JP2011046982A - 表面処理された化成処理鋼板の製造方法 - Google Patents

表面処理された化成処理鋼板の製造方法 Download PDF

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博文 武津
Masaya Yamamoto
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Abstract

【課題】高温多湿下において塗膜を十分に密着させるとともに、耐食性に優れた表面処理された化成処理鋼板を提供すること。
【解決手段】(1)化成処理鋼板を準備する工程、(2)水蒸気濃度が2.0g/m以上であって大気圧にある雰囲気において、プラズマ水蒸気を発生させる工程、および(3)プラズマ水蒸気を化成処理鋼板の表面に接触させる工程を経て、表面処理された化成処理鋼板を製造する。上記手順により、化成処理皮膜を損傷させることなくその表面にOH基を導入することで、耐食性を維持しつつ塗膜密着性を向上させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面処理された化成処理鋼板の製造方法に関する。
化成処理鋼板は、意匠性や長期耐久性が必要とされる場合などに塗装される。しかし、塗料の種類によっては、化成処理皮膜に対する塗膜密着性が不十分となる場合があった。また、水系塗料を塗布する場合は、塗料がはじかれるという、いわゆるハジキが発生し、塗料を均一に塗布できないという問題があった。このような問題を解決する方法として、化成処理皮膜をプラズマ処理して塗膜密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、真空中でプラズマを発生させ、化成処理皮膜の表面をエッチングする方法が記載されている。このようにプラズマ処理をすることで、化成処理皮膜の表面を粗面化することができ、塗膜の密着性を向上させることができる。
特開平2−104674号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、真空中でプラズマに曝して化成処理皮膜をエッチングするため、耐食性が低下してしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れ、かつ塗膜密着性にも優れた化成処理鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、特定の水蒸気濃度を有する大気圧雰囲気において発生させた水蒸気プラズマを化成処理鋼板の表面に接触させて、化成処理皮膜の表面にOH基を導入することで上記課題を解決しうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の表面処理された化成処理鋼板の製造方法に関する。
[1](1)鋼板の表面に化成処理皮膜が形成された化成処理鋼板を準備する工程と;(2)水蒸気濃度が2.0g/m以上であって大気圧にある雰囲気において、プラズマ水蒸気を発生させる工程と;(3)前記プラズマ水蒸気を前記化成処理鋼板の表面に接触させる工程とを含む、表面処理された化成処理鋼板の製造方法。
[2]前記(2)の工程は、前記雰囲気に、対向するように2つの電極を配置し、前記電極の間に1〜35kVの電圧を印加してコロナ放電を生じさせて、前記電極間にプラズマ水蒸気を発生させる工程であり;前記(3)の工程は、前記(2)の工程で得たプラズマ水蒸気を空気で押し出して、前記プラズマ水蒸気を前記化成処理鋼板の表面に接触させる工程である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記(2)の工程は、前記雰囲気に、前記化成処理鋼板と対向するように絶縁体電極を配置し、前記化成処理鋼板と前記電極との間に1〜35kVの電圧を印加してコロナ放電を生じさせて、プラズマ水蒸気を発生させる工程である、[1]に記載の製造方法。
[4]前記表面処理された化成処理鋼板の表面から4nmまでの厚み領域における金属水酸化物のO1sピーク強度POHと、金属酸化物のO1sピーク強度Pとの比POH/Pは、0.9以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記化成処理皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩、およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Si、およびAlからなる群から選ばれる1種以上の金属である、[5]に記載の製造方法。
本発明によれば、化成処理皮膜を損傷させることなくその表面にOH基を導入することができる。したがって、本発明によれば、耐食性に優れ、かつ塗膜密着性にも優れた化成処理鋼板を提供することができる。
