JP2011051562A - 操舵制御装置及び操舵制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】操舵制御装置は、転舵輪11L,11Rの目標転舵角と実転舵角との差分を基に、トルク指令値を算出するトルク指令値演算部61と、トルク指令値を基に、駆動電流値を算出する転舵指令電流演算部62と、駆動電流値を、第1及び第2転舵モータ32,43それぞれを駆動する第1及び第2モータ駆動電流値に配分する転舵電流配分演算部63と、第1モータ駆動電流値を基に第1転舵モータ32を駆動制御すると共に、第2モータ駆動電流値を基に第2転舵モータ43を駆動制御する第1及び第2転舵モータECU60,70と、車速が小さいほど、第1モータ駆動電流値を小さく補正すると共に第2モータ駆動電流値を大きく補正するゲイン設定部64、乗算器65,66とを備える。
【選択図】図2
Description
特許文献1に開示の操舵制御装置は、二つのラック・アンド・ピニオン機構(以下、ラック・ピニオン機構と記載する。)を備えた、いわゆるデュアルピニオンタイプの電動式パワーステアリング装置である。すなわち、この装置は、ラックバーのラック歯にピニオン歯を介して噛合する第1及び第2のピニオン軸を有する。そして、この装置は、ステアリングホイールに連係する第1ピニオン軸にトルクを付与する第1電動モータを接続し、第2ピニオン軸に第2電動モータを接続している。
かかるラックバーの捩れにより、一方のラックピニオン機構の噛み合い位置が他方のラック・ピニオン機構にとって適正な噛み合い位置とはならなくなってしまう。この結果、他方のラックピニオン機構において操舵補助力の伝達ロスが生じてしまうといった問題があった。
本発明の課題は、他方のラック・ピニオン機構において操舵補助力の伝達ロスを低減することである。
そして、本発明は、車速が小さいほど、第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に第2モータ出力トルクを大きく補正する。
また、発明によれば、車速が小さいときには、第1操舵機構の駆動力を抑えつつ、第2操舵機構の駆動力を大きくすることができ、車速が大きいときには、第2操舵機構の駆動力を抑えつつ、第1操舵機構の駆動力を大きくすることができる。
これにより、本発明によれば、ギヤ結合の構成により第2操舵機構に比して高い転舵応答性を有する第1操舵機構の駆動力と、油圧により駆動する構成のために耐久性が高い第2操舵機構の駆動力との比率を変化させることができる。
したがって、本発明によれば、車速が大きく高い応答性が求められる際には高い転舵応答性を確保するとともに、耐久性の低下抑制を図ることができる。
(構成)
第1の実施形態は、本発明を適用した操舵制御装置である。
図1は、操舵制御装置の構成を示す。図1に示すように、本実施形態は、車両のラックピニオン式ステアリング装置に操舵制御装置を適用したものである。この操舵制御装置は、ステアリングホイール1と転舵輪11L,11Rとが機械的に切り離され、ステアリングホイール1の操舵角に基づいて転舵輪11L,11Rが転舵される、いわゆるステアバイワイヤ式のステアリング装置でもある。
操舵角センサ3は、ステアリング軸2の回転角を検出することによりステアリングホイール1の操舵角を検出する。トルクセンサ4は、ステアリング軸2に入力されるトルクを検出する。操舵角センサ3及びトルクセンサ4は、検出した操舵角及び操舵トルクを反力モータECU50に出力する。
クラッチ6は、フェールセーフ手段としての動力断続機構である。クラッチ6は、ステアリング軸2とピニオン軸(第2操舵軸)7とを機械的に断続可能にする。クラッチ6は、第1操舵機構30又は第2操舵機構40の少なくとも一方が正常動作しない場合にステアリング軸2とピニオン軸7とを機械的に連結する。
なお、クラッチ6は第1操舵機構30又は第2操舵機構40の両方が正常に作動している通常時には解放して(ステアリング軸2とピニオン軸13との機械的接続を切断して)いるため、以下ではクラッチ6は解放されているものとして説明する。
つまり、ピニオン軸13の回転角に対する転舵輪11L,11Rの転舵実角は、ラックバー12のラック歯12aとピニオン歯13aとのギヤ比によって一意に決まる。このことから、ピニオン軸13の回転角は転舵実角であり、転舵角センサ14はピニオン軸13の回転角(すなわち転舵実角)を検出して第1転舵モータECU60に出力する。
