JP2011041876A - 分級装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サブミクロンオーダーの微粒子を含む流体であっても分級効率が高く、しかも大量の流体を処理できる分級装置を提供する。
【解決手段】反応管12は、微小粒子自己凝集反応域S1、粗大化整粒域S2、分級域S3を備えており、反応管12に供給される流体(被処理液)は、分離させる成分に応じてpH値が調整される。このようにすれば、pH値に対応する成分の粒子が凝集され、その凝集が促進されて粒子の粒子径が大きくなるに従い、粒子の沈降速度が被処理液の上昇速度よりも大きくなると、粒子が分級域S3から排出されなくなる。したがって、反応管12の長さや流体(被処理液)の上昇速度、凝集剤の充填量等を好適に設定することで、分級効率の高い分級装置10を構成することが可能となる。
【選択図】図2

Description

本発明は、サブミクロンオーダーの微粒子が分散した研削、洗浄廃液等の被処理液において個液分離を行うと同時に成分毎に分級する分級装置に関するものである。
微粒子を含んだ研削、洗浄廃液などの被処理液(スラリー)を、微粒子等の固形分と溶媒とに分離するため、例えば沈殿法、加圧浮上法、遠心分離法がよく用いられている。上記沈殿法や加圧浮上法では、サブミクロンオーダーの微粒子を含んだスラリーの場合、微粒子の移動速度が遅いため分離に非常に長い処理時間を要する。また、大量の被処理液を処理するには、大きな沈殿槽や装置が必要となる。これに対して、上記サブミクロンオーダーの微粒子を分離するため、凝集剤が利用されることもあるが、多量の凝集剤が必要となり、分離されたものには多くの不純物が入り込むなどして、その再利用が妨げられていた。また、遠心分離法では、微粒子に対して数千Gという大きな遠心力が必要となり、しかも、停止時において液体の乱れが生じることから、分級の精度が低下する。一例として、シリコンウェハー切断時の廃液において、2段遠心分離法を用いた分離の場合、例えば遠心力400Gをかけた1段目の分離で遊離砥粒を分離回収し、3500Gをかけた2段目の分離で切断した際の粉であるポリシリコンが回収されるが、1段目の回収率が85%、2段目の回収率が45%と必ずしも十分な値ではなかった。しかも、上記方法は、固形分と液体とを分離するものであるため、分離された固形分は、多くの種類の物質を含み、再利用するにはさらに多くの処理が必要となる。
特許第2989018号公報 特許第4029054号公報 特開2002−79138号公報 特許第3655811号公報 特許第2640901号公報 特許第2841008号公報 特開2007−175568号公報 特許第1563543号公報 特許第4114091号公報
また、特許文献1、2、4では、乱流が発生しないように形成された向流分級装置が開示されているが、サブミクロンオーダーの微粒子では、沈殿速度が低く、微粒子の凝集も生じないため、微粒子と溶媒との分離が不可能となる。さらに、特許文献2、5〜9では、凝集剤として、塩化マグネシウムまたは塩基性硫酸マグネシウムを用いた液体浄化装置が開示されているが、液体が流動されないので、大量の被処理液を処理するのが困難となり、少しでも多くの被処理液を処理するには装置が大型化する欠点があった。さらに、特許文献2、5〜9で使用されている凝集剤は、水に溶ける性質があるので、流動層などで使用した場合、極めて短時間で自己崩壊するため、繰り返しの使用が困難となる問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、サブミクロンオーダーの微粒子を含む被処理液であっても分級効率が高く、しかも大量の流体を処理できる分級装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)反応管の下部から被処理液が供給されて上部より分級された処理液が排出される流動形式の分級装置であって、(b)前記反応管は、下部から順番に、凝集剤を含む充填材が充填されて自己凝集を促進させる微小粒子自己凝集反応域、その微小粒子自己凝集反応域において前記自己凝集が始まった粒子の凝集をさらに促進させてその粒子を分離可能な大きさまで成長させる粗大化整粒域、凝集された前記粒子を分離させる分級域を備えており、(c)前記反応管に供