JP2011051208A - 熱転写受像シート - Google Patents

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Abstract

【課題】濃度ムラとドット抜けがない、光沢度の高い高画質の画像形成が可能であり、かつ熱転写受像シートの一体接着性(密着性)にも優れる熱転写受像シートを提供することを目的とする。
【解決手段】
基材シート(A)上に、少なくとも第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層からなる多孔質層(B)と、受容層(C)がこの順に形成された熱転写受像シートであって、第1多孔質層(B1)の中空粒子(P1)が耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子であり、該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比が0.55〜0.75であり、第2多孔質層(B2)の中空粒子(P2)の平均粒子径が0.3〜1.3μmの粒子であり、該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比)が0.55〜0.75であることを特徴とする、熱転写受像シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱転写方式による印画に用いられる熱転写受像シートに関する。
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)が知られている。この方法は、熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用され、銀塩写真に匹敵する高品質な画像が得られている。
熱転写を利用した画像の具体的な形成方法としてサーマルヘッドなどの加熱媒体による熱転写を使用した方法が知られている。その方法には、記録材としての昇華性染料を紙やプラスチックフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルムなどの基材の一方の面に昇華性染料の受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせ、熱転写シートの背面から加熱媒体で熱を加えて、昇華性染料を熱転写受像シートに転写させて画像を形成する方法が知られている。
その方法で高画質の画像を熱転写受像シートに形成するには、熱転写受像シートの熱転写感度が高いことや印画ムラの発生の抑制が重要であり、それには、熱転写受像シートの受容層に効果的に熱の伝達が行われ、かつ、受容層から基材へと熱が拡散してしまうことを抑えることが重要である。
このような受容層から基材シートへと熱拡散を抑制するために、熱転写受像シートの基材と受容層(染料受容層)の間に、中空粒子とバインダ樹脂から形成される多孔質層を設けて、前記熱拡散を抑制すると共に、クッション性をも高めることが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示された耐有機溶剤性樹脂からなるバインダ樹脂とアクリル系中空粒子からなる多孔質層では、サーマルヘッドに近い位置に該多孔質層が設けられている層構成であるので、熱転写時の該中空粒子の耐熱性が充分でなく、印画物の印画部分に凹みが発生して画像にエンボスが生ずるという問題点があった。
一方、熱転写濃度を高めた熱転写受像シートを得るために、多孔質層を高耐熱中空粒子層と、中空粒子層からなる2層から形成して、該高耐熱中空粒子層を形成する中空粒子に高耐熱性中空粒子を使用し、かつ該高耐熱性中空粒子を多量に添加する層とすることが提案されている(特許文献2、3参照)。
しかし、特許文献2に開示された熱転写受像シートは、受容層と多孔質層間に水分の吸収率の極めて低いプラスチックフィルムからなる基材フィルム層を設けることを必須の要件として、受容層、基材フィルム、高耐熱中空粒子層、中空粒子層、接着層、紙基材がこの順に積層された熱転写受像シートである。また、このような熱転写受像シートの製造方法として先ず、該基材フィルム層の片面に受容層を形成し、次いで該受容層の反対側に多孔質層を設け、次に該多孔質層と基材シートを接着剤等を用いてラミネートすることが開示されている。従って、特許文献2に開示された熱転写受像シートは、基材シート上に同時に複数の層を形成する方法(同時多層塗工方法)を採用することが困難であり、また多孔質層のバインダ樹脂にポリエステル樹脂が使用されているために画像濃度が低下し、さらに製造効率の点から実用性に欠けるという問題点がある。
一方、特許文献3には、同様に多孔質層を高耐熱中空粒子層と、中空粒子層からなる2層から形成して、受容層、高耐熱中空粒子層、基材フィルム、中空粒子層、接着層、紙基材がこの順に積層された熱転写受像シートが開示されている。しかし、特許文献3の場合も特許文献2に開示された熱転写受像シートと同様に、基材シート上に同時に複数の層を形成する方法(同時多層塗工方法)を採用することが困難であり、製造効率の点から実用性に欠けるという問題点がある。
又、特許文献2、3のそれぞれの実施例に開示された、高耐熱性中空粒子層、及び中空粒子層には中空粒子が多量に添加されているので、基材シートと受容層の間に介在させる多孔質層が凝集破壊を引き起こす原因となり、熱転写受像シートの一体接着性(密着性)が確保できなくなるおそれがある。
特開2002−212890号公報 特開2005−096206号公報 特開2005−186427号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、濃度ムラ、ドット抜け、及びエンボスのない、光沢度の高い高画質の画像形成が可能であり、かつ熱転写受像シートの一体接着性(密着性)にも優れる熱転写受像シートを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、受容層と基材シート間に、受容層側から特定の中空率を有する耐熱性中空粒子を特定の割合多孔質層に含有させた第1多孔質層と、特定の中空率を有する中空粒子を特定の割合多孔質層に含有させた第2多孔質層とが積層された多孔質層をこの順に形成することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(7)に記載する発明を要旨とする。
(1)基材シート(A)上に、少なくとも多孔質層(B)と、加熱時に熱転写シートから熱移行性染料を受容可能な受容層(C)がこの順に形成された熱転写受像シートであって、
多孔質層(B)が受容層(C)側から第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層からなり、
第1多孔質層(B1)は中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)から形成されていて、
中空粒子(P1)が耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子で、該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であり、
第2多孔質層(B2)は中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)から形成されていて、
該中空粒子(P2)の平均粒子径が0.3〜1.3μmの粒子で、該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であることを特徴とする、熱転写受像シート。
(2)前記多孔質層(B)と基材シート(A)間に更に下引き層(D)が積層されていて、該下引き層(D)は中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)からなり、該中空粒子(P3)が平均粒子径0.3〜1.3μmの粒子であり、該中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.1〜0.4であることを特徴とする、上記(1)に記載の熱転写受像シート。
(3)前記第1多孔質層(B1)の中空粒子(P1)の平均中空率が20〜40%の粒子であり、第2多孔質層(B2)の中空粒子(P2)の平均中空率が40〜60%、であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の熱転写受像シート。
