以下の説明では、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、内視鏡システムについて説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態にかかる内視鏡システムの概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる内視鏡システム1は、被検体内に導入され、被検体の体内を撮像して被検体内の画像信号を生成する内視鏡2(スコープ)と、内視鏡2が撮像した画像信号に所定の画像処理を施すとともに内視鏡システム1の各部を制御する処理装置3と、内視鏡2の照明光を生成する光源装置4と、処理装置3による画像処理後の画像信号を画像表示する表示装置5と、を備える。
内視鏡2は、被検体内に挿入される挿入部21と、挿入部21の基端部側であって術者が把持する操作部22と、操作部22より延伸する可撓性のユニバーサルコード23と、を備える。
挿入部21は、照明ファイバ(ライトガイドケーブル)、電気ケーブルおよび光ケーブル等を用いて実現される。挿入部21は、被検体内を撮像する撮像素子を内蔵した撮像部を有する先端部21aと、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部21bと、湾曲部21bの基端部側に設けられた可撓性を有する可撓管部21cと、を有する。先端部21aには、照明レンズを介して被検体内を照明する照明部、被検体内を撮像する観察部、処理具用チャンネルを連通する開口部21dおよび送気・送水用ノズル(図示せず)が設けられている。
操作部22は、湾曲部21bを上下方向および左右方向に湾曲させる湾曲ノブ22aと、被検体の体腔内に生体鉗子、レーザメス等の処置具が挿入される処置具挿入部22bと、処理装置3、光源装置4、送気装置、送水装置および送ガス装置等の周辺機器の操作を行う複数のスイッチ部22cと、を有する。処置具挿入部22bから挿入された処置具は、内部に設けられた処置具用チャンネルを経て挿入部21先端の開口部21dから表出する。
ユニバーサルコード23は、照明ファイバ、電気ケーブルおよび光ケーブル等を用いて構成される。ユニバーサルコード23は、基端で分岐しており、分岐した一方の端部がコネクタ23aであり、他方の基端がコネクタ23bである。コネクタ23aは、処理装置3のコネクタに対して着脱自在である。コネクタ23bは、光源装置4に対して着脱自在である。ユニバーサルコード23は、光源装置4から出射された照明光を、コネクタ23b、操作部22および可撓管部21cを介して先端部21aに伝播する。ユニバーサルコード23は、先端部21aに備わる撮像部が撮像した画像信号を、処理装置3に伝送する。
処理装置3は、内視鏡2の先端部21aの撮像部が撮像した被検体内の画像信号に対して、所定の画像処理を施す。処理装置3は、ユニバーサルコード23を介して内視鏡2の操作部22におけるスイッチ部22cから送信された各種の指示信号に基づいて、内視鏡システム1の各部を制御する。
光源装置4は、光を発する光源や、集光レンズ等を用いて構成される。光源装置4は、処理装置3の制御のもと、光源から光を発し、コネクタ23bおよびユニバーサルコード23の照明ファイバを介して接続された内視鏡2へ、被写体である被検体内に対する照明光として供給する。光源装置4は、狭帯域化された青色の波長成分を有する青色光および緑色の波長成分を有する緑色光の2種の帯域を含む狭帯域照明光(NBI光)を発する。
表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)を用いた表示ディスプレイ等を用いて構成される。表示装置5は、映像ケーブル51を介して処理装置3によって所定の画像処理が施された画像を含む各種情報を表示する。これにより、術者は、表示装置5が表示する画像(体内画像)を見ながら内視鏡2を操作することにより、被検体内の所望の位置の観察および性状を判定することができる。
つぎに、図1で説明した内視鏡2、処理装置3および光源装置4の構成について説明する。図2は、内視鏡システム1の構成を模式的に示すブロック図である。
内視鏡2は、先端部21aに、撮像素子24、制御部25、メモリ26および光学系27を有する。また、先端部21aには、光源装置4から、コネクタ23bを経由して、延伸するライトガイドケーブル23cの先端が位置する。ライトガイドケーブル23cの先端には、照明レンズ21eが設けられる。光源装置4から発せられた光は、ライトガイドケーブル23cを介して、挿入部21の先端部21aの照明窓21fから被写体に照明される。
