JP2011034434A - 誤差補正手段を備えた数値制御装置 - Google Patents

誤差補正手段を備えた数値制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】工作機械の各軸位置に依存した軸依存並進誤差量または軸依存回転誤差量によって、工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点へのリンクベクトルによって補正量を演算し補正を行う誤差補正手段を提供する。
【解決手段】補正手段20によって、各軸機械座標位置、誤差量データテーブル、定数用データテーブルおよび工具長補正量から各軸依存回転誤差量、各軸依存並進誤差量および各リンクベクトルを求め、求めた各軸依存回転誤差量、各軸依存並進誤差量および各リンクベクトルに対して誤差リンクベクトルの演算を行い、該誤差リンクベクトルと該リンクベクトルとの差分によって補正量を演算し、誤差補正を行う。
【選択図】図15

Description

本発明は、テーブルに取付けられたワーク(加工物)に対して少なくとも直線軸3軸によって加工する工作機械を制御する数値制御装置において、該工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点へ1個または複数個のリンクベクトルまたは工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して誤差リンクベクトルの演算を行い、リンクベクトルと誤差リンクベクトルから補正量を演算することにより、工具先端点位置の補正を可能とする数値制御装置に関する。
数値制御装置により動作が制御される工作機械の送り軸は、目標位置と実際に到達する位置との間に誤差が生じる。工作機械の誤差として並進誤差と回転誤差が存在することは知られており、工具長補正ベクトルや工具先端点ベクトルに対して並進誤差補正や回転誤差補正を行っていた。
特許文献1には、座標系を格子状領域に分割し、格子点において格子点補正ベクトルを格納し、現在位置補正ベクトルを格子点補正ベクトルに基づいて算出し補正する技術が開示されている。
特許文献2には、基準軸心に対する回転軸誤差と指令角度に基づき加工原点を補正する
技術が開示されている。
特許文献3には、回転軸のずれ量や主軸旋回中心のずれ量から、機械誤差がない場合の工具と加工物の相対関係が保持されるように補正する方法が開示されている。
特許文献4には、位置にもとづいて位置誤差(並進誤差)と姿勢誤差(回転誤差)を補正する方法が開示されている。
特許文献5には、直線軸依存回転補正量、直線軸依存並進補正量、回転軸依存回転補正量および回転軸依存並進補正量によって、誤差補正を行うことが開示されている。
特許第3174704号公報 特開2005−59102号公報 特許第4038185号公報 特開2008−269316号公報 特開2009−151756号公報
背景技術の欄で説明した技術では、工作機械の一部の要素、5軸加工機の回転部分(回転ヘッドや回転テーブル)に対してのみ並進誤差補正や回転誤差補正を行っているにすぎず、工作機械全体に対する誤差補正としては不十分であった。特に3軸加工機も含めて工作機械のベッドから工具先端点までの誤差補正としては不十分であった。
特許文献1に開示される技術では、単に座標位置にもとづいて並進誤差補正が行われるのみであり、本発明におけるリンクベクトルに対して並進誤差および回転誤差の演算を行い誤差補正を行う技術思想はない。
特許文献2に開示される技術では、基準軸心に対する回転軸誤差と指令角度にもとづいて並進誤差補正が行われるのみであり、各軸位置に対応した誤差量を格納しておきその誤差量から座標位置に依存した並進誤差量と回転誤差量を求めリンクベクトルに対して並進誤差および回転誤差の演算を行い誤差補正を行うという本発明の技術思想はない。
特許文献3に開示される技術では、回転軸のずれ量や主軸旋回中心のずれ量を対象としているのみでは正確な補正ができない。例えば、直線軸間(X軸とY軸の間など)に存在する真直度誤差はこの方式では補正できない。また、各軸位置に対応した誤差量を格納しておきその誤差量から座標位置に依存した並進誤差量と回転誤差量を求めリンクベクトルに対して並進誤差および回転誤差の演算を行い誤差補正を行うという本発明の技術思想はない。
特許文献4に開示される技術では、単に座標位置にもとづいて並進誤差補正および回転誤差補正が行われるのみであり、工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点へ1個または複数個のリンクベクトルまたは工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して並進誤差および回転誤差の演算を行い誤差補正を行うという本発明の技術思想はない。
特許文献5に開示される技術では、工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点へ1個または複数個のリンクベクトルまたは工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して並進誤差および回転誤差の演算を行い誤差補正を行うという本発明の技術思想はない。
そこで、本発明の目的は、工作機械の各軸位置に依存した軸依存並進誤差量または軸依存回転誤差量によって前記工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルまたは前記工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して誤差リンクベクトルの演算を行い、該リンクベクトルと該誤差リンクベクトルとの差分によって補正量を演算し補正を行う誤差補正手段を備えた数値制御装置を提供することである。
本願の請求項1に係る発明は、テーブルに取付られたワーク(加工物)に対して少なくとも直線軸3軸によって加工する工作機械を制御するとともに、該工作機械を構成する各軸の各軸位置に依存した誤差補正を行う誤差補正手段を備えた数値制御装置において、該誤差補正手段は、該各軸位置に依存した軸依存並進誤差量または軸依存回転誤差量によって前記工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルまたは前記工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して誤差リンクベクトルの演算を行い、該リンクベクトルと該誤差リンクベクトルとの差分によって補正量を演算し誤差補正を行う機能を有することを特徴とする誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項2に係る発明は、前記リンクベクトルは、リンク軸順における着目軸の軸依存回転誤差中心から次軸の軸依存回転誤差中心または工具先端点へのベクトルである請求項1に記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項3に係る発明は、該軸依存並進誤差量または該軸依存回転誤差量は、該各軸位置に対応した誤差量が設定されている誤差量データテーブルと該各軸位置によって演算される値であることを特徴する請