第1操舵機構30は、ピニオン軸13に対して回転力を付与して、左右前輪11L,11Rを転舵駆動する。
減速部31は、このような構成により、限られたスペースの中で十分な減速比を得ることができる。また、ウォームホイール35の歯部を樹脂製とすることで、ウォームシャフト36との噛み合いによって生じうるギヤノイズを抑制することもできる。
また、この車両では、ラックバー12に第2操舵機構40を連係している。第2操舵機構40は、操舵角センサ3の検出値を基に、ラックバー12に推進力(軸方向に移動する力)を発生させ、ラックバー12を軸方向に駆動させることによって左右前輪11L,11Rを転舵駆動する。
パワーシリンダ41は、ラックバー12の外周側に該ラックバー12を囲繞するように設けた円筒状のシリンダチューブ41aと、ラックバー12の外周に嵌着させたピストン41bとを有する。パワーシリンダ41は、ピストン41bによってシリンダチューブ41a内の空間を二室に隔成して、一対の圧力室P1,P2を形成している。パワーシリンダ41は、一対の圧力室P1,P2に発生した差圧に基づきラックバー12に推進力を付与する。
このような構成の第2操舵機構40は、第2転舵モータ43の駆動により、オイルポンプ42が駆動する。ここで、後述の第2転舵モータECU70が第2転舵モータ43の回転方向及び回転数を制御する。
また、各配管44a,44bの間には、各圧力室P1,P2同士を直接的に連通させる連通路44cが設けてある。連通路44cの途中には、いわゆるフェールセーフバルブ46が設けてある。フェールセーフバルブ46は、例えば、第2転舵モータECU70や第2転舵モータ43が正常動作しない場合等の緊急時に開弁して、両圧力室P1,P2を連通させる。これにより、第2操舵機構40に異常が発生してクラッチ6が接続された際に、運転者がステアリングホイール1を操舵して、左右前輪11L,11Rを転舵可能とする。
反力モータECU50は、操舵角センサ3、反力センサ21L,21R、車速センサ22の検出値等を基に、反力発生モータ5を駆動制御する。第1転舵モータECU60は、後述する第1転舵モータ32を駆動するための転舵指令電流であり、ゲイン調整した値を反力モータECU50に出力している。
操舵反力指令値=KS1×路面反力値+KS2×転舵指令電流 ・・・(1)
ここで、路面反力値(路面反力検出値)は、反力センサ21L,21Rの検出値である。転舵指令電流は、第1転舵モータ32を駆動する転舵指令電流であり、ゲイン調整した値である。KS1,KS2は、路面反力値及び転舵指令電流それぞれのゲインである。KS1とKS2とは、それらの加算値が1.0になるような値である(KS1+KS2=1.0)。
また、第1転舵モータECU60は、転舵角センサ14によって検出された転舵実角と後述する転舵指令角を基に、第1転舵モータ32を駆動制御する。さらに、第2転舵モータECU70は、他のECU50,60からの情報等を基に、第2転舵モータ43を駆動制御する。
反力モータECU50は、操舵角センサ3によって検出された操舵角を基に、転舵輪11L,11Rの目標転舵角である転舵指令角を算出する。具体的には、反力モータECU50は、予め記憶した操舵角に対する転舵指令角のマップを参照して、操舵角に対応した転舵指令角を算出する。なお、操舵角に対する転舵指令角の算出方法はこれに限らず、例えば操舵角に対して予め定められた比を乗算して転舵指令角を算出しても良いし、車速に応じて操舵角に対する転舵指令角を変更しても良い。反力モータECU50は、算出した転舵指令角を第1転舵モータECU60に出力する。
第1転舵モータECU60では、反力モータECU50が算出した転舵指令角θ*及び転舵角センサ14が検出した転舵実角θをトルク指令値演算部61に入力する。
トルク指令値演算部61は、転舵指令角θ*及び転舵実角θを基に、転舵輪11L,11Rの転舵角を転舵指令角に一致させるトルク指令値T*を算出する。トルク指令値T*は、第1及び第2転舵モータ32,43それぞれが出力するトルクの合計トルク(出力トルク合計)相当である。
T*=α×(θ*−θ) ・・・(2)
ここで、αは予め実験等によって求めて設定された所定のゲインである。(2)式によれば、トルク指令値T*は、転舵指令角θ*と転舵実角θとの偏差を零にするための値となる。