給される被処理液は、分離させる成分に応じてpH値が調整されたものであることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の分級装置において、(a)前記反応管は、分離させる成分に応じて複数個備えられ、(b)前記反応管のうち所定の反応管において分級された前記処理液が被処理液として他の反応管に供給され、(c)各反応管内にそれぞれ供給される被処理液のpH値は、分離させる成分に応じて異なることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の分級装置において、前記充填材は、樹脂ペレットと凝集剤とが混合された状態で構成され、前記凝集剤は、粒状の塩基性硫酸マグネシウムで構成され、前記樹脂ペレットと混合される際に粉化せず、使用中において自己崩壊しないように粒強度が強化されていることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の分級装置において、前記充填材は、体積比が55%以上の樹脂ペレットと、体積比が45%以下の凝集剤とが混合された状態で構成されることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1つの分級装置において、前記反応管は、下部から上部に移動するに従って、その断面積が大きくなることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の分級装置によれば、前記反応管は、下部から順番に、凝集剤を含む充填材が充填されて自己凝集を促進させる微小粒子自己凝集反応域、その微小粒子自己凝集反応域において前記自己凝集が始まった粒子の凝集をさらに促進させてその粒子を分離可能な大きさまで成長させる粗大化整粒域、凝集された前記粒子を分離させる分級域を備えており、前記反応管に供給される被処理液は、分離させる成分に応じてpH値が調整されるものである。このようにすれば、pH値に対応する成分の粒子が凝集され、その凝集が促進されて粒子の粒子径が大きくなるに従い、粒子の沈降速度が被処理液の上昇速度よりも大きくなると、粒子が分級域から排出されなくなる。したがって、反応管の長さや被処理液の上昇速度、凝集剤の充填量等を好適に設定することで、分級効率の高い分級装置を構成することが可能となる。また、分級装置は、流動形式であるので、被処理液が連続的に供給されることで、大量の被処理液を処理することが可能となる。
また、請求項2にかかる発明の分級装置によれば、前記反応管は、分離させる成分に応じて複数個備えられ、前記反応管のうち所定の反応管において分級された前記処理液が被処理液として他の反応管に供給され、各反応管内にそれぞれ供給される被処理液のpH値は、分離させる成分に応じて異なるように構成される。このようにすれば、被処理液内の複数個の成分が各反応管内のpH値に応じて成分毎に分級されるので、その成分毎の再利用が可能となる。
また、請求項3にかかる発明の分級装置によれば、前記充填材は、樹脂ペレットと凝集剤とが混合された状態で構成され、前記凝集剤は、粒状の塩基性硫酸マグネシウムで構成され、前記樹脂ペレットと混合される際に粉化せず、使用中において自己崩壊しないように粒強度が強化されているので、凝集剤の寿命が長くなり、繰り返しの使用が可能となる。
また、請求項4にかかる発明の分級装置によれば、前記充填材は、体積比が55%以上の樹脂ペレットと、体積比が45%以下の凝集剤とが混合された状態で構成されるので、凝集剤を必要以上に使用することが抑制される。
また、請求項5にかかる発明の分級装置によれば、前記反応管は、下部から上部に移動するに従って、その断面積が大きくなるので、分級域での被処理液の上昇速度がさらに緩和されて回収効率が向上する。また、上部に向かうに従って反応管内の体積が増加するに従い、単位時間あたりの被処理液の処理量を増加させることができる。