撮像素子24は、カラーフィルタ群24aと、受光部24bと、読み出し部24cと、アナログフロントエンド(AFE)部24dとを有する。撮像素子24は、たとえば、水平ラインごとの露光、かつ、読み出しが可能であるCMOS撮像素子である。また、撮像素子24は、CCD撮像素子であってもよい。
カラーフィルタ群24aは、原色成分の光を透過する複数の原色カラーフィルタと、原色画素カラーフィルタが透過する原色成分と略等しい波長帯域の光に対して原色カラーフィルタの透過率と異なる透過率を有する複数の補色カラーフィルタとが、受光部24bの画素配列に合わせて配置される構成を有する。
受光部24bは、受光面に、光が照射された被写体からの光を受光し、受光した光を光電変換して画像信号を生成する複数の画素が行列状に配置される。受光部24bの受光面側には、後述する光学系27およびカラーフィルタ群24aが配置される。受光部24bの各画素は、カラーフィルタ群24aの配列に応じて、原色カラーフィルタが設けられ原色カラーフィルタを透過した光を受光する原色画素と、補色カラーフィルタが設けられ補色フィルタを透過した光を受光する補色画素と、に区別される。
読み出し部24cは、受光部24bの複数の画素が生成した画像信号を読み出す。読み出し部24cが読み出した画像信号は、電気信号(アナログ)である。
AFE部24dは、読み出し部24cが読み出した画像信号の電気信号に対して、ノイズ除去や、A/D変換などを行う。AFE部24dは、電気信号(アナログ)に含まれるノイズ成分の低減、出力レベルの維持のための電気信号の増幅率(ゲイン)の調整、および、アナログの電気信号のA/D変換を行う。撮像素子24が生成した画像信号(デジタル)は、図示しない信号ケーブルやコネクタ23aを介して、処理装置3に出力される。
制御部25は、処理装置3から受信した制御信号にしたがって、撮像素子24の動作を制御する。メモリ26は、制御部25の制御に要する各種データを保持する。
光学系27は、撮像部24の前段に設けられた一または複数のレンズを用いて構成され、画角を変化させる光学ズーム機能および焦点を変化させるフォーカス機能を有する。
処理装置3は、入力部31、制御部32、記憶部35、出力部36、画像処理部37および表示制御部38を備える。
入力部31は、マウス、キーボードおよびタッチパネル等の操作デバイスを用いて実現され、内視鏡システム1の各種指示情報の入力を受け付ける。具体的には、入力部31は、被検体情報(たとえばID、生年月日、名前等)、内視鏡2の識別情報(たとえばIDや検査対応項目)および検査内容等の各種指示情報の入力を受け付ける。
制御部32は、CPU等を用いて実現される。制御部32は、処理装置3の各部の処理動作を制御する。制御部32は、処理装置3の各構成に対する指示情報やデータの転送等を行うことによって、処理装置3の動作を制御する。制御部32は、各ケーブルを介して内視鏡2の制御部25および光源装置4の各構成部位に接続されており、撮像素子24および光源装置4の動作についても制御を行う。制御部32は、調整部33および光源制御部34を備える。
調整部33は、同じ原色成分の光に対する補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とがほぼ同等となるように、撮像素子24が受光する光を調整する。調整部33は、同じ原色成分の光に対する、原色カラーフィルタの分光特性、補色カラーフィルタの分光特性、および、被写体に光源装置4が照射する照明光の分光特性をもとに、撮像素子24が受光する光を調整する。調整部33は、光源装置4による照射光のうちの波長スペクトルを設定する波長スペクトル設定部33a(設定部)を備える。
波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の同じ原色成分の光量の積算値と原色カラーフィルタの同じ原色成分の透過光の光量の積算値との乗算値である第1の乗算値、ならびに、光源装置4による照明光の同じ原色成分の光量の積算値と補色カラーフィルタの同じ原色成分の透過光の光量の積算値との乗算値である第2の乗算値が、同等となるように、光源装置4が発する照明光のうちの同じ原色成分の波長スペクトルを設定する。
光源制御部34は、光源装置4に対し、波長スペクトル設定部33aが設定した波長スペクトルを有する照明光を照射させる。
記憶部35は、揮発性メモリや不揮発性メモリを用いて実現され、内視鏡2、処理装置3および光源装置4を動作させるための各種プログラムを記憶する。記憶部35は、処理装置1の処理中の情報を一時的に記憶する。記憶部35は、処理装置3の外部から装着されるメモリカード等を用いて構成されてもよい。
出力部36は、スピーカーやプリンタ等を用いて実現され、制御部32の制御にしたがい、内視鏡検査に関する情報や内視鏡画像信号の表示処理に関する情報を出力する。
