JP2011064099A - スクロール型流体機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】起動時に摺動部に迅速に潤滑油を供給することで、摺動部を確実に保護し、耐久性、ひいては信頼性を向上することができるスクロール型流体機械を提供する。
【解決手段】密閉容器(2)内に、スクロールユニット(14)と、スクロールユニットを駆動する駆動軸(20)と、駆動軸を回転駆動する駆動ユニット(16)とを備えたスクロール型流体機械(1)であって、密閉容器内に潤滑油を貯留する潤滑油室(41)と、潤滑油室からスクロールユニットに潤滑油を供給する給油路(42)を有する給油機構(18)と、給油路を開閉する開閉手段(50)とを備え、開閉手段は、駆動ユニットの停止後、給油路における潤滑油室側とスクロールユニット側との潤滑油の圧力が略均圧になったときに給油路を閉じる。
【選択図】図1

Description

スクロール型流体機械に係り、詳しくは、冷凍空調機やヒートポンプ式給湯機に組み込まれて好適なスクロール型流体機械に関する。
この種のスクロール型流体機械は、密閉容器内に、スクロールユニットと、スクロールユニットを駆動する駆動軸と、駆動軸を回転駆動する電動モータ(駆動ユニット)とを備え、密閉容器内には潤滑油を貯留する潤滑油室が形成され、駆動軸に穿孔された給油孔(給油路)を有するポンプユニット(給油機構)によって潤滑油室からスクロールユニットに潤滑油を供給するものが知られている。
そして、駆動軸の給油孔を開閉するスライド弁をバランスウェイトに設け、運転時は、駆動軸の回転に伴いハネ部でガスから抗力を受けてスライド弁を移動し給油孔を開け、停止時は、バネの弾性力でスライド弁を移動させ、給油孔を閉じ、潤滑油の流れを堰き止めることで、運転停止時に、潤滑油溜り(潤滑油室)から潤滑油が吸入側へ逆流を起こし、急激に潤滑油が減少することを防止するスクロール圧縮機が開示されている(特許文献1)。
また、軸受ハウジングに、可動スクロールの旋回運動を可能にする旋回部と、可動スクロールの背面を支持するスラスト受面とを設け、スラスト受面に旋回部に連通する油溜を設け、スラスト受面の潤滑不良に起因する摩耗、焼き付けを防止するスクロール型流体機械が開示されている(特許文献2)。
特開2003−3971号公報 特開平8−49673号公報
しかしながら、上記特許文献1では、圧縮機の運転停止時に潤滑油溜りの潤滑油が吸入側へ逆流することを防止するものの、運転停止時に給油孔や圧縮機構に残った潤滑油は吸入側と吐出側との差圧によって吸入側へ冷媒とともに吸い上げられると考えられる。従って、流体機械の再起動時には潤滑油溜りから圧縮機構に一から潤滑油を供給しなければならないため、潤滑油を摺動部に迅速に供給することはできない。
一方、上記特許文献2でも、流体機械の運転停止時に主給油通路、ひいては旋回部に残った潤滑油は吸入側と吐出側との差圧によって吸入側へ冷媒とともに吸い上げられ、旋回部に連通する油溜に溜まった潤滑油も同様に吸入側へ冷媒とともに吸い上げられると考えられる。従って、油溜に潤滑油が溜まるとは云い難く、たとえ溜まったとしてもその量は油溜の容積からして少量と考えられるため、スラスト受面以外のクロールユニットや駆動軸、電動機等の他の摺動部にまでは潤滑油を迅速に供給することはできない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、起動時に摺動部に迅速に潤滑油を供給することで、摺動部を確実に保護し、耐久性、ひいては信頼性を向上することができるスクロール型流体機械を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、請求項1記載のスクロール型流体機械は、密閉容器内に、スクロールユニットと、スクロールユニットを駆動する駆動軸と、駆動軸を回転駆動する駆動ユニットとを備えたスクロール型流体機械であって、密閉容器内に潤滑油を貯留する潤滑油室と、潤滑油室からスクロールユニットに潤滑油を供給する給油路を有する給油機構と、給油路を開閉する開閉手段とを備え、開閉手段は、駆動ユニットの停止後、給油路における潤滑油室側とスクロールユニット側との潤滑油の圧力が略均圧になったときに給油路を閉じることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明では、請求項1において、給油路は駆動軸に穿孔された給油孔であって、開閉手段は給油孔に設けられた逆止弁であることを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、請求項2において、逆止弁は給油孔の潤滑油の入口近傍に設けられることを特徴としている。
