JP2011054837A - 結晶シリコン系太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶シリコン基板を用いたヘテロ接合太陽電池において、光電変換効率に優れた結晶シリコン太陽電池を提供すること。
【解決手段】一導電型結晶シリコン基板を用い、前記基板の光入射面に他導電型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記他導電型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が、水素化鎖状シラン化合物、水素化環状シラン化合物および水素化かご状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に光照射して合成されたポリシラン化合物、並びにシクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有する液体状のシラン組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を熱処理および/または光処理する工程、を含む形成方法により形成されていることを特徴とする結晶シリコン太陽電池。
【選択図】図1
【解決手段】一導電型結晶シリコン基板を用い、前記基板の光入射面に他導電型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記他導電型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が、水素化鎖状シラン化合物、水素化環状シラン化合物および水素化かご状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に光照射して合成されたポリシラン化合物、並びにシクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有する液体状のシラン組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を熱処理および/または光処理する工程、を含む形成方法により形成されていることを特徴とする結晶シリコン太陽電池。
【選択図】図1
Description
本発明は、結晶シリコン基板表面にヘテロ接合を有する結晶シリコン太陽電池に関し、更に詳しくは光電変換効率に優れた結晶シリコン太陽電池に関するものである。
結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池は、光電変換効率が高く、既に太陽光発電システムとして広く一般に実用化されている。中でも結晶シリコンとはバンドギャップの異なる非晶質シリコン系薄膜を結晶表面へ製膜し、拡散電位を形成した結晶シリコン太陽電池はヘテロ接合太陽電池と呼ばれている。
さらに、中でも拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン表面の間に薄い真性の非晶質シリコン層を介在させる太陽電池は、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られており、n型単結晶シリコンを用いたものが実用化され、高い変換効率を実現している(例えば、非特許文献1参照)。結晶シリコン表面と導電型非晶質シリコン系薄膜の間に薄い真性な非晶質シリコン層を製膜することで、製膜による新たな欠陥準位の生成を低減しつつ、結晶の表面に存在する欠陥(主にシリコンの未結合手)を水素で終端化処理することができる。また、導電型非晶質シリコン系薄膜を製膜する際の、キャリア導入不純物の結晶シリコン表面への拡散を防止することもできる。
また太陽光の有効利用のため、結晶シリコン内に光を閉じ込めるために表面に微細な凹凸構造を持たせることも広く実用化しており、近年、結晶シリコン太陽電池のコスト低減の観点から薄い結晶シリコン基板を用いる検討が精力的に行われているが、その際にはこの凹凸構造による光閉じ込めはより重要な技術となる。
ところで、結晶シリコン基板上に形成される薄い真性の非晶質シリコン層は、緻密でかつ均一であることが求められるが、表面に微細な凹凸構造を有する結晶シリコン基板上に薄い真性の非晶質シリコン層を形成する際、広く一般的に形成方法として用いられるプラズマCVD法では凹凸のため均一性や緻密性に濃淡が生じてしまい、平坦な場合と比較して十分な拡散電位が得られないという問題がある。
近年、薄膜シリコン膜形成方法として、一般的な熱CVD法やプラズマCVD法ではなく、液体状のシリコン材料を塗布し焼成することで形成する検討が行われており、これら液体状のシリコン材料を用いた結晶シリコン太陽電池が開示されている(例えば特許文献1)。これら液体状のシリコン材料を用いることで、表面に微細な凹凸を有する場合でも緻密で均一な膜が形成できることが知られている。
しかしながら、これらの方法では制御できる膜厚は100nm程度が下限となり、ヘテロ接合太陽電池の薄い真性の非晶質シリコン層に用いられる数nmという極薄膜を形成することが困難であるという問題があり、これまで液体状シリコン材料はヘテロ接合太陽電池の形成法としては用いられてこなかった。
K. Kawamoto et.al, Technical Digest 12th Intern. PVSEC, Korea, 289−290 (2001)