画像処理部37は、制御部32の制御のもと、撮像素子24から出力された画像信号に対し、所定の信号処理を行う。画像処理部37は、この画像信号に対して、オプティカルブラック減算処理、ゲイン調整処理、画像信号の同時化処理、ガンマ補正処理、ホワイトバランス(WB)調整処理、カラーマトリクス演算処理、色再現処理およびエッジ強調処理等を含む各種画像処理を行う。
表示制御部38は、画像処理部37が処理した画像信号から、表示装置5に表示させるための表示用画像信号を生成する。表示制御部38は、表示用画像信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号の画像信号をハイビジョン方式等のフォーマットに変更後、表示装置5へ出力する。
光源装置4は、光源ドライバ41と、光源42とを備える。光源ドライバ41は、光源制御部32の制御のもと、光源42に所定の電力を供給する。光源42は、狭帯域化された青色の波長成分を有する青色光および緑色の波長成分を有する緑色光の2種の帯域を含むNBI光を発生する。たとえば、光源42は、青色LED、緑色LED等で構成されるNBI光源と、集光レンズなどの光学系とを用いて構成される。光源42から発せられた光は、コネクタ23bおよびユニバーサルコード23内のライトガイドケーブル23cを介して挿入部21の先端部21aの照明窓21fから被写体に照明される。なお、照明窓21f近傍には、撮像素子24が配置される。また、光源装置4は、さらに白色光LED等で構成される白色光光源と光学系とを備え、照明光をNBI光と白色光とのいずれかに切り換えることができる構成であってもよい。
次に、撮像素子24におけるカラーフィルタ群24aについて説明する。比較のために、まず、原色カラーフィルタでのみ構成されるカラーフィルタ群のフィルタ配置について説明する。
図3は、原色カラーフィルタのみで構成される原色カラーフィルタ群のフィルタ配置の一例を示す図である。図3に示すように、原色カラーフィルタ群においては、ベイヤ配列で、赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタ、青色(B)フィルタが、R/G/G/Bの2つのGフィルタが対角になるユニットで配置されており、GフィルタとRフィルタとが行方向(x方向)に交互に並んだ奇数ラインと、BフィルタとGフィルタとが行方向に交互に並んだ偶数ラインとが、列方向(y方向)に交互に配置されたフィルタ配列Fpを有する。
これに対し、撮像部24におけるカラーフィルタ群24aは、補色カラーフィルタを原色カラーフィルタに混合したカラーフィルタ群を採用している。図4は、図2に示すカラーフィルタ群24aのフィルタ配置の一例を示す図である。カラーフィルタ群24aは、Bの波長帯域の光の反射光を受光できる画素を増やすために、図4に示すように、図3で示すフィルタ配列FpにおけるRフィルタを、補色カラーフィルタであるMg(マゼンタ)フィルタに置き換えたフィルタ配列F1で構成される。
図5は、図4に示すフィルタ配列F1における各カラーフィルタにおける分光特性と、光源装置4における光源42が発する照明光の標準設定された初期の分光特性とを示す図である。図5(1)において、各曲線は、それぞれのカラーフィルタにおける透過光の強度の波長依存性を示す。図5の曲線L(B)は、Bフィルタに対応し、曲線L(G)は、Gフィルタに対応し、曲線L(Mg)は、Mgフィルタに対応する。なお、各透過光の強度は、曲線L(R)に示すRフィルタの最大透過光の強度に対する相対値であり、Rフィルタの最大透過光の強度を1.0として各強度の値を示している。受光部24bの各画素は、各カラーフィルタを透過した光を受光する。
図5(1)に示すように、図4のフィルタ配列F1のカラーフィルタ群24aでは、フィルタ配列F1におけるRフィルタを、400nmから500nmの波長帯域および570nmから700nmの波長帯域の光を主として透過するMgフィルタに置き換えている。
光源42は、図5(2)の曲線L(N)の波長スペクトルに示すように、415nmにピークを持つとともに400〜440nmの波長帯域W(B)に狭帯域化された青色光(B光)と、540nmにピークを持つとともに510〜570nmの波長帯域W(G)に狭帯域化された緑色光(G光)と、の2種の帯域の光を含むNBI光を発するように初期設定されている。
この曲線L(N)に示す波長スペクトルのNBI光が照射された場合には、被検体2からは波長帯域W(B)のB光と波長帯域W(G)のG光とが戻る。図5(1)に示すように、フィルタ配列F1で各カラーフィルタが配列するカラーフィルタ群24aでは、Bフィルタでは、B光が透過し(曲線L(B)参照)、Gフィルタでは、G光が透過し(曲線L(G)参照)、Mgフィルタでは、B光が透過する(曲線L(Mg)参照)。
