JP2011042753A - 防食被覆鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クロメート処理を用いずに、耐食性、耐久性および密着性を向上させることができる塗料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 導電性ポリマー、樹脂、プロトン供与機能を有する顔料、および溶剤を含有し、前記導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする塗料組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、主として土木・建築用の資材に適用される耐食性、密着性に優れた防食被覆層を有する鋼材に関する。
土木・建築用資材に適用される防食被覆鋼材において、耐食性、密着性を向上させるため下地処理としてクロメート処理を施すことが一般的である。クロメート処理により生成されるクロメート皮膜には6価クロムが含まれ、この6価クロムの酸化作用により鋼材表面の不働態化を促し耐食性を向上させている。しかしこの6価クロムの毒性により、近年クロメート処理の代替処理の開発が求められている。
例えば、特許文献1には、クロメート処理を用いないで耐食性を向上させる手法としてポリアニリンと樹脂と無機酸化物を混合させた処理液を塗布する方法が提案されている。
また、例えば特許文献2には、ポリアニリンとドーパントと樹脂と非クロム系防錆顔料を混合させた塗料を塗布する方法が提案されている。さらに、特許文献3には、層状リン酸塩の層間にアニリンまたはその誘導体のポリマーをインターカレートさせた防錆剤を塗布する方法が提案されている。これらはポリアニリンの酸化作用により鋼材表面の不働態化を促すことで耐食性を向上させている。
特開平10−251509号公報 特開平11−335624号公報 特開2004−99943号公報
しかし、特許文献1の方法では、長期間の耐食性および耐久性の観点で、クロメート処理された鋼材に及ばない。また、特許文献2の方法では、ポリアニリンとドーパントの塗膜中の割合が高いため、塗膜の密着性に劣る。さらに、特許文献3の方法でも、提案された防錆剤の鋼材に対する密着性が高くないという問題がある。現状、以上のように、クロメート処理技術以外に、重防食被覆鋼材の耐食性、耐久性および密着性を向上させる有効な技術は見出されていない。
本発明は、上記課題を解決し、クロメート処理を用いずに、耐食性、耐久性および密着性を向上させることができる塗料組成物およびこれを被覆した鋼材を提供することを課題とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、耐食性、耐久性および密着性に優れた防食被覆鋼材を得るために検討を重ねた結果、導電性ポリマー、樹脂、プロトン供与機能を有する顔料および溶剤を含有し、導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする塗料組成物を塗布することで、鋼材表面が水分により湿潤された場合でも鋼材表面の不働態化を促し、また最適な導電性ポリマーの配合量により高い密着性をもつ防食被覆鋼材が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
1.導電性ポリマー、樹脂、プロトン供与機能を有する顔料、および溶剤を含有し、前記導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする塗料組成物。
2.前記導電性ポリマーがポリアニリン及びその誘導体であることを特徴とする1記載の塗料組成物。
3.前記導電性ポリマーがポリピロール及びその誘導体であることを特徴とする1記載の塗料組成物。
4.前記プロトン付与機能を有する顔料が酸触媒である金属酸化物であることを特徴とする1記載の塗料組成物。
5.前記1〜4記載の塗料組成物を、鋼材表面に塗布することを特徴とする防食被覆鋼材の製造方法。
6.前記1〜4記載の塗料組成物を鋼材表面へ塗布する防食被覆鋼材の製造方法であって、形成された塗膜の乾燥膜厚が10〜200μmであり、さらにその上に、樹脂および顔料からなるバリア層を形成し該バリア層の乾燥膜厚が1.0〜5.0mmであることを特徴とする防食被覆鋼材の製造方法。
7.前記5〜6の製造方法によって製造される防食被覆鋼材。
本発明によれば、防食被覆鋼材において鋼面が水分により湿潤された場合でも、水との反応でプロトンを供与する顔料の影響で導電性ポリマーによる鋼材の不働態化を促し、また最適な導電性ポリマーの配合量により高い密着性をもつ防食被覆鋼材を提供することが可能となった。
以下に、本発明を具体的に説明する。
この発明の塗料組成物は、導電性ポリマー、樹脂、プロトン供与機能を有する顔料、溶剤を含有し、導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする塗料組成物である。
本発明の塗料組成物を構成する導電性ポリマーは、鋼材の不働態化を促すために用いられ、共役π電子を有する有機ポリマーであり、具体的にはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。
例えばポリアニリンでは日本カーリット社製ポリアニリン溶液等を用いることが出来る。また、例えばポリピロールでは日本カーリット社製ポリピロール分散液CDP−310M等を用いることができる。
