実施の形態1.
図1乃至図28は実施の形態1を示す図であり、まず、図1乃至図4により、静電霧化装置100の構成を説明する。
図1乃至図4は実施の形態1を示す図で、図1は静電霧化装置100の概略構成図、図2は静電霧化装置100の側面図、図3は水供給部の冷却部8の概略構成図、図4は水印加電極2の概略構成図である。
本実施の形態の静電霧化装置100は、図1に示すように、ナノメータ(10−9m)サイズの静電ミスト1を発生するために、水印加電極2と対向電極3とを備えている。
水印加電極2は、ともに板状の胴部28と先端霧化部29から成り、胴部28に供給された水を先端霧化部29に移動(搬送)する。先端霧化部29の先端29a(突端)が、対向電極3に向くように配置される。水印加電極2は材料に多孔質体が用いられるが、ここでは特に三次元網目状構造を有する金属多孔質体である発泡金属を用いている。これについては詳細を後述する。
水印加電極2と対向電極3との間には、高電圧電源部4から供給される約4〜6kVの高電圧が、給電端子25(例えば、図9参照)を介して印加される。ここでは、対向電極3がグランド極となって電位0Vであり、水印加電極2に、−4〜−6kVのマイナスの直流電圧が印加される。
水印加電極2の胴部28の形状は略矩形であり、その胴部28の上方には、所定の距離L1(図2参照)の隙間を空けて水供給部の一部であるペルチェユニット6の冷却面に接する冷却部8の複数の冷却フィン8bが略水平方向に積層された状態で位置している。胴部28は、冷却フィン8bの積層方向に長辺方向幅(長手方向の幅)を伸ばして形成されている。すなわち、略矩形の胴部28の長辺方向(長手方向)が冷却部8の冷却フィン8bの積層方向に略一致している。
水印加電極2は、冷却フィン8bの下方に所定の距離L1の隙間を空けて位置し、冷却フィン8bの積層方向に長手方向(長辺方向)の幅を伸ばす平板状の胴部28を有している。そして、胴部28の短辺方向が冷却フィン8bの突出方向に略一致している。胴部28は、長辺方向の幅が短辺方向の幅の3倍以上ある細長い形状である。そして板状の水印加電極2は、その板厚が胴部28の短辺方向幅よりも小さいものである。
なお、胴部28の形状は略矩形と説明しているが、長辺と短辺のなす角度が直角である完全なる長方形に限定されるものではなく、短辺の長辺に対する角度が鋭角や鈍角である、すなわち、互いが平行な二辺の長辺に対して短辺が直角に接続しない平行四辺形や台形であってもよく、胴部28の形状の略矩形には、長方形だけでなく、このような平行四辺形や台形も含まれるものである。
さらに水印加電極2は、図1に示すように胴部28の長辺方向(長手方向)側面の途中に、その側面から突出するように先端霧化部29が形成されている。先端霧化部29は胴部28に連続する同じ厚さの板状突起で、その形状は上面視で三角形状である。三角形状の先端霧化部29は、底辺の面が胴部28の長辺方向側面につながり、頂点である先端29a(突端)が、対向電極3に向いている。この先端29aが対向電極3との放電部となる。なお、図1乃至図4においては、先端霧化部29である突起が一つの場合を示したが、突起が複数であってもよい。
図5は実施の形態1を示す図で、水印加電極2の変形例の概略構成図である。
また、先端霧化部29である突起の形状は、図5に示すように、胴部28につながる四角形状部分と、その四角形状部分に底辺の面がつながる三角形状部分とから成る、所謂、ホームベース形状であってもよく、その三角形状部分の頂点である先端29a(突端)を対向電極3に向けるようにしてもよい。
水印加電極2の先端霧化部29は、上面視で図1のような三角形状であっても、図5のホームベース形状であっても、胴部28と同様に、板状で厚さを有し、胴部28と一体的に形成されており、対向電極3に向かう先端29aにも厚みがあり先端29aは線状に尖っている。先端29aは線状に尖っているので、その上端と下端に二つの角部が形成されている。
先端霧化部29は、平板状の胴部28の長辺方向(長手方向)となる冷却フィン8bの積層方向に伸びる側面途中に胴部28と連続的に形成され、胴部28の長辺方向側面から対向電極3に向かって突出する板状突起であって、その形状は先端29aに向かうほど突起幅が細くなる形状で、先端29aは線状に尖った状態、もしくは線状に尖った状態に近しいくらいまで細い状態となっている。
対向電極3は、導電性のある金属もしくは樹脂にて板状に成形されたもので、略中央に開口3aを有している。この開口3aが水印加電極2の先端霧化部29と対向するように、対向電極3は、先端霧化部29の先端29aと一定の距離を隔てて位置している。
次に水印加電極2よりも上方に位置する水供給部について説明する。図1に示す静電霧化装置100は、ペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される水供給部を有する。そしてこの水供給部で生成した水を水印加電極2の胴部28上面に重力により滴下させて供給する。
放熱部7も冷却部8もそれぞれペルチェユニット6と接するベース板とそのベース板の反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数のフィンを有する。放熱部7と冷却部8の複数のフィンは、各々のフィンが通過する空気流と略平行となるように通過する空気流と略直交する方向に積層される。ここでは、空気流が概ね重力方向であるため、放熱部7と冷却部8のそれぞれのフィンは、重力方向とほぼ直交する方向となる略水平方向に積層される。なお、冷却部8を効率よく冷却するために、放熱部7の方が冷却部8よりもフィンの表面積が大きく構成されている。
図3は冷却部8の概略構成図であるが、冷却部8は、ペルチェユニット6と接するベース板8aとそのベース板8aの反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の冷却フィン8bを有している。複数の冷却フィン8bは上記のとおり略水平方向に積層される。図3に示すL2は、冷却フィン8bのその積層方向の幅であり、積層方向の一方の端に位置する冷却フィン8bの外側面から他方の端に位置する冷却フィン8bの外側面までの距離である。両端の冷却フィン8bを含み幅L2の範囲内に位置する複数の冷却フィン8bは、すべて空気中に露出されている。
また、図3に示すL4は、冷却フィン8bの突出高さであり、ベース板8a上の基端から突端までの距離、すなわちベース板8aの反ペルチェユニット側の面から冷却フィン8b突端までの距離である。ここにおいて、複数の冷却フィン8bの下端面は全面が、水印加電極2の胴部28上面と所定の距離L1を空けて対向するように露出している。
もし、冷却部8を固定する保持枠などによって上記する冷却フィン8bの下端面の基端近傍が部分的に覆われるようであれば、距離L4は、その覆われた距離の分だけマイナスしたものとする。このような場合では、距離L4は、冷却フィン8bの下端面の突出方向の露出長さとなる。
ペルチェユニット6内部には、複数のP型N型半導体が交互に直列に接続されている。低電圧電源部5から1〜5V程度の直流電圧がペルチェユニット6に印加されると、一方向に電流が流れ、ペルチェ効果によって放熱面の熱量が増え、冷却面では吸熱がなされる。これにより、放熱部7は暖められ、冷却部8は冷却される。
ペルチェユニット6によって、冷却部8の温度が通過する空気の露点以下まで冷やされると、冷却部8の冷却フィン8bの表面にはその空気中の水分が結露した結露水10が生成される。生成された結露水10は、重力により冷却フィン8bの下端に向けて冷却フィン8bの表面を伝って落下し、下端まで伝った後で冷却フィン8bから重力により下方へ滴下される。通過する空気の流れは、重力方向とほぼ同じであるため、結露水10は、冷却フィン8bの上部側の表面に生成されやすく、下流に進むにしたがって空気中の水分がなくなっていくため、結露し難くなる。冷却フィン8bの下端面ではほとんど結露しない。
放熱部7および冷却部8は、アルミニウムを材料として形成されている。アルミニウム製のフィンの一般的な水との接触角は50〜70度であるが、ここでは、少なくとも冷却フィン8bに、接触角が90度以上になるように撥水化処理を施すか、もしくは接触角が30度以下になるように親水処理を施して、生成された結露水10が冷却フィン8bの表面上を重力方向に移動しやすくし、生成された結露水10を素早く冷却フィン8bから滴下するようにしている。
なお、水の接触角とは、固体表面上に水滴を乗せ、平衡になったときの水滴表面と固体表面のなす角度であり、水滴が冷却フィン8b表面に接触している接触点において、水滴が形成する接線と冷却フィン8b表面とがなす角度のことである。
ここで冷却部8の重力方向下方には、この冷却フィン8bの下端とは図2に示すように所定長さL1の空間を介して水印加電極2が配置されている。冷却部8と水印加電極2は、互いが直接的に接触する部分を有していない。冷却フィン8bの下端から滴下された結露水10は、水印加電極2の胴部28上面に落下する。すなわち、水印加電極2の略矩形の胴部28が、冷却フィン8bの積層方向に長辺方向を伸ばし、かつ冷却フィン8bの真下(直下)に距離L1の空間を隔てて配置されているのである。
胴部28の上面に重力落下した結露水10は、金属多孔質体の水印加電極2内部に吸水され、内部の互いが三次元的につながる空隙内を表面拡散により移動する。結露水10は、このような表面拡散現象により、水印加電極2の内部にて胴部28から先端霧化部29へと搬送される。
水印加電極2の先端霧化部29の先端29a近傍まで水(結露水10)が搬送されると、グランド極である対向電極3に対して水印加電極2には、−4〜−6kVのマイナス高電圧が印加されているので、先端29a近傍の水にその高電圧がかかり、水印加電極2と同電位、すなわちマイナスの高電圧に帯電している。そのため、帯電している水は、静電界中のクーロン力の作用によって、先端29aから局所的に水印加電極2の外部へ引っ張られテーラーコーンと呼ばれる盛り上がりを形成する。このときテーラーコーンを形成している水は、水印加電極2に付いているので、引き続き帯電している。そして、作用するクーロン力が水の表面張力を超えることで、テーラーコーンを形成していた水が飛び出し、はじけるように分裂(この分裂はレイリー分裂と呼ばれている)を繰り返し、ナノメータサイズの帯電した静電ミスト1が生成される。静電ミスト1は対向電極3に向かって移動し、対向電極3の開口3aから外部へと放出される。
ここで、帯電した水を先端霧化部29の先端29aから飛び出させるためには、電界の集中が必要である。この水印加電極2は、先端霧化部29が板状で形成されていて、放電部である先端29aが線状に尖っているので、少なくとも先端29aの上端と下端の2ヶ所の角部に電界を集中させることができる。
このため、先端近傍を錘状(角錐や円錐)に形成して放電部となる先端を針状に尖らしたものでは、その針状尖端の1ヶ所でしか水のテーラーコーンが形成されないのに対して、線状に尖る先端29aでは、少なくとも上端と下端の角部2ヶ所で水のテーラーコーンを形成することができ、放電部を針状尖端とするものに比べて、静電ミスト1を効率よく多量に発生させることができる。なお、先端29aは線状に尖っているので、上端や下端の角部ほどではないが電界は集中するので、上下の角部の間であっても、水のテーラーコーンが形成されることもあり、静電ミスト1が効率よく多量に生成される。
製造上においても、先端29aを錘状(角錐や円錐)に形成する場合には、胴部28および先端霧化部29の切り出し方向と違う方向の切断加工が必要になる。詳細には水印加電極の厚みL7(図4参照)を縮める方向の追加加工によって、水印加電極2の方向を変えるか、切断具の方向を変えるかする作業時間とスペースおよび先端の加工時間が必要になり、加工コストが多くかかる。それに対して、厚みが胴部28の厚みと同じであって、角部を二つ有して線状に尖る先端29aとした場合には、シート状の材料を胴部28の切り出し工程と同じ方向に切断具を動かす1回の工程で形成することができ、加工時間を短縮できる上に無駄をだすことなく製造できるという利点がある。
電界を集中しやすくするために、先端霧化部29は、対向電極3に向かう上面視で三角形状の頂点部分の角度α(図4に示す)を鋭角に形成するのがよく、望ましくは60°以下がよい。上面視で三角形状の先端霧化部29の胴部28から最も離れた頂点部分の角度が角度αである。また、水印加電極2の製造工程や配送工程において、先端霧化部29が細長く突出していると、破損する恐れがあるので、破損を回避するために、先端霧化部29の突出高さL6(図4に示す)は、胴部28の短辺方向幅と同等以下とするのが好ましく、頂点部分の角度αも15°以上がよい。