本発明の目的は、結晶シリコン基板を用いたヘテロ接合太陽電池において、光電変換効率に優れた結晶シリコン太陽電池を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、結晶シリコン基板を用いたヘテロ接合太陽電池において、液体状シリコン材料を用いることで、高い変換効率が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、一導電型結晶シリコン基板を用い、前記基板の光入射面に他導電型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記他導電型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が、式SilH2l+2(ここでlは2〜8の整数である。)で表される水素化鎖状シラン化合物、式SimH2m(ここでmは3〜10の整数である。)で表される水素化環状シラン化合物、および式SinHn(ここでnは6〜10の整数である。)で表される水素化かご状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に光照射して合成されたポリシラン化合物、並びにシクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有する液体状のシラン組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を熱処理および/または光処理する工程を含む形成方法により形成されていることを特徴とする結晶シリコン太陽電池に関する。
また好ましくは、前記一導電型結晶シリコン基板の光入射面側に微細な凹凸を有することを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
また好ましくは、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が2nm以上10nm以下の厚みを有することを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
さらに好ましくは、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が非晶質シリコンからなることを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
本発明によれば、液体状のシラン組成物を用いることで、低コストでかつ均一にヘテロ接合太陽電池を形成することが可能となり、その均一性により高い開放短電圧が得られ変換効率を向上することができる。また表面に微細な凹凸を有する場合でも緻密で均一な膜が形成できより高い変換効率の向上が得られる。
以下において本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本願の各図において、厚さや長さなどの寸法関係については図面の明瞭化と簡略化のため適宜変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。また、各図において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表している。また本願において「結晶」は特に断りのない限り「単結晶」あるいは「多結晶」を表す。
本発明の結晶シリコン太陽電池1は、n型あるいはp型である一導電型の結晶シリコン基板2を用い、前記結晶シリコン基板2の光入射面に結晶シリコン基板2とは導電型が異なる逆導電型シリコン系薄膜層4を有し、前記結晶シリコン基板2と前記逆導電型シリコン系薄膜層4の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層3を備え、前記結晶シリコン基板2の裏面に結晶シリコン基板2と同じ導電型の順導電型シリコン系薄膜層7を有し、前記結晶シリコン基板2と前記順導電型シリコン系薄膜層7の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層6を備えることが好ましい。
一般に、結晶シリコン基板2へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子正孔対を効率的に分離回収することができる。よって入射側のヘテロ接合は逆接合とすることが好ましい。一方で、ホールと電子を比較した場合、有効質量及び散乱断面積の小さい電子の方が一般的に移動度は大きい。
以上の観点から、使用する半導体基板は、n型結晶シリコン基板であることが好ましいが、p型シリコン基板も使用可能である。
本発明の基本的な構成例としては、結晶シリコン太陽電池1は、例えば、n型結晶シリコン基板2に光入射面i型非晶質シリコン系薄膜層3/p型シリコン系薄膜層4/光入射面透明導電膜層5となり、光入射側がp層である。また裏面側は、n型結晶シリコン基板2に裏面i型非晶質シリコン系薄膜層6/n型シリコン系薄膜層7/裏面透明導電膜層8とすることが好ましい。
前記のn型結晶シリコン基板2の厚みは、光吸収と基板ハンドリングの観点から50μm以上500μm以下であることが好ましく、更に好ましくは100μm以上300μm以下である。
つぎに、前記の光入射面透明導電膜層5及び裏面透明導電膜層8(以下、まとめて透明導電膜層5および8ともいう)については、例えばITO(酸化インジウム・スズ)、SnO2あるいは酸化亜鉛(以下、ZnOともいう)等の導電性金属酸化物から形成されることが好ましく、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ、蒸着、電着、塗布等の方法を用いて形成されることが好ましい。特に、導電性の観点から、酸化亜鉛層の上に酸化インジウムといった別種の導電性金属酸化物層を製膜することが好ましい。この場合、酸化亜鉛層の膜厚は、光学的に光を効果的に入射させる観点から、10nm以上であることが好ましく、酸化亜鉛層を含む導電性金属酸化物層の膜厚は60〜140nmであることが好ましく、80〜120nmであることが更に好ましい。
