比べて血管成分及び粘膜成分の輝度値が低い。エンハンス画像E1G、E1Bは共に血管画像V1を用いて生成されるため、粘膜成分の輝度値が原画像に比べて高く、血管成分の輝度値がエンハンス画像E1Rに比べて低い。すなわち、各エンハンス画像E1R、E1G、E1Bは、粘膜成分の輝度値がエンハンス処理によって上げられて又は粘膜成分を分離した血管画像を元に生成されるため、粘膜成分の彩度が原画像に比べて落とされている。そして、血管成分については、R成分の輝度値がG、B成分の輝度値より高い。このため、エンハンス画像E1R、E1G、E1Bを用いて生成されるカラーのエンハンス画像(図7の符号E1)は、白色基調の粘膜成分と赤みを帯びた血管成分で構成された画像になる。
なお、血管画像V1は、ヘモグロビンの濃度を濃淡画像として表現したものであるため、理想的には、明るさ等に影響されない物理量を算出した画像になる。すなわち、血管以外の情報が無いため、被写体の明るさによる勾配等の情報が失われた、平坦で奥行き感(手前が明るく奥が暗い)の無い画像になりやすい。そこで、本実施形態では、被写体が本来持つ明るさによる勾配を保存して被写体の奥行き感を残すべく、G成分の原画像を用いてエンハンス処理を行っている。本実施例1の変形例では、G成分の原画像の代わりに、R又はB成分の原画像を用いてエンハンス処理を行ってもよい。これと同様の変形例は、本実施例1以外の実施例においても想起される。
ここで、係数α1G、α1Bは共に、RGBの輝度比に応じて変動する。例えば、係数α1Gは、固定値α1G’に補正値R/G(処理対象の画素のR(サブピクセル)の輝度値を同一画素のG(サブピクセル)の輝度値で除算した値)をかけた値である。係数α1Bは、固定値α1B’に補正値R/B(処理対象の画素のR(サブピクセル)の輝度値を同一画素のB(サブピクセル)の輝度値で除算した値)をかけた値である。すなわち、エンハンス画像E1G、E1Bは、R成分を基準とした補正がかけられている。このため、エンハンス画像E1では、血管等の分光特性に患者毎の個人差がある場合にも、血管や粘膜等がばらつきの無い一定の色で再現されることとなる。術者は、エンハンス画像E1で再現された色から、注目箇所が血管、粘膜、病変部、正常部等であるかを容易に判断することができる。
具体例として、粘膜の分光特性に個人差がある2人の画像サンプルを次の表に示す。
表1から把握されるように、サンプル1の粘膜部分の輝度比R/G、R/Bはそれぞれ、1.250、1.429である。サンプル2の粘膜部分の輝度比R/G、R/Bはそれぞれ、1.429、1.429である。例えば血管成分画像の血管部分を0とし、非血管部分を1とする。
上記の輝度比を用いずに適当な係数値(例えばRゲイン=0.7、Gゲイン=1.2、Bゲイン=1.0)を用いた場合、
サンプル1
補正後R=200×0.7×1=140
補正後G=160×1.2×1=192
補正後B=140×1.0×1=140
サンプル2
補正後R=200×0.7×1=140
補正後G=140×1.2×1=168
補正後B=140×1.0×1=140
である。この場合、サンプル1とサンプル2の粘膜のG成分の差が広がる。すなわち、分光特性の個体差が無くなるどころか、却って大きくなる問題を存する。
サンプル1
補正後R=200×0.7×1=140
補正後G=160×1.2×1=192
補正後B=140×1.0×1=140
サンプル2
補正後R=200×0.7×1=140
補正後G=140×1.2×1=168
補正後B=140×1.0×1=140
である。この場合、サンプル1とサンプル2の粘膜のG成分の差が広がる。すなわち、分光特性の個体差が無くなるどころか、却って大きくなる問題を存する。
上記の輝度比を用いた場合は、
サンプル1
補正後R=200×1.000×1=200
補正後G=160×1.250×1=200
補正後B=140×1.429×1=200
サンプル2
補正後R=200×1.000×1=200
補正後G=140×1.429×1=200
補正後B=140×1.429×1=200
である。サンプル1とサンプル2の粘膜は、原画像の色味に拘わらず、共に白色調に近付いて、ばらつきが無くなっていることが分かる。
サンプル1
補正後R=200×1.000×1=200
補正後G=160×1.250×1=200
補正後B=140×1.429×1=200
サンプル2
補正後R=200×1.000×1=200
補正後G=140×1.429×1=200
補正後B=140×1.429×1=200
である。サンプル1とサンプル2の粘膜は、原画像の色味に拘わらず、共に白色調に近付いて、ばらつきが無くなっていることが分かる。
なお、明瞭なエンハンス画像を得るという目的を達成するだけの場合は、エンハンス処理の実行に先立って血管画像の分離生成処理を行えば足り、係数α1R、α1G、α1Bの全てが固定値であってもよく、また、互いに非連動で任意に変更可能な値であっても構わない。これは、本実施例1以外の実施例においても当てはまることである。