このように生成された静電ミスト1は、単にミストや微粒子水と呼ばれたり、帯電していることから、帯電ミストや帯電微粒子水と呼ばれたりすることがある。また、大きさがナノメータサイズであることから、ナノミストと呼ばれることもある。いずれであっても、水に高電圧をかけ、レイリー分裂により微細化させ生成する帯電したナノメータサイズのミスト(微粒子水)であり、ここでは、このようにして生成されたミストのことを静電ミスト1と呼ぶこととする。また、このように静電ミスト1を生成することを静電霧化と呼び、霧化するとは水をミスト化することである。そして、霧化量とは、静電ミスト1の生成量(発生量)のことである。
図4は水印加電極2の概略構成図であるが、この図で示すL3は、上方に位置する冷却フィン8bと対向して露出される胴部28上面の長辺方向(長手方向)の幅で、冷却フィン8bの積層方向と同方向の幅である。
例えば、胴部28の長辺方向の一端に高電圧電源部4との給電端子25(図9)が装着され、その給電端子25により、もしくはその給電端子25を保護するために設置された別体のカバーにより、胴部28のその一端部分の上面が、冷却フィン8bに向かって露出されていない場合には、その一端部分は上記の幅L3には含まれない。幅L3は単に胴部28の長辺方向の長さではなく、上方に位置する冷却フィン8bと対向して露出される胴部28上面の長辺方向の幅であり、上方に露出をしていない部分は、幅L3には含めない。
また図4に示すL5は、L3と直交する方向の幅であり、冷却フィン8bと対向して露出されている胴部28上面の短辺方向の幅で、冷却フィン8bの突出方向と同方向の幅である。
ここで、この水印加電極2は、胴部28の幅L3が、上記した冷却フィン8bの積層方向幅L2と同等もしくは幅L2よりも大きくなるように形成されている。すなわち、幅L3≧幅L2となっている。また、胴部28の幅L5が、上記した冷却フィン8bの突出高さL4と同等もしくはL4よりも大きくなるように形成されている。すなわち、幅L5≧L4としている。
さらに、水印加電極2の胴部28に冷却フィン8b全体を重力方向に投影したときに、積層方向幅L2が胴部28の長辺方向幅L3と略一致するか、もしくは幅L3内に収まるように、また、高さL4が胴部28の短辺方向幅L5と略一致するか、もしくは幅L5内に収まるように、水印加電極2の胴部28は、冷却フィン8bに対して配置されている。
上方に位置する複数の冷却フィン8bと、その下方に隙間L1を介して冷却部8とは非接触に位置する水印加電極2の胴部28とは、このような位置関係にあるので、重力により複数の冷却フィン8bの下端から積層方向に幅広く滴下される多くの結露水10を、胴部28の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、それらを先端霧化部29に搬送できるので、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることができる。
また、冷却フィン8bの突出方向に対しても、高さL4の範囲を有する冷却フィン8b下端のいずれの突出方向位置から滴下された場合でも、胴部28の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることできる。
特に、冷却部8にて多くの結露水10を得るために、空気流と略直交する水平方向に冷却フィン8bを積層させ、水印加電極2の胴部28を平板状として、その積層方向に長辺方向の幅を伸ばすように形成していることにより、冷却フィン8bで効率よく多量に結露させた結露水10を胴部28の上面で無駄なく確実に受け取るので、静電ミスト1の発生が安定して継続される。
なお、水供給部の冷却部8は、必ずしも冷却フィン8bを備えていなくてもよく、冷却フィン8bを有している場合と比べれば、生成される結露水10の量は減少するが、平板状のベース板8aだけがペルチェユニット6の冷却面に接している構成であってもよい。この場合には、ベース板8aが冷却板となって、ベース板8aのペルチェユニット6と接する面の反対側の面(冷却フィン8bを備える場合であれば、複数の冷却フィン8bが突出する面)上に、結露水10が生成され、重力により下端に向けてその面上を伝って落下し、下端まで伝った後でベース板8aから重力により下方へ滴下される。
冷却部8が冷却フィン8bを持たずに冷却板となる平板状のベース板8aのみを有する上記のような構成である場合には、ベース板8aの水平方向の幅(長さ)に対して、水印加電極2の胴部28の幅L3を、同等もしくはそれより大きくなるように形成すればよい。すなわち、幅L3≧ベース板8aの水平方向の幅となっている。そして、水印加電極2の胴部28にベース板8aを重力方向に投影したときに、ベース板8aの水平方向の幅が胴部28の長辺方向幅L3と略一致するか、もしくは幅L3内に収まるように、水印加電極2の胴部28を、冷却部8に対して配置する。もちろん、ベース板8aの下方に距離L1の隙間を介して胴部28が位置し、冷却部8と水印加電極2は非接触である。
このような位置関係とすることで、重力により冷却板となるベース板8aの下端から水平方向に幅広く滴下される結露水10を、胴部28の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、それらを先端霧化部29に搬送できるので、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることができる。
すなわち、冷却フィン8bの有無に関わらず、水印加電極2の胴部28の幅L3を、冷却部8の水平方向幅と同等もしくはそれよりも大きくなるように形成し、すなわち、幅L3≧冷却部8の水平方向幅として、さらに水印加電極2の胴部28に冷却部8を重力方向に投影したときに、冷却部8の水平向幅が胴部28の長辺方向幅L3と略一致するか、もしくは幅L3内に収まるように配置することにより、重力により冷却部8から水平方向に幅広く滴下される結露水10を、胴部28の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、それらを先端霧化部29に搬送できるので、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることができる。
図3に示す冷却部8では、ベース板8aの左右端からも冷却フィン8bが突設しており、積層方向の幅L2が冷却部8の水平方向幅に該当する。ベース板8aは一般的に矩形状に形成され、その長手方向が通過する空気流の方向と直交するように配置される。冷却部8での結露水10の生成は、多くが冷却部8の(通過する空気流の)上流部で生じるため、そのように配置した方が、水分を多く含んだ空気流と接するベース板8a(のペルチェユニット6と接する面の反対側の面)の面積を稼げるからである。そのため、冷却部8で生成された結露水10は、水平方向に幅広く滴下されることになる。
また、先端霧化部29を胴部28の長辺方向側面の途中に形成しているので、短辺方向側面に設けるのに比べて、胴部28で受け取った結露水10を素早く先端霧化部29に搬送できる。このため、結露水10が水印加電極2へ至るまでの経路が、重力による胴部28への直接的な滴下であることと相まって、この静電霧化装置100の運転開始から短時間で静電ミスト1を発生させることができる。各冷却フィン8bから同量の結露水10が滴下されるものとして、先端霧化部29が一つだけの場合には、胴部28の長辺方向側面にあって、冷却フィン8bの積層方向幅L2の中央に相当する位置に配置させるのが、水の搬送の安定度から最も好ましい。
なお、水印加電極2は、その周囲に冷却部8から滴下供給された結露水10を溜めないように構成されている。水印加電極2を固定する保持枠は水が溜まることがないように容器とはしないで、例えば、水印加電極2の下面(冷却部8と対向する上面の反対側の面)を含む周囲には下方への開口26(例えば、図13、図14参照)を設け、水印加電極2の保持枠70(例えば、図9参照)からは不要な水は開口26を通して排水させ、水印加電極2の周囲に水を溜めさせない。
水印加電極2の周りに水を溜めない理由は、以下のとおりである。
(1)水印加電極2の上に水が溜まってくると、上に溜まった水の介在により水印加電極2(特に胴部28)と冷却部8(特に冷却フィン8b)との距離が短くなり、高電位である水印加電極2から冷却部8へ放電現象が発生する恐れがある。水印加電極2と冷却部8との間で放電現象が発生すると、水印加電極2と対向電極3との間での放電が不安定となり、正確な静電ミスト1の発生が阻害される。また、信頼性の点からも好ましくない。
(2)水印加電極2は多孔質体で構成されるが、水印加電極2内の水分量が多いと、テーラーコーンを形成した水の表面張力に対してクーロン力が勝てずに、水が先端霧化部29の先端29aから離れにくくなり、すなわち、先端29aからなかなか飛び出さないことになって、静電ミスト1の発生が阻害される。水印加電極2は、内部の空隙(気孔)を水で飽和させない方が静電ミスト1の発生効率がよい。
(3)ペルチェユニット6が水に浸かると、信頼性の点で不具合が生じる。ペルチェユニット6は、P型N型半導体が直列接続された構成であり、P型N型半導体のいずれかが水の侵入により故障すると使用不能となる。
これらの理由から、水印加電極2の周囲には、水を溜めない構成が必要なのである。
なお、対向電極3は、水印加電極2との電位差を一定に保つために設置しているが、対向電極3を設置しないで気中との放電(気中の浮遊電位との放電)で静電ミスト1を発生させるようにしてもよい。また、この静電霧化装置100を搭載する機器のあらかじめ電位が0V近辺にある部材(例えば、空気調和機の室内機に搭載するとして、室内機内部に設置される室内熱交換器)を対向電極3の代替として用いて、水印加電極2との電位差を保つようにして静電ミスト1を生成するようにしてもよい。
この静電霧化装置100では、放熱部7および冷却部8に重力方向、すなわち上方から下方への空気流が通過するが、冷却部8における吸熱量低下を防止して効率よく冷却フィン8bの温度を下げるために、冷却部8への通風量(通過する空気流の量)は、放熱部7に比べて少なくしている。その実現手段としては、放熱部7はその上流側を開放状態にして放熱部7を通過する空気流に通風抵抗を与えないが、冷却部8側では、上流側に囲いやリブなどを設けて流入口の開口を制限して通風量を下げる。このように通風量を下げて冷却部8を通過する空気流の流速を0.1m/s程度の微風状態まで小さくし、空気流が冷却熱を奪って流出してしまうことを避けている。この結果、冷却フィン8bを効率よく冷却できる。
そして流速はたいへん小さいが、冷却部8には空気流が存在するので、水分を含んだ新しい空気が入れ替わるように流入することになり、冷却部8周囲の空気が乾燥してしまうことがなく、効率よく冷却された冷却フィン8bの表面には、結露水10が安定して生成される。
水印加電極2は金属多孔質体から成るものなので、胴部28の上面のどこに結露水10が滴下されても、受け取った水を先端霧化部29に搬送する性質を持っている。
すなわち、水印加電極2自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、かつ霧化部(静電ミスト1の発生部)である、というように、三つの機能を備えているのである。このため、素早く水を先端霧化部29に集めて、効率よく正確に安定して静電霧化させることができる、という効果を有するのである。
この静電霧化装置100では、図2に示すように、水印加電極2の胴部28が、ペルチェユニット6の冷却面に接する冷却部8の重力方向下方に、冷却部8とは直接に接することのない離れた位置で、所定の距離L1の隙間を空けて設置される。
ここで所定の隙間L1は、水印加電極2と冷却部8とが電気的につながらない距離が必要となる。高電位にある胴部28から冷却部8への放電を起こさないために、胴部28の冷却フィン8bに対向して露出される上面には、先端霧化部29のような電界を集中させてしまう突起を設けずに平坦状に形成する。そして、胴部28と冷却部8間の空間の絶縁破壊を回避するために、距離L1は最低でも3mm必要となる。
さらに、結露水10を冷却フィン8bから胴部28へと滴下するようにしているため、冷却フィン8bの下端から落下する直前の水滴の長さが、冷却フィン8bと胴部28との絶縁距離を実質的に短くしてしまうことになるので、その分も考慮すると、距離L1は、少なくとも5mmは必要であり、冷却フィン8bの下端から5mm以上の隙間L1を空けて胴部28を設置するのがよい。
これに加えて、水印加電極2や冷却部8をそれぞれ保持する周囲の部材への沿面放電なども考慮して放電に対する信頼性を満足する隙間L1を適宜設定すればよい。
この静電霧化装置100では、冷却部8と、冷却部8に向かって露出している胴部28の上面との間には、空間以外に、冷却部8から滴下する水を集める集水部材や滴下する水を胴部28に案内するガイド部材、また、滴下する水を胴部28に至る前に一時的に溜めておく保水部材などを介在させず、直接的に重力により結露水10を胴部28上面に滴下する。冷却部8から胴部28への水の移動を妨げる要素は何もない。これにより、冷却部8にて生成された結露水10を、短時間で素早く確実に水印加電極2へと供給することができる。