求項1または2のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項4に係る発明は、該軸依存並進誤差量または該軸依存回転誤差量は、該軸位置に依存した関数として決定される値であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項5に係る発明は、該リンクベクトルの要素は設定されている定数用データテーブルの定数であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項6に係る発明は、該リンクベクトルの要素は該軸位置に依存した関数として決定される変数であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項7に係る発明は、前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸によって加工する3軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項8に係る発明は、前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とヘッド回転用回転軸2軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項9に係る発明は、前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とテーブル回転用回転軸2軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
請求項10に係る発明は、前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とヘッド回転用回転軸1軸とテーブル回転用回転軸1軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置である。
本発明により、各軸位置に依存した軸依存並進誤差量または軸依存回転誤差量による誤差に対して工具先端点での誤差補正を正確に行うことができる数値制御装置を提供できる。
ヘッド回転型の5軸加工機の機械構成を説明する図である。 5軸加工機のX軸コラム上のY軸コラムにおける誤差を説明する図である。 5軸加工機のZ軸コラム上のC軸ヘッドにおける誤差を説明する図である。 図1に図示される機械構成の5軸加工機におけるリンクベクトルを説明する図である。 ベッド上のX軸コラム回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からY軸コラム回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVxと誤差との関係を説明する図である。 Y軸コラム回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心からZ軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVyと誤差との関係を説明する図である。 Z軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心からC軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVzと誤差との関係を説明する図である。 C軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心からA軸ヘッド回転誤差(A軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVcと誤差との関係を説明する図である。 A軸ヘッド回転誤差(A軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルVaと誤差との関係を説明する図である。 合成リンクベクトルVLを説明する図である。 合成誤差リンクベクトルVL’を説明する図である。 合成リンクベクトルVL’合成誤差リンクベクトルVL’の関係と補正量Δ3Dと工具との関係を説明する図である。 X軸依存の誤差量を用いて軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量の設定を説明する図である。 EXX(x)がX軸位置(x)に依存した3次式で表される場合を説明する図である。 本発明である、補正量Δ3Dを求め従来技術の補正量に加算して補正を行う誤差補正手段を備えた数値制御装置の要部ブロック図である。 本発明である、指令解析手段で解析したプログラム指令の各ブロック終点位置を機械座標位置としてその位置に対して誤差補正手段によって誤差の補正を行う形態の誤差補正手段を備えた数値制御装置の要部の機能ブロック図である。 プログラム指令を説明する図である。 第1の実施形態における補正手段が行う補正処理のアルゴリズムのフローチャートである。 テーブル回転型の5軸加工機の機械構成を説明する図である。 ベッド上のY軸テーブルにおける誤差を説明する図である。 図19に示される機械構成の5軸加工機におけるリンクベクトルVy,Vx,Vb,Vc,Vzを説明する図である。 Z軸コラムとB,C軸テーブルにおけるリンクベクトルの詳細を説明する図である。 ベッド上のY軸テーブル回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心からX軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVyと誤差との関係を説明する図である。 X軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からB軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVxと誤差との関係を説明する図である。 B軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心からC軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVbと誤差との関係を説明する図である。 C軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルVcと誤差との関係を説明する図である。 Z軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルVzと誤差との関係を説明する図である。 数15式と数17式とを図示したベクトル図である。 数14式と数16式とを図示したベクトル図である。 L1,VL1’, VL2,VL2’の関係とΔ3Dと工具との関係を説明する図である。 図1に図示される機械構成の5軸加工機におけるリンクベクトルを説明する図である。 リンクベクトルVxyzと誤差との関係を説明する図である。 リンクベクトルVcaと誤差との関係を説明する図である。 数26式を説明する図である。 数25式を説明する図である。 X,Y,Z軸依存誤差量として、X,Y,Z位置に対応した軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量の設定した誤差量データテーブルを説明する図である。 X,Y,Z軸位置が(x,y,z)の時の並進誤差量および回転誤差量を誤差量データテーブルに記憶された最寄の位置のデータを比例配分して求めることを説明する図である。 C,A軸依存の誤差量データテーブルを説明する図である。 C,A軸位置が(c,a)の時の並進誤差量および回転誤差量を誤差量データテーブルに記憶された最寄の位置のデータを比例配分して求めることを説明する図である。 混合型の5軸加工機の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