(4)前記第1多孔質層(B1)の厚みが1.5〜10μmであり、第2多孔質層(B2)の厚みが3〜25μmであることを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の熱転写受像シート。
(5)前記第1多孔質層(B1)及び第2多孔質層(B2)、又は第1多孔質層(B1)、第2多孔質層(B2)及び下引き層(D)のバインダ樹脂がゲル化剤をバインダ樹脂中にそれぞれ少なくとも20質量%以上含むことを特徴とする、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の熱転写受像シート。
(6)前記第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)、又は下引き層(D)、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)が水系溶媒を用いた塗工液から形成された層であることを特徴とする、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の熱転写受像シート。
(7)前記基材シート(A)上に、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)、又は下引き層(D)、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)が同時重層塗布されて形成された層であることを特徴とする、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の熱転写受像シート。
前記(1)に記載した発明において、本発明の熱転写受像シートは、サーマルヘッドなどの加熱媒体による熱転写の際に、第1多孔質層(B1)に高耐熱性中空粒子(P1)が配合されているので、該中空粒子(P1)のつぶれによる凹みの発生を抑制して印画物の凸凹(エンボス)と、コゲの発生が改善される、また、第1多孔質層(B1)と、平均中空率が相対的に高い中空粒子が配合された第2多孔質層(B2)とからなる多孔質層(B)を用いることにより、濃度ムラとドット抜けがない、光沢度の高い、高品質な画像を形成することが可能になる。
前記(2)に記載した発明において、第2多孔質層(B2)と基材シート(A)間に下引き層(D)を設けることにより、多孔質層(B)と基材シート(A)間の密着性を向上することが可能になる。
前記(3)に記載した発明において、第1多孔質層(B1)の中空粒子(P1)を、第2多孔質層(B2)の中空粒子(P2)の平均中空率より小さくすることにより、中空粒子(P1)のつぶれによる凹みの発生を抑制して、かつ第2多孔質層(B2)において断熱性を向上することが可能になる。
前記(4)に記載した発明において、第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)における耐熱性と、断熱性及びクッション性を向上することができる。
前記(5)〜(7)に記載した発明において、第1多孔質層(B1)及び第2多孔質層(B2)、又は第1多孔質層(B1)、第2多孔質層(B2)及び下引き層(D)のバインダ樹脂に一定割合以上のゲル化剤を用い、且つこれらの塗工液に水系溶媒を用いると、同時重層塗布が可能になるので製造効率を向上でき、且つ、紙基材の種類を問わず、受容層(C)の平滑度が高い熱転写受像シートを形成することが可能になる。
本発明の熱転写受像シートの断面摸式図である。 本発明の他の熱転写受像シートの断面摸式図である。
以下に本発明の〔1〕熱転写受像シート、及び〔2〕該熱転写受像シートの製造方法について記載する。
〔1〕熱転写受像シート
上述したように本発明の熱転写受像シートは、
基材シート(A)上に、少なくとも多孔質層(B)と、加熱時に熱転写シートから熱移行性染料を受容可能な受容層(C)がこの順に形成された熱転写受像シートであって、
多孔質層(B)が受容層(C)側から第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層からなり、
第1多孔質層(B1)は中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)から形成されていて、
中空粒子(P1)が耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子で、該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であり、
第2多孔質層(B2)は中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)から形成されていて、
該中空粒子(P2)の平均粒子径が0.3〜1.3μmの粒子で、該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であることを特徴とする。
このような本発明の熱転写受像シートは、基材シート(A)上に多孔質層(B)と受容層(C)とがこの順に形成された層構造を有するが、基材シート(A)と多孔質層(B)間に下引き層(D)を形成することが可能であり、更に任意の位置にクリア層、プライマー層、帯電防止層、接着層等を形成することが可能である。
以下、本発明の熱転写受像シートの実施形態について図面を参照して説明する。図1、2は、本発明に係る熱転写受像シートについて、層構成の例を示す断面模式図である。
図1に示す本発明の熱転写受像シート1の層構成例は、基材シート(A)11、第2多孔質層(B2)13、第1多孔質層(B1)14、及び受容層(C)15の順に積層された層構成である。
図2に示す本発明の熱転写受像シート1の層構成の他の例は、基材シート(A)11、下引き層(D)12、第2多孔質層(B2)13、第1多孔質層(B1)14、及び受容層(C)15の順に積層された層構成である。
(1)受容層(C)
受容層(C)は、染料染着性を備える樹脂材料(受容層形成用樹脂)を含む層であり、熱転写にて転写受像シートが印画される際に、熱転写シートに担持される熱移行性染料が熱転写受像シートの所定領域に転写され、その染料が熱転写受像シートに担持された状態となり(熱転写受像シートが染着され)、熱転写受像シートに画像を形成する機能を有する。
受容層形成用樹脂としては、染料染着性を有するものであれば特に限定されるものではないが、本発明において受容層(C)形成用樹脂が、水系溶媒に分散・溶解可能な水性樹脂であり、かつ、ゲル化剤が含まれていることが好ましい。このような水性樹脂を使用することにより、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、基材シート(A)上に水系溶媒を用いた多孔質層(B)と受容層(A)とを水系溶媒のみを用いて、基材シート上に同時塗布することが可能になる。また、受容層(C)形成樹脂にゲル化剤が含まれていることにより、基材シート(A)上に上記多孔質層(B)を形成する塗工液(以下、多孔質層形成用塗工液ということがある)と、受容層(C)を形成する塗工液(以下、受容層形成用塗工液ということがある)とが互いに混合するのを防止することが可能になる。
尚、「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等、水との共存下で容易に相分離しないものを例示することができる。また、「有機溶媒」は、水との共存下で相分離する有機化合物からなる液体を挙げることができる。
受容層形成用樹脂を構成する水性樹脂としては、水系溶媒に所定量を分散・溶解可能である、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができるが、本発明においては、染料染着性、耐熱性、耐光(候)性、離型性等の点から塩化ポリビニル系樹脂(a)又はスチレン−アクリル系共重合体(b)を用いることが望ましい。
上記から、受容層(C)は、塩化ビニル系樹脂(a)又はスチレン−アクリル系共重合体(b)、ゲル化剤(c)、及び離型剤(d)から形成されることが好ましい。
又、本発明に用いられる上記受容層形成用樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上であるものが好ましく、30℃以上であるものがより好ましく、40℃以上であるものがさらに好ましい。また、上記受容層形成用樹脂はガラス転移温度が120℃以下であるものが好ましい。このような範囲のガラス転移温度を有する受容層形成用樹脂を用いることにより、特に耐熱性や離型性に優れた熱転写受像シートを得ることができる。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)については剛体振り子型表面物性試験機(A&D社製、型式:RPT3000W、昇温速度3℃/分)を用いて、DMA法による弾性率測定を行い、ピークが確認できる地点をTgとした。