そして、水印加電極2と冷却部8とが非接触であることにより、ペルチェユニット6に高電圧がかかって、ペルチェユニット6が壊れてしまう心配がない。このように、高電圧が印加される部位が水印加電極2に限定される。
また、水印加電極2の材料として金属多孔質体(詳細は後述する)を用いることで、胴部28の一部に水が供給されれば、内部の空隙を表面拡散により進み、先端霧化部29まで素早く搬送することができ、運転開始から静電ミスト1の発生までの時間を短くできる。
三角形の先端霧化部29が胴部28の長辺に備えられた場合に、最も使用する材料を少なくして、歩留まりをよくする製造方法を説明する。
図6は実施の形態1を示す図で、三角形の先端霧化部29が胴部28の長辺に備えられた場合に、最も使用する材料を少なくして歩留まりをよくする製造方法を示す平面図である。
図6に示すように、先端霧化部29の突出高さL6(図4に示す)を、胴部28の短辺方向幅L5と同じ長さにすると共に、胴部28の短辺二つを両方とも角度α/2となるように斜めにカットする。こうすることで、ある水印加電極2の先端霧化部29が有する三角辺が別の隣接する水印加電極2の胴部28の斜めにカットされた部分と同じ形になるため、シート状材料から材料の無駄を出すことなく、水印加電極2を互い違いに切り出すことができる。先端霧化部29の三角辺と胴部28の短辺の長さおよび傾斜角度は等しくなる。先端霧化部29が二等辺三角形であれば、胴部28の短辺は角度α/2になるが、先端霧化部29が三角辺の長さが異なる三角形の場合には、胴部28の短辺二つの斜めにカットする角度の合計がαになるようにすればよい。先端霧化部29は、胴部28の長辺の中央にある必要はなく、長辺のどこにあってもよい。
次に、実施の形態1のいくつかの変形例について説明する。変形例1の静電霧化装置150が、例えば、空気調和機に搭載した場合に特に好適であるので、変形例1の静電霧化装置150について詳細に説明する。
図7乃至図16は実施の形態1を示す図で、図7は変形例1の静電霧化装置150を示す縦断面図、図8は図7のミスト発生部付近の拡大図、図9は静電霧化装置150の分解斜視図、図10は水供給部保持枠60の斜視図、図11は風防止壁30の斜視図、図12は保持枠70の斜視図、図13は保持枠70に水印加電極2と対向電極3とを取り付けた状態を示す斜視図、図14は保持枠70に水印加電極2と対向電極3とを取り付けた状態を示す図((a)は上面図、(b)は正面図)、図15は冷却部保持枠63及び水供給部の斜視図、図16は水供給部を水供給部保持枠60及び抑え枠90で保持した状態を示す図((a)は上面図、(b)は斜視図)である。
図1の静電霧化装置100においては、水印加電極2の先端霧化部29が、胴部28の長辺方向側面上に冷却フィン8bの突出方向と同方向に突出していた。
図7乃至図16で示す静電霧化装置150では、水印加電極2の先端霧化部29を、冷却フィン8bの突出方向の面とは反対側の長辺方向側面上に、すなわち放熱部7のフィン突出方向に突出するように設けている。対向電極3もその時の先端霧化部29に対向するように放熱部7側に設けられる。このような配置にすると、冷却部8に比べて流量が大きい放熱部7を通過する空気流にのせて対向電極3の開口から放出された静電ミスト1を広く拡散させることができる効果が追加される。
静電霧化装置150を構成する主要な要素は、以下に示す通りである。夫々の要素は、既に詳しく説明したものもあるし、未だ説明されていないものについては追って詳細を説明するので、ここでは簡単に述べる(主に、図9の分解斜視図を参照のこと)。
(1)水供給部:水供給部は、既に説明したペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される。ペルチェユニット6は、低電圧電源部5(図1のものと同じ)に電気的に接続するリード線6aを有する。
(2)冷却部保持枠63:冷却部保持枠63は、樹脂製であり、水供給部の冷却部8を放熱部7に係合により固定する。詳細は後述する。
(3)水供給部保持枠60:水供給部保持枠60は、冷却部8が冷却部保持枠63で放熱部7に固定された水供給部を、冷却部8側から保持する。冷却部8が冷却部収納部60aに収納される。また、放熱部7が放熱部収納部60bに収納される。冷却部8は、空気流の上流側が水供給部保持枠60で覆われ、幅方向に複数設けられた空気量調整穴61(空気量調整部)によって通過風速および通過風量が制御される。さらに、水供給部保持枠60は、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2に給電端子25を介して接続するリード線25aを口出しするリード線口出し部60cを備える(図10参照)。
(4)水供給部抑え枠90:水供給部抑え枠90は、冷却部保持枠63と同様樹脂製であり、冷却部保持枠63との間に水供給部を挟持する。水供給部抑え枠90と冷却部保持枠63との係合は、爪と孔とで行う。また、水供給部抑え枠90は、冷却部保持枠63と同様にペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを口出しするリード線口出し部90aを備える。水供給部保持枠60のリード線口出し部60cと水供給部抑え枠90のリード線口出し部90aとで、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを挟持する。
(5)水印加電極2:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の水印加電極2と同じものである。但し、静電霧化装置150では、水印加電極2の先端霧化部29が、冷却フィン8bの突出方向の面とは反対側の長辺方向側面上に、すなわち放熱部7のフィン突出方向に突出するように配置されている。水印加電極2には、給電端子25を介してリード線25aが接続される。
(6)保持枠70:保持枠70は、水印加電極2を下方から保持する部材である。詳細は後述するが、保持枠70は外周と胴部28の短辺方向の格子70aを有して、大きな四角形状の開口26を持った箱型形状をしている。短辺方向に伸びた格子70aは水印加電極2の胴部28を支えるが、胴部28の幅L3より充分に短い幅をしている。また、保持枠70の下部には、対向電極3を保持する対向電極保持部70bが形成されている。
(7)対向電極3:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の対向電極3と同じものである。対向電極3は、保持枠70の対向電極保持部70bにネジ3cにより固定される。また、対向電極3には接地用のリード線3bが接続される。
(8)風防止壁30:風防止壁30は、保持枠70の上部に係合して、水印加電極2を保持枠70とで挟持する。風防止壁30は、水印加電極2の先端霧化部29及び対向電極3を覆う庇30aと、先端霧化部29の胴部28に対する付け根部分および胴部28の長辺を上方から抑えながら天面方向に向かって伸びて形成されている垂直壁30bとを備える。
以下、静電霧化装置150について、さらに詳しく説明する。図7、図16(a)に示すように、水供給部の放熱部7は、風がよく通るように空気中に露出している。
水供給部の冷却部8は、過度の空気流入による冷却フィン8bの温度上昇を防止するために水供給部保持枠60で覆われ、幅方向に複数設けられた空気量調整穴61(図10、図16)によって通過風速および通過風量が制御されている。
冷却フィン8bの下方には、空間のみを介して水印加電極2の胴部28が設けられている。冷却フィン8bから滴下した水滴は、樹脂枠(風防止壁30)などに触れることなく直接胴部28に滴下される。
これは、樹脂枠の水の接触角が70〜80度前後と水滴を保持しやすい性質を持つために、樹脂枠などガイドを介して水滴を胴部28に移動させようとしても、例え傾斜があったとしても水滴は滴下地点から動き出さずに移動しがたい傾向にある。従って、ガイドを介さずに直接水滴を滴下できるように、冷却フィン8bの滴下面高さL4(図3)を短辺方向幅L5(図4)より小さくしている。
水印加電極2は、胴部28の長辺方向(長手方向)側面の途中に、その側面から突出するように三角形状の先端霧化部29が形成されている。水印加電極2は胴部の長さL5(図4)と先端霧化部の長さL6(図4)は、ほぼ等しい長さで成形されている(図6)。
また、胴部28を冷却部8の重力方向下方に配置し、一方先端霧化部29をペルチェユニット6もしくは放熱部7の重力方向下方に設けている。
また、先端霧化部29と所定の距離を介して対向電極3が、放熱部7の下方に設けられる。
水印加電極2は、先端霧化部29の根元部分(胴部28に接続する部分)を保持枠70と、風防止壁30の垂直壁30bとで挟持されて位置決めされている。
保持枠70は、外周と水印加電極2の胴部28の短辺方向の複数の格子70aを有する、大きな四角形状の開口26(図13、図14)を備える箱型形状をしている。
水印加電極2の胴部28の短辺方向に伸びる格子70aは、水印加電極2の胴部28を支える。格子70aの長さは、胴部28の幅L3(図4)より充分に短い。
保持枠70は、格子70a以外の水印加電極2の周囲が大きな開口26(図13、図14)となっており、水を溜めることなく過度な水を排出できるようになっている。
冷却部8を通過した冷たい空気は、水印加電極2近傍で滞留したり、冷却部8に逆流したりすることなく速やかに下方に抜けていくため、水供給部保持枠60の表面に結露を起こす恐れが少ない。
水印加電極2の胴部28の短辺と平行に配置されて水印加電極2を支える保持枠70の格子70aを、狭い間隔で2本以上設けた場合、格子70aと格子70aとの間で余剰に排出された水滴がブリッジして大玉になって保持される。
水滴が大玉になると、対向電極3と水滴が経路を作って繋げてしまったり、風で飛散した場合に対向電極3に付着したりする可能性があり危険である。
水滴はブリッジすることなく、下方のドレンパン40(図27)に向かってスムーズに流れたほうが好ましい。そのため、保持枠70の外周を除く格子70aの間隔は10mm以上空けるが好ましい。別の表現をすると、格子70aの間隔は、水印加電極2の先端霧化部29から見た対向電極3の露出部の左右方向の幅と同等以上とするのが好ましい。すると、水滴が保持されずにスムーズに落下する。
また、胴部28から滴下した水滴が、保持枠70を伝って落ちる場合、対向電極3の中央に面した部分から滴下される、または風で飛散した場合に、対向電極3に付着する可能性があり危険である。
そこで、保持枠70の下端部(水印加電極2の先端霧化部29を支持する部分)は、対向電極3の中心部分に対向する位置を頂点凸部として左右方向に向かって半円を描くように円弧70c(図12)状に伸びるとともに、円弧70c端部を角部として更に左右方向に伸ばして形成した(図12の左右延伸部70d)。
このように構成することで、胴部28から滴下した水滴は、対向電極3の中心部分に対向する位置から滴下されることがなく、樹脂(保持枠70)を伝って左右方向に誘導されて円弧70c端部から滴下されるので、例えブリッジした水滴が飛散しても対向電極3に付着しにくい。円弧70c端部幅はなるべく左右方向に広げる方がよく、水印加電極2の先端霧化部29から見た対向電極3の露出部の左右方向の幅と同等以上とするのが好ましい。
このように、冷却部8の下方に胴部28を配置して、ペルチェユニット6から放熱部7に渡る部分の下方に対向電極3を配置することで、図1に示すような冷却部8の下方に胴部28を設け、更に対向電極3を冷却フィン8bが突出する方向であって、胴部28よりも冷却フィン8bから遠い場所に配置する場合に比べて、デバイス全体の断面厚み(図7に示す)を小さくすることができるという効果を有する。なお、断面厚みは、奥行き方向の幅、もしくは厚さと言ってもよい。
つまり、静電霧化装置150は、冷却部8とペルチェユニット6と放熱部7とから構成される水供給部に要する断面厚みと、水印加電極2と対向電極3とから構成されるミスト発生部の断面厚みがほぼ同じになる。そのため、断面厚み方向(装置の奥行き方向)に無駄がなく、空気調和機の室内機などスペースの小さい部分にも搭載することができる。
また、幅方向(図9参照)に関しても、水印加電極2の幅は、冷却フィン8bより幅の大きな放熱部7の幅より小さいので、放熱部7のサイズ内で収まり幅方向にもコンパクトである。
加えて、冷却部8に比べて流量が大きい放熱部7を通過する空気流(放熱側、図7)にのせて、対向電極3の開口3aから放出された静電ミスト1を広く拡散させることができる効果や水滴が直接水印加電極2の胴部28に滴下されることで素早く確実に水を搬送して静電ミスト1を発生できるという効果も有している。
