JP2011037131A - 基体、基体の製造方法、及び管状体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芯体12と離型層16と、の間に中間層14を設けて、離型層16の外側の面の水の接触角を40°以上70°以下とし、中間層14における離型層16側の面の水の接触角を離型層16の接触角未満とする。
【選択図】図1
Description
特許文献3には、端部全領域の表面水接触角と、中央部全周域の表面水接触角との比を、0.5〜0.9の範囲となるように調整した円筒状の基体を用いる技術が提案されている。特許文献3では、該円筒状の基体の表面に熱硬化性樹脂組成物を塗布した後に加熱し、加熱された熱硬化性樹脂組成物による塗膜を芯体から分離することによって管状物を作製している。
特許文献4には、基体表面に形成されている離型層表面に前処理を施して水の接触角を50°以下とした後に、該離型層上に新たに、水の接触角が100°の離型層を形成した金型を用いる技術が提案されている。特許文献4では、この金型上に熱硬化性樹脂組成物を塗布して加熱硬化し、該金型から分離することによって管状物を製造している。
請求項1に係る発明は、円柱状の芯体と、
前記芯体上に設けられ、外側の面の水の接触角が40°以上70°以下である離型層と、前記芯体と前記離型層との間に設けられ、前記離型層側の面の水の接触角が該離型層の接触角未満である中間層と、を備えた基体である。
離型層16の外側の面の水の接触角とは、離型層16における外側の面(芯体12とは反対側の面)の水の接触角を示している。この離型層16の外側の面の水の接触角が、40°以上70°以下であると、詳細を後述する管状体を作製において、離型層16上に塗布された熱硬化性樹脂が熱を加えられることにより硬化することで形成された管状体の一部が基体10側に付着することなく基体10から剥がれる程度の離型性(以下、単に「離型性」と称する)が実現され、且つその離型性の劣化が抑制されると考えられる。これは、基体10の最も外側の層を構成する離型層16の外側の面の水の接触角が40°以上70°以下であることから、該離型層16の外側の面が、上記離型性が実現される程度の離型性を有しており、且つ、この離型層15が芯体12側(詳細には、中間層14)から剥がれることが抑制されるためと考えられる。このため、結果的に、基体10自体の外側の面における離型性が長期間に渡って維持されることとなり、基体10の表面(外側の面)の離型性の劣化が抑制されると考えられる。
なお、後述する管状体の作成において用いられる熱硬化性樹脂の溶媒は、極性溶媒であることから、離型層16の外側の面の水の接触角が40°以上70°以下とすれば、作成される管状体の基体10からの良好な離型性が実現されると考えられる。
なお、この「密着性」とは、剥がれにくさを示している。具体的には、「離型層16の芯体12側への密着性が向上する」とは、芯体12上に直接離型層16を設けたときに、芯体12と離型層16とを剥がすために必要な力に比べて、芯体12上に中間層14を介して離型層16を設けたときに離型層16を芯体12側から剥がすときに必要な力が大きいことを示している。
中間層14を、複数層の多層構成とした場合には、この中間層14を構成する複数の各層は、離型層16より水に対する接触角が小さい範囲内で、最も離型層16側に設けられた層から最も芯体12側に設けられた層へ向かって、離型層16側の面の水に対する接触角が小さいことが良い。
具体的には、中間層14の層厚は、0.05μm以上0.2μm以下であってもよいし、0.1μm以上0.2μm以下であってもよい。
これによって、上述のような、芯体12上に、離型層16側の面の水の接触角が離型層16より小さい中間層14が形成されるとともに、該中間層14上に、外側の面の水の接触角が40°以上70°以下の離型層16が形成されて、基体10が作製される。
芯体12の構成材料としては、その表面に中間層14及び離型層16が形成されるものであれば特に限定されないが、基体10の作製時に加えられる熱や、基体10を用いて製造される管状体(詳細は後述)の製造時に加えられる熱によって、変形や変質が無く、また錆びの発生しにくい材質が良い。具体的には、芯体12の構成材料としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属が挙げられる。
この第1の耐熱材料としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、及び無機系材料等が挙げられる。なお、第1の耐熱材料としては、シリコーン系樹脂と無機系材料との混合物を用いてもよいし、フッ素系樹脂と無機系材料との混合物を用いてもよい。
離型層16となる第2の膜の加熱温度である第2の温度より高温の第1の温度で、第1の膜を加熱することによって、離型層16より水に対する接触角の小さい中間層14が形成される。
この第2の耐熱材料としては、シリコーン系樹脂、及びフッ素系樹脂が挙げられる。シリコーン系樹脂、及びフッ素系樹脂の具体例としては、上記第1の耐熱材料として挙げた材料が適宜用いられる。第2の塗布液に含まれる溶媒は、離型層16を構成する第2の耐熱材料の種類によって適宜選択されるが、具体的には、上記第1の塗布液に含まれる溶媒として挙げた中から適宜選択すればよい。
中間層14となる第1の膜の加熱温度である第1の温度より低温の第2の温度で、第2の膜を加熱することによって、中間層14より水に対する接触角が大きい離型層16が形成される。そして、この第2の膜の加熱温度を調整することによって、外側の面の水に対する接触角が40°以上70°以下である離型層16が形成される。