まず、ヘッド回転型の本発明の第1の実施形態を説明する。
<機械構成>
図1は、ヘッド回転型の5軸加工機の機械構成を説明する図である。
両端部が立設する構造のベッド1に架設されるX軸コラム2には、Y軸コラム3が取付けられている。Y軸コラム3にはZ軸コラム4が取付けられている。工具が取付けられたA軸ヘッドがC軸ヘッドに取付けられ、C軸ヘッドがZ軸コラム4に取付けられている。X軸コラム2やC軸ヘッドなどはX軸やC軸で動作する部分を指す。ここでの実施形態としては図1のような5軸加工機の機械構成で説明する。回転軸はC軸とA軸としているが、他の軸(C,B軸やA,B軸など)の組合せもある。また、回転軸に関する処理や演算を除けば3軸加工機での誤差補正となる。
<並進誤差と回転誤差>
図2は、5軸加工機のX軸コラム2とY軸コラム3における誤差を説明する図である。各軸位置に依存した並進誤差量と回転誤差量を表1に示されるように表記する。ただし、不要な要素は誤差量0として省略可である。回転軸(C,A軸)要素を除けば、つまり、EXC(x)、EXA(a)のような3文字目がCまたはAの誤差量を0とすれば、3軸加工機に適用できる。
表1に示される表記はJIS規格B6191にならっている。JISハンドブック 13 工作機械2006 日本規格協会,工作機械−静的精度試験方法及び工作精度試験方法通則B6191 5.231に、Z軸方向の運動による偏差として、EXZ:直進偏差、EYZ:直進偏差、EZZ:位置偏差、並びに、角度偏差であるEAZ:ピッチ,EBZ:ヨー,ECZ:ロールが規定されている。
Figure 2011034434
本発明では、直進偏差および位置偏差を並進誤差、角度偏差を回転誤差と記述する。表1では、この表記にならって各軸位置に依存した、各軸方向の並進誤差量、各軸周りの回転誤差量を表記し、さらに各軸位置に依存した関数であることを数学的に明確にするために、EXZ(z)、EAZ(z)などのように関数の形にしている。
誤差量の方向についてさらに説明する。例えば、X軸コラム2上のY軸コラム3の位置に依存する誤差、EXY(y),EYY(y),EZY(y),EAY(y),EBY(y),ECY(y)を図示すると図2のようになる。EXY(y),EYY(y),EZY(y)はあるY軸位置yにおける、それぞれX方向、Y方向、Z方向のY軸コラム3の誤差である。つまり、Y軸依存の並進誤差である。EAY(y),EBY(y),ECY(y)はあるY軸位置yにおける、それぞれX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのY軸コラム3の誤差である。つまり、Y軸依存の回転誤差である。なお、図2上では大きく描いているが、これらの誤差はごくわずかである。
さらにZ軸コラム4上のC軸ヘッドの位置に依存する誤差、EXC(c),EYC(c),EZC(c),EAC(c),EBC(c),ECC(c)を図示すると図3に示すようになる。EXC(c),EYC(c),EZC(c)はあるC軸位置cにおける、それぞれX方向、Y方向、Z方向のC軸ヘッドの誤差である。つまり、C軸依存の並進誤差である。
EAC(c),EBC(c),ECC(c)はあるC軸位置cにおける、それぞれX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのC軸ヘッドの誤差である。つまり、C軸依存の回転誤差である。
<リンクベクトル>
ここで、リンクベクトルについて説明する。リンクベクトルとは、工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点への、または工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への各軸間の結合を示すベクトルである。図1におけるリンクベクトルは図4のように表される。
Vx:ベッドからX軸コラム2へのリンクベクトル
Vy:X軸コラム2からY軸コラム3へのリンクベクトル
Vz:Y軸コラム3からZ軸コラム4へのリンクベクトル
Vc:Z軸コラム4からC軸ヘッドへのリンクベクトル
Va:C軸ヘッドから工具先端点へのリンクベクトル
各リンクベクトルは各軸で動作する部分の任意の場所を指すことが出来るが、ここでは回転誤差を考慮して各リンクベクトルを次のようにする。
Vx:X軸コラム回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からY軸コラム回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、X軸コラム回転誤差中心はベッドとX軸コラムの接触部分の中心であると想定し、Y軸コラム回転誤差中心はX軸コラムとY軸コラムの接触部分の中心であると想定する。
Vy:Y軸コラム回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心からZ軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、Z軸コラム回転誤差中心はY軸コラムとZ軸コラムの接触部分の中心であると想定する。
Vz:Z軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心からC軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、C軸ヘッド回転誤差中心はZ軸コラムとC軸ヘッドの接触部分の中心であると想定する。
Vc:C軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心からA軸ヘッド回転誤差(A軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、A軸ヘッド回転誤差中心は工具を含めたA軸ヘッドの回転中心中央であると想定する。
Va:A軸ヘッド回転誤差(A軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのベクトルとする。ここで、Vc、Vaを無視する(Vc=Va=0としVzをZ軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルとする)と、3軸加工機での誤差補正となる。
<リンクベクトル演算>