保持枠70は、水を溜めることなく過度な水を排出できるように大きな開口26を持った格子形状となっている。この形状の別の効果として、冷却部8を通過した冷たい空気が水印加電極2近傍で回流して再び水供給部保持枠60近傍に移動することがなく、水供給部保持枠60が冷やされて水供給部保持枠60の表面が結露することが無い、という効果がある。
水供給部保持枠60が結露すると、静電霧化装置150の外に水滴が滴下する可能性や、高電圧が印加される水印加電極2と水滴が経路を作って高電圧部分が全体に広がるために異常放電や感電が起こる懸念が広がる。
また、水供給部保持枠60を結露させないために、水供給部保持枠60と冷却フィン8bはぎりぎりまで近づけるのではなく充分距離を離すのが好ましい。冷却フィン8b近傍の水供給部保持枠60を、4mm以上(図7のd)盛り上げて離して配置する。そうすることで、例え、冷却フィン8bが0℃近傍まで冷却されても結露することがない。
この時、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aは、長期信頼性から汚れ付着を防止するのが好ましい。先端29aに汚れが付着すると、放電力が低下して静電ミスト1の発生量が低下したり、発生が不安定になったりする。そのために先端29aにはなるべく風を通さず、移動してきた空気に触れさせないようにするとよい。
そこで、本実施の形態においては、庇30aと垂直壁30bとを有する風防止壁30を、水供給部とミスト発生部との間に設けた(図7、図9、図11など)。
図7に示すように、風防止壁30の庇30aは、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aの上方に位置し、水供給部の放熱部7のフィンが突出する方向に伸びて設けられる。それにより、水供給部の放熱部7を通過してくる風が水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに流入してくるのを防止する。
このように構成することで、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aは、汚れが通過しないため汚れにくくなり、長期に渡って静電ミスト1を安定して発生することができる。
また、通過する流量の大なる空気流が過度に水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに触れることによって、水のテーラーコーン形成やレイリー分裂が阻害され、正確で安定した静電ミスト1の発生が損なわれる懸念もなくなる。
この時、庇30aは、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aから最も距離の近い対向電極3の部分を越えて、対向電極3を覆うように放熱部7のフィンが突出する方向に伸びている。
このように構成することで、対向電極3の水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに近い部分に風が流入するのを抑制して、対向電極3への汚れの付着を防止できるという新たな効果を得ることができる。
また、樹脂で作られた庇30aおよび垂直壁30bが帯電すると、電界形成が損なわれて静電ミスト1の発生を妨害するので、庇30aと対向電極3とはお互いに触れないように配置した。これにより、庇30aが帯電することによって静電ミスト1の発生を妨害することがなくなる。
垂直壁30bは、先端霧化部29の胴部28に対する付け根部分および胴部28の長辺を上方から抑えながら天面方向に向かって伸びて配置されている。
水供給部の冷却部8を通過した風は、放熱部7を通過した風に比べて風速が遅いため、放熱部7側に引き寄せられやすい。しかし、垂直壁30bが水印加電極2に確実に接触して配置されることで、冷却部8を通過してくる風が水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに流入してくるのを防止する。
このように構成することで、風が水印加電極2の先端霧化部29の先端29aは、風が通過しないために汚れにくくなり、長期に渡って静電ミスト1を安定して出すことができる。
冷却部8を通過した風は、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aを通過しないので、水印加電極2の周囲に設けられた複数の開口26を通って下方に通り抜けていく。
垂直壁30bは、抑えによる水印加電極2の位置決めと、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aの汚れ防止の二つの効果を備える。
水印加電極2の先端霧化部29の先端29aの位置を決めて、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aが上下に動かないようにすることで、先端29aと対向電極3との距離が一定に保たれる。それにより、近づきすぎによる異常放電の発生や、遠すぎによる静電ミスト1発生用電界が低下する懸念がなくなるという効果がある。
水印加電極2の先端霧化部29の周囲に位置する樹脂部材の垂直壁30b、庇30aおよび保持枠70が帯電してしまうと、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aと対向電極3とで形成されるべき電界が低下して静電ミスト1を引っ張る力が弱くなる。そのため、静電ミスト1の発生量が減少したり、不安定になったりするか、もしくはより大きな電気を与えないと静電ミスト1が放出されなくなる。
ここでは、対向電極3がグランド極となって電位0Vであり、水印加電極2に−4〜−6kVのマイナスの直流電圧が印加される。例えば、水印加電極2に−5.8kVの直流電圧を加えた場合に周囲の樹脂が−3〜−4kV程度に帯電されると影響が大きく、帯電量を−2kV以下にすると影響が小さい。また、帯電している樹脂を水印加電極2の先端霧化部29の先端29aから離すことも有効である。
そこで、本実施の形態においては、上下方向から水印加電極2を抑えて位置を固定している垂直壁30bおよび保持枠70を、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aからなるべく離すために、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aの方向に傾斜させることなく、水印加電極2と接触している位置から水印加電極2の設置面と垂直な方向に伸ばして配置した。
更に、垂直壁30bの長さh1(図8)を、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに備えた最も電気が集まる角部と対向電極3の最も近い点を結んだ距離r1(図8)以上とした。
そして、垂直壁30bの端部を庇30aの起点とし、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに備えた最も電気が集まる角部(図8の上の角部)と、対向電極3の最も近い点を結ぶ距離r1(図8)を半径とした円弧(図8に示す半径r1の円弧)線上に庇30aがかからないように、半径r1の円弧線の外に風防止壁30を配置した。これにより、樹脂の帯電影響を−0.5kV前後抑制することができる。
また、保持枠70は外周と、水印加電極2の胴部28の短辺方向の格子70aを1本または複数本とを有し、大きな四角形状の開口26を備える。従って、保持枠70と水印加電極2との接触場所は、外周と格子70aに限定されるので、保持枠70の帯電量は少なくなる。
具体的には、水印加電極2と保持枠70との接触面積を水印加電極2の胴部28の下面面積全体の50%以下とすると、樹脂の帯電影響を抑制することができる。
水印加電極2と保持枠70との接触面積は小さいほどよく、30%以下とすると顕著に帯電影響が抑制できる。これにより、樹脂の帯電影響を−0.5kV前後抑制することができる。
先に述べたように、庇30aと対向電極3はお互いに触れないように配置したが、対向電極3の固定の仕方を詳細に述べる。
対向電極3は部品点数を減らすために、水印加電極2を保持している保持枠70を延長した対向電極保持部70b(図12)で保持する。
先端霧化部29と保持枠70の接点から対向電極3へと直接つながることなく、保持枠70を一度横方向(左右)に伸ばしてから(図14(a)の矢印)、コの字型(図14(a)のコの字)に折り返した対向電極保持部70bで対向電極3を保持している。
対向電極3は、コの字型に折り返された後に合流してつながった対向電極保持部70bにネジ3cで止めてもよいし、乗り越えリブにはめてもよい。
また、保持枠70は複数パーツで構成しても良い。この時、先端霧化部29と保持枠70の接点の重力方向下方のコの字にくりぬかれた部分は開口27(図14(a))となっており、例え、先端霧化部29から余剰の水が流れ出してきても、樹脂が橋渡しとなって対向電極3に水が流れ込むことはない。
また、先端霧化部29と保持枠70の接点から対向電極3までの距離は沿面距離の観点から30mm以上とするのが好ましく、横方向に伸びて折り返した分だけ距離をかせぐことができる。これにより、樹脂の帯電影響を−0.5kV前後抑制することができる。
一方、先端霧化部29と保持枠70との接点から対向電極3に直接つなぐ場合は、水の通路を作ってしまう以外にも、距離が非常に短くなり、帯電の影響やトラッキングの懸念が出てくる。
対向電極3は横方向からのみ保持され、上方および下方からは保持しないことで効果が顕著になる。また、上下方向は対向電極保持部70bと対向電極3とが非接触であり空間になっているので、上下方向に沿面距離をとる長く必要が無く、上下方向の省スペース化が期待できる。
これらの施策により、例えば、水印加電極2に−5.8kVの直流電圧を加えた場合の垂直壁30b、庇30aおよび保持枠70の帯電量が−3kVから−1.5kVに軽減される。そのため、静電ミスト1への帯電の影響を最小レベルに抑制することができ、所望の電圧で安定して静電ミスト1が放出されるという効果を得ることができた。
水印加電極2の設置方法について述べる。水印加電極2の胴部28の短辺方向の幅と保持枠70の幅(図14(a))とをほぼ等しくしているので、短辺方向に公差より大きな隙間がなく、水印加電極2がむやみに動くことが無いようにした。
従って、水印加電極2と対向電極3との極間距離が変わることがなく所望の特性をばらつきなく得ることができる。
この時、上下方向の位置は、垂直壁30bと保持枠70の外周といった二つの絶縁物によって位置が決められている。垂直壁30bは、胴部28の長辺をわずかに覆うように長辺近傍を0.5〜1.0mm程度だけおさえて、長辺の角部が露出しないように覆うとよい。
電気が集中する尖った角部があると、沿面距離を大きくとっていても不要な放電を起こす可能性がある。
垂直壁30bが胴部28の長辺の角部を露出しないように覆うことで、胴部28の長辺を形成する角部から冷却フィン8bなどへ不要な放電を起こすことを防止できる。また、胴部28には充分な露出面が残るので、滴下された水滴は垂直壁30bに当たることなく、速やかに胴部28に吸い込まれる。他部位への不要な放電を起こさないので、安定して静電ミスト1を発生することができる。
水印加電極2の材料として、セラミックをはじめとした多孔質体を用いることができるが、本実施の形態では三次元網目構造の金属多孔質体(詳細は後述する)を用いる。
多孔質体は、金属スラリーを泡立たせて金属の穴を作ったところで焼結するため、製造時の下面側の孔径を小さく、泡が大きく広がる上面側の孔径を大きくすることができる。孔径とは穴の直径の平均値である。
同様に穴の面積合計を開口面積で割った開口率も、製造時の下面側が小さく、上面側を大きくできる。孔径が小さいほど水滴が入りにくいが抜けにくく、孔径が大きいほど水滴が入りやすいが抜けやすい。
本実施の形態においては、水印加電極2の設置方向として、保持枠70に設置する下面側を孔径が小さい面、上面側を孔径の大きい面とした。つまり、上面側の孔径を下面側の孔径より大きくした。
具体的には、上面側の孔径は下面側に比べて2倍くらい大きく、上面が200μm程度であれば、下面は100μm程度が好ましい。少なくとも、上面側の孔径または開口率を下面側に対して、1.5倍以上とすると効果がある。
これによって、冷却フィン8bから滴下された水滴は、孔径の大きな面に滴下されるため、速やかに水印加電極2内部に吸い込まれる。
また、下面の方が孔径の小さな面であるため、水印加電極2から下面方向に抜けて排出されにくくなり、より先端霧化部29の方に移動しやすくなるという効果を有する。