更にまた、請求項4記載の発明では、請求項3において、逆止弁は、弁体と弁座とを含んでなり、駆動ユニットの運転時には、弁体を潤滑油室側の潤滑油の圧力で弁座から離間させて給油孔を開け、駆動ユニットの停止後には、弁体を弁体の重量及び給油孔に溜まった潤滑油の重量で弁座に押圧付勢させて給油孔を閉じることを特徴としている。
また、請求項5記載の発明では、請求項4において、逆止弁は、弁体が弁座から離間するときの弁体の移動を規制するストッパを更に含み、ストッパは、弁座からの弁体の離間を許容し、かつ、駆動ユニットの停止後、給油孔内の潤滑油の略均圧化がなされた直後に給油孔を閉じることができる位置に設けられることを特徴としている。
更に、請求項6記載の発明では、請求項5において、逆止弁は、弁体を弁座に対して押圧付勢する弾性体を更に含んでなり、駆動ユニットの運転時には、弁体を潤滑油の潤滑油室側の圧力で弾性体の弾性力に抗して弁座から離間させて給油孔を開け、駆動ユニットの停止後には、弁体を弾性体の弾性力、及び弁体の重量で弁座に押圧付勢させて給油孔を閉じることを特徴としている。
請求項1記載の本発明のスクロール型流体機械によれば、給油路を開閉する開閉手段は、駆動ユニットの停止後、給油路における潤滑油室側とスクロールユニット側との潤滑油の圧力が略均圧になったときに給油路を閉じる。これにより、駆動ユニットの停止後に密閉容器内の圧力差によって給油路の潤滑油が吸い出されることが防止され、給油路に潤滑油を確実に溜めることができる。従って、駆動ユニットの起動時に、潤滑油室の潤滑油を給油路の入口からスクロールユニット側に一から供給する場合に比して、給油路の距離を実質的に短くすることができるため、スクロールユニットや駆動軸、駆動ユニット等の摺動部に迅速に潤滑油を供給することができ、スクロール型流体機械の耐久性、ひいては信頼性を向上することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、給油路は駆動軸に穿孔された給油孔であって、開閉手段は給油孔に設けられた逆止弁である。これにより、開閉手段を設けるための特別な加工を要することなく、給油孔に潤滑油を簡易にして確実に溜めることができる。
更に、請求項3記載の発明によれば、逆止弁は給油孔の潤滑油の入口近傍に設けられることにより、給油孔の入口近傍からスクロールユニット側に亘って極力多くの潤滑油を給油孔に溜めることができ、給油路の実質距離を更に短くすることができるため、駆動ユニットの起動時には摺動部に更に迅速に潤滑油を供給することができる。
更にまた、請求項4記載の発明によれば、逆止弁は、弁体と弁座とを含んでなり、駆動ユニットの運転時には、弁体を潤滑油室側の潤滑油の圧力で弁座から離間させて給油孔を開け、駆動ユニットの停止後には、弁体を弁体の重量及び給油孔に溜まった潤滑油の重量で弁座に押圧付勢させて給油孔を閉じる。これにより、駆動ユニットが停止してから弁体が弁座に押圧付勢されて給油孔が閉じられるまでの間に弁体の移動を伴う若干のタイムラグを持たせることができるため、給油孔における潤滑油室側とスクロールユニット側との潤滑油の圧力を確実に略均圧にして給油孔を閉じることができる。
しかも、給油孔の開閉に潤滑油の圧力のみを利用しているため、逆止弁の構造を簡素化することができる。従って、駆動ユニットの停止後に密閉容器内の圧力差によって給油孔の潤滑油が吸い出されることが防止され、給油孔に潤滑油を簡易にして確実に溜めることができる。
また、請求項5記載の発明によれば、逆止弁は、弁体が弁座から離間するときの弁体の移動を規制するストッパを更に含み、ストッパは、弁座からの弁体の離間を許容し、かつ、駆動ユニットの停止後、給油孔内の潤滑油の略均圧化がなされた直後に給油孔を閉じることができる位置に設けられる。これにより、逆止弁としての機能を確保しつつ、駆動ユニットの停止後、弁体を弁座に可能な限り迅速に押圧付勢し、給油孔を閉じることができる。従って、給油孔の入口近傍からスクロールユニット側に亘って極力多くの潤滑油を給油孔に溜めることができ、給油路の実質距離をより一層短くすることができるため、駆動ユニットの起動時には摺動部に更に迅速に潤滑油を供給することができる。
