JP2011057606A - イミンの不斉シアノ化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】工業的に有利なイミンの不斉シアノ化方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)の光学活性アミノアルコール、チタンアルコキシド、及びアルコールの存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させる方法。
Figure 2011057606

(式中、R1〜R10は、それぞれ水素、または置換基を有していてもよい。)
【選択図】なし

Description

本発明は、イミンの不斉シアノ化方法に関する。
イミンを不斉シアノ化する方法に関しては、既に多くの報告例がある。例えば、以下の代表例を挙げることができる。
(1)光学活性チオウレア型の有機触媒を用いる方法(非特許文献1)。
(2)糖より誘導した光学活性配位子とガドリニウムアルコキシドより調製される触媒を用いる方法(非特許文献2)。
(3)光学活性アミノアルコールとチタンアルコキシドより調製される触媒を用いる方法(非特許文献3、4、5)。
(4)光学活性アミノアルコールとチタンアルコキシドの部分加水分解物より調製される触媒を用いる方法(特許文献1、2)。
(5)イミン化合物を基質とするルイス酸触媒反応の機構(非特許文献6)。
国際公開第2008/121076号パンフレット 国際公開第2009/041919号パンフレット
J. Am. Chem. Soc., 124巻, 10012頁(2002) J. Am. Chem. Soc., 125巻, 5634頁(2003) Tetrahedron Letters, 44(2003), 3805−3808 Tetrahedron, 60巻, 10559頁(2004) Tetrahedron, 65巻, 5849−5854頁(2009) J. Am. Chem. Soc., 121巻, No. 17, 4284−4285頁(1999)
(1)の方法では、イミンの不斉シアノ化により、対応する光学活性アミノニトリルを高い光学純度で得ることができる。しかし、例えば−78℃という極低温で反応を行う必要があるうえ、長い反応時間が必要であった。
(2)の方法では、反応温度が例えば−40℃程度と、反応温度の制限は若干緩和され、反応時間も短縮されている。しかしながら、光学活性配位子を糖より多くのステップを経て合成する必要があるうえ、希土類元素であるガドリニウムのアルコキシドを使用する必要があった。
(3)の方法では、より簡便に合成できる光学活性アミノアルコール、及び入手容易なチタンアルコキシドより触媒を調製できる点において、(2)の方法の問題点を解決している。しかしながら、なお0℃程度の反応温度を必要とし、反応時間が長いという問題点があった。
(4)の方法では、室温付近の反応で、高いエナンチオ選択性を示し、上記の問題点を解決している。しかしながら、触媒前駆体として、ある一定量の水をチタンアルコキシドと反応させ、その部分加水分解物を調製する必要があり、触媒調製工程が煩雑であるという問題点があった。
以上のように、工業的に望ましい条件を兼ね備えたイミンの不斉シアノ化方法は知られていない。
本発明の課題は、新規なイミンの不斉シアノ化方法を提供することである。当該方法により工業的に有利に光学活性アミノニトリルを製造することができる。
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を行い、光学活性アミノアルコール、チタンアルコキシド、及びアルコール類の存在下、イミンをシアノ化剤を用いて不斉シアノ化することにより、光学純度の高い光学活性アミノニトリルが得られることを見出し、さらに鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]下記一般式(1)で表される光学活性アミノアルコール、下記一般式(2)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(3)で表されるアルコールの存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させることを特徴とする、イミンの不斉シアノ化方法。
Figure 2011057606
(式中、R〜R10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、又はシロキシ基であり、これらは置換基を有していてもよく、R〜R10のうちの2個以上が、相互に連結して環を形成していてもよく、環は置換基を有していてもよい。)
Figure 2011057606
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示し、これらは置換基を有していてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキルアセトアセテート基、又はβ−ジケトナート基を示し、これらは置換基を有していてもよい。xは整数で、1から4の値をとる。)
Figure 2011057606
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基から選ばれた基であり、これらは置換基を有していてもよい。)
[2]下記一般式(1)で表される光学活性アミノアルコール、下記一般式(2)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(4)で表されるアルコールの存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させることを特徴とする、イミンの不斉シアノ化方法。
Figure 2011057606
(式中、R〜R10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、又はシロキシ基であり、これらは置換基を有していてもよく、R〜R10のうちの2個以上が、相互に連結して環を形成していてもよく、環は置換基を有していてもよい。)
Figure 2011057606
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示し、これらは置換基を有していてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキルアセトアセテート基、又はβ−ジケトナート基を示し、これらは置換基を有していてもよい。xは整数で、1から4の値をとる。)
Figure 2011057606
(式中、Arは、アリール基であり、置換基を有していてもよい。)
[3]反応温度が、室温である、[2]に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