さらに上記ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等に塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはp―トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸を添加し、ドーピングした誘導体も鋼材の不働態化を促す効果を奏するので好ましい。
樹脂は塗膜の密着性向上のため用いられ、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等が用いられる。密着性と耐食性の点からエポキシ樹脂及び/又はポリウレタン等の、熱硬化性樹脂がより好ましい。例えばエポキシ樹脂系では、主剤および硬化剤の組み合わせとして、それぞれジャパンエポキシレジン社製jER 828およびjER T等を用いることができる。またポリウレタン系では、主剤と硬化剤等としては第一工業製薬社製パーマガード331を用いることが出来る。
プロトン供与機能を有する顔料は、導電性ポリマーの酸化作用を補うために用いられ、TiO、V、SiO、MoOなどが用いられる。このように金属酸化物は、鋼面が水分により湿潤された際、導電性ポリマーにプロトンを供与し、導電性ポリマーの鋼材不働態化作用を促す効果があり、さらに塗膜内で高い安定性をもつものである。 溶剤成分は脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の有機系溶剤等を適宜選択し用いることができる。
また、本発明の塗料組成物に、耐候性や耐摩耗性を付与するため、カーボンブラックや炭酸カルシウム等の顔料を配合しても構わない。その他、特性を付与するために触媒、可塑剤、助剤、増粘剤、酸化防止剤、光安定剤等を含有してもよい。
導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることとしたのは、0.1質量部以上で鋼材の不働態化の効果が奏し、25質量部を超えると鋼材との密着性、塗膜強度が劣化するからである。
本発明の塗料組成物を鋼材上に塗布したのち、常温もしくは必要により加熱乾燥させることで防食被覆層を形成できる。
防食被覆層の乾燥膜厚は、耐食性を向上させる観点から10μm以上が好ましく、経済性の観点から500μm以下が好ましい。さらに耐食性向上のためには防食被覆層の上層にバリア層を設けることが好ましく、その場合防食被覆層の乾燥膜厚は10μm以上200μm以下が好ましい。
上記バリア層にはポリウレタン樹脂もしくはポリオレフィン樹脂を用いることが出来る。
ポリウレタン樹脂は、防食用途として、通常用いられている汎用品であれば、特に制限はない。具体的には、ポリオールとイソシアネート化合物を含有していれば良い。熱による収縮を防止する為に充填無機顔料を含有していれば、さらに望ましく、耐候性を付与するために着色顔料を含有していれば、なお望ましい。市販されているポリウレタン樹脂としては、例えば、第一工業製薬株式会社製「パーマガード137(登録商標)」、または、日本ペイント株式会社製「ニッペウレタンエラストマーU1001−S」等がある。これらポリウレタン樹脂は、エアレススプレー等の方法で塗装してバリア層を形成させることができる。この場合の乾燥膜厚は、耐食性の観点で1.0〜5.0mmが望ましい。1.0mmより薄い場合はバリア性が低下し、5.0mmを超えた場合それらの性能の向上は見られず、経済的でない。
ポリオールはポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール等を用いる。また、充填無機顔料としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等を用いる。着色顔料にはカーボンブラックを用いる。またその他の特性を付与するために可塑剤、助剤、増粘剤、酸化防止剤、光安定剤等を含有してもよい。一方、イソシアネートとしてはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等のポリイソシアネートを用いる。
バリア層にポリオレフィン樹脂を用いる場合、バリア層はポリオレフィン樹脂層と変性ポリオレフィン接着剤層とで構成され、ダイス等で加熱し溶融した状態で被覆されるのが、最も好ましい。ポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂を含有し、ポリオレフィン樹脂には低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いる。また、必要に応じて、耐候性を付与するために着色顔料(例えば、カーボンブラック等)を含有しても良い。またさらに、その他の特性を付与するために、酸化防止剤や光安定剤等の添加剤を含有してもよい。また、変性ポリオレフィン接着剤層は上記のポリオレフィン樹脂をマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性したもの、あるいはその変性物をポリオレフィン樹脂で適宜希釈したもの等を用いる。
乾燥膜厚は変性ポリオレフィン接着剤層が0.1〜1.0mm、ポリオレフィン樹脂層が1.0〜4.0mmが望ましい。変性ポリオレフィン接着剤層は0.1mmより薄い場合、加熱被覆時に透けが生じることがある。また1.0mmを超えても密着性等向上は見られず、経済的でない。ポリオレフィン樹脂層は1.0mmより薄い場合、バリア性が低下し、4.0mmを超えた場合それらの性能の向上は見られず、経済的でない。以上のことから、変性ポリオレフィン接着剤層およびポリオレフィン樹脂層の乾燥膜厚の上記限定をおこなった。
上述したところは、この発明の実施形態の例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
つぎに、本発明の実施例について以下に説明する。