このため、カラーフィルタ群24aがフィルタ配列F1で構成される場合には、受光部24bにおいては、波長帯域W(B)のB光による粘膜表層からの反射光を、1ユニットあたり、B画素とMg画素との2画素で受光し、波長帯域W(G)のG光による粘膜表層からの反射光を、1ユニットあたり、2つのG画素で受光する。なお、白色光観察時においての赤色(R)の波長帯域の光は、Mg画素で受光できる。
図5(1)に示すように、B光を受光するB画素とMg画素とでは、BカラーフィルタとMgカラーフィルタとの透過率が異なるため、同じ波長帯域の光が同じ強度で入射した場合でも原色画素と補色画素との間で受光感度に差が生じる。実施の形態1では、制御部32が、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とがほぼ同等となるように、光源装置4から発せられる照明光の出力条件を調整している。
図6を参照して、制御部32による、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度との調整処理について説明する。図6は、制御部32による、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度の調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御部32は、まず、調整部33が、処理装置3に接続した内視鏡2におけるカラーフィルタ群24aのフィルタ配列データを取得する(ステップS1)。たとえば、処理装置3は、記憶部35に、各内視鏡2のフィルタ配列データの一覧を記憶しており、調整部33は、記憶部35に記憶された一覧の中から、処理装置3に実際に接続した内視鏡2に対応するフィルタ配列データを取得する。また、内視鏡2の種別やIDと、これに対応するフィルタ配列データとが、図示しないデータベースに記憶されており、調整部33は、ネットワーク等の通信手段を介して、処理装置3に実際に接続した内視鏡2におけるフィルタ配列データを取得する。たとえば、調整部33は、カラーフィルタ群24aのフィルタ配列データとして、図4で示したフィルタ配列F1示すデータを取得する。
調整部33は、カラーフィルタ群24aを構成する原色カラーフィルタの分光特性取得処理を行う(ステップS2)。調整部33は、カラーフィルタ群24aを構成する補色カラーフィルタの分光特性取得処理を行う(ステップS3)。たとえば、記憶部35は、各カラーフィルタの分光特性を記憶しており、調整部33は、ステップS2およびステップS3において、記憶部35に記憶された各分光特性の中から、ステップS1で取得したカラーフィルタ群24aのフィルタ配列データで示された各カラーフィルタの分光特性を取得する。また、各カラーフィルタの分光特性は、図示しないデータベースに記憶されており、調整部33は、ステップS2およびステップS3において、ネットワーク等の通信手段を介してデータベースに接続し、ステップS1で取得したカラーフィルタ群24aのフィルタ配列データで示された各カラーフィルタの分光特性を取得してもよい。調整部33は、ステップS1で取得したフィルタ配列データがフィルタ配列F1を示すデータである場合には、図5に示す各カラーフィルタの分光特性のうち、原色カラーフィルタの分光特性として、Bカラーフィルタに対応する曲線L(B)と、Gカラーフィルタに対応する曲線L(G)とを取得し、補色カラーフィルタの分光特性として、Mgカラーフィルタに対応する曲線L(Mg)を取得する。
調整部33は、処理装置3に接続する光源装置4の光源42による照明光の分光特性を取得する(ステップS4)。調整部33は、照明光の分光特性として、たとえば、標準設定されている照明光の分光特性を取得するとともに、照明光の波長スペクトルの変更可能範囲も取得する。なお、ステップS2〜S4は、順不同に実行されてもよく、並列に実行されてもよい。
続いて、調整部33は、照明光の原色成分ごとに、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とがほぼ同等となるように調整する。本実施の形態1では、照明光として、NBI光が照射されるため、NBI光に含まれる波長帯域W(B)のB光、および、波長帯域W(G)のG光に対して、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度との調整をそれぞれ行う。
まず、調整部33は、原色成分である青色、緑色のうち、波長帯域W(B)である青色成分の光(B光)に対する調整処理を行う(ステップS5)。調整部33は、B光に対する処理のために、ステップS2〜ステップS4で取得した、原色カラーフィルタであるBカラーフィルタの分光特性、補色カラーフィルタであるMgカラーフィルタの分光特性、および、被写体に光源装置4が照射する照明光の波長帯域W(B)における分光特性を用いて、Mg画素のB光の受光量とB画素のB光の受光量とが同等となるように、光源装置4による照射光の出力条件を調整する。
