JP2011048199A - 新規スチルベン系化合物を含有する電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、画像形成装置、及び新規スチルベン系化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、電子写真複写機等の画像形成装置の用途は拡大しており、画像品質への市場の要望は一段と高い水準を求めるものになってきている。特に、事務用の書類等においても、入力における写像技術、潜像形成技術の発展に加え、出力時においても、文字の象形の種類はより豊富に、より微細化されており、またプレゼンテーションソフトウェアの普及と発達により、印刷画像に欠陥や不鮮明さの少ない、極めて高画質な潜像の再現性が求められている。
載されたトリアリールアミン−スチルベン共役型化合物(以下、単に「スチルベン系化合物」ともいう。)が電荷輸送材料として使用できると提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されている化合物群は、バインダー樹脂との相溶性に
問題があり、高部数で使用する場合に、結晶析出の問題が起きやすかった。
点もある。
特許文献3に記載されている化合物群は、酸化性ガス等のボケ発生物質による画像流れ
(画像ボケ)等の問題解決できる一方、移動度が比較的遅く、電気特性に改善すべき点もある。また、これらの化合物群は、製造コストも高く、経済的にも不利である。
において、該感光層は、下記[1]式で表される構造を有するスチルベン系化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする電子写真感光体、に存する。
おける置換基定数σp が0.20以下であって、任意に炭素数1〜4の有機基を有する芳香族の縮合多環式炭化水素基を示し、Rは、炭素数3〜4のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ、Hammett則における置換基定数σp が0.20以下であって、炭素数1〜4の有機基を示し、m、nは0〜4の整数を示す。)
本発明の第2の要旨は、上記本発明の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させ
る帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、及び、前記電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段から選ばれる少なくとも一つとを備えた電子写真感光体カートリッジ、に存する。
る帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写された前記トナーを定着させる定着手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置、に存する。
存する。
おける置換基定数σp が0.20以下であって、任意に炭素数1〜4の有機基を有する芳香族の縮合多環式炭化水素基を示し、Rは、炭素数3〜4のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ、Hammett則における置換基定数σp が0.20以下であって、炭素数1〜4の有機基を示し、m、nは0〜4の整数を示す。)
本発明のスチルベン系化合物は、下記[1]式で表される構造を有する化合物である。
おける置換基定数σp が0.20以下であって、任意に炭素数1〜4の有機基を有する芳香族の縮合多環式炭化水素基を示し、Rは、炭素数3〜4のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ、Hammett則における置換基定数σp が0.20以下であって、炭素数1〜4の有機基を示し、m、nは0〜4の整数を示す。)
ここで、Hammett則は、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果
を説明するために用いられる経験則であって、置換ベンゼンの置換基定数σpは、置換基の電子供与/吸引の程度を定量化した値といえる。σp値が正であれば置換安息香酸の方が無置換のものより酸性が強い、つまり電子吸引性置換基となる。逆にσp値が負であると電子供与性置換基となる。表1は、代表的な置換基のσp値である(日本化学会編、「化学便覧 基礎編II 改訂4版」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、p.364〜365)。
ける置換基定数σp が0.20以下であって、任意に炭素数1〜4の有機基を有する芳香族の縮合多環式炭化水素基である。
前記Hammett則における置換基定数σpの値としては、電気特性の観点から0.00以下であることが好ましく、-0.10以下であることが特に好ましい。一方で下限としては、耐酸性
ガス性の観点から-0.3以上であることが好ましい。
フルオレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられるが、電気特性の面でナフチル基が好ましく、2-ナフチル基が特に好ましい。
中でも、前記[1]式中、Ar1、Ar2は、それぞれ、Hammett則における置換基定数σp が0.20以下であって、炭素数1〜4の有機基が少なくもと一つを有するフェニル基である場合が好ましく、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基の何れか一つを有するフェニル基であることが特に好ましい。
から考え、m=n=0である場合は特に好ましい。
前記[1]式中、Rとしては、炭素数3〜4のアルキル基であって、例えば、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルが挙げられる。電気特性や製造コストの面から、R
は、n-プロピル基またはイソプロピル基が特に好ましい。
ると実写評価をした際にクリーニング性が良好となり、音鳴りやフィルミングを防止しやすくなる。これは低分子の電荷輸送物質を使用することで感光体の表面硬度が高くなりクリーニングブレードなどの感光体表面に接触する部材との相互作用が小さくなるためだと考えられる。したがって、前記[1]式中、Ar1、Ar2の有する置換基や、R、X、Y、m、nは
上記分子量を鑑みて調整することが特に好ましい。一方で下限値としては、電機特性の観点から400以上であることが好ましい。
ン酸エスエル誘導体B(ワーズワース試薬)を得る。Bとp-アルコキシベンズアルデヒドC
とをジメチルホルムアミド(以下、DMFという)溶媒に溶かし、塩基を加えることによっ
て縮合させ、スチルベン誘導体Dを作る。最後に、Dとジアリールアミン誘導体Eとを、パ
ラジウム−トリ(o-トリル)ホスフィン錯体の存在下でカップリングし、目的物である電荷輸送材CT-1を得ることができる。
以下に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、上述した[1]式で表されるスチルベン系化合物を含有する感光層を設けたものであれば、その構造は特に制限されない。中でも、電荷発生層と、電荷輸送層とが積層された積層型の感光体が好ましく、特に、電荷輸送層が、上述した[1]式で表されるスチルベン系化合物を含有することが好ましい。
導電性支持体については特に制限はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタンアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上20μm以下の範囲が好ましい。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いても良い。