図8は、本発明の実施例2のエンハンス処理回路234Bの構成を示す、図6と同様のブロック図である。図9は、本実施例2を説明するための、図7と同様の図である。図8に示されるように、エンハンス処理回路234Bは、血管成分分離処理回路1234B、数値変換回路1235B、及びRGBの各色に対応した乗算器M2R、M2G、M2Bを有している。
血管成分分離処理回路1234Bには、カラーの原画像を構成するRGBの各成分の原画像が入力する。血管成分分離処理回路1234Bは、前述の分離生成処理によって原画像から血管画像(図9の符号V2)を分離生成する。血管成分分離処理回路1234Bは、分離生成された血管画像V2を数値変換回路1235Bに出力する。
数値変換回路1235Bは、血管画像V2の各画素の階調(例えば0〜255)を所定の閾値と比較して二値化する(所定の閾値より高い階調を1に、所定の閾値より低い階調を0に、それぞれ変換する)。二値化された血管画像V2の各画素は、乗算器M2Rによる係数α2R(変動値)の乗算後、更に、R成分の原画像(図9の符号O2R)と乗算される。乗算の結果生成されたエンハンス画像(図9の符号E2R)は、R成分のエンハンス画像として色処理回路236で処理される。二値化された血管画像V2の各画素はまた、乗算器M2Gによる係数α2G(変動値)の乗算後、更に、G成分の原画像(図9の符号O2G)と乗算される。乗算の結果生成されたエンハンス画像(図9の符号E2G)は、G成分のエンハンス画像として色処理回路236で処理される。
乗算器M2Bには、原画像を構成するB成分の原画像(図9の符号O2B)が入力する。乗算器M2Bは、原画像O2Bの各画素に係数α2B(固定値)をかけてB成分のエンハンス画像(図9の符号E2B)を生成する。
エンハンス画像E2Bは、原画像O2Bを用いて生成されるため、原画像に比べて血管成分及び粘膜成分の輝度値が低い。エンハンス画像E2R、E2Gは共に血管画像V2を用いて生成されるため、粘膜成分の輝度値が原画像に比べて高く、血管成分の輝度値がエンハンス画像E2Bに比べて落とされている。このため、エンハンス画像E2R、E2G、E2Bを用いて生成されるカラーのエンハンス画像(図9の符号E2)は、白色基調の粘膜成分と青みを帯びた血管成分で構成された画像になる。
なお、血管画像V2だけでは平坦で奥行き感の無い画像になりやすい。そこで、本実施形態では、被写体の奥行き感が損なわれるのを避けるべく、RGBの各成分の原画像を利用してエンハンス処理を行っている。
ここで、係数α2R、α2Gは共に、RGBの輝度比に応じて変動する。例えば、係数α2Rは、固定値α2R’に補正値B/R(処理対象の画素のB(サブピクセル)の輝度値を同一画素のR(サブピクセル)の輝度値で除算した値)をかけた値である。係数α2Gは、固定値α2G’に補正値B/G(処理対象の画素のB(サブピクセル)の輝度値を同一画素のG(サブピクセル)の輝度値で除算した値)をかけた値である。すなわち、エンハンス画像E2R、E2Gは、B成分を基準とした補正がかけられている。このため、エンハンス画像E2では、血管等の分光特性に患者毎の個人差がある場合にも、血管や粘膜等がばらつきの無い一定の色で再現されることとなる。術者は、エンハンス画像E2で再現された色から、注目箇所が血管、粘膜、病変部、正常部等であるかを容易に判断することができる。
図10は、本発明の実施例3のエンハンス処理回路234Cの構成を示す、図6と同様のブロック図である。図11は、本実施例3を説明するための、図7と同様の図である。図10に示されるように、エンハンス処理回路234Cは、血管成分分離処理回路1234C、数値変換回路1235C、粘膜成分分離処理回路1236C、及び乗算器M3R、M3G、M3G’、M3B、M3B’を有している。
血管成分分離処理回路1234Cには、原画像を構成するRGBの各成分の原画像が入力する。血管成分分離処理回路1234Cは、前述の分離生成処理によって原画像から血管画像(図10の符号V3)を分離生成する。血管成分分離処理回路1234Cは、分離生成された血管画像V3を数値変換回路1235Cに出力する。
数値変換回路1235Cは、血管画像V3の各画素の階調(例えば0〜255)を所定の閾値と比較して二値化する(所定の閾値より高い階調を1に、所定の閾値より低い階調を0に、それぞれ変換する)。二値化された血管画像V3は、乗算器M3G’及びM3B’に出力される。
粘膜成分分離処理回路1236Cには、原画像を構成するRGBの各成分の原画像が入力する。粘膜成分分離処理回路1236Cは、前述の分離生成処理によって原画像から粘膜画像(図10の符号M3)を分離生成する。粘膜成分分離処理回路1236Cは、分離生成された粘膜画像M3を乗算器M3R、M3G、M3Bに出力する。