この熱硬化性樹脂溶液による塗膜の加熱温度は、加熱時間が同じ場合には、上記中間層14となる第1の膜の加熱温度、及び上記離型層16となる第2の膜の加熱温度の双方に比べて、低温であることが、中間層14及び離型層16の熱による劣化抑制の観点から良い。
この乾燥時の条件としては、例えば、熱硬化性樹脂が、ポリイミドの場合には、基体10を1rpm以上60rpm以下の回転速度で図2中矢印A方向に回転させながら、90℃以上170℃以下の温度で20分以上60分以下乾燥させればよい。
この管状体32の基体10からの分離には、管状体32の両端部と、基体10の外側の面との間に空気を流入することによって隙間を設けることによって、管状体32を基体10から分離する。これによって管状体32が作製される。作製された管状体32は、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置の中間転写ベルト、用紙搬送ベルト、定着ベルト等に用いられる。
水の接触角としては、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃50%RHの環境下で、純水を測定対象の層表面に約3.1μl滴下し、15秒後の接触角を測定した。尚、測定は、測定対象の面の全領域を15分割し、各15点について測定した測定結果の平均値を、接触角として求めた。
表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で行った。
―基体の作製―
まず、芯体を用意した。芯体としては、厚み4mmのステンレス(SUS304)板を丸めてTIG(ティグ)溶接した直径181mmの円筒状の部材を用意し、長さ600mmに切断した後、外径(直径)が180mmとなるよう切削加工を行い、芯体とした。次に、この芯体の表面を研磨加工し、切削ムラを取り除いた後、芯体の表面の全面にブラスト加工を行った。このとき芯体の表面は、全面にわたって表面粗さRaは0.3μmであった。
さらに、この第2の膜を330℃で1時間の加熱することによって焼き付け処理を行い、厚み0.2μmの離型層を形成した。この離型層の水に対する接触角を測定したところ、70°であった。これによって基体1を作製した。
上記作製した基体1上に、図2に示す塗布装置を用いて、上記作製した基体1上に、熱硬化性樹脂の溶液を塗布した。
この熱硬化性樹脂の溶液としては、25℃での粘度が約100Pa・sのPI前駆体溶液(商品名:UワニスA、宇部興産製、固形分濃度18質量%、熱膨張率28ppm)に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で30.5%混合して対向衝突型分散機により分散し、これに界面活性剤(商品名:LS009、楠本化成)を5000ppm加えた溶液(PI前駆体溶液)を用いた。
そして、このPI前駆体溶液800mlを貯留部(図2中、貯留部20参照)に入れ、ポンプを連結し、該基体1の表面に供給されるPI前駆体溶液の吐出量が50g/分となるよう調整した。ブレード(図2中、ブレード28)としては、厚さ0.4mmのステンレス板を幅20mm、長さ70mmに加工してディスペンサー(ポンプ24)の直下に取り付けた。
そして、ノズル(図2中、ノズル26)と基体10との相対移動速度を、180mm/分とし、基体1の回転数を40rpmとして、PI前駆体溶液を基体10の表面に長さ(軸方向長さ)550mmに渡って供給し、塗膜を形成した。
なお、120回実行直後における基体1の外側の面の水に対する接触角を測定したところ、40°であった。以上の結果を表1に示した。
実施例1における基体1の作製では、中間層に用いる第1の塗布液に含まれる第1の耐熱材料、及び離型層に用いる第2の塗布液に含まれる第2の耐熱材料として、シリコーン系離型剤を用いた。
本実施例2では、このシリコーン系離型剤に代えて、フッ素樹脂(商品名:耐熱TFEコート、ファインケミカルジャパン製)を用いた以外は、実施例1と同じ材料及び条件で基体2を作製した。
なお、100回実行直後における基体1の外側の面の水に対する接触角を測定したところ、40°であった。以上の結果を表1に示した。
実施例1における基体1の作製では、第2の塗布液による第2の膜を330℃で1時間の加熱することによって焼き付け処理を行って、離型層を形成した。本実施例3では、該第2の膜の加熱温度を400℃(加熱時間は1時間)とした以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で基体3を作製した。
なお、上記100回の管状体1の形成及び分離の実行直後における基体3の外側の面の水に対する接触角を測定したところ、40°であった。以上の結果を表1に示した。
表1に従って、中間層及び離型層の加熱温度及び時間を変化させた以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で基体4〜6をそれぞれ作製した。そして、実施例1で記載した方法により、基体1に代えてそれぞれ基体4〜6上に管状体1を形成した後に該管状体1を基体4〜6から分離する処理を繰り返し実行する評価を行った。その結果を表1に示した。
実施例1における基体1の作製では、中間層用の第1の塗布液による第1の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って、中間層を形成した。本比較例1では、該第1の膜の加熱温度を330℃(加熱時間は1時間)とした以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較基体1を作製した。
なお、上記17回の管状体1の形成及び分離の実行直後における比較基体1の外側の面の水に対する接触角を測定したところ、30°であった。以上の結果を表2に示した。