更に、請求項6記載の発明によれば、逆止弁は、弁体を弁座に対して押圧付勢する弾性体を更に含んでなり、駆動ユニットの運転時には、弁体を潤滑油の潤滑油室側の圧力で弾性体の弾性力に抗して弁座から離間させて給油孔を開け、駆動ユニットの停止後には、弁体を弾性体の弾性力、及び弁体の重量で弁座に押圧付勢させて給油孔を閉じる。これにより、給油孔における貯油量の大小や、給油孔における潤滑油の僅かな圧力変動などによって弁座に対する弁体の押圧力が変動し、ひいては弁体が弁座から離間して給油孔が無用に開閉されることが防止される。従って、駆動ユニットの運転時には潤滑油の供給を適切に行いつつ、駆動ユニットの停止後には潤滑油を給油孔に確実に溜め、駆動ユニットの起動時には摺動部に迅速に供給することができるため、スクロール型流体機械の信頼性を更に向上することができる。
第1実施形態に係る密閉型スクロール圧縮機の縦断面図である。 電動モータの運転時における図1の逆止弁の縦断面図である。 図2の弁座の上面図である。 図2のストッパの下面図である。 電動モータの停止直後における図1の逆止弁の縦断面図である。 電動モータの停止後に給油孔内が略均圧になったときの図1の逆止弁の縦断面図である。 図6の状態のときに弁体が弁座を押圧する力を示した図である。 第2実施形態に係る逆止弁の電動モータの運転時における縦断面図である。 電動モータの停止後に給油孔内が略均圧になったときの図8の逆止弁の縦断面図である。
以下、図面により本発明の実施形態についてまず第1実施形態から説明する。
図1は、第1実施形態に係るスクロール型流体機械の一例として、密閉型スクロール圧縮機の縦断面図を示している。
この圧縮機1は冷凍空調機やヒートポンプ式給湯機などの冷凍回路に組み込まれ、当該回路は作動流体の一例である二酸化炭素冷媒(以下、冷媒と称する)が循環する経路を備え、圧縮機1は経路から冷媒を吸入し、圧縮して経路に向けて吐出する。
圧縮機1は密閉容器2を備え、密閉容器2の円筒胴部をなすセンターシェル4は、その上側及び下側がトップシェル6及びボトムシェル8によってそれぞれ気密に嵌合され、センターシェル4の内部は密閉されて冷媒の吐出圧が作用している。センターシェル4に形成される冷媒の吸入室には上記回路から取り込んだ冷媒を吸入する吸入管10が接続され、トップシェル6の適宜位置には、密閉容器2内の圧縮冷媒を上記回路へ送出する吐出管12が接続されている。
センターシェル4には、上から順にスクロールユニット14、電動モータ16、ポンプユニット18が収容され、電動モータ16内には駆動軸20が配置されており、駆動軸20は電動モータ16への通電によって回転駆動される。
駆動軸20は、その上端側がスクロールユニット14に、その下端側がポンプユニット18に連結されており、駆動軸20が電動モータ16によって回転駆動されることにより、スクロールユニット14は、冷媒の吸入、圧縮及び吐出の一連のプロセスを実施する。
詳しくは、スクロールユニット14は可動スクロール22及び固定スクロール24から構成され、可動スクロール22は基板26を備え、この基板26の基面26aには固定スクロール24の基板28に向けて延びる渦巻き状のラップ30が立設され、一方、固定スクロール24の基板28の基面28aにも基板26に向けて延びる渦巻き状のラップ32が立設されている。
そして、これらラップ30,32は所定のインボリュート曲線に基づいて形成され、これらを互いに対をなして配置し協働させることにより、吸入管10を介して冷媒を吸入してラップ30,32の間に冷媒の圧縮室を形成する。
吸入室は、固定スクロール24の基板28に形成され、冷媒の吸入圧が作用し、一方、圧縮室は、固定スクロール24に対する可動スクロール22の公転旋回運動により、基板26,28の径方向中央部側に向けてその容積を減少させながら移動する。