それぞれ、ここでは同次座標系で次のように演算する。x,y,z,a,cは機械座標位置(機械座標系上の各軸位置)である。X,Y,Z軸の機械座標位置はA軸ヘッド回転中心中央(A軸依存回転誤差中心)としている。したがって、x,y,zはX,Y,Z軸の移動とともに変化する。Vxの第2要素、Vzの第3要素、Vaの第1〜第3要素のようにy,z,a,cを使用したベクトル要素は軸位置に依存した関数として決定される変数である。定数となっているデータはあらかじめ定数用データテーブルに設定しておきそれを使用するが、各軸位置による変数とすることも可能である。ここでは値として0となっている要素についても、定数にしたり各軸位置による変数とすることも可能である。
Vx=(0,y−cxy,0,0)T
y:Y軸位置、cxy:X軸依存回転誤差中心(X軸コラム回転誤差中心)Y位置(定数)
Vy=(cyz,0,0,0)T
cyz:Y軸依存回転誤差中心(Y軸コラム回転誤差中心)からZ軸依存回転誤差中心(Z軸コラム回転誤差中心)への距離(定数)
Vz=(0,0,z−czz+cca,0)T
z:Z軸位置、czz:Z軸依存回転誤差中心(Z軸コラム回転誤差中心)のZ軸位置(定数)、cca:C軸依存回転誤差中心(C軸ヘッド回転誤差中心)からA軸依存回転誤差中心(A軸ヘッド回転中心)への距離(定数)
Vc=(0,0,−cca,0)T
Va=(Vax,Vay,Vaz,1)T
Va(Vax,Vay,Vaz):A軸依存回転誤差中心(A軸ヘッド回転中心中央)から工具先端点へのベクトルであり、A,C軸の回転によって数1式で表される。aはA軸位置(機械座標位置)、cはC軸位置(機械座標位置)である。hはA軸ヘッド回転中心から工具先端点への工具長を含めた距離であり、工具長補正量と定数から求められる。工具は、a=0,c=0の時、Z軸マイナス方向を向くとする。
Figure 2011034434
そして、各リンクベクトルVx,Vy,Vz,Vc,Vaと誤差との関係を図示すると、図5〜図9に示されるようになる。図5は、ベッド1からX軸コラム2へのリンクベクトルVxと誤差との関係を説明する図である。図6は、X軸コラム2からY軸コラム3へのリンクベクトルVyと誤差との関係を説明する図である。図7は、Y軸コラム3からZ軸コラム4へのリンクベクトルVzと誤差との関係を説明する図である。図8は、Z軸コラム4からC軸ヘッドへのリンクベクトルVcと誤差との関係を説明する図である。図9は、C軸ヘッドから工具先端点へのリンクベクトルVaと誤差との関係を説明する図である。
ここで、図6は、図2の誤差をリンクベクトルに対する誤差として図示したものである。図6のEAY(y),EBY(y),ECY(y)は図2のEAY(y),EBY(y),ECY(y)と相違するように見えるが、図2はY軸コラム3全体に対する誤差として図示しているのに対して、図6はリンクベクトルに対する誤差として図示しているものであり、共に同じ誤差を図示している。
<誤差と補正>
ある機械座標位置P(x,y,z,c,a)における、X,Y,Z軸への補正量Δ3D(Δ3Dx,Δ3Dy,Δ3Dz,0)Tは、数2式〜数4式により演算される。ここで、補正を行っているのはX,Y,Z軸に対してであり、回転軸C,A軸に対しては本発明による補正は行わない。回転軸の演算部分(Mc,Vc,Ma,Vaによる演算部分)を除けば、3軸加工機における演算となる。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
ここで、数2式は機械構造のリンク軸順の計算となる。リンク軸順とは、ベッド1上でX軸コラム2が動作し、X軸コラム2上でY軸コラム3が動作し、Y軸コラム3上でZ軸コラム4が動作し、Z軸コラム4上でC軸ヘッドが動作し、C軸ヘッド上で工具を取付けられたA軸ヘッドが動作するという、ベッドから工具を経由した工具先端点までの軸並びの順を言う。したがって、リンク軸順は機械構造に依存する。
図1に示される機械構造では、全ての軸がベッドから工具側にあるので、テーブル側のリンク軸順はないが、テーブルを動作する軸が存在する場合(例えば、第2の実施形態における図19に示される機械構造)は、テーブルを経由するリンク軸順もある。VLを合成リンクベクトル、VL’を合成誤差リンクベクトルと呼ぶ。各マトリックスは下記のマトリックスを意味する。
Mx:X軸依存の誤差生成マトリックス
My:Y軸依存の誤差生成マトリックス
Mz:Z軸依存の誤差生成マトリックス
Mc:C軸依存の生成マトリックス
Ma:A軸依存の生成マトリックス
各誤差生成マトリックスMx,My,Mz,Mc,Maは数5式〜数9式のようになる。ここで、回転誤差量の要素(1〜3行、1〜3列の要素)は、本来はsin(ECX(x)),cos(ECX(x))などのように三角関数によって表される。回転誤差量はラジアン単位の十分小さい量であるとして、sin(ECX(x))=ECX(x),cos(ECX(x))=1と近似し、三角関数によらないマトリックスとしている。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
ここで、前述した数3式をベクトル図として図示すると、図10に示されるようになる。図10は、合成リンクベクトルVLを説明する図である。それに対して、各リンクベクトルVx,Vy,Vz,Vc,Vaに各誤差生成マトリックスMx,My,Mz,Mc,Maの積が演算されることにより数2式をベクトル図として図示すると図11のようになる。図11は、合成誤差リンクベクトルVL’を説明する図である。ここで、Vx’,Vy’,Vz’,Vc’,Va’は、それぞれリンクベクトルVx,Vy,Vz,Vc,Vaに誤差生成マトリックスMx,My,Mz,Mc,Maが乗算された誤差リンクベクトルを表す。つまり、誤差リンクベクトルVx’,Vy’,Vz’,Vc’,Va’はそれぞれ、数10式のように表される。
Figure 2011034434
したがって、合成リンクベクトルVL,合成誤差リンクベクトルVL’の関係と補正量Δ3Dと工具との関係を図示すると図12のようになる。つまり、補正量Δ3Dの補正を行うことは、工具先端点を合成誤差リンクベクトルの先端(VL’の先端)から誤差のない合成リンクベクトルの先端(VLの先端)に移動し補正することである。したがって、各リンクベクトルVx,Vy,Vz,Vc,Vaに並進誤差または回転誤差があっても工具先端点は正しい位置に移動し、正しい加工が行われる。なお、図12においてZ軸コラム4、C軸ヘッドなどを傾けているが、誤差を持っていることを明確にするために傾けて図示している。実際の機械でこのように大きく傾くものではない。
<誤差量の設定>
軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量の設定について説明する。例として、図13に示されるX軸依存の誤差量で説明する。図13は、X軸依存の誤差量を用いて軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量の設定を説明する図である。X軸位置がx0のときの並進誤差量(EXX(x0),EYX(x0),EZX(x0))および回転誤差量(EAX(x0),EBX(x0),ECX(x0))を、x0に対応した誤差量データテーブルに並進誤差量および回転誤差量として設定する。同様に、x1,x2,・・・に対応した誤差量を並進誤差量および回転誤差量として設定する。x0,x1,x2・・・の位置については最初のx0を固定値にしておき、それから等間隔でx1,x2・・・が並んでいるとしてもよいし、x0,x1,x2・・・の位置を別途パラメータに設定しておいてもよい。