トルク指令値演算部61は、算出したトルク指令値T*を転舵指令電流演算部62に出力する。
具体的には、転舵指令電流演算部62は、トルク指令値T*を用いて、下記(3)式により転舵指令電流I*を算出する。
I*=β×T*
=α×β×(θ*−θ)
・・・(3)
ここで、βは予め実験等によって求められた、トルク値を電流値に変換するための所定のゲインである。(3)式によれば、転舵指令電流I*は、トルク指令値T*と値そのものは異なるが、トルク指令値T*と同様に、転舵指令角θ*と転舵実角θとの偏差を零にするための値となる。
転舵電流配分演算部63は、予め設定した電流配分比率に従い、転舵指令電流を、第1転舵モータ32を駆動するための転舵指令電流と第2転舵モータ43を駆動するための転舵指令電流とに配分する演算を行う。例えば、第1転舵モータ32を駆動するための転舵指令電流と第2転舵モータ43を駆動するための転舵指令電流との比率が5:5となるように電流配分比率を予め設定している。
以下の説明では、第1転舵モータ32を駆動するための転舵指令電流を第1モータ転舵指令電流と称し、第2転舵モータ43を駆動するための転舵指令電流を第2モータ転舵指令電流と称する。
転舵電流配分演算部63は、算出した第1及び第2モータ転舵指令電流を第1及び第2乗算器65,66それぞれに出力する。
ゲイン設定部64は、車速センサ22が検出した車速を基に、ゲイン設定をする。
ここで、中高速域では、ゲインK2の例が0.5になっている。しかし、ゲインK2が、それ以外の値、例えば0.4になることもできる。
第2乗算器66は、第2車速対応ゲインK2と第2モータ転舵指令電流とを乗算する。第2乗算器66は、その乗算値(K2×第2モータ転舵指令電流)を第2転舵モータECU70に出力する。
中高速域の場合(K2=0.5(K2<0.5))
K2´×第1モータ転舵指令電流≧K2×第2モータ転舵指令電流
低速域の場合(K2>0.5)
K2´×第1モータ転舵指令電流<K2×第2モータ転舵指令電流
第1転舵モータECU60は、ゲイン調整した第1モータ転舵指令電流を基に、第1転舵モータ32を駆動制御する。一方、第2転舵モータECU70は、ゲイン調整した第2モータ転舵指令電流を基に、第2転舵モータ43を駆動制御する。
通常時には、以上のような処理を各ECU50,60,70が行っている。
なおここで、一般的にモータへの供給電流とモータの駆動トルクとには相関関係が有るため、転舵指令電流I*の電流配分を行なう転舵電流配分演算部63はトルク指令値T*の配分を行なう出力トルク配分手段と言え、車速に応じてゲインを設定するゲイン設定部64及び乗算器65、66は配分されたトルクを車速に応じて補正するトルク補正手段(車速対応出力トルク補正手段)と言える。
また、第2転舵モータECU70は、第2転舵モータ43が正常動作しない場合等の緊急時にフェールセーフバルブ46を開弁して、両圧力室P1,P2を連通させる制御をする。
(通常時の動作及び作用)
通常時には、操舵制御装置は、操舵角センサ3の検出値(第1操舵軸2の回転角)等を基に、転舵指令角を算出する。
そして、操舵制御装置は、算出した転舵指令角及び転舵角センサ14が検出した転舵実角を基に、転舵実角を転舵指令角に一致させるトルク指令値を算出する。操舵制御装置は、算出したトルク指令値を基に、転舵指令電流を算出する。
続いて、操舵制御装置は、算出した転舵指令電流を基に、予め設定した電流配分比率に従い、第1及び第2モータ転舵指令電流を算出する。一方、操舵制御装置は、車速センサ22が検出した車速を基に、第1及び第2車速対応ゲインK2´,K2を設定する。そして、操舵制御装置は、設定した第1及び第2車速対応ゲインK2´,K2により第1及び第2モータ転舵指令電流を補正する(K2´×第1モータ転舵指令電流、K2×第2モータ転舵指令電流)。すなわち、操舵制御装置は、第1及び第2モータ転舵指令電流の電流配分比率を補正する。
これにより、操舵制御装置は、第1及び第2操舵機構30,40によりラックバー12を駆動して、転舵輪11L,11Rを転舵する。
ここで、トルク指令値は、第1及び第2転舵モータ32,43それぞれが出力するトルクの合計トルク相当である。そして、操舵制御装置は、そのトルク指令値から算出した転舵指令電流を基に、予め設定した電流配分比率に従い第1及び第2モータ転舵指令電流を算出している。これにより、操舵制御装置は、第1及び第2モータ転舵指令電流を基に、第1及び第2転舵モータ32,43を駆動制御することで、電流配分比率と同じ比率で前記合計トルクから配分した各トルクを、第1及び第2転舵モータ32,43から出力させている。