可動スクロール22に公転旋回運動を付与するため、基板26の背面26b側にはボス34が形成され、ボス34は軸受を介して駆動軸20の上端側に一体形成される偏心軸36に回転自在に支持されている。なお、可動スクロール22の自転は図示しない自転阻止ピンやオルダムリングなどの自転阻止機構により阻止されている。
これに対し固定スクロール24は、センターシェル4の内側に固定されるメインフレーム38に支持、固定されており、固定スクロール24の中央部分には圧縮室に連通可能な吐出孔40が穿設されている。
一方、ポンプユニット18は、ボトムシェル8の内側の潤滑油室41に貯油された潤滑油を吸引し、吸引された潤滑油は駆動軸20内に穿孔された給油孔42を通過して駆動軸20の上端からスクロールユニット14や電動モータ16、軸受等の各摺動部に供給され、各摺動部の潤滑やシールに寄与する。
詳しくは、給油孔42を通過した潤滑油は駆動軸20の上端から駆動軸20に沿って電動モータ16側に流下される一方、可動スクロール22の基板26の背面26bとメインフレーム38との間に形成される背圧室に供給され、背圧室から基板26の外周面とメインフレーム38との間の外周空間44を通過した潤滑油は、基面28aのうちの可動スクロール22が固定スクロール24に対し摺動する領域である摺動面46に供給される。
ここで、背圧室は、メインフレーム38に固定された環状のシールリング48により、基板26,28の径方向中央部側に位置して給油孔42を通過した潤滑油の冷媒の吐出圧が作用する高圧室と、基板26,28の径方向外周部側に位置して高圧室よりも減圧された中間圧室とに仕切られている。そして、このような背圧構造を形成することにより、主として中間圧室の圧力によって可動スクロール22が固定スクロール24に対して適切に押圧され、可動スクロール22の円滑な公転旋回運動が実現される。
上述した圧縮機1によれば、駆動軸20の回転に伴って可動スクロール22が自転することなく公転旋回運動することにより、吸入管10を介してスクロールユニット14に吸入された冷媒は圧縮室を形成し、圧縮室内の冷媒はスクロールユニット14の中心に向けて移動されながら圧縮された後に吐出孔40より密閉容器2内に吐出され、密閉容器2内を循環した後に吐出管12を介して圧縮機1外へ送出される。
ところで、本実施形態では、給油孔42の潤滑油の入口近傍には給油孔42を開閉する逆止弁(開閉手段)50が設けられている。
図2は、電動モータ16の運転時、すなわち圧縮機1の運転時における逆止弁50の縦断面図を示している。
本実施形態の逆止弁50は、弁体52、弁座54、及びストッパ56から構成されている。弁体52は給油孔42の内径(5mm程度)よりも小さな直径を有する例えばボール状に形成され、潤滑油の流れに即して給油孔42を上下に移動可能な比重を有する樹脂や金属などから形成される。
図3の弁座54の上面図にも示されるように、弁座54は貫通孔54aを有する円環状に形成され、給油孔42の内周面42aに固定されている。貫通孔54aの直径は弁体52の直径よりも小さく形成され、弁体52は弁座54に着座したときに貫通孔54aを塞ぎ、弁座54の上面54cから下側への潤滑油の流れを遮断してシールする。好ましくは、弁座54の内周面54bと上面54cとが連なる角部は、弁体52が弁座54に着座したときに弁座54に対して弁体52が面接触するように例えばR面取加工された面取部54dが形成されている。面取部54dを形成することで、弁座54に対する弁体52の接触面積を増大することができるため、弁体52が弁座54に着座したときの上面54cから下側への潤滑油の流れをより確実に遮断してシール可能である。
図4のストッパ56の下面図にも示されるように、ストッパ56は凸部56aを下向きにした断面視凸状に形成され、給油孔42の内周面42aに固定されている。ストッパ56の外周面56bにはストッパ56の上下方向に沿って複数(図4では4つ)の切り欠き部56cが弁体52の直径よりも小さい範囲で切り欠かれて形成されている。
弁座54とストッパ56とは、給油孔42の内周面42aに距離Dだけ離間して固定されており、弁体52は弁座54とストッパ56との間に配置され、ストッパ56により弁座54から離間するときの移動が規制される。なお、ストッパ56を断面視凸状に形成して切り欠き部56cを設けているが、これに限らず、潤滑油の流通と弁体52の移動規制とが可能であれば良く、例えば平坦形状をなすフィルタをストッパ56として使用しても良い。