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、本発明における感光層は、いずれの形式であってもよい。また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
電荷発生層
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダー樹脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
・電荷輸送層
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
また、本発明のスチルベン系化合物に加えて、公知の他の電荷輸送物質を併用してもよい。他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えば、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、エナミン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。更に具体的には、特開平2−230255号、特開昭63−225660号、特開昭58−198043号、特公昭58−32372号、および、特公平7−21646号の各公報に記載の化合物が好ましく使用される。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、複数種のものを任意の組み合わせで併用しても良い。なお、本発明のスチルベン化合物と、公知の他の電荷輸送物質とを併用する場合、電荷輸送物質全量における、併用する電荷輸送物質の含有比率(質量%)は、特に制限されないが、1%以上20%以下の範囲内であることが好ましく、本発明のスチルベン化合物の役割をより効果的に発揮させるために、3%以上10%以下の範囲内であることが特に好ましい。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と
同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
<その他の機能層>
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
保護層は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いて形成することができる。
保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を使用時の温度において通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とする。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施
の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に
対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
<スチルベン系化合物の製造>
(製造例1:例示化合物CT-1の製造)
窒素雰囲気下、p-ブロモベンジルブロマイド 50.00 g (200 mmol)に亜リン酸トリエチ
ル39.88 g (240 mmol)を加え、90 oC下で1時間攪拌した。その後、減圧蒸留によって余分の亜リン酸トリエチルを留去し、室温まで冷却し、リン酸エステル体B61.24 g (196 mmol、収率98%)を得た。
ウムtert-ブトキシド6.74g (60 mmol)をゆっくり添加し(必要に応じて冷却)、さらに1
時間攪拌した。この溶液を、メタノール/氷水(v/v = 8:2)混合液400 mlに滴下し、結晶
化した。固体を濾別し、減圧乾燥し、スチルベン誘導体D 12.45 g (39 mmol、収率79%)を薄黄色粉末として得た。
チルベン誘導体D 12.45 g (39 mmol)、p-ジトリルアミン8.52 g(43.2 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド4.52 g(47 mmol)、充分に脱酸素したキシレン150 mlを順次に加え、系内を窒素により置換した後、酢酸パラジウム11.2 mg、トリ(o-トリル)ホスフィン60.8 mgを加え、150 ℃まで加熱し、その温度に保ちながら加熱還流を続け、反応を実施した。反応の間、反応系溶液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス(株)社製イナートシルODS-3V、溶媒:アセトニトリル)で一定時間毎に分析することにより反応を追跡し、反応系溶液中のスチルベン誘導体Dがなくなるまで(約5時間)反応を行なった。反応終了後、室温まで冷却し、固体を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られたオイルを、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、さらにメタノールによる再沈で精製した。真空乾燥した後、例示化合物CT-111.08 g(25.6 mmol、収率66%)を黄色い粉末として得た。この化合物の核磁気共鳴スペクトル(300 MHz、Varian Gemini-2000 NMR spectrometer)を添付図2に示す。
アルデヒド体Cの原料としてp-イソプロピルベンズアルデヒドを使用した以外は、製造
例1と同様な操作で、例示化合物CT-2を黄色い粉末として得た。この化合物の核磁気共鳴
スペクトル(300 MHz、Varian Gemini-2000 NMR spectrometer)を添付図3に示す。
<電子写真感光体の作製>
(実施例1:電子写真感光体A1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
)メタン[下記式(G)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(H)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(I)で表される化合物]/オクタ
デカメチレンジカルボン酸[下記式(J)で表される化合物]の組成モル比率が、60%
/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層分散液とした。
次に、スチルベン化合物CT-1の電荷輸送材料80部、下記のポリカーボネート樹脂(H)100部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125 ℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートA1を作製した。なお、ポリカーボネート樹脂(H)の粘度平均分子量は30,000であった。
に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
(実施例2:電子写真感光体A2)
例示化合物CT-1に代え、CT-2を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様に
して、実施例としての電子写真感光体A2を得た。
例示化合物CT-1に代え、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質(L)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P1を得たが、感光体塗布後に結晶が析出した。この感光体の電気特性測定を試みたが、ほとんど光減衰が見られず、特性の測定に至らなかった。