実施例1における基体1の作製では、中間層用の第1の塗布液による第1の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って、中間層を形成した。また、離型層用の第2の塗布液による第2の膜を330℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って離型層を形成した。
本比較例2では、該第1の膜及び第2の膜の双方の加熱温度を250℃(加熱時間は1時間)とした以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較基体2を作製した。
なお、比較例2では管状体1にしわ欠陥が発生したため、比較基体2上に管状体1を形成した後に該管状体1を比較基体2から分離する処理を繰り返し実行する評価は行わなかった。
実施例1における基体1の作製では、中間層用の第1の塗布液による第1の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って、中間層を形成した後に、離型層用の第2の塗布液による第2の膜を330℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って離型層を形成した。
本比較例3では、実施例1で作製した基体1において中間層を設けずに、芯体上に直接離型層を形成した以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較基体3を作製した。
この11回の管状体1の形成及び分離の実行直後において、管状体1の内側の面を観察したところ、分離時に付着が確認された箇所には離型剤の固着が確認された。これは、離型層と芯体との密着性が弱く、離型層が基体側から剥がれて管状体側に転写されたためと考えられる。
なお、上記11回の管状体1の形成及び分離の実行直後における比較基体3の外側の面の水に対する接触角を測定したところ、30°であった。以上の結果を表2に示した。
実施例1における基体1の作製では、中間層用の第1の塗布液による第1の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って、中間層を形成した後に、離型層用の第2の塗布液による第2の膜を330℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って離型層を形成した。
本比較例3では、実施例1で作製した基体1において、離型層を設けずに中間層のみを設けた構成とした以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較基体4を作製した。なお、比較例4における中間層の形成は、実施例1における中間層と同じ条件及び同じ材料で行った。
実施例1における基体1の作製では、中間層用の第1の塗布液による第1の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って、中間層を形成した後に、離型層用の第2の塗布液による第2の膜を330℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行って離型層を形成した。
本比較例3では、実施例1で作製した基体1において、離型層と中間層の位置を逆にした。すなわち、実施例1における離型層用の第2の塗布液を、中間層用の第1の塗布液として用いて、該第1の塗布液による第1の膜を330℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行い、中間層を形成した。
そして、該中間層上に、実施例1における中間層用の第1の塗布液を、離型層用の第2の塗布液として用いて、該第2の塗布液による第2の膜を420℃で1時間加熱することによって焼き付け処理を行い、離型層を形成した。これによって比較基体5を作製した。
表2に従って、中間層及び離型層の加熱温度及び時間を変化させた以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較基体6を作製した。そして、実施例1で記載した方法により、基体1に代えてそれぞれ比較基体6上に管状体1を形成した後に該管状体1を比較基体6から分離する処理を繰り返し実行する評価を行った。その結果を表2に示した。
12 芯体
14 中間層
16 離型層
Claims (4)
- 円柱状の芯体と、
前記芯体上に設けられ、外側の面の水の接触角が40°以上70°以下である離型層と、
前記芯体と前記離型層との間に設けられ、前記離型層側の面の水の接触角が該離型層の接触角未満である中間層と、
を備えた基体。 - 前記中間層の、前記離型層側の面の水の接触角が20°以上40°未満である請求項1に記載の基体。
- 円柱状の芯体の外側の面に第1の耐熱材料を含む溶液を供給し、該溶液による第1の膜を第1の温度で加熱して、前記芯体上に中間層を形成する中間層の形成工程と、
前記中間層上に第2の耐熱材料を含む溶液を供給し、該溶液による第2の膜を前記第1の温度より低い第2の温度で加熱して、前記中間層上に離型層を形成する離型層の形成工程と、
を有する基体の製造方法。 - 前記請求項1又は2に記載の基体の外側の面に熱硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、
前記熱硬化性樹脂の塗膜に熱を加える加熱工程と、
前記加熱工程によって加熱された前記塗膜としての管状体を前記基体から分離する分離工程と、
を有する管状体の製造方法。
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