JP2011056686A - 金属薄膜を有し、無機酸エステル化合物を含む後アンカー層を有する転写シート - Google Patents
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Abstract
【課題】転写シートの金属薄膜について、耐腐食性を向上させること。
【解決手段】基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、金属薄膜及び後アンカー層を有する転写層が形成されている転写シートであって、該後アンカー層が無機酸エステル化合物を含んで成る転写シート。
【選択図】図1
【解決手段】基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、金属薄膜及び後アンカー層を有する転写層が形成されている転写シートであって、該後アンカー層が無機酸エステル化合物を含んで成る転写シート。
【選択図】図1
Description
本発明は、基体シートに積層された樹脂層や図柄層を物品の表面に転写するために用いる転写シートに関し、特に金属薄膜を有する転写シートに関する。
転写シートを用いてプラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は装飾する方法は従来から知られている。転写シートは、支持体である基体シートの片面上に転写層が設けられた構成であり、この転写層が基体シートから物品の表面に転写される。物品の表面に転写された転写層は樹脂や図柄が層状に積層された積層体であり、物品表面に保護被覆や装飾被覆を形成する。
装飾の一種として物品の表面に金属光沢の外観を付与するために、従来から金属薄膜を有する転写シートが用いられている。
例えば、特許文献1には、スズやインジウムを微細な島状構造になるように蒸着した層を用いた、金属光沢と絶縁性を兼ね備えた転写シートが記載されている。金属薄膜はこのように少量の金属で金属光沢を実現することができるが、反面膜が薄く、蒸着した金属が変質し易い問題も有している。
特に、金属薄膜が微細な島状構造の蒸着層である場合、金属薄膜の比表面積は大きくなる。したがって、周囲から浸入した水分により金属薄膜の腐食の進行は促進されやすく、金属色が透明化するという大きな問題がある。
特許文献2には、支持体上に順次形成された金属薄膜層、金属薄膜に隣接した接着層及び保護層などを含む感熱記録媒体において、接着層に塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体を含有させることが記載されている。そのことにより、特許文献2の感熱記録媒体では、接着層の金属薄膜層に対する接着性が向上し、保護層が剥れ難く、削れ難くなっている。
しかし、塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体を単に金属薄膜を有する転写シートのアンカー層に添加しても、特に高湿度の環境下では、依然として金属の腐食及び透明化が発生する。
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、転写シートの金属薄膜について、高湿度の環境下における腐食及び透明化を抑制することにある。
本発明は、基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、金属薄膜及び後アンカー層を有する転写層が形成されている転写シートであって、
該後アンカー層が無機酸エステル化合物を含んで成る転写シートを提供する。
該後アンカー層が無機酸エステル化合物を含んで成る転写シートを提供する。
ある一形態においては、前記無機酸エステル化合物が、リン酸エステル化合物又は硫酸エステル化合物である。
ある一形態においては、前記無機酸エステル化合物がリン酸エステル化合物である。
ある一形態においては、前記リン酸エステル化合物が、リン酸エステルの単量体、二量体及びこれらの混合物からなる群から選択される。
ある一形態においては、前記リン酸エステルが、式
[式中、Rは独立して炭素数1〜50、好ましくは炭素数3〜40、更に好ましくは炭素数5〜30のアルキル基、フェニル基、ビニル基などの炭化水素基であり、nは1又は2である。]
で表される構造を有する。
で表される構造を有する。
ある一形態においては、前記リン酸エステルが、式
[式中、R1は独立して炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜25、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基、R2は独立して水素原子又はメチル基であり、nは1又は2である。]
で表される構造を有する。
で表される構造を有する。
ある一形態においては、前記無機酸エステル化合物が硫酸エステル化合物である。
ある一形態においては、前記硫酸エステル化合物が、式
[式中、Rは独立して炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜25、更に好ましくは炭素数10〜20のアルキル基、フェニル基、ビニル基などの炭化水素基であり、nは1又は2である。]
で表される構造を有する。
で表される構造を有する。
ある一形態においては、後アンカー層に含まれる無機酸エステル化合物の量が固形分を基準にして0.1〜20重量%である。
ある一形態においては、前記金属薄膜がスズ又はインジウムから成る絶縁性金属薄膜である。
本発明の転写シートは金属薄膜が耐腐食性に優れ、高湿度環境下でも光透過率の上昇が抑制される。
転写シート
図1は本発明の一実施形態である転写シートの構造を示す断面図である。基体シート1の片面に接して転写層2が設けられている。転写層2は基体シートの側から順に積層されたハードコート層3、図柄層4、前アンカー層5、金属薄膜6、後アンカー層7及び接着層8を有している。