調整部33では、ステップS5において、波長スペクトル設定部33aが、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とBカラーフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値である第1の乗算値を演算する。続いて、波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とMgカラーフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値である第2の乗算値を演算する。波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)における波長スペクトルを徐々に変更させながら、第1の乗算値と第2の乗算値をそれぞれ演算していき、第1の乗算値と第2の乗算値とが同等となる照明光の波長スペクトルを求める。
たとえば、波長スペクトル設定部33aは、照明光の波長スペクトルのうちの波長帯域W(B)については、標準設定されている設定されているピーク波長(415nm)を、低波長側あるいは高波長側に1nmずつ変更しながら、変更したピーク波長ごとに、第1の乗算値と第2の乗算値とを演算し、該演算した第1の乗算値と、第2の乗算値とが同等となるピーク波長を求める。たとえば、図7(1)に示す波長433nm(波長W1)において、第1の乗算値と第2の乗算値とが同等となった場合には、波長スペクトル設定部33aは、光源装置4における照明光の波長帯域Wbにおけるピーク波長を、矢印Y1に示すように、標準設定された波長415nmから、波長433nmに変更する。また、波長スペクトル設定部33aは、照明光の波長スペクトルのうちの波長帯域W(B)における標準設定されているピーク波長(415nm)における強度を、標準設定された強度から所定値ずつ高め、あるいは、所定値ずつ低めながら、強度ごとに、第1の乗算値と第2の乗算値とを演算し、該演算した第1の乗算値と、第2の乗算値とが同等となる強度を求め、該求めた強度を照明光のピーク波長の強度に変更してもよい。
調整部33は、原色成分である青色、緑色のうち、波長帯域W(G)の緑色成分である光(G光)に対する調整処理を行う(ステップS6)。調整対象のカラーフィルタ群24aがフィルタ配列F1である場合には、G光を受光する画素は、同じ2つのG画素であるため、緑色成分の光における2画素間における受光感度の調整は不要である。
続いて、波長スペクトル設定部33aは、原色成分間でも各第1および第2の乗算値が同等となるように、求めた各原色成分における波長スペクトルを設定する。この場合には、波長スペクトル設定部33aは、受光部24bの、波長帯域W(B)のB光を受光する画素の受光量と、波長帯域W(G)のG光を受光する画素の受光量とが、同等となるように、ステップS5およびステップS6で求めた各原色成分における波長スペクトルを調整する、青色成分の光と緑色成分の光との間の波長スペクトルの調整処理を行う(ステップS7)。
波長スペクトル設定部33aは、カラーフィルタ群24aがフィルタ配列F1の構成を有する場合には、波長帯域W(B)のB光を受光するB画素、Mg画素と、波長帯域W(G)のG光を受光する2つのG画素との、受光量が同等となるように、照明光の波長スペクトルを調整していく。図7(1)に示す例では、波長帯域W(B)のB光を透過するBカラーフィルタ、Mgカラーフィルタの透過光強度は、波長帯域W(G)のG光を透過するGカラーフィルタの透過光強度よりも低いため、B光を受光するB画素およびMg画素の受光量よりも、G光を受光する2つのG画素の受光量の方が多くなる。そこで、波長スペクトル設定部33aは、波長帯域W(G)における照明光のピーク波長(540nm)の強度を徐々に低めながら、波長帯域W(G)における第1および第2の乗算値を演算し、該演算した波長帯域W(G)の第1および第2の乗算値が、波長帯域W(B)の第1および第2の乗算値と同等となる強度を求める。たとえば、図7(2)の波長帯域W(G)のピーク波長については、強度Agから強度Agsに低めた場合に、波長帯域W(G)の第1および第2の乗算値が、波長帯域W(B)の第1および第2の乗算値と同等となる。