[4]前記チタンアルコキシド化合物が、Ti(OEt)、Ti(OnPr)、Ti(OiPr)、Ti(OnBu)、又はTi(OiPr)(acac)であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
[5]前記イミンが、下記一般式(5)で表されることを特徴とする、[1]から[4]のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
Figure 2011057606
(式中、R11及びR12は、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、又は非芳香族複素環基であり、これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。またR11及びR12は異なる基である。R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シリル基、ホスフィンオキシド基、スルフィニル基、又はスルホキシ基であり、これらは置換基を有していてもよい。また、R13はR11又はR12と連結して環を形成することもできる。)
[6]前記シアノ化剤が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする、[1]から[5]のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
Figure 2011057606
(式中、R14〜R16は、独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。)
本発明により、光学純度が高い光学活性アミノニトリルを、従来の製造法と比べ、簡便に効率よく製造できる。光学活性アミノニトリルは、医薬品、農薬等の合成中間体、機能性材料、またはその他のファインケミカルズ等における合成原料として有用である。
以下、本発明について、詳細に説明する。
(1)光学活性アミノアルコール
本発明においては、以下の一般式(1)で表される光学活性アミノアルコールの存在下、反応を行う。
Figure 2011057606
一般式(1)中のR〜R10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基であり、これらは置換基を有していてもよく、R〜R10のうちの2個以上が、相互に連結して環を形成していてもよく、環は置換基を有していてもよい。
一般式(1)中において、RとRに結合する炭素原子が不斉炭素原子である場合を(i)タイプ、RとRに結合する炭素原子が不斉炭素原子である場合を(ii)タイプ、またはRとR10に結合する炭素原子が不斉炭素原子である場合を(iii)タイプ、と称する。
光学活性アミノアルコールにおける光学活性は、特に限定されないが、例えば(ii)タイプ、(iii)タイプが挙げられ((ii)または(iii)のいずれかの一方、もしくは(ii)および(iii)の両方が挙げられ)、特に(ii)タイプが好ましい。
〜R10のハロゲン原子は特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
〜R10のアルキル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
このような直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。このような分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
〜R10のアルケニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等が挙げられる。
〜R10のアルキニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、又は分岐状のいずれでもよい。具体例としては、エチニル基、プロパルギル等が挙げられる。
〜R10のアリール基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
〜R10の芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する分子数は好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10である。具体例としては、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
〜R10の非芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する分子数は好ましくは3〜20、より好ましくは3〜8である。具体例としては、ピロリジニル基、ピペリジル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
〜R10のアシル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、ホルミル基、アセチル等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基等のアリールカルボニル基が挙げられる。
〜R10のアルコキシカルボニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
〜R10のアリールオキシカルボニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは7〜20、より好ましくは7〜11である。具体例としては、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
〜R10のカルバモイル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
〜R10のアルコキシ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
〜R10のアリールオキシ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
〜R10のアルキルチオ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
〜R10のアリールチオ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
〜R10のアルキルアミノ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
〜R10のアリールアミノ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等が挙げられる。
