JP2011063539A - 制吐剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、グラニセトロンを含む注射剤であって、pHが6.8〜8.5の範囲に調整されており、その構成に環状オレフィン系樹脂を含むシートからなるプラスチック製容器または内表面にパリレンコーティングが施されているプラスチック製容器に充填されていることを特徴とする悪心および嘔吐の治療および/または予防に用いるための制吐剤である。
【選択図】 なし
Description
しかし、グラニセトロンを点滴静脈注射により投与する際の多くは、さらにデキサメタゾンの併用が先述のガイドラインで推奨されており、そのため先述の希釈タイプのグラニセトロン製剤を使用する場合であっても、医療現場において用時デキサメタゾンを混合して投与されている。混合操作は、煩雑であり、また細菌や異物が混入しないよう最大限に注意を要するため、依然、医療従事者の負担は大きい。そのため、グラニセトロン注射剤に予めデキサメタゾンが配合された安定な注射剤および点滴静注用製剤の開発が望まれていた。特許文献1には、グラニセトロンおよびデキサメタゾン含有の医薬組成物について記載されているが、薬剤成分の安定性は言及されておらず、また、特に薬剤成分の安定性を維持することが難しい注射剤および点滴静注用製剤を安定に供給する方法についての記載はない。したがって、グラニセトロンおよびデキサメタゾン含有の注射剤、点滴静注用製剤は実用化されるに至っていない。
すなわち、本発明は、
(1)グラニセトロンを含む注射剤であって、pHが6.8〜8.5の範囲に調整されており、その構成に環状オレフィン系樹脂を含有するシートからなるプラスチック製容器または内表面にパリレンコーティングが施されているプラスチック製容器に充填されていることを特徴とする悪心および嘔吐の治療および/または予防に用いるための制吐剤。
(2)前記注射剤はさらにデキサメタゾンを含むことを特徴とする上記(1)に記載の制吐剤。
(3)前記グラニセトロンが0.01mg/mL〜0.15mg/mLであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の制吐剤。
(4)前記デキサメタゾンが0.04mg/mL〜1.20mg/mLであることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の制吐剤。
(5)加熱滅菌されている上記(1)〜(4)のいずれかに記載の制吐剤。
(6)前記環状オレフィン系樹脂は環状オレフィンポリマーまたは環状オレフィンコポリマーである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の制吐剤。
(7)前記プラスチック製容器は環状オレフィン系樹脂を含有するシートからなるものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の制吐剤。
(8)前記プラスチック製容器は内表面にパリレンコーティングが施されているものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の制吐剤。
(9)前記(1)〜(8)の制吐剤が脱酸素剤とともに酸素非透過性の外装材に収納されている制吐剤包装体。
本発明に使用するグラニセトロンは、医薬上許容される形態であれば、特に限定されず、具体的には、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩およびマレイン酸塩などが挙げられる。本発明において、より好ましい形態のグラニセトロンは、塩酸塩である。
本発明の制吐剤はデキサメタゾンを含んでいても良い。デキサメタゾンは、医薬上許容される形態であれば、特に限定されず、具体的には、リン酸二ナトリウム、メタスルホ安息香酸二ナトリウム、酢酸、パルミチン酸、プロピオン酸、吉草酸などのエステルが挙げられる。本発明において、より好ましい形態のデキサメタゾンの形態は、リン酸エステル二ナトリウムである。
さらに、本発明の制吐剤には、遅発性の悪心・嘔吐を最小限にコントロールするために、NK1受容体拮抗薬、例えばアプレピタントを配合することができる。具体的には、本発明の制吐剤の薬液中に配合、またはアプレピタントを液剤または粉剤として用時連通可能な別室に収容することができる。
また、本発明の制吐剤には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩が安定剤として添加できる。
本発明において、制吐剤の薬液の調製法は、注射剤調製の常法に従う。
本発明において用いられるパリレンコーティングを形成するパリレンとは、パラキシリレン系ポリマーの総称であり、ポリパラキシリレン(パリレンN)、ポリモノクロロパラキシリレン(パリレンC)、ポリジクロロp−キシリレン(パリレンD)、ポリテトラフルオロパラキシリレン(パリレンF)等が例示される。
さらに、本発明の制吐剤の酸化などの変質を確実に防止するために、該容器を脱酸素剤とともに実質的に酸素を透過しない酸素非透過性の外装容器で包装することができる。脱酸素剤としては、公知の各種のものが使用できる。市販品としてはエージレス(三菱ガス化学(株)製)、モジュラン(日本化薬(株)製)およびバイタロン((株)常盤産業製)などが挙げられる。本発明の制吐剤の包装に適した実質的に酸素を透過しない外装容器の材質としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム等のガスバリア層を有する一般に汎用されている各種材質のフィルムシートを使用することができる。
(実施例1)