本発明の一実施例の分級装置の概略構成を示す図である。 図1の反応管を拡大して説明する図である。 分離すべき固形分とそれに対応して被処理液に付与されるpH値を一例として表にしたものである。 GC砥粒(#1200)を含んだ未使用の研削液の粒度分布を示す図である。 マルチワイヤーソーによってシリコンウェハーを切断し、脱鉄処理をした廃液(被処理液)の粒度分布を示す図である。 シリコンウェハー切断後の廃液を1週間放置した後の粒度分布を示す図である。 図1の分級装置において、GC砥粒分級後の廃液の粒度分布を示す図である。 ポリシリコン分級後の廃液中の全SiO量を示す図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の分級装置10の概略構成を示す図である。分級装置10は、分離させる固形分に応じて複数個(図1において3個)の反応管12(12a、12b、12c)を備えており、各反応管12(以下、特に区別しない場合には反応管12と記載する)において所定の固形分が分離されるように構成される。そして、所定の反応管において分級された流体(処理液)が他方の反応管において分級される流体(被処理液)として他の反応管に供給される。具体的には、反応管12a下部に位置する流体供給部18aから供給された流体(被処理液)が反応管12aによって分級される。そして、分級された流体(処理液)が反応管12aの上部に位置するオーバーフロー部20aから排出され、その排出された流体(処理液)が連絡管13aを通って反応管12bにおいて分級される流体(被処理液)として反応管12b下部に位置する流体供給部18bから供給される。また、反応管12bによって分級された流体(処理液)が反応管12bの上部に位置するオーバーフロー部20bから排出され、その排出された流体が連絡管13bを通って反応管12cにおいて分級される流体(被処理液)として反応管12c下部に位置する流体供給部18cから供給される。さらに、反応管12cによって分級された流体(処理液)が反応管12cの上部に位置するオーバーフロー部20cから排出される。上記のように、本実施例の分級装置10は、流体が各反応管12を順次通過することで、成分毎(固形分毎)に分級される多段式の流動形式の分級装置となる。
また、各反応管12の流体供給部手前には、流体のpH値を調整するためのpH値調整装置14(14a、14b、14c)がそれぞれに設けられている。このpH値調整装置14によってそれぞれの反応管12内のpH値が適宜調整される。pH値調整装置14は、例えば水酸化カリウムや苛性ソーダ等を添加することで、流体内のpH値を調整する。そして、反応管12内において、凝集された粒子が分離され、定量抜き出し口22(22a、22b、22c)から排出される。また、排出された粒子は、例えば固形分回収装置16(16a、16b、16c)によって回収され、適宜再利用される。上記のように構成されることで、各反応管12において所定の成分が分級され、反応管12の個数と同じ数の成分が取り出される。なお、具体的な流体中の所定の成分分級については、以下に説明する。
図2は、図1の反応管12aを拡大して示した図である。なお、他の反応管(12b、12c)においても、基本的には反応管12aと同様の構造であるため、その説明を省略する。反応管12aは、鉛直下部から上部に移動するに従って、その断面積が大きくなるように円錐状に形成された反応槽或いは反応容器である。そして、pH値調整装置14aを介することでpH値が調整された流体(被処理液)が流体供給部18aから反応管12a内へ供給される。そして、供給された流体は、反応管12aの上部に向かって徐々に上昇し、最終的にはオーバーフロー部20から排出される。
ここで、本実施例の反応管12aは、内部において3つの領域に分割される。具体的には、反応管12aの鉛直下方から順番に、凝集剤を含む充填材21が充填されて自己凝集を促進させる微小粒子自己凝集反応域S1、その微小粒子自己凝集反応域S1において自己凝集が始まった微粒子の凝集をさらに促進させて微粒子を分離可能な大きさにまで成長させる粗大化整粒域S2、凝集された微粒子を分離させる分級域S3に分割される。なお、図2において、各領域の境界は、破線に示すように分割されているが、実際にはそれらの領域を仕切る部材等は存在しない。
微小粒子自己凝集反応域S1(以下、自己凝集反応域S1と記載)には、自己凝集反応域S1での流れを完全層流とする整流効果を得るための樹脂ペレットと凝集を促進させるペレット状の凝集剤とが互いに混合されて充填されている。この樹脂ペレットと凝集剤とで、充填材21が構成される。また、自己凝集反応域S1の下端には、例えば金属メッシュ等の通液性の支持壁24が張られており、充填材21の落下が防止されている。上記充填材21を構成する樹脂ペレットおよび凝集剤は、それぞれ反応管12a内に供給される流体の比重よりも重くなるように構成されおり、充填材21の浮上が防止される。