〜R10のシリル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは3〜12である。具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられる。
〜R10のシロキシ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは3〜12である。具体例としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられる。
〜R10上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
上記光学活性アミノアルコールとしては、R及びRが水素原子、R〜R10が水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基のいずれか、の組み合わせであることが好ましく、R及びRが水素原子、R〜Rが水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれか、R〜R10が水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基のいずれか、の組み合わせであることがさらに好ましく、R〜R、R、R10が水素原子、R及びRのいずれか一方が水素原子、R及びRのいずれか一方が炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基のいずれか、の組み合わせであることが最も好ましい。最も好ましい上記光学活性アミノアルコールの具体的な例としては、以下に示す(S)−L−1〜(S)−L−10の配位子、及びその鏡像異性体が挙げられる。
Figure 2011057606
(2)チタンアルコキシド化合物
本発明においては、以下の一般式(2)で表されるチタンアルコキシド化合物を用いる。
Figure 2011057606
一般式(2)中のRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示し、これらは置換基を有していてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキルアセトアセテート基、又はβ−ジケトナート基を示し、これらは置換基を有していてもよい。xは整数で、1から4の値をとる。
のアルキル基、アルケニル基及びアリール基、の構造は、それぞれ前述の一般式(1)中のR〜R10のアルキル基、アルケニル基及びアリール基の構造と同様の構造とすることができる。
Yのハロゲン原子は特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。Yのアルキルアセトアセテート基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは5〜20、より好ましくは5〜9である。具体例としては、エチルアセトアセテート基が例として挙げられる。
Yのβ−ジケトナート基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは5〜20、より好ましくは5〜9である。具体例としては、アセチルアセトナート基、トリフルオロアセチルアセトナート基、ヘキサフルオロアセチルアセトナート基が例として挙げられる。
及びY上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
一般式(2)中のxは1以上4以下の整数である。xが4の場合は、Yの数は0となる。また、一般式(2)を基本単位として、2分子以上が会合したチタンアルコキシド化合物も、本発明に対して用いることができる。
上記チタン化合物として、Rは炭素数2以上8以下のアルキル基、Yは塩素原子又はアセチルアセトナート基、xは2以上4以下の整数の組み合わせが好ましく、Rは炭素数2以上4以下のアルキル基、Yはアセチルアセトナート基、xは2以上4以下の整数の組み合わせがより好ましい。このような好ましいチタン化合物の具体例としては、Ti(OEt)、Ti(OnPr)、Ti(OiPr)、Ti(OnBu)、又はTi(acac)(OiPr)が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いることもできるし、二種類以上を混合して使用することもできる。
(3)アルコール類
本発明においては、以下の一般式(3)又は(4)で表されるアルコール類を用いる。
Figure 2011057606
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基から選ばれた基であり、これらは置換基を有していてもよい。)
一般式(3)中のRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基から選ばれた基であり、これらは置換基を有していてもよい。Rのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基の構造は、前述の一般式(1)中のR〜R10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基の構造と同様の構造とすることができる。
上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
上記アルコール類として、Rが炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数6〜10のアリール基である一般式(3)のアルコールが好ましく、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、もしくはベンジル基である一般式(3)のアルコールがより好ましい。最も好ましい上記アルコール類の具体的な例としては、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールが挙げられる。これらのアルコール類は単独で用いることもできるし、二種類以上を混合して使用することもできる。
Figure 2011057606
一般式(4)中のArは、アリール基であり、これらは置換基を有していてもよい。
Arのアリール基の構造は、前述の一般式(1)中のR〜R10のアリール基の構造と同様の構造とすることができる。
Ar上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