波長スペクトル設定部33aは、ステップS5〜ステップS7の調整結果をもとに、同じ原色成分の光に対する前記補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とが同等となるとともに、GとBとの原色成分との間でも、G光の受光感度とB光の受光感度がほぼ同等となる形状の波長スペクトルを光源装置4による波長スペクトルとして設定する(ステップS8)。図7の例では、波長スペクトル設定部33aは、光源装置4の照明光の波長スペクトルとして、曲線L(N)で示す標準条件から、矢印Y1のように波長帯域W(B)のピーク波長を波長W1にシフトし、波長帯域W(G)のピーク波長の強度を矢印Y2のように強度Agから強度Agsに低めた曲線L(Ns)に示す波長スペクトルに設定する。
光源制御部34は、光源装置4に対し、波長スペクトル設定部33aが設定した波長スペクトルを有する照明光を照射させる照射処理を行う(ステップS9)。
このように、本実施の形態1では、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とが同等となるように、光源装置4から発せられる照明光の波長スペクトルを設定している。したがって、本実施の形態1では、NBI光を照射された生体組織の反射光が撮像素子24に入射した場合、いずれの波長帯域W(B),W(G)においても、原色画素と補色画素との間で受光感度の差が生じず、さらに、波長帯域W(B)と波長帯域W(G)との間でも受光感度の差が生じない。このため、実施の形態1によれば、波長帯域W(B)の情報を補うために原色カラーフィルタと補色カラーフィルタとが混合されたカラーフィルタ群を撮像素子に用いた場合であっても、良好な画質による観察を可能にできる。さらに、NBI観察の場合には、B光を受光する画素の受光感度を、G光を受光する画素の受光感度と同等の高さまで高めているため、コントラスト向上も実現できる。
たとえば、内視鏡システム1では、処理装置3への内視鏡2装着時に、図6の各処理を実行して、内視鏡検査前に光源装置4における照明光の波長スペクトルの設定を行うことによって、解像度やコントラストの高い観察を確保した状態で検査を開始できる。また、内視鏡2の製造現場において、処理装置3と同様の機能を有するテスト用プロセッサに内視鏡2を装着して、図6の各処理を行い、観察に適した照明光の波長スペクトルを求め、内視鏡2内のメモリ26内に、求めた波長スペクトルを示すデータを保持させてから内視鏡2を出荷してもよい。この場合、実際の内視鏡検査を行う前に、処理装置3の制御部32が、装着された内視鏡2のメモリ26に保持された波長スペクトルのデータを読み取り、光源制御部34は、該読み取ったデータに示された波長スペクトルを有する照明光を照射するように光源装置4を制御する。
なお、波長スペクトル設定部33aは、照明光に対して、ピーク波長の波長シフトや、ピーク波長の強度変更を含む調整処理場合を例に説明したが、もちろん、図8に示すように、標準設定された波長スペクトル(曲線L(N)参照)の形状を、矢印Y3のように、異なる形状(曲線L(Nt)参照)に変更させてもよい。
また、カラーフィルタ群24aのフィルタ配列は、図4のフィルタ配列F1に限らない。図9は、図2に示すカラーフィルタ群24aのフィルタ配置の他の例を示す図である。図9に示すフィルタ配列F2では、図4に示すフィルタ配列F1におけるMgフィルタが位置する水平ラインのGフィルタが、補色カラーフィルタであるCy(シアン)フィルタに置き換えられている。
図10は、図9に示すフィルタ配列F2における各カラーフィルタにおける分光特性と、光源装置4における光源42が発する照明光の初期の分光特性とを示す図である。図10において、曲線L(Cy)は、Cyフィルタにおける透過光の強度の波長依存性を示す。図10(1)の曲線L(Cy)に示すように、Cyフィルタは、400nmから570nmの波長帯域の光を主として透過する。図10(2)に示すように、曲線L(N)に示す波長スペクトルのNBI光が照射された場合には、被検体2からの反射光のうち、波長帯域W(B)のB光は、Bフィルタ、MgフィルタおよびCyフィルタを透過し、波長帯域W(G)のG光は、GフィルタおよびCyフィルタを透過する。したがって、受光部24bにおいては、波長帯域W(B)のB光による粘膜表層からの反射光は、B画素とMg画素とCy画素とで受光し、波長帯域W(G)のG光による粘膜表層からの反射光は、G画素とCy画素とで受光する。