ここで、X軸位置がxの時の並進誤差量(EXX(x),EYX(x),EZX(x))および回転誤差量(EAX(x),EBX(x),ECX(x))は、最寄のxn,xn+1(n=0,1,2・・・)から比例配分で求める。つまり、xn≦x<xn+1としたとき、X軸依存並進誤差EXX(x)の値を数11式により求める。他の要素も同様である。
Figure 2011034434
他の軸位置に依存した並進誤差量および回転誤差量も同様に誤差量データテーブルに設定されたデータと各軸の位置から求める。
ここでは各軸位置による1次元のデータテーブルとしたが、関連性の強い軸同士ではそれらの軸の組合せによる2次元、3次元のデータテーブルとし、2軸または3軸の位置とそれらの誤差データテーブルから比例配分で求めてもよい。(詳細には第3の実施形態の説明で述べる。)
また、軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量は軸位置に依存して値が決定される関数による値であってもよい。図14はEXX(x)がX軸位置(x)に依存した3次式で表されるとした場合の図である。係数α、β、γ、δは別途パラメータとして設定しておく。他の要素も同様である。
次に、図15を用いて本発明の誤差補正手段を備えた数値制御装置を説明する。数値制御装置10は一般に、指令解析手段11でプログラム指令を解析して補間用のデータを作成し、補間手段12で補間用データにもとづいて補間を行って各軸の移動すべき位置を求め、各軸用の加減速手段13X,13Y,13Z,13A(B),13Cによって各軸の加減速を行った後の各軸位置を求め、補正手段14でピッチ誤差補正やバックラッシ補正などの従来技術の補正を行い、その結果の位置によって各軸のサーボ15X,15Y,15Z,15A(B),15Cを駆動する。
ここで、本発明によって、すでに述べたように、各軸の機械座標位置、誤差量データテーブル、定数用データテーブルおよび工具長補正量から各軸依存回転誤差量、各軸依存並進誤差量および各リンクベクトルを求め、求めた各軸依存回転誤差量、各軸依存並進誤差量および各リンクベクトルに対して数2式、数3式、数4式の演算を行うことにより、補正量Δ3Dを求める。これを新たな補正量Δ3Dとして従来技術の補正量に加算して補正を行う。
なお、図16のように、指令解析手段11で解析したプログラム指令における各ブロックのブロック終点位置を機械座標位置としてその位置に対して同様の補正を行うことも可能である。図17に示されるプログラム指令例において、G90は指令位置がアブソリュート指令であること、G01は直線補間指令であること、Fは速度指令を表す。各X,Y,Z,A,Cの組がブロック終点位置である。
図18は、第1の実施形態における補正手段が行う補正処理のアルゴリズムのフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップST1]機械座標位置(x,y,z,c,a)のデータ、および、工具長補正量を取得する。
●[ステップST2]誤差量データテーブルおよび機械座標位置から、数11式およびそれにならって、各軸依存並進誤差量、各軸依存回転誤差量を演算する。つまり、数11式によりX軸依存並進誤差EXX(x)の値を求め、他の要素も同様な計算式により値を求める。
●[ステップST3]定数用データテーブル、工具長補正量、および機械座標位置から各リンクベクトルを演算する。
●[ステップST4]各軸依存並進誤差量、各軸依存回転誤差量および各リンクベクトルから数2式、数3式、数4式により補正量を演算し、終了する。
次に、テーブル回転型機械の本発明の第2の実施形態を説明する。
<機械構成>
図19は、テーブル回転型の5軸加工機の機械構成を説明する図である。Y軸テーブルやB軸テーブルなどはY軸やB軸で動作する部分を指す。回転軸はB軸とC軸としているが、他の軸(A,C軸やA,B軸など)の組合せもある。また、回転軸に関する処理や演算を除けば3軸加工機での誤差補正となるのは第1の実施形態と同じである。なお、第2の実施形態において、記号は第1の実施形態と同じものがあるが、それらは第1の実施形態と同じ意味ではなく第2の実施形態における意味を持つ。
<並進誤差と回転誤差>
各軸位置に依存した並進誤差量と回転誤差量を表2のように表記する。ただし、不要な要素は誤差量0として省略可である。回転軸(B,C軸)要素を除けば3軸加工機に適用できる。
Figure 2011034434
誤差量の方向についてさらに説明する。図20は、誤差量の方向について説明する図である。例えば、ベッド1上のY軸テーブルの位置に依存する誤差、EXY(y),EYY(y),EZY(y),EAY(y),EBY(y),ECY(y)を図示すると図20に示されるようになる。誤差EXY(y),EYY(y),EZY(y)は、あるY軸位置yにおける、それぞれX方向、Y方向、Z方向のY軸テーブルの誤差である。つまり、Y軸依存の並進誤差である。誤差EAY(y),EBY(y),ECY(y)は、あるY軸位置yにおける、それぞれX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのY軸テーブルの誤差である。つまり、Y軸依存の回転誤差である。図20では大きく描いているが、これらの誤差はごくわずかである。
<リンクベクトル>
リンクベクトルは、工作機械のベッド1から工具を経由した工具先端点への、または工作機械のベッド1からテーブルを経由した工具先端点への各軸間の結合を示すベクトルである。図21は、図19に示される機械構成の5軸加工機におけるリンクベクトルVy,Vx,Vb,Vc,Vzを説明する図である。
Vy:ベッドからY軸テーブルへのリンクベクトル
Vx:Y軸テーブルからX軸テーブルへのリンクベクトル
Vb:X軸テーブルからB軸テーブルへのリンクベクトル
Vc:B軸テーブルから工具先端点へのリンクベクトル
Vz:ベッドから工具を経由した工具先端点へのリンクベクトル
図22は、Z軸コラム5とB,C軸テーブルの間のリンクベクトルの詳細を説明する図である。したがって、各リンクベクトルは各軸で動作する部分の任意の場所を指すことができるが、ここでは回転誤差を考慮して各リンクベクトルを次のように演算する。
Vy:Y軸テーブル回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心からX軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、Y軸テーブル回転誤差中心はベッドとY軸テーブルの接触部分の中心であると想定し、X軸テーブル回転誤差中心はY軸テーブルとX軸テーブルの接触部分の中心であると想定する。
Vx:X軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からB軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、B軸テーブル回転誤差中心はB軸テーブル回転中心の中央であると想定する。