これにより、車速が小さくなると、第1車速対応ゲインK2´が小さくなると共に第2車速対応ゲインK2が大きくなる。また、車速が大きくなると、第1車速対応ゲインK2´が大きくなると共に第2車速対応ゲインK2が小さくなる。
ここで、要求される高い転舵応答性は、例えば、俊敏な車両挙動や、外乱によらない絶対的な直進性能を実現できる転舵応答性である。
図4に示すように、第1操舵機構30の出力トルクは、転舵指令電流に対する追従特性が高い、すなわち位相遅れが小さい。その一方で、第2操舵機構40の出力トルクは、転舵指令電流に対する追従特性が低い、すなわち位相遅れが大きい。この結果、第2操舵機構40の転舵応答性は、第1操舵機構30の転舵応答性と比較して低いものとなる。
第1及び第2操舵機構30,40は、以上の図4及び図5のような特性を有する。これに対して、本実施形態における操舵制御装置は、前述のように、第1及び第2転舵モータ32,43の出力トルクを車速に応じて調整する。すなわち、比較的車速が大きい場合には第1モータ転舵指令電流を大きくする補正を行うと共に、第2モータ転舵指令電流を小さくする補正をし、比較的車速が小さい場合には、第1モータ転舵指令電流を小さくする補正を行うと共に、第2モータ転舵指令電流を大きくする補正をしている。これにより、比較的車速が大きく高い転舵応答性が求められる場合には、第1転舵モータ32の出力トルクを大きく補正すると共に第2転舵モータ43の出力トルクを小さく補正して、高い転舵応答性を発揮することができる。さらに、比較的車速が小さく大きな転舵トルクが要求される場合には、第2転舵モータ43の出力トルクを大きく補正すると共に第1転舵モータ32の出力トルクを小さく補正して、第1転舵モータ32及びラック・ピニオン機構の耐久性を向上させることができる。
例えば、転舵指令電流(第1及び第2モータ転舵指令電流の加算値)を2X(A)とし、下記のように、電流配分比率が5:5のときの第1転舵モータ32の出力トルクをY(N)とし、第2転舵モータ43の出力トルクを2Y(N)とする。すなわち、2X(A)の転舵指令電流を得た合計トルクを3Y(N)とする。
電流配分比率が5:5の場合
第1転舵モータ32:第1モータ転舵指令電流=1.0X、出力トルク=1.0Y
第2転舵モータ43:第2モータ転舵指令電流=1.0X、出力トルク=2.0Y
電流配分比率が6:4の場合
第1転舵モータ32:第1モータ転舵指令電流=1.2X、出力トルク=1.2Y
第2転舵モータ43:第2モータ転舵指令電流=0.8X、出力トルク=1.6Y
しかし、出力トルクが変化すると、転舵実角θがその影響を受け、トルク指令値T*(∝(θ*−θ))が変化し、転舵指令電流I*(∝(θ*−θ))が変化する。この結果、(θ*−θ)の偏差が一定の偏差に収束するようになるため、トルク指令値T*、すなわち合計トルクも一定値に収束するようになる。
よって、転舵指令電流の電流配分比率を変更してトルク配分を変更した場合でも、第1及び第2転舵モータ32,43が出力する出力トルクの加算値と合計トルクとは等しい値となる。
操舵制御装置は、第1及び第2操舵機構30,40のうち少なくとも一方が正常動作しない場合には、クラッチ6を連結して、ステアリングホイール1に入力の操舵力をピニオン軸6に直接伝達することを可能にする。このとき、操舵制御装置は、正常に作動している方の操舵機構をいわゆる操舵補助として機能させる。
なお、この第1の実施形態では、第1転舵モータ32は第1電動モータに対応する。第2転舵モータ43は第2電動モータに対応する。反力モータECU50は目標転舵角算出手段に対応する。モータ回転角センサ33は実転舵角検出手段に対応する。トルク指令値演算部61は合計出力トルク算出手段に対応する。転舵電流配分演算部63は出力トルク配分手段に対応する。車速センサ22は車速検出手段に対応する。第1及び第2転舵モータECU60,70はモータ制御手段に対応する。ゲイン設定部64、並びに第1及び第2乗算器65,66は車速対応出力トルク補正手段に対応する。転舵指令電流演算部62は駆動電流値算出手段に対応する。
(1)第1操舵機構は、ラックバーのラック歯にピニオン歯が噛合するピニオン軸に回転力を付与し、ラックバーを軸方向に移動させる第1電動モータを有する。