例示化合物CT-1に代え、特許文献2に例示された下記の電荷輸送物質(M)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P2を得た。
例示化合物CT-1に代え、特許文献2に例示された下記の電荷輸送物質(N)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P3を得た。
例示化合物CT-1に代え、特許文献2に例示された下記の電荷輸送物質(P)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P4を得た。
例示化合物CT-1に代え、特許文献3に例示された下記の電荷輸送物質(Q)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P5を得た。
例示化合物CT-1に代え、下記の電荷輸送物質(R)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P6を得た。
例示化合物CT-1に変え、下記の電荷輸送物質(S)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P7を得た。
製造した電子写真感光体A1〜A2,P1〜P7について以下の電気特性試験を行なった。
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを外径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が−(マイナス。以下同じ。)700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cm2で露光したときの100ミリ秒後の露光後表面電位(以下、Vlと呼ぶことがある。)を測定した。Vl測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとし、高速応答の条件とした。また、感光体表面電位が、−700 Vから−350 Vになるまでに要した半減露光エネルギーE1/2(μJ/cm2)を求めた。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。
ダー樹脂との相溶性が悪く、塗布後結晶が析出したため、光減衰がほとんど見られず、特性の測定に至らなかった。また、一般式[1]で表される本発明のスチルベン系化合物を用
いた感光体は、公知のスチルベン系化合物M、N、P、Qまたはスチルベン側にn-ペントキシ基を有するスチルベン誘導体Sに比べ、優れた電気特性を示した。一方、公知のスチルベ
ン系化合物Rを用いた感光体は、初期電気特性の面で本発明のスチルベン系化合物とほぼ
同等であった。
オゾン暴露試験の方法を以下に記す。川口電気社製EPA8200を使用し、実施例A1〜A2、
比較例P5、P7で得られた感光体をコロトロン帯電器に25μAの電流を印加して帯電させ、
その帯電値をV1とした。その後、これらの感光体に150 ppm濃度のオゾンを1日5時間、2日間暴露し(総暴露量750 ppm・時間)、暴露後に同様に帯電値を測定し、この値をV2とし
た。表3にオゾン暴露前後の帯電保持率[(V2/V1)*100] (%) を示した。また、前記の電
気特性評価法と同様に、露光10秒後、オゾン暴露前後の残留電位(それぞれVr1、Vr2とする)を測定し、その差ΔVr(Vr2-Vr1)を求め、表3に纏めた。
に記載されているスチルベン系化合物Qを用いた感光体P5に比べ、耐オゾン性の面でほぼ
同等であった。また、電子写真感光体A1〜A2は、電子写真感光体P7より、オゾン暴露前後の帯電保持率が高く、露光10秒後の残留電位の差が小さい。したがって、本発明のスチルベン系化合物を電荷輸送物質として用いた電子写真感光体は、スチルベン側に炭素数5の
アルコキシ基を有するスチルベン誘導体Sを用いた電子写真感光体より、良好な耐オゾン
性を有し、電気的安定性が良いことが確認された。
実施例A1〜A2、比較例P2〜P7で得られた感光体を、電荷輸送層の電界強度E = 2.0+5E (V/cm)、温度21℃下におけるホールドリフト移動度をTOF法により測定した。各電子写真感光体A1〜A2、P2〜P7のホールドリフト移動度を表4に示す。
体は、公知のスチルベン系化合物またはスチルベン側に炭素数5のアルコキシ基を有する
スチルベン誘導体を用いた電子写真感光体より、応答性の面で、電子写真機器に好適である。一方、公知のスチルベン系化合物Rを用いた感光体は、応答性の面でも本発明のスチ
ルベン系電荷輸送物質とほぼ同等であった。
(実施例3〜4)
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cm、長さ25.4cmのアルミニウムチューブ上に、電子写真感光体A1〜A2と同様に作製した電荷発生層及び電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層20μmの電子写真感光体ドラムA3〜A4を、実施例3〜4として、それぞれ作製した。これらの電子写真感光体ドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)に搭載し、画像試験を行った。初期画像を印刷した後、引き続き1万枚連続印刷を行い、画像劣化の有無を目視で観察し、その結果を表5にまとめた。
実施例3〜4の手順において、電荷輸送層塗布液として電子写真感光体P6と同様に作製したものを用いた以外は、実施例3〜4と同様の手順で、比較例8として、電子写真感光体ド
ラムP8を作製し、画像試験を行ない、その結果を表5にまとめた。
想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電子写真感光体および画像形成装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)
Claims (4)
- 導電性支持体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、下記[1]
式で表される構造を有するスチルベン系化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする電子写真感光体。
おける置換基定数σp が0.20以下であって、任意に炭素数1〜4の有機基を有する芳香族の縮合多環式炭化水素基を示し、Rは、炭素数3〜4のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ
、Hammett則における置換基定数σp が0.20以下であって、炭素数1〜4の有機基を示し、m、nは0〜4の整数を示す。) - 請求項1に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電し
た該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、及び、前記電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段から選ばれる少なくとも一つとを備えた電子写真感光体カートリッジ。 - 請求項1に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電
した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写された前記トナーを定着させる定着手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置。
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