図1は本発明の一実施形態である転写シートの構造を示す断面図である。基体シート1の片面に接して転写層2が設けられている。転写層2は基体シートの側から順に積層されたハードコート層3、図柄層4、前アンカー層5、金属薄膜6、後アンカー層7及び接着層8を有している。
転写層を構成する層のうち各樹脂層の形成は、特に断らない限り、従来と同様の方法によって行うことができる。従来の層形成方法の例には、層を構成する成分を含むインキ又は塗料を用いたグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
基体シート
基体シート1は、図柄層やハードコート層をシート上に支持する用途に従来から使用されるシート材料又はフィルム材料から構成される。フィルム材料は合成樹脂からなるシート材料をいう。合成樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
基体シート1は、図柄層やハードコート層をシート上に支持する用途に従来から使用されるシート材料又はフィルム材料から構成される。フィルム材料は合成樹脂からなるシート材料をいう。合成樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
また基体シートとしては、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート(各単層シートの材料組成は上記群から選択された合成樹脂を使用していれば同一であっても異なっていてもよい)、上記の合成樹脂を用いた共重合シートなどが挙げられる。
基体シートの厚みは、5〜500μmであることが好ましい。基体シートの厚みが5μm以上であると、被装飾物品に転写シートを固定する場合に、転写シートを金型に配置する時のハンドリング性をより十分に確保できる。また、基体シートの厚みが500μm以下であると、適度な剛性を得ることができハンドリング性をより十分に確保できるようになる。
転写層
転写層2は基体シートの片面に設けられて基体シートから被装飾物品の表面に転写される層をいう。転写層は、少なくとも基体シートの側から順に積層された前アンカー層5、金属薄膜6及び後アンカー層7を有する。また、転写層は、要すれば基体シート1と前アンカー層5との間に、離型層(非表示)、剥離層(非表示)、ハードコート層3や図柄層4、また後アンカー層7の露出表面に隣接して、追加のアンカー層(非表示)や接着層8を有してよい。
転写層2は基体シートの片面に設けられて基体シートから被装飾物品の表面に転写される層をいう。転写層は、少なくとも基体シートの側から順に積層された前アンカー層5、金属薄膜6及び後アンカー層7を有する。また、転写層は、要すれば基体シート1と前アンカー層5との間に、離型層(非表示)、剥離層(非表示)、ハードコート層3や図柄層4、また後アンカー層7の露出表面に隣接して、追加のアンカー層(非表示)や接着層8を有してよい。
前アンカー層5は、図柄層4(図柄層4が存在しない場合はハードコート層3)と金属箔膜6との密着性を向上させるために図柄層(又はハードコート層)と金属箔膜との間に配置される層である。
前アンカー層を形成するのに使用する樹脂には、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などがある。
金属薄膜6は転写層に金属光沢の外観を付与する金属層である。金属薄膜は転写層のシート面の全面に形成しても、一部分に形成してもよい。金属薄膜に使用する金属には、表現したい金属光沢色に応じてアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛など、これらの合金または化合物がある。
金属箔膜の厚みは、5nm〜100nmであることが良く、10nm〜80nmであると好ましい。金属蒸着層の厚みが10nm以上であると、十分な金属光沢感をより容易に得ることができるようになる。金属蒸着層の厚みが80nm以下であると、クラックが入りにくい。また、金属薄膜に電波透過性を持たせたい場合、より容易かつより確実に得ることができるようになる。
金属箔膜の構造としては、例えば、島状構造がある。島状構造とは、後述する真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などによる膜形成の初期段階における膜厚の薄い構造であって、分割した小領域に凝着し、多島海のような様相を示す構造をいう。このような様相を示すのは、薄膜物質の表面エネルギーによるものと考えられている。
ある一形態において、島状構造の金属薄膜は特許文献1などに記載されているような金属光沢と絶縁性とを兼ね備えたものである。絶縁性金属薄膜は、島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造をなすものが好ましい。絶縁性金属薄膜に使用する金属としては、スズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素、ゲルマニウム、又はこれらの合金からなる群から選ばれるものが使用できる。特に、絶縁性等の点から、スズ、又はインジウムが好ましい。
金属薄膜は従来と同様の方法で形成することができる。具体的な形成方法としては、真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などがある。
後アンカー層7は金属箔膜6を接着層8や被装飾物品に密着させる樹脂層である。後アンカー層7はシート面の全体に形成され、接着剤層8や被装飾物品に含まれる腐食成分から金属薄膜6を保護して耐腐食性を向上させる役割も果たす。
後アンカー層を形成するのに使用する樹脂は、前アンカー層に使用しうるものと同様である。例えば、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑ウレタン系樹脂、メタアクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ポリエチレン系樹脂、及び、塩素化ポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、柔軟性及び汎用性に優れたポリエステル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂を主体とするものが好ましい。