フィルタ配列F2の場合における補色画素の受光感度と原色画素の受光感度の調整処理として、調整部33は、フィルタ配列F2のデータの取得(図6のステップS1)、BフィルタとGフィルタとの分光特性の取得(図6のステップS2)、MgフィルタとCyフィルタの分光特性の取得(図6のステップS3)、照明光の分光特性の取得(図6のステップS4)を行ってから、波長帯域W(B)のB光に対する調整処理を行う(ステップS5)。ステップS5において、波長スペクトル設定部33aは、第1の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とBフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値を演算し、第2の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とMgフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値、ならびに、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とCyフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値を演算する。波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)における波長スペクトルのピーク波長Wbや、ピーク波長の強度Abを矢印Y11,Y12のように徐々に変更させながら、第1の乗算値と第2の乗算値をそれぞれ演算していき、第1の乗算値と第2の乗算値とが、ほぼ同等となる照明光の波長スペクトルを求める。
続いて、調整部33は、波長帯域W(G)のG光に対する調整処理を行う(ステップS6)。ステップS6において、波長スペクトル設定部33aは、第1の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)のG光の光量の積算値とGフィルタの波長帯域W(G)のG光の透過光量の積算値との乗算値を演算し、第2の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)のG光の光量の積算値とCyフィルタの波長帯域W(G)のG光の透過光量の積算値との乗算値を演算する。波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)における波長スペクトルのピーク波長Wgや、ピーク波長の強度Agを矢印Y13,Y14のように徐々に変更させながら、第1の乗算値と第2の乗算値をそれぞれ演算していき、第1の乗算値と第2の乗算値とが、ほぼ同等となる照明光の波長スペクトルを求める。
続いて、波長スペクトル設定部33aは、波長帯域W(B)のB光を受光するB画素、Mg画素、Cy画素と、波長帯域W(G)のG光を受光するG画素、Cy画素との、受光感度を同等とするように、照明光の波長スペクトルを調整して(図6のステップS7)、波長スペクトルを設定する(図6のステップS8)。
また、カラーフィルタ群24aは、図11に示すフィルタ配列F3を採用する場合もある。図11に示すように、フィルタ配列F3では、図3に示すフィルタ配列F1におけるRフィルタが位置する水平ラインのGフィルタがCyフィルタに置き換えられている。
図12は、図11に示すフィルタ配列F3における各カラーフィルタにおける分光特性と、光源装置4における光源42が発する照明光の初期の分光特性とを示す図である。図12(2)に示すように、曲線L(N)に示す波長スペクトルのNBI光が照射された場合には、被検体2からの反射光のうち、波長帯域W(B)のB光は、BフィルタおよびCyフィルタを透過し、波長帯域W(G)のG光は、GフィルタおよびCyフィルタを透過する。したがって、受光部24bにおいては、波長帯域W(B)のB光による粘膜表層からの反射光は、B画素とCy画素とで受光し、波長帯域W(G)のG光による粘膜表層からの反射光は、G画素とCy画素とで受光する。
フィルタ配列F3の場合における補色画素の受光感度と原色画素の受光感度の調整処理として、調整部33は、フィルタ配列F3のデータの取得(図6のステップS1)、BフィルタとGフィルタとの分光特性の取得(図6のステップS2)、Cyフィルタの分光特性の取得(図6のステップS3)、照明光の分光特性の取得(図6のステップS4)を行ってから、波長帯域W(B)のB光に対する調整処理を行う(ステップS5)。ステップ5において、波長スペクトル設定部33aは、第1の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とBフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値を演算し、第2の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)のB光の光量の積算値とCyフィルタの波長帯域W(B)のB光の透過光量の積算値との乗算値を演算する。波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(B)における波長スペクトルのピーク波長Wbや、ピーク波長の強度Abを矢印Y21,Y22のように徐々に変更させながら、第1の乗算値と第2の乗算値をそれぞれ演算していき、第1の乗算値と第2の乗算値とが、ほぼ同等となる照明光の波長スペクトルを求める。