セラミックを水印加電極2に使用する場合には、孔径や空隙率の違うものを別々に作成してから上下に貼り合わせても同様の効果を得られる。
また、金属多孔質体は原料である金属が硬く、かつある程度の厚みを有するために、切断(レーザーカット)する際には長辺方向および短辺方向の片面に必ずバリ29b(図4)が生じる。
バリ29bが下面にきてしまうと、保持枠70にバリ29bがひっかかってはまりにくいばかりでなく、無理やり入れることで水印加電極2が破損したり、保持枠70が破損したりしてしまう恐れがある。
本実施の形態においては、バリ29bの方向が常に上面方向になるようにすることで、バリ29bを下面に出さないようにした。
この時、上面側のバリ29b近傍は、バリ29bの大きさ分だけ空間を空けておけばひっかかることはない。
また、切断加工時にバリ29bを抑えるなどして、天面方向ではなく横方向にでるようにすれば、垂直壁30bなど抑える側の樹脂がひっかかることもない。
保持枠70を水印加電極2の下面側から上面側に向かって傾斜しながら広げていくか、または水印加電極2の上面側と保持枠70との間に隙間を空けることで、下面側はバリ29bを気にすることなく確実に固定でき、上面側はバリ29bが周囲の樹脂に触れることが無いので、組み付けが容易である。
バリ29bを上面にだし、かつ孔径の大きな面を上面にするために、金属多孔質体を切断(レーザーカット)する際には、加工によりバリ29bが出る面と孔径の大きな面を合わせる必要がある。これによって、組み付け易さと水滴の取得しやすさ、移動しやすさの複数の効果が得られる。
次に、変形例2の静電霧化装置200について説明する。
図17、図18は実施の形態1を示す図で、図17は変形例2の静電霧化装置200の側面図、図18は変形例2の静電霧化装置200に用いる水印加電極2の上面図である。
変形例2の静電霧化装置200は、先端霧化部29の胴部28に対する位置が、図1に示した静電霧化装置100のように先端霧化部29の突起位置が胴部28の長辺方向側面上ではなく、胴部28の一方の端部(短辺方向側面上)に設けられる。
この場合も、静電霧化装置100と同様に、胴部28を結露水10が滴下される複数の冷却フィン8bの積層方向に一致する方向に長辺方向を伸ばして設置する。
図18はこの静電霧化装置200に用いられる水印加電極2の上面図であり、この図に示す寸法L3とL5は、静電霧化装置100における水印加電極2のL3とL5(図4参照)と同じ寸法を表しており、冷却フィン8bの寸法L2、L4(図3参照)との位置関係も静電霧化装置100と同様である。これにより、複数の冷却フィン8bから滴下する結露水10を直接胴部28上面で無駄なく確実に受け取ることができる。
先端霧化部29である突起は、冷却フィン8bの積層方向に突出するため、突出した先端霧化部29の前方に対向電極3を設ける。
変形例2の静電霧化装置200も、水印加電極2自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、かつ霧化部(静電ミスト1発生部)である、というように、三つの機能を備えており、効率的に水を先端霧化部29に集めて、効率よく安定して静電霧化させることができるとともに、長辺方向の途中に突起が存在しないため、水印加電極2の配送作業が容易となって配送作業の信頼性が増す効果が得られる。
図19は実施の形態1を示す図で、変形例3の静電霧化装置300の側面図である。図1の静電霧化装置100との差異は、水印加電極2(先端霧化部29および胴部28)の設置角度である。
静電霧化装置100では、水印加電極2は、水平に設置され、冷却部8も、冷却フィン8bの積層方向および突出高さ方向ともに水平となっており、冷却フィン8bの下端面と水印加電極2の上面は、冷却フィン8bの積層方向にも突出高さ方向にも平行であった。
しかし、図19に示す変形例3の静電霧化装置300では、冷却部8は静電霧化装置100と同じく水平のままであるが、水印加電極2を、胴部28から先端霧化部29(胴部28の長辺方向側面に突設)に向かって重力方向に角度θ1(図19参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ1の大きさは、5〜30°程度である。
このように水印加電極2を設置した静電霧化装置300では、胴部28から先端霧化部29への水の搬送に、内部空隙の表面拡散による移動だけでなく、重力を利用できることになり、例えば、冷却部8で生成される結露水10が少ない場合でも、胴部28で受け取った結露水10を素早く先端霧化部29へ搬送できる効果を有する。
次に、図20は実施の形態1を示す図で、変形例4の静電霧化装置400の側面図である。図19の静電霧化装置300とは、水印加電極2(先端霧化部29および胴部28)の傾斜方向が逆となっている点が異なる。
図20に示す変形例4の静電霧化装置400では、冷却部8は静電霧化装置300と同様に水平のままであるが、水印加電極2を、胴部28から先端霧化部29(胴部28の長辺方向側面に突設)に向かって反重力方向に角度θ2(図20参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ2の大きさは、5〜30°程度である。
このように水印加電極2を設置した静電霧化装置400では、例えば冷却部8に供給される空気の湿度が高く、結露水10が過剰に胴部28へ滴下される場合に、余剰水分を先端霧化部29の突出方向と反対方向へと排水させることができる。
この静電霧化装置400では、余剰水分を先端霧化部29とは反対側から排水することにより、余剰水分が先端霧化部29の先端29aへ流れ込まないので、余剰水分により静電ミスト1の発生が阻害されることがなく、正確に安定して静電ミスト1を発生させることができる。
なお、胴部28から先端霧化部29に向かって反重力方向に傾斜させて設置しても、水印加電極2は金属多孔質体から成るので、内部が水で飽和していなければ、内部の空隙(気孔)を表面拡散により、重力に逆らって水を先端霧化部29に搬送することができる。
次に、図21は実施の形態1を示す図で、変形例5の静電霧化装置500の側面図である。図1の静電霧化装置100との差異は、冷却部8の設置角度である。
図21に示す変形例5の静電霧化装置500では、冷却部8を、ペルチェユニット6側であるベース板8a(冷却フィン8bの基端)から冷却フィン8bの突端に向かって重力方向に角度θ3(図21参照)だけ傾斜させて設置している。角度θ3の大きさは、10〜30°程度である。
このように冷却部8を設置した静電霧化装置500では、冷却フィン8bの表面に結露した水は、重力により冷却フィン8bの突端側へと導かれながら、下端へと伝っていくことになる。このため、冷却フィン8bの下端から滴下される水の滴下位置を、冷却フィン8bの突端側の狭い範囲に限定することができる。
図1の静電霧化装置100では、冷却フィン8bの突出高さL4(図3)の範囲がすべて滴下位置であったが、この静電霧化装置500においては、結露水10の滴下位置の範囲をL4(図3)よりも狭くすることができる。このため、水印加電極2の胴部28の短辺方向幅をL4よりも小さくすることが可能となる。
すなわち、静電霧化装置100に比べて胴部28の短辺方向幅を小さくすることができる。冷却フィン8bと対向して露出されている胴部28上面の短辺方向の幅L5(図4参照)を、この静電霧化装置500は、静電霧化装置100よりも小さくできるのである。
これにより、先端霧化部29への胴部28短辺方向の搬送距離が短くなるので、この静電霧化装置500は、胴部28で受け取った結露水10の先端霧化部29への搬送を、図1の静電霧化装置100よりもさらに素早く行うことができるようになり、運転開始から静電ミスト1が発生するまでの時間をより短縮することができる、という効果が得られる。
また、水印加電極2の体積を減少させることができ、省資源化、低コスト化も図ることができる。なお、図21に示す静電霧化装置500の水印加電極2の設置角度は、図1の静電霧化装置100と同じく水平のままであるが、図19の変形例3や図20の変形例4のように傾斜させてもよく、そのように傾斜させれば、変形例3や変形例4の効果を合わせて奏することができる。
なお、先に述べたが、水印加電極2内の水分量が多いと、テーラーコーンを形成した水の表面張力に対してクーロン力が勝てずに、水が先端霧化部29の先端29aから離れにくくなり、すなわち、先端29aからなかなか飛び出さないことになって、静電ミスト1の発生が阻害されることがあるので、水印加電極2は、内部の空隙(気孔)を水で飽和させない方が静電ミスト1の発生効率がよい。そのため、ペルチェユニット6への通電を制御して、水印加電極2が水で飽和しないように、結露水10の生成量をコントロールするのがよい。
これまでは、複数の変形例を含め、静電霧化装置100〜500の構造、特に水印加電極2の形状や設置構成について説明してきたが、ここからは、水印加電極2の構造について詳細に説明する。ここまで説明してきたこの実施の形態における静電霧化装置100〜500のすべてにおいて、水印加電極2はその材料として金属多孔質体である発泡金属を用いて形成されている。
従来の静電霧化装置では、水の搬送と放電を兼ねる多孔質体材料として、チタニア、ムライト、シリカ、アルミナなどのセラミックが使用されていた(例えば特許文献1)。セラミックは毛細管現象で水の搬送ができ、また加工性がよい、高電圧からの耐摩耗性にも優れるなどの利点を有している。
しかしながら、セラミックは、内部の気孔率(気孔の含有割合)が10〜50%程度、気孔の孔径(呼び孔径)が0.1〜1.0μm、大きくても3.0μmと、多孔質体ではあるが、内部は比較的目が詰まった材料であり、先端の放電部まで霧化する水を毛細管現象で搬送するのに時間がかかり、運転開始からミスト発生までに時間がかかる、また、不純物により気孔が目詰まりしたり、水がブリッジしたりして、長期間に渡って、吸水性や搬送性能を高く維持できない、という欠点があった。さらに、セラミックは体積抵抗率(電気抵抗率)が高いため、霧化させる水に、セラミックに印加した高電圧が十分に作用せず、霧化が起こりにくく、充分な量のミストが得られないという課題もあった。
また、放電側の電極として、多孔質材料でなく金属棒を使用する場合では、金属棒は内部に気孔が存在しないため、放電部となる先端まで水を搬送することができない。そのため、金属棒そのものを冷却して先端表面に直接結露水を生成させる場合もあるが、金属棒の先端表面で結露する水だけでは、水分量が少なく、充分な量のミストが得られないという課題があった。
そこで、本実施の形態では、充分な吸水性能、搬送性能を持ちながら、低い電気抵抗率(体積低効率)、高い電気伝導性を有して、霧化する水に効率よく電気を伝えて帯電させることができる材料として、金属多孔質体である発泡金属を、水印加電極2の材料として用いるに至った。
ここで発泡金属とは、三次元網目状構造を持つ金属多孔質体と定義する。三次元網目状構造は、スポンジに代表される樹脂発泡体として知られており、これと同じ構造である。金属多孔質体としては、焼結金属がよく知られているが、発泡金属が焼結金属と相違する点は、三次元網目構造により、気孔率が高いこととその気孔の孔径が大きいことである。
発泡金属は、スラリーと呼ばれる金属を含有する液体の混合物中に、発泡剤を投入してこれを発泡させた状態で、非常に高い温度で焼結して作られる。これにより、各種金属や合金を素材とした発泡体を作ることができる。このように製作した発泡金属は、連続気孔構造を有する。これまでは、主にフィルター、触媒担持体、燃料電池用ガス拡散層などに使用されていたが、今回、静電霧化装置の電極材料として優れた特性を有することを見出した。
発泡金属の最も顕著な特徴は、高い気孔率にある。気孔率とは、空隙率ともいい、気孔の含有割合を示すもので、発泡金属内部にどれだけ吸水できるかを調べることで評価できる。この評価方法は、液体中の物体が排除した液体の重さに等しい浮力を受けるというアルキメデスの原理に従っている。
本実施の形態の水印加電極2に使用する発泡金属では、三次元網目状構造により、その気孔率を60〜98%と非常に高く設定することが可能である。したがって、発泡金属内部に、すなわち水印加電極2がたくさん吸水することができる。しかし、あまり気孔率が大きすぎると、吸水力を大きくできても、吸水した水が漏れ出す恐れがあるので、水印加電極2としては、気孔率を60〜90%に設定するのがよい。
一方、多孔質体として従来から用いられてきたチタニアやムライトなどのセラミックでは、気孔率は10〜50%程度、多くは35%前後であることが多い。また、発泡金属ではない一般的な焼結金属の場合も気孔率は高いものでも50%程度であり、発泡金属の気孔率は明らかに高いものである。
また、発泡金属の他の大きな特徴として、気孔径が大きいことが挙げられる。
図22は実施の形態1を示す図で、水印加電極2に用いる発泡金属の説明用拡大概念図である。