さらに、第2操舵機構は、一対の圧力室に発生した差圧に基づいてラックバーに対し該ラックバーの軸方向に推進力を付与するパワーシリンダ、一対の圧力室の各圧力室に選択的に作動油を供給するポンプ及び該ポンプを駆動制御する第2電動モータを有する。
これにより、操舵制御装置は、第2操舵機構により、ラックの軸方向に荷重を伝達するようにしたためラックに捩れが発生することがなくなり、他方のラック・ピニオン機構において操舵補助力の伝達ロスを低減することができる。
そして、車速対応出力トルク補正手段は、車速が小さいほど、第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に第2モータ出力トルクを大きく補正する。
この結果、操舵制御装置は、ギヤ結合の構成により第2操舵機構に比して高い転舵応答性を有する第1操舵機構の駆動力と、油圧により駆動する構成のために耐久性が高く、出力トルクの大きい第2操舵機構の駆動力との比率を変化させることができる。
すなわち、操舵制御装置は、車速が大きいときには、車速が小さいときよりも、第1モータ出力トルクを大きくすると共に第2モータ出力トルクを小さくすることで、ギヤ結合の構成により高い転舵応答性を有する第1操舵機構側の駆動力を大きくしている。これにより、操舵制御装置は、車速が大きいとき、そのときに要求される高い転舵応答性を発揮できる。
このように、配分比率を補正するだけで、操舵制御装置は、第1モータ出力トルクを大きくする、又は小さくする補正をする一方で、第2モータ出力トルクを、その反対に、小さくする、又は大きくする補正をすることができる。
これに対応して、出力トルク配分手段は、駆動電流値算出手段が算出した駆動電流値を、第1電動モータを駆動する第1モータ駆動電流値と第2電動モータを駆動する第2モータ駆動電流値とに配分することにより、合計出力トルク算出手段が算出した合計出力トルクを、第1電動モータが出力する第1モータ出力トルクと第2電動モータが出力する第2モータ出力トルクとに配分する。
そして、車速対応出力トルク補正手段は、車速が小さいほど、第1モータ駆動電流値を小さく補正すると共に第2モータ駆動電流値を大きく補正することにより、車速が小さいほど、前記第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に前記第2モータ出力トルクを大きく補正する。
これにより、操舵制御装置は、第1及び第2電動モータを駆動制御するための第1及び第2モータ駆動電流値を補正することで、第1及び第2モータ出力トルクを補正することができる。
これにより、操舵制御装置は、第1モータ出力トルクに基づく転舵応答特性に合致させた応答特性で操舵反力を付与できる。
例えば、操舵制御装置は、車速が大きいときには、操舵反力を大きくし、運転者にダイレクトな操舵感を与えることができる。また、操舵制御装置は、車速が小さいときには、操舵反力を小さくし、運転者に通常の操舵感(滑らかな操舵感)を与えることができる。
ここで、停車時の操舵、すなわち据え切り時には、車輪の反力が非常に大きくなる。この結果、第1電動モータが駆動する部材にかかる負荷も非常に大きくなる。
このような場合には、操舵制御装置は、第1モータ駆動電流値(第1電動モータの出力トルク)を最小値にしているので、第1電動モータの耐久性の低下を抑制できる。
このように流体圧により操舵力を補助することで、操舵制御装置は、その補助する際にラックバー12の捩れを招来することがない。
このため、操舵制御装置では、ピニオン軸13とラックバー12との噛み合いに支障を来す恐れがない。
この結果、操舵制御装置は、ピニオン軸13とラックバー12との間における操舵力の伝達ロスの発生を防止できる。
(8)操舵制御装置では、ラックバー12の捩れを回避することで、ピニオン軸13とラックバー12との噛み合いについて余計な負荷を与える恐れもない。
これにより、操舵制御装置は、かかるラック・ピニオン機構の耐久性の低下を抑制できる。