前記のスパッタ蒸着を用いる場合、酸化亜鉛のドーパントはAlやGa、In、Siといったものが挙げられるが、Alをドーパントとして1〜5重量%添加したものが好ましく用いられる。製膜時のスパッタガスはArであることが好ましい。また、透明導電膜層5および8上に、公知の方法にて集電極9および10を形成することが好ましい。
熱CVD法によって製膜された酸化亜鉛は結晶粒が大きく、表面に微細なテクスチャを有する傾向がある。このテクスチャは、反射防止構造や光散乱構造として機能するため、光学的に好ましい。この場合のドーパントとしては、例えばBが挙げられる。また、熱CVD法による酸化亜鉛層を用いる場合、n型シリコン層へのB原子の拡散を抑えるために、B添加量を製膜初期には無くすか、減らしておくと好ましい。また、熱CVD法による製膜前に、結晶性の低いInやSiといったドーパントを含む酸化亜鉛層を製膜しておいても良い。
裏面透明導電膜層8に反射層を形成すると更に好ましい(図1では図示せず)。反射層はAgやAlといった金属層でも良く、MgOやAl2O3、白色亜鉛といった金属酸化物からなる白色高反射材料でも良い。但し、セラミック系材料は絶縁体であるため透明導電膜層上に集電極を形成した後に製膜することが好ましい。
n型結晶シリコン基板2が単結晶シリコン基板の場合の入射面は(100)面であるように切り出されていることが好ましい。これは、エッチングする場合に(100)面と(111)面のエッチングレートが異なる異方性エッチングによって容易にテクスチャ構造を形成できるためである。一般的にテクスチャサイズはエッチングが進行すればするほど大きくなる。例えば、エッチング時間を長くするとテクスチャサイズは大きくなるが、反応速度が大きくなるようにエッチャント濃度、供給速度の増加や液温の上昇等によってもテクスチャサイズを大きくすることができる。また、エッチングが開始される表面状態によってもエッチング速度が異なるため、ラビング等の工程を実施した表面とそうでない表面とではテクスチャサイズが異なる。また、基板表面に形成されたテクスチャの鋭い谷部では、薄膜を製膜する際の圧縮応力によって、欠陥が発生しやすいため、テクスチャ形成エッチング後に形成したテクスチャの谷や山の形状を緩和する工程として、(100)面と(111)面の選択性の低い等方性エッチングを行うことが好ましい。またn型結晶シリコン基板2が多結晶シリコン基板の場合も基板表面にテクスチャを持つように加工することが好ましい。
前記基板表面に形成されるテクスチャ構造は、その高低差が好ましくは20〜400nm、より好ましくは100〜400nmであり、該凸部の頂点同士の距離は、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜600nmであり、かつ凹凸の表面面積比は、好ましくは20%〜90%、より好ましくは30%〜80%の範囲にあるものがよい。なお、ここでテクスチャ構造の高低差や凸部の頂点同士の距離は、例えば原子間力顕微鏡により測定することが可能である。また、凹凸の表面面積比とは、具体的には平坦な表面に対する凹凸表面の表面積の比であり、この値が大きいほど、より微細な凹凸をより多く含むという事が言える。表面面積比は例えば原子間力顕微鏡により測定することが可能である。
テクスチャ形成後、n型結晶シリコン基板2の表面に実質的に真正な光入射面i型シリコン系薄膜層3を製膜する。製膜方法としては、液体状シリコン材料を用いることを特徴とする。ここで、液体状シリコン材料とは、式SilH2l+2(ここでlは2〜8の整数である。)で表される水素化鎖状シラン化合物、式SimH2m(ここでmは3〜10の整数である。)で表される水素化環状シラン化合物、および式SinHn(ここでnは6〜10の整数である。)で表される水素化かご状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に光照射して合成されたポリシラン化合物、並びにシクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有することを特徴とする液体状のシラン組成物を意味するものである。
光照射する際には、可視光線、紫外線、遠紫外線の他、低圧あるいは高圧の水銀ランプ、重水素ランプあるいはアルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光の他、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源としては、好ましくは10〜5,000Wの出力のものが用いられる。通常100〜1,000Wで十分である。これらの光源の波長は、原料のシラン化合物が多少でも吸収するものであれば特に限定されないが、170nm〜600nmが好ましい。光照射処理を行う際の温度は、好ましくは室温〜300℃以下である。処理時間は好ましくは0.1〜30分程度である。前記光照射処理は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記光照射処理は、適当な溶媒の存在下に行ってもよい。本発明で使用できる溶媒は、例えば、通常大気圧下での沸点が30〜350℃のものである。使用する溶媒の沸点が30℃より低い場合には、コーティングで塗膜を形成する場合に溶媒が先に蒸発してしまい良好な塗膜を形成することが困難となる場合がある。一方、上記沸点が350℃を越える場合には溶媒の散逸が遅くなり塗布膜中に溶媒が残留し易くなり、後工程の熱および/または光処理後にも良質のシリコン膜が得られ難い場合がある。これら溶媒としてはシラン化合物成分を析出させたり、相分離させたり、かつこれらと反応しないものであれば特に限定されず、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワランなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;およびプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、クロロホルムなどの極性溶媒を挙げることができる。これらのうち、該溶液の安定性の点で炭化水素系溶媒が好ましい。これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