(イ)塩化ビニル系樹脂(a)
水系溶媒に分散してエマルジョンを形成する塩化ビニル系樹脂(a)としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル系化合物共重合体、エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体等を、好ましいものとして挙げることができる。
なお、上記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体を少量重合したものであってもよい。
上記塩化ビニル/アクリル系化合物共重合体は、塩化ビニルとアクリル系化合物とからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよびアクリル系化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量共重合したものであってもよい。なお、本明細書において、「アクリル系化合物」とは、(メタ)アクリル酸および/またはそのアルキルエステルを意味する。
上記アクリル系化合物としては、例えば、アクリル酸;アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
(ロ)スチレン−アクリル系共重合体(b)
水系溶媒に分散してエマルジョンを形成するスチレン−アクリル系共重合体(b)は、少なくともスチレン、及びアクリル系化合物を原料モノマーとして共重合反応により形成される共重合体であれば特に限定されず、スチレンとアクリル系化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能なモノマーをも少量共重合させたものであってもよい。尚、「アクリル系化合物」とは、上記した通りである。
スチレン−アクリル系共重合体(b)中のスチレン単位とアクリル系化合物単位のモル比([スチレン単位]/[アクリル系化合物])は60〜80/40〜20が好ましい。スチレン−アクリル系共重合体(b)中のスチレン単位が60モル%以上で比較的高いガラス転移温度(Tg)となるので、このような共重合体を含有する受容層(C)は耐熱性に優れると共に、耐光性が向上する。
受容層形成用樹脂としては、上記にて挙げたような各種樹脂を1種のみ用いてもよく、単量体組成、平均分子量等を異にする樹脂を2種以上用いてもよい。
(ハ)ゲル化剤(c)
受容層(C)で使用するゲル化剤(c)は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、前述した通り、基材シート上(A)にゲル化剤(c)を含有する水系溶媒を用いた受容層(C)と多孔質層(B)とを含む複数の層を同時に形成できるので、例えばスライドコート法により高効率で製造するが可能になる。このようなゲル化剤(c)としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等を挙げることができるが、ゼラチンが好ましい。尚、ゲル化剤(c)は、水に溶解した状態での15℃における粘度が80℃における粘度に対して、3倍以上、特に5倍以上、さらには10倍以上であるものが好ましい。
ゼラチンとしては、新田ゼラチン(株)製ゼラチン(商品名:MJ、R、APH−200等)、(株)ニッピ製ゼラチン(商品名:DP、DG、DB、MAX−F等)、ゼライス(株)製ゼラチン(商品名:A−U、AU−P、AU−G、AU−S等)などがある。
受容層(C)におけるゲル化剤(c)の含有量は、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、受容層(C)を形成するために用いられる受容層形成用塗工液に所望の、表面張力、粘度特性等を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。このような理由からゲル化剤(c)は、受容層(C)中に2〜30質量%含有されることが好ましく、2〜25質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。ゲル化剤(c)の含有比が2質量%未満であると、例えば、受容層形成用塗工液を塗布・乾燥する際に、ムラなどが生じやすくなる場合があり、一方、30質量%を超えると、画像形成の際に染料の染着性を低下させ、画像濃度が低下する場合がある。
(ニ)離型剤(d)
受容層(C)に離型剤(d)を添加することにより、熱転写受像シートを熱転写させる際に、熱転写シートとの融着を防ぐ効果が得られる。
受容層(C)に用いられる離型剤(d)としては、従来公知の離型剤、例えば、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンパウダー等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が何れも使用可能である。特に好ましい離型剤(d)は変性シリコーンであり、具体的には、下記〈1〉ないし〈6〉に示すもの等が挙げられる。
〈1〉変性シリコーンオイル側鎖型
〈2〉変性シリコーンオイル両末端型
〈3〉変性シリコーンオイル片末端型
〈4〉変性シリコーンオイル側鎖両末端型
〈5〉シリコーングラフトアクリル樹脂
〈6〉メチルフェニルシリコーンオイル
変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
離型剤(d)は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤(d)は、受容層(C)中に2〜30質量%含有されることが好ましく、2〜25質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。離型剤(d)の含有量が2質量%未満であると、熱転写受像シートを用いて印画物を作製する際に、熱転写シートと熱転写受像シートとが融着し、正常に印画できない虞があり、一方、30質量%を超えると、本発明の熱転写受像シートを用いて印画物を作製する際に、印画感度が低下する虞がある。
(ホ)その他の添加剤
上記以外に、本発明における受容層(C)に添加することができる任意の添加剤としては、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
界面活性剤は、受容層(C)をスライドコート法等により形成する際に、疎水性化合物の分散性を向上する作用を有する。このような界面活性剤としては、リン酸エステル型界面活性剤等種々の界面活性剤を使用することができる。尚、界面活性剤の添加量は,上記作用を効果的に発揮させるために、固形分ベースで受容層(C)中に0.5〜3質量%程度含有されていることが望ましい。
(ヘ)受容層(C)の厚み
受容層(C)の厚みは、受容層形成樹脂の種類に応じて所望の画像濃度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい、一方、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
(2)多孔質層(B)
本発明の熱転写受像シートの多孔質層(B)は、受容層(C)側から第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層からなり、
第1多孔質層(B1)は中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)から形成されていて、中空粒子(P1)が耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子で、該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であり、
第2多孔質層(B2)は中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)から形成されていて、該中空粒子(P2)の平均粒子径が0.3〜1.3μmの粒子で、該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75である。
