JP2011058956A - 免疫センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酵素標識抗体を用いた免疫センサにおいて、前記免疫センサ内に設けられた流路内に、血液溜(1)と、血球分離部(2)と、目的分子と結合する抗体が固定化された抗体修飾領域(10)と、前記抗体修飾領域に近接した電気化学測定用薄膜電極(6)(7)(8)とを備え、前記血液溜(1)から免疫センサの回転による遠心力の向きに流路(11)を形成しその先に前記血球分離部(2)が設けられ、当該血球分離部(2)から遠心力の向きとは反対の方向に分岐した流路により血球分離部(2)と前記抗体修飾領域(10)を繋ぐことを特徴とする免疫センサ。
【選択図】図1
Description
近年、POCT(ポイントオブケアテスティング)と呼ばれる手法が注目されている。これは、携帯できるほどの小型のセンサを用いて血液や尿中に含まれる生体分子、特に疾患マーカーと呼ばれるタンパクやペプチドを計測する手法である。小型センサを用いて生体成分を計測することにより、患者の近くで“その場で”計測可能になり、迅速な診断や治療成績の向上が見込まれる。
一方、近年、ガラスやシリコンなどの上に分析システムを微小化、集積化する試みが盛んに行われており、操作の簡便化、自動化や分析時間の短縮などに有効であると考えられている。免疫測定法に関してもこれまでバルクで行われてきた手法を微小流路を用いて行うことにより、迅速で簡便な検出が可能になると考えられ、いくつかの報告例がある(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
一般的に、全血試料での免疫測定では、試料内の血球やタンパク質が測定に影響を与えるため、前処理として遠心分離や除タンパク作業を行う必要があり、煩雑であった。そのため、センサ自身は小型・その場で測定可能であっても、実際は前処理を別途行う必要がある。そこで、チップ上で遠心力を利用して血漿成分を分離する試みが報告されている(特許文献4参照)。
さらに、前記フィルターを透過した血漿は、薄膜電極上或いは薄膜電極の近傍の流路内に配置された抗体修飾領域上へ導入されることにより、抗原抗体複合体が形成される。その後、標識酵素の基質溶液を基質溜に滴下し、さらに回転させて基質を免疫センサ内に導入する。ここで、抗原抗体複合体が形成されていた際には、標識酵素により基質が変換される。その後、酵素反応により変換された分子の量を電気化学的に測定することにより、目的分子濃度を高感度に計測する。ここで、血球は分離されているものの、血漿内にはアルブミン等のタンパクが高濃度で存在している。このため、電極表面にタンパクが吸着し、電気化学活性化低下するため正確な値を得ることが難しいが、本発明では、薄膜電極をタンパクの非特異吸着を抑制する単分子膜によって保護しているため、高濃度にタンパクを含む血漿中でも精度良く測定可能である。
このように、試料中に含まれるマイクロメールオーダーのサイズの妨害分子である血球を遠心力によって血球溜に捕捉することで、電気化学測定を行う薄膜電極上には一切血球が流れ込まないことと、ナノメーターサイズの妨害分子であるタンパクは、薄膜電極表面に修飾された単分子膜によって電極表面へ透過できない様にすることで、精度の良い免疫センサを提供できる。
本発明の免疫センサでは、単一の部材から構成されていても良いが、流路となる溝を有する部材と薄膜電極を有する部材とを貼り合わせて基板を構成しても良い。下記の実施例では、貼り合わせにより作製しているが、これに限定されるものではない。
ポリジメチルシロキサン上に形成する流路のサイズは特に限定されないが、あまりに大きいと試料量や基質、抗体が多量に必要となり不利である。また、あまりに小さいと、遠心力のみでは液が流通しにくくなるため、流路の幅は通常、0.05mm〜5mm程度であり、好ましくは1mm程度である。流路の深さも特に限定されないが、上述した理由から、0.01mm〜0.1mm程度であり、好ましくは、0.02mm程度である。
なお流路の内壁は、流路を形成する材質のままでも良いが、アルブミン等のタンパクを塗布することによって、より良好にセンサが動作する。これは、流路内が親水化されることにより、スムーズに溶液が流れること、並びに酵素標識抗体が流路内に非特異的に吸着することを防ぐ働きがあるためである。
血漿が流れ込んだ流路内には目的物質に対する抗体を固定化した領域が設けられている。ここで目的物質は、抗原として抗原抗体反応をし得るものであれば何ら限定されない。目的物質として好ましくは、生体内のペプチドやタンパク、多糖類等の生体関連物質であるが、環境物質等でもよい。本発明の免疫センサは、試料中に含まれる血球やタンパクの影響を受け難いことから、測定対象は血液試料や尿試料を測定したときに威力を発揮する。しかしながら、飲料水や河川等の測定も可能である。
前記の薄膜電極は、好ましくは3つの電極が流路内に形成されている。これらの3つの電極を作用電極、参照電極、対向電極として用いることで、流路内での電気化学測定を行うことが出来る。また、参照電極と対向電極を同一の電極として用いることも可能であるため、流路内に2つの電極が配置された構造でも使用可能である。薄膜電極の形成方法は、スパッタリング法や蒸着法、スクリーン印刷法が考えられるが、これらに限定されない。電極材料としては、金や銀、銅などが考えられるが、好ましくは金である。電極の大きさについても特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜5mm程度である。