上記のような液体状シリコン材料を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を熱処理および/または光処理する工程を含む形成方法により実質的に真正な光入射面i型シリコン系薄膜層3は形成されうる。このような液体状材料を用いることで、特に表面に微細な凹凸を有する表面上に膜を形成する際、形成された膜が緻密で均一性に優れた高品位のものとなる利点がある。
ところで前記実質的に真正な光入射面i型シリコン系薄膜層3の膜厚は、2nm以上10nm以下であることが好ましく、更に好ましくは3nm以上5nm未満であるが、一般的な塗膜を形成する方法である、ディップコーティング、スピンコーティングあるいはスプレーコーティングなどでは、通常100nm以下の膜厚を形成することは困難である。そこで本発明では、例えば、5000rpmから20000rpmという超高回転でスピンコーティングを行う超高回転スピンコーティング法や、2気圧から5気圧という高圧下でスピンコーティングを行う高圧スピンコーティング法などの特殊スピンコーティング法により、2nm以上10nm以下という極薄塗膜を形成することが出来る。ただし、形成方法はこれらに限られるものではない。
また前記実質的に真正な光入射面i型シリコン系薄膜層3の膜厚は、非晶質シリコンであることが好ましく、また水素を含む水素化非晶質シリコンであることがより好ましい。そのため、塗膜の加熱処理は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下あるいは水素などの還元雰囲気下で行われることが好ましく、処理温度は結晶化をせず溶媒由来の炭素を除去できる、200℃以上500℃以下が好ましく、更に好ましくは250℃以上400℃以下である。
裏面i型非晶質シリコン系薄膜層6は光入射面i型シリコン系薄膜層3と同様の形成方法により、同様に形成されることが好ましいが、次に述べるプラズマCVD法も用いることが出来る。
p型シリコン系薄膜層4およびn型シリコン系薄膜層7の製膜方法は、ドーパント不純物元素の光入射面i型シリコン系薄膜層3あるいは裏面i型非晶質シリコン系薄膜層6への拡散を低温製膜により抑制可能である、プラズマCVD法が好ましい。シリコン系薄膜の形成条件としては、例えば、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.003〜0.5W/cm2が好ましく用いられる。シリコン系薄膜形成に使用する原料ガスとしては、例えばSiH4、Si2H6等のシリコン含有ガス、またはそれらのガスとH2を混合したものが好ましく用いられる。シリコン系薄膜におけるp型またはn型層を形成するためのドーパントガスとしては、例えば、B2H6またはPH3等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH4やH2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。またCH4、CO2、NH3、GeH4等といった異種元素を含むガスを添加することで、合金化しエネルギーギャップを変更することもできる。
透明導電膜層5および8上には集電極9および10が形成される。集電極は、インクジェット、スクリーン印刷、導線接着、スプレー等の公知技術によって作製できるが、生産性の観点からスクリーン印刷がより好ましい。スクリーン印刷は金属粒子と樹脂バインダーからなる導電ペーストをスクリーン印刷によって印刷し、集電極を形成する工程が好ましく用いられる。
集電極に用いられる導電ペーストの固化も兼ねてセルのアニールが行われうる。アニールによって、透明導電膜層の透過率/抵抗率比の向上、接触抵抗や界面準位の低減といった各界面特性の向上なども得られる。アニール温度としては実質的に真正なシリコン系薄膜の製膜温度から100℃前後の高温度領域が好ましい。アニール温度が高すぎると、導電型シリコン系薄膜層から真性シリコン系薄膜層へのドーパントの拡散、透明導電膜層からシリコン領域への異種元素の拡散による不純物準位の形成、実質的に真正なシリコン中での欠陥準位の形成などによって、特性が悪化する場合がある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明に従う実施例1の結晶シリコン太陽電池を示す模式的断面図である。本実施例の結晶シリコン太陽電池はヘテロ接合太陽電池であり、n型単結晶シリコン基板2の両面にそれぞれテクスチャを備えている。n型単結晶シリコン基板2の光入射面にはi型非晶質シリコン層3/p型非晶質シリコン層4/酸化インジウム層5が製膜されている。酸化インジウム層5の上には集電極9が形成されている。一方、n型単結晶シリコン基板2の裏面にはi型非晶質シリコン層6/n型非晶質シリコン層7/酸化亜鉛層8が製膜されている。酸化亜鉛層8の上には集電極10が形成されている。