基材シート(A)上、又は任意の層構成である下引き層等の上に形成される多孔質層(B)は、本発明の熱転写受像シートを用いて熱転写シートから熱転写により画像を形成する際に、サーマルヘッド等から受容層(C)に加えられた熱が、基材シート(A)側へ伝熱するのを抑制する断熱性と、転写性を向上するためのクッション性を有するものである。
本発明において、多孔質層(B)を第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層から形成することにより、第1多孔質層(B1)において主に耐熱性を大幅に向上すると共に印画物の凸凹(エンボス)発生を抑制することが可能になり、また、第2多孔質層(B2)において主に断熱性とクッション性を向上する機能が発揮される。その結果、熱転写受像シートに、このような多孔質層(B)を用いることにより、熱転写受像シートの印画特性をより優れたものとすることができる。
(2−1)第1多孔質層(B1)
以下に第1多孔質層(B1)を構成する中空粒子(P1)、バインダ樹脂(R1)、及び該層の厚み等について記載する。
(イ)中空粒子(P1)
本発明に用いる中空粒子(P1)は多孔質層(B1)に断熱性とクッション性を付与する機能を有するものであり、耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子である。
中空粒子(P1)は、耐熱温度200℃以上、好ましくは300℃以上を有し、断熱性を有するものを使用する。中空粒子(P1)の耐熱温度は、粒子の構成物質、製造条件あるいは入手可能性等に依存するが、高いほど好ましく、係る観点から中空粒子(P1)の耐熱温度の上限は特に限定されない。なお、中空粒子(P1)の耐熱温度は粒子が熱により破壊あるいは潰れることなく耐え得る最大の温度であり、本発明においては熱応力歪み測定装置(TMA)(セイコー電子工業(株)製)により測定した値で表して、上記耐熱温度以上を有していればよい。中空粒子(P1)の平均粒子径は0.1〜0.5μmである。該平均粒子径が0.1μm未満であると十分な空隙率を確保できなくなり、またコストが高くなる、一方、該平均粒子径が0.5μmを超えると画像に粒子由来のヌケや濃度ムラが生ずるおそれがある。
又、中空粒子(P1)の平均中空率は20〜40%が好ましい。平均中空率が20%未満であると第1多孔質層(B1)に十分な断熱性およびクッション性を与えることができないおそれがあり、一方、40%を超えるとつぶれによる凹みの発生、及び印画物の凸凹(エンボス)が発生するおそれがある。
高耐熱中空粒子は、耐熱温度が200℃以上であれば合成樹脂あるいはガラス等で構成されていてよい。合成樹脂の高耐熱中空粒子として、その種類は特に限定されるものではないが、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリーテル系樹脂、及びこれらの樹脂の架橋度をさらに高めて耐熱性を向上させた中空粒子が例示できる。このような高耐熱中空粒子の市販品としては、高架橋スチレン−アクリル系中空樹脂(JSR(株)製、商品名:SX−866)、シリカ系中空粒子(鈴木油脂工業(株)製、商品名:ゴッドボールB−6C)等として入手可能である。
(ロ)バインダ樹脂(R1)
第1多孔質層(B1)のバインダ樹脂(R1)は、水系溶媒に分散・溶解可能な水性樹脂であり、かつ、ゲル化剤が含まれていることが好ましい。このような水性樹脂を使用することにより、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、基材シート(A)上に多孔質層(B)と、水系溶媒をバインダ樹脂として用いた受容層(A)とを基材シート上に同時塗布することが可能になる。また、受容層(C)形成樹脂にゲル化剤が含まれていることにより、基材シート(A)上に上記第1多孔質層(B1)を形成する塗工液(以下、第1多孔質層形成用塗工液ということがある)と、受容層(C)を形成する塗工液(以下、受容層形成用塗工液ということがある)とが互いに混合するのを防止することが可能になる。
バインダ樹脂(R1)に使用する、ゲル化剤以外の樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、あるいはそれらをブレンドした樹脂を水に溶解するかまたは分散させるかまたはエマルジョンにしたものや、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂が用いられる。ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂は、粘度が高く、保水性に優れるため、基材シート(A)への水分の浸透を防ぐ上で好ましい。
断熱層(B)に用いられるゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり第1多孔質層(B1)への添加は任意であるが、熱転写受像シートを同時多層塗布方法により成形する際には、受容層(C)にゲル化剤を含有させると共に、断熱層(B)にもゲル化剤を含有させる必要がある。尚、断熱層(B)に用いられるゲル化剤の種類については、前記受容層(C)に用いられるゲル化剤(c)と同様である。バインダ樹脂(R1)中におけるゲル化剤の含有割合は、20質量%以上が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。
(ハ)任意の添加成分
本発明の第1多孔質層(B1)には、上述する中空粒子(P1)、及びバインダ樹脂(R1)以外にも、必要に応じて任意の添加成分を含むものであってよい。上記任意の添加成分として第1多孔質層(B1)に含有させることができるものとしては、ノニオン系シリコーン等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
(ニ)PV比
該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])は0.55〜0.75であり、0.60〜0.75が好ましい。
中空粒子(P1)が前記0.55未満であると十分な断熱性、耐熱性が得られないおそれがあり、一方、前記0.75を超えると結着力が不足して多孔層の基材フィルムからの剥離が生じるおそれがある。
(ホ)第1多孔質層(B1)層の厚み
第1多孔質層(B1)の厚みは1.5〜10μmとなるように形成されることが好ましい。該厚みが1.5μm以上であると断熱性、クッション性及び耐熱性が向上し、一方、10μmを超えると断熱性が飽和に達し、コスト的に無駄が生じるおそれがある。
(2−2)第2多孔質層(B2)
本発明に用いられる第2多孔質層(B2)は、基材シート(A)上、又は任意に形成できる下引き層(D)等の上に形成されるものであり、少なくとも中空粒子(P2)及びバインダ樹脂(R2)を含み、本発明の熱転写受像シートを用いて熱転写シートから熱転写により画像を形成する際に、主にサーマルヘッドから受容層(C)に加えられた熱が、基材シート(A)側へ伝熱するのを抑制する断熱性とクッション性を有するものである。本発明の熱転写受像シートに、第1多孔質層(B1)に加えて第2多孔質層(B2)を用いることにより、熱転写受像シートの印画特性をより優れたものとすることができる。
(イ)中空粒子(P2)
中空粒子(P2)は、中空粒子(P1)と同様に多孔質層(B)に断熱性とクッション性を付与する機能を有するものである。
中空粒子(P2)の平均粒子径は0.3〜1.3μmの粒子であり、0.3〜1.0μmが好ましく、0.3〜0.7μmがより好ましい。中空粒子(P2)の平均粒子径が1.3μmを超えると画像に粒子由来のヌケが生じるおそれがあり、一方0.3μm未満であると十分な空隙率を確保できなくなるおそれがある。
中空粒子(P2)の平均中空率は40〜60%が好ましい。該平均中空率が前記40%以上であると、第2多孔質層(B2)において必要な空隙が存在して、十分な断熱性およびクッション性が得られることになり、一方、前記60%以下であると、外殻の厚みが薄くならず、塗工時もしくは印画時に中空粒子(P2)がつぶれるのを防止できる。
中空粒子(P2)を構成する材料は、有機系樹脂材料又は無機系材料のいずれも使用できるが、バインダ樹脂との親和性の点からは有機系樹脂材料の使用が好ましい。有機系樹脂材料としては、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を例示することでき、無機系材料としては、無機中空ガラス体等を例示することできる。中空粒子(P2)は、発泡粒子、非発泡粒子のいずれが用いられてもよく、発泡粒子が使用される場合には、発砲状態が独立発泡又は連続発泡のいずれの状態にあるものでもよい。