上記アルコール類として、Arが炭素数6〜10のアリール基である一般式(4)のアルコールが好ましく、Arが2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジ−n−プロピルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−n−ブチルフェニル基、2,6−ジ−s−ブチルフェニル基、2,6−ジ−i−ブチルフェニル基、もしくは2,6−ジ−t−ブチルフェニル基である一般式(4)のアルコールがより好ましい。最も好ましい上記アルコール類の具体的な例としては、2,6−キシレノールが挙げられる。これらのアルコール類は単独で用いることもできるし、二種類以上を混合して使用することもできる。
(4)イミン
本発明においては、光学活性アミノニトリルの原料として、イミンを用いる。
本発明に係るイミンの構造は特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)で表すことができる。
Figure 2011057606
一般式(5)中のR11及びR12は、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、又は非芳香族複素環基であることが好ましく、水素原子、又はアリール基、及び芳香族複素環基等の芳香族基であることが特に好ましい。これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。またR11及びR12は異なる基であり、どちらか一方が水素原子であることが好ましい。
11及びR12のアルキル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。このような直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。このような分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
11及びR12のアルケニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等が挙げられる。
11及びR12のアルキニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、又は分岐状のいずれでもよい。具体例としては、エチニル基、プロパルギル等が挙げられる。
11及びR12のアリール基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
11及びR12の芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する原子数は好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10である。具体例としては、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
11及びR12の非芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する原子数は好ましくは3〜20、より好ましくは3〜8である。具体例としては、ピロリジニル基、ピペリジル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
11及びR12上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
一般式(5)中のR13の構造は特に限定されないが、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シリル基、ホスフィンオキシド基、スルフィニル基、又はスルホキシ基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシカルボニル基が特に好ましい。これらは置換基を有していてもよく、R11又はR12と連結して環を形成することもできる。
13のアルキル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。このような直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。このような分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
13のアルケニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等が挙げられる。
13のアルキニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8であり、直鎖状、又は分岐状のいずれでもよい。具体例としては、エチニル基、プロパルギル等が挙げられる。
13のアリール基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
13の芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する分子数は好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10である。具体例としては、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
13の非芳香族複素環基の構造は特に限定されないが、その一つの複素環を構成する分子数は好ましくは3〜20、より好ましくは3〜8である。具体例としては、ピロリジニル基、ピペリジル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
13のアシル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、ホルミル基、アセチル等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基等のアリールカルボニル基が挙げられる。
13のアルコキシカルボニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
13のシリル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは3〜12である。具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられる。
13のホスフィンオキシド基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜12である。具体例としては、ジフェニルホスフィンオキシド基等が挙げられる。
13のスルフィニル基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。具体例としては、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル等が挙げられる。
13のスルホキシ基の構造は特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。具体例としては、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル等が挙げられる。