後アンカー層には無機酸エステル化合物が含まれる。そのことにより高湿度環境下でも金属薄膜の光透過率の経時的な上昇が抑制される。機構は明確でないが、無機酸エステル化合物は金属薄膜の表面に作用して耐食性皮膜を形成し、金属箔膜の腐食を抑制すると考えられる。
無機酸エステル化合物の中で好ましいものは、リン酸エステル化合物又は硫酸エステル化合物である。
リン酸エステル化合物には、上記式(1)で表される構造を有するリン酸エステルが含まれる。リン酸エステルの具体例としては、リン酸エチル、リン酸ブチル、ピロリン酸ブチル、リン酸ブトキシエチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸オレイル、リン酸テトラコシル、リン酸(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、リン酸ジブチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。リン酸エステル化合物は、上記リン酸エステルの単量体、二量体及びこれらの混合物、これらの塩であってもよい。
リン酸エステル化合物の中で特に好ましいものは、上記式(2)で表される構造を有するリン酸エステルである。これらの化合物は疎水性部分が大きいこと、適度な酸化力を有することから金属薄膜と樹脂間の結合を強固なものにすることができると考えられる。具体例としては、リン酸(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、これらの単量体、二量体及びこれらの混合物等が挙げられる。
硫酸エステル化合物には、上記式(3)で表される構造を有する硫酸エステルが含まれる。硫酸エステルの具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。硫酸エステル化合物は、上記硫酸エステルの単量体、二量体及びこれらの混合物、これらの塩であってもよい。
硫酸エステル化合物の中で特に好ましいものには、ラウレス硫酸ナトリウム、これらの単量体、二量体及びこれらの混合物等が挙げられる。
後アンカー層に含まれる無機酸エステル化合物の量は、固形分を基準にして0.1〜20重量%、好ましくは0.15〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%となる量である。この固形分重量比が0.1重量%未満であると高湿度環境下で金属薄膜の腐食及び透明化が発生し易くなり、20重量%を超えると無機酸エステルの有する酸化力によって腐食が促進されてしまうこととなる。
後アンカー層7は、例えば、インキ又は塗料を金属薄膜6の表面に展着させて形成する。インキ又は塗料を展着させる方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式;及びグラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター、コンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることが出来る。
後アンカー層7を形成するためのインキ又は塗料は、溶媒に溶解又は分散させた上記樹脂を含有している。後アンカー層に無機酸エステルを含有させるためには、このインキ又は塗料に無機酸エステルを適量添加すればよい。
後アンカー層と同様に、前アンカー層にも無機酸エステル化合物を含ませてもよい。その場合は、前アンカー層に含まれる無機酸エステル化合物の量は、固形分を基準にして0.1〜20重量%、好ましくは0.15〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%となる量である。
離型層は、基体シート1の剥離層からの剥離性を高めるために基体シート1と剥離層との間に配置される層である。離型層は、被装飾物品に転写シートを固定した後、基体シートとともに剥離層から剥離され、被装飾物品に固定された加飾層には残らない層である。
離型層の構成材料としては、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、フェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
剥離層は、離型層上に全面的または部分的に形成される層である。剥離層は、被装飾物品に転写シートを固定した後、基体シート1及び離型層を剥離した際に、離型層から剥離されて被装飾物品に固定された転写層の最外側層となる層である。
剥離層の構成材料としては、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及び、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
また、剥離層に硬度が要求される場合には(すなわち、剥離層をハードコート層とする場合には)、剥離層の構成材料としては、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、及び、熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
剥離層の厚みは、0.5〜50μmであることが好ましい。剥離層の厚みが0.5μm以上であると、十分な接着性をより確実に得ることができる。剥離層の厚みが50μm以下であると、被装飾物品に転写シートを固定した後に乾燥し易く好ましい。なお、剥離層は、着色したものでも、未着色のものであってもよい。