(ロ)バインダ樹脂(R2)
第2多孔質層(B2)に使用するバインダ樹脂(R2)は、ゲル化剤が含有されることが好ましい。該ゲル化剤は、受容層(C)の項で記載したゲル化剤(c)と本質的に同様である。また、第2多孔質層(B2)に用いられるゲル化剤としては、1種類のゲル化剤のみを用いてもよく、あるいは、2種類以上のゲル化剤を用いてもよい。ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、基材シート(A)上にゲル化剤を含有する水系の受容層(C)と第1多孔質層(B1)とを含む複数の層を同時に形成できるので、例えばスライドコート法により高効率で製造するが可能になる。このようなゲル化剤としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではない。バインダ樹脂(R2)中におけるゲル化剤の含有割合は、20質量%以上が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。
また、バインダ樹脂(R2)には、前記ゲル化剤以外に水性樹脂を密着性向上のために好ましくは20質量%以下の濃度になるようにゲル化剤に配合して使用することができる。このような水性樹脂は、第1多孔質層(B1)のバインダ樹脂(R1)に記載した水性樹脂と同様である。
(ハ)他の添加剤
第2多孔質層(B2)には必要に応じて任意の添加剤を含有させることができる。該任意の添加剤としては、第1多孔質層(B1)に記載したと同様にノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、分散剤等を挙げることができる。
(ニ)PV比
該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])は0.55〜0.75であり、0.60〜0.75が好ましい。
該PV比が前記0.55未満であると十分な断熱性、耐熱性が得られないおそれがあり、一方、前記0.75を超えると塗布・乾燥する際に、ムラなどが生じたり、結着力が不足して多孔層の基材フィルムからの剥離が生じるおそれがある。
(ホ)第2多孔質層(B2)の厚み
第2多孔質層(B2)の厚みは3〜25μmとなるように形成されることが好ましい。該厚みが前記範囲未満であると充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、一方、前記範囲を超えると断熱性が飽和に達し、コスト的に無駄が生じるおそれがある。
(3)基材シート(A)
本発明に用いられる基材シート(A)は、該シート上に多孔質層(B)と受容層(C)とを形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、受容層(C)を保持するという役割を有するとともに、画像形成時に加えられる熱に耐え得るものであり、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材シート(A)の材料は、熱転写受像シートの種類等に応じて適宜選択され、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートを使用することができる。
また上記のプラスチックフィルムまたはシートやこれらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色フィルム、あるいは基材内部にミクロボイドを有するシート、他にコンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等も用いることができる。また、上記のシート等を任意に組み合わせた積層体も使用できる。代表的な例として、セルロース繊維紙と合成紙、セルロース繊維紙とプラスチックフィルムとの積層体があげられる。また、上記の基材シートの表面および/または裏面に易接着処理した基材も使用できる。
基材シート(A)の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば80〜400μmが例示できるが、この中でも100〜300μmが好ましく、100〜210μmがより好ましい。また、基材シート(A)とその上に設けられる多孔質層(B)との密着性が乏しい場合には、その表面に易接着処理やコロナ放電処理が施されたものであることが好ましい。
(4)任意の層構成
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも基材シート(A)、多孔質層(B)、及び受容層(C)がこの順に積層された積層シートであるが、必要に応じて他の任意の構成を有するものであってもよい。このような他の構成としては、例えば、多孔質層(B)と基材シート(A)との間に形成される下引き層(D)、多孔質層(B)と受容層(C)との間に形成されるプライマー層(E)を挙げることができる。以下、本発明に用いられるこれらの各層について説明する。
(4−1)下引き層(D)
下引き層(D)は、前記多孔質層(B)と基材シート(A)間に積層されていて、中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)からなり、該中空粒子(P3)が平均粒子径0.3〜1.3μmの粒子であり、中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.1〜0.4である。
本発明に用いることのできる下引き層(D)は、基材シート(A)と断熱層(B)との間に形成され、基材シート(A)と断熱層(B)との接着性を向上させる機能を有するものである。
(イ)バインダ樹脂(R3)
バインダ樹脂(R3)は、基材シート(A)と断熱層(B)との密着性を所望の程度に向上できるものであれば特に限定されるものではないが、ゲル化剤が含有されていることが好ましい。バインダ樹脂(R3)中におけるゲル化剤の含有割合は、20質量%以上が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。また、バインダ樹脂(R3)中に水性樹脂をバインダ樹脂(R3)中の濃度が20質量%以下となる範囲で混合して用いることも可能である。尚、バインダ樹脂(R3)に使用するゲル化剤、及び水性樹脂は、「〔1〕熱転写受像シート、(1)受容層(C)」の項に記載したものと同様である。
(ロ)中空粒子(P3)
中空粒子(P3)は、第2多孔質層(B2)の中空粒子(P2)の項に記載した中空粒子と同様である。
(ハ)他の成分
なお、下引き層(D)には、上記下引き層形成樹脂および上記ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、分散剤等を配合することができる。
(ニ)PV比
該中空粒子とバインダ樹脂の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])は0.1〜0.4が好ましく、0.25〜0.40がより好ましい。該PV比が前記0.1以上で断熱性の向上効果が得られ、一方、前記0.40以下で凝集破壊を防止することができる。
(ホ)下引き層(D)の厚み
下引き層(D)の厚みは接着強度を向上させる見地から、0.5〜2μmが好ましい。
(4−2)プライマー層(E)
本発明に用いることのできるプライマー層(E)は、多孔質層(B)と受容層(C)との間に任意に形成されるものであり、本発明の熱転写受像シートの高温高湿度環境下における、染料の多孔質層(B)側への移行を防止して画像保存性を向上させる機能を有するものである。プライマー層(E)はプライマー層(E)を形成する熱可塑性樹脂(以下、プライマー層形成樹脂ということがある)とゲル化剤を主体とする層、及びポリビニリアルコール(PVA)等の水溶性ポリマーを主体とする層から形成することも可能である。プライマー層(E)を形成する水系の塗工液(以下、プライマー層形成塗工液ということがある。)には、上記プライマー層形成樹脂および上記ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等が含まれていてもよい。上記プライマー層(E)の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば1〜40μmであることが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが更に好ましい。