このように構成される逆止弁50は、電動モータ16の運転時には、冷媒の吐出圧が作用して高圧となった潤滑油室41側の潤滑油の圧力で弁体52が弁座54から離間され、図2に実線矢印で示されるように流れる潤滑油の圧力によって上側に移動してストッパ56に押し付けられ、潤滑油は貫通孔54a、切り欠き部56cを通過し、給油孔42が開けられる。ここで、切り欠き部56cは弁体52の直径よりも小さい範囲で切り欠かれて形成されることから、弁体52はストッパ56の凸部56aに押し付けられて切り欠き部56cを塞ぐことはなく、切り欠き部56cは潤滑油の通路として機能している。
図5は、電動モータ16の停止直後における逆止弁50の縦断面図を示している。電動モータ16の停止直後には、潤滑油室41側の高圧の潤滑油と、スクロールユニット14側、すなわち吸入室側の低圧の潤滑油とが給油孔42内でバランスし、密閉容器2内、ひいては給油孔42内が略均圧になりつつある過程が訪れる。この過程においては、図5に実線矢印で示されるように、給油孔42中の潤滑油は上下両方向に微小な速度で移動、対流しながら、全体としては停滞し、弁体52はその自重により凸部56aから離間し弁座54に向けて下側に移動する。
ここで、ストッパ56と弁座54との距離Dは、弁座54からの弁体52の離間が可能な程度にあまり短くなりすぎず、かつ、電動モータ16の停止後に、給油孔42内の潤滑油の略均圧化がなされた直後のタイミングにおいて弁体42が凸部56aから離間して弁座54に着座する長さとなるように、潤滑油の比重及び粘度、弁体42の比重及び重量に基づいて予め設定されている。
図6は、電動モータ16の停止後に給油孔42内が略均圧になったときの逆止弁50の縦断面図を示している。このときには、潤滑油室41側の高圧の潤滑油と、スクロールユニット14側の低圧の潤滑油との圧力が略均圧にバランスしており、弁体52は弁座54に着座して給油孔42を閉じている。この状態においては図6に示されるように、給油孔42には偏心軸36の上端近傍までほぼ満液状態で潤滑油が溜められ、換言すると、実質的には、潤滑油室41の油面が偏心軸36の上端面近傍まで上昇したことになり、潤滑油の給油路が給油孔42の長さ分だけ短くなる。
図7は、図6の状態のときの弁体52が弁座54を押圧する力を示している。この図から明らかなように、本実施形態では、弁体52の荷重Fv、及び給油孔42に溜まった潤滑油の荷重Foで弁体52を弁座54に押圧付勢させて給油孔42を気密に閉じている。
以上のように、本実施形態では、逆止弁50は、電動モータ16の運転時には、弁体52を潤滑油室41側の潤滑油の圧力で弁座54から離間させて給油孔42を開け、電動モータ16の停止後、給油孔42における潤滑油室41側とスクロールユニット14側との潤滑油の圧力が略均圧になったときに給油孔42を閉じる。これにより、電動モータ16の停止後に密閉容器2内の圧力差によって給油孔42の潤滑油が吸い出されることが防止され、給油孔42に潤滑油を確実に溜めることができる。従って、電動モータ16の次の起動時に、潤滑油室41の潤滑油を給油孔42の入口からスクロールユニット14側に一から供給する場合に比して、給油路の距離を実質的に短くすることができるため、スクロールユニット14、駆動軸20及びその軸受、電動モータ16等の摺動部に迅速に潤滑油を供給することができ、圧縮機1の耐久性、ひいては信頼性を向上することができる。
また、逆止弁50を駆動軸20に穿孔された給油孔42に設けることにより、駆動軸20や密閉容器2等に逆止弁50を設けるための特別な加工を要することなく、給油孔42に潤滑油を簡易にして確実に溜めることができる。
更に、逆止弁50を給油孔42の潤滑油の入口近傍に設けることにより、給油孔42の入口近傍からスクロールユニット14側に亘って極力多くの潤滑油を給油孔42に溜めることができ、給油路の実質距離を更に短くすることができるため、電動モータ16の起動時には摺動部に更に迅速に潤滑油を供給することができる。