この第1の実施形態では、操舵制御装置は、車速に応じて第2車速対応ゲインK2を設定して転舵指令電流又はトルクの配分比率を変更することで、車速に応じて第1及び第2操舵力発生モータ32,43の出力トルクを補正している。これに対して、そのような配分比率に従うことなく、車速に応じて第1及び第2操舵力発生モータ32,43の出力トルクを補正することもできる。すなわち例えば、第1及び第2モータ転舵指令電流の合計値が転舵指令電流演算部62が出力する転舵指令電流に一致することを条件とせず、車速が小さいときには、車速が大きいときよりも、第1モータ転舵指令電流を小さくすると共に第2モータ転舵指令電流を大きくする補正をする。
これにより、操舵制御装置は、車速に応じた第1及び第2操舵力発生モータ32,43の出力トルクの補正の自由度を高くすることができる。
(構成)
第2の実施形態は、前記第1の実施形態と同様、操舵制御装置である。
第2の実施形態では、車速に加えて、車両の直進走行状態や旋回走行状態の情報を基に、ゲイン調整して第1モータ転舵指令電流と第2モータ転舵指令電流との配分を補正している。
第2の実施形態の操舵制御装置の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の操舵制御装置の構成と同一である。しかし、第2の実施形態では、第1転舵モータECU60の構成が異なる。
図6は、第2の実施形態における第1転舵モータECU60等の構成を示す。図6に示すように、第2の実施形態における第1転舵モータECU60は、前記第1の実施形態と同様なゲイン設定部(以下、車速対応ゲイン設定部という。)64の他に、もう一つのゲイン設定部(以下、走行状態対応ゲイン設定部という。)104を備える。また、第2の実施形態における第1転舵モータECU60は、さらに第3及び第4乗算器105,106を備える。
第1転舵モータECU60では、転舵指令電流演算部62からの転舵指令電流を走行状態対応ゲイン設定部104に入力する。走行状態対応ゲイン設定部104は、転舵指令電流を基に、ゲイン設定をする。
なお、転舵指令電流は、転舵輪11L,11Rを転舵するための指令電流である。よって、車両の旋回状態がきつい(旋回度合いが大きい)ほど転舵輪11L,11Rへ入力する路面からの反力は大きくなるため、車両の旋回状態がきつい(旋回度合いが大きい)ほど転舵指令電流が大きくなる。従って、車両が直進走行状態(ステアリングが中立位置)であるときよりも旋回状態である場合は転舵指令電流が大きくなる。
走行状態対応ゲイン設定部104は、このような図7に示す関係をマップ等として有している。走行状態対応ゲイン設定部104は、そのマップ等を用いて、転舵指令電流に対応するゲインK1を設定する。走行状態対応ゲイン設定部104は、設定したゲイン(以下、第2走行状態対応ゲインという。)K1を第4乗算器106に出力する。また、走行状態対応ゲイン設定部104は、1.0から第2走行状態対応ゲインK1を減算した値(1.0−K1、以下、第1走行状態対応ゲインK1´という。)を第3乗算器105に出力する。
第1乗算器65は、第1車速対応ゲインK2´(=1.0−K2)と第3乗算器105が出力した第1モータ転舵指令電流(K1´×第1モータ転舵指令電流)とを乗算する。第1乗算器65は、その乗算値(K1´×K2´×第1モータ転舵指令電流)を第1転舵モータ32に出力する。
第2乗算器66は、第2車速対応ゲインK2と第4乗算器106が出力した第2モータ転舵指令電流(K1×第2モータ転舵指令電流)とを乗算する。第2乗算器66は、その乗算値(K1×K2×第2モータ転舵指令電流)を第2転舵モータECU70に出力する。
直進走行領域(中立領域)の場合(K1=0.5(K1<0.5)、K2=0.5)
K1´×第1モータ転舵指令電流≧K1×第2モータ転舵指令電流
旋回走行領域(中立以外の領域)の場合(K1>0.5、K2=0.5)
K1´×第1モータ転舵指令電流<K1×第2モータ転舵指令電流
この第1及び第2転舵モータ32,43の駆動制御により、ラックバー12が駆動し、転舵輪11L,11Rが転舵する。
車両の旋回度合いが大きいほど、転舵指令電流は大きくなる。そして、第2の実施形態では、その転舵指令電流が大きくなるほど、第1走行状態対応ゲインK1´を小さくすると共に第2走行状態対応ゲインK1を大きくしている。
この結果、転舵指令電流が大きくなると、すなわち、旋回度合いが大きいほど、第1モータ転舵指令電流が小さくなるため、第1転舵モータ32の出力トルクが小さくなる。その一方で、第2モータ転舵指令電流が大きくなるため、第2転舵モータ43の出力トルクが大きくなる。また、転舵指令電流が小さくなると、すなわち、直進走行状態に近づくほほど、第1モータ転舵指令電流が大きくなるため、第1転舵モータ32の出力トルクが大きくなる。その一方で、第2モータ転舵指令電流が小さくなるため、第2転舵モータ43の出力トルクが小さくなる。