図22は、平面(二次元)状で示しているため、各々の気孔が独立しているように見えるが、実際の発泡金属は、三次元的に気孔が連続している連続気孔構造体である。図12に示すように、本実施の形態の静電霧化装置100〜500にて水印加電極2として用いられる発泡金属は、焼き固まった金属部22と空隙部となる気孔21で構成される。ここで、気孔21の直径を孔径と定義する。孔径は、電子顕微鏡で撮影される画像により、その大きさを判断することができる。また、水銀圧入式ポロシメータやガス吸着測定装置を使って、孔径だけでなく、気孔の分布状態を測定することも可能である。
水印加電極2の発泡金属の孔径は10〜1000μmが妥当であるが、孔径が50〜600μmの発泡金属が、吸水性や目詰まり防止の観点から好適であり、さらに剛性や生産性(加工性)を考慮すると150〜300μmが最適である。
セラミックのように孔径が10μm未満であると、孔径が細かくなり過ぎて(小さ過ぎて)目詰まりする危険性が高いし、吸水量も小さい。また、気孔21の大きさを安定して小さく揃えることは発泡金属の製造上、困難なものである。逆に、孔径が1000μmを超えると、連続する気孔21を通して吸水した水が漏れ出しやすくなり、水を胴部28から先端霧化部29へと搬送しがたくなる。
ここで、水印加電極2に使用している発泡金属と、従来から放電側の電極に使用されていたセラミック多孔質体との吸水量の比較を行う。図23にその結果を図示する。
図23は実施の形態1を示す図で、発泡金属と比較例との吸水量を比較した図である。
オーステナイト系ステンレスのSUS316を素材とした発泡金属である実施例1では、吸水量が約0.5g/cm3であり、チタンを素材とした発泡金属である実施例2では、約0.4g/cm3である。一方、セラミック材では、比較例1のムライト、比較例2のチタニアともに、約0.2g/cm3であり、発泡金属が、セラミックの2倍の吸水性能を有していることがわかる。
高い気孔率と大きい孔径を内部に持つ発泡金属は、図23に示すようにセラミックに比べて高い吸水性能を有する。吸水性能が高い(言い方を変えれば吸水量が多い)ということは、内部を水が移動できる量および移動速度も大きいことを意味する、すなわち搬送性能も高いことになる。そのため、発泡金属から成る水印加電極2は、セラミックで形成する場合よりも先端霧化部29に素早く水を移動でき、かつ吸水量が多いことで、静電霧化装置100〜500の運転開始から静電霧化が始まるまでの時間が短くできるとともに、胴部28から先端霧化部29への水の搬送が一時的に途絶えて、静電霧化が途切れてしまうような事態を防止して、正確に安定して静電ミスト1を発生させることができる。
また、発泡金属は内部の三次元的に連続した気孔21を主として表面拡散により水が移動するので、水印加電極2の設置方向は、重力方向とは無関係に先端霧化部29を天井方向に向けたり、水平に向けたりして使用できる。そして、連続気孔構造であり、その気孔21の孔径が大きいので、長期に渡って目詰まりすることなく、安定して水を先端霧化部29へと搬送できる。
続いて、図24に発泡金属と他の多孔質体との電気抵抗率を比較した結果を、図25に発泡金属から成るこの実施の形態の水印加電極2と、この水印加電極2と同一形状でセラミックにて形成した水印加電極との静電霧化量を比較した結果を示す。
図24、図25は実施の形態1を示す図で、図24は発泡金属と比較例との電気抵抗率を比較した図、図25は発泡金属と比較例との静電霧化量を比較した図である。
ここで、静電霧化量とは、ミスト発生量であり、上記の水印加電極を用いて静電霧化装置が単位時間当たりに生成した(水印加電極から飛び出した)静電ミスト1の重量を示すもので、規定容積箱内部の湿度上昇度から試算することができる。なお、図25において、高電圧電源部4の供給電圧は同一としている。
静電霧化装置100〜500では、水印加電極2の先端霧化部29の水に高電圧が作用し、高電圧の印加により作られるクーロン力が、水の表面張力を上回ることで、先端29aから帯電している水が飛び出し、次々と破砕(レイリー分裂)して静電ミスト1として対向電極3の開口から気中に放出される。従って、水印加電極2に存在する水に効率よく電気をかけることが重要である。すなわち、高電圧電源部4から供給された高電位を、ロスをいかに少なくして水印加電極2に存在する水(冷却フィン8bから滴下された結露水10)に伝えて水を帯電させられるかが重要であり、そのためには、水印加電極2自身が有する電気抵抗が小さいほどその抵抗で消費されるロスを小さくでき、電気伝導性が高まって効率よく水を帯電できる。そして、水印加電極2の電気抵抗は、その材料によって特定されることが多い。
発泡金属の電気抵抗率は、発泡体であるとは言えあくまで金属であって導体であるので、素材がステンレス鋼であるSUS316の実施例1でも、チタンの実施例2であっても、1×10−7Ω・m程度と電気抵抗が非常に小さく、電気を良く通す、すなわち電流によるロスを小さくして効率よく水に電気を流して帯電させることができる。一方で、セラミック材の電気抵抗率は、比較例1に示すムライトで1×1014Ω・m、比較例2に示すチタニアで1×1012Ω・mと電気抵抗は大きく、セラミック材は、導体とは言えず、半導体から絶縁体の間である。比較例3の樹脂発泡体であるスポンジと同程度の高い電気抵抗率を示す。
このように、発泡金属を材料として水印加電極2を形成することで、セラミックを材料とするものよりも効率よく水を帯電させることができる。すなわち、高電圧電源部4が供給する高電圧が同じ大きさであれば、発泡金属を材料として形成されているこの実施の形態における水印加電極2を用いた方が、セラミックを材料とする場合よりも、水に電流が伝わりやすく、効率よく水を帯電することができる。発泡金属を材料として水印加電極2を形成することで、電気抵抗が小さくなるので、静電霧化で消費される電力を、セラミックを材料とするものよりも小さくすることができ、省エネルギー化に貢献できる。
また図25により、水印加電極2を同一形状にして、高電圧電源部4の供給電圧を同一とした場合の静電霧化量を比較すると、発泡金属を材料として形成した水印加電極2の静電霧化量は、発泡金属の素材がSUS316の実施例1、チタンの実施例2ともに、水印加電極2の1本あたり約0.15cc/hrであった。一方、セラミック材では、それが比較例1に示すムライトで0.06cc/hrで、比較例2に示すチタニアで0.08cc/hrであり、発泡金属の実施例よりも少なかった。
同じセラミックであっても、チタニアの方がムライトよりも静電霧化量が多いが、図24から、チタニアの電気抵抗率が、ムライトよりも2桁低いことがわかる。図24、図25において、セラミック同士、すなわち比較例1と比較例2を比べることでもわかるが、水印加電極が電気を通しやすい(電気抵抗率が小さい)方が水に効率よく電気をかけられ帯電でき、先端霧化部29の先端29aに形成された水のテーラーコーンがクーロン力によって飛び出しやすくなって、静電霧化量が増加するといえる。これらの結果から、導体であり電気抵抗率が低い発泡金属を静電霧化装置100〜500の水印加電極2に用いた場合、従来のセラミック材に比べて、霧化する水に高電圧を効率よく印加でき(帯電させることができ)、高電圧電源部4の供給電圧が同じ大きさであれば、静電霧化量(静電ミスト1の発生量)を増やすことができる。
なお、発泡金属の水印加電極2は、厚みが0.5mm〜5.0mm程度の大きなシート状発泡金属体を作成し、それから所望の形状(連続する胴部28と先端霧化部29)に切り出して製作する。シート状発泡金属体を板厚方向に複数枚積み重ねて、複数枚を同時に切り出すことで大量生産が可能である。切り出しは、ワイヤーカットやレーザーカットにより行われる。その他トムソン刃やプレスによる打ち抜き、機械切削による削り出し、手切断、曲げ加工など各種の加工方法を用いて、所望の形状に加工することができる。この水印加電極2では利用することはないが、発泡金属は、溶接やロウ付による接合も可能である。
次に、図26に発泡金属の素材(材質)の違いによるオゾン発生量の比較結果を示す。
図26は実施の形態1を示す図で、発泡金属の素材の違いによるオゾン発生量を比較した図である。
水印加電極2から対向電極3に向かって放電が起こる場合、放電に伴ってオゾンが生成される。オゾンは、適量であればその殺菌作用を利用することにより有益であるが、生成量が過多となると、その青臭い臭気から人間にとっては異臭と感じられたり、酸化作用や腐食作用を人間や周囲の物質に及ぼしたりすることもある。従って、静電ミスト1を放出するための静電霧化装置100〜500においては、放電により生成されるオゾンの発生量をできるだけ抑えたい。
そこで発泡金属により形成された水印加電極2におけるオゾンの発生量を実験により調査した。実験内容は、水印加電極2に所定の同じ大きさの高電圧を付与した場合に、42L(リットル)箱(42L槽)内部のオゾン濃度の定常値を調査するものである。
図26において、比較例4に示す発泡金属は、オーステナイト系ステンレスとして一般的によく知られているSUS304(ニッケル含有量8〜10.5%、クロム含有量18〜20%)であるが、この場合のオゾン発生量として、42L槽内部のオゾン濃度が1.2ppmとなった。一方、同じオーストナイト系ステンレスであるが、ニッケル含有量が11〜15%、クロム含有量が16〜20%で、かつモリブデンが1〜4%含有されたSUS316を用いた実施例1の場合では、42L槽のオゾン濃度は、比較例1のSUS304に比べ約60%の0.7ppmとなった。
同じオーステナイト系ステンレスであっても、ニッケルの含有量が多く、また、モリブデンが数%含有されている方が、オゾン発生量が少ないことがわかった。そのため、ステンレスを素材とする発泡金属により水印加電極2を形成する場合では、ニッケルの含有量が11%以上で、モリブデンが1〜4%含有されたオーステナイト系ステンレスを素材とするのがよい。実施例1のSUS316以外でも、SUS316L、SUS317が、ニッケルの含有量が11%以上で、モリブデンを含有しており、オゾン発生量をSUS304に比べて少なくできる。
図26において実施例2で示すチタンが素材の発泡金属で形成されたものが、オゾン発生量が最も少なく、42L槽のオゾン濃度が0.03ppmで、比較例4(SUS304)の1/40、実施例1(SUS316)の1/23と、大幅にオゾン発生量を抑制できることがわかった。また、実施例3で示すニッケルを素材とした発泡金属を用いた場合では42L槽内部のオゾン濃度は0.3ppmとなり、実施例2(チタン)ほどのオゾン発生の抑制効果は得られないが、実施例1(SUS316)よりもオゾン発生の抑制効果が大きい。
このようなオゾン発生抑制効果は、発泡金属の素材が還元作用を及ぼすことで、生成されたオゾンが分解されるためと考えられる。すなわち、水印加電極2の材料として、還元作用のある金属を素材とすることで、オゾン発生量を抑制できる。そして、図26の実施例においては、チタンがオゾンの還元作用が最も強く働くものと考察される。チタンほどではないが、実施例3の結果からニッケルも還元作用が働くものといえる。そのため、オーステナイト系ステンレスにおいては、ニッケルの含有量が多いSUS316の方がオゾン発生量を抑制できると考えられ、モリブデンもオゾンを還元する作用を及ぼしていると考えられる。また、水印加電極2の材料として発泡金属を使用することにより、水を効率よく帯電させられるので、オゾンそのものの生成が少ないということも考えられる。
また、水印加電極2から対向電極3へ放電が起こる場合、放電に伴ってヒドロキシルラジカルやスーパーオキサイドといったラジカル(活性種)が生成されることもあるが、このようなラジカルは、化学的に反応性が極めて高く、活性であるが故に非常に不安定な物質であり、酸素や窒素など空気中の分子とすぐに反応するので、空気中で極めて短寿命であり、生成されてもほぼ瞬時に消滅してしまうため、たとえラジカルが生成されたとしても、それらが静電ミスト1とともに放出されることはないし、静電ミスト1がラジカルを含むこともない。
以上の結果から、水印加電極2として最も好ましい材料は、チタンを素材とした発泡金属であると言える。また、SUS316、チタン、ニッケルを素材として用いた発泡金属では、高電圧を印加することによる電気腐食や電気摩耗も防ぐことができ、長期に渡って水印加電極2の形状、特に先端霧化部29の尖り形状を保持することができる。そのため、静電霧化を長期に渡って安定して実施することができる、という効果も得られる。この効果においても、特にチタンを素材とするものが材料の特性から顕著である。
これまで、発泡金属は、高い気孔率と大きい孔径の三次元網目構造を有するので、高い吸水性と搬送性(水の移動速度が速い性質)を持つことを説明してきた。また、このような性質を利用して、本実施の形態に示す静電霧化装置の水印加電極2の材料として発泡金属が好適であることを説明してきた。ここで更に、発泡金属を酸化処理することにより、内部の気孔21表面の親水性が向上し、水印加電極2の吸水性と搬送性が高まることを見出した。酸化処理は、発泡金属を酸素雰囲気に曝すことでなし得る。