本発明の表面処理された化成処理鋼板の製造方法は、(1)化成処理鋼板を準備する工程と;(2)水蒸気濃度が2.0g/m以上であって大気圧にある雰囲気において、プラズマ水蒸気を発生させる工程と;(3)プラズマ水蒸気を化成処理鋼板の表面に接触させる工程とを含むことを特徴とする。
(1)の工程
本工程では、化成処理鋼板を準備する。化成処理鋼板とは、鋼板(基材)の表面に、無機系の高分子化合物を主成分とする化成処理皮膜(無機系皮膜)が形成された鋼板をいう。
化成処理皮膜が形成される基材の種類は、特に限定されない。基材となる鋼板の例には、亜鉛めっき鋼板(電気Znめっき、溶融Znめっき)、合金化亜鉛めっき鋼板(溶融Znめっき後に合金化処理した合金化溶融Znめっき)、亜鉛合金めっき鋼板(溶融Zn−Mgめっき、溶融Zn−Al−Mgめっき、溶融Zn−Alめっき)、溶融Al−Siめっき鋼板、ステンレス鋼板が含まれる。
化成処理皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群より選ばれる1種以上の化合物(以下「バルブメタル化合物」ともいう)を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。バルブメタルとは、その酸化物が高い絶縁抵抗を示す金属をいう。バルブメタル元素としては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Si、およびAlから選ばれる1種以上の元素が好ましい。バルブメタル化合物としては公知のものを用いてよい。
また、バルブメタルの可溶性フッ化物を化成処理皮膜に含ませることで、自己修復作用を付与することができる。バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出している基材鋼板の表面に難溶性の酸化物または水酸化物となって再析出し、皮膜欠陥部を埋める。化成処理皮膜にバルブメタルの可溶性フッ化物を含ませるには、化成処理液にバルブメタルの可溶性フッ化物を添加してもよいし、バルブメタル化合物とは別に(NH)Fなどの可溶性フッ化物を添加してもよい。
化成処理皮膜は、さらに可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性のリン酸塩は、化成処理皮膜から皮膜欠陥部に溶出し、基材鋼板の金属と反応して不溶性リン酸塩となることで、バルブメタルの可溶性フッ化物による自己修復作用を補完する。また、難溶性のリン酸塩は、化成処理皮膜中に分散して皮膜強度を向上させる。可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mnが含まれる。難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、Al、Ti、Zr、Hf、Znが含まれる。
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、バルブメタル化合物などを含む化成処理液(無機系塗料)をロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で基材鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。このとき、バルブメタル付着量が1mg/m以上となるように、好ましくは10mg/m以上となるように、化成処理液の塗布量を調整することが好ましい。バルブメタル付着量を1mg/m以上、好ましくは10mg/m以上とすることで、(2)の工程において化成処理皮膜が局部的に薄くなった部位で集中放電が発生するのを防ぐことができ、その結果、(3)の工程において化成処理皮膜のピーク強度比「POH/P」(後述)を均一に0.9以上とすることができる。バルブメタルの付着量は、ICP分析などにより測定することができる。通常、水蒸気プラズマを接触させる前の化成処理皮膜のピーク強度比「POH/P」(後述)は、0.5以下となる。
また、化成処理液中においてバルブメタル化合物が安定して存在できるように、キレート作用のある有機酸を化成処理液に添加してもよい。有機酸の例には、タンニン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸および酢酸が含まれる。その添加量は、有機酸/金属イオンのモル比で0.02以上であることが好ましい。
(2)の工程
本工程では、特定の雰囲気においてプラズマ水蒸気を発生させる。プラズマ水蒸気とは、プラズマ状態にある水蒸気であり、つまり、電離した状態にあるが全体としては中性の状態にある水蒸気をいう。
プラズマ水蒸気を発生させる手段は特に限定されないが、例えば、以下の方法で発生させることが好ましい。