〔2〕熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートは、グラビア方式、カーテン方式、スライド方式などにより製造することが可能である。本発明の熱転写受像シートは、前述の通り、少なくとも第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、受容層(C)等をそれぞれ水系の第2多孔質層(B2)形成用塗工液、第11多孔質層(B1)形成用塗工液、受容層形成用塗工液として、基材シート(A)上に同時に形成することができるので、上記製造法の中でもスライドコート法により製造することが好ましい。スライドコート法を採用することにより、製造が極めて容易で、高効率の製造が可能となる。以下に熱転写受像シートの製造方法の具体例として、スライドコート法について説明するが、スライドコート法についての記載は、グラビア方式、カーテン方式にも応用することが可能である。
以下に本発明の熱転写受像シートの製造方法の具体例として、スライドコート法について説明する。本発明の熱転写受像シートの製造方法は、〈1〉少なくとも第2多孔質層(B2)形成用塗工液、第1多孔質層(B1)形成用塗工液、及び受容層(C)形成用塗工液を含む複数の層を基材シート(A)上に同時に塗布する同時多層塗布工程、〈2〉該基材シート(A)上に形成された複数の層からなる塗膜を冷却する冷却処理工程、及び〈3〉該冷却処理工程において冷却され塗膜を、乾燥する乾燥工程、により製造することができる。
以下、上記の各工程について順に説明する。
(1)同時多層塗布工程
同時多層塗布工程は、上記したように、基材シート(A)上に少なくとも第2多孔質層(B2)形成用塗工液、第1多孔質層(B1)形成用塗工液、及び受容層(C)形成用塗工液を含む複数の層を同時に塗布する工程である。
(イ)受容層(C)形成用塗工液
同時多層塗布工程に用いられる受容層(C)形成用塗工液は、少なくとも塩化ビニル系樹脂(a)等の水性樹脂等、ゲル化剤(c)、及び離型剤(d)を含有するものである。
ここで、同時多層塗布工程に用いられる塩化ビニル系樹脂(a)等の水性樹脂、ゲル化剤(c)、及び離型剤(d)については、上記「〔1〕熱転写受像シート、(1)受容層(C)」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
同時多層塗布工程に用いられる受容層形成用塗工液は水系のものであることから、水系溶媒を用いる。ここで、同時多層塗布工程に用いられる「水系溶媒」とは、前記した通りである。
同時多層塗布工程に用いられる上記受容層(C)形成用塗工液の粘度としては、該工程において基材シート(A)上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではないが、該工程においては、40℃において、1〜50mPa・sの範囲内が好ましく、5〜50mPa・sがより好ましく、7〜40mPa・sが更に好ましい。
尚、本発明において、受容層(C)形成用塗工液等の粘度は、例えば、小型振動式粘度計(VIBRO VISCOMETER CJV5000, A&D社製)を用いて測定することができる。同時多層塗布工程に用いられる受容層(C)形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、10〜50質量%の範囲が好ましく、20〜40質量%の範囲内がより好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶液の粘度が低下し、また乾燥時間が長くなり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇して塗工に不都合を生ずる。
また、上記受容層形成用塗工液中に含まれる塩化ビニル系樹脂(a)等の水性樹脂、ゲル化剤(c)、及び離型剤(d)は、上記したように、乾燥後の受容層(C)中の成分が塩化ビニル系樹脂(a)等の水性樹脂50〜95質量%、ゲル化剤(c)2〜30質量%、及び離型剤(d)2〜30質量%含有されるように配合することが望ましい。
ゲル化剤(c)の含有比が2質量%未満では、例えば、上記受容層形成用塗工液を上記基材シート(A)上に塗布・乾燥する際に、ムラなどが生じやすくなる場合があり、また、30質量%を超えると、例えば、画像形成の際に染料の染着性を低下させ、画像濃度が低下する場合があるからである。
上記受容層形成樹脂および上記ゲル化剤(c)以外に、上記受容層形成用塗工液に添加することができる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質、および界面活性剤等を挙げることができる。このような添加剤については、上記「〔1〕熱転写受像シート」の項において説明したものと同様である。
(ロ) 第2多孔質層(B2)形成用塗工液、及び第1多孔質層(B1)形成用塗工液
同時多層塗布工程に用いられる第2多孔質層(B2)形成用塗工液は、少なくとも中空粒子(P2)およびゲル化剤を主成分とするバインダ樹脂(R2)を含み、これらが水系溶媒に分散・溶解されたものである。
なお、上記多孔質層形成用塗工液に用いられる中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)、及びこれらの配合割合については、上記「〔1〕熱転写受像シート、(2)多孔質層(B)、(2−2)第2多孔質層(B2)」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記水系溶媒についても上記受容層(C)形成用塗工液に用いられるものと同様である。
同時多層塗布工程に用いられる第1多孔質層(B1)形成用塗工液は、少なくとも中空粒子(P1)およびゲル化剤を主成分とするバインダ樹脂(R1)を含み、これらが水系溶媒に分散・溶解されたものである。
第1多孔質層(B1)形成用塗工液に用いられる中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)、及びこれらの配合割合については、上記「〔1〕熱転写受像シート、(2)多孔質層(B)、(2−1)第1多孔質層(B1)」の項において説明したものと同様である。また、上記水系溶媒についても上記受容層(C)形成用塗工液に用いられるものと同様である。
これらの同時多層塗布工程に用いられる第2多孔質層(B2)形成用塗工液、及び第1多孔質層(B1)形成用塗工液の粘度は、同時多層塗布工程において基材シート(A)上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも同時多層塗布工程においては、40℃において1〜50mPa・sが好ましく、5〜40mPa・sがより好ましい。また、20℃における粘度が0.5Pa・s以上が好ましく、1Pa・s以上がより好ましい。
同時多層塗布工程に用いられる第2多孔質層(B2)形成用塗工液、及び第1多孔質層(B1)形成用塗工液の固形分濃度は、粘度を上記した範囲内の調整できれば特に限定されるものではないが、10〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。前記固形分濃度が10質量%未満では、溶液粘度が低くなって塗工の際に不都合を生じ、また乾燥に時間がかかる、一方、50質量%を越えると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇して塗工の際に不都合が生ずる可能性がある。
(ハ)基材シート(A)
同時多層塗布工程に用いられる基材シート(A)は、該工程おいて形成される塗膜を支持する機能を有するものである。同時多層塗布工程に用いられる基材シート(A)については、上記「〔1〕熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(ニ)その他の層
同時多層塗布工程において、上記基材シート(A)上に、第2多孔質層(B2)形成用塗工液、第1多孔質層(B1)形成用塗工液、及び受容層形成用塗工液に加えて、下引き層形成用塗工液、及び/又はプライマー層形成用塗工液を同時に塗布する場合、これらの塗工液が塗布時に互いに混合しないように、通常、隣接する塗工液間の表面張力の差が一定の範囲内となるように調整される。
(ホ)同時多層塗布方法