乗算器M3Rは、粘膜画像M3の各画素に係数α3Rをかけて、Rのエンハンス画像(図11の符号E3R)を生成する。
乗算器M3Gは、粘膜画像M3の各画素に係数α3Gをかける。乗算器M3G’は、二値化された血管画像V3の各画素に係数α3G’をかける。乗算器M3GとM3G’の乗算結果(粘膜画像M3と血管画像V3の対応画素の乗算結果)は互いに乗算されて、Gのエンハンス画像(図11の符号E3G)が生成される。
乗算器M3Bは、粘膜画像M3の各画素に係数α3Bをかける。乗算器M3B’は、二値化された血管画像V3の各画素に係数α3B’をかける。乗算器M3BとM3B’の乗算結果(粘膜画像M3と血管画像V3の対応画素の乗算結果)は互いに乗算されて、Bのエンハンス画像(図11の符号E3B)が生成される。
本実施例3においては係数α3R、α3G、α3Bが例えば同一値である。粘膜部分は、RGB成分の輝度値が等しくなるため、グレスケールになる。また、例えば係数α3G’、α3B’が例えば同一値である。血管部分は、GB成分の輝度値が低くなると共にR成分が血管画像V3の影響を受けない。エンハンス画像E3R、E3G、E3Bを用いて生成されるカラーのエンハンス画像(図11の符号E3)は、粘膜画像の奥行き感を忠実に再現しつつ、血管を赤みを帯びた色でエンハンス表示した画像になる。本実施例3においては、血管画像又は粘膜画像を構成する各色成分又は各係数の設定値を適宜選択することにより、血管と粘膜の色を独立して再現できるだけでなく、RGBの各成分の粘膜画像を利用することで奥行き感が忠実に再現された良好な画像が得られる。
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えばエンハンス画像の生成に利用する色成分や各係数値は本実施例に例示したものに限らず、種々の組合せが考えられる。この組合せを選択することによって、エンハンスされる血管成分等を忠実な色、疑似カラー、特定のカラーバンド等で適宜再現することができる。
医療用観察システム1の撮像方式は同時方式に限らず、面順次方式であってもよい。また、固体撮像素子108のカラーチップフィルタは原色フィルタに限らず、補色フィルタとしてもよい。
1 医療用観察システム
100 電子スコープ
200 プロセッサ
220 信号処理回路
234 エンハンス処理回路
300 モニタ
100 電子スコープ
200 プロセッサ
220 信号処理回路
234 エンハンス処理回路
300 モニタ
Claims (4)
- 被写体画像に含まれる特定構造を分析する分析手段と、
前記分析結果に従って前記被写体画像から前記特定構造の画像を分離生成する分離画像生成手段と、
前記分離生成された特定構造の画像にエンハンス処理を施すエンハンス手段と、
を有することを特徴とするエンハンス画像処理装置。 - 前記分析手段は、前記被写体画像から前記特定構造の画像を分離生成するための、前記被写体画像を構成する各色成分の信号の混合比を画素単位で推定することを特徴とする、請求項1に記載のエンハンス画像処理装置。
- 前記被写体画像は血管と粘膜を含む画像であって、前記特定構造は前記血管であることを特徴とする、請求項1又は請求項2の何れかに記載のエンハンス画像処理装置。
- 被写体を撮影する電子スコープと、
前記電子スコープによって撮影された被写体画像が入力する請求項1から請求項3の何れか一項に記載のエンハンス画像処理装置と、
を有することを特徴とする医療用観察システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009213777A JP2011065291A (ja) | 2009-09-15 | 2009-09-15 | エンハンス画像処理装置、及び医療用観察システム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013244041A (ja) * | 2012-05-23 | 2013-12-09 | Fujifilm Corp | 内視鏡システム、内視鏡システムのプロセッサ装置、及び画像生成方法 |
JP2015091467A (ja) * | 2015-02-12 | 2015-05-14 | 富士フイルム株式会社 | 内視鏡システム |
CN108765303A (zh) * | 2018-04-08 | 2018-11-06 | 东南大学 | 一种数字减影血管成像图像的积分增强方法 |
-
2009
- 2009-09-15 JP JP2009213777A patent/JP2011065291A/ja not_active Withdrawn
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