1)特定の雰囲気において2つの電極を準備して、2つの電極間に電圧を印加してプラズマ水蒸気を発生させる方法。
2)特定の雰囲気において、化成処理鋼板と対向するように絶縁体電極を配置し、前記化成処理鋼板と前記絶縁体電極との間に電圧を印加して水蒸気プラズマを発生させる方法。
1)の方法では電極間に、2)の方法では絶縁体電極と化成処理鋼板との間に、放電を生じさせて、水蒸気プラズマを発生させる。ここで生じる放電は、コロナ放電やアーク放電が好ましく、コロナ放電がより好ましい。コロナ放電とは、電極間の電場が均一でないときに、表面の電場の大きいところに部分的絶縁破壊が起こって生じる放電をいう。アーク放電とは、大気中の放電において、電極間電圧の上昇に伴い、コロナ放電から、火花放電という過渡的状況を経ておこる放電をいう。
本発明のプラズマ水蒸気を発生させる特定の雰囲気とは、水蒸気濃度が2.0g/m以上であって、大気圧にある雰囲気である。水蒸気濃度を2.0g/m以上とすることで、化成処理皮膜の表面に効率的にOH基を導入することができ、塗膜密着性を向上させることができる。水蒸気濃度が2.0g/m未満の場合、十分な水蒸気プラズマを発生させることができず、化成処理皮膜の表面に効率的にOH基を導入することができない。放電時の電圧が低い場合であっても効率的にOH基を導入するためには、水蒸気濃度を10.0g/m以上とすることが好ましい。水蒸気濃度の上限は、特に限定されないが50g/m以下が好ましい。水蒸気濃度は、14〜21g/mの範囲内がより好ましい。水蒸気濃度は、鏡面冷却式露点計により測定することができる。
特定の雰囲気においてコロナ放電を生じさせるには、1)の方法における電極間の距離、または2)の方法における絶縁電極と化成処理鋼板との距離を1〜50mmとし、電圧を1〜35kVとし、周波数を1〜60kHzとすることが好ましい。なお、本願明細書において、記号「〜」はその両端の数値を含む。電極間または電極−鋼板間の電圧を1〜35kVとすることで、局部的な集中放電により化成処理皮膜が損傷を受けることを抑制することができる。電極間または電極−鋼板間の電圧を1kV未満とすると、十分な水蒸気プラズマを発生させることができず、化成処理皮膜の表面に効率的にOH基を導入することができない。一方、電極間または電極−鋼板間の電圧を35kV超とすると、電極間または電極−鋼板間で局部的な集中放電が発生しやすくなり、化成処理皮膜が損傷を受けて耐食性が低下してしまう。
1)の方法の場合、電極の形状は特に限定されないが、電極の材料はステンレスやアルミなどの金属が好ましい。2)の方法の場合は、電極の形状はナイフエッジ電極やプレート電極、ロール電極、ワイヤー電極などが好ましいが、これに限定されない。また、1)の方法および2)の方法において、電極がステンレスやアルミなどの金属製電極の場合は、誘電体を電極に被覆すると、コロナがアーク状になるのを防止できるので好ましい。電極を被覆する誘電体は、耐熱性、耐高電圧性、耐オゾン性および高誘電率を考慮すると、セラミックやシリコンゴム、EPTゴム、ハイパロンゴムなどが好ましい。一方、電極の材料が非導電性のセラミックスやクオーツなどの場合は、誘電体で被覆する必要はない。
プラズマ水蒸気を発生させる雰囲気の温度は、特に限定されないが、10〜50℃が好ましく、室温程度(20〜30℃)がより好ましい。
(3)の工程
本工程では、(2)の工程で得たプラズマ水蒸気を(1)の工程で準備した化成処理鋼板の表面に接触させる。化成処理鋼板に水蒸気プラズマを接触させる手段は特に限定されない。たとえば、前記1)の方法で水蒸気プラズマを発生させた場合は、空気などのガスで水蒸気プラズマを押し出すことで、水蒸気プラズマを化成処理鋼板に接触させることができる。また、前記2)の方法で水蒸気プラズマを発生させた場合は、特にガスなどで押し出さなくても水蒸気プラズマを化成処理鋼板に接触させることができる。
この工程により、化成処理鋼板表面の化成処理皮膜がほとんどエッチングされることなく、化成処理皮膜の表面に金属水酸化物(バルブメタルの水酸化物および他の金属の水酸化物)が形成される。化成処理皮膜がほとんどエッチングされないのは、大気圧で水蒸気プラズマを化成処理鋼板の表面へ接触させることができるので、高いエネルギーを有する水蒸気プラズマが化成処理鋼板の表面へ衝突することを抑制できるためと考えられる。
本発明により、化成処理鋼板の表面に金属水酸化物が形成されるのは、水蒸気プラズマに含まれるOHによると考えられる。金属水酸化物の量は、表面処理された化成処理鋼板の表面から4nmまでの厚み領域(以下「表層」ともいう)において、金属水酸化物のO1sピーク強度をPOHとし、金属酸化物のO1sピーク強度をPとしたときのO1sピーク強度比「POH/P」で示され、その比率が0.9以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。この比が0.9未満の場合、高温多湿環境下において塗膜密着性が十分でない場合がある。化成処理皮膜のピーク強度比の上限は特に限定されないが、3.5以下が好ましい。