図1は、本発明に従う実施例1の結晶シリコン太陽電池を示す模式的断面図である。本実施例の結晶シリコン太陽電池はヘテロ接合太陽電池であり、n型単結晶シリコン基板2の両面にそれぞれテクスチャを備えている。n型単結晶シリコン基板2の光入射面にはi型非晶質シリコン層3/p型非晶質シリコン層4/酸化インジウム層5が製膜されている。酸化インジウム層5の上には集電極9が形成されている。一方、n型単結晶シリコン基板2の裏面にはi型非晶質シリコン層6/n型非晶質シリコン層7/酸化亜鉛層8が製膜されている。酸化亜鉛層8の上には集電極10が形成されている。
図1に示す実施例1の結晶シリコン太陽電池1を以下のようにして製造した。
入射面の面方位が(100)で、厚みが150μmのn型単結晶シリコン基板をアセトン中で洗浄した後、2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜を除去し、超純水によるリンスを2回行った。次に70℃に保持した5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、基板表面をエッチングすることでテクスチャを形成した。その後に超純水によるリンスを2回行った。AFM(Pacific Nanotechnology社のNano−Rシステム)によるn型単結晶シリコン基板2の表面観察を行ったところ、基板表面はエッチングが最も進行しており(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。電子顕微鏡観察の結果、テクスチャの凹凸の高低差が200〜400nmであり、該凸部の頂点同士の距離が200〜600nmであった。また原子間力顕微鏡観察により、凹凸の表面面積比が65%であった。
液体状シリコン材料は下記のようにして得られた。シクロペンタシラン10gをアルゴン雰囲気下、100mLのフラスコに加え、攪拌しながら500Wの高圧水銀灯を30分間照射し、得られた水素化鎖状シラン化合物からなる白色固体に更にシクロペンタシランを100g加えたところ、無色透明の溶液である液体状シリコン材料が得られた。
エッチングが終了したn型単結晶シリコン基板2を高圧スピンコーティング装置に導入し、3気圧、5000rpmにて前記液体状シリコン材料を光入射面に塗布し、窒素雰囲気下で300℃、30分加熱することでi型非晶質シリコン層3を3nm製膜した。本実験において製膜した薄膜の膜厚は、液体状シリコン材料から形成されるものは単結晶シリコン基板上で、プラズマCVD法により形成されるものはガラス基板上に同条件にて製膜した場合の膜厚を分光エリプソメトリー(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)のVASE)にて測定し、製膜速度を求め、同じ製膜速度にて製膜されていると仮定して算出した。i型非晶質シリコン層3の上にp型非晶質シリコン層4を4nm製膜した。p型非晶質シリコン層4の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/B2H6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm-2であった。なお、本実験でいうB2H6ガスは、B2H6濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。
次に裏面側にi型非晶質シリコン層6を6nm製膜した。i型非晶質シリコン層6の製膜条件は、高圧スピンコーティングの回転数が4000rpmであること以外、i型非晶質シリコン層3の製膜条件と同様である。i型非晶質シリコン層6上にn型非晶質シリコン層7を4nm製膜した。n型非晶質シリコン層7の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/PH3流量比が1/2、投入パワー密度が0.01W/cm-2であった。なお、本実験でいうPH3ガスは、PH3濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。
次に裏面のn型非晶質シリコン層7上に、スパッタリング法により酸化亜鉛層8を100nm製膜した。スパッタリングターゲットはAl2O3をZnOへ2重量%添加したものを用いた。p型非晶質シリコン層4上に酸化インジウム層5をスパッタリング法によって100nm製膜した。スパッタリングターゲットはIn2O3へSnをSnO2に換算して10重量%添加したものを用いた。最後に、これら透明導電膜層5および8上に、銀ペーストをスクリーン印刷し、櫛形電極を形成し、集電極9および10とした。
(比較例1)
比較例1においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例1と異なっていた。
比較例1においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(実施例2)
実施例2においては、n型単結晶シリコン基板2の表面のテクスチャを形成せず、平坦なまま用いた点においてのみ実施例1と異なっていた。
実施例2においては、n型単結晶シリコン基板2の表面のテクスチャを形成せず、平坦なまま用いた点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例2)
比較例2においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例2と異なっていた。
比較例2においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例2と異なっていた。
(実施例3)
実施例3においては、i型非晶質シリコン層3を15nm形成した点においてのみ実施例1と異なっていた。
実施例3においては、i型非晶質シリコン層3を15nm形成した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例3)