更にまた、逆止弁50は、電動モータ16の運転時には、弁体52を潤滑油室41側の潤滑油の圧力で弁座54から離間させて給油孔42を開け、電動モータ16の停止後には、弁体52を弁体52の重量による荷重Fv、及び給油孔42に溜まった潤滑油の重量による荷重Foで弁座54に押圧付勢させて給油孔42を閉じる。これにより、電動モータ16が停止してから弁体52が弁座54に押圧付勢されて給油孔42が閉じられるまでの間に弁体52の移動を伴う若干のタイムラグを持たせることができるため、給油孔42における潤滑油室41側とスクロールユニット14側との潤滑油の圧力を確実に略均圧にして給油孔42を閉じることができる。
しかも、給油孔42の開閉に潤滑油の圧力のみを利用しているため、逆止弁50の構造を簡素化することができる。従って、電動モータ16の停止後に密閉容器2内の圧力差によって給油孔42の潤滑油が吸い出されることが防止され、給油孔42に潤滑油を簡易にして確実に溜めることができる。
また、逆止弁50のストッパ56は、弁座54からの弁体52の離間を許容し、かつ、電動モータ16の停止後、給油孔42内の潤滑油の略均圧化がなされた直後に給油孔42を閉じることができる位置に設けられるため、逆止弁50としての機能を確保しつつ、電動モータ16の停止後、弁体52を弁座54に可能な限り迅速に押圧付勢し、給油孔42を閉じることができる。従って、給油孔42の入口近傍からスクロールユニット14側に亘って極力多くの潤滑油を給油孔42に溜めることができ、給油路の実質距離をより一層短くすることができるため、電動モータ16の起動時には摺動部に更に迅速に潤滑油を供給することができる。
図8は、本発明の第2実施形態に係る逆止弁58の電動モータ16の運転時における縦断面図を示しており、その他の上記第1実施形態の圧縮機1と同一の構成については説明を省略する。
本実施形態の逆止弁58は、弁体60、弁座62、ストッパ64、ばね66から構成されている。弁体60は円柱状に形成され、有蓋円筒状をなして形成されるストッパ64内を潤滑油の流れに方向に上下に円滑に移動可能である。
弁座62は貫通孔62aを有する円環状に形成され、給油孔42の内周面42aに固定されている。貫通孔62aの直径は円柱状をなす弁体60の直径よりも小さく形成されている。
ストッパ64は円筒部64aと蓋部64bとから構成されている。円筒部64aの開口端が弁座62の上面62bに固定されている。円筒部64aの直径は給油孔42の内径よりも小さく形成され、円筒部64aの開口端近傍には複数の連通孔64cが円柱状をなす弁体60の高さよりも小さい高さで形成されている。一方、蓋部64bにはばね66が固定されている。
弁体60は、弁座62とばね66との間に配置され、ばね66及びストッパ64により弁座62から離間するときの移動が規制され、一方、弁座62に着座したときには、連通孔64c及び貫通孔62aを塞ぎ、弁座62の上面62bから下側への潤滑油の流れを遮断してシールする。
ばね66は、潤滑油室41側の高圧潤滑油の圧力によって弁体62を容易に上側に押し上げられる程度に小さく、かつ、給油孔42内の均圧時には弁体60を弁座62に着座させて貫通孔62aを塞いでシール可能な程度の強さの弾性力を有する材料によって形成される。
このように構成される逆止弁58は、電動モータ16の運転時には、潤滑油室41側の高圧潤滑油の圧力でばね66の弾性力に抗して弁体60が弁座62から離間され、図8に実線矢印で示されるように流れる潤滑油の圧力によって上側に移動してストッパ64に押し付けられ、潤滑油は貫通孔62a、連通孔64c、ストッパ64と内周面42aとの隙間を通過し、給油孔42が開けられる。
図9は、電動モータ16の停止後に給油孔42内が略均圧になったときの逆止弁58の縦断面図を示している。このときには、潤滑油室41側の高圧の潤滑油と、スクロールユニット14側の低圧の潤滑油との圧力が略均圧にバランスしており、弁体60は弁座62に着座して連通孔64c及び貫通孔62aの2箇所の潤滑油通路を閉じ、給油孔42を閉じる。この状態においては給油孔42には偏心軸36の上端近傍までほぼ満液状態で潤滑油が溜められている。
ここで、図9には弁体60が弁座62を押圧する力が示されており、この図から明らかなように、本実施形態では、弁体60の荷重Fv2、及びばね66の弾性力Fsで弁体60を弁座62に押圧付勢させて給油孔42を気密に閉じている。