13上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
このような好ましいR13の具体例としては、ベンジル基、ベンズヒドリル基、アリル基、4−メトキシフェニル基、又はt−ブトキシカルボニル基が挙げられる。
本発明のイミンとしては、具体的には以下の例が挙げられる。
Figure 2011057606
Figure 2011057606
Figure 2011057606
11〜R13は、キラル、又はアキラルな基である。R11〜R13がキラルな基の場合においては、上記カルボニル化合物の光学純度は特に限定されないが、80%ee以上が好ましく、95%ee以上がより好ましく、97%ee以上がさらに好ましい。カルボニル化合物の光学純度が高いと、生成する光学活性アルコールのジアステレオ比が高くなる点に優れる。
(5)シアノ化剤
本発明に係るシアノ化剤は、シアノ基を含有し、イミンとの反応でシアノ基を導入しうるものであれば、特に限定されないが、シアノ化水素、及び下記一般式(6)で表されるシアノ化剤が好ましく、これらの混合物も好ましく用いることができる。さらに、下記一般式(6)で表されるシアノ化剤がより好ましい。
Figure 2011057606
一般式(6)中のR14〜R16は、独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。
14〜R16のアルキル基の構造は、特に限定されないが、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
このような直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。このような分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
14〜R16のアリール基の構造は、特に限定されないが、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
14〜R16上の置換基の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基等が例として挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基等が好ましい。
シアノ化剤の具体例としては、トリメチルシリルシアニド、トリエチルシリルシアニド、トリ−i−プロピルシリルシアニド、ジメチル(t−ブチル)シリルシアニド、及びジメチルフェニルシリルシアニドなどが挙げられ、トリメチルシリルシアニドが特に好ましい。
(6)触媒調製
本発明においては、上記の光学活性アミノアルコール及び上記のチタンアルコキシドより、イミンの不斉シアノ化反応に対して有効な触媒を調製する。
光学活性アミノアルコールとチタンアルコキシド化合物は、好ましくは溶媒の存在下に混合され、触媒を含有する溶液が得られる。得られた溶液は触媒溶液として、本発明の不斉シアノ化反応に用いることができる。触媒溶液中では、光学活性アミノアルコールがチタンアルコキシドのチタンに配位し、光学活性チタン錯体が形成されているものと推測される。
チタンアルコキシド化合物中のチタン1モルに対して加える光学活性アミノアルコールの量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜3.0モル、より好ましくは0.2〜2.0モル、さらに好ましくは0.5〜1.5モルである(以下、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す)。
触媒溶液調製の際に用いられる溶媒については、特に限定されないが、非プロトン性の溶媒が好ましい。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、及びアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒が好ましい。この中でも特に、ハロゲン系溶媒、あるいは芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。さらにこれらは、単独または混合溶媒として使用することができる。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、チタン原子1ミリモルに対して、1〜5000ml、好ましくは10〜500ml程度である。このとき、反応温度は特に限定されないが、通常、室温程度、例えば15〜30℃で5分〜1時間程度攪拌することにより調製できる。
触媒溶液調製は、乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
以上のように調製された触媒溶液は、特段の精製操作を加えることなく、そのまま本発明のイミンの不斉シアノ化反応に使用することができる。
(7)シアノ化反応
本発明においては、上記の触媒とアルコールの存在下、上記イミンをシアノ化剤によって不斉シアノ化することにより、光学活性アミノニトリルが得られる。
たとえば、J. Am. Chem. Soc., 121巻, No. 17, 4284−4285頁(1999)のScheme1等には、イミン二重結合へのCNイオンの付加反応について基本的な反応機構が示されている。本発明のシアノ化反応機構に関しては、このような一般的なイミン化合物を基質とするルイス酸触媒反応の機構に従うものと推定される。
本発明において用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、イミン100モル%に対してチタン原子として好ましくは0.01〜30モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。
本発明において用いるアルコールの使用量は、特に限定されないが、シアノ化剤100モル%に対して、水酸基当量として好ましくは50〜200モル%、より好ましくは90〜150モル%である。
本発明の方法において用いるシアノ化剤の量は、特に限定されないが、イミン100モル%に対して好ましくは50〜300モル%、より好ましくは90モル%〜200モル%である。
本発明のシアノ化反応においては、溶媒を用いることが好ましい。上記の触媒溶液を調製する際に用いた溶媒と同じでもよいし、異なってもよいが、通常は同じ溶媒を用いることが好ましい。溶媒の種類は特に限定されないが、非プロトン性の溶媒が好ましい。具体的に好ましい例としては、上記の触媒溶液の調製時に用いることができる溶媒が挙げられる。さらにこれらは、単独または混合溶媒として使用することができる。上記の触媒溶液をそのままシアノ化反応の溶媒に用いることができる。また、上記のアルコール、イミン、及びシアノ化剤を、反応に用いる溶媒に溶解させて、溶液として反応系に添加することもできる。溶媒の総使用量は、基質のカルボニル化合物1ミリモルに対して0.1〜50mlが好ましく、より好ましくは0.2〜25ml程度である。