基材シート(A)上に、多孔質層形成用塗工液、受容層形成用塗工液等を同時に塗布する、同時多層塗布工程において上記基材シート(A)上に、受容層(C)を含む複数の層を同時に塗布する方法としては、各層の塗工液の表面張力と粘度を調製して、各層が交じり合うことなく、均一な厚みで各層を形成する塗工液を上下に重ねた状態のままスライドさせて塗布するスライドコート法により行うことが出来る。
スライドコート法とは、例えば、熱転写受像シートの各層を構成する複数の塗工液を上下に重ねた状態のまま、バックロールに巻きつけた基材シート(A)に塗布する方法である。塗工品質の観点から見ると、スライドコート法は、膜厚均一性に優れ、回転部がないため塗工液の飛散による品質不良が発生しにくく、摩擦部がないため塗布部での原反切れの発生によるロスが発生しにくいという利点を有する。また、塗工液のハンドリング性の観点から見ると、スライドコート法は、塗工液の濃度、粘度、組成が変化しにくく、反応性が高く経時的に変化する塗工液を用いることができ、さらに塗工液を使い切ることができることから無駄が生じにくく、また、高固形分塗工液を用いることができるため、溶媒使用量を削減することができるという利点を有する。
同時多層塗布工程において、上記基材シート(A)上に複数の層を同時に塗布する態様としては、〉〈1〉基材シート(A)上に多孔質層(B)、受容層(C)、〈2〉基材シート(A)上に下引き層(D)、多孔質層(B)、受容層(C)、〈3〉基材シート(A)上に多孔質層(B)、プライマー層(E)、受容層(C)、〈4〉基材シート(A)上に下引き層(D)、多孔質層(B)、プライマー層(E)、受容層(C)をそれぞれ同時に塗布する態様を挙げることができる。
同時多層塗布工程においては、上述した態様のなかでも、前記〈2〉、又は〈4〉に示す態様が好ましい。このような態様によれば各層の密着性に優れ、印画感度に優れた熱転写受像シートを得ることができる。
(2)冷却処理工程
冷却処理工程は、上記同時多層塗布工程において基材シート(A)上に形成された複数の塗膜を冷却する工程である。
冷却処理工程において基材シート(A)上に形成された複数の塗膜を冷却する方法としては、上記塗膜を所望の温度に冷却できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、冷却された基材シート(A)上に、上記塗膜を塗布する方法、上記基材シート(A)を搬送するロールの表面を冷却し、基材シート(A)を介して上記塗膜を冷却する方法、上記塗膜に冷風を吹き付ける方法、上記塗膜が形成された基材シート(A)を所望の温度以下の室温に調整された冷却ゾーンを通過させる方法等を挙げることができる。なかでも該工程においては冷却された基材シート(A)上に、上記塗膜を塗布する方法を用いることが好ましい。このような方法によれば上記基材シート(A)上に上記塗膜が塗布された直後に、当該塗膜を強制冷却することができるため、上記塗膜を構成する複数の層が混合することを防止できる。
冷却処理工程において、上記塗膜を冷却する温度としては、上記塗膜を構成する各層の粘度を、各層が互いに混合しない程度に向上させることができる範囲であれば特に限定されるものではない。また、冷却処理工程における冷却温度は、上述したゲル化剤の種類にも依存するものである。なかでも該工程においては、冷却温度は0〜30℃が好ましく、0〜25℃がより好ましく、3〜20℃が更に好ましい。
(3)乾燥工程
乾燥工程は上記冷却処理工程において冷却された複数の塗膜を、乾燥する工程である。該工程で、上記塗膜が乾燥されることにより、これらの塗膜を硬化させ、離型性に優れる受容層(C)を得ることができる。
乾燥工程において、上記冷却処理工程において冷却された塗膜を乾燥する温度は、30〜90℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。なお、該工程において上記塗膜を乾燥する方法としては、上記塗膜中に残留する水系溶媒を所定の時間内に所定量以下にできる方法であれば特に限定されるものではない。このような乾燥方法については、一般的に塗膜を乾燥する方法として公知の方法を用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。表記の重量部は固形分で記載し、必要に応じて純水にて希釈した。
試料の調製、及び受像シート等の評価方法について以下に記載する。
〔1〕試料の調製方法、及び使用した原材料
本実施例、及び比較例でそれぞれ使用した試料の調製方法、及び使用した原材料は下記の通りである。
(1)受容層形成用塩化ビニル・アクリル系エマルジョン
日信化学(株)製、塩化ビニル・アクリル系エマルジョン、商品名:ビニブラン900
以下、上記塩化ビニル・アクリル系エマルジョンをエマルジョン1ということがある。
(2)第1多孔質層形成用アクリル系樹脂
新中村化学(株)製、アクリル系樹脂、商品名:NKJ−300
(3)ゲル化剤
新田ゼラチン(株)製、商品名:RR
(4)第2多孔質層形成用ウレタン系樹脂
DIC(株)製、ウレタン系樹脂、商品名:AP−40
(5)中空粒子A、B、C
(イ)中空粒子A
JSR(株)製、高架橋スチレン−アクリル樹脂、商品名:SX-866
平均粒子径:0.3μm、平均中空率:30%、耐熱温度:300〜330℃
(ロ)中空粒子B
ロームアンドハース社製、アクリル系中空粒子、商品名:HP-1055
平均粒子径:1μm、平均中空率:50%、耐熱温度:110℃〜140℃
(ハ)中空粒子C
ロームアンドハース社製、アクリル系中空粒子、商品名:ST
平均粒子径:0.5μm、平均中空率:45%、耐熱温度:110℃〜140℃
(6)シリコーン系離型剤
信越化学工業(株)製、商品名:KF615A
(7)界面活性剤
日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440
〔2〕塗工液の調製
(1)受容層形成用の塗工液1の調製
エマルジョン1、ゲル化剤、シリコーン系離型剤、及び界面活性剤を表1に示す割合で混合し、全固形分が30質量%となるように水で希釈して受容層形成用の塗工液1を調製した。
Figure 2011051208
(2)第1多孔質層形成用の塗工液2〜7の調製
下記表2に示す中空粒子、ゲル化剤、及びアクリル系樹脂を、表2に示す割合で混合し、全固形分が17質量%となるように水で希釈して第1多孔質層形成用の塗工液2〜7をそれぞれ調製した。
Figure 2011051208
(3)第2多孔質層形成用の塗工液8〜13の調製
下記表3に示す中空粒子、ゲル化剤、ウレタン系樹脂、及び界面活性剤を、表3に示す割合で混合し、全固形分が20質量%となるように水で希釈して第2多孔質層形成用の塗工液8〜13をそれぞれ調製した。
Figure 2011051208
(4)下引き層形成用の塗工液14の調製
下引き層成用塗工液の成分として、下記に示す中空粒子C、ゲル化剤を、下記に示す割合で混合し、全固形分が10質量%となるように水で希釈して下引き層形成用の塗工液14を調製した。
Figure 2011051208
〔3〕熱転写受像シートの評価
(1)画像濃度
作製した熱転写受像シートを昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)と、インクリボン(メガピクセルIII用、アルテックエーディーエス(株)純正品)を使用して、RGB値が15*n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画し、光学濃度計(グレタグマクベス社製、spectrolino )(Ansi-A、D65))による光学反射濃度が最大となる値を測定し、ブラックのOD値(光学的濃度)を示した。
(2)エンボス
上記印画物を目視にてエンボスの有無を観察した。評価基準を以下に記載する。
○:外観に凸凹がないこと
×:外観に凸凹がはっきりと見られる。
(3)コゲ
作製した熱転写受像シートと、インクリボン(メガピクセルIII用、アルテックエーディーエス株式会社純正品)とを組み合わせて、下記条件にて、イエロー、マゼンタ、シアンの順に3色の染料を順次重ねて黒ベタ印画を行い、目視にて黒ベタ印画物のコゲ発生を確認した。また、その時使用したイエロー、マゼンタ及び保護層の熱転写シートはアルテックエーディーエス(株)製 MEGA PIXEL III用の熱転写シートを使用した。
[印画条件]
サーマルヘッド;F3598(東芝ホクト電子(株)製)
発熱体平均抵抗値;5323(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印加電力;0.11(w/dot)
1ライン周期;0.7(msec.)