以上のように、本実施形態では、逆止弁58は、弁体60を弁座62に対して押圧付勢するばね66を更に有することにより、電動モータ16の運転時には、弁体60を潤滑油の潤滑油室41側の圧力でばね66の弾性力に抗して弁座62から離間させて給油孔42を開け、電動モータ16の停止後には、弁体60をばね66の弾性力、及び弁体60の重量で弁座62に押圧付勢させて連通孔64c及び貫通孔62aを閉じ、給油孔42を閉じる。これにより、給油孔42における貯油量の大小や、給油孔42における潤滑油の僅かな圧力変動などによって弁座62に対する弁体60の押圧力が変動し、ひいては弁体60が弁座62から離間して給油孔42が無用に開閉されることが防止される。
しかも、電動モータ16の停止後には、連通孔64c及び貫通孔62aの2箇所で潤滑油を遮断してシールするため、電動モータ16の再起動まで長時間を要したとしても給油孔42内に溜められた潤滑油が潤滑油室41側に漏れ出すことが確実に防止される。従って、電動モータ16の運転時には潤滑油の供給を適切に行いつつ、電動モータ16の停止後には潤滑油を給油孔42に確実に溜め、電動モータ16の起動時には摺動部に迅速に供給することができるため、圧縮機1の信頼性を更に向上することができる。
本発明は、上述した第1及び第2実施形態に限定されることはなく種々の変形が可能である。
例えば、給油孔42の開閉手段は、電動モータ16の運転時には給油孔42を開け、電動モータ16の停止後に密閉容器2内が略均圧になったときに給油孔42を閉じる手段であれば、上記第1及び第2実施形態で説明した逆止弁50,58の構成に限定されない。
1 密閉型スクロール圧縮機(スクロール型流体機械)
2 密閉容器
14 スクロールユニット
20 駆動軸
16 電動モータ(駆動ユニット)
41 潤滑油室
42 給油孔(給油路)
18 ポンプユニット(給油機構)
50,58 逆止弁(開閉手段)
52,60 弁体
54,62 弁座
56,64 ストッパ
66 ばね(弾性体)

Claims (6)

  1. 密閉容器内に、スクロールユニットと、前記スクロールユニットを駆動する駆動軸と、前記駆動軸を回転駆動する駆動ユニットとを備えたスクロール型流体機械であって、
    前記密閉容器内に潤滑油を貯留する潤滑油室と、
    前記潤滑油室から前記スクロールユニットに潤滑油を供給する給油路を有する給油機構と、
    前記給油路を開閉する開閉手段とを備え、
    前記開閉手段は、前記駆動ユニットの停止後、前記給油路における前記潤滑油室側と前記スクロールユニット側との潤滑油の圧力が略均圧になったときに前記給油路を閉じることを特徴とするスクロール型流体機械。
  2. 前記給油路は前記駆動軸に穿孔された給油孔であって、前記開閉手段は前記給油孔に設けられた逆止弁であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
  3. 前記逆止弁は前記給油孔の潤滑油の入口近傍に設けられることを特徴とする請求項2に記載のスクロール型流体機械。
  4. 前記逆止弁は、弁体と弁座とを含んでなり、前記駆動ユニットの運転時には、前記弁体を前記潤滑油室側の潤滑油の圧力で前記弁座から離間させて前記給油孔を開け、前記駆動ユニットの停止後には、前記弁体を前記弁体の重量及び前記給油孔に溜まった潤滑油の重量で前記弁座に押圧付勢させて前記給油孔を閉じることを特徴とする請求項3に記載のスクロール型流体機械。
  5. 前記逆止弁は、前記弁体が前記弁座から離間するときの前記弁体の移動を規制するストッパを更に含み、
    前記ストッパは、前記弁座からの前記弁体の離間を許容し、かつ、前記駆動ユニットの停止後、前記給油孔内の潤滑油の略均圧化がなされた直後に前記給油孔を閉じることができる位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載のスクロール型流体機械。
  6. 前記逆止弁は、前記弁体を前記弁座に対して押圧付勢する弾性体を更に含んでなり、前記駆動ユニットの運転時には、前記弁体を潤滑油の前記潤滑油室側の圧力で前記弾性体の弾性力に抗して前記弁座から離間させて前記給油孔を開け、前記駆動ユニットの停止後には、前記弁体を前記弾性体の弾性力、及び前記弁体の重量で前記弁座に押圧付勢させて前記給油孔を閉じることを特徴とする請求項5に記載のスクロール型流体機械。
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