薄膜電極の表面は、そのままでも測定可能であるが、血液など目的試料にタンパクが多量に含まれている場合には、一般式 HO(CH2CH2O)3−(CH2)n−SH (n=2〜11)で表される単分子膜で修飾した方が好ましい。前記単分子膜が電極表面に形成されていることにより、タンパクの電極表面への吸着を抑制できるため、精度の良いセンサ結果を得ることが可能である。
<免疫センサの作製>
免疫センサは、流路を形成したポリジメチルシロキサン基板と電気化学測定用薄膜金電極を有するガラス基板を貼り合わせることにより作製した。流路の鋳型となる基板にポリジメチルシロキサン(PMDS)のオリゴマー(コーニング社製)と硬化剤を混合し、60℃で2時間放置することにより硬化させた。その後、鋳型からはずし、流路を有するPMDS基板を得た。薄膜金電極基板は、ガラス基板上にスパッタリング法により金薄膜を100nm堆積させた。その後、フォトリソグラフィ加工によりレジストパターンで流路を積層した。さらに、ウエットエッチング法により3つの薄膜電極パターンを得た。
先ず、免疫センサの血液溜に、目的試料と測定溶液の混合溶液を滴下する。目的試料は0,0.1,1,10ng/mLの腫瘍壊死因子(TNF−α)を含む試料を準備した。測定溶液は、1μg/mLのビオチン化抗TNF−α抗体、ストレプトアビジン化アルカリフォスファターゼ(ALP)、1mg/mLのアルブミン(BSA)を含んだトリス緩衝液(20mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン、0.15MNaCl、5mMMgCl2、pH7.4)である。これらの混合溶液を免疫センサの血液溜に85μL導入した。次に、4000rpmで免疫センサを10分間回転させることで、混合試料溶液を送液した。この送液によって、電極上に固定化された抗TNF−α抗体に対して、TNF−α、ビオチン化抗TNF−α抗体、ストレプトアビジン化ALPが結合される。次に、10mMのp−アミノフェニルフォスフェート(PAPP)を含んだトリス緩衝液を基質導入孔へ10μL導入し、4000rpmで免疫センサを30秒間回転させることで、電極上へPAPPを搬送した。その後、5分間免疫センサを静止することで電極上のALPの酵素反応によってPAPPをp−アミノフェノール(PAP)に変換した。さらに、サイクリックボルタンメトリー法によって薄膜電極電位を−0.3Vから+0.3Vへと上昇させた際の、PAPの酸化電流を測定した。分析結果を図4に示す。TNF−αの濃度が上昇するに伴って、PAP由来の酸化電流値も上昇することが確認された。これは、電極上に存在するALPの濃度が増加している、すなわち、TNF−αの濃度の増大を意味していることから、本免疫センサを用いた免疫測定が可能であることを示している。
実施例1に記載の免疫センサ内の作用電極は、HO(CH2CH2O)3−(CH2)n−SH(nは2から11の整数)で表される分子で修飾することで、タンパク質が多量に含まれる試料溶液においても、選択的に目的分子を検出可能である。これは、上記分子で電極を保護することにより、タンパク質の電極表面への非特異吸着を抑制できるためである。長さの異なる上記分子で測定した際の結果を以下に示す。
試料溶液中に血球が含まれている際には、血球が血球分離部に捕捉される。このため薄膜電極上には血球が流れ込まないため、正確に免疫測定の結果を得ることが可能である。図5にヒツジの全血を用いて測定した際の、血球分離部の顕微鏡写真を示す。本センサを用いることにより効果的に血球を分離でき、薄膜電極上では血球は観測されなかった。
2 血球分離部
3 基質溜
4 血漿溜
5 空気穴
6 作用電極
7 参照電極
8 対向電極
9 フィルター部(深さ5μm)
10 抗体修飾領域
11 流路
12 ガラス基板
13 PDMS基板
14 ポリビニルクロライド基板
Claims (7)
- 酵素標識抗体を用いた免疫センサにおいて、前記免疫センサ内に設けられた流路内に、血液溜と、血球分離部と、目的分子と結合する抗体が固定化された抗体修飾領域と、前記抗体修飾領域に近接した電気化学測定用薄膜電極とを備え、前記血液溜から免疫センサの回転による遠心力の向きに流路を形成しその先に前記血球分離部が設けられ、当該血球分離部から遠心力の向きとは反対の方向に分岐した流路により血球分離部と前記抗体修飾領域とを繋ぐことを特徴とする免疫センサ。
- 前記薄膜電極が、一般式HO(CH2CH2O)3−(CH2)n−SH、ただしnは2から11の整数、で表される単分子膜構造を電極表面に有することを特徴とする、請求項1記載の免疫センサ。
- 前記流路の材質が、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする、請求項1又は2記載の免疫センサ。
- 前記流路の表面が、アルブミンにより親水化されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の免疫センサ。
- 前記薄膜電極の材質は、金であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の免疫センサ。
- 前記血球分離部から遠心力の向きとは反対の方向に分岐した流路の、当該流路が遠心力の向きとは反対の向きに向いた流路部分にフィルターを設けたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の免疫センサ。
- 請求項1から6のいずれか1項記載の免疫センサを用い、該免疫センサを回転させて遠心力により送液し電気化学測定用薄膜電極で測定を行うことを特徴とする免疫センサの測定方法。
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