本発明において用いられる、触媒、アルコール、イミン、シアノ化剤及び溶媒の各成分を添加する順番については、特に限定されないが、例えば、上記の手順で調製した触媒溶液に、イミン、シアノ化剤、アルコール及び溶媒を順番に添加する。
反応温度は特に限定されないが、通常、−80℃〜溶媒の沸点の範囲であり、−20℃〜50℃の範囲がより好ましい。さらに好ましくは0℃〜40℃の範囲であり、最も好ましくは15℃〜35℃である。特に、アルコールとして、一般式(4)の化合物を加えた場合は、室温(15℃〜35℃)の反応温度が好ましい。反応時間は特に限定されないが、5分〜24時間の範囲が好ましく30分〜8時間の範囲がより好ましい。本発明の反応は、実施例に示すように、たとえば、室温(15℃〜35℃)で行うことができる。このとき、本発明の反応については、たとえば15分〜2時間の反応時間で行うことができる。
本発明の反応は、無攪拌で、又は攪拌しながら行うことができる。反応を再現性よく、均一に行う観点からは、攪拌しながら行うことが好ましい。反応溶液を攪拌する方法については、特に限定されない公知の方法を用いることができる。
本発明により得られた光学活性アミノニトリルは、公知の方法で精製し、単離することもできる。精製方法としては、例えば、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
本発明により得られた光学活性アミノニトリルは、公知の方法を用いて誘導体化できる。例えば、ニトリル基を公知の方法で加水分解し、カルボキシル基に変換することにより、α−アミノ酸に誘導することができる。この際、公知の方法で精製を行った後の単離された光学活性アミノニトリルを誘導体化してもよいし、未精製の光学活性アミノニトリルを含む混合液に該操作を加えて、誘導体化することもできる。
本発明の反応後、上記の光学活性アミノアルコールを、公知の方法で分離し、再利用することができる。分離方法としては、再結晶、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
このような本発明に係る光学活性アミノニトリルは、医薬品、農薬等の合成中間体、機能性材料、またはその他のファインケミカルズ等における合成原料として有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に於いて生成したアミノニトリルの同定は、標準物質としてTMSを含む重クロロホルム溶媒(メルク社製)中のH NMRスペクトル(ブルカー(Bruker)社製Bruker400を使用)を既報値と比較することにより行った。不斉シアノ化の転化率、不斉収率は、H NMRスペクトルと高速液体クロマトグラフィー(ウォーターズ(Waters)社製モデル2695)を用いて測定した。このとき、光学活性カラムとしてはCHIRALPAK OJ−H(ダイセル化学工業社製)を使用した。光学活性アミノニトリルの絶対立体配置は、高速液体クロマトグラフィーの保持時間について既報値を比較して決定した。
実施例中では、溶媒のトルエン(以下、「無水トルエン」という)は関東化学(KANTO CHEMICAL CO., INC.)社製を使用した。Ti(OnBu)、Ti(acac)(OiPr)、TiCl(OiPr)、TiCl(OiPr)、N−ベンジリデンベンジルアミン、n−ブタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2,6−ジメチルフェノール、以上の化合物はシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich Pte Ltd.)社製の試薬を精製せずに用いた。トリメチルシリルシアニドは、和光純薬(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)社製を蒸留精製して使用した。実施例中で使用した光学活性アミノアルコール(上記式(S)−L−8)はサリシルアルデヒド、(S)−t−ロイシノールから、公知の方法(非特許文献4に記載)に従い合成した。反応はすべて窒素雰囲気下で行なった。反応に使用した器具は、十分に乾燥したものを使用した。
(実施例1)
蓋付き試験管に、光学活性アミノアルコール(上記式(S)−L−8)2.3mg(0.010mmol)を量り取り、無水トルエン0.50mLを加えて調整した溶液に対し、Ti(OnBu)の無水トルエン溶液(0.050mol/L)0.20mL(0.010mmol)を加え、23℃で30分攪拌した。こうして得られた溶液に対しN−ベンジリデンベンジルアミン39mg(0.20mmol)、トリメチルシリルシアニド30mg(0.30mmol)、n−ブタノール15mg(0.20mmol)を23℃で順番に加えた。23℃で15分攪拌した後、原料の転化率、及び生成物の不斉収率の測定のために少量の反応溶液を採り、真空ポンプで溶媒、未反応のトリメチルシリルシアニドなどの低沸点化合物を除去し、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は99%で、生成物の不斉収率は87%であった。
(実施例2)
蓋付き試験管に、光学活性アミノアルコール(上記式(S)−L−8)2.3mg(0.010mmol)を量り取り、無水トルエン0.50mLに溶解させ、Ti(OnBu)の無水トルエン溶液(0.050mol/L)0.20mL(0.010mmol)を加え、23℃で30分攪拌した。得られた溶液を、2mLのメスフラスコに移し、無水トルエンを全体量が2mLになるまで加えた。こうして調整された溶液0.20mLを別の蓋付き試験管に量り取り、無水トルエン0.50mLを加え希釈し、N−ベンジリデンベンジルアミン39mg(0.20mmol)、トリメチルシリルシアニド30mg(0.30mmol)、n−ブタノール15mg(0.20mmol)を23℃で順番に加えた。
23℃で2時間攪拌した後、原料の転化率、及び生成物の不斉収率の測定のために少量の反応溶液を採り、真空ポンプで溶媒、未反応のトリメチルシリルシアニドなどの低沸点化合物を除去し、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は99%で、生成物の不斉収率は84%であった。
(実施例3)
2.3mgの光学活性アミノアルコール(上記式(S)−L−8)(0.010mmol)の代わりに、4.6mgの光学活性アミノアルコール(上記式 (S)−L−8)(0.020mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は73%で、生成物の不斉収率は86%であった。
(実施例4)