塩化ナトリウム27.0g、リン酸水素ナトリウム0.36g、クエン酸0.12g、クエン酸ナトリウム0.30g、亜硫酸水素ナトリウム0.24g、塩酸グラニセトロン33.6mgおよびリン酸デキサメタゾンナトリウム159.0mgを注射用蒸留水に溶解し3Lとし、pH調節剤として微量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpH7.5とした後、酢酸セルロースメンブランフィルターにてろ過し、溶液(1)とした。
以上のようにして調製した溶液(1)100mLを表1記載の各フィルムシートからなるプラスチック製容器(100mL容量)に充填し、密封した後、窒素ガスを導入し高圧蒸気滅菌処理を行った。さらに、容器を脱酸素剤(エージレス、三菱ガス化学(株)製)1個と共に酸素非透過性外装包材(アルミ蒸着フィルム、大日本印刷(株)製)に封入し、制吐剤を得た。
なお、各表中、COPは環状オレフィンポリマー、COCは環状オレフィンコポリマー、PPはポリプロピレン、PEはポリエチレンを示す。
実施例1において表2記載のフィルムαシートからなるプラスチック製容器(100mL容量)に充填した以外は実施例1と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
塩化ナトリウム27.0g、リン酸水素ナトリウム0.36g、クエン酸0.12g、クエン酸ナトリウム0.30g、亜硫酸水素ナトリウム0.24g、塩酸グラニセトロン201.0mgおよびリン酸デキサメタゾンナトリウム189.6mgを注射用蒸留水に溶解し3Lとし、pH調節剤として微量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpH8.0とした後、酢酸セルロースメンブランフィルターにてろ過し、溶液(2)とした。
以上のようにして調製した溶液(2)50mLを表1記載の各フィルムシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填し、密封した後、窒素ガスを導入し高圧蒸気滅菌処理を行った。さらに、容器を脱酸素剤(エージレス、三菱ガス化学(株)製)1個と共に酸素非透過性外装包材(アルミ蒸着フィルム、大日本印刷(株)製)に封入し、制吐剤を得た。
実施例2において表2記載のフィルムαシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例2と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
塩化ナトリウム9.0g、クエン酸0.04g、および塩酸グラニセトロン22.4mgを注射用蒸留水に溶解し1Lとし、pH調節剤として微量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpH8.5とした後、酢酸セルロースメンブランフィルターにてろ過し、溶液(3)とした。
以上のようにして調製した溶液(3)50mLを表1記載のフィルムAシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填し、密封した後、窒素ガスを導入し高圧蒸気滅菌処理を行った。さらに、容器を脱酸素剤(エージレス、三菱ガス化学(株)製)1個と共に酸素非透過性外装包材(アルミ蒸着フィルム、大日本印刷(株)製)に封入し、制吐剤を得た。
実施例3において表2記載のフィルムαシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例3と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
塩化ナトリウム18.0g、リン酸水素ナトリウム0.24g、クエン酸0.08g、クエン酸ナトリウム0.20g、亜硫酸水素ナトリウム0.16g、塩酸グラニセトロン44.8mgおよびリン酸デキサメタゾンナトリウム348.0mgを注射用蒸留水に溶解し2Lとし、pH調節剤として微量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpH8.0とした後、酢酸セルロースメンブランフィルターにてろ過し、溶液(4)とした。
以上のようにして調製した溶液(4)50mLを表3記載のフィルムEシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填し、密封した後、窒素ガスを導入し高圧蒸気滅菌処理を行った。さらに、容器を脱酸素剤(エージレス、三菱ガス化学(株)製)1個と共に酸素非透過性外装包材(アルミ蒸着フィルム、大日本印刷(株)製)に封入し、制吐剤を得た。
実施例4において表4記載のフィルムβシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例4と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
実施例4において溶液(4)のpHを7.0としたことおよび表1記載のフィルムAシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例4と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
実施例4において溶液(4)のpHを6.9としたことおよび表2記載のフィルムαシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例4と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
実施例4において溶液(4)のpHを6.7としたことおよび表1記載のフィルムAシートからなるプラスチック製容器(50mL容量)に充填した以外は実施例4と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