Vb:B軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心からC軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのベクトルとする。ここでは、C軸テーブル回転誤差中心はB軸テーブルとC軸テーブルの接触部分の中心であると想定する。
Vc:C軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのベクトルとする。
Vz:Z軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのベクトルとする。Z軸コラム回転誤差中心は、ベッドとZ軸コラムの接触部分の中心であると想定する。
ここで、Vb,Vcを無視する(Vb=Vc=0としVxをX軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルとする)と、3軸加工機での誤差補正となる。
<リンクベクトル演算>
それぞれ、ここでは同次座標系で次のように演算する。x,y,z,b,cは機械座標位置(機械座標系上の各軸位置)である。直線軸の機械座標位置x,y,zは、B軸回転中心とC軸回転中心の交点を機械座標系原点とした工具ホルダの端面の位置(工具長補正量0の位置)としている(図21でのPl)。したがって、x,y,zはX,Y,Z軸の移動とともに変化する。Vxの第1要素、Vb,Vcの第1〜第3要素のようにx,y,z,b,cを使用したベクトル要素は軸位置に依存した関数として決定される変数である。定数となっているデータはあらかじめ定数用データテーブルに設定しておきそれを使用するが、各軸位置による変数とすることも可能である。ここでは値として0となっている要素についても、定数にしたり各軸位置による変数とすることも可能である。
Vy=(−x,0,cyz2,0)T
x:X軸位置、cyz2:Y軸依存回転誤差中心(Y軸テーブル回転誤差中心)からX軸依存回転誤差中心(X軸テーブル回転誤差中心)へのZ軸距離(定数)
Vx=(0,0,cxz2,0)T
cxz2:X軸依存回転誤差中心(X軸テーブル回転誤差中心)からB軸依存回転誤差中心(B軸テーブル回転中心)へのY軸距離(定数)
Vb=(Vbx,Vby,Vbz,0)T
リンクベクトルVbは、B軸依存回転誤差中心(B軸テーブル回転中心の中央)からC軸依存回転誤差中心(B軸テーブル面上のC軸テーブル回転中心)へのベクトルである。
リンクベクトルVbは、B軸の回転によって数12式で表される。bはB軸位置である。cbz2は、B軸テーブルが水平状態(b=0)でのB軸依存回転誤差中心(B軸テーブル回転中心の中央)からC軸依存回転誤差中心(B軸テーブル面上のC軸テーブル回転中心)へのZ軸距離(定数)。
Figure 2011034434
Vc=(Vcx,Vcy,Vcz,1)T
C軸依存回転誤差中心(B軸テーブル面上のC軸テーブル回転中心)から工具先端点へのベクトルであり、直線軸機械座標位置をPl(x,y,z)と工具長補正量hによって、数13式で表される。
Figure 2011034434
Vz=(0,0,−h−czz2,1)T
Z軸依存回転誤差中心(Z軸コラム回転誤差中心)から工具先端点へのベクトルである。hは工具長補正量、czz2はZ軸依存回転誤差中心(Z軸コラム回転誤差中心)から工具ホルダ端面への距離(定数)である。
図22は図21のうち特にVz,Vb,Vc,Pl,hの関係を図示したものである。
各リンクベクトルVy,Vx,Vb,Vc,Vzと誤差との関係を図示すると、図23〜図27のようになる。図23は、Y軸テーブル回転誤差(Y軸依存回転誤差)中心からX軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVyと誤差との関係を説明する図である。図24は、X軸テーブル回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からB軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVxと誤差との関係を説明する図である。図25は、B軸テーブル回転誤差(B軸依存回転誤差)中心からC軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルVbと誤差との関係を説明する図である。図26は、C軸テーブル回転誤差(C軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルVcと誤差との関係を説明する図である。図27は、Z軸コラム回転誤差(Z軸依存回転誤差)中心から工具先端点へのリンクベクトルVzと誤差との関係を説明する図である。
<誤差と補正>
ある機械座標位置P(x,y,z,c,a)における、X,Y,Z軸への補正Δ3D(Δ3Dx,Δ3Dy,Δ3Dz,0)Tは、数14式〜数18式のように演算される。回転軸の演算部分(Mb,Vb,Mc,Vcによる演算部分)を除けば、3軸加工機における演算となる。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
ここで、数14式、数16式は機械構造のリンク軸順の計算となる。リンク軸順とは、ベッド1上でZ軸コラム5が動作し工具先端点に至るという、ベッド1から工具を経由した工具側の軸並びの順と、ベッド1上でY軸テーブルが動作し、Y軸テーブル上でX軸テーブルが動作し、X軸テーブル上でB軸テーブルが動作し、B軸テーブル上でC軸テーブルが動作し工具先端点に至るという、ベッドからテーブルを経由したテーブル側の軸並びの順を言う。したがって、機械構造に依存する。VL1を工具側合成リンクベクトル、VL1’を工具側合成誤差リンクベクトル、VL2をテーブル側合成リンクベクトル、VL2’をテーブル側合成誤差リンクベクトルと呼ぶ。各マトリックスは次を示す。
Mx:X軸依存の誤差生成マトリックス
My:Y軸依存の誤差生成マトリックス
Mz:Z軸依存の誤差生成マトリックス
Mc:C軸依存の誤差生成マトリックス
Mb:B軸依存の誤差生成マトリックス
各誤差生成マトリックスMx,My,Mz,Mc,Mbは数19式〜数23式に示すようになる。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
数15式、数17式は、図28に示されるベクトル図で表される。
それに対して、各リンクベクトルに各誤差生成マトリックスの積が演算されることにより数14式、式16式を図示すると図29のようになる。ここで、Vy’,Vx’,Vb’,Vc’,Vz’は、それぞれVy,Vx,Vb,Vc,Vzに誤差生成マトリックスMy,Mx,Mb,Mc,Mzが乗算された誤差リンクベクトルを表す。つまり、Vy’,Vx’,Vb’,Vc’,Vz’は数24式のように表される。
Figure 2011034434
したがって、VL1,VL1’、VL2,VL2’の関係と、Δ3Dと、工具との関係を図示すると図30のようになる。Δ3Dの補正を行うことは、工具先端点を誤差のある工具側合成誤差リンクベクトルの先端(VL1’の先端)から誤差のない工具側合成リンクベクトルの先端(VL1の先端)に移動するとともに、誤差のないテーブル側合成リンクベクトルの先端(VL2の先端)から誤差のあるテーブル側合成誤差リンクベクトルの先端(VL2’の先端)に移動し補正することである。つまり、工具側では誤差分引き戻し、テーブル側では誤差分追いかけて補正を行う。これは、数値制御装置はテーブルに対する相対的な工具位置を制御するので、工具側で発生する誤差はその分テーブル(ワーク(加工物))の方に引き戻し、テーブル側から発生する誤差についてはテーブル上にワーク(加工物)が存在するので工具がその分追いかけて補正する必要があるためである。この結果、各リンクベクトルに並進誤差または回転誤差があっても工具先端点は正しい位置に移動し、正しい加工が行われる。