比較例3においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例3と異なっていた。
比較例3においては、i型非晶質シリコン層3および6を、プラズマCVD法を用いて形成した点においてのみ実施例3と異なっていた。
上記実施例及び比較例の太陽電池セルの光電変換特性を、ソーラーシミュレータを用いて評価した。太陽電池モジュールの開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、曲線因子(F.F.)、変換効率を評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1はi型非晶質シリコン層3の形成に液体状シリコン材料を用いたことにより、比較例1のプラズマCVD法を用いたものより、高いVocとF.F.を得ており、これはテクスチャを有するn型単結晶シリコン基板2に対してより均一に緻密な膜を形成できたためと思われる。
実施例2は実施例1と比べて、テクスチャを持たないため、光閉じ込め効果が弱くJscが大きく低下しているが、テクスチャが無いためにi型非晶質シリコン層3の均一性が若干向上し、VocとF.F.が僅かながら向上している。実施例2は比較例2よりもVocとF.F.が高く変換効率が高い。これは表面にテクスチャをもたない場合でも、プラズマによるダメージなどが実施例2では液体状シリコン材料を用いることで排除できるためと考えられる。
実施例3は実施例1と比べて、i型非晶質シリコン層3の膜厚が厚いため、直列抵抗が大きくなり、そのためF.F.の低下が見られた。しかしながら実施例3はi型非晶質シリコン層3の形成に液体状シリコン材料を用いたことにより、比較例3のプラズマCVD法を用いたものより、高いVocとF.F.を得ており、これはテクスチャを有するn型単結晶シリコン基板2に対してより均一に緻密な膜を形成できたためと思われる。更に、比較例3は比較例1と比べてもi型非晶質シリコン層3の膜厚が厚いため、直列抵抗が大きくなり、そのためF.F.の低下が見られた。これらのことは、i型非晶質シリコン層3は実施例1のように更に薄く制御された方が好ましい結果を示している。
1.結晶シリコン太陽電池
2.一導電型結晶シリコン基板(n型単結晶シリコン基板)
3.光入射面:実質的に真正なシリコン系薄膜層(i型非晶質シリコン層)
4.逆導電型シリコン系薄膜層(p型非晶質シリコン層)
5.光入射面透明導電膜層(酸化インジウム層)
6.裏面:実質的に真正なシリコン系薄膜層(i型非晶質シリコン層)
7.順導電型シリコン系薄膜層(n型非晶質シリコン層)
8.裏面透明導電膜層(酸化亜鉛層)
9.集電極
10.集電極
2.一導電型結晶シリコン基板(n型単結晶シリコン基板)
3.光入射面:実質的に真正なシリコン系薄膜層(i型非晶質シリコン層)
4.逆導電型シリコン系薄膜層(p型非晶質シリコン層)
5.光入射面透明導電膜層(酸化インジウム層)
6.裏面:実質的に真正なシリコン系薄膜層(i型非晶質シリコン層)
7.順導電型シリコン系薄膜層(n型非晶質シリコン層)
8.裏面透明導電膜層(酸化亜鉛層)
9.集電極
10.集電極
Claims (4)
- 一導電型結晶シリコン基板を用い、前記基板の光入射面に他導電型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記他導電型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、
前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が、式SilH2l+2(ここでlは2〜8の整数である。)で表される水素化鎖状シラン化合物、式SimH2m(ここでmは3〜10の整数である。)で表される水素化環状シラン化合物、および式SinHn(ここでnは6〜10の整数である。)で表される水素化かご状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に光照射して合成されたポリシラン化合物、並びにシクロペンタシラン、シクロヘキサシランおよびシリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有する液体状のシラン組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を熱処理および/または光処理する工程、を含む形成方法により形成されていることを特徴とする結晶シリコン太陽電池。 - 前記一導電型結晶シリコン基板の光入射面側に微細な凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載の結晶シリコン太陽電池。
- 前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が2nm以上10nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1または2に記載の結晶シリコン太陽電池。
- 前記実質的に真正なシリコン系薄膜層が非晶質シリコンからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の結晶シリコン太陽電池。
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-
2009
- 2009-09-03 JP JP2009203867A patent/JP2011054837A/ja active Pending
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