1sピーク強度比はXPS分析を行い、O1sピークにおいて各金属成分の酸化物および水酸化物をピーク分離することで算出できる。XPS分析は、X線源をMg Kα線、分解能をAg3d:0.8eVとして行うことが好ましい。前記表層は、XPS分析の際に、光電子が基材から放出される深さが0〜4nmであることから決定される。
このようにOH基リッチとなった化成処理鋼板の表面に塗膜を形成すると、化成処理皮膜表面のOH基と、塗膜中のOH基やCOOH基などの極性基との間で水素結合や、脱水縮合反応が生じる。この結果、高温多湿環境下でも塗膜密着性に優れた、塗装鋼板が得られると考えられる。さらに、表面処理された化成処理鋼板の表面には、化成処理皮膜がエッチングされずに残っているので、良好な耐食性も保持される。よって、(3)の工程における、プラズマ照射時間や、電極と化成処理鋼板の距離などの諸条件は、化成処理鋼板の表面に所望の量のOH基が存在するように適宜選択される。
以上の手順により、耐食性に優れ、かつ塗膜密着性にも優れた化成処理鋼板(本発明の表面処理された化成処理鋼板)を製造することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.化成処理鋼板の準備
基材として、以下の4種類の鋼板を準備した。
A)電気Znめっき鋼板(片面めっき付着量:10g/m
B)Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板(片面めっき付着量:75g/m
C)Al−9%Si合金めっき鋼板(片面めっき付着量:65g/m
D)ステンレス鋼板(鋼種:SUS304、2D仕上げ)
また、表1に示す組成の化成処理液を準備した。
Figure 2011046982
アルカリ脱脂(pH11、液温:60℃、浸漬時間60秒)した鋼板に化成処理液を塗布し、水洗せずにオーブンで板温100℃で加熱乾燥して化成処理皮膜を形成した。使用した鋼板と化成処理液の組み合わせを表2に示す。
Figure 2011046982
2.表面改質処理
準備した化成処理鋼板を、所定の水蒸気濃度(表3参照)に調整された大気雰囲気に静置した。コロナ放電装置を用いて、以下の処理方法AまたはBによりコロナ放電を発生させて、各化成処理鋼板の表面を改質した。このとき、周波数は30kHzとした。また、電圧、照射距離(絶縁体電極と鋼板との間隔(処理方法A)または電極間の間隔(処理方法B))および照射時間(水蒸気プラズマを鋼板表面に接触させた時間)は、表3に示されるように設定した。
[処理方法A]
絶縁体電極と化成処理鋼板との間でコロナ放電を発生させて、化成処理鋼板の表面近傍にプラズマ水蒸気を発生させた。そのまま、プラズマ水蒸気を化成処理鋼板の表面に接触させた。
[処理方法B]
一対の電極間でコロナ放電を発生させて、プラズマ水蒸気を発生させた。発生したプラズマ水蒸気を送風により押し出して、プラズマ水蒸気を化成処理鋼板の表面に接触させた。
3.表面分析
各表面処理化成処理鋼板について、X線光電子分光分析装置(AXIS-Ultra;株式会社クレイトスアナリティカル製)を用いてXPS分析を行った(X線源:Mg Kα線、分解能:Ag3d:0.8eV)。各鋼板について、10箇所分析した。この分析により、表面処理化成処理鋼板の表層における金属水酸化物/金属酸化物のO1sピークの比(表中「POH/P」と表記)を求めた。
4.裸耐食性試験
各表面処理化成処理鋼板から試験片を切り出し、裸耐食性試験を実施した。
(1)基材がステンレス鋼板以外の鋼板の場合
各試験片の端面をシールした後、JIS Z2371に準拠して35℃の塩化ナトリウム水溶液を各試験片に噴霧した。塩化ナトリウム水溶液を72時間噴霧した後、各試験片の表面を観察し、試験片の表面に発生している白錆の発生面積率により裸耐食性を評価した。このとき、白錆の発生面積率が、10面積%未満の場合を「◎」、10面積%以上20面積%未満の場合を「○」、20面積%以上50面積%未満の場合を「△」、50面積%以上の場合を「×」と評価した。
(2)基材がステンレス鋼板の場合
各試験片の端面をシールした後、屋外暴露試験を実施した。場所は大阪府堺市(離岸距離:約100m)とし、1週間に1回、5質量%塩化ナトリウム水溶液を各試験片に噴霧した。試験を1ヶ月実施した後、各試験片の表面を観察し、試験片の表面に発生している錆の発生面積率により裸耐食性を評価した。このとき、錆の発生面積率が、5面積%未満の場合を「◎」、5面積%以上10面積%未満の場合を「○」、10面積%以上20面積%未満の場合を「△」、20面積%以上の場合を「×」と評価した。
5.塗膜密着性試験