パルスDuty;96%
印字開始温度;28(℃)
コゲ評価基準は以下の通りとした。
○:コゲが目視では確認できない。
△:コゲが目視で確認され、その割合は画物全面積の約30%以下である。
×:印画物全面積の約30%を超える割合でコゲが確認される。
但し、コゲとは、イエロー、マゼンタ、シアンの各染料層からの染料の3色と最後に保護層転写シートから転写させる保護層を順次に重ねて、黒色の熱転写画像を形成した時の黒色の高濃度部で発生する画質不良、すなわち転写時に熱転写受像シートの受容層が熱転写シート側に融着することで黒色部の色相変動が起こり(黒ベタかすれ)、その結果印画物表面がマット化し、光沢感が無くなる現象である。
(4)テープ密着性
作製した熱転写受像シートにメンディングテープ(ニチバン(株)製)工業用メンディングテープ12mm幅を貼着して、90℃剥離試験を行った。テープ密着性試験の評価基準は下記の通りである。
◎:熱転写受像シートに破壊が全く観察されず、メンディングテープに付着も認められない。
○:熱転写受像シートに破壊は認められなかったが、メンディングテープの顕微鏡観察では極微量の着色物が付着している。
△:熱転写受像シートが破壊し、その20%未満がメンディングテープに付着している。
×:熱転写受像シートが破壊し、その20%以上がメンディングテープに付着している。
(5)光沢度
上記の各例で得られた印画物の最高濃度部分において、保護層表面の鏡面光沢度を日本電色工業(株)製、GlossMeter VG2000を用いて測定した(測定時入射角20°)。光沢度の評価は下記の基準にて行った。
尚、表5中「流れ方向(MD)」とは印画方向と入射角が平行方向、「幅方向(TD)」とは印画方向と入射角が垂直方向を示す。
◎:60以上
○:55以上60未満
△:50以上55未満
×:50未満
[実施例1]
下記方法により熱転写受像シートを作製し、作製した熱転写受像シートの評価を行った。
(1)熱転写受像シート1の作製
基材シート上に下引き層、第2多孔質層、第1多孔質層、受容層をこの順に形成して熱転写受像シート1を得た。
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150、厚み:200μm)を用い、前記組成の下引き層形成用塗工液として塗工液14、第2多孔質層形成用塗工液として塗工液9、第1多孔質層形成用塗工液として塗工液2、及び受容層形成用塗工液として塗工液1を40℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ1μm、20μm、2μm、5μmとなるように塗布し、5℃にて1分間冷却・ゲル化させ、50℃にて5分間乾燥し、熱転写受像シート1を得た。
(2)熱転写受像シートの評価
上記で作製した熱転写受像シートに付いて、(イ)画像濃度、(ロ)エンボス、(ハ)コゲ、(ニ)テープ密着性、及び(ホ)光沢度についての評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
[実施例2〜8]
下記方法により熱転写受像シートを作製し、作製した熱転写受像シートの評価を行った。
(1)熱転写受像シート2〜8の作製
実施例2〜8において、第2多孔質層形成用塗工液、及び第1多孔質層形成用塗工液として表2、3に示す塗工液を使用した以外は、実施例1に記載したと同様の方法により熱転写受像シート2〜8を作製した。
(2)熱転写受像シート2〜8の評価
実施例1で熱転写受像シート1について行ったと同様に熱転写受像シート2〜8について評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
[実施例9]
(1)熱転写受像シート9の作製
実施例9において、下引き層を形成しなかった以外は実施例1に記載したと同様の方法により、基材シート上に第2多孔質層、第1多孔質層、受容層をこの順に形成して熱転写受像シート9を得た。
(2)熱転写受像シート9の評価
実施例1で熱転写受像シート1について行ったと同様に熱転写受像シート9について評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
[比較例1、2]
(1)熱転写受像シート10、11の作製方法
比較例1、2において、第2多孔質層形成用塗工液、及び第1多孔質層形成用塗工液として表2、3に示す塗工液を使用した以外は、実施例1に記載したと同様の方法により熱転写受像シート10、11を作製した。
(2)熱転写受像シート10、11の評価
実施例1で熱転写受像シート1について行ったと同様に熱転写受像シート10、11について評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
[比較例3、4]
(1)熱転写受像シート12、13の作製方法
比較例3、4において、第1多孔質層を形成しないで、かつ第2多孔質層形成用塗工液として表3に示す塗工液を使用した以外は、実施例1に記載したと同様の方法により、基材シート上に下引き層、第2多孔質層受容層をこの順に形成して熱転写受像シート12、13を得た。
(2)熱転写受像シート12、13の評価
実施例1で熱転写受像シート1について行ったと同様に熱転写受像シート12、13について評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
[比較例5〜9]
(1)熱転写受像シート14〜18の作製方法
比較例5〜9において、第2多孔質層形成用塗工液、及び第1多孔質層形成用塗工液として表2、3に示す塗工液を使用した以外は、実施例1に記載したと同様の方法により熱転写受像シート14〜18を作製した。
(2)熱転写受像シート14〜18の評価
実施例1で熱転写受像シート1について行ったと同様に熱転写受像シート14〜18について評価を行った。評価結果をまとめて表5に示す。
尚、実施例1〜9、及び比較例1〜9における第1多孔質層、及び第2多孔質層で使用した中空粒子、その他各層のPV比と厚みについて表6にまとめて示す。
Figure 2011051208
Figure 2011051208
1 熱転写受像シート
11 基材シート(A)
12 下引き層(D)
13 第2多孔質層(B2)
14 第1多孔質層(B1)
15 受容層(C)

Claims (7)

  1. 基材シート(A)上に、少なくとも多孔質層(B)と、加熱時に熱転写シートから熱移行性染料を受容可能な受容層(C)がこの順に形成された熱転写受像シートであって、
    多孔質層(B)が受容層(C)側から第1多孔質層(B1)と第2多孔質層(B2)の2層からなり、
    第1多孔質層(B1)は中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)から形成されていて、
    中空粒子(P1)が耐熱温度200℃以上の高耐熱性中空粒子からなる、平均粒子径0.1〜0.5μmの粒子で、該中空粒子(P1)とバインダ樹脂(R1)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であり、
    第2多孔質層(B2)は中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)から形成されていて、
    該中空粒子(P2)の平均粒子径が0.3〜1.3μmの粒子で、該中空粒子(P2)とバインダ樹脂(R2)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.55〜0.75であることを特徴とする、熱転写受像シート。
  2. 前記多孔質層(B)と基材シート(A)間に更に下引き層(D)が積層されていて、該下引き層(D)は中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)からなり、該中空粒子(P3)が平均粒子径0.3〜1.3μmの粒子であり、該中空粒子(P3)とバインダ樹脂(R3)の配合割合(PV比:[中空粒子の配合量(固形分の重量部)/中空粒子とバインダ樹脂の配合量(固形分の重量部)])が0.1〜0.4であることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写受像シート。
  3. 前記第1多孔質層(B1)の中空粒子(P1)の平均中空率が20〜40%の粒子であり、第2多孔質層(B2)の中空粒子(P2)の平均中空率が40〜60%、であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
  4. 前記第1多孔質層(B1)の厚みが1.5〜10μmであり、第2多孔質層(B2)の厚みが3〜25μmであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  5. 前記第1多孔質層(B1)及び第2多孔質層(B2)、又は第1多孔質層(B1)、第2多孔質層(B2)及び下引き層(D)のバインダ樹脂がゲル化剤をバインダ樹脂中にそれぞれ少なくとも20質量%以上含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  6. 前記第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)、又は下引き層(D)、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)が水系溶媒を用いた塗工液から形成された層であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  7. 前記基材シート(A)上に、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)、又は下引き層(D)、第2多孔質層(B2)、第1多孔質層(B1)、及び受容層(C)が同時重層塗布されて形成された層であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
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