上記樹脂ペレットは、例えば直径1mm程度、長さ5〜10mm程度に成形される。そして、樹脂ペレットは、チャネリングを発生させず、反応管12a内を均一的な流れにするために使用される。これにより、流速が大きくなっても、十分な自己凝集反応が起こり、微粒子、コロイドの凝集が開始される。
また、上記凝集剤は、例えば繊維状の塩基性硫酸マグネシウムがペレット状に形成されたものであり、樹脂ペレットと同様に、例えば直径1mm程度、長さ5〜10mm程度に成形されている。自己凝集反応域S1では、流体中の微粒子、コロイドの移動速度は、流体内のブラウン運動や流れ等によって遮られるので、非常に遅くなる。したがって、凝集剤を用いて自己凝集を促進させる。
凝集剤は、例えば、多数の穴が形成されている金型から塩基性硫酸マグネシウムが押し出されることで上記形状に成形する公知の押し出し造粒機によって成形される。なお、金型から押し出された凝集剤は、自重によって5〜10mm程度の長さで自動的に切断されることで上記形状となる。
ところで、凝集剤である塩基性硫酸マグネシウムは水に溶けやすく自己崩壊しやすい性質を有している。これに対して、本実施例の凝集剤は、押し出し造粒機によって上記形状に成形された後、樹脂ペレットとの摩擦による自己崩壊を防止し、相互の繰り返し接触に耐える圧壊強度を有するように、例えばガラス粉などの無機材料によって粒強度が強化される。例えば、押し出し造粒機によって成形された凝集剤に対して、ガラスなどの無機材料を細かい粒子状にして飛散させ、塩基性硫酸マグネシウムの繊維の交点に絡みつく程度に付着させる。そして、熱処理を実施して、無機材料を固着させることで、塩基性硫酸マグネシウムの繊維と繊維との交点を強化する。これにより、凝集剤は、圧壊強度が向上(直径1mm、長さ5mmのときの圧縮強度が1000g以上)し、樹脂ペレットと混合する際に粉化せず、使用中の自己崩壊が防止される。また、凝集剤の表面は、凝集を促進するイオンを放出させるため、完全にガラス化せず、気孔率60%以上、平均細孔径0.35μm以上程度とされる。上記、特性は、無機材料の選択や塩基性硫酸マグネシウムへの付着量によって適宜調整される。また、無機材料の選択は、流体に溶けず、pH値の変化に対して耐性があるものが選択される。上記のような性質があれば、有機材料であっても構わない。
また、充填材中の凝集剤の含有量は20vol%以上含まれることが望ましく、より望ましくは20vol%以上であって、且つ、45vol%以下(樹脂ペレット55vol%以上)であるのが望ましい。上記数値は、凝集剤の含有量が20vol%未満となると、凝集効果が低下することが実験的に確認されており、一方、含有量が45vol%を越えると、凝集効果が飽和することが実験的に確認されているためである。
粗大化整粒域S2では、微小粒子自己凝集反応域S1において自己凝集が始まった粒子の凝集をさらに促進させ、固形分の分離に必要な大きさまで成長させる。具体的な粒子の大きさ(粒子径)は分離速度等に応じて変化するが、反応管12aから供給される流体の上昇速度より、粒子の沈降速度が早くなる大きさにまで成長させる。粗大化整粒域S2において、上記大きさにまで粒子が成長するように粗大化整粒域S2の鉛直方向の長さ(高さ)や断面積(直径)が設定される。上記粗大化整粒域S2の長さや断面積は、予め実験的に求められ、上記条件(粗大化整粒域S2において粒子の沈降速度が流体の上昇速度よりも大きくなる)を満足する範囲で最適な大きさとされる。具体的には、予め設定されている反応管12aへ供給される流量に対して、粒子の成長速度等を考慮して、粒子の滞留時間中に粒子が成長して粒子の沈降速度が流体の上昇速度よりも大きくなる粗大化整粒域S2の断面積および長さの最適な組合せが求められる。例えば、粗大化整粒域S2の断面積および長さが大きくなると、流体の上昇速度が抑制されると共に、粒子の滞留時間が長くなり、粒子が確実に成長する。これより、反応管12aが大型化しない範囲において、粒子が上記条件を満足する大きさにまで成長可能な寸法に設定される。なお、上記断面積や長さは、凝集剤の含有量等も考慮して求められる。また、粗大化整流域S2には、定量抜き出し部22aが設けられており、分離された粒子が適宜抜き取られ、固形分回収装置16aによって固形分が回収される。