塩化ナトリウム27.0g、リン酸水素ナトリウム0.36g、クエン酸0.12g、クエン酸ナトリウム0.30g、亜硫酸水素ナトリウム0.24g、塩酸グラニセトロン67.2mgおよびリン酸デキサメタゾンナトリウム948.0mgを注射用蒸留水に溶解し3Lとし、pH調節剤として微量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を用いてpH7.6とした後、酢酸セルロースメンブランフィルターにてろ過し、溶液(5)とした。
以上のようにして調製した溶液(5)100mLを表5記載の各フィルムシートからなるプラスチック製容器(100mL容量)に充填し、密封した後、窒素ガスを導入し高圧蒸気滅菌処理を行った。さらに、容器を脱酸素剤(エージレス、三菱ガス化学(株)製)1個と共に酸素非透過性外装包材(アルミ蒸着フィルム、大日本印刷(株)製)に封入し、制吐剤を得た。
実施例6において表2記載のフィルムαシートからなるプラスチック製容器(100mL容量)に充填した以外は実施例6と全く同じ操作を繰り返して制吐剤を得た。
上記実施例1〜6、比較例1〜7ついて、滅菌前の調製液および製造直後の制吐剤の塩酸グラニセトロン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例1〜6および比較例6の塩酸グラニセトロン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。一方、比較例1〜5および7の塩酸グラニセトロン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%未満であった。
なお、本明細書における塩酸グラニセトロン含量測定の際の液体クロマトグラフィーの測定条件は次のとおりである。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:300nm)。
カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填。
移動相:500倍に薄めたリン酸/アセトニトリル/ヘキシルアミン混液(800:200:1)に、トリエチルアミンを加えてpH7.5に調整。
上記実施例1、2、5および6、比較例1、2および5〜7について、滅菌前の調製液および製造直後の制吐剤のリン酸デキサメタゾン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例1、2、5および6、比較例1、2および5〜7のリン酸デキサメタゾン含量は、いずれも滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。
なお、本明細書におけるリン酸デキサメタゾン含量測定の際の液体クロマトグラフィーの測定条件は次のとおりである。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)。
カラム:内径4.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填。
移動相:0.02mol/Lリン酸二水素カリウム試液/メタノール混液(1:1)。
上記実施例1および2の制吐剤について、60℃1週間保存した後に塩酸グラニセトロン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例1および2の塩酸グラニセトロン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。
上記実施例1および2の制吐剤について、60℃1週間保存した後にリン酸デキサメタゾン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例1および2のリン酸デキサメタゾン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。
上記実施例3、5および6、比較例6の制吐剤について、60℃3週間保存した後に塩酸グラニセトロン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例3、5および6、比較例6の塩酸グラニセトロン含量は、いずれも滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。
上記実施例5および6、比較例6の制吐剤について、60℃3週間保存した後にリン酸デキサメタゾン含量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、実施例5および6のリン酸デキサメタゾン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%以上であった。一方、比較例6のリン酸デキサメタゾン含量は、滅菌前の調製液の含量に対し残存率90%未満であった。
上記実施例1〜6および比較例1〜7に示した本発明にかかる制吐剤の試験例1〜6をまとめたものを表6に示す。
Claims (5)
- グラニセトロンを含む注射剤であって、pHが6.8〜8.5の範囲に調整されており、その構成に環状オレフィン系樹脂を含有するシートからなるプラスチック製容器または内表面にパリレンコーティングが施されているプラスチック製容器に充填されていることを特徴とする悪心および嘔吐の治療および/または予防に用いるための制吐剤。
- 前記注射剤はさらにデキサメタゾンを含むことを特徴とする請求項1記載の制吐剤。
- 前記グラニセトロンが0.01mg/mL〜0.15mg/mLであることを特徴とする請求項1または2に記載の制吐剤。
- 前記デキサメタゾンが0.04mg/mL〜1.20mg/mLであることを特徴とする請求項2または3に記載の制吐剤。
- 加熱滅菌されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制吐剤。
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