なお、図30ではZ軸コラム5がZ方向のみならずX,Y方向にも補正され動作しているように描いているが、テーブルに対する相対的なZ軸コラム位置を描いているものである。Z軸コラム自体がX、Y方向に補正動作するのではなく、X、Y方向の補正動作はテーブルの動作によって行われる。また、図30においてZ軸コラム5、工具を傾けているが、誤差を持っていることを明確にするために傾けて図示している。実際にこのように大きく傾くものではない。
さらに、本実施形態の誤差補正手段を備えた数値制御装置は、図15、図16に示されるものと同様である。但し、補正演算における演算は、数14式〜数18式の演算を行う。
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
<機械構成>
第1の実施形態の図1と同様の機械構成とする。
<並進誤差と回転誤差>
各軸に依存した並進誤差量と回転誤差量を表3のように表記する。ただし、不要な要素は誤差量0として省略可である。回転軸(C,A軸)要素を除けば3軸加工機に適用できることは第1の実施形態と同様である。
Figure 2011034434
第1の実施形態、第2の実施形態では、各軸位置による1次元のデータテーブルとしたが、ここでは、X,Y,Z軸間での関連性が強いとしてそれらに関する誤差量はX,Y,Zの3次元データ、C,A軸間での関連性が強いとしてそれらに関する誤差量はC,Aの2次元データとしている。
<リンクベクトル>
ここでは、リンクベクトルを図31に示すようにする。図31は、図1に図示される機械構成の5軸加工機におけるリンクベクトルを説明する図である。
Vxyz:ベッドにおけるX軸コラム回転誤差(X軸依存回転誤差)中心からX軸コラム、Y軸コラム、Z軸コラムを経由してC軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心へのリンクベクトルとする。ここでは、C軸ヘッド回転誤差中心はZ軸コラムとC軸ヘッドの接触部分の中心であると想定する。
Vca:C軸ヘッド回転誤差(C軸依存回転誤差)中心からA軸ヘッドを経由して工具先端点へのリンクベクトルとする。
ここでVcaを無視する(Vca=0としVxyzをベッドから工具先端点へのリンクベクトルとする)と3軸加工機での誤差補正となる。
<リンクベクトル演算>
それぞれ、ここでは同次座標系で次のように演算する。x,y,z,a,cは機械座標位置(機械座標系上の各軸位置)である。直線軸の機械座標位置x,y,zはA軸ヘッド回転中心中央(A軸依存回転誤差中心)としている。したがって、各軸の移動とともに変化する。y,z,a,cを使用したベクトル要素が変数であることは第1の実施形態と同じである。定数となっているデータはあらかじめ定数用データテーブルに設定しておきそれを使用するが、各軸位置による変数とすることも可能である。ここでは値として0となっている要素についても、定数にしたり各軸位置による変数とすることも可能である。
Vxyz=(cyz,y−cxy,z−czz+cca,0)T
y:Y軸位置、z:Z軸位置。cyzなどの定数については、第1の実施形態と同じである。
Vca=(Vax,Vay,Vaz−cca,1)T
Va(Vax,Vay,Vaz)がA軸依存回転誤差中心(A軸ヘッド回転中心中央)から工具先端点へのベクトルでありA,C軸の回転によって数1式で表されること、ccaが定数であることなどは第1の実施形態と同じである。
各リンクベクトルと誤差との関係を図示すると図32、図33となる。図32はリンクベクトルVxyzと誤差との関係を説明する図である。図33はリンクベクトルVcaと誤差との関係を説明する図である。
<誤差と補正>
ある機械座標位置P(x,y,z,c,a)における、X,Y,Z軸への補正量Δ3D(Δ3Dx,Δ3Dy,Δ3Dz,0)Tは、数25式〜数27式のように演算される。回転軸の演算部分(Mca,Vcaによる演算部分)を除けば、3軸加工機における演算となる。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
Figure 2011034434
ここで、数25式は機械構造のリンク軸順となる。つまり、X、Y、Z軸上でC、A軸が動作するという軸並びの順である。また、Mxyz:X,Y,Z軸依存の誤差生成マトリックスであり、Mca:C,A軸依存の誤差生成マトリックスである。各誤差生成マトリックスMxyz,Mcaは数28式、数29式となる。
Figure 2011034434
Figure 2011034434
数26式で求められる合成リンクベクトルVLは、図34のベクトル図として表せる。
それに対して、各リンクベクトルに各誤差生成マトリックスの積が演算されることにより、数25式を図示すると図35のようになる。ここで、Vxyz’,Vca’は、それぞれVxyz,Vcaに誤差生成マトリックスMxyz,Mcaが乗算された誤差リンクベクトルを表す。つまり、Vxyz’,Vca’は数30式のように表される。
Figure 2011034434
合成リンクベクトルVL,合成誤差リンクベクトルVL’の関係と工具の関係は、第1の実施形態と同じである。したがって、各リンクベクトルに並進誤差または回転誤差があっても工具先端点は正しい位置に移動し、正しい加工が行われる。
<誤差量の設定>
軸依存並進誤差量および軸依存回転誤差量の設定について説明する。例として、X,Y,Z軸依存の誤差量で説明する。X,Y,Z軸位置が(x0,y0,z0)のときの並進誤差量(EXXYZ(x0,y0,z0),EYXYZ(x0,y0,z0),EZXYZ(x0,y0,z0))および回転誤差量(EAXYZ(x0,y0,z0),EBXYZ(x0,y0,z0),ECXYZ(x0,y0,z0))を、(x0,y0,z0)に対応した誤差量補正データテーブルに並進誤差量および回転誤差量として設定する。
同様に、(xi,yj,zk)(i,j,k=0,1、2・・・)に対応した誤差量を並進誤差量および回転誤差量として設定する。x0,x1,x2・・・,y0,y1,y2・・・,z0,z1,z2・・・の位置については最初のx0,y0,z0を固定値にしておき、それから等間隔でx1,x2・・・,y1,y2・・・,z1,z2・・・が並んでいるとしてもよいし、x0,x1,x2・・・,y0,y1,y2・・・,z0,z1,z2・・・の位置を別途パラメータに設定しておいてもよい。
<誤差量データテーブル>
例えば、図36には誤差量データテーブルが示されており、X,Y,Z軸位置が(x1,y0,z1)において、並進誤差量(EXXYZ(x1,y0,z1),EYXYZ(x1,y0,z1),EZXYZ(x1,y0,z1))および回転誤差量(EAXYZ(x1,y0,z1),EBXYZ(x1,y0,z1),ECXYZ(x1,y0,z1))が設定されている。