分級域S3では、流体の上昇速度をさらに抑制し、粗大化整流域S2において成長した粒子が分級域S3の上端部であるオーバーフロー部20から排出されないように、分級域S3の形状が設定されている。例えば、分級域S3での上昇速度が0.1m/min以下となる程度に形状が設定される。なお、本実施例の反応管12aは、円錐形状であるので、粗大化整粒域S2の寸法も考慮して、分級域S3での上昇速度が0.1m/min以下となる程度に、反応管12aの角度θ(広がり勾配)が設定される。そして、上澄み液として残った流体がオーバーフロー部20から排出され、次の反応管12bに供給される。上記より、凝集される粒子は、反応管12a内において成長し、自重によって落下するので、オーバーフロー部20aまで到達せず、定量抜き出し部22aより取り出されて分離される。
ここで、反応管12aで分離させる成分は、pH値に基づいて決定される。すなわち、反応管12aに供給される流体のpH値が、凝集させる成分に応じて調整される。図3は、所定の成分を一例として凝集が開始されるpH値を表にしたものである。図3において、例えばGC砥粒(#1200(粒度)、SiC砥粒)やポリシリコン等が凝集されるpH値が示されている。例えば、GC砥粒(#1200、SiC砥粒)では、pH値が8.5〜9.0に調整されると凝集が開始される。また、例えばシリコンウェハー切断時の切断粉であるポリシリコンでは、pH値が9.5に調整されると凝集が開始される。これより、例えば反応管12aにGC砥粒を含んだ流体が供給され、pH値調整装置14aによって流体のpH値が8.5〜9.0に調整されると、反応管12aにおいて、GC砥粒(#1200)の凝集が実行されて分離される。上記より、反応管12a内のpH値を凝集させる成分に応じた値とすることで、その反応管12内においてその成分の凝集が実行されて分離される。なお、上記成分の凝集が開始されるpH値は、予め実験によって求められる。ここで、本実施例の凝集剤である塩基性硫酸マグネシウムは、酸性になると溶解する性質があるので、実験の際には、pH値を7.0以上でpH値を変化させて凝集が開始されるpH域を見つけ出す。この際、凝集させる成分に対応するゼータ電位を参考にするとよい。
上記より、pH値が調整された流体が反応管12aに供給されると、自己凝集反応域S1においてpH値に対応する成分の凝集が速やかに開始され、さらに粗大化整流域S2において、凝集が促進されて粒子が分離可能な大きさにまで成長し、分級域S3において、流体の上昇速度が抑制されるに伴い、粒子の沈降速度が上昇速度よりも大きくなって分離される。また、この分離された粒子は、粗大化整流域S2に設けられている定量抜き出し部22より取り出される。そして、分級された流体は、反応管12bへ被処理液としてさらに供給され、他の成分の分級が実施される。このとき、分離させる成分に応じて各反応管12のpH値は異なるものとなる。
次に一例として、マルチワイヤーソーによるシリコンウェハー切断後の研削液の廃液(流体)の分級装置10による成分分級について説明する。上記廃液は被処理液に相当し、予め強力な電磁石を使用することで、脱鉄処理される。そして、脱鉄処理後の廃液の組成は、プロピレングリコール45%、緑色炭化珪素(GC)砥粒(#1200、SiC砥粒、平均粒径14.43μm)43%、アミン5%および切粉ポリシリコン7%と測定された。
図4に、参考としてGC砥粒(#1200)を含んだ未使用の研削液の粒度分布を測定した結果を示す。なお、図4は、レーザー型粒度分布測定器によって測定され、横軸が廃液内の粒子の粒子径を示しており、縦軸がその粒子径に対応するレーザー光の散乱の強さ(頻度)を示している。すなわち、頻度が大きい程、それに対応する粒径の粒子の分布が多くなる。図4に示すように、未使用の研削液では、13μmにピークをもつ粒度分布が検出される。また、図5に、マルチワイヤーソーによってシリコンウェハーを切断し、脱鉄処理をした廃液の粒度分布の測定結果を示す。図5に示すように、13μmと0.5μm付近にピークを持つ粒度分布が測定された。上記より、シリコンウェハーの切粉であるポリシリコン切粉の粒径が0.5μm程度の微小粒径であることがわかる。さらに、図6に参考としてシリコンウェハー切断後の廃液を1週間放置した後の粒度分布を示す。図5および図6の粒度分布を比較すると、ほぼ同じ粒度分布を示していることから、GC砥粒(#1200)、ポリシリコン共に静置(沈殿)では分離できないことがわかる。