続いて、調整部33は、波長帯域W(G)のG光に対する調整処理を行う(ステップS6)。ステップS6において、波長スペクトル設定部33aは、フィルタ配列F2の場合と同様に、第1の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)のG光の光量の積算値とGフィルタの波長帯域W(G)のG光の透過光量の積算値との乗算値を演算し、第2の乗算値として、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)のG光の光量の積算値とCyフィルタの波長帯域W(G)のG光の透過光量の積算値との乗算値を演算する。波長スペクトル設定部33aは、光源装置4による照明光の波長帯域W(G)における波長スペクトルのピーク波長Wgや、ピーク波長の強度Agを矢印Y23,Y24のように徐々に変更させながら、第1の乗算値と第2の乗算値をそれぞれ演算していき、第1の乗算値と第2の乗算値とが、ほぼ同等となる照明光の波長スペクトルを求める。
続いて、波長スペクトル設定部33aは、波長帯域W(B)のB光を受光するB画素、Cy画素と、波長帯域W(G)のG光を受光するG画素、Cy画素との、受光感度を同等とするように、照明光の波長スペクトルを調整して(図6のステップS7)、波長スペクトルを設定する(図6のステップS8)。
このように、実施の形態1では、カラーフィルタ群24aのフィルタ配列に応じて、図6の各処理を行うことによって、原色画素と補色画素との間の受光感度が同等となるように調整を行えばよい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。図13は、実施の形態2にかかる内視鏡システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図13に示すように、実施の形態2にかかる内視鏡システム201は、内視鏡202と処理装置203を備える。内視鏡202は、図2に示す撮像素子24と比して、カラーフィルタ群24aの前段に設けられた減光フィルタ群224bをさらに備えた撮像素子224を先端部21aに有する。
減光フィルタ群224bは、たとえば、減光フィルタであるNDフィルタを複数有する。減光フィルタ群224bは、各NDフィルタが、カラーフィルタ群24aにおける原色カラーフィルタと補色カラーフィルタのうちの調整対象の原色成分の光の透過率が高い方のフィルタに設けられる。通常、補色カラーフィルタの方が、原色カラーフィルタよりも、透過率が高いため、各NDフィルタは、補色カラーフィルタ上に設けられる。NDフィルタは、同じ原色成分の光に対する補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とが同等となる減光率が設定される。
また、処理装置203は、図2に示す制御部32と比して、調整部33を削除した構成を有する制御部232を有する。制御部232は、制御部32と同様の機能を有する。
この実施の形態2によれば、カラーフィルタ群24aにおける原色カラーフィルタと補色カラーフィルタのうちの調整対象の原色成分の光の透過率が高い方のフィルタに減光フィルタを設けることによって、同じ原色成分の光に対する補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とが同等となるように調整している。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図14は、実施の形態3にかかる内視鏡システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図14に示すように、実施の形態3にかかる内視鏡システム301は、実施の形態2における内視鏡202と、実施の形態1における処理装置3とを組み合わせた構成を有する。この場合、調整部33は、原色カラーフィルタの分光特性、補色カラーフィルタの分光特性、減光フィルタの分光特性、および、被写体に光源装置4が照射する照明光の分光特性をもとに、調整対象の原色成分の光に対する補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とが同等となるように、光源装置4による照射光の出力条件を調整する。
この実施の形態3のように、実施の形態1および実施の形態2を組み合わせた構成においても、補色画素の受光感度と原色画素の受光感度とを調整することによって、解像度やコントラストの高い観察が可能になる。
また、本実施の形態にかかる調整部33、並びに、処理装置3,203の他の構成部で実行される各処理に対する実行プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。