ハードコート層3は、必要に応じて、基体シート1と図柄層4(図柄層4が存在しない場合は前アンカー層5)との間に形成される樹脂層である。ハードコート層は、転写後、基体シートを被装飾物品から剥離したときに、装飾物の表面に配置され、転写層を保護するために一定以上の硬度を有している。ハードコート層の材質としては、シアノアクリレート系やウレタンアクリレートなどの電離放射線硬化性樹脂や、アクリル系やウレタン系などの熱硬化性樹脂が挙げられるが、特に限定されない。
図柄層4は、剥離層の表面上に形成され、文字や図柄を表現するための層である。図柄層は、文字や図柄を表現するために、着色剤と、バインダーとなる合成樹脂と、を少なくとも構成材料として含む着色インキを用いて形成される。
図柄層のバインダーとなる合成樹脂としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑ウレタン系樹脂、メタアクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ポリエチレン系樹脂、及び、塩素化ポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂であることが好ましい。
図柄層の着色インキに含まれる着色剤としては、顔料又は染料が挙げられる。顔料としては、(1)インジゴ、アリザリン、カーサミン、アントシアニン、フラボノイド、シコニンなどの植物色素、(2)アゾ、キサンテン、トリフェニルメタンなどの食用色素、(3)黄土、緑土などの天然無機顔料、(4)炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミニウムレーキ、マダーレーキ、コチニールレーキなどが好ましく挙げられる。
図柄層の厚みは、0.5μm〜50μmであることが好ましい。図柄層の厚みが0.5μm以上であると、十分な意匠性をより容易に得やすくなる。図柄層の厚みが50μm以下であると、被装飾物品に転写シートを固定した後に乾燥し易く好ましい。
接着層8は、例えば後アンカー層7の表面上に配置される。接着層は転写シートを被装飾物品に固定する際に、被装飾物品の表面に接着される層であり、被装飾物品に固定された後の転写層において最内部に配置されることになる層である。
接着層は、転写シートの後アンカー層の表面のうち被装飾物品に接着させたい部分に形成する。すなわち、後アンカー層の表面全体を被装飾物品に接着させたい場合に、後アンカー層の表面全体に接着層を形成する。また、後アンカー層の表面のうちの一部分を被装飾物品に接着させたい場合には、後アンカー層のうちの一部分に接着層を形成する。
接着層の構成材料としては、被装飾物品に対する十分な接着性を得ることができれば特に限定されない。接着層を被装飾物品に加熱圧着する場合には、接着層の構成材料としては、感熱性、感圧性を有する合成樹脂を適宜選択すればよい。
例えば、被装飾物品の表面部分の構成材料がポリアクリル系樹脂の場合には、接着層の構成材料としては、ポリアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、例えば、被装飾物品の表面部分の構成材料がポリフェニレンオキシド共重合体、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、接着層の構成材料としては、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを適宜選択して採用すればよい。
更に、例えば、被装飾物品の表面部分の構成材料がポリプロピレン樹脂の場合は、接着層の構成材料としては、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。
接着層の厚みは、0.5μm〜50μmであることが好ましい。接着層の厚みが0.5μm以上であると、十分な接着性をより容易かつ確実に得ることができるようになる。接着層の厚みが50μm以下であると、被装飾物品に転写シートを固定した後に乾燥し易く好ましい。
物品の装飾方法
本発明の転写シートを使用して熱ロール転写やインモールド成形などにより、物品を装飾することができる。例えば、熱ロール転写においては、転写シートの接着層側(基体シートの反対側)の面を被装飾物品の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、転写シートの基体シート側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、転写シートが被装飾物品の表面に接着する。次いで、冷却後に基体シートを剥離すると、転写層が被装飾物品の表面に転写されて、物品の表面が装飾される。
本発明の転写シートを使用して熱ロール転写やインモールド成形などにより、物品を装飾することができる。例えば、熱ロール転写においては、転写シートの接着層側(基体シートの反対側)の面を被装飾物品の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、転写シートの基体シート側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、転写シートが被装飾物品の表面に接着する。次いで、冷却後に基体シートを剥離すると、転写層が被装飾物品の表面に転写されて、物品の表面が装飾される。
また、インモールド成形においては、まず、成形用金型内に、基体シートが金型の内面に接するような向きに転写シートを送り込む。次いで、金型を閉じ、溶融樹脂が転写シートの接着層側(基体シートの反対側)の面に接するように、すなわち、転写シートが溶融樹脂と金型の内面に挟まれるように、溶融樹脂を金型内に充満させる。その結果、溶融樹脂は成形され、同時に転写シートは樹脂成形品の表面に接着される。樹脂成形品を冷却し、金型を開いて樹脂成形品を取り出す。最後に基体シートを剥離すると、転写層が樹脂成形品の表面に転写されて、樹脂成形品の表面が装飾される。