そして、固形分であるGC砥粒(#1200)およびポリシリコンを廃液から分離するため、2本の反応管12(12a、12bとする)による分級試験を実施した。反応管12として、それぞれ直径が15cmで高さ2mの円筒形状のものが使用され、廃液がそれぞれの反応管12内を通過するように連結されている。また、反応管12内には、凝集剤を20vol%含んだ充填材21がそれぞれ高さ50cm程度まで充填されている。なお、本実験では、円錐形状ではなく、円筒形状の反応管12を使用した。通常であれば、反応管上部での廃液の上昇速度を抑制するために、上部に向かう程直径が大きくなる円錐形状が好ましいが、本実験では、廃液の上昇速度を考慮して廃液の供給量を調整した。
ここで、反応管12aでは、GC砥粒(#1200)を分級するため、pH値調整装置14aによって廃液のpH値が8.5〜9.0程度に調整される。また、反応管12bでは、ポリシリコンを分級するため、pH値調整装置14bによって廃液のpH値が9.5程度に調整される。先ず、一本目の反応管12aに廃液の上昇速度が0.03m/minで廃液を供給し、オーバーフローした廃液の粒度分布を測定すると、図7に示すようになった。具体的には、13μm付近でのピークが無くなったことで、廃液からGC砥粒(#1200)が反応管12aによって分離されたことがわかる。
次に、2本目の反応管12bに反応管12aから排出された廃液(処理液)が被処理液として供給される。反応管12bでは、廃液の上昇速度が0.001m/minとなるように供給され、反応管12bからオーバーフローされる廃液(上澄み液)を全シリカ分析(アルカリ溶解−重量法)で調べると、図8に示すように、残留シリカが9ppmとなり、無色透明な溶媒となった。以上より、廃液中の固形分であるGC砥粒(#1200)およびポリシリコン切粉と溶媒であるプロピレングリコールとを高い精度で分級分離することが可能となった。
ここで、比較例として、同じ反応管12a、12bを用いて充填材21を充填しなかった場合においても同様の実験を実施した。なお、充填材21が充填されない他は、実施例と同様の条件下で実施されている。その結果、GC砥粒(#1200)およびポリシリコン共に分離することが出来ない結果となった。したがって、充填材21が必要となることがわかる。
また、比較例として、同じ反応管12a、12bを用いて凝集剤に強化処理(圧壊強度向上処理)がなされていない状態においても同様の実験を行った。なお、強化処理が実施されていない他は実施例と同様の条件で実施されている。その結果、実験1回目においては実施例と同様の結果が得られたが、流体の供給により凝集剤が他の凝集剤や樹脂ペレットと摩擦を起こすことで自己崩壊するに伴い、それ以降において反応管12aのオーバーフロー部20から排出された廃液には、GC砥粒(#1200)が含まれる結果となった。したがって、凝集剤に強化処理が実施されない場合、繰り返しの使用が困難となる。或いは、廃液の処理量が多い場合には、比較的短時間で使用が困難となる。
上述のように、本実施例によれば、反応管12は、鉛直下方から順番に、凝集剤を含む充填材21が充填されて自己凝集を促進させる微小粒子自己凝集反応域S1、その微小粒子自己凝集反応域S1において前記自己凝集が始まった粒子の凝集をさらに促進させてその粒子を分離可能な大きさまで成長させる粗大化整粒域S2、凝集された前記粒子を分離させる分級域S3を備えており、反応管12に供給される流体(被処理液)は、分離させる成分に応じてpH値が調整される。このようにすれば、pH値に対応する成分の粒子が凝集され、その凝集が促進されて粒子の粒子径が大きくなるに従い、微粒子の沈降速度が被処理液の上昇速度よりも大きくなると、微粒子が分級域S3から排出されなくなる。したがって、反応管12の長さや流体(被処理液)の上昇速度、凝集剤の充填量等を好適に設定することで、分級効率の高い分級装置10を構成することが可能となる。また、分級装置10は、流動形式であるので、流体(被処理液)が連続的に供給されることで、大量の流体(被処理液)を処理することが可能となる。