また、操舵制御装置は、高い転舵応答性がそれほど要求されないが、ラックバー12にかかる負荷が大きくなる旋回走行時には、第2転舵モータ43の出力トルクを大きくし、第1転舵モータ32の出力トルクを抑える。これにより、操舵制御装置は、第1転舵モータ32および第1転舵モータ32が駆動する部材の耐久性の低下を抑制できる。具体的には、操舵制御装置は、第1転舵モータ32が駆動する部材となる、ピニオン歯13a、或いはラック・ピニオン機構の耐久性の低下を抑制できる。
なお、この第2の実施形態では、走行状態対応ゲイン設定部104、並びに第3及び第4乗算器105,106は走行状態対応出力トルク補正手段に対応する。
(1)走行状態対応出力トルク補正手段は、車両の走行状態が直進走行状態に近いほど、第1モータ出力トルクを大きく補正すると共に第2モータ出力トルクを小さく補正する。
このように、操舵制御装置は、車両の走行状態が直進走行状態に近いほど、第1モータ出力トルクを大きく補正すると共に第2モータ出力トルクを小さく補正することで、ギヤ結合の構成により高い転舵応答性を有する第1操舵機構側の駆動力を大きくしている。これにより、操舵制御装置は、直進走行時に、そのときに要求される高い転舵応答性を発揮できる。
このように、操舵制御装置は、高い転舵応答性を確保するとともに、耐久性の低下抑制を図ることができる。
これにより、操舵制御装置は、車速が大きいときには、車速が小さいときよりも、第1モータ出力トルクを大きくすると共に第2モータ出力トルクを小さくすることで、ギヤ結合の構成により高い転舵応答性を有する第1操舵機構側の駆動力を大きくしている。これにより、操舵制御装置は、車速が大きいとき、そのときに要求される高い転舵応答性を発揮できる。
このように、操舵制御装置は、車速が大きく高い応答性が求められる際には高い転舵応答性を確保するとともに、耐久性の低下抑制を図ることができる。
第2の実施形態では、反力モータECU50が算出した転舵指令角、操舵角センサ3が検出した操舵角、又は路面反力センサ21R,21Lが検出した路面反力値を基に、走行状態対応ゲイン設定部104がゲイン設定をすることもできる。また、第2の実施形態では、車両挙動としての車両のヨーレイトや横加速度を基に、走行状態対応ゲイン設定部104がゲイン設定をすることもできる。すなわち、車両の旋回状態を表わすパラメータであれば、そのパラメータに基づいて走行状態対応ゲイン設定部104にてゲイン設定を行うことができる。
また、操舵制御装置は、高い転舵応答性がそれほど要求されないが、ラックバー12にかかる負荷が大きくなる旋回走行時には、第2転舵モータ43の出力トルクを大きくし、第1転舵モータ32の出力トルクを抑える。これにより、第1転舵モータ32が駆動する部材の耐久性の低下を抑制できる。
そして、操舵制御装置は、転舵指令角、操舵角、路面反力値、ヨーレイト、又は横加速度を用いることで、容易に車両の走行状態の判定ができる。
Claims (6)
- ピニオン歯を有するピニオン軸と、
前記ピニオン歯に噛合するラック歯を有し、前記ピニオン軸の回転に伴い軸方向に移動して転舵輪を転舵するラックバーと、
前記ピニオン軸に回転力を付与する第1電動モータを有する第1操舵機構と、
一対の圧力室に発生した差圧に基づいて、前記ラックバーに対し該ラックバーの軸方向に推進力を付与するパワーシリンダ、前記一対の圧力室の各圧力室に選択的に作動油を供給するポンプ及び該ポンプを駆動制御する第2電動モータを有する第2操舵機構と、
前記転舵輪の目標転舵角を算出する目標転舵角算出手段と、
前記転舵輪の実転舵角を検出する実転舵角検出手段と、
前記目標転舵角算出手段が算出した目標転舵角と前記実転舵角検出手段が検出した実転舵角との差分を基に、前記第1及び第2電動モータが出力する合計出力トルクを算出する合計出力トルク算出手段と、
前記合計出力トルク算出手段が算出した合計出力トルクを、前記第1電動モータが出力する第1モータ出力トルクと前記第2電動モータが出力する第2モータ出力トルクとに配分する出力トルク配分手段と、