酸化処理による親水性向上は、素材がチタンである場合に特に顕著である。チタンを酸化処理すると、表面層は酸化チタンに近い性質となる。酸化チタンは紫外線などのエネルギーを受けると周りにある水と反応して最表面に水酸基(OH基)を作るため、水と非常になじみやすい性質(高い親水性)を有するようになる。このため、水が表面拡散で移動する際に、水が止まることなく広がって進むので、発泡金属の内部で水を効率よく素早く移動させることができる。素材がチタンの発泡金属では、酸化処理を行ったものが、酸化処理を行っていないものに比べて水の移動速度が5倍程度速くなるという結果が得られている。
素材がチタン以外のニッケルなど他の金属材料を素材とする発泡金属の場合でも、酸化処理の際に表面に親和性を有する層を作るので、水へのなじみ性(親水性)が向上する。ただし、素材がチタンである発泡金属を酸化処理した場合の親水性の向上効果が顕著であり、水の移動速度が速くなって、水印加電極2における吸水性と搬送性の向上効果が高い。酸素雰囲気に曝す酸化処理では、発泡金属で形成された水印加電極2の外表面のみではなく、高い気孔率と大きな孔径を備えた連続気孔構造により、連続気孔を通過して内部の気孔21に面する表面にも酸化処理がなされ、気孔21に臨む内表面も含めた金属部22のすべての表面に対して親水性が向上し、水の移動速度を高めることができる。このため、静電霧化装置100〜500の運転開始から静電ミスト1の放出までの時間を短くできる。
以上のように、本実施の形態に係る静電霧化装置100〜500の水印加電極2は、三次元網目構造を有する発泡金属を材料に用いて形成されていることを特徴の一つとしている。このため、吸水量が多く、水の移動速度が速いので、静電霧化装置100〜500の運転開始から霧化が始まる(静電ミスト1が放出される)までの時間が早い。そして、発泡金属は、電気抵抗率が低くて電気伝導性に優れているため、霧化する水に効率よく電気をかけられ帯電でき、霧化量が増加する、という効果を有する。
また、電気腐食や電気摩耗を防止でき、長期に渡って水印加電極2の形状、特に先端霧化部29の尖り形状を保持することができる。そのため、静電霧化を長期に渡って安定して実施することができる、という効果を有する。
また、高い気孔率のために多量の水を吸水することができるとともに、孔径が大きいために、長期に渡って目詰まりすることなく長期に渡って安定した高い吸水性と搬送性を維持でき、静電霧化を長期に渡って安定して実施できる、という効果を有する。
また、発泡金属の素材に、還元作用のある金属である、チタンやニッケル、また、ニッケルを11%以上、かつモリブデンを数%含有するオースナイト系ステンレスのいずれかを用いることで、放電によって生成されるオゾンの発生量を抑制できる、という効果を有する。この効果は、特にチタンを素材とした発泡金属で水印加電極2を形成した場合に顕著である。
また、発泡金属の表面を、焼結後に酸化処理したものを材料として水印加電極2を形成すれば、内部表面の親水性が高まり、水の移動速度が更に向上する、という効果を有する。
なお、ここまで説明してきた三次元網目構造を有する発泡金属は、その高い吸水性と搬送性から、本実施の形態で示す静電霧化装置100〜500の水印加電極2に限らず、他の形態の静電霧化装置であっても、放電部までの水搬送を兼ねる電極に用いれば、本実施の形態の水印加電極2と同様な効果を得ることができる。例えば特許文献1の静電霧化装置では、水供給部となる水溜め部の水をセラミック多孔質体からなる直立した搬送体に毛細管現象でその上端まで搬送させ、針状に尖る上端に水のテーラーコーンを形成させてミストを生成するが、この搬送体(水印加電極2に相当するものである)を、セラミックではなく、ここまで説明した発泡金属で形成すれば、水の搬送速度が著しく上昇し、セラミックで形成する場合よりも運転開始から静電霧化までの時間が短縮できるし、また、放電部となる針状に尖った上端が、電気腐食や電気摩耗することを防止でき、長期に渡って尖り形状を維持でき、セラミックで形成する場合よりも静電霧化を長期に渡って安定して実施できるようになる。
これより、本実施の形態の静電霧化装置100〜500のいずれかを、空気調和機50の内部に搭載した場合について説明する。
図27乃至図31は実施の形態1を示す図で、図27は静電霧化装置100〜500のいずれかを備えた空気調和機50の縦断面図、図28は空気調和機50の部分縦断面図、図29は空気調和機50の外観斜視図、図30はセンサー80とサーモパイル81を示す図、図31はセンサー80付近の斜視図((a)はセンサー80が右端端部へ可動した状態、(b)はセンサー80が中央部へ可動した状態、(c)はセンサー80が左端端部へ可動した状態)である。
図27乃至図29に示す空気調和機50は、一般的な壁掛け型のものである。
空気調和機50は、室内空気を吸い込む吸い込み口41と、調和空気を室内へ吹き出す吹き出し口42と、室内空気から調和空気を生成する逆V字型の熱交換器51(前面上部熱交換器51a、前面下部熱交換器51b、背面熱交換器51cからなる)と、熱交換器51で結露した水を受けるドレンパン40(二箇所)と、送風ファン43とを備えている。空気調和機50本体の上方に位置する吸い込み口41から送風ファン43の回転によって流入した室内空気は、熱交換器51を通過する際に冷凍サイクルの冷媒と熱交換されて温度湿度が調節されて、送風ファン43を通過して、下方に位置する吹き出し口42から調和空気となって室内に吹き出される。
吹き出し口42には、吹き出される調和空気の風向を変更できる左右風向板44と上下風向板45が設置されていて、吹き出し流の吹き出し方向が調整されている。吹き出し流の左右方向の風向を変更可能な左右風向板44が、吹き出し流の上下方向の風向を変更可能な上下風向板45の上流側に位置している。また、ドレンパン40で回収した熱交換器51の結露水は、図示しないドレンホースを通って、屋外に排出される。
ここで、この空気調和機50では、静電霧化装置100〜500のいずれかを、前面下部熱交換器51bの風上側(上流側)、もしくは背面熱交換器51cの風上側(上流側)のいずれかであって、ドレンパン40の上方に設置している。ドレンパン40の上方に静電霧化装置100〜500のいずれかを設置すれば、冷却部8の結露水10が多量であって余剰水分が生じた場合であっても、ドレンパン40がそのような余剰水分を受け取って、熱交換器51の結露水といっしょに屋外へ排出するので、設置した静電霧化装置100〜500のいずれかの余剰水分が室内へ漏れ出す恐れがない。
空気調和機50に、静電霧化装置100〜500のいずれかを設置することにより、静電霧化装置から放出された多量の静電ミスト1を、吸い込み口41から吸い込まれた室内空気といっしょに熱交換器51を通過させ、吹き出し口42から調和空気ととともに、室内へ放出させることができる。送風ファン43の回転によって生成される調和空気の吹き出し流に乗って、調和空気とともに静電ミスト1も室内へと放出されるのである。
空気調和機50には、人の位置を見分けることができるセンサー80(例えば、赤外線センサー)が搭載されている。センサー80は、ユニット(室内機で、ここでは空気調和機50のこと)中央部で前面パネルに設置されるか(図29の例)、ユニット右端部(空気調和機50を正面から見る場合)の電気品に近い部分に設置される。
センサー80は、縦方向に並べた複数のサーモパイル81(図30)を用いて横方向に動かしてスキャニングすることにより(図31)、複数の熱画像を取得することで、背景との温度差から人間の存在有無を検出するものであり、肌が露出されているほど検出が容易である。
また、画素数が多いほど検出精度が高く、明確に人の位置および空気調和機50からの距離を、空気調和機50が把握することができる。画素数としては700画素もあれば充分に室内の人の位置を把握できる。当然、サーモパイル81でなくとも人の位置を見分けるためにカメラなど画素数の高いものを用いても良い。また、検出精度は下がるが、フレネルレンズを用いた焦電センサーによって、人のいるエリアや人のいる位置(横方向、奥行き)を見分けても良い。
空気調和機50には、自動で方向を変更できる左右風向板44と上下風向板45が備えられている。上下風向板45は、中央で2枚に分割されており、手前と奥など室内の任意の奥行き方向2箇所に風を届けることができる。
また、左右風向板44も中央を境に左部分と右部分でそれぞれ独立したモーター(例えば、ステッピングモータ)により駆動されて、室内の任意の左右方向二箇所に風を届けることができる。また、これらを同時に組み合わせることで、複数の風を作りだすことができる。
センサー80を用いると人の位置を詳細に判別することができるので、左右風向板44と上下風向板45を使用することにより、人に向けて風を当てる運転(以下、風あて運転と呼ぶ)をすることもできるし、人を避けて風を送る運転(以下、風よけ運転と呼ぶ)をすることもできる。
人の位置は、人として判別させても良いし、あるエリアごとに人の存在エリアとして割り当てて、そのエリアに対して風あて運転または風よけ運転を行うこともできる。
人は、風を受けると蒸発速度が上がり肌表皮から水分が失われて乾燥してしまう。風を直接当てた場合(風速約1.0m/s)と当てない場合(風速約0.1〜0.3m/s)の肌乾燥速度の差はおよそ3倍にもなる。
風を直接当てた場合は乾燥が速く、乾燥感を感じてしまう。その時の肌の水分量は15%程度異なり、風を直接当てた場合の方が肌の水分量は少ない。
主流が作り出す乾燥領域は、空気調和機の吹き出し口42の幅に相当し、およそ人間の肩幅に相当する。従って、肌水分量にとっては風を直接当てない方がよいが、風を人から大きく避けて運転すると充分な暖房の暖かさや冷房の冷たさを感じることができない。また、空気調和機を使用すると乾燥してしまう、または乾燥感を与えてしまうことが大きな課題であった。
そこで、本実施の形態の空気調和機50は静電霧化装置100〜500のいずれかを備えている。空気調和機50の吹き出し口42から調和空気とともに、室内へ静電霧化装置100〜500のいずれかで生成された多量のナノメータサイズの静電ミスト1が放出される。静電ミスト1はマイナスに帯電しているので、電位差のある人体へ寄りやすく、そして、静電ミスト1の大きさは人体の角質細胞より小さいため、顔や首など露出している肌に浸透して、ユーザに保湿効果を付与する。また、肌を親水化する作用を示し、低湿度時に周囲の水分を取り込めない状況にあっても、周囲の水分との馴染みをよくして水分を取り込む接着剤効果を示すので、静電ミスト1が少量であっても保湿効果を付与できる。また、静電ミスト1は液体を原料としているため、N、C、H、Oなど空気原料で構成されるマイナスイオン等に比べて寿命が長く、数分間浮遊することができる。
これにより、以下の効果が得られる。
(1)暖房運転時のユーザの肌保湿効果が高まる(肌の水分量が増加する)。
(2)肌の水分量が増加することで、ユーザの体感温度は高まる。
(3)その分、暖房時の設定室温を下げることができ、その分空気調和機50の消費電力量が低下し、省エネルギー化に貢献(寄与)する。
暖房運転時に使用者の顔や首など露出している部分の肌の水分量が25%増加すると、室内湿度が約20%RH増加したことに相当する。そして、室内湿度の約20%RHの増加は、人の体感温度が約1deg上昇することに相当する。暖房運転時に設定温度を1deg下げれば、空気調和機50の消費電力量を約10%削減することができる。
ナノメータサイズの静電ミスト1が保湿効果を与えることで、空気調和機50を使用した場合に乾燥感を低減することができる。
更に、センサー80を用いて人の位置を判別し、人を中心として風よけ運転を行うことで、人が直接風を受けないので、乾燥感を低減することができる。
避ける幅としては、少なくとも空気調和機50の吹き出し口42の幅以上に風を避けて運転すると効果が得られる。
また、風よけ運転を行いながら、静電ミスト1を放出する併用運転を行った場合、人が直風を受けることがないので乾燥感を感じることがないとともに、静電ミスト1は直接人に向かって提供されなくても、マイナスに帯電しているので、電位差のある人体へ寄っていくので、ユーザに保湿効果を付与することができる。従って、風よけ運転によって乾燥を抑制する効果と、静電ミスト1によって得られる保湿効果の二つの相乗効果を得ることができる。
センサー80によって、人のいる位置を判別し、エリアごとに人の存在エリアとして割り当てる場合には、人のいるエリアの隣のエリアに静電ミスト1を含んだ風を吹けばよい。