被装飾物品の材質は、従来から転写シートによって装飾されてきたもの、又は接着層の成分を工夫して転写層をその表面に接着させることができるものであれば特に限定されない。各種合成樹脂、金属、ガラス、木、紙でなる部材、これらの塗装物及び装飾物は、被装飾物品として用いられる。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」又は「%」で表される量は特に断りなき限り重量基準である。
実施例1
厚み38×10−3mm(38μm)の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基体シートとして用い、この基体シートの一方の面全面に、メタクリル酸メチル樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂との混合物を、厚み1×10−3mm(1μm)となるようにグラビア印刷法でコーティングして、剥離層を形成した。
厚み38×10−3mm(38μm)の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基体シートとして用い、この基体シートの一方の面全面に、メタクリル酸メチル樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂との混合物を、厚み1×10−3mm(1μm)となるようにグラビア印刷法でコーティングして、剥離層を形成した。
このようにして形成した剥離層の上全面に、アクリルポリオール樹脂とイソシアネート樹脂との混合物を、厚み3×10−3mm(3μm)となるようにグラビアコート法でコーティングして、前アンカー層を形成した。
前アンカー層の上全面に、真空蒸着法で厚み150×10−8cm(150オングストローム)のスズ蒸着層を形成した。
このようにして形成したスズ蒸着層の上に、リン酸(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートを0.3%(固形分)添加した塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂を、1×10−3mm(1μm)となるようにグラビア印刷法でコーティングし、後アンカー層を形成した。
後アンカー層の表面全体に、アクリル樹脂、厚み1×10−3mm(1μm)となるようにグラビア印刷法でコーティングし、接着層を形成した。
このようにして、耐湿性能に優れた本発明の転写シート(転写材)を得た。
実施例2
リン酸エステルの代わりに、ラウレス硫酸ナトリウムを0.5%使用すること以外は実施例1と同様にして、耐腐食性能に優れた転写シート(転写材)を得た。
リン酸エステルの代わりに、ラウレス硫酸ナトリウムを0.5%使用すること以外は実施例1と同様にして、耐腐食性能に優れた転写シート(転写材)を得た。
比較例1
後アンカー層にリン酸エステルを添加しないこと以外は上記実施例1と同様にして比較用転写シート(転写材)を得た。
後アンカー層にリン酸エステルを添加しないこと以外は上記実施例1と同様にして比較用転写シート(転写材)を得た。
評価試験
高温高湿試験前後の透過光測定
実施例及び比較例で得られた転写シートを用いて、透明アクリル板に転写を行った。この転写品の全光線透過率を測定し、その後60℃95%の高温高湿条件下に100h放置した。放置後、再度全光線透過率を測定し、試験前後の透過率の変動値で腐食の程度を比較した。なお、測定には日本電色工業(株)製のNDH−2000を用い、JIS K7361(ISO 13468)に準拠した条件を用いた。結果を表1に示す。
高温高湿試験前後の透過光測定
実施例及び比較例で得られた転写シートを用いて、透明アクリル板に転写を行った。この転写品の全光線透過率を測定し、その後60℃95%の高温高湿条件下に100h放置した。放置後、再度全光線透過率を測定し、試験前後の透過率の変動値で腐食の程度を比較した。なお、測定には日本電色工業(株)製のNDH−2000を用い、JIS K7361(ISO 13468)に準拠した条件を用いた。結果を表1に示す。
1…基体シート、
2…転写層、
3…ハードコート層、
4…図柄層、
5…前アンカー層、
6…金属薄膜、
7…後アンカー層、
8…接着層。
2…転写層、
3…ハードコート層、
4…図柄層、
5…前アンカー層、
6…金属薄膜、
7…後アンカー層、
8…接着層。
Claims (10)
- 基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、金属薄膜及び後アンカー層を有する転写層が形成されている転写シートであって、
該後アンカー層が無機酸エステル化合物を含んで成る転写シート。 - 前記無機酸エステル化合物が、リン酸エステル化合物又は硫酸エステル化合物である請求項1記載の転写シート。
- 前記無機酸エステル化合物がリン酸エステル化合物である請求項1記載の転写シート。
- 前記リン酸エステル化合物が、リン酸エステルの単量体、二量体及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項3記載の転写シート。
- 前記無機酸エステル化合物が硫酸エステル化合物である請求項1記載の転写シート。
- 後アンカー層に含まれる無機酸エステル化合物の量が固形分を基準にして0.3〜5重量%である請求項1〜8のいずれか記載の転写シート。
- 前記金属薄膜がスズ又はインジウムから成る絶縁性金属薄膜である請求項1〜9のいずれか記載の転写シート。
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JP2009206069A JP2011056686A (ja) | 2009-09-07 | 2009-09-07 | 金属薄膜を有し、無機酸エステル化合物を含む後アンカー層を有する転写シート |
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