前記第1電動モータを駆動制御して該第1電動モータに前記第1モータ出力トルクを出力させると共に、前記第2電動モータを駆動制御して該第2電動モータに前記第2モータ出力トルクを出力させるモータ制御手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記車速が小さいほど、前記第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に前記第2モータ出力トルクを大きく補正する車速対応出力トルク補正手段と、
を備えることを特徴とする操舵制御装置。 - 前記車速対応出力トルク補正手段は、前記出力トルク配分手段がした第1モータ出力トルクと第2モータ出力トルクとへ配分の比率を補正することにより、前記第1モータ出力トルク及び第2モータ出力トルクの補正をすることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
- 前記合計出力トルク算出手段が算出した合計出力トルクを基に、前記第1及び第2電動モータを駆動する駆動電流値を算出する駆動電流値算出手段を備え、
前記出力トルク配分手段は、前記駆動電流値算出手段が算出した駆動電流値を、前記第1電動モータを駆動する第1モータ駆動電流値と前記第2電動モータを駆動する第2モータ駆動電流値とに配分することにより、前記合計出力トルク算出手段が算出した合計出力トルクを、前記第1電動モータが出力する第1モータ出力トルクと前記第2電動モータが出力する第2モータ出力トルクとに配分し、
前記モータ制御手段は、前記第1モータ駆動電流値を基に前記第1電動モータを駆動制御して該第1電動モータに前記第1モータ出力トルクを出力させると共に、前記第2モータ駆動電流値を基に前記第2電動モータを駆動制御して該第2電動モータに前記第2モータ出力トルクを出力させ、
前記車速対応出力トルク補正手段は、前記車速が小さいほど、前記第1モータ駆動電流値を小さく補正すると共に前記第2モータ駆動電流値を大きく補正することにより、前記車速が小さいほど、前記第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に前記第2モータ出力トルクを大きく補正すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の操舵制御装置。 - ステアリングホイールに操舵反力を付与する操舵反力付与手段と、
前記第1モータ出力トルクを基に、前記操舵反力付与手段を駆動制御する操舵反力制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の操舵制御装置。 - 車両の走行状態が直進走行状態に近いほど、前記第1モータ出力トルクを大きく補正すると共に前記第2モータ出力トルクを小さく補正する走行状態対応出力トルク補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の操舵制御装置。
- ピニオン歯を有するピニオン軸と、
前記ピニオン歯に噛合するラック歯を有し、前記ピニオン軸の回転に伴い軸方向に移動して転舵輪を転舵するラックバーと、
前記ピニオン軸に回転力を付与する第1電動モータを有する第1操舵機構と、
一対の圧力室に発生した差圧に基づいて、前記ラックバーに対し該ラックバーの軸方向に推進力を付与するパワーシリンダ、前記一対の圧力室の各圧力室に選択的に作動油を供給するポンプ及び該ポンプを駆動制御する第2電動モータを有する第2操舵機構と、を備える操舵制御装置の操舵制御方法であって、
前記転舵輪の目標転舵角を算出すると共に、前記転舵輪の実転舵角を検出する第1ステップと、
前記目標転舵角と前記実転舵角との差分を基に、前記第1及び第2電動モータが出力する合計出力トルクを算出する第2ステップと、
前記合計出力トルクを、前記第1電動モータが出力する第1モータ出力トルクと前記第2電動モータが出力する第2モータ出力トルクとに配分する第3ステップと、
前記車速が小さいほど、前記第1モータ出力トルクを小さく補正すると共に前記第2モータ出力トルクを大きく補正する第4ステップと、
前記第1電動モータを駆動制御して該第1電動モータに前記第1モータ出力トルクを出力させると共に、前記第2電動モータを駆動制御して該第2電動モータに前記第2モータ出力トルクを出力させる第5ステップと、
を有することを特徴とする操舵制御方法。
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