また、独立駆動できる左右風向板44および分割された上下風向板45を用いて、人のいるエリアの両隣に静電ミスト1を含んだ風を吹いてもよい。
左右に避けられない場合には、人のいるエリアの手前に静電ミスト1を含んだ風を吹いてもよい。
人のいるエリアのすぐ隣のエリアに静電ミスト1を含んだ風を吹く理由としては、避けすぎた場合には暖房感や冷房感を損なうためである。
人のいるエリアは細かく分割するほど、暖かさと冷たさを損なうことなく、肌を保湿することができる。少なくとも室内を縦、横ともに5分割以上のエリアに区切ると良い。
静電霧化装置100〜500のいずれかを備えた空気調和機50について、更に詳細に述べる。
ペルチェユニット6の両面には、放熱部7と冷却部8を備えるが、冷却部8は放熱部7よりも容量が充分に小さい。放熱部7は放熱量が増えるのでスペースが許す限り大きくするのがよいが、冷却部8は小さくしすぎると表面温度は下がるものの、通過する風量が少なくなるために除湿量(結露量)が低下する。逆に、大きすぎると通過風量が多くなり除湿量(結露量)が増えるものの、通過する空気に吸熱能力を持っていかれてしまうため、表面の温度が充分に下がらない。必要な除湿量に応じて、冷却部8の容量を決めればよいが、冬場(暖房時)の絶対湿度は非常に低く、露点温度は概ね10℃以下であり、相対湿度30%〜35%RHの悪条件では2〜5℃程度である。従って、冷却フィン8bの温度を0℃近傍まで下げないと静電ミスト1の原料となる結露水を得ることはできないため、冷却フィン8bの容量は放熱部7に比べて充分に小さくするのが好ましい。
冷却部8を効率よく冷やすために、冷却部8の大きさとペルチェユニット6の大きさを略等しくするとよいが、冷却部8が小さいために、その上部および左右には放熱露出部7a(図15、図16(b))が露出する。
放熱露出部7aは、放熱部7のフィンを有しない面であって、ペルチェユニット6を有する面のペルチェユニット6から露出している部分である。
放熱露出部7aを流れた空気が冷却部8に混ざると、放熱した暖かい空気が冷却部8の吸熱を妨げてしまう。そこで、冷却部8に放熱露出部7aが通過した風が来ないように、冷却部8の左右に遮断壁62(図12、図15、図16(b))を設けた。
冷却部8の左右の遮断壁62により、放熱露出部7aを通過した空気は冷却部8に触れることなく下方に流れていく。
遮断壁62は、水供給部保持枠60に冷却フィン8bと平行に水供給部保持枠60から、放熱部7側に突出している。
また、冷却部8の上部にある放熱露出部7aには、樹脂(冷却部保持枠63)でカバーをして熱交換を抑制することで、放熱露出部7aを通過した暖かい空気を冷却部8に流さないようにした。詳細は後述する冷却部保持枠63(図9、図15)を、熱交換を抑制するカバーに流用した。
冷却部8は、ペルチェユニット6にシリコンやエポキシなどを原料とした水密防止の効果を持った接着剤によって保持されている。
同様に放熱部7も、接着剤を用いてペルチェユニット6に固定されている。
接着剤は、温度が低い冷却の繰り返しや10年以上といった長期使用による劣化によって剥がれる懸念がある。そこで、仮に接着剤の効力が低くなった場合でも、冷却部8が落下することなく、継続してペルチェユニット6に確実に接して、冷却フィン8bの温度を低下できるようにするために、冷却部保持枠63(図9、図15)を設けて冷却部を放熱部に固定した。
樹脂製の冷却部保持枠63は、上部に爪64を二つ備えて放熱部7のフィン上面とベース板で形成される隙間にひっかけることができる。
また、冷却部保持枠63は、冷却部8の一部であって冷却フィン8bが無いベース板8aの左右端をおさえる。
また、冷却部保持枠63は、下部に爪64を二つ備えて放熱部7のフィン下面とベース板で形成される隙間にひっかけることができる。
従って、冷却部8は冷却部保持枠63を介して放熱部7に背負われて、上下左右で固定される。そのため、接着剤強度に関係なく、落下することも、また位置がずれることもなく、長期に渡って性能を発揮することができる。
また、ネジなどで固定する場合に比べて、冷却部保持枠63は熱伝導性が悪いので、放熱部7の熱が冷却部8に伝わり難く、吸熱性能を著しく落とすことがない。
別の方法として、水供給部保持枠60から水平方向に突出した棒または板を冷却部保持枠63として冷却部8の下部まで延ばして設置しても良いし、水印加電極保持枠70から垂直方向に突出した棒または板を冷却部保持枠63として冷却部8の下部まで延ばして設置しても良い。
また、水供給部保持枠60から突出した棒または板で冷却部8のベース板などの端部を応力によって押さえ込んでも良い。冷却部8の冷却フィン8bが水平方向に突出しておらず、重力方向に突出している場合には、下方から延出した棒または板によって支えても良い。冷却部8に対向する樹脂部材から突出する棒状または板状の枠を、冷却部8の一部に当てることで、冷却部8が水印加電極2側に落下するリスクを抑制でき、異常な放電を回避しながら、長期に渡って水を得ることができる。
なお、熱交換器51の風上側に静電霧化装置100〜500のいずれかを設置するにあたって、いずれの場合であっても、冷却フィン8bや放熱部7のフィンの積層方向が空気調和機50本体の左右方向となるように配置するのがよい。これにより吸い込み口41からの吸い込み空気流が、フィン(冷却フィン8bや放熱部7のフィン)に沿って流れるようになって放熱部7の放熱が促進され、冷却部8へスムーズに風が流れて冷却フィン8b上で結露量が増加する。
また、フィン容積を増加する場合には、幅方向(図9)に伸ばせばよく、製造が容易な短いフィン高さのまま実現することができ、全体の奥行きを増やすことなく少ないスペースに設置できる。
放熱部7は、熱交換器51に対向した位置に略平行に配置される。この時、所定の隙間L8(図28参照)を空けることで、放熱部7に対する熱交換器51の暖房時に起こる熱影響を少なくすることができる。熱影響を受けると放熱部7での放熱がされにくくなり、冷却部8での冷却能力が下がってしまう。
また、所定の隙間L8を空けることで、対向電極3から熱交換器51に対して、異常な放電が起こることも無い。熱交換器51に略平行に配置することで、局所的な影響を受けにくくなる。所定の距離L8は、少なくとも4mm以上として好適であり距離が大きいほど影響は少ないが、スペース性を考慮して決定する。
吸い込み口41からの吸い込み空気流は、熱交換器51に近いほど風速が早い。前面下部熱交換器51bの風上側に、厚み10〜30mm前後の静電霧化装置100〜500のいずれかを前面下部熱交換器51bと4〜10mm程度の距離をおいて設置した場合、前面下部熱交換器51bの近傍の風速は、前面パネル46に近い側に比べて2倍程度早い。
また、背面熱交換器51cの風上側に設置した場合も同様に、背面熱交換器51cの近傍の風速は、背面カバー47に近い側に比べて2倍程度早い。
放熱部7が熱交換器51と向き合うように配置した方が、放熱部7を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量が多くなり、放熱がより促進されてよい。
また、冷却部8が熱交換器51から遠く、前面パネル46または背面カバー47に近い側に配置された方が、冷却部8を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量を放熱部7に比べて抑制することができ、吸熱能力を冷却部8の通過風が奪うことなく、冷却フィン8bの温度を露点以下まで下げることができる。
更に、放熱部7は風がよく通るように空気中に露出していて、冷却部8は過度の空気流入を防止するために水供給部保持枠60で覆われ、冷却フィン8bの風上にあって幅方向に一つまたは複数個設けられた空気量調整穴61によって通過風速および通過風量を制御している。
このように構成することで、放熱部7の容積を抑えて省スペース性を損なわずに、充分に放熱することができ、冷却部8の温度を充分に低下させて暖房時のような乾燥条件でも結露水を得ることができる。
この効果は、前面上部熱交換器51aの風上側に静電霧化装置100〜500のいずれかを設置した場合にも得ることができるが、前面上部熱交換器51aの風上側では冷却部8を通過する風が速いため、より空気量調整穴61の開口を小さくする必要がある。空気量の調整は、風速を低下させて風量を低下させることが目的であるので、空気量調整穴61である必要はなく、邪魔となるリブなどを設けて空気量を調整しても良い。
これまで、多孔質体からなる水印加電極2は、水を受け取るための胴部28と、胴部28に接続される先端霧化部29とで構成されることを説明してきたが、胴部28と先端霧化部29を一体に同じ材質で形成した方が水の移動が円滑であるが、一体である必要はなく、胴部28を水を受けるための保水部として、保水部に複数の先端霧化部29を差し込むなど接続して使用しても、先端霧化部29が水搬送能を有していれば問題はなく、本実施の形態で説明してきた種々の効果を得ることができる。
また、静電霧化装置100〜500の天面方向にブラシやパッドを設けた自動フィルター清掃装置(図示せず)、もしくは自動フィルター清掃装置によって掻き取られたホコリを収納するダストボックス(図示せず)がある場合には、静電霧化装置100〜500にホコリが重力落下してしまう可能性があるため、静電霧化装置100〜500の天面に水供給部(放熱部7、ペルチェユニット6、冷却部8)を覆うようにホコリ受けを設けると良い。
また、放熱部7を熱交換器51と向き合わせて配置する場合、静電霧化装置100、静電霧化装置300(変形例3)、静電霧化装置400(変形例4)、静電霧化装置500のいずれかであれば、図7に示す静電霧化装置150(変形例1)と同様に、先端霧化部29を胴部28の放熱部7側の長辺方向側面上に、冷却フィン8bの突出方向とは反対方向に突出するように設ければ、放熱部7を通過する流量の多い空気流にのせて静電ミスト1を吹き出し口42まで素早く確実に導くことができる。
それにより、吹き出し口42からの多くの静電ミスト1の放出を、空気調和機50の運転開始から短時間で実施できる。なお、この場合静電ミスト1の生成部分の上方には、図6に示すように庇30aを設置して、静電ミスト1の生成部分への放熱部7を通った空気流の通過を抑制した方がよい。また、垂直壁30bを設置して、静電ミスト1の生成部分への冷却部8を通った空気流の通過を抑制した方がよい。
そして、水印加電極2を還元性のある金属、特にチタンを素材とする発泡金属で形成することにより、放電により生成されるオゾンの発生量を抑制できるので、吹き出し口42から調和空気とともにオゾンが吹き出され、ユーザが異臭と感じたり、保湿効果を要求するユーザの人体に酸化作用を及ぼしたりすることがない。
また、上記したように、放電に伴ってラジカル(活性種)が生成されたとしても、短寿命であって消滅してしまうので、吹き出し口42からラジカルが吹き出されることはなく、吹き出される静電ミスト1にラジカルが含まれることもないので、保湿効果を要求するユーザの人体にラジカルが酸化作用を及ぼすことはない。帯電してはいるが、ナノメータサイズの純粋な水が、ユーザの肌に浸透するので、肌に悪影響を与えることなく、保湿効果を高められる。
また、静電霧化装置100〜500のいずれかにより生成される静電ミスト1は、この静電霧化装置が搭載される空気調和機50が設置される室内の空気中の水分を原料としているので、すなわち、室内空気中の水分を結露させ、それを霧化して室内に放出しているものであるので、室内の絶対湿度が上昇することがない。そのため、室内の壁や窓に放出された静電ミスト1に起因した結露が生じることがない。よって、結露による室内の壁等のカビの発生を回避しながら、人の肌水分の蒸発を抑制し、肌表皮水分量を増加させることが可能となる。
また、空気調和機50の送風ファン43を用いて、水供給部のペルチェユニット6に室内空気を供給し、そこで静電ミスト1となる結露水を得るとともに、かつ吹き出し口42からの調和空気の吹き出し流に搬送させて、室内に静電ミスト1を提供(放出)するので、静電霧化装置専用のファンを別途に設ける必要がなく、静電霧化装置の構造をシンプル化し、少スペースにも設置できる静電霧化装置とすることができる。
なお、静電霧化装置100〜500において、水印加電極2の材料として三次元網目構造を有する発泡金属を用いてきたが、例えば、水を毛細管現象で搬送するセラミックや非発泡の一般的な焼結金属、樹脂発泡体など他の多孔質体を用いて水印加電極2を形成しても、発泡金属を用いることによる種々の効果は得られないが、上記した水印加電極2(胴部28と先端霧化部29)の形状や構成、冷却部8(水供給部)と水印加電極2との位置関係、水印加電極2の設置角度や冷却部8の設置角度による、冷却部8で生成された水を無駄なく素早く先端霧化部29へ導き、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることができる、という効果は得ることができる。