X,Y,Z軸位置が(x,y,z)の時の並進誤差量(EXXYZ(x,y,z),EYXYZ(x,y,z),EZXYZ(x,y,z))および回転誤差量(EAXYZ(x,y,z),EBXYZ(x,y,z),ECXYZ(x,y,z))は、最寄のxi,xi+1(xi≦x≦xi+1),yj,yj+1(yj≦y≦yj+1),zk,zk+1(zk≦z≦zk+1)(i,j,k=0,1,2・・・)における並進誤差量および回転誤差量から、図37に示されるように比例配分でそれぞれの誤差量を求める。図37は、X,Y,Z軸位置が(x,y,z)の時の並進誤差量および回転誤差量を誤差量データテーブルのデータから比例配分で求めることを説明する図である。
さらに、C,A軸依存の誤差量を説明する。C,A軸位置が(c0,a0)のときの並進誤差量(EXCA(c0,a0),EYCA(c0,a0),EZCA(c0,a0))および回転誤差量(EACA(c0,a0),EBCA(c0,a0),ECCA(c0,a0))を、(c0,a0)に対応した誤差量データテーブルに並進誤差量および回転誤差量として設定する。同様に、(cm,an)(m,n=0,1,2・・・)に対応した誤差量を並進誤差量および回転誤差量として設定する。c0,c1,c2,・・・,a0,a1,a2・・・位置については最初のc0,a0を固定値にしておき、それから等間隔でc1,c2・・・,a1,a2・・・が並んでいるとしてもよいし、c0,c1,c2・・・,a0,a1,a2・・・の位置を別途パラメータに設定しておいてもよい。
例えば、図38はC,A軸依存の誤差量を説明する図であり、図38では(c1,a1)において、並進誤差量(EXCA(c1,a1),EYCA(c1,a1),EZCA(c1,a1))および回転誤差量(EACA(c1,a1),EBCA(c1,a1),ECCA(c1,a1))を設定していることを示している。
そして、C,A軸位置が(c,a)の時の並進誤差量(EXCA(c,a),EYCA(c,a),EZCA(c,a))および回転誤差量(EACA(c,a),EBCA(c,a),ECCA(c,a))は、最寄のcm,cm+1(cm≦c≦cm+1),an,an+1(an≦a≦an+1),(m,n=0,1,2・・・)における並進誤差量および回転誤差量から図39に示されるように比例配分でそれぞれの誤差量を求める。図39は、C,A軸位置が(c,a)の時の並進誤差量および回転誤差量を誤差量データテーブルに記憶された最寄の位置のデータから比例配分で求めることを説明する図である。
また、これらの軸依存並進誤差量および該軸依存回転誤差量は、第1の実施形態と同様に、軸位置に依存して値が決定される関数((x,y,z)や(c,a)に依存した関数)による値であってもよい。
第1の実施形態および第3の実施形態はヘッド回転型の5軸加工機、第2の実施形態ではテーブル回転型の5軸加工機で説明したが、既に述べたように、回転軸2軸に対するデータや処理を除けばそのまま3軸加工機に適用できる。また、5軸加工機にはヘッドに回転軸が1軸ありテーブルに回転軸が1軸ある混合型と呼ばれる5軸加工機もある。本発明は、混合型の5軸加工機にも同様に適用できる。図40は、テーブルに回転軸C軸がありヘッドに回転軸B軸がある混合型の5軸加工機の一例を示す図である。
1 ベッド
2 X軸コラム
3 Y軸コラム
4,5 Z軸コラム
10 数値制御装置
11 指令解析手段
12 補間手段
13X X軸加減速手段
13Y Y軸加減速手段
13Z Z軸加減速手段
13A(B) A(B)軸加減速手段
13C C軸加減速手段
14 補正手段
15X X軸サーボ
15Y Y軸サーボ
15Z Z軸サーボ
15A(B) A(B)軸サーボ
15C C軸サーボ
20 補正手段

Claims (10)

  1. テーブルに取付られたワーク(加工物)に対して少なくとも直線軸3軸によって加工する工作機械を制御するとともに、該工作機械を構成する各軸の各軸位置に依存した誤差補正を行う誤差補正手段を備えた数値制御装置において、
    該誤差補正手段は、該各軸位置に依存した軸依存並進誤差量または軸依存回転誤差量によって前記工作機械のベッドから工具を経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルまたは前記工作機械のベッドからテーブルを経由した工具先端点への1個または複数個のリンクベクトルに対して誤差リンクベクトルの演算を行い、該リンクベクトルと該誤差リンクベクトルとの差分によって補正量を演算し誤差補正を行う機能を有することを特徴とする誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  2. 前記リンクベクトルは、リンク軸順における着目軸の軸依存回転誤差中心から次軸の軸依存回転誤差中心または工具先端点へのベクトルである請求項1に記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  3. 該軸依存並進誤差量または該軸依存回転誤差量は、該各軸位置に対応した誤差量が設定されている誤差量データテーブルと該各軸位置によって演算される値であることを特徴する請求項1または2のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  4. 該軸依存並進誤差量または該軸依存回転誤差量は、該軸位置に依存した関数として決定される値であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  5. 該リンクベクトルの要素は設定されている定数用データテーブルの定数であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  6. 該リンクベクトルの要素は該軸位置に依存した関数として決定される変数であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  7. 前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸によって加工する3軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  8. 前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とヘッド回転用回転軸2軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  9. 前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とテーブル回転用回転軸2軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
  10. 前記工作機械はテーブルに取付られたワーク(加工物)に対して直線軸3軸とヘッド回転用回転軸1軸とテーブル回転用回転軸1軸によって加工する5軸加工機であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の誤差補正手段を備えた数値制御装置。
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