Ti(OnBu)の無水トルエン溶液の代わりに、TiCl(OiPr)の無水トルエン溶液(0.050mol/L)0.20mL(0.010mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は65%で、生成物の不斉収率は60%であった。
(実施例5)
Ti(OnBu)の無水トルエン溶液の代わりに、TiCl(OiPr)の無水トルエン溶液(0.050mol/L)0.20mL(0.010mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は65%で、生成物の不斉収率は60%であった。
(実施例6)
Ti(OnBu)の無水トルエン溶液の代わりに、Ti(acac)(OiPr)の無水トルエン溶液(0.050mol/L)0.20mL(0.010mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は99%で、生成物の不斉収率は88%であった。
(実施例7)
n−ブタノールの代わりに、n−プロパノール12mg(0.20mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は99%で、生成物の不斉収率は87%であった。
(実施例8)
n−ブタノールの代わりに、2,6−キシレノール24mg(0.20mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は77%で、生成物の不斉収率は90%であった。
(比較例)
n−ブタノールの代わりに、i−プロパノール12mg(0.20mmol)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行い、(S)体が過剰のN−ベンジルアミノ−2−フェニルアセトニトリルを得た。原料の転化率は49%に留まり、生成物の不斉収率は86%であった。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表される光学活性アミノアルコール、下記一般式(2)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(3)で表されるアルコールの存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させることを特徴とする、イミンの不斉シアノ化方法。
    Figure 2011057606
    (式中、R〜R10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、又はシロキシ基であり、これらは置換基を有していてもよく、R〜R10のうちの2個以上が、相互に連結して環を形成していてもよく、環は置換基を有していてもよい。)
    Figure 2011057606
    (式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示し、これらは置換基を有していてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキルアセトアセテート基、又はβ−ジケトナート基を示し、これらは置換基を有していてもよい。xは整数で、1から4の値をとる。)
    Figure 2011057606
    (式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基から選ばれた基であり、これらは置換基を有していてもよい。)
  2. 下記一般式(1)で表される光学活性アミノアルコール、下記一般式(2)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(4)で表されるアルコールの存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させることを特徴とする、イミンの不斉シアノ化方法。
    Figure 2011057606
    (式中、R〜R10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、又はシロキシ基であり、これらは置換基を有していてもよく、R〜R10のうちの2個以上が、相互に連結して環を形成していてもよく、環は置換基を有していてもよい。)
    Figure 2011057606
    (式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示し、これらは置換基を有していてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキルアセトアセテート基、又はβ−ジケトナート基を示し、これらは置換基を有していてもよい。xは整数で、1から4の値をとる。)
    Figure 2011057606
    (式中、Arは、アリール基であり、置換基を有していてもよい。)
  3. 反応温度が、室温である、請求項2に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
  4. 前記チタンアルコキシド化合物が、Ti(OEt)、Ti(OnPr)、Ti(OiPr)、Ti(OnBu)、又はTi(OiPr)(acac)であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
  5. 前記イミンが、下記一般式(5)で表されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
    Figure 2011057606
    (式中、R11及びR12は、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、又は非芳香族複素環基であり、これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。またR11及びR12は異なる基である。R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シリル基、ホスフィンオキシド基、スルフィニル基、又はスルホキシ基であり、これらは置換基を有していてもよい。また、R13はR11又はR12と連結して環を形成することもできる。)
  6. 前記シアノ化剤が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のイミンの不斉シアノ化方法。
    Figure 2011057606
    (式中、R14〜R16は、独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、これらは置換基を有していてもよく、これら二つの基が相互に連結して環を形成してもよい。)
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