また、本実施例によれば、反応管12は、分離させる成分に応じて複数個備えられ、反応管12のうち所定の反応管において分級された流体が被処理液として他の反応管に供給され、各反応管内にそれぞれ供給される流体(被処理液)のpH値は、分離させる成分に応じて異なるように構成される。このようにすれば、流体(被処理液)内の複数個の成分が各反応管内のpH値に応じて成分毎に分級されるので、その成分毎の再利用が可能となる。
また、本実施例によれば、充填材21は、樹脂ペレットと凝集剤とが混合された状態で構成され、凝集剤は、粒状の塩基性硫酸マグネシウムで構成され、樹脂ペレットと混合される際に粉化せず、使用中において自己崩壊しないように粒強度が強化されているので、凝集剤の寿命が長くなり、繰り返しの使用が可能となる。
また、本実施例によれば、充填材21は、体積比が55%以上の樹脂ペレットと、体積比が45%以下の凝集剤とが混合された状態で構成されるので、凝集剤を必要以上に使用することが抑制される。
また、本実施例によれば、反応管12は、下部から上部に移動するに従って、その断面積が大きくなるので、分級域S3での被処理液の上昇速度がさらに緩和されて回収効率が向上する。また、上部に向かうに従って反応管内の体積が増加するに従い、単位時間あたりの被処理液の処理量を増加させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、分級される成分の一例として、GC砥粒(#1200)およびポリシリコンが分級されているが、本発明は上記成分に限定されるものではなく、分級させる成分に応じたpH値に調整することで、他の成分であっても分級させることができる。
また、前述の実施例の分級装置10は、3段構成で流体が連続的に処理されるものであったが、各段毎のバッチ式であってもよい。このようなバッチ式の場合、反応管12の前に設けられたタンク内でバッチ式でpH調整される。
また、前述の実施例では、図1において分級装置10が3つの反応管12で構成されているが、必ずしも3つに限定されるものではなく、分級させる成分の数に応じて適宜変更される。
また、前述の実施例における具体的な数値は、本実施例においてのみ適用されるものであり、分級される流体の成分等に応じて適宜変更される。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:分級装置
12:反応管
21:充填材
S1:微小粒子自己凝縮反応域
S2:粗大化整粒域
S3:分級域

Claims (5)

  1. 反応管の下部から被処理液が供給されて上部より分級された処理液が排出される流動形式の分級装置であって、
    前記反応管は、鉛直下方から順番に、凝集剤を含む充填材が充填されて自己凝集を促進させる微小粒子自己凝集反応域、該微小粒子自己凝集反応域において前記自己凝集が始まった粒子の凝集をさらに促進させて該粒子を分離可能な大きさまで成長させる粗大化整粒域、凝集された前記粒子を分離させる分級域を備えており、
    前記反応管に供給される被処理液は、分離させる成分に応じてpH値が調整されたものであることを特徴とする分級装置。
  2. 前記反応管は、分離させる成分に応じて複数個備えられ、
    前記反応管のうち所定の反応管において分級された前記処理液が被処理液として他の反応管に供給され、
    各反応管内にそれぞれ供給される被処理液のpH値は、分離させる成分に応じて異なることを特徴とする請求項1の分級装置。
  3. 前記充填材は、樹脂ペレットと凝集剤とが混合された状態で構成され、
    前記凝集剤は、粒状の塩基性硫酸マグネシウムで構成され、前記樹脂ペレットと混合される際に粉化せず、使用中において自己崩壊しないように粒強度が強化されていることを特徴とする請求項1または2の分級装置。
  4. 前記充填材は、体積比が55%以上の樹脂ペレットと、体積比が45%以下の凝集剤とが混合された状態で構成されることを特徴とする請求項3の分級装置。
  5. 前記反応管は、下部から上部に移動するに従って、その断面積が大きくなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの分級装置。
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