表1、表2に示した塗料No.1〜15の成分組成を有する塗料を作成した。まず、市販されている溶媒と導電性ポリマーとの混合物を準備し、その混合物に樹脂とプロトン供与機能を有する顔料を追加しさらに攪拌して塗料とした。導電性ポリマーと樹脂とプロトン供与機能を有する顔料の含有量は、導電性ポリマーと樹脂との合計量を100質量部とした場合の質量部として示してある。
ポリアニリンは溶媒との混合溶液(日本カーリット社製、導電性ポリマー/溶媒の質量比は、ポリアニリン/N−メチル−2−ピロリドン=2/98)、ポリピロールは溶媒への分散液(ポリピロール分散液CDP−310M:日本カーリット社製、導電性ポリマー/溶媒の質量比は、ポリピロール/メチルエチルケトンなど=10/90)を用いた。エポキシ樹脂にはビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の主剤:jER 828と硬化剤:jER Tを、主剤:硬化剤=5:1の質量比に混合して用いる。この場合、樹脂100mass%である。)、ポリウレタン樹脂には2液硬化タイプのポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製の商品名「パーマガード331(主剤(樹脂58mass%)と硬化剤(樹脂44mass%))」を、主剤:硬化剤=3:1の質量比に混合し、樹脂55mass%にして用いる。)を用いた。
Figure 2011042753
Figure 2011042753
鋼板はスチールグリッドブラストにより表面を十点平均粗さで50μm程度にしたサイズ100mm×l00mm×6mmの熱延鋼板(素地鋼材)(JIS SS400)を用いた(試験片No.1〜13)。
また従来例の為に、クロメート処理を行った鋼板も作成した(試験片No.14、15)。鋼板表面にクロメート処理として鋼板表面にCr付着量は200〜400mg/mとなるようクロメート処理液を塗布し、鋼材到達温度が100℃となるよう加熱し乾燥させた。
作成した塗料の塗装はスプレー塗装により行った。乾燥膜厚は50〜250μmの間に調整した。バリア層を設ける試験片No.5〜14については、塗装後常温で24時間乾燥させた後バリア層の被覆を行った。バリア層を設けない試験片No.1〜4および15については、塗装後常温で7日間乾燥させて防食被覆鋼板とした。
バリア層はポリウレタン樹脂の市販品である「パーマガード137(第一工業製薬株式会社製、主剤:Aクロ(Z)、硬化剤:B、主剤:硬化剤比率=2.7:1)」を使用し、スプレー塗装により塗装した。乾燥膜厚は2.0〜3.5mmとした。塗装後常温で7日間で硬化させることにより試験片No.5〜14の防食被覆鋼板を得た。
表3に塗装条件並びに温塩水浸漬試験および密着強度試験結果を示した。
(評価方法)
(1)温塩水浸漬試験
試験片の一つの端部について研削により端部を揃えたのち、他の3つの端部と裏面をシリコンシール剤によってシールし、3質量%NaClの水溶液(50℃)に、60日間浸漬した。浸漬後、端部からの防食被覆層の剥離距離を測定した。
(2)密着強度試験
試験片断面積が1cmになる円筒形の鋼製治具を、防食被覆層もしくはバリア層表面に接着剤で固定し、その周囲の有機樹脂層に鋼板面に到る切り込みを入れた。次に、引張試験機により、試験材側を固定し、鋼製治具を5mm/minの一定速度で引っ張り、破断に到る最大荷重を測定し、この測定値を密着強度とした。この試験で密着強度が80kg/cm以上であれば、バリア層自体の強度を超えるものであり実用上問題が無く使用にできることを確認している。
表3の結果によれば、No.1〜9の防食被覆鋼材は、温塩水浸漬剥離距離が4.5mm未満であり試験片No.10、11、13の防食被覆鋼材に比べて、耐食性に優れ、試験片No.12に比べて密着性に優れ、試験片No.14、15のクロメート処理を行った防食被覆鋼材と同等の耐食性と密着性を示した。
Figure 2011042753
本発明の防食被覆鋼材は、耐食性と密着性に優れるので、より過酷な環境、たとえば海洋、港湾、河川の鋼構造物などの用途分野に使用する防食被覆鋼材として利用することができる。

Claims (7)

  1. 導電性ポリマー、樹脂、プロトン供与機能を有する顔料、および溶剤を含有し、前記導電性ポリマーの含有量が、前記樹脂と前記導電性ポリマーとの合計量を100質量部とした場合に対し、0.1質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする塗料組成物。
  2. 前記導電性ポリマーがポリアニリン及びその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
  3. 前記導電性ポリマーがポリピロール及びその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
  4. 前記プロトン付与機能を有する顔料が酸触媒である金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
  5. 前記請求項1〜4記載の塗料組成物を、鋼材表面に塗布することを特徴とする防食被覆鋼材の製造方法。
  6. 前記請求項1〜4記載の塗料組成物を鋼材表面へ塗布する防食被覆鋼材の製造方法であって、形成された塗膜の乾燥膜厚が10〜200μmであり、さらにその上に、樹脂および顔料からなるバリア層を形成し該バリア層の乾燥膜厚が1.0〜5.0mmであることを特徴とする防食被覆鋼材の製造方法。
  7. 前記請求項5〜6の製造方法によって製造される防食被覆鋼材。
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