各表面処理化成処理鋼板から試験片を切り出し、塗膜密着性試験を実施した。各試験片の表面にメラミンアルキド塗料を塗装して膜厚20μmの塗膜を形成した。塗装後の各試験片を沸騰水に4時間浸漬した後、JIS K5400に準拠してテープ剥離試験を行った。具体的には、各試験片の塗膜に碁盤目状の切込みを入れ、2mmのエリクセン加工を施し、塗膜にセロハンテープを貼り付けた後、瞬時にテープを剥離して、塗膜の残存率を測定し、塗膜密着性を評価した。このとき、塗膜の残存率が、90%以上の場合を「◎」、80%以上90%未満の場合を「○」、60%以上80%未満の場合を「△」、60%未満の場合を「×」と評価した。
6.分析結果
表3は、各表面処理化成処理鋼板のXPS分析の結果を示す表である。この表に示されるように、プラズマ水蒸気(水蒸気濃度2.0g/m以上)を鋼板の表面に接触させた場合は(実施例1〜12、比較例4)、POH/P(O1sピーク強度の比)が0.9以上であり、化成処理皮膜の表面にOH基を十分に導入することができた。一方、プラズマ水蒸気を鋼板の表面に接触させなかった場合は(比較例1〜3)、POH/P(O1sピーク強度の比)が0.9未満であり、化成処理皮膜の表面にOH基を十分に導入することができなかった。
Figure 2011046982
表4は、各表面処理化成処理鋼板の裸耐食性試験および塗膜密着性試験の結果を示す表である。この表に示されるように、プラズマ水蒸気(水蒸気濃度2.0g/m以上)を鋼板の表面に接触させた場合は(実施例1〜12、比較例4)、塗膜残存率が80%以上であった。一方、プラズマ水蒸気を鋼板の表面に接触させなかった場合は(比較例1〜3)、塗膜残存率が60%未満であった。
また、プラズマ水蒸気を鋼板の表面に接触させた場合であっても、コロナ放電を発生させるときの電圧を1〜35kVとしたときは(実施例1〜12)、錆発生率が20面積%未満(ステンレス鋼板以外)または10面積%未満(ステンレス鋼板)であった。一方、コロナ放電を発生させるときの電圧を35kV超としたときは(比較例4)、錆発生率が20面積%以上であった。
Figure 2011046982
表3および表4から、本発明の製造方法により製造された化成処理鋼板は、良好な裸耐食性および塗膜密着性を有することが明らかである。これに対して、比較例1〜3の化成処理鋼板は、金属水酸化物と金属酸化物のO1sピークの比(POH/P)が0.9未満であり、塗膜密着性が不十分であった。また、比較例4の化成処理鋼板は、化成処理皮膜がエッチングされたため裸耐食性が低下していた。
以上の結果から、本発明の製造方法は、耐食性および塗膜密着性に優れた化成処理鋼板を製造できることがわかる。
本発明の製造方法は、耐食性および塗膜密着性に優れた化成処理鋼板を製造することができる。本発明の製造方法により製造された化成処理鋼板は、例えば高温高湿環境下で使用される外装用材料などとして好適である。

Claims (6)

  1. (1)鋼板の表面に化成処理皮膜が形成された化成処理鋼板を準備する工程と、
    (2)水蒸気濃度が2.0g/m以上であって大気圧にある雰囲気において、プラズマ水蒸気を発生させる工程と、
    (3)前記プラズマ水蒸気を前記化成処理鋼板の表面に接触させる工程と、
    を含む、表面処理された化成処理鋼板の製造方法。
  2. 前記(2)の工程は、前記雰囲気に、対向するように2つの電極を配置し、前記電極の間に1〜35kVの電圧を印加してコロナ放電を生じさせて、前記電極間にプラズマ水蒸気を発生させる工程であり、
    前記(3)の工程は、前記(2)の工程で得たプラズマ水蒸気を空気で押し出して、前記プラズマ水蒸気を前記化成処理鋼板の表面に接触させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記(2)の工程は、前記雰囲気に、前記化成処理鋼板と対向するように絶縁体電極を配置し、前記化成処理鋼板と前記電極との間に1〜35kVの電圧を印加してコロナ放電を生じさせて、プラズマ水蒸気を発生させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記表面処理された化成処理鋼板の表面から4nmまでの厚み領域における金属水酸化物のO1sピーク強度POHと、金属酸化物のO1sピーク強度Pとの比POH/Pは、0.9以上である、請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記化成処理皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩、およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Si、およびAlからなる群から選ばれる1種以上の金属である、請求項5に記載の製造方法。
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